説明

無機系接着剤及びラミネート製品

【課題】 無機繊維主体の繊維質多孔質基材(無機繊維ペーパーなど)に対して、同じく無機繊維主体の繊維質多孔質基材や、金属シート基材(金属箔など)や、合成樹脂シート基材(合成樹脂フィルムなど)を容易に面接合することのできる簡素な成分で安価な無機系接着剤と、それを用いた無機繊維主体の繊維質多孔質基材のラミネート製品を提供することを目的とする。
【解決手段】 無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合するための無機系接着剤であって、自己造膜性を有した膨潤性層状粘土鉱物を分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液であり、無機酸化物ゾル、水ガラス、リン酸塩からなる無機バインダ、ならびに、有機バインダを実質的に含有していないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士または無機繊維主体の繊維質多孔質基材と他基材とを面接合するための無機系接着剤と、それを用いた無機繊維主体の繊維質多孔質基材のラミネート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機繊維(ガラス繊維、ロックウール繊維、セラミック繊維など)を主体構成とした不織布、フェルト、マット、繊維板、繊維ブロック、クロス、織布、編布等の高度な多孔性を有する繊維質多孔質基材においては、これら基材同士や、これら基材と異種の基材を接着させる場合、適当な無機系接着剤がない。従来の無機系接着剤(無機バインダ)として、無機酸化物ゾル(シリカゾル、アルミナゾルなど)、水ガラス(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなど)、リン酸塩(リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウムなど)があるが、これらの無機系接着剤を、前述のような無機繊維主体の高度な多孔性を有する繊維質多孔質基材に適用しても、つまり、繊維質多孔質基材の面上に、前記無機系接着剤を塗布しても、接着剤溶液は繊維質多孔質基材に吸収されてしまい、両基材の張り合わせ界面に接着剤を介在させることができず、接着効果が発揮されない。
フッ素系樹脂基材は、表面活性に乏しく通常の手段では接着できない上に溶融流動化しないため、基材の被接着面を予め機械的または化学的処理によって活性化させる方法を採っていたが、接着強度が不十分であることに加えてシート自体の脆弱さによる使用上及び加工上の問題があった。
【0003】
従って、無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士、無機繊維主体の繊維質多孔質基材と他基材とを接着するのに有効な無機系接着剤がほとんどない。市販されている無機系接着剤で多孔質の無機繊維シートを接着できるものが多少はあるが、非常に高価で少量しか使用することができず、その使用期限が半年程度と短く、強アルカリ性あるいは強酸性のものである等の問題がある。
【0004】
無機系接着剤の適用分野の一例を示すと、現在、プリント基板に用いられるエンジニアプラスチックは、耐熱、薄膜、絶縁などに対応するため、ポリイミド(以下、PIと言うことがある)シート、液晶ポリマーシートなどの薄くて高強度、高耐熱のスーパーエンジニアリングプラスチック(以下、スーパーエンプラと言うことがある)が採用され使用量が拡大している。
【0005】
しかし、これらのスーパーエンプラを用いてプリント基板を作製する1つの方法としてプレス加工があるが、その条件はPIフィルムや液晶ポリマーフィルム等と銅箔を積層し350℃以上で数時間に渡り、数MPa〜20MPaの高加圧にてプレスを行うが、積層されたプリント基板に一定の圧力と熱を均一に加えるため、クッションシート材が使用されている。一定の圧力と熱を均一に加えるには、クッションシート材として、厚さに均一性がある抄紙式シートが適しており、しかも、上記プレス加工条件下での耐熱耐久性および分解ガス発生の問題を克服するため、ロックウール繊維、スラグ繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機繊維を主体とした抄紙式無機繊維不織布シートが使用されている。
【0006】
しかし、これらの無機繊維不織布シートを単体で使用すると、繊維が高プレスで飛散し、被プレス製品およびプレス機械を汚染するため、何らかの被覆材を用いて、梱包または密閉する必要があるが、シリコーン系の耐熱性有機バインダを用いても、300℃以上で熱分解してガス発生を生じて汚染する問題がある。現状では金属箔(アルミニウム、銅)や高価なPIシートを用いて梱包した後、折込み加工で一体化するなどの対策が採られているが、被覆材が中身の無機繊維主体の繊維質多孔質基材(無機繊維不織布シート)の寸法より大きくなり、位置も正確には把握することができなく、加工精度が劣ることや、位置決めに時間がかかり、生産性を低下させる問題がある。
【0007】
よって、このような最先端技術の分野においては、従来の無機系接着剤に代わる、まったく新しい無機系接着剤が求められており、無機繊維主体の繊維質多孔質基材(無機繊維不織布シート)と、スーパーエンプラシートや金属シートとを、接着できる、高温でガス発生がない無機系接着剤が実現できれば、最先端技術を有効に支えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前記従来の問題点に鑑み、無機繊維主体の繊維質多孔質基材(無機繊維ペーパーなど)に対して、同じく無機繊維主体の繊維質多孔質基材や、金属シート基材(金属箔など)や、合成樹脂シート基材(合成樹脂フィルムなど)を容易に面接合することのできる簡素な成分で安価な無機系接着剤と、それを用いた無機繊維主体の繊維質多孔質基材のラミネート製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
接着剤は、初め液体(流動体)の状態で接着させる2材料の間に存在し、乾燥、蒸発または反応により、個体の接着層として接着させる2材料の間に残るものと考えられる。
従って、通常の無機バインダである、無機酸化物ゾル(シリカゾル、アルミナゾルなど)、水ガラス(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなど)、リン酸塩(リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウムなど)は、水溶液またはエマルジョン溶液形態であり、無機繊維主体の繊維質多孔質基材に接触させると、簡単に多孔質基材内部に吸収されるため、接着剤としての機能を果たせないことが問題となる。
強アルカリ性あるいは強酸性領域にすると、粘性が上がり、しみ込みにくくなるものもあるが、これはエマルジョン状態を壊していることになり、接着剤の性能が劣化する。また、pH制御が難しく製法上問題である。アクリルアミドなどの有機粘剤の添加も考えられるが、200℃以上で加熱分解するので、高温領域の接着剤としては使用できない。
【0010】
自己造膜性を有したスメクタイト族粘土鉱物は3重量%水溶液で、20000cps(BM型粘度計、25℃)以上の高粘度を備えるため、無機繊維主体の繊維質多孔質基材に接触させると、表面にゲル状としてとどまり、内部にしみ込まない。その証拠に、乾燥後の接着層厚さを測定すると、約4μmの粘土膜層を形成している。この粘土膜層(接着層)が、接着面のガラス繊維を固定している(図1参照)。
また、形成された粘土膜層(接着層)を2万倍まで拡大すると(図2参照)、粘土膜層は百層以上の片状粒子からなることがわかる。したがって各層は40nm以下の層状膜を形成していることがわかる。
【0011】
接着の理論は次の3種類と言われている。1つ目は原子間引力(共有結合・イオン結合・金属結合・水素結合などからなる)で非常に強い結合で、ハンダ結合、金属同士を温度を掛けて圧着する拡散結合も例として挙げられる。分離するには数百℃以上、タングステンなどでは3400℃もの温度を加える必要がある。原子間引力は、0.5nm以下の一定距離に近づけると発生すると言われている。
【0012】
2つ目は機械的接着で、接着する基材A,Bの表面はどんなに平滑に見えても、凹凸があり、この凹凸により、基材A,Bは引力の距離を越えられず接着できない。細かなサイズの接着剤が介在すると、両者の間に入り込み、固化して凹凸に挟まり、カギのように固定する(一般的にアンカー効果と言われる)。
【0013】
3つ目は、分子間力(ファンデルワールス力)である。電荷を持たない中性電子、分子間で働く凝集力の総称である。例えばポリエチレン樹脂、メタン(融点−184℃)など。弱い方の引力。これより弱いのは万有引力(重力)となる。分子間力は、お互いの分子が凝集する強さでもあり、溶解度パラメーター(SP値)としても知られている。
従って、基材A,Bを接着するには、A,BにSP値が近い接着剤を用いると、両者をよく濡らし、近接しやすくなるのでファンデルワールス力が働くことになる。
なお、一般的に金属はSP値が50以上で、水は23.4で金属は水に濡れないことになっているが、表面は純粋な金属ではなく、大抵酸化物となっており、その上に水の分子が吸着されるため、水で濡らすことができる。
実際には、以上の3つの力が複合的に働いて、接着すると言われている。
【0014】
以上から、自己造膜性を有した膨潤性層状粘土鉱物を分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液(以下、本発明無機系接着剤と言うことがある)が、無機系接着剤として機能するのかを考察すると、次の理由が考えられる。
(1)本発明無機系接着剤は、完全に分散すると、単位分子厚さが1nmサイズであり、基材A,Bの間によく浸透でき、両者の凹凸を埋め、乾燥時にはアンカー効果を発揮できる。
(2)本発明無機系接着剤は、コロイド状のチキソトロピー性を有する溶液で、3重量%水溶液で、20000cps(BM型粘度計、25℃)以上の高粘度を備えるため基材A,Bの間に液体状としてとどまり、内部に浸透しないので、接着剤機能を維持できる。
(3)本発明無機系接着剤は、水酸基を多く備えるため、金属酸化物、無機繊維(酸化物)などをよく濡らせるため、水素結合を介して、接着できる。
(4)本発明無機系接着剤は、金属酸化物(無機粉体)や、有機エマルジョンをよく混合できるので、例えば、アルミニウムとの接着の場合、酸化アルミニウム粉体を混ぜると、より塗布しやすくなる。また、PTFE樹脂シート(SP値6.2)の場合でも、PTFEエマルジョンを混合すると、塗布しやすくなり、弱くはあるが、接着することができる。
(5)乾燥して得られる接着層は、膨潤性層状粘土鉱物により、多数の片状粒子が層状に重なった無機物の薄膜層であり、その厚さは数μmと薄い。単位層はケイ酸四面体−アルミナ八面体−ケイ酸四面体の3層から形成され、単位層の厚さは1nm、長さ0.1〜1μmと極めて薄い板状からなり、これが連続することで無機物の接着層(薄膜層)を形成する。
(6)また、層状構造であることから、水平方向へのある程度の柔軟性を備えると考えられる。これは、熱膨張性の異なる2材料間の接着でよく問題となる、加熱・冷却のソリをある程度抑える、緩衝機能を果たすことが期待される。
(7)基材から接着剤を除去する場合、容易に水に分散できるため、水洗いなどで接着剤を完全に除去できる。従って、接着を施した基材や材料の再使用が可能である利点がある。
【0015】
これに比べて、従来の代表的な無機系接着剤である珪酸ソーダ(水ガラス)については、次のことが言える。
(1)完全に水溶液なので、分散性は非常に良好であり、アンカー効果も期待できる。
(2)しかし、その粘度は、最も高いモル比(SiO重量%/NaO重量%)が4の時でも、数千cpsと小さく、無機繊維主体の繊維質多孔質基材に塗布すると、内部へ浸透しやすく、被接着物同士の張り合わせ界面部分の接着剤量が不足する問題がある。
(3)無機繊維主体の繊維質多孔質基材に塗布すると、内部へ浸透しやいことから、多孔質基材を完全に埋めて、過剰量に使用すること考えられるが、接着する多孔質基材の特性(断熱・絶縁・空隙・軽量など)を阻害する。また接着剤量を多く必要とするので、高価となるのも問題である。
(4)乾燥して得られる珪酸ソーダの構造はSiOの3次元の網目状連結体であり、硬いため柔軟な接着層とはならず、加熱時のソリ現象を抑えることはできないと推定される。
(5)更に、接着剤の除去は容易ではなく、材料の再利用も困難となる。
【0016】
本発明の無機系接着剤は、請求項1記載の通り、無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合するための無機系接着剤であって、自己造膜性を有した膨潤性層状粘土鉱物を分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液であり、無機酸化物ゾル、水ガラス、リン酸塩からなる無機バインダ、ならびに、有機バインダを実質的に含有していないことを特徴とする。
また、請求項2記載の無機系接着剤は、請求項1記載の無機系接着剤において、前記膨潤性層状粘土鉱物は、スメクタイト族粘土鉱物、スメクタイト族粘土鉱物を主体とした粘土鉱物、マイカより選択される1種または2種以上のものであることを特徴とする。
また、請求項3記載の無機系接着剤は、請求項1記載の無機系接着剤において、前記膨潤性層状粘土鉱物は、天然または合成のスメクタイト族粘土鉱物であることを特徴とする。
また、請求項4記載の無機系接着剤は、請求項1記載の無機系接着剤において、前記膨潤性層状粘土鉱物は、合成スメクタイトであることを特徴とする。
また、本発明の無機系接着剤は、請求項5記載の通り、無機繊維主体の繊維質多孔質基材と、金属シート基材または合成樹脂シート基材とを面接合するための無機系接着剤であって、自己造膜性を有したスメクタイト族粘土鉱物からなる膨潤性層状粘土鉱物を分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液であり、無機酸化物ゾル、水ガラス、リン酸塩からなる無機バインダ、ならびに、有機バインダを実質的に含有していないことを特徴とする。
また、請求項6記載の無機系接着剤は、請求項5記載の無機系接着剤において、前記膨潤性層状粘土鉱物は、合成スメクタイトであることを特徴とする。
また、請求項7記載の無機系接着剤は、請求項5または6記載の無機系接着剤において、前記溶液は、前記膨潤性層状粘土鉱物と無機粉体を分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液であることを特徴とする。
また、本発明の無機系接着剤は、請求項8記載の通り、無機繊維主体の繊維質多孔質基材とフッ素樹脂シート基材を面接合するための無機系接着剤であって、自己造膜性を有したスメクタイト族粘土鉱物からなる膨潤性層状粘土鉱物と無機粉体とフッ素樹脂エマルジョンを分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液であり、無機酸化物ゾル、水ガラス、リン酸塩からなる無機バインダ、ならびに、有機バインダを実質的に含有していないことを特徴とする。
また、請求項9記載の無機系接着剤は、請求項8記載の無機系接着剤において、前記膨潤性層状粘土鉱物は、合成スメクタイトであることを特徴とする。
また、請求項10記載の無機系接着剤は、請求項1〜9の何れか1項に記載の無機系接着剤において、前記溶液は、粘度が10000〜50000cpsであることを特徴とする。
また、請求項11記載の無機系接着剤は、請求項1〜10の何れか1項に記載の無機系接着剤において、前記溶液は、固形分として、前記膨潤性層状粘土鉱物を1〜5重量%含むことを特徴とする。
また、請求項12記載の無機系接着剤は、請求項7〜10の何れか1項に記載の無機系接着剤において、前記溶液は、固形分として、前記膨潤性層状粘土鉱物を1〜5重量%、前記無機粉体を0.5〜10重量%含むことを特徴とする。
また、請求項13記載の無機系接着剤は、請求項1〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤において、前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ2mm以下、坪量350g/m以下のシートであることを特徴とする。
また、請求項14記載の無機系接着剤は、請求項1〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤において、前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ1mm以下、坪量200g/m以下のシートであることを特徴とする。
また、請求項15記載の無機系接着剤は、請求項1〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤において、前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ0.5mm以下、坪量100g/m以下のシートであることを特徴とする。
また、本発明のラミネート製品は、請求項16に記載の通り、無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を、請求項1〜4、10、11の何れか1項に記載の無機系接着剤を用いて、面接着したことを特徴とする。
また、請求項17記載のラミネート製品は、無機繊維主体の繊維質多孔質基材と、金属シート基材または合成樹脂シート基材とを、請求項5〜7、10〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤を用いて、面接着したことを特徴とする。
また、請求項18記載のラミネート製品は、無機繊維主体の繊維質多孔質基材とフッ素樹脂シート基材とを、請求項8〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤を用いて、面接着したことを特徴とする。
また、請求項19記載のラミネート製品は、請求項16〜18の何れか1項に記載のラミネート製品において、前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ2mm以下、坪量350g/m以下のシートであることを特徴とする。
また、請求項20記載のラミネート製品は、請求項16〜18の何れか1項に記載のラミネート製品において、前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ1mm以下、坪量200g/m以下のシートであることを特徴とする。
また、請求項21記載のラミネート製品は、請求項16〜18の何れか1項に記載のラミネート製品において、前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ0.5mm以下、坪量100g/m以下のシートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無機系接着剤およびラミネート製品は、次のような効果を有する。
(1)自己造膜性を有した膨潤性層状粘土鉱物を分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有することを特徴とするため、高い粘度を備え、繊維質多孔質基材に吸収されることなく、無機系接着剤として接着機能を果たせる。
(2)分散された接着剤の単位層の厚さは1nm、長さは0.1〜1μmと、極めて微細であるため、面接合しようとする両基材の張り合わせ面を完全に濡らして、両者の凹凸を埋め、乾燥時にはアンカー効果を発揮する。
(3)本発明の無機系接着剤は、水酸基を多く備えるため、金属酸化物、無機繊維(酸化物)などをよく濡らせるため、水素結合を介して接着できる。さらに、ポリイミドなどの水成分を微量に含む合成樹脂シート基材(合成樹脂フィルムなど)も濡らすことができ、アンカー効果および水素結合を介して接着できるので適用範囲が広い。
(4)接着剤の主成分(固形分)が膨潤性層状粘土鉱物であるため、乾燥後の接着層は層状構造を有しており、水平方向へのある程度の柔軟性を備え、熱膨張性の異なる基材間の接着においてよく問題となる、加熱・冷却のソリを抑える。
(5)接着剤の主成分(固形分)が自己造膜性を有する膨潤性層状粘土鉱物であり、接着剤溶液がチキソトロピー性を有するため、無機繊維主体の繊維質多孔質基材に塗布した場合に、接着剤溶液は基材内部へ浸透することがなく、基材上面に均一かつ緻密な薄膜層を形成するように乾燥後の接着層を形成するため、数μm厚さの薄膜層を形成するための必要最小限の少量の接着剤の使用量で済むため、結果として、安価に接着加工が行える。
(6)接着剤溶液を塗布しても接着剤溶液は基材内部へ浸透することなく接着が行えるので、無機繊維主体の繊維質多孔質基材の有する多孔質特性(高空隙率、低密度構造)を阻害することがない。
(7)本発明の接着剤は、無機物であるため、耐熱温度は600℃を超え、高温環境での使用に耐える。
(8)乾燥後の接着層は、水に対して容易に分散できるので、ラミネート製品を解体するときに、簡単に除去できるとともに、接着した各材料の再生利用も可能である。
(9)以上のように、本発明の無機系接着剤及びそれを用いたラミネート製品は、工業的に安価に耐熱無機系接着剤材料の提供を行えるので価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の無機系接着剤を無機繊維抄紙シートの片面に塗布し乾燥させた状態の接着層部分の断面SEM写真(倍率1000倍)
【図2】同拡大写真(倍率20000倍)
【図3】本発明の無機系接着剤を用いて無機繊維抄紙シート同士を面接合したラミネート製品の全体写真(実施例1に相当)
【図4】本発明の無機系接着剤を用いて無機繊維抄紙シートとポリイミドフィルムを面接合したラミネート製品の全体写真(実施例4に相当)
【図5】本発明の無機系接着剤を用いて無機繊維抄紙シートとアルミニウム箔を面接合したラミネート製品の全体写真(実施例5に相当)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の無機系接着剤に適用する膨潤性層状粘土鉱物としてのスメクタイト族粘土鉱物は、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイトなどを指す。
本発明の無機系接着剤に適用する膨潤性層状粘土鉱物としてのスメクタイト族粘土鉱物を主体とした粘土鉱物は、ベントナイト(モンモリロナイトが主成分)などを指す。
合成スメクタイトとしては、例えばヘクトライト、サポナイト、スチーブンサイト、バイデライト、モンモリロナイト、ノントロナイト等の化学的合成品、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
合成スメクタイトの市販品としては、「ルーセンタイト」(コープケミカル社、合成ヘクトライト)、「スメクトン」(クニミネ工業社、合成サポナイト)等が挙げられる。
合成スメクタイトは、人工的に合成された純粋のものであり、膨潤性、チキソトロピー性等の性状は天然のベントナイトと同様であるが、不純物を含有しないため、少量の添加で粘度範囲の調整及び垂れ防止に寄与する。
合成スメクタイトは、水に分散させるとチキソトロピック分散液となり、安定な粘性が得られ、比表面積を増大させる機能を有する。
【0020】
溶液の粘度が5000cps未満であると、塗布した無機繊維主体の繊維質多孔質基材の表面から接着剤溶液が内部に浸透してしまい、逆に50000cpsを超えると、接着剤溶液の流動性が悪く、均一に塗布することができない。よって、溶液の粘度は、5000〜50000cps、更には10000〜50000cpsであることが好ましい。
【0021】
本発明の無機系接着剤およびラミネート製品の製造方法について以下説明する。尚、以下の説明は、後述する実施例の説明も一部兼ねている。
本発明の接着剤は、膨潤性層状粘土鉱物を水に溶解させたチキソトロピー性を有する水溶液であり、見掛け粘度を20000cps以上とするため、3重量%の「スメクトン」(クニミネ工業社製)の水溶液を用いた。作製方法は、スメクトンSAを30g採取し、広口のポリ容器に入れて、さらに水970gを加えて、ホモジナイザー(シルバーソン社製 L4R)を用いて2分間撹拌して均一分散させ、チキソトロピー性を備えた濃度3重量%の粘土分散液を得、これを無機系接着剤とした。
【0022】
次に、無機繊維主体の繊維質多孔質基材を作製する。ここで、無機繊維主体とは、繊維質多孔質基材の構成材料として無機繊維が50重量%以上含まれていることを指す。好ましくは、70重量%以上である。材料は工業的に一般的に使用されるガラス繊維を選定し、平均繊維径0.7μmのガラス繊維100重量%を水中で分散・混合・凝集後、通常の抄紙機にて湿式抄造し、200℃で乾燥して、厚さ1.0mm、坪量140g/mのガラス繊維系抄紙シートを得た。
【0023】
次に、得られた無機系接着剤を用いて前記方法で作製した無機繊維抄紙シート基材に金属シート(金属箔)または合成樹脂フィルムシート(耐熱性フィルム:PI、液晶ポリマーなど)を接着する加工法について説明する。
(1)得られた無機系接着剤を、ロールコータ、ドクターコータ、スクリーン印刷等の塗工法により、無機繊維抄紙シート基材の表面に規定量付着させる。本発明において接着剤の付着部を設ける意味は金属箔または耐熱性フィルムの接着が目的であることから、少なくとも表面部分に付着させられる方法であれば構わない。
(2)金属箔または耐熱性フィルムを無機繊維抄紙シートの接着剤塗布面に張り付け、張り付け後の金属箔または耐熱性フィルムの表面が平滑になるように軽く、平板プレスまたはロールで圧着させる。
(3)一般的な乾燥機(循環熱風乾燥炉等)で乾燥し、耐熱性フィルムまたは金属箔を接着した複合材(ラミネート製品)を得る。以上は、耐熱性フィルムまたは金属箔のラミネート面を無機繊維抄紙シート基材の表裏面の一方の面に設けた例であるが、表裏両面に設けるようにしてもよい。更には、その2層の間に別の無機繊維抄紙シートを挟んで3層以上に積層するようにしてもよい。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例について、従来例および比較例とともに詳細に説明する。
(実施例1)
前記方法にならって作製した無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合した。
厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを2枚採取した。濃度3.0重量%で見掛け粘度25000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、もう1枚の繊維質多孔質基材を重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ2.0mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士のラミネート製品を得た。
【0025】
(実施例2)
前記方法にならって作製した無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合した。
厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを2枚採取する。濃度2.5重量%で見掛け粘度12000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、もう1枚の繊維質多孔質基材を重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ2.0mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士のラミネート製品を得た。
【0026】
(実施例3)
前記方法にならって作製した無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合した。
厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを2枚採取した。濃度3.5重量%で見掛け粘度40000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、もう1枚の繊維質多孔質基材を重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ2.0mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士のラミネート製品を得た。
【0027】
(実施例4)
前記方法にならって作製した無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材と、合成樹脂シート基材(合成樹脂フィルム)とを面接合した。
合成樹脂フィルムには、スーパーエンプラの代表であるポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン、厚さ30μm)を使用した。厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを採取した。また、同サイズのポリイミドフィルムを採取した。濃度3.0重量%で見掛け粘度25000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、ポリイミドフィルムを重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ1.03mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材とポリイミドフィルムのラミネート製品を得た。
【0028】
(実施例5)
前記方法にならって作製した無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材と、金属シート基材(金属箔)とを面接合した。
金属箔には、代表的な金属箔であるアルミニウム箔(市販品、40μm)を使用した。厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを採取した。また、同サイズのアルミニウム箔を採取した。濃度3.0重量%で見掛け粘度25000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、アルミニウム箔を重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ1.04mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材とアルミニウム箔のラミネート製品を得た。
【0029】
(従来例1)
従来の無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合した。
従来の無機系接着剤として、珪酸ナトリウム溶液(昭和化学製、1号品)を使用した。厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを2枚採取した。見掛け粘度5000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、もう1枚の繊維質多孔質基材を重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ2.0mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士のラミネート製品を得た。
【0030】
(従来例2)
従来の無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材と、合成樹脂シート基材(合成樹脂フィルム)とを面接合した。
従来の無機系接着剤として、珪酸ナトリウム溶液(昭和化学製、1号品)を使用した。 合成樹脂フィルムには、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン、厚さ30μm)を使用した。厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを採取した。また、同サイズのポリイミドフィルムを採取した。見掛け粘度5000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、ポリイミドフィルムを重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ1.03mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材とポリイミドフィルムのラミネート製品を得た。
【0031】
(従来例3)
従来の無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材と、金属シート基材(金属箔)とを面接合した。
従来の無機系接着剤として、珪酸ナトリウム溶液(昭和化学製、1号品)を使用した。 金属箔には、アルミニウム箔(市販品、40μm)を使用した。厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを採取した。また、同サイズのアルミニウム箔を採取した。見掛け粘度5000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、アルミニウム箔を重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ1.04mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材とアルミニウム箔のラミネート製品を得た。
【0032】
(比較例1)
前記方法にならって作製した無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合した。
厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを2枚採取した。濃度1.5重量%で見掛け粘度1000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、もう1枚の繊維質多孔質基材を重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ2.0mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士のラミネート製品を得た。
【0033】
(比較例2)
前記方法にならって作製した無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合した。
厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを2枚採取した。濃度2.0重量%で見掛け粘度6000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、もう1枚の繊維質多孔質基材を重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ2.0mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士のラミネート製品を得た。
【0034】
(比較例3)
前記方法にならって作製した無機系接着剤を用いて、前記方法にならって作製した無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合した。
厚さ1.0mmの繊維質多孔質基材から、300mm×300mmサイズのシートを2枚採取した。濃度4.0重量%で見掛け粘度70000cpsの無機系接着剤50gをナイフコーターで繊維質多孔質基材の片面に均一に塗布した後、もう1枚の繊維質多孔質基材を重ね合わせ、貼り付けた。直ちに105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、厚さ2.0mmの無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士のラミネート製品を得た。
【0035】
次に、上記にて得られた実施例1〜5、従来例1〜3、比較例1〜3の無機系接着剤およびラミネート製品について、以下の方法により評価試験を行った。結果を、表1および2に示す。
〈粘度測定〉
BM型粘度測定器を用い、25℃、6rpmの速度条件で、無機系接着剤の粘度を測定した。
〈耐熱評価試験〉
350℃の炉内にラミネート製品を30分間入れた後、ソリ、着色などの外観形状を観察した。
〈接着強度評価試験〉
面接合する2つの基材から25mm×150mmのサイズを採取し、2枚の試料を準備する。無機繊維主体の繊維質多孔質基材の試料の片面の長さ方向の端縁から100mmまでの全面に接着剤を1.4g量塗布し、25mm×100mmの塗布面領域と25mm×50mmの非塗布面領域を形成した後、該塗布面の上に、もう1枚の試料を長さ方向を同じにして長さ方向に50mmのみずらすように、前記塗布面領域(25mm×100mm)のみが重なるようにして張り合わせ、圧着する。その後105℃の熱風乾燥機中で乾燥させて、測定用試料を作製する。引張試験機を用いて、測定用試料の張り合わせ部位ではない2枚の各試料の端部をチャックに掴んで引張試験を行い、剥離強度を求める。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表1〜2の結果から次のことが言える。
(1)本発明の実施例1〜3の無機系接着剤は12000〜40000cpsとコロイド状の高い粘度を示すため、無機繊維主体の繊維質多孔質基材に塗布しても多孔質基材の内部に浸透せず、繊維質多孔質基材同士を容易かつ効率的かつ良好に接着できる。実施例1〜3のラミネート製品に350℃の熱を加えても、不燃材のため、熱変形、変色などは生じない。また収縮、膨張によるソリの発生は見られない。また、接着強度は10〜13N/25mmの範囲であり、これは同じ厚さ2.0mmのラミネートしていない単体のガラス繊維質多孔質基材と同等の強度であり、十分な接着ができていることがわかる。
(2)比較例1〜3の無機系接着剤はそれぞれ、1000、6000、70000cpsの粘度範囲であるが、比較例1〜2は、無機繊維主体の繊維質多孔質基材に塗布すると、速やかに内部に接着剤が浸透して、接着効果が低減することが確認される。比較例3は、逆に粘度が高すぎるため、硬くなり、均一に塗布することが困難で、接着剤を全面に塗布できていない。加熱による熱変形、変色、ソリなどは見られないが、接着強度は大幅に低下し、2〜3N/25mmとなり、実用に適さない結果である。
(3)従来例1は、従来の無機系接着剤である珪酸ソーダ(水ガラス)を用いて繊維質多孔質基材同士の接着性を検証した例であるが、接着剤は原液でも粘度が5000cpsと低いため、接着剤は多孔質基材内部に浸透して、接着させる界面には僅かにしか残らない。加熱による熱変形、変色、ソリなどは見られないが、接着強度は比較例1〜2より小さくなり、1N/25mm程度と実用に適さない。
(4)実施例4と従来例2は、無機繊維主体の繊維質多孔質基材とポリイミドフィルムの接着性を比較したものであるが、実施例4の無機系接着剤は、多孔質基材の内部に浸透しないので、ポリイミドフィルムと接着ができている。従来例2は、僅かに接着ができているが、不十分な接着強度を示している。実施例4は、加熱による熱変形、変色、ソリなどはないが、従来例2は、乾燥して接着している部分が硬いSiOガラス構造のため、ポリイミドフィルムの熱膨張を吸収できず、ソリが発生している。
(5)実施例5と従来例3は、無機繊維主体の繊維質多孔質基材とアルミニウム箔の接着性を比較したものであるが、実施例5の無機系接着剤は、多孔質基材の内部に浸透しないので、アルミニウム箔と接着ができている。従来例3は、僅かに接着ができているが、不十分な接着強度を示している。実施例5は、加熱による熱変形、変色、ソリなどはないが、従来例3は、乾燥して接着している部分が硬いSiOガラス構造のため、アルミニウム箔の熱膨張を吸収できず、ソリが発生している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を面接合するための無機系接着剤であって、自己造膜性を有した膨潤性層状粘土鉱物を分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液であり、無機酸化物ゾル、水ガラス、リン酸塩からなる無機バインダ、ならびに、有機バインダを実質的に含有していないことを特徴とする無機系接着剤。
【請求項2】
前記膨潤性層状粘土鉱物は、スメクタイト族粘土鉱物、スメクタイト族粘土鉱物を主体とした粘土鉱物、マイカより選択される1種または2種以上のものであることを特徴とする請求項1記載の無機系接着剤。
【請求項3】
前記膨潤性層状粘土鉱物は、天然または合成のスメクタイト族粘土鉱物であることを特徴とする請求項1記載の無機系接着剤。
【請求項4】
前記膨潤性層状粘土鉱物は、合成スメクタイトであることを特徴とする請求項1記載の無機系接着剤。
【請求項5】
無機繊維主体の繊維質多孔質基材と、金属シート基材または合成樹脂シート基材とを面接合するための無機系接着剤であって、自己造膜性を有したスメクタイト族粘土鉱物からなる膨潤性層状粘土鉱物を分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液であり、無機酸化物ゾル、水ガラス、リン酸塩からなる無機バインダ、ならびに、有機バインダを実質的に含有していないことを特徴とする無機系接着剤。
【請求項6】
前記膨潤性層状粘土鉱物は、合成スメクタイトであることを特徴とする請求項5記載の無機系接着剤。
【請求項7】
前記溶液は、前記膨潤性層状粘土鉱物と無機粉体を分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液であることを特徴とする請求項5または6記載の無機系接着剤。
【請求項8】
無機繊維主体の繊維質多孔質基材とフッ素樹脂シート基材を面接合するための無機系接着剤であって、自己造膜性を有したスメクタイト族粘土鉱物からなる膨潤性層状粘土鉱物と無機粉体とフッ素樹脂エマルジョンを分散させたコロイド状のチキソトロピー性を有する溶液であり、無機酸化物ゾル、水ガラス、リン酸塩からなる無機バインダ、ならびに、有機バインダを実質的に含有していないことを特徴とする無機系接着剤。
【請求項9】
前記膨潤性層状粘土鉱物は、合成スメクタイトであることを特徴とする請求項8記載の無機系接着剤。
【請求項10】
前記溶液は、粘度が10000〜50000cpsであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の無機系接着剤。
【請求項11】
前記溶液は、固形分として、前記膨潤性層状粘土鉱物を1〜5重量%含むことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の無機系接着剤。
【請求項12】
前記溶液は、固形分として、前記膨潤性層状粘土鉱物を1〜5重量%、前記無機粉体を0.5〜10重量%含むことを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の無機系接着剤。
【請求項13】
前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ2mm以下、坪量350g/m以下のシートであることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤。
【請求項14】
前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ1mm以下、坪量200g/m以下のシートであることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤。
【請求項15】
前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ0.5mm以下、坪量100g/m以下のシートであることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤。
【請求項16】
無機繊維主体の繊維質多孔質基材同士を、請求項1〜4、10、11の何れか1項に記載の無機系接着剤を用いて、面接着したことを特徴とするラミネート製品。
【請求項17】
無機繊維主体の繊維質多孔質基材と、金属シート基材または合成樹脂シート基材とを、請求項5〜7、10〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤を用いて、面接着したことを特徴とするラミネート製品。
【請求項18】
無機繊維主体の繊維質多孔質基材とフッ素樹脂シート基材とを、請求項8〜12の何れか1項に記載の無機系接着剤を用いて、面接着したことを特徴とするラミネート製品。
【請求項19】
前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ2mm以下、坪量350g/m以下のシートであることを特徴とする請求項16〜18の何れか1項に記載のラミネート製品。
【請求項20】
前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ1mm以下、坪量200g/m以下のシートであることを特徴とする請求項16〜18の何れか1項に記載のラミネート製品。
【請求項21】
前記繊維質多孔質基材は、前記無機繊維を主体として湿式抄造した厚さ0.5mm以下、坪量100g/m以下のシートであることを特徴とする請求項16〜18の何れか1項に記載のラミネート製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−51998(P2012−51998A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194545(P2010−194545)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】