説明

無線測定装置、および無線温度測定システム

【課題】被測定物に取り付けられたセンサユニットの周波数特性を効率よく測定する無線計測装置を提供する。
【解決手段】無線測定装置は、被測定物40に取り付けられたセンサユニット10の周波数特性を測定する無線測定装置であって、圧電共振子11を有するセンサユニット10と、センサユニット10と回路網を形成するためのアンテナ20と、前記回路網に周波数を変化させた高周波電力を供給し、前記回路網の反射電力強度の周波数特性を測定する測定手段30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子などの電気的共振素子を利用した無線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度に対してその共振周波数が大きく変化する水晶振動子を圧電共振子として使用した無線温度測定装置があり、水晶振動子にコイルを並列接続した素子を温度センサユニットとして使用している。この装置においては、断続的に送信側から放射される電磁波を温度センサユニットが受信し、電磁波の周波数が温度センサユニットの発振周波数と一致する場合に、その周波数が共振周波数となり、その共振周波数の電磁波を減衰振動波として温度センサユニットが放射する。無線温度測定装置は、この放射される減衰振動波を受信して、その周波数を温度に換算することにより温度測定を行うものである(例えば非特許文献1)。
【0003】
またLC共振回路をタグとして使用し、その共振回路から放射される減衰振動波を利用する物品検出装置および識別無線タグシステムがある(例えば特許文献1,特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−134729号公報
【特許文献2】特開2009−205448号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】東京電波株式会社発行のカタログ「エコー水晶温度計」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1または特許文献1−2において、温度センサ(またはタグ)からの減衰振動波を受信して、その周波数から必要とする温度などの情報を得る場合、送受信アンテナの設置環境により、送信電磁波および温度センサ(またはタグ)からの減衰振動波の強度が大きく変化し、計測に必要十分な強度の減衰振動波を得られないことが問題であった。
【0007】
そこで本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、本発明の目的は、厳しい電磁環境下において共振回路を備えたセンサユニットの共振周波数を効率よく検知することで応用範囲の広い無線計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による無線測定装置は、被測定物に取り付けられたセンサユニットの周波数特性を測定する無線測定装置であって、
共振回路または圧電共振子を有するセンサユニットと、
前記センサユニットと回路網を形成するためのアンテナと、
前記回路網に周波数を変化させた高周波電力を供給し、前記回路網の反射電力強度の周波数特性を測定する測定手段と、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明による無線測定装置は、前記センサユニットと前記アンテナとにより等価的に直列共振回路を形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明による無線測定装置は、前記センサユニットが、圧電共振子とコイルとを並列接続した回路を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明による無線測定装置は、前記センサユニットが、温度によって発振周波数が変化する圧電共振子を備えた温度センサであって、
前記測定手段は、前記圧電共振子の温度によって変化する発振周波数から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する手段を有することを特徴とする。
【0012】
本発明による無線温度測定システムは、被測定物に取り付けられたセンサユニットを用いて被測定物の温度測定を行う無線測定システムであって、
温度によって発振周波数が変化する圧電共振子を有するセンサユニットと、
前記センサユニットと回路網を形成するためのアンテナと、
前記回路網に周波数を変化させた高周波電力を供給し、前記回路網の反射電力強度の周波数特性から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する温度計測装置と、
を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明による無線温度測定システムは、前記センサユニットと前記アンテナとにより等価的に直列共振回路を形成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明による無線温度測定システムは、前記センサユニットが、圧電共振子とコイルとを並列接続した回路を有することを特徴とする。
【0015】
本発明による温度測定プログラムは、温度によって発振周波数が変化する圧電共振子を有するセンサユニットを被測定物に取り付け、前記センサユニットと回路網を形成するためのアンテナを用いて被測定物の温度測定を行う温度計測装置のプログラム制御プロセッサを機能させるプログラムであって、
前記回路網に周波数を変化させた高周波電力を供給し、前記回路網の反射電力強度の周波数特性から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する温度計測機能を前記プログラム制御プロセッサに機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回路網に供給する高周波電力の周波数を変化させ、高周波電力がセンサユニットに吸収される際の周波数(センサユニットの共振周波数)を高周波発生元から得ることが可能であるため、センサユニットからの共振減衰振動波を検出する必要がなくなり、安定した周波数計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る無線測定装置の全体構成の一例を示した模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る無線測定装置の測定手段が受信する反射電力強度の周波数特性をグラフ化した模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る無線測定システムの全体構成の一例を示した模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る無線測定システムで用いる温度計測装置の構成の一例を示したブロック図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る無線測定装置の測定手段が受信する反射電力強度の周波数特性を実験により測定したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施形態により限定されるものではない。
【0019】
1.第1実施形態
(1)無線測定装置の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る無線測定装置の全体構成の一例を示した模式図である。図1に示すように、無線測定装置は、被測定物40に取り付けられたセンサユニット10の周波数特性を測定する無線測定装置であって、圧電共振子11を有するセンサユニット10と、センサユニット10と回路網を形成するためのアンテナ20と、前記回路網に周波数を変化させた高周波電力を供給し、前記回路網の反射電力強度の周波数特性を測定する測定手段30とを有する構成としている。
【0020】
さらに無線測定装置は、センサユニット10とアンテナ20とにより等価的に直列共振回路50を形成するようにしている。
【0021】
測定手段30は、直列共振回路50に高周波電力を供給し(31)、アンテナ20から高周波電力が供給されると、電磁誘導によって非接触でセンサユニット10の共振回路を共振させることができる。センサユニット10で共振が発生すると、直列共振回路50で共振が発生し、測定手段30は、コイル21を介してその反射電力を受信して反射電力強度の周波数特性を測定する(32)。ここで、アンテナ20から測定手段30に対して常に反射波を返すような回路設計をしておくことが必要である。
【0022】
直列共振回路50で共振が起きると、その共振周波数の反射電力強度が小さくなるため、無線測定装置は、センサユニット10の共振周波数を反射電力強度の周波数特性から得ることが可能になる。
【0023】
またセンサユニット10は、一例として、圧電共振子11とコイル12とを並列接続した回路を有する。
【0024】
例えば、圧電共振子11は、温度によって発振周波数が変化する特徴を備えている。この特徴を利用して、センサユニット10を温度センサとして使用することが可能である。
【0025】
この場合、測定手段30は、圧電共振子11の温度によって変化する発振周波数から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物40の温度を計測することができる。
【0026】
また上記の説明では、無線測定装置に1個の圧電共振子(センサユニット)を用いた場合について説明しているが、共振周波数が互いに異なる複数個の圧電共振子(センサユニット)を被測定物の複数箇所に設置することで、被測定物の複数箇所の温度を計測することが可能である。
【0027】
以上から、本発明の無線測定装置は、センサユニットからの共振減衰振動波を検出する必要がなくなり、反射電力強度の周波数特性を測定することで安定した周波数計測が可能となる。
【0028】
(2)無線測定装置の動作
次に、被測定物の温度測定を行う無線測定装置の動作について説明する。ここで、圧電共振子11は温度によって発振周波数が変化する特徴を備えているものとする。
【0029】
測定手段30は、直列共振回路50に周波数を変化させた高周波電力を供給し(31)、その反射電力を受信して反射電力強度の周波数特性を測定する(32)。
【0030】
図2に示すように、測定手段30が受信する反射電力は、周波数F1で共振が発生したため、その信号強度が小さくなる。測定手段30は、共振周波数F1を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する。
【0031】
また、被測定物の複数箇所の温度測定を行う場合には、共振周波数が互いに異なる複数個の圧電共振子(センサユニット)を被測定物の複数箇所に設置することで、被測定物の複数箇所の温度を計測することが可能である。
【0032】
(3)実験データ
圧電共振子としてLTGA共振子を用いたLTGA温度センサの場合に、無線測定装置が反射電力強度の周波数特性を測定したデータ(LTGAディップ特性)を図5に示す。図5の上図は、被測定物の温度が所定の温度のときに、共振周波数が8.961745MHzであることを示している。なお横軸の一目盛りは5kHzとしている。次に図5の下図は、被測定物の温度が前記所定の温度よりも高いときに、共振周波数が8.967285MHzであることを示している。すなわち、実験データから、反射電力強度の周波数特性を測定して共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測することが有効であることがわかる。
【0033】
2.第2実施形態
(1)無線測定システムの構成
次に、上記で説明した無線測定装置を用いた無線測定システムについて説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る無線測定システムの全体構成の一例を示した模式図である。図3に示すように、無線測定システムは、温度センサと、ループアンテナと、温度計測装置と、計測用コンピュータとを有している。
【0034】
温度センサは、温度によって発振周波数が変化する圧電共振子と圧電共振子に並列に接続されたコイルとを有しており、複数個の温度センサがループアンテナ近傍に設置されている。
【0035】
温度センサとループアンテナとにより回路網が形成され、ある周波数において等価的に直列共振回路が形成される。
【0036】
温度計測装置は、前記回路網に周波数を変化させた高周波電力を供給し、前記回路網の反射電力強度の周波数特性から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する。
【0037】
計測用コンピュータは、温度計測装置とCOMインターフェースで接続され、温度計測装置に指示を出し、温度計測装置が計測した結果を受取り、その結果を解析/表示する。
【0038】
次に、計測用コンピュータに搭載するソフトウエアについて説明する。温度計測装置は図4に示すような機能ブロックにより構成されており、計測用コンピュータのソフトウエアは、温度計測装置に指示を出し、温度計測装置が計測した結果を受取り、その結果を解析/表示する。
【0039】
計測用コンピュータのソフトウエアは、シリアルインターフェース回路を経由してDDS (Direct Digital Synthesizer)発振器に信号を出力してDDS発振周波数をスイープし、RFパワーアンプ(Radio Frequency Power Amplifier)で適切な出力レベルに増幅し、リターンロスブリッジに加えると、高周波電力がループアンテナに供給される。
【0040】
次に、ループアンテナに設置された温度センサ(例えば、圧電共振子としてLTGA共振子を用いた温度センサ)とループアンテナとで形成された回路網からの反射電力が、ループアンテナとリターンロスブリッジで捉えられ、高周波検波回路で高周波検波後、その直流電圧がDCパネルメータでデジタル値のデータに変換される。変換されたデータは、計測データとして、シリアルインターフェース回路を経由して計測用コンピュータに入力される。
【0041】
計測用コンピュータのソフトウエアは、温度計測装置から計測データを受取り、その計測データを解析し、解析結果を表示する。また、計測用コンピュータのソフトウエアは、温度センサが無い状態でリニアライズ動作を行い測定系の周波数特性を平坦化した後、計測データ(反射電力が最小の時の周波数)を受け取ると、その周波数を温度に換算し、画面上に表示する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、被測定物の温度測定を行う無線測定装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 センサユニット
11 圧電共振子
12 コイル
20 アンテナ
21 コイル
30 測定手段
40 被測定物
50 共振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に取り付けられたセンサユニットの周波数特性を測定する無線測定装置であって、
共振回路または圧電共振子を有するセンサユニットと、
前記センサユニットと回路網を形成するためのアンテナと、
前記回路網に周波数を変化させた高周波電力を供給し、前記回路網の反射電力強度の周波数特性を測定する測定手段と、
を有することを特徴とする無線測定装置。
【請求項2】
前記センサユニットと前記アンテナとにより等価的に直列共振回路を形成することを特徴とする請求項1に記載の無線測定装置。
【請求項3】
前記センサユニットは、圧電共振子とコイルとを並列接続した回路を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線測定装置。
【請求項4】
前記センサユニットは、温度によって発振周波数が変化する圧電共振子を備えた温度センサであって、
前記測定手段は、前記圧電共振子の温度によって変化する発振周波数から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する手段を有することを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の無線測定装置。
【請求項5】
被測定物に取り付けられたセンサユニットを用いて被測定物の温度測定を行う無線測定システムであって、
温度によって発振周波数が変化する圧電共振子を有するセンサユニットと、
前記センサユニットと回路網を形成するためのアンテナと、
前記回路網に周波数を変化させた高周波電力を供給し、前記回路網の反射電力強度の周波数特性から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する温度計測装置と、
を有することを特徴とする無線測定システム。
【請求項6】
前記センサユニットと前記アンテナとにより等価的に直列共振回路を形成することを特徴とする請求項5に記載の無線測定システム。
【請求項7】
前記センサユニットは、圧電共振子とコイルとを並列接続した回路を有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線測定システム。
【請求項8】
温度によって発振周波数が変化する圧電共振子を有するセンサユニットを被測定物に取り付け、前記センサユニットと回路網を形成するためのアンテナを用いて被測定物の温度測定を行う温度計測装置のプログラム制御プロセッサを機能させるプログラムであって、
前記回路網に周波数を変化させた高周波電力を供給し、前記回路網の反射電力強度の周波数特性から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する温度計測機能を前記プログラム制御プロセッサに機能させることを特徴とする温度測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−137737(P2011−137737A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298308(P2009−298308)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(502209796)株式会社福田結晶技術研究所 (17)
【出願人】(000136561)株式会社フルヤ金属 (48)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】