説明

照明光学系

【課題】 結像性への影響を最小限に抑えつつ被照明面での照明むらを容易に調整できる補正光学系を備える照明光学系を提供する。
【解決手段】 照明光学系1は光源11からの照射光がインテグレータ光学系14を経てコンデンサレンズ17に入射して被照明面20に導かれる。この照明光学系1に、照度むらを補正するために、インテグレータ光学系14の出射側に補正光学系15を配置する。補正光学系15は、2つの屈折光学素子15a、15bを有していて、屈折光学素子15bは光軸に対して移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露光装置の照明光学系に関し、特に均一な照度分布を形成するための照明光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の照明光学系の構成例を図4に示す。従来の照明光学系100は、ランプ等の発光光源101と、フライアイレンズ又はロッドインテグレーター104で構成されるインテグレータ光学系と、コンデンサレンズ107とで構成される。この照明光学系が、照明光の強度分布が完全に均一である理想的な光学系である場合、被照明面での照度分布は一様である。
【0003】
しかし、実際の照明光学系は、光源、例えばランプの放射特性が個体毎に異なることに起因して被照明面上の強度分布の不均一性(以下、「照度むら」という)を生ずる。この要因を取り除く為に設計検討・解析時にそれらの特性を取得し、反映する光学系を考案するが、それらデータの再現性や正確性は確約されたものではなく、結果が伴わないケースも発生する。
【0004】
これらの発生した事象を、従来の照明光学系で解決するのは理論的に大変困難であり、その調整幅は小さく、かつ取りかかる労力も甚大なものとなる。
【0005】
そこで、照明光学系を構成する光学素子を調整することにより照度分布の調整を行う照明光学系が提案されている。例えば、コンデンサレンズを構成するレンズ間距離を調整することにより照明むらを補正できる光学系が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1によれば、光源11からの光を被照明面へ導く照明光学系であって、L1、L2、L3、L4の4つのレンズ群でコンデンサレンズが構成され、レンズ群L2とL3とが一定の間隔で光軸AXに沿って移動することで照明むらを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−214525
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の照明光学系では、コンデンサレンズ群を移動することによって歪曲収差が調整され、これによって照明むらの調整は可能であるが、照明光学系の特性が設計から外れて、結果的に結像性(照明エリア面積、デグリネーション角など)が悪くなる。
【0008】
本発明は、以上のことに鑑みて被照明面での照明むらを容易に調整できる補正光学系を備える照明光学系を提供することを目的としている。特に、照明むらの調整に起因する結像性の悪化をできるだけ回避できる補正光学系を備える照明光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の照明光学系は、光源からの照射光がインテグレータ光学系を経てコンデンサレンズに入射して被照明面に導かれる照明光学系において、2つ以上の屈折光学素子を有し、照度むらを補正する補正光学系がインテグレータ光学系の出射側に近接して配置される。
【0010】
ここで、屈折光学素子の少なくとも1つは、光軸方向に移動可能であるように構成することができる。また、屈折光学素子の少なくとも1つは、光軸中心に回転可能又は光軸に対して傾き調整可能又はその両方可能であるように構成することができる。
【0011】
上記構成の本発明の補正光学系に用いられる屈折光学素子として、球面レンズ、非球面レンズ、シリンドリカルレンズ、トーリックレンズがある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の照明光学系によれば、インテグレータ光学系の出射側に近接して補正光学系を挿入し、当該補正光学系を構成する屈折光学素子間距離や傾き等を調整するので、被照明面での照明むらを容易に調整することができる。更に、照明むらの調整に起因する結像性の悪化も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の照明光学系の実施の形態を示す概略図である。
【図2】図1の実施の形態の照明光学系の実施例1のシミュレーション結果を示す図である。
【図3】図1の実施の形態の照明光学系の実施例2のシミュレーション結果を示す図である。
【図4】従来の照明光学系を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の照明光学系の実施形態の概略構成を示す図である。照明光学系1では、集光鏡12が設けられた光源11からの照射光が平面鏡13に入射し、平面鏡13により入射光がインテグレータ14の方向に反射する。
【0015】
このインテグレータ14は、フライアイレンズ又はロッドインテグレーターにより構成される。インテグレータ14の光の入射側にはシャッタ18が設けられ、被照明面20に対する照射のオンとオフを行っている。
【0016】
インテグレータ14を通過した光は補正光学系15に入射する。そして、補正光学系15を透過した照明光は平面鏡16により反射され、コンデンサレンズ17に入射して、その後被照明面20に照射される。
【0017】
補正光学系15は被照明面における照度むらを解消するために設けられ、屈折光学素子15aと屈折光学素子15bとで構成されている。屈折光学素子15bには光軸方向に移動させることができる調整機構が更に設置されている。
【0018】
屈折光学素子として、球面レンズ、非球面レンズ、シリンドリカルレンズ、トーリックレンズ等を用いることができる。屈折光学素子15a、15bの組合せは、両方が同一の種類のレンズ又はそれぞれ異なるレンズでもよい。
【0019】
図面には屈折光学素子15bを移動する調整機構を図示していないが、屈折光学素子を支持する支持部と光軸方向に移動させるリニアガイドとモータ等を備えている。また、屈折光学素子15a、15bがシリンドリカルレンズ又はトーリックレンズの場合、少なくともいずれか一方の屈折光学素子に、光軸中心に回転及び光軸に対して傾き調整できる調整機構を更に設置することができる。
【0020】
シリンドリカルレンズの場合、照明面のX軸Y軸方向を独立して分布補正が可能である。トーリックレンズの場合、照射面のX軸Y軸の分布補正傾き量が異なる分布補正が可能である。
【0021】
上記の実施の形態において、屈折光学素子15bのみを移動させる構成としたが、屈折光学素子15aのみまたは屈折光学素子15aと15b両方に移動や傾きを調整する機構を設けてもよい。
【0022】
次に、本願発明の照明光学系を用いた実施例を次に説明する。
【実施例】
【0023】
実施例1として、図1の屈折光学素子15a、15bをそれぞれ球面レンズとした場合について説明する。図2(a)は、図1中の屈折光学素子15a、15bをそれぞれ球面レンズとした場合の照度むら補正前後の被照明面での照明エリア面積のシミュレーション結果を示し、(b)は補正前後のデグリネーション角のシミュレーション結果を示し、(c)は補正前後の照度比のシミュレーション結果を示す。
【0024】
図2(a)は、照度むら補正前後の照明エリア面積のシミュレーション結果である。照度むら補正後の照明エリア面積は147.15×147.15mm2で補正前の150.00×150.00mm2と比べるとその変動は3.8%であり、照度むら補正の影響はほぼ皆無である。
【0025】
図2(b)は、照度むら補正前後のデグリネーション角のシミュレーション結果である。照度むら補正前のデグリネーション角は0.226度であり、補正後のデグリネーション角は0.230度である。従って、補正前後のデグリネーション角の変動率は1.7%であり、通常光学系の調整と比べると十分小さく、照度むらの補正の影響は殆どないといえる。
【0026】
図2(c)は、照度むら補正前後の照度比のシミュレーション結果である。照度むら補正のためにレンズ間距離を縮めた場合、照度比は98.0%から95.8%となり、その調整能力は2.2%である。この値は光源特性の個体差を十分補える範囲である。
【0027】
以上図2(a)〜(c)のシミュレーション結果に示したように、補正前後の結像性(照明エリア面積、デグリネーション角)がかなり保たれ、結像性への影響を最小限に抑えつつ補正能力も十分である。
【0028】
次に、実施例2として、図1の屈折光学素子15a、15bをそれぞれシリンドリカルレンズとした場合について説明する。図3は、図1中の屈折光学素子15a、15bをそれぞれシリンドリカルレンズとした場合の被照明面での照度分布結果のシミュレーション結果である。この場合において、屈折光学素子15a、15bの少なくとも一方には更に光軸中心に回転及び光軸に対して傾き調整できる調整機構が更に設置されている。
【0029】
図3に示すように、照度むら補正のためにシリンドリカルレンズ間距離を縮めた場合、照度比は基準値96.2%から94.2%となり、その調整能力は±2.0%である。この値は光源特性の個体差を十分補える範囲である。
【0030】
以上、本発明を図面に示した実施形態を用いて説明したが、これらは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者ならば、本発明の範囲および趣旨から逸脱しない範囲で多様な変更および変形が可能なことは理解できるであろう。したがって、本発明の範囲は、説明された実施形態によって定められず、特許請求の範囲に記載された技術的趣旨により定められねばならない。
【符号の説明】
【0031】
1…照明光学系、14…インテグレータ、15…補正光学系、15a、15b…屈折光学素子、16…平面鏡、17…コンデンサレンズ、被照射面…20

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの照射光がインテグレータ光学系を経てコンデンサレンズに入射して被照明面に導かれる照明光学系において、
2つ以上の屈折光学素子を有し、照度むらを補正する補正光学系が、前記インテグレータ光学系の出射側に近接して配置されることを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
前記屈折光学素子の少なくとも1つは、光軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項1記載の照明光学系。
【請求項3】
前記屈折光学素子の少なくとも1つは、光軸中心に回転可能又は光軸に対して傾き調整可能又はその両方であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の照明光学系。
【請求項4】
前記屈折光学素子は球面レンズであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の照明光学系。
【請求項5】
前記屈折光学素子は非球面レンズであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の照明光学系。
【請求項6】
前記屈折光学素子はシリンドリカルレンズであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の照明光学系。
【請求項7】
前記屈折光学素子はトーリックレンズであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の照明光学系。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−110342(P2013−110342A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255887(P2011−255887)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000128496)株式会社オーク製作所 (175)
【Fターム(参考)】