説明

無菌パック米飯の製造方法およびその装置

【課題】製造ライン全体のコストを安価にするともに、十分な殺菌処理を施しながら食感・食味を低下させることのない無菌パック米飯製造方法(装置)を提供することを技術的課題とする。
【解決手段】本発明によると、浸漬殺菌炊飯工程において米粒を加圧及びマイクロ波照射加熱処理することによって米粒の表面部が米粒の内面の硬度よりも硬い外硬内軟芯硬の性状の米飯とし、この米飯を用いて、下流工程の加熱加圧殺菌工程でレトルト殺菌処理して熱水浸漬等の外部方向からの加熱作用を与えて十分な殺菌と仕上げ炊飯をなすことによって、該製品米飯は、米飯の表面部が溶融して軟らかい、いわゆるベチャ飯ではなく、固めで粒感のある食感・食味に優れた無菌パック米飯製品となる。また、本発明の製造方法は、マイクロ波を照射する高額設備の使用が、前記浸漬殺菌炊飯工程だけでよいので、製造ライン全体のコストが安価になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで短時間加熱することで直ちに食べることができる無菌パック米飯(加工包装米飯)を製造する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の加工米飯においては、一人前ずつパックされた加工米飯を電子レンジで数分間加熱するか、又は熱湯中で十数分間加熱するだけで直ちに食べることができるご飯ができあがり、パックのままか又は茶碗に盛り付けて食べることができるものが登場している。これは無菌パック米飯と称される商品で、独身者や共働きの家庭などに普及してきている。
【0003】
従来、この種の無菌パック米飯の製造方法としては、例えば、本出願人による特許文献1及び2の製造方法が知られている。この特許文献1及び2の製造方法(製造ライン)は、耐熱性のある合成樹脂製のトレーに一人前(所定量)の米と浸漬水(炊飯水)の内容物を計量・充填し、前記トレー内の内容物を、加圧及びマイクロ波照射加熱処理によって前記米に吸水処理、殺菌処理及び炊飯処理を同時に行い、さらに、前記トレーの開口部を殺菌済みフィルムで蒸気逃がし孔を形成して被覆シールが行われる。次いで、この仮シールを行ったトレーに再度マイクロ波照射殺菌処理を行った後、前記トレー内の蒸らし処理がなされ、さらに、真空冷却処理、ガス置換処理及び前記通気部の密封シール処理がなされて完成品(無菌パック米飯)が製造されるものである。そして、この製造方法により、浸漬水を米内部に吸水させる浸漬時間を短時間にすることができるとともに、食味の優れた無菌パック米飯を製造することを可能にしている。
【0004】
ところで、無菌パック米飯(加工包装米飯)は保存性を有した米飯にする必要がある。このため、十分な殺菌処理を行うべく、例えば、上記特許文献1及び2の製造方法によって得られた無菌パック米飯を、さらに、例えば特許文献3に開示されているような周知の熱水式の加圧加熱殺菌処理(いわゆるレトルト殺菌処理)をすることもあった。
【0005】
【特許文献1】特開2007−295834号公報
【特許文献2】特開2008−193939号公報
【特許文献3】特公平3−75137
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1及び2の無菌パック米飯製造方法には以下の問題点があった。すなわち、特許文献1及び2の無菌パック米飯製造方法にあっては、前記浸漬・殺菌・炊飯工程及びマイクロ波殺菌工程において、共にマイクロ波を照射するための高額設備が必要であるため、それに伴って製造ライン全体のコストが高額になるという問題点があった。
一方、より十分な殺菌処理を無菌パック米飯に施すために、前述のように、特許文献1及び2の製造方法によって得られた無菌パック米飯に対し、さらに、前記周知の熱水式の加圧加熱殺菌処理(いわゆるレトルト殺菌処理)を施した場合(特許文献3)、殺菌性は十分であるものの、米飯の表面部が溶融して軟らかい、いわゆるベチャ飯(表面がべたついた米飯)となり、食感・食味が共に低下してしまうという問題点があった。
そこで、本発明は、上記問題点にかんがみ、製造ライン全体のコストを安価にするともに、十分な殺菌処理を施しながら食感・食味を低下させることのない無菌パック米飯製造方法を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1では、
所定量の米と炊飯水の内容物を投入して上方を開口した耐熱性のトレーに、浸漬、殺菌、密閉及び炊飯の各処理を施す工程を含んでなる無菌パック米飯の製造方法において、
前記トレー内の内容物を加熱蒸気によって予備加熱処理をする予備加熱工程と、
前記予備加熱処理した前記内容物にマイクロ波照射加熱及び加圧の処理により浸漬・殺菌・炊飯処理をする浸漬殺菌炊飯工程と、
前記浸漬・殺菌・炊飯処理を終えた前記トレー内に前記炊飯水を補充する補充工程と、
前記炊飯水を補充した前記トレーの上方開口部に密閉シール処理をする容器密閉シール工程と、
前記密閉シール処理した前記トレーを蒸気加熱又は熱水加熱を施して加圧殺菌処理をする加熱加圧殺菌工程と、
を順次備えてなる、という技術的手段を講じる。
【0008】
請求項2により、前記予備加熱工程の加熱蒸気処理は、85℃〜95℃の加熱蒸気を、20秒〜30秒間処理する一方、前記浸漬・殺菌・炊飯処理のマイクロ波照射は、内容物の温度が135℃〜145℃になるまで行うとよい。
【0009】
請求項3により、前記浸漬殺菌炊飯工程によって得られる米飯は外硬内軟芯硬の性状のものとするのがよい。
【0010】
請求項4により、
所定量の米と炊き水の内容物を、上方を開口した耐熱性のトレーに投入する投入部と、前記米に炊き水を浸漬する浸漬処理部、前記トレー内の内容物を殺菌する殺菌処理部、前記トレーの開口を殺菌済フィルムで密閉する密閉処理部及び前記トレー内の米を炊飯する炊飯処理部を備えてなる無菌パック米飯の製造装置において、
前記トレー内の内容物を蒸気によって予備加熱する予備加熱部と、
前記予備加熱処理した前記内容物をマイクロ波照射加熱及び加圧によって浸漬、殺菌及び炊飯を行う浸漬殺菌炊飯部と、
前記浸漬処理した前記トレーに前記炊き水を補充する補充部と、
前記炊き水を補充した前記トレーの上方開口部に密閉シールする容器密閉シール部と、
前記密閉シールした前記トレーに蒸気加熱処理又は熱水加熱処理を施しながら加圧殺菌処理をする加熱加圧殺菌部と、
を備える、という技術的手段を講じた。
【0011】
請求項5により、前記予備加熱部は、85℃〜95℃の加熱蒸気を、20秒〜30秒間処理する一方、前記浸漬殺菌炊飯部は、内容物の温度が135℃〜145℃になるまでマイクロ波照射を行うとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無菌パック米飯の製造方法(装置)によると、浸漬殺菌炊飯工程において米粒を加圧及びマイクロ波照射加熱処理することによって米粒の表面部が米粒の内面の硬度よりも硬い、いわゆる外硬内軟芯硬の性状の米飯を得ることができるとともに、この米飯を用いて、更に下流工程の加熱加圧殺菌工程で加熱加圧殺菌処理(レトルト殺菌処理)による熱水浸漬等の外部方向からの加熱作用を与えて十分な殺菌と仕上げ炊飯をなすことによって、該製品米飯は、米飯の表面部が溶融して軟らかい、いわゆるベチャ飯(表面がべたついた米飯)にはならず、固めで粒感のある食感・食味に優れた無菌パック米飯製品にすることができ、例えば、ドライカレーやパエリアなどの調理用にも適したものとなる。
また、本発明の製造方法(製造装置)は、マイクロ波を照射する高額設備の使用が、前記浸漬殺菌炊飯工程だけでよいので、製造ライン全体のコストが安価になる。さらに、単独の浸漬工程が不要な分だけ製造ラインの設置面積を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の無菌パック米飯の製造装置1(製造方法)に係る概略平面図である。前記無菌パック米飯の製造装置1は、図2に示した概略図のように、トレー自動供給部2(トレー自動供給工程)を最上流側に配置し、これに続いて、異物吸引部4(異物吸引工程)、米計量充填部5(米計量充填工程)、水計量充填部6(水計量充填工程)、予備加熱部7(予備加熱工程)、浸漬殺菌炊飯部9(浸漬殺菌炊飯工程)、水計量補充部11(水計量補充工程)及び具材供給部12(具材供給工程)を順次配設し、さらに、トレー移送コンベア8等からなる搬送部、容器密閉シール部17(容器密閉シール工程)及び加熱加圧殺菌部(加熱加圧殺菌工程)23を順次配設してなる。
【0014】
トレー自動供給部2(トレー自動供給工程):
前記トレー自動供給部2は、図1及び図2に示すように、耐熱性があって合成樹脂製のトレー(容器)2cを多数積み重ねるとともに、複数列(例えば、4列)で待機させておくトレー貯留部2aと、該トレー貯留部2aの下部から各列のトレーを1枚ずつ自動で取り出すトレー供給部2bとからなり、横4列状態でトレー2cを連続的にコンベア装置3に供給するように構成してある。該コンベア装置3は、一対のスプロケット3a,3b及び補助スプロケット3c,3dにチェーン3eが巻回されており、該チェーン3eには、トレー受けパレット3f…が間隙をおいて多数取り付けられてある。前記トレー受けパレット3f…は、例えば4個のトレー2c…を1枚のトレー受けパレット3fに横4列、縦1列状態に各保持穴3g(後述)に嵌合・収容可能にしてあり、複数個のトレー2c…を整列させた状態で順次搬送する構成になっている。前記各トレー受けパレット3fには、トレー2cの下部を嵌め込むための保持穴3gが形成されており、トレー2cは、前記保持穴に嵌め込まれた状態でトレー受けパレット3fに収容されて搬送される構造になっている(図3参照)。
【0015】
異物吸引装置4(異物吸引工程):
前記トレー自動供給部2の次の工程には、異物吸引装置4が設けられ、トレー2c内の塵埃や異物を吸引除去できる構成になっている(図1及び図2参照)。
【0016】
米計量充填部5(米計量充填工程):
前記異物吸引装置4の次の工程には、米計量充填部5が設けられる(図1参照)。該米計量充填部5は、トレー2cに所定量の例えば一人前の米(原料)の充填ができるように、高速で計量・排出可能な公知の計量機が構成してある。前記米計量充填部5は、詳細には、図2に示したように、原料である洗米された米を上部の原料ホッパ5aに投入しておき、該原料ホッパ5aの米は、中央の円錐フィーダ5bによって側部に設けられた中間ホッパ5cに供給されて所定量が貯留した後、複数の計量ホッパ5dに順次排出され、次いで前記計量ホッパ5dが、設定重量(所定量)計量した前記米を集合シュート5e、排出バルブ5f、排出ホッパ5gを経て各トレー2cにそれぞれ供給する構成にしてある。前記米計量充填部5に供給する原料は、市販されている無洗米が好ましいが、精白米、胚芽残存率の高い胚芽米、分搗き米及び玄米であってもよい。精白米、胚芽米、分搗き米など洗米が必要なものは、ホッパ5aに投入する前に別途洗米し、洗米後に、米計量充填部5に滞留しないように十分水切りをしておく必要がある。なお、投入する原料は事前に浸漬する必要はない。
【0017】
水計量充填部6(水計量充填工程):
前記米計量充填部5の次の工程には、水計量充填部6を配設する(図1参照)。該水計量充填部6は、図示しない浸漬水供給部からの水をノズル6aからトレー2cに所定量だけ浸漬水として充填するよう構成したものである(図2参照)。そして、前記水計量充填部6は、前記ノズル6aから約80℃の温水の供給ができるように浸漬水を加温する装置(図示せず)が備えてある。なお、水計量充填部6においては、後述する予備加熱部7及び浸漬殺菌炊飯部9における加熱エネルギーを最小限にして加熱効率(生産効率)を向上させるために、必要最低限の浸漬水を供給するようにしてある。
【0018】
予備加熱部7(予備加熱工程):
前記水計量充填部6の次の工程には、予備加熱部7を配設する(図1及び図2参照)。図3に予備加熱部7の側断面図を示す。予備加熱部7は、トレー受けパレット3fの保持穴3gに収容された各トレー2cの内容物(米と浸漬水)を予備加熱する装置によって構成する。予備加熱部7は、加熱ヒータ等で構成してもよいが、本実施例では加熱蒸気を噴出させて前記内容物に当接させる方式を用いた。この加熱蒸気式の予備加熱部7は、図3に示すように、トレー受けパレット3fに保持された各トレー2cの上方開口側に、各トレー2c内の内容物(米と浸漬水)に対して加熱蒸気を噴出する噴出ノズル7a・・・が配設されてある。また、前記各噴出ノズル7a・・・の周囲には、トレー2cの上方開口を覆う形状でなる内側覆部材7b・・・を配設する。さらに、前記各内側覆部材7b・・・の上方側の周囲には、これら内側覆部材7b・・・の全てを覆う外側覆部材7cを配設する。そして、これら噴出ノズル7a・・・、内側覆部材7b・・・及び外側覆部材7cは、前記トレー受けパレット3fが本工程に搬送されたタイミングで、都度、駆動手段7dによって、一体的に上下動するように構成してある。
【0019】
前記予備加熱部7は、前記各トレー2cに加熱蒸気を噴出する際には、図3(a)に示したように、前記駆動手段7dによって、噴出ノズル7a・・・、内側覆部材7b・・・及び外側覆部材7cを一体的に降下させて、各内側覆部材7b・・・は各トレー2cの上方開口部に接近して覆った状態に、また、前記外側覆部材7cは、全てのトレー2cの外周を覆って密閉状態となるように、当該外側覆部材7cの周縁部7eをトレー受けパレット3fの上面に当接できる状態に構成してある。また、前記各内側覆部材7b・・・における開口部には、前記噴出ノズル7a・・・から噴出された加熱蒸気が前記トレー2c内の内容物により均一に供給されるように、蒸気噴風均一化板7fによって閉塞状に構成してある。該蒸気噴風均一化板7fは、図3(b)に示したように、トレー2cの上方開口部よりも大きい板状部材とし、その中央部分には、前記噴出蒸気が通過できる程度の大きさの多数の蒸気孔7g・・・が配設してある。そして、該蒸気孔7g・・・は、前記トレー2cの上方開口部の面積と同じ面積をとなるくらいの数を密集配設し、かつ、これら蒸気孔蒸気孔7g・・・の群の輪郭形状が前記トレー2cの上方開口部の外縁形状と同じ形状となるように配設するのがよい。
【0020】
浸漬殺菌炊飯部9(浸漬殺菌炊飯工程):
前記予備加熱部7の次の工程には、浸漬殺菌炊飯部9を配設する(図1及び図2参照)。前記浸漬殺菌炊飯部9は、トレー2c内の米に浸漬水を浸漬させる浸漬作用、滅菌を行う滅菌作用及び炊飯作用の3つの作用を同時に行う工程設備である。図4に、前記浸漬殺菌炊飯部9の概略断面図が示してある。前記浸漬殺菌炊飯部9は、まず、油圧シリンダー30の昇降動作により、支柱32によって昇降するベース板31を有する。該ベース板31の上面には複数の支持体34・・・を立設し、該支持体34・・・の各先端側は、上下に分割構成された一対の上チャンバー38及び下チャンバー35における、該下チャンバー35の底面側を支持している。前記上チャンバー38と下チャンバー35の接離面(当接面)には、上下をそれぞれ凹状に形成してなる密封空間となるチャンバー40を複数構成し、本実施例においては、搬送されてきた四つのトレー2cをそれぞれ収納可能なように四つを並設した構成にした。前記各チャンバー40は、上方に配設されたマイクロ波発振装置36からのマイクロ波照射を受けることができるように、マイクロ波発振装置36から延設された導波管37が前記上チャンバー38を貫通して連通された構成になっている。
【0021】
前記下チャンバー35は、図4に示すように、該下チャンバー35側におけるチャンバー40の下半割部(前記凹状)上に、トレー受けパレット3fの保持穴に嵌合させたトレー2cが搬送されてきた時点で該パレット3fを挟み込むように上方に押し上げられるようになっており、これにより、各パレット3f(保持穴に嵌合されたトレー2c)が、上チャンバー38側の上半割部(前記凹状)との接合によって形成されるチャンバー40内に密閉状態に保持されるように構成してある。本実施例におけるチャンバー40の配置構成は、前記各パレット3fに並設した4個のトレー受けパレット3f(保持穴に嵌合されたトレー2c)に合わせて4個とした。
【0022】
本実施例(図4)においては、一つのチャンバー40に対しては、二つのマイクロ波発振装置36から3kWの出力のマイクロ波がそれぞれ照射される構造としてある。また、マイクロ波発振装置36の出力は3kWに限定されるものではなく、無菌パック米飯の製造条件により適切な出力に変更すればよい。なお、隣接するマイクロ波発信装置から照射するマイクロ波の周波数を変えるようにすることで、マイクロ波が干渉することを防止することができる。
【0023】
前記各チャンバー40は、内部を加圧可能にするため、図示していないエアーコンプレッサと上チャンバー38を貫通したチャンバー40内との間を圧縮空気送給管42を介して連通してある。該圧縮空気送給管42の配管途中には減圧弁43、電磁弁44及び圧力計45が設けてある。前記上チャンバー38と下チャンバー35の接離面の周縁部にはパッキン41が配設してあり、密閉状のチャンバー40内から圧縮空気が漏れるのを防ぎ、チャンバー40の気密性が維持されるようにしてある。
【0024】
一方、前記各チャンバー40内の加圧空気を抜いて降圧するために、圧縮空気排気管46が前記下チャンバー35を貫通して各チャンバー40内部と連通している。前記圧縮空気排気管46の配管途中には、電磁弁47、スピードコントローラ48及び電磁弁49が配設されており、これら電磁弁47、スピードコントローラ48及び電磁弁49を制御することによりチャンバー40内の圧力を所定の速度で降圧できるようにしてあえる。また、下チャンバー35は油圧シリンダー30の昇降運動により上下方向に動くため、前記圧縮空気排気管46はフレキシブルなものを用いるとよい。
【0025】
水計量補充部11(水計量補充工程):
前記浸漬殺菌炊飯部9の次の工程には、水計量補充部11を配設する(図1及び図2参照)。該水計量補充部11は、各トレー2cに仕上げ炊飯用及び炊飯調整用(米飯の硬さ調整用)の炊飯水を補充するために、炊飯水タンクから所定量の補充炊飯水をノズル11aからトレー2cに供給可能に構成してある。なお、水計量補充部11は、前記水計量充填部6と同様に、前記ノズル11aから約80℃の温水の供給できるように図示しない水の加温装置が備えてある。
【0026】
具材供給部12(具材供給工程)
前記水計量補充部11の次の工程には、具材供給部12を配設する(図1及び図2参照)。該具材供給部12は、図2に示すように、各トレー2c内に各種具材を計量供給するために、具材タンク12aから任意量の具材が計量供給可能に構成してある。
【0027】
なお、具材供給部12のトレー2c排出側とこの後工程となる容器密閉シール部17との間には、トレー移送コンベア8、横送りコンベア13及び押し込み手段29が配設され、具材供給部12から排出された各トレー2c(仮製品)が容器密閉シール部17に移送されるようにしてある。前記押し込み手段29は、移送されてきたトレー2cを容器密閉シール部17に押し出し供給するためのものである(図1及び図5参照)。
【0028】
容器密閉シール部17(容器密閉シール工程)
前記具材供給部12の次の工程には、容器密閉シール部17を配設する(図1及び図5参照)。該容器密閉シール部17は、各チャンバー40内において、トレー2cに対してガス置換して上方開口部を密閉シール処理するものである。容器密閉シール部17は、コンベア装置18を備え、該コンベア装置18の上流側から、仮製品供給部15、仮製品整列部16、放射温度計19、チャンバー24、ローレットシール部21及び容器フランジ冷却部22を順次配設する。前記コンベア装置18は、一対のスプロケット18a,18bにチェーン18cが巻回されており、該チェーン18cには、トレー受けパレット18d…が間隙をおいて多数取り付けられている。前記各トレー受けパレット18d…には、トレー2cを四つ横4列、縦1列状態に並設するための保持穴(図示せず)が四つ並設されている。
【0029】
前記仮製品供給部15は、前記具材供給部12を経て搬送されてきた、内部に浸漬処理済み米、炊飯水及び具材が入ったトレー2c(仮製品)を順次後工程に供給可能な構成になっている。前記仮製品整列部16は、前記仮製品供給部15から供給されたトレー2cを前記トレー受けパレット18d・・・の各保持穴に供給して四つを並設状態に整列させるように構成してある
【0030】
また、前記放射温度計19については、トレー2c内の温度を検知するように構成してある。前記チャンバー24については、前記トレー2cを供給して密閉空間にした当該チャンバー24内を真空状態下のチャンバー24内に窒素ガスや炭酸ガスを充満させてガス置換するとともに、トレー2cの上方開口部を密閉シール包装できるように構成してある。前記ローレットシール部21は、密閉シール包装されたトレー2cのシール面の捲れ防止のために、当該トレー2cのシール面の周縁部をローレットシールするためのものである。さらに、前記容器フランジ冷却部22は、ローレットシールした前記トレー2cのシール面の周縁部を冷却するためのものである。
【0031】
なお、上記製造フローにおいては、各トレー2cは内部に米と浸漬水(炊飯水)が入って上方が開放状態となる区間があり、このままの状態では雑菌などの異物が混入するおそれがあるので、例えば、前記予備加熱部7(予備加熱工程)、浸漬殺菌炊飯部9(浸漬殺菌炊飯工程)、水計量補充部11(水計量補充工程)及び具材供給部12(具材供給工程)、トレー移送コンベア8及び容器密閉シール部17(容器密閉シール工程)を、雑菌などの異物混入を防止するためにクリーンブース10内に配設するのがよい。
【0032】
加熱加圧殺菌部23(加熱加圧殺菌工程<レトルト殺菌>)
前記容器密閉シール部17の次の工程には、加熱加圧殺菌部23を配設する(図1及び図6参照)。該加熱加圧殺菌部23は、前工程で上方開口部が密閉シールされたトレー2cを加熱加圧殺菌部23に入れて殺菌処理する工程である。該加熱加圧殺菌部23は公知の装置(レトルト殺菌装置)を用いる。例えば、(株)日阪製作所製の高温高圧調理殺菌装置(商品名:フレーバーエース)を用いるとよい。前記加熱加圧殺菌部23は、図6に示すように、開閉扉23aを有し室内を密閉状態にできる処理槽23bを備える。そして、該処理槽23bには、加圧空気を密閉室内に供給する加圧空気供給管23cが接続されるほか、密閉室内の加圧空気を排気する排気管23d、温水タンク23gから密閉室内に熱水を供給する熱水供給管23e及び密閉室内で使用後の熱水を排出する配水管23fがそれぞれ接続されたものとなっている。該処理槽23bで殺菌処理をする場合には、複数の前記トレー2cを並べた整列皿を多段にしてこれを処理槽23bに入れた後、後述する加熱加圧条件で制御運転する。上記は熱水中にトレー2cを浸漬する熱水加熱式のものであるが、このほか、加熱蒸気を室内に充満せて加熱させる蒸気加熱式のものを使用してもよい。
【0033】
作用:
以下、上記無菌パック米飯の製造装置1を用いた本発明の無菌パック米飯の製造方法について説明する。図1及び図2に示すように、トレー自動供給部2から減菌されたトレー2cが、コンベア装置3における前記取り出されてトレー受けパレット3f…の保持穴に供給され、四つのトレー2cは、横一列に整列されて順次搬送される。四つの前記トレー2cは、次いで、異物吸引装置4によりトレー2c内の塵埃や異物が吸引除去された後、米計量充填部5に搬送される。なお、この工程の前後において紫外線によるトレー2cの殺菌を行ってもよい。
【0034】
米計量充填部5においては、80グラム〜100グラムの米の供給容量のトレー2c内にあらかじめ殺菌された所定量の米(無洗米)が順次計量・充填される(図1及び図2参照)。本実施例では約87gの米を充填した。次いで、水計量充填部6において、あらかじめ殺菌された約80℃の浸漬水(温水)が各トレー2cの中に順次計量・充填される。本実施例では約120g(cc)の前記浸漬水を充填した。
【0035】
予備加熱工程:
前工程で浸漬水が充填されたトレー2cは、次に前記予備加熱部7に搬送される(図1、図2及び図3参照)。各トレー2cは、図3に示すように、前記予備加熱部7において、前記噴出ノズル7a、内側覆部材7b及び外側覆部材7cの一体的な降下により、各噴出ノズル7a及び内側覆部材7bが各トレー2cの上方開口部近傍にセットされるとともに、前記外側覆部材7cの周縁部7eとトレー受けパレット3fの上面との当接によって密閉空間内に配置される。この状態で、前記各噴出ノズル7a・・・からトレー2c内の内容物(米と浸漬水)に対して、温度85℃〜95℃の加熱蒸気を20秒間〜30秒間噴出・当接し、内容物(米と浸漬水)を予備加熱する。このとき、前記内側覆部材7bには前記蒸気噴風均一化板7fを構成してあるので、トレー2c内の内容物全体は、均等に加熱蒸気が当接されてムラのない予備加熱がなされる。また、各トレー2cは前記外側覆部材7cによる密閉空間内で蒸気当接を受けるので、蒸気が外に漏れず予備加熱の効率がよい。
【0036】
浸漬殺菌炊飯工程:
前工程で予備加熱されたトレー2cは、次に前記浸漬殺菌炊飯部9に搬送される(図1、図2、図4及び図7参照)。この浸漬殺菌炊飯部9では、極めて短時間のうちに、トレー2c内に充填された無洗米に、前記浸漬水(炊飯水)を吸水させる浸漬処理、前記無洗米を殺菌(滅菌)する殺菌処理及び前記無洗米を炊飯する炊飯処理がなされるように、図7のグラフに示したようなマイクロ波の照射条件及び加圧条件の制御がなされる。図7に示したマイクロ波の照射条件及び加圧条件の制御について説明する。図7は、横軸に時間(秒)、縦軸にチャンバー40内の温度(℃)をとったグラフであり、浸漬殺菌炊飯部9において各トレー2c内の無洗米及び浸漬水を加熱する条件を示しており、チャンバー40内の温度と同じ時間軸で、マイクロ波のon/off制御の状態及びチャンバー40内の圧力の状態も示している。
【0037】
前記浸漬殺菌炊飯部9に送られてきた各トレー2cは、下チャンバー35を押し上げることで上チャンバー38に当接して形成されるチャンバー40内に収容される。チャンバー40が形成されると、減圧弁43により調整された圧縮空気を、電磁弁44を開いて送管42を介してチャンバー40内に送り、チャンバー40内を加圧する。
【0038】
浸漬処理:
図7のグラフを参照しながら説明する。チャンバー40内の圧力が3.0〜4.0kg/cmの値(好ましくは3.4〜3.8kg/cmの値)、より好ましくは約3.6kg/cmに加圧された時点で、マイクロ波発振装置36によるマイクロ波の照射を開始する。照射されたマイクロ波は各トレー2c内の無洗米及び浸漬水に照射され、これにより、トレー2c内の浸漬水が100℃を超える温度範囲102℃〜110℃(より好ましくは105℃程度)まで加熱される。このとき、チャンバー40内は、同時に、加圧されているため、浸漬水を100℃を超える温度まで加熱することが可能である。また、トレー2c内の浸漬水の温度が所定の温度になった時点で、2秒間〜10秒間(好ましくは2秒〜5秒間)、より好ましくは3秒間、前記温度を維持させることにより、トレー2c内の無洗米はムラなく均一に加熱され、十分な吸水(浸漬処理)がなされる。このように、予備加熱を終えて浸漬殺菌炊飯部9に供給されたトレー2c内の無洗米及び浸漬水が更に上記のように加熱・加圧される時間が浸漬処理の時間となる。
【0039】
本実施例(図7)では、チャンバー40内の圧力を制御することでチャンバー内の温度を調節している。具体的には、チャンバー40内の温度が所定の温度に達する直前に、チャンバー40内の圧力の減圧を開始し、浸漬処理が終わるまで一定の割合で3.0kg/cmまで減圧するようにスピードコントローラ48を制御する。この減圧時には、電磁弁44及び電磁弁49は閉じたままにする。このように、前記減圧により所定の温度の状態を所定の時間維持することができる。なお、本発明は、浸漬殺菌炊飯部9での加熱において、所定の温度の状態を所定の時間維持する加熱を浸漬処理(工程)としている。また、照射するマイクロ波の出力を制御することでも、所定の温度の状態を2秒〜10秒間維持させることは可能である。
【0040】
前記浸漬処理では、マイクロ波の照射を停止することなく、チャンバー40内の圧力を減圧させることで浸漬水の温度上昇を抑えるので、既に沸騰している前記浸漬水の気化がより活発になり無洗米への吸水が促進される。また、トレー2c内に投入する無洗米に、胴割れ米が混入している場合でも、マイクロ波の照射作用により、胴割れ米に生じている割れ目付近の澱粉がアルファ化して結着し、前記割れ目をふさぐように作用するため、この米は炊飯した際に割れ飯になることが防止され、米飯の外観的・食感的な品質が向上する。
【0041】
(殺菌処理<減菌処理>:)
上記の浸漬処理の後、チャンバー内の圧力を再度3.6kg/cmまで加圧して、トレー2c内の浸漬水の温度を140℃まで加熱し、この温度を2秒〜10秒間(好ましくは2秒〜5秒間)、より好ましくは3秒間維持させる(図7参照)。本実施例では、トレー2c内の浸漬水の温度が140℃に達する直前にマイクロ波の照射を停止し、マイクロ波の照射を停止した時点で、チャンバー40内の圧力をスピードコントローラ48の制御により減圧させ始めることで、前記140℃の温度を所定の時間維持するようにしている。このように温度を所定の時間維持させる別の方法としては、照射するマイクロ波の出力を制御するようにしてもよい。本発明では、浸漬殺菌炊飯部9での加熱において、前記浸漬処理後、更に温度上昇して温度140℃の状態を所定の時間維持するまでの加熱時間が殺菌処理の時間となる。
【0042】
(炊飯処理:)
上記の殺菌処理の後、スピードコントローラ48の制御によって、徐々にチャンバー40内の圧力を下げて、チャンバー40内の浸漬水の温度を低下させ、該温度が110℃〜105℃、好ましくは約108℃まで低下した時点で、マイクロ波を照射して、この温度を3秒〜10秒間(好ましくは3秒〜7秒間)、より好ましくは5秒間維持させ、殺菌処理後のこれまでの加熱時間が炊飯処理の時間となる(図7参照)。この炊飯処理を終えてなる米飯のアルファ化度は約98%で、水分は約36%程度である。
【0043】
上記炊飯処理を終えてなる米飯は、前述のように浸漬殺菌炊飯工程(浸漬殺菌炊飯部9)において、トレー2c内の無洗米(無浸漬原料米)と炊飯水とが加圧状態でマイクロ波照射加熱による前記浸漬処理、殺菌処理及び炊飯処理が順次なされ、米粒の内外部及び炊飯水の全てが同時に全体的に均一にムラなく加熱されて得られる。また、同時に、前記浸漬処理、殺菌処理及び炊飯処理においてなされた減圧作用によって、米粒内の中間部にポーラス状で微細ないわゆる水の通り道(水路)が形成され、該水路内にチャンバー内の残圧作用によって浸漬水が吸収・保持される。このため、得られる前記米飯は、米粒の表面部の水分が該米粒の中心部よりも高く、表面部と中心部の間の中間部よりも低い状態となり(高水分側:中間部>表面部>中心部:低水分側)、米飯性状が、米粒の表面部及び中心部が硬く、表面及び中心部の間の中間部が軟らかい、いわゆる外硬内軟芯硬の三層状態のものとなる(表面部:硬質、中間部:軟質、中心部:硬質)。なお、ここでいう「硬質」とは、前記中間部に比べて硬いのであって、決して炊飯が不十分であるというわけではない。
【0044】
(処理後の排出:)
上記の炊飯処理が終了すると、トレー2c内の浸漬水の温度をさらに下げるため、マイクロ波の照射を停止し、最終的には100℃付近まで低下させてから、浸漬殺菌炊飯部9からトレー2cを取り出し、該トレー2cを次工程の水計量補充部11に搬送する。なお、トレー2cを浸漬殺菌炊飯部9から取り出すためには、チャンバー40内の圧力を大気圧と同じレベルまで減圧させる必要があるので、前記炊飯処理の終了後、数秒が経過してから電磁弁49を開き、チャンバー40内を確実に大気圧と同レベルまで減圧するとよい。
【0045】
前記浸漬殺菌炊飯部9から取り出したトレー2c内の浸漬水は、この時点で、一部は米に吸水され、残りは気化しているため、ほぼなくなっている。
【0046】
前記浸漬殺菌炊飯部9から取り出したトレー2c内の米飯は、この時点で、水分が30%〜50%(好ましくは35%〜40%)になっている。アルファ化度は、約98%になっている。
【0047】
前記浸漬殺菌炊飯部9から排出されたトレー2cは、図1に示すように、コンベア装置3によって次工程の水計量補充部11に送られる。該水計量補充部11では、あらかじめ殺菌された仕上げ炊飯用(炊飯調整用)の約80℃の炊飯水が順次計量・補充される。本実施例では約80g(cc)の前記炊飯水を充填した。該炊飯水が充填されたトレー2cは、前記具材供給部12に搬送され、任意の具材が順次計量・供給される。なお、白ご飯の商品を製造する際は、トレー2cに具材を供給せず前記具材供給部12は通過させる。
【0048】
前工程で具材が供給されたトレー2cは、次に、前記トレー移送コンベア8、横送りコンベア13、押し込み手段29、前記製品供給装置15及び製品整列装置16からなる搬送部を経て放射温度計19に送られ、次いで、前記容器密閉シール部17に搬送される(図1参照)。前記放射温度計19においては、米飯の温度が検知されて製品の温度管理が行われ、この後、前記密封包装部17に搬入される。
【0049】
容器密閉シール工程:
前記密封包装部17では、トレー2cを真空冷却・ガス置換・密封シールを行う(図1及び図5)。前記トレー2cが密封包装部17のチャンバー24内に搬入されると、まず、チャンバー24の真空発生装置(図示せず)を作動してチャンバー24内を真空状態下まで減圧し、トレー2c内の米飯を75℃まで急冷させる。これにより、雑菌の繁殖を抑えるとともに、ガス置換の効率を高めることができる。前記減圧時には、トレー2c内の空気も吸い出される。次いで、真空状態下のチャンバー24内に窒素ガスや炭酸ガスを充満させてガス置換が行われる。
【0050】
ガス置換後のトレー2cは、チャンバー24内で、図示しない線シール手段によりフランジの全周がシールされ、ローレットシール部21にコンベア18により搬送される。ローレットシール部21では、捲れ防止のローレットシールをトレー2cに施し、次いで、容器フランジ冷却部22により冷却してトレー2cの完全な密封シールが完了する。
【0051】
加熱加圧殺菌工程(レトルト殺菌):
前記密封包装部17から順次排出された完全密封シール済みのトレー2cは、図1及び図6に示したように、例えば、作業員やロボット等によって整列皿上に複数個並べられる一方、この整列皿は、多段状(例えば8段)に重ねる。次いで、この8段状の整列皿(複数のトレー2c)を1ロットとして、前記加熱加圧殺菌部23(レトルト殺菌装置)の処理槽23b内に、開閉扉23aを開けて例えば3ロット(合計24段)分の複数のトレー2cを供給セットし、開閉扉23aを閉めて処理槽23b内を密閉状態にする(図6参照)。次いで、前記処理槽23b内に加圧空気を供給するとともに熱水を供給し、処理槽23b内の温度を例えば115℃まで上昇させて35分間この状態を保持して加熱加圧殺菌処理を施す。これにより、完全密封シールされたトレー2c内の米飯は、完全に殺菌処理されるとともに、前記米飯の芯部等の仕上げ炊飯処理がなされ完全アルファ化(アルファ化度100%)したものとなる(水分は60%〜65%程度)。
【0052】
本発明の特徴的作用:
本発明の特徴的な作用効果は、上記加熱加圧殺菌工程(加熱加圧殺菌部23<レトルト殺菌装置>)を終えて完成した無菌パック米飯の性状に表れる。すなわち、本発明の無菌パック米飯は、上記加熱加圧殺菌処理(レトルト殺菌処理)を施しても、米飯がいわゆるベチャ飯(表面がべたついた米飯)にならず、粒感があり、固めで食感のあるものとなる点にある。これは、前述のように、前記浸漬殺菌炊飯工程(浸漬殺菌炊飯部9)で浸漬殺菌炊飯処理によって得られた米飯の性状が外硬内軟芯硬であるためであり、この外硬内軟芯硬の米飯は、最終工程の前記加熱加圧殺菌工程(<レトルト殺菌処理>)において、トレー2c内の米飯が熱水浸漬や加熱蒸気当接等による外部方向からの加熱作用を受けても、米粒の表面部が米粒内面の硬度よりも硬い状態にあるため、米粒の表面部が溶融されないからである。
【0053】
また、本発明によって製造された無菌パック米飯は、上記加熱加圧殺菌処理(レトルト殺菌処理)を施しているので、殺菌効果が十分なものとなる。さらに、本発明の製造フロー(製造設備)は、マイクロ波を照射する高額設備の使用が、前記浸漬殺菌炊飯工程(浸漬殺菌炊飯部9)だけでよいので、製造ライン全体のコストも安価になる。また、単独の浸漬工程が不要な分だけ製造ライン全体の設置面積を小さくできる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の菌パック米飯の製造装置に係る概略平面図を示す。
【図2】同製造装置におけるトレー自動供給部、異物吸引装置、米計量充填部、水計量充填部、予備加熱部、浸漬殺菌炊飯部、水計量補充部、具材供給部の各構成及び製造設備フローを示す側面図である。
【図3】同予備加熱部の構成を示し多縦断面図(図1のA−A断面図)である。
【図4】同浸漬殺菌炊飯部の構成を示した縦断面図(図1のB−B断面図)である。
【図5】同容器密閉シール部の構成を示した側面図である。
【図6】同加熱加圧殺菌部の構成を示した側断面図である。
【図7】同浸漬殺菌炊飯部における加圧条件、マイクロ波照射条件及びトレー内温度の関係を示した加熱条件の制御グラフである。
【符号の説明】
【0055】
1 無菌パック米飯の製造装置
2 トレー自動供給部
2a トレー貯留部
2b トレー供給部
2c トレー(容器)
3 コンベア装置
3a スプロケット
3b スプロケット
3c 補助スプロケット
3d 補助スプロケット
3e チェーン
3f トレー受けパレット
3g 保持穴
3e チェーン
4 異物吸引装置
5 米計量充填部
5a 原料ホッパ
5b 円錐フィーダ
5c 中間ホッパ
5d 中間ホッパ
5e 集合シュート
5f 排出バルブ
6 水計量充填部
6a ノズル
7 予備加熱部
7a ノズル
7b 内側覆部材
7c 外側覆部材
7d 駆動手段
7e 周縁部
7f 蒸気噴風均一化板
7g 蒸気孔
8 トレー移送コンベア
9 浸漬殺菌炊飯部
10 クリーンブース
11 水計量補充部
11a ノズル
12 具材供給部
12a 具材タンク
13 横送りコンベア
15 仮製品供給部
16 仮製品整列部
17 容器密閉シール部
18 コンベア装置
18a スプロケット
18b スプロケット
18c チェーン
18d パレット
19 放射温度計
21 ローレトシール部
22 容器フランジ冷却部
23 加熱加圧殺菌部
23a 開閉扉
23b 処理槽
23c 加圧空気供給管
23d 排気管
23e 熱水供給管
23f 排水管
23g 温水タンク
24 チャンバー
29 押し込み手段
30 油圧シリンダー
31 ベース板
32 支柱
34 支持体
35 下チャンバー
36 マイクロ波発振装置
37 導波管
38 上チャンバー
40 チャンバー
41 パッキン
42 圧縮空気送給管
43 減圧弁
44 電磁弁
45 圧力計
46 圧縮空気排気管
47 電磁弁
48 スピードコントローラ
49 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の米と炊飯水の内容物を投入して上方を開口した耐熱性のトレーに、浸漬、殺菌、密閉及び炊飯の各処理を施す工程を含んでなる無菌パック米飯の製造方法において、
前記トレー内の内容物を加熱蒸気によって予備加熱処理をする予備加熱工程と、
前記予備加熱処理した前記内容物にマイクロ波照射加熱及び加圧の処理により浸漬・殺菌・炊飯処理をする浸漬殺菌炊飯工程と、
前記浸漬・殺菌・炊飯処理を終えた前記トレー内に前記炊飯水を補充する補充工程と、
前記炊飯水を補充した前記トレーの上方開口部に密閉シール処理をする容器密閉シール工程と、
前記密閉シール処理した前記トレーを蒸気加熱又は熱水加熱を施して加圧殺菌処理をする加熱加圧殺菌工程と、
を順次備えてなることを特徴とする無菌パック米飯の製造方法。
【請求項2】
前記予備加熱工程の加熱蒸気処理は、85℃〜95℃の加熱蒸気を、20秒〜30秒間処理する一方、前記浸漬・殺菌・炊飯処理のマイクロ波照射は、内容物の温度が135℃〜145℃になるまで行う請求項1に記載の無菌パック米飯の製造方法。
【請求項3】
前記浸漬殺菌炊飯工程によって得られる米飯が外硬内軟芯硬の性状のものとする請求項1又は請求項2に記載の無菌パック米飯の製造方法。
【請求項4】
所定量の米と炊き水の内容物を、上方を開口した耐熱性のトレーに投入する投入部と、前記米に炊き水を浸漬する浸漬処理部、前記トレー内の内容物を殺菌する殺菌処理部、前記トレーの開口を殺菌済フィルムで密閉する密閉処理部及び前記トレー内の米を炊飯する炊飯処理部を備えてなる無菌パック米飯の製造装置において、
前記トレー内の内容物を蒸気によって予備加熱する予備加熱部と、
前記予備加熱処理した前記内容物をマイクロ波照射加熱及び加圧によって浸漬、殺菌及び炊飯を行う浸漬殺菌炊飯部と、
前記浸漬処理した前記トレーに前記炊き水を補充する補充部と、
前記炊き水を補充した前記トレーの上方開口部に密閉シールする容器密閉シール部と、
前記密閉シールした前記トレーに蒸気加熱処理又は熱水加熱処理を施しながら加圧殺菌処理をする加熱加圧殺菌部と、
を備えることを特徴とする無菌パック米飯の製造装置。
【請求項5】
前記予備加熱部は、85℃〜95℃の加熱蒸気を、20秒〜30秒間処理する一方、前記浸漬殺菌炊飯部は、内容物の温度が135℃〜145℃になるまでマイクロ波照射を行う請求項4に記載の無菌パック米飯の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−119327(P2010−119327A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294962(P2008−294962)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】