説明

照明器具および/または空調機器の操作制御システム並びに操作制御方法

【課題】 比較的簡素な構成に基づいて、高い利便性および良好な通信性能をもって照明器具や空調機器の操作を制御する。
【解決手段】 照明器具(11)および空調機器(12)の操作を制御する操作制御システムは、携帯情報端末(13)からの光信号を受光するための受光部(1)と、受光部が受光した光信号に基づいて照明器具および空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御する制御部とを備えている。受光部は、光信号の感知範囲が放射状に分散するように配置された複数の受光素子を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具および/または空調機器の操作制御システム並びに操作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、執務スペースの入口に設置された空調・照明用の手元スイッチを手動で操作することにより、照明器具や空調機器の操作制御を行っているのが一般的である。また、一部の大規模オフィスでは、パソコンや携帯電話からインターネット経由でウェブアクセスして、照明器具や空調機器の操作制御を行う技術が採用されている。また、携帯電話の赤外線通信機能を用いて、空調機器や給湯器を制御する技術が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、手元スイッチによる空調・照明操作では、執務者が自分の席から事務室の入口近辺にある手元スイッチまで移動して手動で操作する必要があり、非効率である。特に、大部屋事務室では、手元スイッチまでの移動距離が大きくなるため、空調・照明操作の利便性の向上を求める声が多い。
【0004】
ウェブアクセスを利用する空調・照明操作では、ウェブサーバーの導入費用及びメンテナンス費用が別途必要である。そして、パソコンを用いる場合、ウェブアクセスする前にある程度の起動時間を要するため、操作性が悪い。携帯電話を用いる場合、操作毎にウェブアクセスする必要があり、通信料金が嵩む。
【0005】
携帯電話の赤外線通信機能を用いて機器の制御を行う従来技術では、単一の受光素子により赤外線を受光する(すなわちセンサーが単眼である)ため、受光角度が制限され、ひいては通信性能が低い。また、システム構築およびコマンド送信を機器毎に個別に行う必要があるため、家庭用の機器に適用する例がほとんどであり、大部屋事務室の機器に適用しても費用対効果が小さい。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、比較的簡素な構成に基づいて、高い利便性および良好な通信性能をもって照明器具や空調機器の操作を制御することのできる操作制御システムおよび操作制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、照明器具および空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御する操作制御システムであって、
携帯情報端末からの光信号を受光するための受光部と、
前記受光部が受光した光信号に基づいて前記照明器具および前記空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御する制御部とを備え、
前記受光部は、前記光信号の感知範囲が放射状に分散するように配置された複数の受光素子を有することを特徴とする操作制御システムを提供する。
【0008】
本発明の第2形態では、照明器具および空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御する操作制御方法であって、
前記照明器具および前記空調機器のうちの少なくとも一方の操作に関する情報を含む赤外線信号を携帯電話から発信することと、
赤外線信号の感知範囲が放射状に分散するように配置された複数の受光素子を有する受光部が前記携帯電話からの赤外線信号を受信することと、
前記受光部が受光した赤外線信号に基づいて前記照明器具および前記空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御することとを含むことを特徴とする操作制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様において、携帯電話のような情報端末からの赤外線信号(光信号)を受光するための受光部は、赤外線信号の感知範囲が放射状に分散するように配置された複数の受光素子を有する。その結果、本発明の操作制御システムおよび操作制御方法では、例えば大部屋事務室においても、比較的簡素な構成に基づいて、高い利便性および良好な通信性能をもって照明器具や空調機器の操作を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態にかかる操作制御システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】複数の受光素子の感知範囲が放射状に分散するように円環状に配置されている様子を模式的に示す図である。
【図3】受光部の感知範囲が単位的な制御ゾーンをカバーしている様子を模式的に示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図4】本実施形態にかかる操作制御システムの内部構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる操作制御システムの全体構成を概略的に示す図である。本実施形態では、図1に示すように、例えば大部屋事務室に設けられた照明器具11および空調機器12の操作を制御する操作制御システムに対して本発明を適用している。
【0012】
本実施形態にかかる操作制御システムは、利用者である執務者が携帯する携帯電話13からの赤外線信号を受光(受信)するための受光部1と、受光部1が受光した光信号に基づいて照明器具11および空調機器12の操作を制御する制御部2(図1では不図示)とを備えている。制御部2の内部構成については、図4を参照して後述する。
【0013】
受光部1は、図2に示すように、携帯電話13からの赤外線信号の感知範囲が放射状に分散するように配置された複数(図2では例示的に8つ)の受光素子1a〜1hを有する。受光素子1a〜1hは、例えば天井面14とほぼ平行な面に沿って円環状に配置されている。図2において楕円により模式的に示す受光素子1a〜1hの感知範囲1aa〜1haは受光部1を中心として放射状に分散し、感知範囲1aa〜1haの集合は受光部1を中心とする円形状の領域を覆っている。
【0014】
こうして、図3に示すように、受光素子1a〜1hの感知範囲1aa〜1haの集合、すなわち受光部1の感知範囲1jは、大部屋事務室における照明器具11および空調機器12の単位的な制御ゾーン(例えば7.2m×7.2mのモジュール空間)31のほぼ全体をカバーしている。換言すれば、制御ゾーン31において受光部1の不感知範囲が実質的に存在しないように受光素子1a〜1hが配置されている。大部屋事務室では、制御ゾーン31毎に照明器具11および空調機器12の制御が行われるのが一般的である。
【0015】
本実施形態では、照明器具11および空調機器12の操作に先立ち、携帯電話13からインターネット(一般には通信ネットワーク)15に接続して、本システムの操作制御用のアプリケーションをダウンロードし、携帯電話13にインストールする。そして、このアプリケーションを利用して照明器具11および空調機器12の所望の操作に対応した情報を携帯電話13に随時入力し、所望の操作に関する情報を含む赤外線信号を携帯電話13から受光部1に向かって発信する。
【0016】
具体的には、図4に示すように、照明器具11の操作に際して利用者は、携帯電話13から受光部1に向かって照明器具11の所望の操作(照明のON/OFFの切り換え、調光など)に関する情報を含む赤外線信号を発信(射出)する。このとき、受光部1を構成する8つの受光素子1a〜1hのうちの複数の受光素子が携帯電話13からの赤外線信号を受光する場合がある。
【0017】
この場合、赤外線信号を受光した複数の受光素子の出力を同時に処理すると、誤った情報を後段の制御部2へ伝える可能性がある。そこで、本実施形態では、受光素子へ入力される赤外線信号の強度と受光素子から出力される信号のON期間の長さとの間に相関があることに着目し、各受光素子のON期間の長さを計測してON期間が最長である受光素子の出力信号を受光部1の出力信号とすることにより、信号の誤り率を低減する。
【0018】
すなわち、本実施形態にかかる操作制御システムの制御部2の一部を構成する赤外線受光ZigBee端末(ZigBeeは登録商標)41は、最も強い光信号を受光した受光素子(図4では不図示)の出力を受光部1の出力として受け取る。最も強い光信号を受光した受光素子の出力を受光部1の出力とする点は、後述する空調機器12の操作の制御に際しても同様である。
【0019】
受光部1の出力を受けた赤外線受光ZigBee端末41は、照明制御ZigBee端末42へZigBee無線信号を発信する。照明制御ZigBee端末42は、受信したZigBee無線信号を無電圧信号に変換して接点入力する。無電圧インターフェース43を介して接点入力された無電圧信号に基づいて、照明器具11のON/OFFの切り換え(照明の発停)が行われる。さらに、必要に応じて、照明器具11の調光(明るさの調節)が行われる。なお、図4において、参照符号44は、照明インターフェース変換器を表している。
【0020】
一方、空調機器12の操作に際して利用者は、携帯電話13から受光部1に向かって空調機器12の所望の操作(空調のON/OFFの切り換え、温度、送風量、風向きの調節など)に関する情報を含む赤外線信号を発信する。受光部1の出力を受けた赤外線受光ZigBee端末41は、空調制御ZigBee端末45へZigBee無線信号を発信する。
【0021】
空調制御ZigBee端末45は、受信したZigBee無線信号を無電圧信号およびLON信号に変換して、空調機器制御装置46へ信号入力する。こうして、空調機器制御装置46からの信号に基づいて、空調機器12のON/OFFの切り換え(空調の発停)、送風量の変更(強・中・弱)、設定温度の変更、風向きの変更などが行われる。なお、図4において、参照符号47および48は、D/A変換器および空調インターフェース変換器をそれぞれ表している。
【0022】
以下、本実施形態の利点を説明する。大部屋事務室における制御ゾーン毎の空調・照明制御の操作媒体として、執務者の誰もが常時携帯している携帯電話は最適である。赤外線通信機能およびアプリ機能を搭載した携帯電話の普及率は高く、携帯電話を用いて空調・照明操作を行うことにより、本システム導入に伴うハードウェアの追加実装費用を安く抑えることができる。
【0023】
赤外線信号の受光部に複数の受光素子を組み込み、受光部の不感知範囲が実質的に存在しないように複数の受光素子の配置を工夫しているので、従来に比して良好な通信性能が得られる。利用者は、サーバからアプリケーションを一度だけダウンロードすれば良く、それ以降はウェブアクセスすることなく空調・照明に関する所望の操作が随時可能であり、通信費用がかからない。個人所有の携帯電話を用いて、対応アプリケーションで簡単操作を行うだけで空調・照明機器の設定変更が可能となり、利便性の向上が期待できる。
【0024】
携帯電話の赤外線通信とZigBee通信とを組み合わせた無線通信方式は、ビルの竣工後でも導入可能であり、ひいてはテナントオプションとして提案可能である。赤外線信号の受光部を共用化し、コマンド内容により制御対象機器を区分する構成を採用しているので、携帯電話という一つのデバイスから複数の操作(照明の発停、空調の発停、空調風量・空調設定温度の変更など)が可能である。
【0025】
さらに、赤外線受光ZigBee端末、空調制御ZigBee端末、照明制御ZigBee端末を複数台設置することで、ZigBeeのマルチホップ通信により、離れた場所で受光した赤外線通信信号でも所望のエリアの操作をすることが可能である。また、携帯電話を個別識別することにより、操作できるエリアを限定することも可能である。
【0026】
携帯電話は、利用者に固有の携帯情報端末であり、個人認証による入退室管理などのセキュリティ強化や、優先権を持たせた機器操作などに最適である。個人認証によるセキュリティ強化に加えて、ウェブアクセスをほとんど行わないため、ウィルスの侵入や情報漏洩の可能性が低い。
【0027】
なお、上述の説明では、照明器具および空調機器の操作に関する情報を含む赤外線信号を携帯電話から発信している。しかしながら、これに限定されることなく、照明器具および空調機器のうちの少なくとも一方の操作に関する情報を含む光信号を、利用者が携帯する他の適当な情報端末から発信しても良い。
【0028】
また、上述の説明では、大部屋事務室に設けられた照明器具および空調機器の操作を制御する操作制御システムに対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、大部屋事務室以外の適当な空間に設けられた照明器具および空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御する操作制御システムに対して本発明を適用することができる。
【0029】
また、上述の説明では、照明制御、空調制御に、無電圧接点、各種インターフェース変換器を適用しているが、これに限定されることなく、制御対象となる空調、照明のインターフェースに併せた制御方法を使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 受光部
1a〜1h 受光素子
2 制御部
11 照明器具
12 空調機器
13 携帯電話
14 天井面
15 インターネット
41 赤外線受光ZigBee端末
42 照明制御ZigBee端末
45 空調制御ZigBee端末
46 空調機器制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器具および空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御する操作制御システムであって、
携帯情報端末からの光信号を受光するための受光部と、
前記受光部が受光した光信号に基づいて前記照明器具および前記空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御する制御部とを備え、
前記受光部は、前記光信号の感知範囲が放射状に分散するように配置された複数の受光素子を有することを特徴とする操作制御システム。
【請求項2】
前記携帯情報端末は、携帯電話であることを特徴とする請求項1に記載の操作制御システム。
【請求項3】
前記光信号は、赤外線信号であることを特徴とする請求項1または2に記載の操作制御システム。
【請求項4】
前記複数の受光素子は、天井面とほぼ平行な面に沿って円環状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の操作制御システム。
【請求項5】
前記受光部は、前記複数の受光素子のうち、最も強い光信号を受光した受光素子の出力を前記受光部の出力とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の操作制御システム。
【請求項6】
照明器具および空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御する操作制御方法であって、
前記照明器具および前記空調機器のうちの少なくとも一方の操作に関する情報を含む赤外線信号を携帯電話から発信することと、
赤外線信号の感知範囲が放射状に分散するように配置された複数の受光素子を有する受光部が前記携帯電話からの赤外線信号を受信することと、
前記受光部が受光した赤外線信号に基づいて前記照明器具および前記空調機器のうちの少なくとも一方の操作を制御することとを含むことを特徴とする操作制御方法。
【請求項7】
前記携帯電話から通信ネットワークに接続して所定のアプリケーションをダウンロードすることと、
前記所定のアプリケーションを利用して所望の操作に対応した情報を前記携帯電話に入力することとを含むことを特徴とする請求項6に記載の操作制御方法。
【請求項8】
前記受光部の出力として、前記複数の受光素子のうち、最も強い赤外線信号を受光した受光素子の出力を用いることを特徴とする請求項6または7に記載の操作制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−195141(P2012−195141A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57704(P2011−57704)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(503362463)アドソル日進株式会社 (18)
【Fターム(参考)】