説明

照明器具

【課題】 照明器具本体と反射板との電気的な導通を確保する照明器具を提供する。
【解決手段】 表面に絶縁被膜を被着し導電部材で構成してなる照明器具本体1に、表面に絶縁被膜を被着し導電部材で構成してなる反射体3を固定ネジ4で支持する照明器具において、ネジ頭部の下面と反射体との間に、導電性材質で構成してなる環状の導電部材5を設け、また同環状の導電部材の内周縁に弾性を有する複数のネジ係合突出片6を一体構成し、さらに同環状の導電部材の外周縁に弾性を有する複数の爪状被膜剥離片8を一体構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具の導通構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば直管形の蛍光ランプを装着してなる蛍光灯照明器具では、導電材質で構成してなる照明器具本体に、表面に絶縁性の保護皮膜を被着してなる反射板をネジで支持する構成が実施されている。反射板の保護被膜としては一般に塗装が施されている。さらに電気的な安全性を高めるために照明器具本体と反射板との電気的接続が必要である。
【0003】
照明器具本体と反射板との電気的な接続をとる場合、ネジ頭部の下面に突起部を設け、螺合時の回転により反射板の塗膜を剥離し、器具本体と反射板の導通をとる構造としている(例えば、特許文献1参照)。図12はその構造を説明するものであり、塗膜剥離機能のついた金属製固定ネジと反射板ネジ貫通穴および本体受金具の構成を示した断面図である。
【0004】
また、反射板取付用のつまみネジとつまみネジが螺合するネジ穴縁部弾性係合する爪片が設けられており、ネジ穴縁部に前記爪片が食い付く導電部材を設けた構造のものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。図13はその構造を説明するものであり、導電部材と反射板ネジ貫通穴および本体受金具の構成を示した断面図である。
【0005】
【特許文献1】特開平8−334114号
【特許文献2】特開2002−184232号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記したようにネジ頭部の下面に突起部を設ける構造の場合、螺合時の回転により反射板の塗膜を剥離するため、突起部による反射板の塗膜剥離が大きく発生し、導通に必要な接触面以外も剥離しているので錆の発生が懸念される。また、突起部と固定ネジ頭部も含めた導通確保が必要であり全体を金属で構成すると、コスト高および意匠の問題がある。
【0007】
一方、反射板取付用の固定ネジと固定ネジが螺合するネジ穴縁部弾性係合する爪片を設ける場合、ネジ穴縁部に前記爪片が食い付く構造としてあるため、前述のネジの螺合時の回動による反射板の塗膜剥離が起こらず錆の発生を抑える効果が期待できる。
しかし、ネジ穴縁部に導電部材の弾性爪片を食い付かせる構造としてあるため、反射板に設けるネジ貫通穴は、導通部材の大きさ程度の貫通穴が必要であり、通常のネジ貫通穴より大きくする必要が生ずる。
【0008】
また、一般の照明器具に使用する固定ネジ頭部(樹脂つまみ部)は、反射板の白色塗装に合わせて白色の樹脂で成型されることが多い。例えばM4のネジにおいてネジ頭部(金属部)直径は8mm程度の大きさであり、固定ネジ頭部は頭部樹脂成型時点でインサートする方法で形成され、ネジ頭部(金属部)の大きさから直径15mm程度の樹脂つまみ部が多い。
【0009】
また、反射板のネジ貫通穴はM4のネジに対して6mmから7mm程度の直径で加工される。ここで、ネジ貫通穴がネジ頭部(金属部)よりも大きくなると、万一導電部材が変形し同時に樹脂部破損した時に、固定ネジから反射板が落下する危険性も懸念される。
また、化粧ネジ頭部も含めた全体を金属とすれば前述の懸念は解消されるが、コスト高および意匠の問題もあり、適切ではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、照明器具本体と反射板との電気的な導通を目的とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、表面に絶縁被膜を被着し導電部材で構成してなる照明器具本体に、表面に絶縁被膜を被着し導電部材で構成してなる反射体をネジで支持する照明器具において、
ネジ頭部の下面と反射体との間に、導電性材質で構成してなる環状の導電部材を設け、また同環状の導電部材の内周縁に弾性を有する複数のネジ係合突出片を一体構成し、さらに同環状の導電部材の外周縁に弾性を有する複数の爪状被膜剥離片を一体構成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、ネジ係合突出片は、ネジの螺合方向に傾斜した形状で構成され、さらにネジ係合突出片の先端とネジの間隔は、ネジの締め込み段階に対して連動して回動しない係合状態で構成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、環状の支持体の爪状被膜剥離片の先端は、ネジの締め込み完了状態において、反射体の被膜を剥離するように構成したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、環状の支持体の爪状被膜剥離片は、先端近傍にくの字状の曲折部を有し、導電部材の環状面よりも反射体方向に高さを有して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環状の支持体の内周縁に弾性を有する複数のネジ係合突出片を一体構成し、さらに同環状の支持体の外周縁に弾性を有する複数の爪状被膜剥離片を一体構成したことにより、ネジの押圧により照明器具本体と反射板との電気的な導通を確実に確保することができる。
また、導電部材は反射板を固定する際に外周縁に設けたくの字状に成形された複数の爪状塗膜剥離片が、ネジ締め込み作業のほぼ終了時点においてのみ同部材の先端がネジの押圧により反射板の塗膜を剥離する構造とし、剥離面積は極めて小さく、錆の発生を防ぐことが可能となる。
また、コスト高および意匠の問題の面でも有効な手段となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を図1乃至図11を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1および図2は本発明の一実施形態である蛍光灯照明器具の外観斜視図および反射板を本体より外した分解斜視図である。反射板3は、導電部材5を取り付けた固定ネジ4により、反射板受け金具2にネジ止めされ、器具本体1に固定される。
図3は本発明の固定ネジに取付けて使用される導電部材の外観斜視図で各部構成を示したものである。導電部材は例えばステンレスで構成してある。
【0018】
照明器具の反射板を器具本体に取付けるために使用する固定ネジに取付けて使用される同導電部材は、環状の導電部材内周縁には、固定ネジにより支持される弾性を有する複数のネジ係合突出片6を内方に向けて設けるとともに、外周には弾性を有する複数の爪状塗膜剥離片8を形成したことにより、ネジの押圧により確実に反射板と器具本体に設けた受け金具との間の導通を確保することができる。
【0019】
図4は図3の導電部材5の上面図および側面図、図5は断面図である。図6は図3の使用状態を示す導電部材の概略側面図である。
前記導電部材は中央に固定ネジに弾性係合する複数の支持片を有し、同支持片はネジ挿入方向に傾斜した形状で構成され、ネジ係合突出片6の先端の内径は、固定ネジ4のネジ山外径よりも小さく、かつネジ溝外径よりも大きく形成され、ネジの締め込みの回動に連動せず、ネジから外れることもない。例えばM4のネジにおいて、ネジ山径は4mm、ネジ谷径は3.4mmであるので、ネジ係合突出片6の先端の内径は、3.5mm程度で構成してある。
【0020】
締め込みをほぼ完了時には、爪状塗膜剥離片8は反射板3に押圧され、更なる押圧で傾斜しているネジ係合突出片6は起き上がり、ネジ係合突出片の先端7がネジ山に係合する。この時点で導電部材5は、ネジの締め込みに対して連動して回動する。それまでは反射板へのネジの押圧は作用せず、よって反射板の塗膜剥離も生じない。
また、爪状塗膜剥離部9は反射板3の剥離を確実とするため、反射板3との接触角度を90度に近い角度(例えば、60度)を維持するようにくの字状に成形し、導電部材の環状面に対して反射体方向に高さ(例えば、0.5mm)を有している。爪状塗膜剥離片8の外径は、固定ネジ4の頭部(樹脂つまみ部)より小さく、例えば11mm程度で構成しており、導電部材5および反射板3の剥離部分が固定ネジ4からはみ出て見えることなく、美観を損ねることもない。
【0021】
次いで反射板取付けの手順と導通状態を説明する。
図7は本発明の導電部材と反射板および本体受金具の構成を示した側面図である。
図8は本発明の導電部材と反射板ネジ貫通穴および本体受金具の構成を示した断面図である。
図9および図10、図11は導電部材の導通状態を示す拡大断面図である。
まず、図3のように照明器具本体1に反射板3を固定する固定ネジ4に導電部材5を装着する。
次に、反射板3を器具本体1の2ヶ所ある反射板受け金具2に固定ネジ4で締め込む。このとき、図9のようにネジ締め込み段階の回動に導電部材5は連動しない。この状態では、固定ネジ4のネジ4Aと反射板受け金具2および照明器具本体1の導通が確保される。
【0022】
次に、締め込みをほぼ完了時には、導電部材の環状面に対して反射体方向に高さを有している爪状塗膜剥離片8は反射板3に当接し、図10のように更なる押圧で導電部材5のネジ係合突出片6は押し伸ばされた状態となる。ネジ係合突出片6が起き上がることで、ネジ4Aにネジ係合突出片の先端7が食い込み導電部材5は連動して回動し始める。この状態では、固定ネジ4のネジ4Aと導電部材5の導通が確保される。
【0023】
次に、導電部材5が連動して回動し始めると、ネジ締め込み作業のほぼ完了時には、反射板3に当接していた爪状塗膜剥離部9が、更なる押圧により図11のように反射板3表面の塗膜3A(例えば20〜30μm)を剥離し、反射板3と導電部材5の導通が確保され、したがって、照明器具本体1と反射板3の導通が確保される。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、ネジの押圧により確実に反射板と照明器具本体に設けた受け金具との間の導通を確保することができる。また、爪状塗膜剥離部9との接触箇所以外の剥離は発生せず、錆の発生を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態である蛍光灯照明器具の外観斜視図。
【図2】図1の分解斜視図。
【図3】本発明の固定ネジに取付けて使用される導電部材の外観斜視図。
【図4】図3の上面図および側面図。
【図5】図3の側面断面図。
【図6】図3の使用状態を示す導電部材の概略側面図。
【図7】本発明の導電部材と反射板および本体受金具の構成を示した側面図。
【図8】図7の断面図。
【図9】ネジ締め込み段階の導通状態を説明する拡大断面図
【図10】ネジ締め込み完了前の導通状態を説明する拡大断面図
【図11】ネジ締め込み完了状態の導通状態を説明する拡大断面図
【図12】従来の塗膜剥離機能のついた金属製固定ネジと反射板ネジ貫通穴および本体受金具の構成を示した断面図。
【図13】従来の導電部材と反射板ネジ貫通穴および本体受金具の構成を示した断面図。
【符号の説明】
【0026】
1 照明器具本体
2 反射板受け金具
3 反射板
3A 塗膜
4 固定ネジ
4A 固定ネジにインサートされるネジ
4B 固定ネジにインサートされるネジの頭部
4C 固定ネジの樹脂製頭部
5 導電部材
6 ネジ係合突出片
7 ネジ係合突出片の先端
8 爪状塗膜剥離片
9 爪状塗膜剥離部
10 反射板ネジ貫通穴
11A 金属製固定ネジ
11B 金属製固定ネジ頭部の塗膜剥離部
11C 金属製固定ネジ頭部
12A 固定ネジにインサートされるネジ
12B 固定ネジにインサートされるネジの頭部
12C 固定ネジの樹脂製頭部
13 導電部材
14 反射板ネジ貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に絶縁被膜を被着し導電部材で構成してなる照明器具本体に、表面に絶縁被膜を被着し導電部材で構成してなる反射体をネジで支持する照明器具において、
ネジ頭の下面と反射体との間に、導電部材で構成してなる環状の支持体を設け、また同環状の支持体の内周縁に弾性を有する複数のネジ係合突出片を一体構成し、さらに同環状の支持体の外周縁に弾性を有する複数の爪状被膜剥離片を一体構成したことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
ネジ係合突出片は、ネジの螺合方向に傾斜した形状で構成され、さらにネジ係合突出片の先端とネジの間隔は、ネジの締め込み段階に対して連動して回動しない係合状態で構成したことを特徴とする請求項1記載の照明器具。
【請求項3】
環状の支持体の爪状被膜剥離片の先端は、ネジの締め込み完了状態において、反射体の被膜を剥離するように構成したことを特徴とする請求項1及び請求項2記載の照明器具。
【請求項4】
環状の支持体の爪状被膜剥離片は、先端近傍にくの字状の曲折部を有し、導電部材の環状面よりも反射体方向に高さを有して構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−280820(P2007−280820A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107021(P2006−107021)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】