説明

煉瓦生角の接触面に銀砂を介在させる銀砂付着装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐火煉瓦の製造に際して、焼成炉へ煉瓦生角を多段積みして搬入するに当たり、多段積みする煉瓦生角間に銀砂を介在させる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、耐火煉瓦を製造する場合、所定形状(多くは直方体形状)に成形した煉瓦生角を、台車上に多段に積み重ねて、焼成炉へ搬入し焼成している。このように多段に積み重ねて焼成する場合、台車と煉瓦生角間、並びに上下に重なり合う煉瓦生角が焼成時に相互に溶着しないようにするため、これらの接触面間に、例えば粒度0.5〜2.0mm程度の銀砂(高純度マグネシア粒や珪砂等の溶着防止材)を介在させている。
【0003】従来では、この煉瓦生角間や台車との間に銀砂を介在させる方法として、積み重ね作業中において、下側の煉瓦生角の上面や台車上面に作業者が手で銀砂を散布し、その上面に煉瓦生角を載置し、これを繰り返すことで台車との間および上下の煉瓦生角の接触面間に銀砂を介在させながら、台車上に多段に煉瓦生角を積み上げている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来では銀砂の散布を人手に頼っていたため、作業効率が悪かった。また、人手による作業であるため、銀砂の散布量にばらつきがあり、結果的に、焼成した煉瓦が台車と或いは他の煉瓦とくっ付いたり、反りが発生したり等の不具合が発生することがあった。
【0005】本発明は、上記事情を考慮し、銀砂を煉瓦生角間及び台車との間に介在させるに当たり、極力省力化が可能であり、しかも銀砂の介在量ならびに分布の均一化を図ることのできる装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、焼成工程へ多段積み状態で煉瓦生角を搬入するに当たり、積み重ねる煉瓦生角の接触面に銀砂を付着させるための銀砂付着装置であって、銀砂付着の自動化を実現するための装置であり、煉瓦生角の所定面に接触することで外周に付着した糊を該所定面に塗布する糊付けローラと、該糊付けローラの外周に糊を補給する補給部とを備えた糊付け部と、容器内に表面を均した銀砂を蓄えた銀砂付着部と、煉瓦生角をハンドリングするハンドリング部とを備えている。ハンドリング部は、糊付け部にて煉瓦生角の所定面に糊を塗布させ、次いで糊の付いた前記所定面を銀砂付着部の銀砂の表面に接触させて同面に銀砂を付着させ、次いで当該煉瓦生角を所定箇所(多段積み箇所)に順次積み重ねる。これにより、接触面間に均一に分布した銀砂を介在させた状態で煉瓦生角を積み上げることができる。
【0007】また、糊付け部が、煉瓦生角の所定面に接触することで外周に付着した糊を該煉瓦生角の所定面に塗布する糊付けローラと、糊付けローラの外周に糊を補給する補給部とを備えていることにより、煉瓦生角の所定面へ糊を連続して自動的に塗布することが可能になる。
【0008】請求項2の発明は、糊付け部が、糊付けローラに煉瓦生角の所定面が押し当てられたとき、所定の付勢力で糊付けローラを所定面側に付勢する付勢機構を備えていることを特徴としている。これにより、煉瓦生角と糊付けローラと接触時の衝撃等を緩和できる。さらに、請求項3の発明は、銀砂付着部が、容器内の銀砂の表面を均すスクレーパを備えていることを特徴としている。これにより、銀砂の表面が平坦になり、糊の付いた面への銀砂の付着を均一にすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1を用いて、煉瓦生角間に銀砂を介在させる装置の概略を説明する。図1において、1は所定形状(直方体形状)に成形された煉瓦生角、6はロボットハンド(ハンドリング部)、8は台車を示す。煉瓦生角1を焼成炉(図示略)へ搬入するに当たって、今、台車8上にて多段積みを実行している。その際、上下に積み重ねる煉瓦生角1の接触面間並びに煉瓦生角1と台車8との間に銀砂を介在させる必要があるので、次の手順で作業を進める。
【0010】まず、ロボットハンド6にてハンドリングした煉瓦生角1の下面(所定面)を、糊付け部5の糊付けローラ23の上面に押し当てる(矢印A1の動き)。そして、ロボットハンド6を略水平方向へ少し動かして、糊付けローラ23を回しながら、糊付けローラ23の外周に付着している糊2を、煉瓦生角1の下面に塗布する。なお、糊2は液状のもので、容器21に収容されており、糊2の中に補給ローラ22が半分程度浸っている。したがって、糊付けローラ23が煉瓦生角1の水平移動により回されることになり、それに接する補給ローラ22が回り、糊2が、容器21から補給ローラ22を介して、糊付けローラ23の外周に補給される。ここでは、糊2を収容した容器21と、補給ローラ22と糊補給用ボトル27が補給部を構成している。
【0011】上記のように煉瓦生角1の下面に糊2を塗布したら、ロボットハンド6を動かして、銀砂付着部7の銀砂3の表面に煉瓦生角1を下降させ、糊2を塗布した下面に銀砂3を付着させる(矢印A2の動き)。銀砂付着部7には、皿状の容器31が設けられており、この容器31内に、表面を平坦に均した状態で銀砂3が敷かれている。また、この銀砂付着部7には、銀砂3の表面を均すためのスクレーパ32と、スクレーパ32で均した際に余分となった銀砂3を容器31外に排出する排出シュート33が設けられている。スクレーパ32を動作させる際には、矢印Bのように動かす。
【0012】銀砂3を下面に付着させたら、そのままロボットハンド6を動かして、銀砂3を付着させた面を下にした状態で接触面として、先ず最初は台車8上に載置する(矢印A3の動き)。 なお、図示においては、煉瓦生角1が既に4段積まれているが、この場合も前述の動作と全く同様であり、ロボットハンド6によって、新たに運ばれた煉瓦生角1は、先に載置してある煉瓦生角1の上面に順次載せられる(矢印A3の動き)。このようにして、煉瓦生角1と台車8との間並びに煉瓦生角間の上下の接触面間に銀砂を介在させた状態で、台車8上に煉瓦生角1を多段に積み上げていくことができる。
【0013】この方法を実行した場合、銀砂3を手作業で散布するのではないから、作業効率が向上する上、前記接触面間に介在する銀砂3の量並びに分布のばらつきを少なくすることができ、焼成後の煉瓦の反り等の問題を解消することができる。なお、糊2の種類としては、煉瓦生角1の下面に薄く塗布することができて、少なくとも煉瓦生角1を積み重ねるまでの間、銀砂3を保持しておけるもので、煉瓦生角へ悪影響を及ぼすものでなければ、何を用いてもよく、例えば若干粘り気のある水のようなものでもよい。
【0014】次に、本発明の銀砂付着装置の各部の具体的な構造について説明する。図2は銀砂付着装置の要部側面図、図3は同装置の要部平面図、図4は図3のVI−VI矢視断面図である。なお、装置全体は、ロボットハンド6と、糊付け部5と、銀砂付着部7とからなる。ロボットハンド6は、周知の適宜構造のものを使用することができるので、図示省略してある。本実施形態の装置においては、図2に示すように架台11の上に、糊付け部5と銀砂付着部7が並んで装備されている。
【0015】糊付け部5は、図5の斜視図に詳しく示すように、液状の糊2を入れた容器21と、その容器21の上に水平に配された糊付けローラ23及び補給ローラ22とを有する。容器21の側方には一対の支柱12が立っており、支柱12の上端には、水平に配されたアーム25の中間部が、軸24によって回動自在に支持されている。アーム25は互いに平行に左右一対配されており、容器21の上方に延ばされた両アーム25の一端部間には、糊付けローラ23及び補給ローラ22が回転可能に取付けられている。糊付けローラ23と補給ローラ22は互いに外周が接しており、糊付けローラ23が回転すると、補給ローラ22も回転するようになっている。
【0016】また、補給ローラ22は、糊付けローラ23よりも下側に配置され、容器21内の糊2の中に半分程度が浸るようになっている。また、各アーム25の他端部には重り25a(付勢機構)が取り付けられ、重り25aの作用でアーム25の一端部側が上方に向けて付勢されている。そして、無負荷のときには、ストッパ26によりアーム25が略水平な位置で止められている。なお、27は糊2の補給用ボトルで、容器21内の糊2が少なくなると、液面の低下に応じて自動的に糊2を補給する。したがって、容器21内の糊2の液面は略一定に管理されている。
【0017】銀砂付着部7は、水平に配された長方形薄皿状の銀砂容器31と、スクレーパ32と、排出シュート33と、銀砂3の補給ホッパ34とを有する。これらは枠フレーム35に保持されており、銀砂容器31の長手方向一端側に補給ホッパ34、反対側(糊付け部5側)に排出シュート33が配置されている。図4に示すように、銀砂容器31の上面には銀砂3が敷かれており、銀砂3の下側にはクッション用スポンジ9が配されている。
【0018】スクレーパ32は、銀砂容器31の上方を跨ぐように配された門形フレーム36を有する。門形フレーム36は、枠フレーム35の両サイドに配したガイドレール40にスライド自在に支持されており、モータ42により無端チェーン39を周回駆動することで、銀砂容器31の長手方向に沿って往復移動する。通常、スクレーパ32は補給ホッパ34側に待機しており、均し作業時に排出シュート33側に移動し、終点まで移動した後、待機位置に戻される。無端チェーン39は、銀砂容器31の一端側及び他端側に配したスプロケット37、38に巻回されている。また、門形フレーム36の上端には上下動シリンダ32aが設けられ、上下動シリンダ32aの下向きロッドの下端に、スクレーパ32の均し部材32bが設けられている。
【0019】銀砂付着の作業に当たり、ロボットハンドは所定の経路で動作するよう制御される。その動作を次に述べる。図示略のロボットハンドは、まず、ハンドリングした煉瓦生角を糊付け部5の糊付けローラ23の上面に押し当て、その状態で横に僅かに動かす。そうすると、糊付けローラ23が煉瓦生角の下面に接触しながら回転し、自身の外周に付着している糊2を煉瓦生角の下面に塗布する。その際、重り25aの作用で糊付けローラ23が一定の力で煉瓦生角の下面に接触するので、糊2が均一に適量塗布される。また、アーム25は、ローラ23に煉瓦生角1が圧着されることにより揺動するようになっているので、煉瓦生角が糊付けローラ23に当たった際の衝撃が緩和される。糊付けローラ23の外周には、自身の回転に応じて、補給ローラ22により容器31から汲み上げた糊2が補給される。
【0020】糊付けが終了したら、ロボットハンドは煉瓦生角を隣の銀砂付着部7の上方に移動し、銀砂容器31の上で煉瓦生角を下降させる。そして、容器31上に敷き詰めた銀砂3の表面に、糊付けした煉瓦生角の下面を載せる。それにより、銀砂3が、糊付けした煉瓦生角の下面に適量均一に付着する。その際、銀砂3の下側のクッション用スポンジ9が緩衝作用をなす。
【0021】次いで、ロボットハンドは煉瓦生角をそのまま持ち上げて、台車の上方に移動する。そして、台車の上に先に載せてある煉瓦生角の上面に、運んだ煉瓦生角をそのまま載せる。この作業を繰り返すことで、上下の煉瓦生角間及び煉瓦生角と台車との間に銀砂3が介在された状態で、煉瓦生角が積層される。
【0022】なお、銀砂付着部7の銀砂容器31上の銀砂3は、一回の付着操作が終了するたびに減っていき、徐々に凹んでいく。そこで、何回かの付着操作を終了したら、補給補給ホッパーから補給された銀砂をスクレーパ32を操作して、銀砂3の表面の均し作業を実行する。すなわち、まずスクレーパ32の上下動シリンダ32aを下降操作して、均し部材32bを上方位置から作業位置に下げる。そして、その状態でモータ42を駆動して、スクレーパ32を補給ホッパ34側から排出シュート33側に移動する。これにより、銀砂3の表面を補給共に平坦に均すことができる。
【0023】均し操作によって余った銀砂3は、排出シュート33より排出される。最後に、排出シュート33側までスクレーパ32を移動したら、上下動シリンダ32aを上昇操作して、均し部材32bを上方位置に持ち上げ、モータ42を逆転してスクレーパ32を補給ホッパ34側の待機位置に戻す。以上の動作を1サイクルとして均し操作が行われる。したがって、銀砂3の表面を常に良好な平坦面に維持しておくことができ、銀砂3の均一な付着を実現することができる。
【0024】本発明においては、銀砂3を煉瓦生角の接触面に介在させる方法は、上記の形態で実行するのが最も自然であるが、場合によっては、銀砂を付着させた面をハンドリング操作により敢えて上に向けて、銀砂を付着させた上面に対して、順次次の煉瓦生角を積み重ねて行くこともできる。また、煉瓦生角の上下両面に銀砂を付着させ、これを1個おきに積み重ねることで、すべての上下煉瓦生角間に銀砂を介在させることも可能である。更に、本発明においては、煉瓦生角を多数同時にハンドリングして上記各行程を実施して、台車上に積み重ねるようにしてもよい。
【0025】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、糊付け部と銀砂付着部とハンドリング部とを備えていることにより、煉瓦生角に銀砂を自動的に付着させることができ、かつ煉瓦生角の接触面に銀砂を介在させた状態で煉瓦生角を積み上げることができる。よって、人手作業をほとんど無くして作業効率の向上が図れる上、銀砂のばらつきを無くして、焼成品の品質向上が図れる。
【0026】また、糊付け部に糊付けローラが設けられているので、糊の塗布が容易かつ適正にできる。
【0027】請求項2の発明のように、糊付け部に糊付けローラの付勢機構を設けた場合は、ハンドリング装置によって煉瓦生角を糊付けローラに押し当てた場合の衝撃を緩和し、接圧の一定化を図ることができる。また、請求項3の発明のように、銀砂付着部にスクレーパを設けた場合は、前回までの銀砂の付着によって凹んだ箇所をきれいに均すことができ、常に良好な条件で銀砂を煉瓦生角の下面に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の概略説明図である。
【図2】本発明の実施形態の装置の側面図である。
【図3】本発明の実施形態の装置の平面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視断面図である。
【図5】本発明の装置における糊付け部の斜視図である。
【符号の説明】
1 煉瓦生角
2 糊
3 銀砂
5 糊付け部
6 ロボットハンド(ハンドリング部)
7 銀砂付着部
21 容器(補給部)
22 補助ローラ(補給部)
23 糊付けローラ
25a 重り(付勢機構)
31 銀砂容器
32 スクレーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 焼成工程へ多段積み状態で煉瓦生角を搬入するに当たり、積み重ねる煉瓦生角の接触面に銀砂を付着させるための銀砂付着装置であって、煉瓦生角の所定面に接触することで外周に付着した糊を該所定面に塗布する糊付けローラと、該糊付けローラの外周に糊を補給する補給部とを備えた糊付け部と、容器内に所定量の銀砂を蓄え可能な銀砂付着部と、煉瓦生角をハンドリングして、前記糊付け部にて煉瓦生角の所定面に糊を塗布させ、次いで前記所定面を前記銀砂付着部の銀砂の表面に接触させて銀砂を付着させ、次いで当該煉瓦生角を所定箇所に移送可能とするハンドリング部と、を備えたことを特徴とする銀砂付着装置。
【請求項2】 前記糊付け部が、前記糊付けローラに煉瓦生角の所定面が押し当てられたとき、所定の付勢力で糊付けローラを煉瓦生角方向に付勢する付勢機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の銀砂付着装置。
【請求項3】 焼成工程へ多段積み状態で煉瓦生角を搬入するに当たり、積み重ねる煉瓦生角の接触面に銀砂を付着させるための銀砂付着装置であって、煉瓦生角の所定面に糊を塗布する糊付け部と、容器内に所定量の銀砂を蓄え可能な、かつ容器内の銀砂の表面を均すために略水平に移動可能なスクレーパを備えた銀砂付着部と、煉瓦生角をハンドリングして、前記糊付け部にて煉瓦生角の所定面に糊を塗布させ、次いで前記所定面を前記銀砂付着部の銀砂の表面に接触させて銀砂を付着させ、次いで当該煉瓦生角を所定箇所に移送可能とするハンドリング部と、を備えたことを特徴とする銀砂付着装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【特許番号】第2968212号
【登録日】平成11年(1999)8月20日
【発行日】平成11年(1999)10月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−200137
【出願日】平成8年(1996)7月30日
【公開番号】特開平10−45460
【公開日】平成10年(1998)2月17日
【審査請求日】平成9年(1997)2月28日
【出願人】(000001971)品川白煉瓦株式会社 (112)
【参考文献】
【文献】特開 平8−59334(JP,A)
【文献】特開 平4−300236(JP,A)
【文献】特開 昭63−195158(JP,A)
【文献】特開 平5−318450(JP,A)