説明

無線テスト

テストシステムは、電子デバイスと通信する際に介するシミュレートされた無線チャネルを有するエミュレータ418を備える。該テストシステムはエミュレータ418に結合可能な複数のアンテナ素子402〜416を備え、エミュレータ418は、無反響室内の複数のアンテナ素子402〜416のうちの少なくとも2つのアンテナ素子402〜416を用いて、シミュレートされた無線チャネルのパスの信号のビームを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無反響室(電波暗室)におけるデバイスの無線テストに関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数信号が送信機から受信機に送信されるとき、信号は異なる到来角、信号遅延、及び電力を有する1又は複数のパスに沿った無線チャネルにおいて伝播し、これによって受信信号において異なる持続時間及び強度のフェージングが生じる。さらに、他の送信機によって生じた雑音及び干渉が、無線接続と干渉する。
【0003】
送信機及び受信機は、実際の環境をエミュレートする無線チャネルエミュレータを用いてテストすることができる。デジタル無線チャネルエミュレータにおいて、チャネルは通例、FIRフィルタ(有限インパルス応答フィルタ)を用いてモデル化される。FIRフィルタは、異なる遅延で遅延された印加された信号をチャネル係数、すなわちタップ係数を用いて重み付けし、重み付けされた信号成分を合算することによって、チャネルモデルと該信号との間の畳み込みを生成する。チャネル係数は、実際のチャネルの時間的挙動に対応するための時間の関数である。従来の無線チャネルエミュレータのテストは、送信機及び受信機がケーブルを介して共に結合されるように、伝導接続を介して実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加入者端末と無線システムの基地局との間の通信は、OTA(無線)テストを用いてテストすることができる。テストにおいては、無反響室において、エミュレータの複数のアンテナが実際の加入者端末を取り囲んでいる。基地局に接続されるか又は基地局の役割を果たす場合があるエミュレータが、チャネルモデルに従って加入者端末と基地局との間のパスをエミュレートする。テストにおいて、パスの方向はアンテナの方向に依存し、このためパスの方向が限定されるので、より良好なOTAテスト解決策が必要とされる。
本発明の目的は、改善された解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、エミュレータのシミュレートされた無線チャネルを通じて、テストを受けている電子デバイスと通信する方法が提供される。この方法は、無反響室内の前記エミュレータに結合された複数のアンテナ素子のうちの少なくとも2つのアンテナ素子を用いて、シミュレートされた無線チャネルのパスの信号のビームを形成することをさらに含む。
【0006】
本発明の別の態様によれば、前記電子デバイスと通信する際に介在するシミュレートされた無線チャネルを有するエミュレータを備えるテストシステムが提供される。このテストシステムは、前記エミュレータに接続可能な複数のアンテナ素子を備え、前記エミュレータは、無反響室内の前記複数のアンテナ素子の少なくとも2つのアンテナ素子を用いて、シミュレートされた無線チャネルのパスの信号のビームを形成するように構成される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、エミュレータのシミュレートされた無線チャネルを通じて、テストを受けている電子デバイスと通信するためのコンピュータプロセスを実行するための命令のコンピュータプログラムを符号化するコンピュータプログラム製品が提供される。前記プロセスは、無反響室内の前記エミュレータに結合された複数のアンテナ素子の少なくとも2つのアンテナ素子を用いて、シミュレートされた無線チャネルのパスの信号のビームを形成することを含む。
【0008】
本発明によりいくつかの利点が提供される。パスの方向をより自由に制御することができ、また、DUTのアンテナの影響をテスト内に含ませることができる。さらに、複雑な無線チャネルシナリオをモデル化することができる。
以下において、実施形態及び添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】無線信号の伝播を示す図である。
【図2】受信ビームの電力方位スペクトルを示す図である。
【図3】送信ビームの電力方位スペクトルを示す図である。
【図4】OTAテストチャンバにおける測定構成を示す図である。
【図5】アンテナ素子によってモデル化されるビームを示す図である。
【図6】アンテナ素子のグループ及び関連するアンテナグループ切替えネットワークを示す図である。
【図7】アンテナ素子のグループによって取り囲まれたDUTを示す図である。
【図8】MIMO構成におけるアンテナの遅延の制御を表す図である。
【図9】OTAチャンバにおけるアンテナの遅延の制御を表す図である。
【図10】方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、送信機と受信機との間の無線信号の伝播を示している。送信機100は、少なくとも1つのアンテナ素子104〜110からなるアンテナ102を備えている。アンテナは、たとえば、ULA(均一線形アレイ)アンテナとすることができ、ここでアンテナ素子間の間隔は一定であり、たとえば無線信号の波長の半分である。この例において、送信機100は無線システムの基地局である。それに応じて、受信機112は少なくとも1つのアンテナ素子116〜122からなるアンテナ114を備えている。この例では、受信機112は無線システムの加入者端末である。送信機100が無線信号を送信するとき、送信ビーム124は角度φに向けられ、その角度広がりはδφとなり、これはxδφstdである。ここで、xは1以上の実数であり、δφstdは角度φの標準偏差である。送信ビーム124は少なくとも1つのクラスタ126、128にぶつかる場合があり、該クラスタはその送信ビームの放射を反射及び/又は散乱する。各クラスタ126、128は複数のアクティブ領域1260〜1264、1280〜1284を有し、これらの領域はクラスタ126、128において主に反射及び/散乱する。クラスタ126、128は固定であっても移動していてもよく、クラスタ126、128は、建物、電車、山等のような、自然物体又は人工物体とすることができる。アクティブ領域は物体上の何らかのより精緻な構造的特徴であってもよい。
【0011】
反射及び/又は散乱されたビームは、受信機112のアンテナ114に向けられる。アンテナ114は受信角ψを有し、その角度広がりはδψとなり、これはyδψstdである。ただし、yは1以上の実数であり、δψstdはψの標準偏差である。クラスタ126から反射及び/又は散乱されたビーム130は、次に受信される。同様に、アンテナ114は受信角ψからのビームも有し、その角度広がりはδψ2となる。送信機100から少なくとも1つのクラスタ126、128を介した受信機112への伝播によって、見通し線に沿って一直線に進む信号に対して、さらなる遅延が生じる。
【0012】
無線チャネルにおけるクラスタ126、128は、マルチパス伝播を生じさせる。パス(経路)及びクラスタ126、128は、1つの受信パスが1つのクラスタから来るような対応を有すると近似することができる。このため、無線チャネルを、クラスタ電力、遅延、公称AoA(到来角)及びAoD(発射角)、並びに到着端及び離脱端の双方におけるクラスタの角度広がりによって記述することができる。さらに、受信アンテナアレイ及び送信アンテナアレイに関する情報が必要とされる。情報は、アンテナアレイジオメトリ及びアンテナフィールドパターン(ビーム)のパラメータ値を含む。加入者端末速度ベクトル及び/又はクラスタドップラ周波数成分も必要とされる場合がある。
【0013】
以下の表1は、都市環境における無線チャネルのクラスタ化された遅延線モデルの例を表している。クラスタ1及び3は、異なる遅延及び電力を有する3つのアクティブ領域を有する。
【表1】

【0014】
ASD(発射角度広がり)は、全てのクラスタに関して一定であると仮定することができる。この例ではASD=2°である。それに応じて、ASA(到来角度広がり)を全てのクラスタに関して一定であると仮定することができる。この例ではASA=15°である。加えて、XPR(交差偏波電力比)も全てのクラスタに関して一定であると仮定することができる。この例ではXPR=7dBである。これらは、異なるクラスタに関して異なることもできる。
【0015】
無線チャネルのインパルス応答推定値Hu,s,n(t,τ)は、以下のような数式で表すことができる。
【数1】

ここで、Ftx,sは送信アンテナフィールドパターン(すなわち送信ビーム)であり、Frx,uは受信アンテナフィールドパターン(すなわち受信ビーム)であり、dsはULA送信アンテナにおけるアンテナ素子間の距離であり、duはULA受信アンテナにおけるアンテナ素子間の距離であり、kは波数(k=2π/λ、λ:無線信号の波長)であり、Pnはクラスタ電力を意味し、Mはクラスタ内のアクティブ領域の数を意味し、mはアクティブ領域のインデックスであり、nはクラスタのインデックスであり、Φn,mは散乱体n,mの定数の位相項であり、υn,mはインデックスn,mを有するアクティブ領域のドップラ周波数であり、τは遅延である。
【0016】
インデックスn,mを有するアクティブ領域のドップラ周波数は以下のように表すことができ。
【数2】

ここで、頂部にバー付きのvは速度ベクトルであり、||v||(ただし、vは頂部にバー付き)は、アクティブ領域と受信機との間の相対速度である。
【0017】
式(1)におけるインパルス応答推定は、受信アンテナが全方向性であると仮定したとき、以下の式(3)に単純化することができる。
【数3】

【0018】
図2は、5つのクラスタからの受信ビームの電力方位スペクトルを示している。図2において、x軸は度単位の角度であり、y軸はデシベル単位の電力である。5つのビーム、200、202、204、206、及び208は、異なる到来角で受信される。ビーム200、202、204、206、及び208は、異なる時点において受信され、すなわち、それらのうちの少なくとも1つが他のビームに対して異なる遅延を有している。
【0019】
図3は、図2の例による同じ5つのクラスタに対する送信ビームの電力方位スペクトルを示している。図3において、x軸は度単位の角度であり、y軸はデシベル単位の電力である。5つのビーム300、302、304、306、及び308は、わずかに異なる発射角で送信される。これは、反射及び/又は散乱するクラスタは角度においてわずかに分散しているだけであるからである。
【0020】
図4は、OTAテストチャンバを表している。テストチャンバは無反響室である。加入者端末等のDUT400は、アンテナ素子402、404、406、408、410、412、414、及び416に取り囲まれ、これらのアンテナは、たとえばEB(Elektrobit)Propsim(登録商標)C8とすることができるエミュレータ418に接続される。エミュレータ418は、プロセッサ、メモリ、及び適切なコンピュータプログラムを備えている。この例において、45度の一定の角度だけ離されて円内に8つのアンテナ素子が存在する。通常、少なくとも2つのアンテナ素子402〜416が存在し、相互に角Δθだけ離れている。少なくとも3つのアンテナ素子402〜416が存在する場合、分離角Δθは任意の2つの隣接するアンテナ素子402〜416について同じであっても異なっていてもよい。アンテナ素子402〜416はDUT400から同じ距離にあっても異なる距離にあってもよく、アンテナ素子402〜416は、全角度又は全立体角内に配置される代わりに、セクタ内にのみ配置されてもよい。DUT400はアンテナ内に1又は複数の素子を有することもできる。
【0021】
DUT400との無線通信によって、アンテナ設計、偏波、及び配置の効果を、パス方向がテスト内に自由に含まれ得るようにテストすることが可能になる。これは、エミュレータ418とDUT400との間でケーブル接続が用いた場合、可能でない。
エミュレータ418は、テストのためのチャネルモデルを有する。チャネルモデルは、テストを遂行する人物によって選択することができる。さらに、干渉及び雑音を、所望の形態、所望の程度で、テストに入力することができる。用いられるチャネルモデルは、実際の無線システムからの記録されたチャネルに基づくプレイバックモデルであってもよく、人工的に生成されたモデルであってもよく、プレイバックモデル及び人工的に生成されたモデルを組み合わせたものであってもよい。
【0022】
ここで、エミュレータ418が、無線システムの基地局に結合されているか、又は無線システムの基地局の役割を果たし、アンテナ素子402〜416が、無線システムの受信加入者端末の役割を果たすDUT400に送信していると仮定する。DUTアンテナ特性は未知であり、その情報は以下の例で無視することができると仮定する。OTAアンテナ素子402〜416は、DUTからの方向の角度θkにあると仮定し、ここでkは1,...,Kのアンテナ素子の数である。アンテナ素子402〜416の角度間隔は一定とし、θk+1−θk=Δθである。
【0023】
エミュレータ418における幾何学的チャネルモデルは、OTAアンテナ素子402〜416にマッピングすることができる。エミュレータ418は基地局からの送信放射がクラスタにぶつかる状況をシミュレートする。エミュレータ418は、各クラスタから反射及び/又は散乱されたビームも形成し、離脱電力及びクラスタの遅延を、少なくとも1つのアンテナ素子402〜416に適切に分割する。このため、アンテナ素子402〜416は、クラスタの反射及び/又は散乱されたビームを再生するように制御される。
【0024】
多くの場合、クラスタから反射及び/又は散乱されたビームを表すビームの角度は、たとえば1度とすることができる閾値よりも大きくアンテナ素子402〜416の角度θkと異なる。そして、そのようなビームは、少なくとも2つのアンテナ素子402〜416を用いて送信することができる。
【0025】
一実施形態では、シミュレートされたクラスタの電力は、アンテナ角θk及びクラスタ角ψnに基づいて2つのアンテナ素子間で分割することができる。クラスタ角ψに最も近いアンテナ素子kの角度θkを、以下の数式に従って求めることができる。
【数4】

ここで、minは、θjの全ての値の中でのminの式の最小値を表し、intは、このintの除算式の整数値(0を含む)を表す。kの値は
【数5】

である。このとき、第2のアンテナ素子k+1は角度θk+Δθ=θk+1を有するアンテナ素子である。したがって、選択されたアンテナ素子は、アンテナ素子のうちの、主にクラスタから反射及び/又は散乱されたビームがDUT400に関するアンテナ素子とすることができる。
【0026】
アンテナ素子402〜416毎の重みwnk+iは、以下のように計算される。
【数6】

ここで、iは1又は2であり、kはクラスタnの角度ψnに最も近いアンテナ素子のインデックスである。アンテナ素子kへのクラスタnの電力Pnは、Pk+Pk+1=Pnとなるように重みwn,kを乗算される。
【0027】
DUTの周りの円内に8つのアンテナ素子がある、すなわちK=8及びΔθ=45度であり、単一の基地局アンテナ、単一のクラスタ、クラスタ電力2、AoAψn=37度であると仮定する。アンテナ素子402(アンテナk)の電力Pkは、
【数7】

となる。アンテナ素子404(アンテナk+1)の電力Pk+1は、
【数8】

となる。
【0028】
図5は、計算された電力分割を有するアンテナ素子402、404によって形成されるビーム500を示している。異なるアンテナ素子に供給される信号は、方向電力スペクトルを変更することができるように互いに対してシフトされた位相とすることもできる。位相シフトは、信号の電力及び相対遅延を設定する適切な複素係数でベースバンド信号を重み付けすることによって実行することができる。位相シフトは、無線周波数信号を相互に遅延させることによって実行することもできる。たとえば、所望の遅延をデジタル遅延のバンク(たとえばデジタル有限インパルス応答フィルタ構造)から適切に選択することができる。シミュレートされた無線チャネルの異なるパスの異なるビームを異なる時点で形成することができる。シミュレートされた無線チャネルのパスのビームは、異なる時点で形成することができる。シミュレートされた無線チャネルの異なるパスの複数の異なるビームを1つの時点で形成することができる。
【0029】
図6は、アンテナ素子のグループ600を表している。一実施形態では、アンテナはアンテナ素子6002、6004、6006、6008、6010の少なくとも1つのグループ600である。このため、たとえば、アンテナ素子402の代わりに、1つのアンテナ素子だけでなくいくつかの素子6002、6004、6006、6008、6010のグループが存在する。各アンテナ素子402〜416は、たとえば5つの素子を含む。通常、アンテナ素子402〜416の代わりに、アンテナ素子6002、6004、6006、6008、6010の少なくとも2つからなるグループ600であってもよい。
【0030】
OTAアンテナ素子へのマッピングは、単一のOTAアンテナ素子がアンテナ素子6002、6004、6006、6008、6010のグループ600によって置き換えられる場合、より単純でかつより正確になることができる。グループがG個のアンテナ素子6002、6004、6006、6008、6010を含むと仮定する。
【0031】
各アンテナグループ600に供給される素子6002、6004、6006、6008、6010の数は、(クラスタあたりの)チャネルモデル到達方位広がりに基づいて選択することができる。各グループは、単一のエミュレータ出力ポートを備え、各グループのアンテナ素子6002、6004、6006、6008、6010は、スイッチングネットワーク620を用いてエミュレータに接続することができる。スイッチングネットワーク620は、少なくとも1つのスプリッタ、コンバイナ、減衰器、及び/又は移相器を備えることができる。一実施形態では、切替え(すなわち、アンテナ素子の選択)は、全てのグループについて類似であり、測定あたり1回しか行わなくてもよい。
【0032】
ビームコントローラ622は、エミュレータからの信号に基づいて、グループのいくつのアンテナ素子がビームに必要とされるかを制御することができる。通常、最大値までの任意の正の整数個のアンテナ素子を用いることができる。
一実施形態では、奇数個の素子を用いることができる。たとえば、G=5のとき、選択は、チャネルモデルのシナリオに依存して1、3、又は5個の素子とすることができる。チャネルモデル内に狭いクラスタが存在する場合、3個の素子がビームに十分である。クラスタがより広い場合、最大個数の素子をビームに用いることができる。
【0033】
グループ内のアンテナ素子の選択は、以下のように数学的に表すことができる。
【数9】

ここで、Z=G−2jであり、jは0,...,(G−3)/2であり、roundは除算の最も近い整数値(最小値は1)への丸めを意味する。
【0034】
チャネルモデルのOTAアンテナへのマッピングは、以下のルールを適用することによって実行することができる。クラスタの公称方向に依拠してクラスタのそれぞれを適切なエミュレータチャネル及びOTAアンテナ素子にセットする。クラスタnのためのOTAアンテナ素子の選択は、クラスタの公称AoAψnの最も近いOTAアンテナグループ中心θkを採用する。スイッチ622によって、グループ内のアンテナ素子の数、たとえばZ’を選択する。
【0035】
図7は、アンテナ素子のグループ600〜614によって取り囲まれるDUT400を表している。この例では、各グループ600〜614が3つのアンテナ素子を有する。ビーム700はグループ602を用いて形成することができる。8つのグループ及び各グループ内の5つの素子を用いて、円全体を、均一に位置するアンテナ素子でカバーすることができる。クラスタが過度に広く、非常に広いビーム、たとえばΔθよりも広いビームを必要とする場合、クラスタは2つ以上のアンテナグループにマッピングする。
【0036】
ビームを形成するのにいくつかのグループを用いることもできる。グループは、2つのアンテナ素子の選択について式(4)及び式(5)に関して説明したのと同じ方式で、選択することができる。次に、2つのアンテナ素子を選択する代わりに、ビームのためにアンテナ素子の2つのグループを選択することができる。図7において、ビーム700はグループ600及び602を用いて形成することができる。
一実施形態において、固定重みは、たとえば、ガウス又はラプラス形状のクラスタ電力方位スペクトルを再現することができるように、アンテナ素子に対して実現することができる。
【0037】
対応する方式で、少なくとも2つのアンテナ素子を用いた受信が実行される。このため、本方法を、アップリンク及びダウンリンクの双方に適用することができる。ここで、アンテナ素子402〜416がDUT400から信号を受信していると仮定する。少なくとも2つのアンテナ素子402〜416によって受信された信号は、エミュレータ418において、シミュレートされた無線チャネルのパスの信号の受信ビームを形成するために結合される。この結合は、2つのアンテナ素子又はアンテナ素子のグループからの電力を、式(4)及び式(5)において計算された重みwnk+1を用いて重み付けすることを含む。さらに、ビームの形状及び方向は、複素係数又は別の種類の位相シフトを用いて重み付けすることができる。
【0038】
実施形態は、3GPP(第3世代パートナーシッププロフェクト)LTE(ロングタームエボリューション)、WiMAX(マイクロ波アクセス世界的相互運用性)、Wi−Fi、及び/又はWCDMA(広帯域符号分割多元接続)に適用することができる。これも可能な適用形態であるMIMO(多入力多出力)では、信号は本実施形態に対して異なる方式で複数のアンテナ素子に分割される。図8は2つの送信アンテナ素子800、802及び2つの受信アンテナ素子804、806を有するMIMO構成を示している。エミュレータ812の遅延素子814〜820における異なるパスを表す2つの遅延タップ808、810が存在する。各送信アンテナ素子800、802からの信号は、同じ遅延(タップ808、810)で信号を遅延させる遅延素子814〜820に供給される。双方の遅延(タップ808、810)で遅延させる遅延素子814及び820の出力が結合され、アンテナ素子806に供給される。それに応じて、これもまた双方の遅延(遅延タップ808、810)で遅延させる遅延素子816及び818の出力が結合され、アンテナ素子804に供給される。
【0039】
図9は、本実施形態の一例を示している。この例にも、OTAテストの無反響室922内の複数のアンテナ素子のうちの、2つの送信アンテナ素子900、902及び2つの受信アンテナ素子904、906が存在する。エミュレータ912の遅延素子914〜920における異なるパスを表す2つの遅延タップ908、910が存在する。送信アンテナ900からの信号は遅延素子914、916に供給される。遅延素子914は遅延タップ908に対応する遅延で信号を遅延させ、遅延素子916は遅延タップ910に対応する遅延で信号を遅延させる。
【0040】
送信アンテナ902からの信号が遅延素子918、920に供給される。遅延素子918は遅延タップ910に対応する遅延で信号を遅延させ、遅延素子920は遅延タップ908に対応する遅延で信号を遅延させる。同じ遅延(遅延タップ908)で遅延させる遅延素子914及び920の出力が結合され、アンテナ素子906に供給される。それに応じて、同じ遅延(遅延タップ910)で遅延させる遅延素子916及び918の出力が結合され、アンテナ素子904に供給される。このため、異なるアンテナ素子904、906が異なるAoAを表す場合、異なる遅延タップが該異なるアンテナ素子に供給される。
【0041】
図10は、本方法のフローチャートを表している。ステップ1000において、無反響室内のエミュレータに結合された複数のアンテナ素子のうちの少なくとも2つのアンテナ素子を用いて、シミュレートされた無線チャネルのパスの信号のビームが形成される。
【0042】
実施形態は、たとえば、ASIC回路又はVLSI回路(特定用途向け集積回路、超大規模集積)を用いて実現することができる。代替的に又は付加的に、方法ステップの実施形態は、エミュレータのシミュレートされた無線チャネルを通じてテストを受ける電子デバイスと通信するためのコンピュータプロセスを実行するための命令を含むコンピュータプログラムとして実現することができる。エミュレータは、電子回路及び/又はコンピュータプログラムに基づいて、無反響室におけるアンテナ素子の使用及びビームの形成を制御することができる。
【0043】
コンピュータプログラムは、コンピュータ又はプロセッサによって読み出し可能なコンピュータプログラム配布媒体上に格納することができる。コンピュータプログラム媒体は、たとえば、電子、磁気、光、赤外線、若しくは半導体のシステム、デバイス、又は伝送媒体とすることができるがこれらに限定されない。コンピュータプログラム媒体は、以下の媒体、すなわち、コンピュータ可読媒体、プログラムストレージ媒体、記録媒体、コンピュータ可読メモリ、ランダムアクセスメモリ、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ、コンピュータ可読ソフトウェア配布パッケージ、コンピュータ可読信号、コンピュータ可読通信信号、コンピュータ可読印刷物、及びコンピュータ可読圧縮ソフトウェアパッケージのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0044】
本発明を添付の図面による例を参照して説明したが、本発明はそれらに限定されず、添付の特許請求の範囲内で種々に変更することができることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミュレータ(418)のシミュレートされた無線チャネルを通じて、テストを受けている電子デバイス(400)と通信する方法であって、
無反響室内の前記エミュレータ(418)に結合された複数のアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)の少なくとも2つのアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)を用いて、前記シミュレートされた無線チャネルのパスの信号のビーム(500、700)を形成するステップ(1000)
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、該方法は、前記無線チャネルのパスの信号を、送信ビームのために少なくとも2つのアンテナ素子に分割するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、該方法は、前記少なくとも2つのアンテナ素子によって受信するステップと、該少なくとも2つのアンテナ素子の信号を、前記シミュレートされた無線チャネルのパスの信号の受信ビームを形成するために結合するステップとを備えていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、該方法は、異なる時点において前記シミュレートされた無線チャネルの異なるパスの異なるビームを形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、該方法は、異なる時点において前記シミュレートされた無線チャネルの1つのパスの1つのビームを形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、該方法は、1つの時点において前記シミュレートされた無線チャネルの異なるパスの複数の異なるビームを形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、該方法は、パスの方向の角度が2つのアンテナ素子の角度の間にある、該2つのアンテナ素子を探索すること、及び該2つのアンテナ素子を用いて前記ビームを形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、該方法は、奇数個のアンテナ素子を含むアンテナ素子のグループによって前記ビームを形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記電子デバイス(400)と通信する際に介在するシミュレートされた無線チャネルを有するエミュレータ(418)を備えるテストシステムであって、
該テストシステムは、前記エミュレータ(418)に結合可能な複数のアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)を備え、
前記エミュレータ(418)は、無反響室内の前記複数のアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)のうちの少なくとも2つのアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)を用いて、前記シミュレートされた無線チャネルのパスの信号のビーム(500、700)を形成するように構成されている
ことを特徴とするテストシステム。
【請求項10】
請求項9記載のテストシステムにおいて、前記エミュレータ(418)は、前記無線チャネルのパスの信号を、送信ビームのために少なくとも2つのアンテナ素子に分割するように構成されることを特徴とするテストシステム。
【請求項11】
請求項9記載のテストシステムにおいて、前記エミュレータ(418)は、前記少なくとも2つのアンテナ素子によって受信し、該少なくとも2つのアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)の信号を、前記シミュレートされた無線チャネルのパスの信号の受信ビーム(500、700)を形成するために結合するように構成されていることを特徴とするテストシステム。
【請求項12】
請求項9記載のテストシステムにおいて、前記エミュレータ(418)は、異なる時点において前記シミュレートされた無線チャネルの異なるパスの異なるビーム(500、700)を形成するように構成されていることを特徴とするテストシステム。
【請求項13】
請求項9記載のテストシステムにおいて、前記エミュレータ(418)は、異なる時点において前記シミュレートされた無線チャネルの1つのパスの1つのビーム(500、700)を形成するように構成されていることを特徴とするテストシステム。
【請求項14】
請求項9記載のテストシステムにおいて、前記エミュレータ(418)は、1つの時点において前記シミュレートされた無線チャネルの異なるパスの複数の異なるビーム(500、700)を形成するように構成されていることを特徴とするテストシステム。
【請求項15】
請求項9記載のテストシステムにおいて、前記エミュレータ(418)は、パスの方向の角度が2つのアンテナ素子の角度の間にある、該2つのアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)を探索し、該2つのアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)を用いて前記ビーム(500、700)を形成するように構成されていることを特徴とするテストシステム。
【請求項16】
請求項9記載のテストシステムにおいて、前記エミュレータ(418)は、奇数個のアンテナ素子を含むアンテナ素子(6002〜6010)のグループによってビーム(500、700)を形成するように構成されていることを特徴とするテストシステム。
【請求項17】
エミュレータ(418)のシミュレートされた無線チャネルを通じて、テストを受けている電子デバイス(400)と通信するためのコンピュータによるプロセスを実行するための命令のコンピュータプログラムを符号化するコンピュータプログラム製品であって、前記プロセスは、
無反響室内の前記エミュレータ(418)に結合された複数のアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)のうちの少なくとも2つのアンテナ素子(402〜416、6002〜6010)を用いて、前記シミュレートされた無線チャネルのパスの信号のビーム(500、700)を形成するステップ
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
請求項17記載のコンピュータプログラム製品において、前記プロセスは、前記無線チャネルのパスの信号を、送信ビームのために少なくとも2つのアンテナ素子に分割するステップを含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項17記載のコンピュータプログラム製品において、前記プロセスは、前記少なくとも2つのアンテナ素子によって受信するステップと、該少なくとも2つのアンテナ素子の信号を、前記シミュレートされた無線チャネルのパスの信号の受信ビームを形成するために結合するステップとを含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
請求項17記載のコンピュータプログラム製品において、前記方法は、異なる時点において前記シミュレートされた無線チャネルの異なるパスの異なるビームを形成するステップを含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
請求項17記載のコンピュータプログラム製品において、前記プロセスは、異なる時点において前記シミュレートされた無線チャネルの1つのパスの1つのビームを形成するステップを含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
請求項17記載のコンピュータプログラム製品において、前記プロセスは、1つの時点において前記シミュレートされた無線チャネルの異なるパスの複数の異なるビームを形成するステップを含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
請求項17記載のコンピュータプログラム製品において、前記プロセスは、パスの方向の角度が2つのアンテナ素子の角度の間にある、該2つのアンテナ素子を探索するステップと、該2つのアンテナ素子を用いて前記ビームを形成するステップとを含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項24】
請求項17記載のコンピュータプログラム製品において、前記プロセスは、奇数個のアンテナ素子を含むアンテナ素子のグループによって前記ビームを形成するステップを含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項25】
請求項17記載のコンピュータプログラム製品において、該コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体、プログラムストレージ媒体、記録媒体、コンピュータ可読メモリ、コンピュータ可読ソフトウェア配布パッケージ、コンピュータ可読信号、コンピュータ可読通信信号、及びコンピュータ可読圧縮ソフトウェアパッケージのうちの少なくとも1つを含む配布媒体において配布されることを特徴とするコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−504886(P2012−504886A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529588(P2011−529588)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050554
【国際公開番号】WO2010/040887
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(507237945)
【Fターム(参考)】