照明装置、及びこれを備えた画像読取装置
【課題】LED素子をライン状に複数個整列させて光源を構成する照明装置において、画像読取装置において、LED素子の配設個数を少なくしてコストアップを抑制するとともに、光量ムラのない原稿照射を行う。
【解決手段】画像を読み取る際のLED素子単体の光量をA、全体の光量をB、LED素子の照射角をα、隣接するLED素子の中心間のピッチをP、LED素子の発光面から原稿面までの距離をH、としたときに、これらの値が、次式、
A/B≧0.5
P/H≦0.6α+0.25
を満足するように設定する。
【解決手段】画像を読み取る際のLED素子単体の光量をA、全体の光量をB、LED素子の照射角をα、隣接するLED素子の中心間のピッチをP、LED素子の発光面から原稿面までの距離をH、としたときに、これらの値が、次式、
A/B≧0.5
P/H≦0.6α+0.25
を満足するように設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の点光源(例えば、LED素子)をライン状に整列させて光源を構成する照明装置、及びこれを備えた画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ等の画像形成装置に使用される画像読取装置において、照明装置として、点光源であるLED素子を複数、使用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数のLED素子をライン状に整列させ、そのラインに直交する方向に原稿を相対移動させながら、LED素子で原稿を照射する。原稿からの反射光は、結像レンズを介してCCD等の撮像素子で受光され、これにより、原稿の画像面を読み取ることができる。
【0004】
LED素子には、一般に、消費電力が小さい、発熱量が少ない、寿命が長い等の利点がある。
【特許文献1】特開平8−317133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LED素子には、特定の方向に光を強く照射するという特性がある。このため、LED素子を、上述のように画像読取装置の照明装置として使用する場合、LED素子の照射角α、隣接するLED素子間のピッチP、LED素子から原稿面までの距離Hを好適に設定することが必要となる。例えば、ピッチPが大きすぎる場合、つまり隣接するLED素子間の距離が離れすぎている場合には、原稿面において光量ムラが発生する。この逆に、ピッチPが小さすぎる場合、つまり隣接するLED素子間の距離が近すぎる場合には、上述の光量ムラは解消するものの、必要なLED素子の数が多くなるため、コストアップを招くことになる。さらに、ピッチPと距離Hとの関係は、LED素子の照射角によっても変わってくる。また、例えば、ピッチPを一定にした場合でも、LED素子から原稿面までの距離Hが近すぎると、光量ムラが発生し、逆に遠すぎると原稿面での光量が不足するため、その分、LED素子を増やす必要がある。
【0006】
近年のLED素子の高輝度化を考慮すると、原稿面の全体光量Bに対するLED素子単体の光量Aの割合、A/Bを大きくして、必要光量を得るためのLED素子の数量を少なくすることが好ましい。ただし、A/Bが大きいことは、LED素子が原稿面に近いことを意味し、上述のように光量ムラが発生するおそれがある。
【0007】
以上のように、コストアップを抑制しつつ、光量ムラのない原稿照射を行おうとすると、LED素子単体の光量A、原稿面の全体光量B、LED素子の照射角α、隣接するLED素子間のピッチP、LED素子と原稿面との距離Hの間には、密接な関係があることがわかる。
【0008】
そこで、本発明は、点光源単体の光量A、原稿面の全体光量B、点光源の照射角α、隣接する点光源間のピッチP、点光源と原稿面との距離Hの関係を適宜に設定することにより、コストアップを抑制しつつ、光量ムラのない原稿照射を行うことができる照明装置、及びこれを備えた画像読取装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ライン状に整列された複数の点光源により原稿の画像面をライン状に照射する光源と、前記ラインに対して前記原稿が直交する方向に移動するように前記光源と前記原稿とを相対移動させる移動装置と、を備えた照明装置に関する。この発明に係る照明装置は、画像を読み取る際の前記点光源単体の光量をA、全体の光量をB、前記点光源の照射角をα(rad)、隣接する前記点光源の中心間のピッチをP、前記点光源の発光面から原稿面までの距離をH、としたときに、これらの値が、次式、
A/B≧0.5
P/H≦0.6α+0.25
を満足するように設定されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る照明装置において、前記点光源の発光面が原稿面に対して傾斜して配置されている場合において、前記距離Hが、前記点光源の発光面の中心からの法線と原稿面との交点と、前記点光源の発光面の中心との距離である、ことを特徴としている。
【0011】
請求項3に係る発明は、光源と原稿とを相対移動させながら前記原稿の画像面を照射する照明装置と、前記照明装置から出射されて前記原稿の画像面で反射された反射光により画像を結像する結像レンズと、固体撮像素子とを備えた画像読取装置に関する。この発明に係る画像読取装置は、前記照明装置が、請求項1又は2に係る照明装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によると、画像を読み取る際の点光源単体の光量をA、全体の光量をB、点光源の照射角をα、隣接する点光源の中心間のピッチをP、点光源の発光面から原稿面までの距離をH、としたときに、これらの値のうち、AとBとについて、A/B≧0.5が成り立つように設定することにより、光量ムラの発生を防止することができる。また、α,P,Hの関係においては、P/H≦0.6α+0.25が成り立つようにこれらを値を設定することにより、コストアップを抑制しつつ、光量ムラのない原稿照射を行うことができる。なお、上述の関係式は、実験に基づいて設定したものである。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1に係る照明装置において、点光源の発光面が原稿面に対して傾斜して配置されている場合を規定するものであり、この場合には、距離Hが、点光源の発光面の中心からの法線と原稿面との交点と、点光源の発光面の中心との距離を、距離Hとする。本請求項においても、請求項1と同様の効果を奏することができる。
【0014】
請求項3の発明は、画像読取装置において、照明装置が請求項1又は2に係る照明装置であり、この照明装置が原稿面を光量ムラなく照射するので、画像読取を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
【0016】
<実施形態1>
図1〜図4を参照して、本発明に係る照明装置10、及びこれを備えた画像読取装置11について説明する。図1〜図4のうち、図1,図2は、画像読取装置11の縦断面を正面側(前側)から見た図であり、さらに、図1は光学系を、また図2は駆動系を説明する図である。図3,図4は、光源12と原稿のサイズと画像読取時の原稿の位置との関係を説明する上面図であり、さらに、図3は原稿サイズがA列,B列である場合、また図4は原稿サイズがインチサイズである場合を示している。なお、以下の説明では、図1〜図4中における左右を、画像読取装置11の左右として、また図1,図2中における上下を、画像読取装置11の上下として、また図3,図4中における下、上をそれぞれ画像読取装置11の前、後として説明する。さらに、図3,図4中における原稿の上下方向の長さを通紙幅(又は単に「幅」)、左右方向の長さを搬送方向長さ(又は単に「長さ」)とする。
【0017】
図2に示すように、画像読取装置11は、照明装置10と結像レンズ13とCCD(固体撮像素子)14とを備えている。さらに、照明装置10は、光源12と駆動装置(移動装置)15とを備えている。これら光源12、駆動装置15、照明装置10、結像レンズ13、CCD14は、いずれも直方体状の筐体(フレーム)16の内側に配設されている。筐体16は、その上面に開口部17を有していて、この開口部17には、透明なコンタクトガラス18が配設されている。なお、本実施形態では、実際にはコンタクトガラス18の上方に開閉自在に配設されている原稿押圧板は図示を省略している。この原稿押圧板は、閉鎖状態では、コンタクトガラス18上に載置された原稿を上方からコンタクトガラス18の上面に押し付けるようになっている。
【0018】
図3,図4に示すように、コンタクトガラス18は、その上面に載置されるシート状の原稿のうちの、サイズが最大の原稿よりも大きい長方形状に形成されている。コンタクトガラス18における、左端には前後方向に長い左指示板20が、また後端及び前端には、それぞれ左右方向に長い後指示板21、前指示板22が配設されている。左指示板20の後端と後指示板21の左端とが交差する位置が、読取基準位置P01となっている。コンタクトガラス18に載置される原稿は、その1つの角部、すなわち左端でかつ後端に位置する角部(基準の角部)をこの読取基準位置P01に合わせた位置(所定の位置)に載置される。図3,図4においては、基準の角部を読取基準位置P01に合わせた状態の種々のサイズの原稿を図示している。ここで、各サイズの原稿における、基準の角部の対角に相当する位置には、それぞれの原稿のサイズ、及び向きを表示してある。例えば、図3中のB5,A4は、それぞれの原稿における「長辺」を左指示板20に合わせたときの原稿の位置を示す。以下、これを原稿の「横置き」という。また、B5R,A4Rは、それぞれの原稿における「短辺」を左指示板20に合わせたときの原稿の位置を示している。以下、この「R」が付されたものを原稿の「縦置き」といって、「横置き」とは区別している。なお、これに従うと、図3中の「B4」,「A3」については、本来、「B4R」,「A3R」と表記すべきものであるが、これらのサイズの原稿は、横置きすることができず、つまり、一通りの置き方しかできず、区別する必要がないので、簡略化して表記している。
【0019】
上述の「B5」,「B5R」,「A4」,「A4R」,「B4」,「A3」等の表記は,実際は、コンタクトガラス18上ではなく、左指示板20及び後指示板21に表記されている。例えば、左指示板20における符号P1,P2,P3,P4で示す位置には、この順に「B5R」,「A4R」,「B5,B4」,「A4,A3」という表記がなされている。一方、後指示板21における符号P5,P6,P7,P8で示す位置には、この順に「B6R,B5」,「A5R,A4」,「B5R」,「A4R」という表記がなされている。これにより、ユーザは、原稿をコンタクトガラス18上の所定の位置に載置したときに、その原稿サイズ及び向きを知ることができる。したがって、例えば、原稿の画像読取り結果に基づいて複写機やプリンタによって紙等のシート上に画像を形成するような場合には、画像形成に供されるシートのサイズや向きを選択する際の参考とすることができる。なお、図4中では、原稿サイズを、インチサイズで表示している。図3中のコンタクトガラス18における、「A4,A3」の通紙幅よりも少し広い幅が、画像の最大読取幅(最大照射幅)となり、また図4中のコンタクトガラス18における、「11×17」の搬送長さよりも少し長い範囲が、画像の最大読取長さ(最大照射長さ)となる。後述する光源12は、最大読取幅と最大読取長さとに囲まれた最大読取領域全体を照射することができるようになっている。
【0020】
図1〜図4に示すように、コンタクトガラス18の左端側の下方には、照明用光学移動枠ユニット23が配設されている。照明用光学移動枠ユニット23は、上述の最大読取幅よりも前後方向の長さが長い移動枠24を有している。この移動枠24には、光源12が取り付けられた光源用メイン基板(基板)25と、凹面鏡26と、第1ミラー27が搭載されている。このうち光源用メイン基板25は、図3,図4に示すように、前後方向の長さが、最大読取幅よりも長くなるように形成されていて、その上面には、光源12が取り付けられている。本実施形態では、光源12は、点光源であるLED素子L1〜L22を複数(図3,図4では22個)、前後方向にライン状に整列させて構成している。ここで、ライン状とは、1本の直線上に整列された場合に限らず、例えば千鳥状に整列して、実質的に直線状である場合も含めるものとする。これらLED素子L1〜L22は、ライン方向(前後方向)に沿って原稿の画像面を光量ムラなく照射できる所定のピッチP(本実施形態では例えば15mm)で整列されている。図3,図4において、最後端のLED素子L1の中心から、最前端のLED素子L22の中心までの距離が、315mm(=15mm×21)に設定されていて、これらLED素子L1とLED素子L22との間に、図3に示す例では、通紙幅が最大のA4サイズの原稿の長辺(=297mm)、又はA3サイズの原稿の短辺(=297mm)が入るように、また図4に示す例では、長辺又は短辺の長さが11インチ(≒279mm)の原稿の長辺又は短辺が入るように設定されている。複数のLED素子L1〜L22によって構成された光源12は、図1に示すように、コンタクトガラス18の上面に設定されている読取ラインLを右斜め下方から照射するようになっている。
【0021】
図1に示すように、凹面鏡26は、読取ラインLから下ろした垂線hに対して、上述の光源12とほぼ線対称の位置に配置されている。上述のように、光源12は、コンタクトガラス18上の原稿を右斜め下方から照射しているため、原稿の左端に影が形成されて、この影が前後方向の直線上の画像として読み込まれがちである。凹面鏡26は、光源12からの光を反射して読取ラインLに導いて、この影を除去するためのものである。照明用光学移動枠ユニット23における、読取ラインLの直下に位置する部分には、第1ミラー27が配設されている。第1ミラー27は、左斜め上の45度を向けた状態で取り付けられている。以上のように、照明用光学移動枠ユニット23は、移動枠24に光源12、光源用メイン基板25、凹面鏡26、第1ミラー27を搭載した状態で、左右方向に敷設したガイド部材(不図示)に沿って左右方向に移動できる。つまり、ライン状(線状)の光源12に対して、直交する方向に移動することができるようになっている。この照明用光学移動枠ユニット23は、右方に移動しながら読取ラインLに向けて光源12から光を照射し、原稿の画像面からの反射光を次に説明する第2ミラー28に導くものである。
【0022】
図1,図2に示すように、コンタクトガラス18の左端側の下方には、上述の照明用光学移動枠ユニット23の左方に、反射用光学移動枠ユニット30が配設されている。反射用光学移動枠ユニット30は、上述の最大読取幅よりも前後方向の長さが長い移動枠31を有している。この移動枠31には、右斜め下45度を向けた状態で第2ミラー28が、また右斜め上45度を向けた状態で第3ミラー32が搭載されている。さらに、この移動枠31は、その前端と後端とにおいて、可動プーリ33を回動自在に支持している。以上のように、反射用光学移動枠ユニット30は、第2ミラー28、第3ミラー32、可動プーリ33を搭載した状態で、左右方向に敷設されたガイド部材(不図示)に沿って左右方向に移動できるようになっている。この反射用光学移動枠ユニット30は、右方に移動しながら、上述の照明用光学移動枠ユニット23の第1ミラー27からの光を第2ミラー28、第3ミラー32で反射して後述の結像レンズ13に導くものである。
【0023】
図2に示すように、筐体16の左端近傍には前端と後端とに固定左プーリ34,34が、また筐体16の右端近傍には前端と後端とに固定右プーリ35,35がそれぞれ回動自在に配設されている。また、図2中の固定右プーリ35,35の下方には、正逆回転可能なモータ36が配設されている。さらに、モータ36の左方には、駆動軸37と一体の駆動プーリ38が配設されていて、モータ36の出力軸40と駆動プーリ38との間には、駆動ベルト41が張設されている。駆動軸37の前端と後端とには、ワイヤドラム42,42が固定されており、これらワイヤドラム42,42には、それぞれ光学ワイヤ43,43が巻き掛けられている。これら光学ワイヤ43,43の一方の端部44,44は、筐体16の左側壁45の内面に固定されている。光学ワイヤ43,43は、ここから右方に延びて、反射用光学移動枠ユニット30の可動プーリ33,33の右半部に掛け渡されて左方に折り返し、固定左プーリ34,34の左半部に掛け渡された後、右方に折り返して固定右プーリ35,35に向かって延びる。さらに、固定右プーリ35,35の右半部に掛け渡されて左方に延び、途中で照明用光学移動枠ユニット23に固定された後、さらに左方に延びて、可動プーリ33,33の左半部に掛け渡されて右方に折り返し、レンズ取付台46上に突設されたフック47に係止される。このような光学ワイヤ43,43の引き回しに基づき、モータ36が図2中の反時計回りに回転すると、駆動ベルト41、駆動プーリ38、駆動軸37を介して、ワイヤドラム42,42が同じく反時計回りに回転する。これに伴い、光学ワイヤ43,43に引かれて、照明用光学移動枠ユニット23及び反射用光学移動枠ユニット30が右方に移動する。この際、反射用光学移動枠ユニット30は、その可動プーリ33,33がいわゆる動滑車として作用するため、移動距離が照明用光学移動枠ユニット23の移動距離の半分となる。これにより、照明用光学移動枠ユニット23及び反射用光学移動枠ユニット30の移動にかかわらず、コンタクトガラス18から結像レンズ13に至る光路長が一定に保持されて、次に説明する結像レンズ13を通過した光がCCD14上で像を結ぶようになっている。なお、本実施形態では、上述のように光源12を移動させるための構成全体が駆動装置(移動装置)に相当する。
【0024】
図2に示すように、結像レンズ13は、上述のレンズ取付台46に固定されたレンズ取付板48上に固定されている。光源12から照射された光は、原稿の画像面で反射されて、図1に示す光路Kをたどる。すなわち、画像面からの反射光は、第1ミラー27、第2ミラー28、第3ミラー32で反射されて結像レンズ13に入射される。入射された光は、次に説明するCCD14上で結像される。
【0025】
CCD14は、その左端面に固定されて上端部50が左方に折曲されたCCD取付板51を介して、上述のレンズ取付台46に固定する「コ」字形のCCD調整板52に取り付けられている。CCD調整板52の前端部と後端部には、内径に雌ねじが螺刻されたボス53,53が固定されていて、これらのボス53,53には、CCD取付板51の上端部50を貫通したピン54,54が螺合されている。さらに、CCD取付板51とCCD調整板52との間には、圧縮ばね55,55が介装されていて、CCD取付板51を上方に付勢している。この状態で、ピン54,54を時計回りあるいは反時計回りに回すことで、CCD取付板51を介してCCD14の高さ位置を微調整することができる。この微調整をCCD14の前端部及び後端部で行うことで、CCD14の上下方向の位置調整を行うことができるようになっている。
【0026】
以上のように、光学系の光源12によって原稿の画像面を読取ラインLに沿って照射(主走査)し、さらに駆動系によって読取ラインLを右方に移動させて走査(副走査)することにより、原稿の画像面をその全領域にわたってCCD14で順次に読み取ることができる。
【0027】
以上で、照明装置10及びこれを備えた画像読取装置11の概略についての説明を終える。
【0028】
次に、図5〜図9を参照して、照明装置10について詳述する。なお、これらの図を参照して説明する照明装置10は、上述の図1〜図4で説明した照明装置10とは、一部の構成が異なる。上述の図5〜図9のうち、図5は、複数のLED素子を千鳥状に並べて構成した光源12を上方から見た図である。図6は、図5中のX−X線矢視拡大図である。図7は、LED素子の照射角α及び隣接するLED素子の中心間のピッチPと、LED素子の発光面から原稿面までの距離Hとの関係を説明する図である。図8は、P/H=1.45の場合の最大リップルを説明する図である。図9は、P/H=1.55の場合の最大リップルを説明する図である。
【0029】
図1〜図4に示す照明装置10においては、複数のLED素子は、1本の直線上に整列されていた。これに対し、図5に示す照明装置10においては、光源12は、複数のLED素子が2列に並べられ、全体として千鳥状に整列されて実質的に直線状を構成している。具体的には、図1に示す凹面鏡26に代えて、さらに複数のLED素子が1列に整列された状態で配置されている。なお、光源12及び移動枠24の構成が異なる点を除いて、他の構成は、図1〜図4に示すものと同様である。
【0030】
図5に示すように、透明の(光透過性の)コンタクトガラス18の左端には前後方向に長い左指示板20が配設され、後端には左右方向に長い後指示板21が配置されている。そして、照明用光学移動枠ユニット23及び反射用光学移動枠ユニット30は、左指示板20に対して平行に配置されるとともに、上述のように左右方向に移動可能に構成されている。図6に示すように、移動枠24は、読取ラインLから、コンタクトガラス18に対して垂直に降ろした垂線hに対して線対称に形成されている。移動枠24は、第1の傾斜面24aと第2の傾斜面24bとを有している。各傾斜面24a,24bは、それぞれの法線方向が上述の読取ラインLを向くように傾斜されている。各傾斜面24a,24bには、方形板状の光源用メイン基板25が複数、取り付けられる。これらの光源用メイン基板25は、各傾斜面24a,24bにおいて、後述するLED素子のピッチPの2倍の間隔をもって1列に整列されている。本例では、各光源用メイン基板に25にそれぞれ1つのLED素子が配置されている。図5に示すように、第1の傾斜面24aには、後端側から前端側にかけて、それぞれ光源用メイン基板25と一体のLED素子L1,L3,……L(2n+1)が、ピッチPの2倍の間隔で並べられている。一方、第2の傾斜面24bには、後端側から前端側にかけて、それぞれ光源用メイン基板25と一体のLED素子L2,L4,……L(2n)が、ピッチPの2倍の間隔で並べられている。ただし、nは自然数とする。そして、前後方向の配置について、LED素子L1,L3の間にLED素子L2が位置し、LED素子L3,L5の間にLED素子L4が位置するようになっている。つまり、LED素子L1,L2,L3,L4,L5,……が交互に千鳥状に配置されている。そして、本例では、これらLED素子の前後方向の間隔がピッチPとなる。なお、本例では、光源用メイン基板25をピッチPで1本の直線上に整列させることができないために、上述のように千鳥状に配置したが、読取ラインLを照射するという観点からは、LED素子を千鳥状に配置した場合と、LED素子を1本の直線上に配置した場合とで、実質的な差異はほとんどない。
【0031】
図6に示すように、第1の傾斜面24a上及び第2の傾斜面24b上に、光源用メイン基板25を介して取り付けられたLED素子は、それぞれの発光面の中心から延びる法線が読取ラインLを通るように配置されている。発光面の中心から読取ラインまでの距離をHとする。
【0032】
図5,図6に示すように、移動枠24における読取ラインLの直下に位置する部分には、前後方向に長いスリット24cが形成されている。LED素子から照射されて、原稿面で反射された光は、このスリット24cを通過して、第1ミラー27に到達するようになっている。
【0033】
前述のように、点光源としてのLED素子を複数個、整列させて光源12を構成する場合、LED素子の使用個数を少なくすればコストアップを抑制することができる。一方、LED素子の使用個数が少なすぎると、原稿面に光量ムラが発生する。
【0034】
そこで、本発明では、以下のような実験1〜6を行って、原稿面の光量ムラが許容範囲内で、極力、LED素子の使用個数を少なくする条件を求めるようにした。
【0035】
ここで、LED素子単体の光量(単体光量)をA、全体の光量(全体光量)をB、LED素子の照射角度(照射角)をα、隣接するLED素子の中心間のピッチ(LEDピッチ)をP、LED素子の発光面から原稿面までの距離(原稿面距離)をHとした。ここで、照射角αは、図7に示すように、LED素子の発光面から発光された光が原稿面を照射する際に、光量が半分になる部分の立体角に相当する角度をいう。また、原稿面距離Hは、図6に示すように、LED素子の発光面の中心に立てた法線における発光面の中心と読取ラインLとの距離をいう。
【0036】
ここで、前述のように、P/H(LEDピッチ/原稿面距離)と照射角αとの間には、正の相関関係があることが予想される。そこで、以下の実験1〜6では、上述の条件のうち、単体光量Aを40000[lx]と一定にして、照射角αとP/Hとの関係を求めるようにした。ただし、原稿面距離Hについては、LED素子の光量を確保するためには、可及的小さく設定することが好ましいため、本実験においては、H=6[mm]と一定にした。なお、全体光量Bについては、LEDピッチPを変化させることに付随して変化することになる。
【0037】
本実施形態では、LED素子の使用個数を少なくする条件として、まず、A/Bの目標値を、A/B≧0.5とした。近年のLED素子の高輝度化を考慮すると、原稿面の全体光量Bに対する単体光量Aの割合、A/Bを大きくして、必要光量を得るためのLED素子の数量を少なくすることが好ましいからである。次に、光量ムラの許容範囲(目標値)を、最大リップルが2.5%以下であるとした。光量ムラについては、最大リップルが2.5%以下であれば、実用上、何の問題もない。
【0038】
実験1〜6のうち、実験1(図8)と実験2(図9)とは、照射角αについてはいずれも120[度]とし、LEDピッチPについては、実験1では8.7[mm]、実験2では9.3[mm]とした。また、実験3(図10)と実験4(図11)とは、照射角αについてはいずれも90[度]とし、LEDピッチPについては、実験3では6.9[mm]、実験4では7.5[mm]とした。また、実験5(図12)と実験6(図13)とは、照射角αについてはいずれも60[度]とし、LEDピッチPについては、実験5では4.5[mm]、実験6では5.0[mm]とした。
【0039】
以下、実験1〜6について詳述する。
【0040】
図8に、実験1の条件及び結果を示す。
【0041】
実験1の条件は、
照射角α :120[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:8.7[mm]
(∴P/H=8.7/6.0=1.45)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:1.31[%]<2.5
全体光量B :57000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/57000)≒0.70>0.5
となった。
【0042】
以上の実験1より、照射角α=120[度]、P/H=1.45では、A/B、最大リップルLのいずれも目標値を満足していることがわかった。
【0043】
図9に、実験2の条件及び結果を示す。
【0044】
実験1の条件は、
照射角α :120[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:9.3[mm]
(∴P/H=9.3/6.0=1.55)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:3.44[%]>2.5
全体光量B :54000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/54000)≒0.74>0.5
となった。
【0045】
以上の実験2より、照射角α=120[度]、P/H=1.55では、A/Bは、目標値を満足するが、最大リップルLは、目標値を満足しないことがわかった。
【0046】
以上の実験1及び実験2から、照射角α=120[度]の場合には、最大リップルLが目標値となるP/Hは、1.45と1.55との間にあることがわかり、さらに、H=6[mm]であることから、8.7<P<9.3であることがわかる。
【0047】
そこで、Pの値をこの範囲内で変化させて、さらに実験を行ったところ、P=9.0(P/H=1.50)のときに、最大リップルLが目標値となることが判明した。
【0048】
図10に、実験3の条件及び結果を示す。
【0049】
実験3の条件は、
照射角α :90[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:6.9[mm]
(∴P/H=6.9/6.0=1.15)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:1.11[%]<2.5
全体光量B :68000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/68000)≒0.59>0.5
となった。
【0050】
以上の実験3より、照射角α=90[度]、P/H=1.15では、A/B、最大リップルLのいずれも目標値を満足していることがわかった。
【0051】
図11に、実験4の条件及び結果を示す。
【0052】
実験4の条件は、
照射角α :90[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:7.5[mm]
(∴P/H=7.5/6.0=1.25)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:3.46[%]>2.5
全体光量B :62000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/62000)≒0.65>0.5
となった。
【0053】
以上の実験4より、照射角α=90[度]、P/H=1.25では、A/Bは、目標値を満足するが、最大リップルLは、目標値を満足しないことがわかった。
【0054】
以上の実験3及び実験4から、照射角α=90[度]の場合には、最大リップルLが目標値となるP/Hは、1.15と1.25との間にあることがわかり、さらに、H=6[mm]であることから、6.9<P<7.5であることがわかる。
【0055】
そこで、Pの値をこの範囲内で変化させて、さらに実験を行ったところ、P=7.2(P/H=1.20)のときに、最大リップルLが目標値となることが判明した。
【0056】
図12に、実験5の条件及び結果を示す。
【0057】
実験5の条件は、
照射角α :60[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:5.0[mm]
(∴P/H=5.0/6.0=0.83)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:0.95[%]<2.5
全体光量B :78000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/78000)≒0.51>0.5
となった。
【0058】
以上の実験5より、照射角α=60[度]、P/H=0.83では、A/B、最大リップルLのいずれも目標値を満足していることがわかった。
【0059】
図13に、実験6の条件及び結果を示す。
【0060】
実験6の条件は、
照射角α :60[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:5.5[mm]
(∴P/H=5.5/6.0≒0.92)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:4.00[%]>2.5
全体光量B :70000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/70000)≒0.57>0.5
となった。
【0061】
以上の実験6より、照射角α=60[度]、P/H=0.92では、A/Bは、目標値を満足するが、最大リップルLは、目標値を満足しないことがわかった。
【0062】
以上の実験3及び実験4から、照射角α=60[度]の場合には、最大リップルLが目標値となるP/Hは、0.83と0.92との間にあることがわかり、さらに、H=6[mm]であることから、5.0<P<5.5であることがわかる。
【0063】
そこで、Pの値をこの範囲内で変化させて、さらに実験を行ったところ、P=5.3(P/H=0.88)のときに、最大リップルLが目標値となることが判明した。
【0064】
図13に、以上の実験1〜実験6の結果、及びこれらの実験結果に基づいてさらに行った実験の結果をまとめる。なお、A/Bについては、いずれの実験においても満足していた。
【0065】
図13から、最大リップルを目標値とする、照射角αとP/Hの関係は、照射角αが120[度](≒2.09[rad])のときは、P/H=1.50、照射角αが90[度](≒1.57[rad])のときは、P/H=1.20、照射角αが60[度](≒1.57[rad])のときは、P/H=0.88となることがわかる。
【0066】
図15に、これらの関係を示す。同図に示すように、照射角αをX軸上にとり、P/HをY軸上にとると、これらは、ほぼ直線上に並ぶことがわかる。
【0067】
そこで、これらの関係を直線近似して、
P/H=aα+b
と表して、a及びbの値を求める。
【0068】
この結果、
a=0.6
b=0.25
を得ることができる。これらから、以下の式、
P/H=0.6α+0.25
を得ることができる。
【0069】
以上の結果から、
P/H≦0.6α+0.25
の関係を満足するように、照射角α、LEDピッチP、原稿面距離Hの組み合わせを選択することにより、原稿面での照度が高く、かつ照度ムラのない配光を、少ないLED素子の使用個数で得ることができる。
【0070】
以上の説明では、LED素子L1〜L35を千鳥状に整列させた場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、直線上に整列させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
上述では、本発明の照明装置を画像読取装置に使用する場合を例に説明したが、本発明は、これ以外に例えば、点光源を複数、ライン状に整列させて棒状の光源を構成し、その光源による照射ムラをなくすような場合にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】画像読取装置の縦断面を正面側(前側)から見た図であり、光学系を説明する図である。
【図2】画像読取装置の縦断面を正面側(前側)から見た図であり、駆動系を説明する図である。
【図3】光源と原稿のサイズと画像読取時の原稿の位置との関係を説明する上面図であり、原稿サイズがA列,B列である場合を説明する図である。
【図4】光源と原稿のサイズと画像読取時の原稿の位置との関係を説明する上面図であり、原稿サイズがインチサイズである場合を説明する図である。
【図5】複数のLED素子を千鳥状に並べて構成した光源を上方から見た図である。
【図6】図5中のX−X線矢視拡大図である。
【図7】LED素子の照射角α及び隣接するLED素子の中心間のピッチPと、LED素子の発光面から原稿面までの距離Hとの関係を説明する図である。
【図8】実験1の結果、すなわち、照射角αが120度で、P/H=1.45の場合の最大リップルを説明する図である。
【図9】実験2の結果、すなわち、照射角αが120度で、P/H=1.55の場合の最大リップルを説明する図である。
【図10】実験3の結果、すなわち、照射角αが90度で、P/H=1.15の場合の最大リップルを説明する図である。
【図11】実験4の結果、すなわち、照射角αが90度で、P/H=1.25の場合の最大リップルを説明する図である。
【図12】実験5の結果、すなわち、照射角αが60度で、P/H=0.75の場合の最大リップルを説明する図である。
【図13】実験6の結果、すなわち、照射角αが60度で、P/H=0.83の場合の最大リップルを説明する図である。
【図14】実験1〜実験4の結果を説明する図である。
【図15】照射角αとP/Hとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10……照明装置、11……画像読取装置、12……光源、13……結像レンズ、14……CCD(固体撮像素子)、15……駆動装置(移動装置)、A……LED素子単体の光量、B……全体の光量、L1〜L35……LED素子(点光源)、H……LED素子の発光面から原稿面までの距離、P……隣接するLED素子の中心間のピッチ、α……LED素子の照射角
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の点光源(例えば、LED素子)をライン状に整列させて光源を構成する照明装置、及びこれを備えた画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ等の画像形成装置に使用される画像読取装置において、照明装置として、点光源であるLED素子を複数、使用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数のLED素子をライン状に整列させ、そのラインに直交する方向に原稿を相対移動させながら、LED素子で原稿を照射する。原稿からの反射光は、結像レンズを介してCCD等の撮像素子で受光され、これにより、原稿の画像面を読み取ることができる。
【0004】
LED素子には、一般に、消費電力が小さい、発熱量が少ない、寿命が長い等の利点がある。
【特許文献1】特開平8−317133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LED素子には、特定の方向に光を強く照射するという特性がある。このため、LED素子を、上述のように画像読取装置の照明装置として使用する場合、LED素子の照射角α、隣接するLED素子間のピッチP、LED素子から原稿面までの距離Hを好適に設定することが必要となる。例えば、ピッチPが大きすぎる場合、つまり隣接するLED素子間の距離が離れすぎている場合には、原稿面において光量ムラが発生する。この逆に、ピッチPが小さすぎる場合、つまり隣接するLED素子間の距離が近すぎる場合には、上述の光量ムラは解消するものの、必要なLED素子の数が多くなるため、コストアップを招くことになる。さらに、ピッチPと距離Hとの関係は、LED素子の照射角によっても変わってくる。また、例えば、ピッチPを一定にした場合でも、LED素子から原稿面までの距離Hが近すぎると、光量ムラが発生し、逆に遠すぎると原稿面での光量が不足するため、その分、LED素子を増やす必要がある。
【0006】
近年のLED素子の高輝度化を考慮すると、原稿面の全体光量Bに対するLED素子単体の光量Aの割合、A/Bを大きくして、必要光量を得るためのLED素子の数量を少なくすることが好ましい。ただし、A/Bが大きいことは、LED素子が原稿面に近いことを意味し、上述のように光量ムラが発生するおそれがある。
【0007】
以上のように、コストアップを抑制しつつ、光量ムラのない原稿照射を行おうとすると、LED素子単体の光量A、原稿面の全体光量B、LED素子の照射角α、隣接するLED素子間のピッチP、LED素子と原稿面との距離Hの間には、密接な関係があることがわかる。
【0008】
そこで、本発明は、点光源単体の光量A、原稿面の全体光量B、点光源の照射角α、隣接する点光源間のピッチP、点光源と原稿面との距離Hの関係を適宜に設定することにより、コストアップを抑制しつつ、光量ムラのない原稿照射を行うことができる照明装置、及びこれを備えた画像読取装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ライン状に整列された複数の点光源により原稿の画像面をライン状に照射する光源と、前記ラインに対して前記原稿が直交する方向に移動するように前記光源と前記原稿とを相対移動させる移動装置と、を備えた照明装置に関する。この発明に係る照明装置は、画像を読み取る際の前記点光源単体の光量をA、全体の光量をB、前記点光源の照射角をα(rad)、隣接する前記点光源の中心間のピッチをP、前記点光源の発光面から原稿面までの距離をH、としたときに、これらの値が、次式、
A/B≧0.5
P/H≦0.6α+0.25
を満足するように設定されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る照明装置において、前記点光源の発光面が原稿面に対して傾斜して配置されている場合において、前記距離Hが、前記点光源の発光面の中心からの法線と原稿面との交点と、前記点光源の発光面の中心との距離である、ことを特徴としている。
【0011】
請求項3に係る発明は、光源と原稿とを相対移動させながら前記原稿の画像面を照射する照明装置と、前記照明装置から出射されて前記原稿の画像面で反射された反射光により画像を結像する結像レンズと、固体撮像素子とを備えた画像読取装置に関する。この発明に係る画像読取装置は、前記照明装置が、請求項1又は2に係る照明装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によると、画像を読み取る際の点光源単体の光量をA、全体の光量をB、点光源の照射角をα、隣接する点光源の中心間のピッチをP、点光源の発光面から原稿面までの距離をH、としたときに、これらの値のうち、AとBとについて、A/B≧0.5が成り立つように設定することにより、光量ムラの発生を防止することができる。また、α,P,Hの関係においては、P/H≦0.6α+0.25が成り立つようにこれらを値を設定することにより、コストアップを抑制しつつ、光量ムラのない原稿照射を行うことができる。なお、上述の関係式は、実験に基づいて設定したものである。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1に係る照明装置において、点光源の発光面が原稿面に対して傾斜して配置されている場合を規定するものであり、この場合には、距離Hが、点光源の発光面の中心からの法線と原稿面との交点と、点光源の発光面の中心との距離を、距離Hとする。本請求項においても、請求項1と同様の効果を奏することができる。
【0014】
請求項3の発明は、画像読取装置において、照明装置が請求項1又は2に係る照明装置であり、この照明装置が原稿面を光量ムラなく照射するので、画像読取を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
【0016】
<実施形態1>
図1〜図4を参照して、本発明に係る照明装置10、及びこれを備えた画像読取装置11について説明する。図1〜図4のうち、図1,図2は、画像読取装置11の縦断面を正面側(前側)から見た図であり、さらに、図1は光学系を、また図2は駆動系を説明する図である。図3,図4は、光源12と原稿のサイズと画像読取時の原稿の位置との関係を説明する上面図であり、さらに、図3は原稿サイズがA列,B列である場合、また図4は原稿サイズがインチサイズである場合を示している。なお、以下の説明では、図1〜図4中における左右を、画像読取装置11の左右として、また図1,図2中における上下を、画像読取装置11の上下として、また図3,図4中における下、上をそれぞれ画像読取装置11の前、後として説明する。さらに、図3,図4中における原稿の上下方向の長さを通紙幅(又は単に「幅」)、左右方向の長さを搬送方向長さ(又は単に「長さ」)とする。
【0017】
図2に示すように、画像読取装置11は、照明装置10と結像レンズ13とCCD(固体撮像素子)14とを備えている。さらに、照明装置10は、光源12と駆動装置(移動装置)15とを備えている。これら光源12、駆動装置15、照明装置10、結像レンズ13、CCD14は、いずれも直方体状の筐体(フレーム)16の内側に配設されている。筐体16は、その上面に開口部17を有していて、この開口部17には、透明なコンタクトガラス18が配設されている。なお、本実施形態では、実際にはコンタクトガラス18の上方に開閉自在に配設されている原稿押圧板は図示を省略している。この原稿押圧板は、閉鎖状態では、コンタクトガラス18上に載置された原稿を上方からコンタクトガラス18の上面に押し付けるようになっている。
【0018】
図3,図4に示すように、コンタクトガラス18は、その上面に載置されるシート状の原稿のうちの、サイズが最大の原稿よりも大きい長方形状に形成されている。コンタクトガラス18における、左端には前後方向に長い左指示板20が、また後端及び前端には、それぞれ左右方向に長い後指示板21、前指示板22が配設されている。左指示板20の後端と後指示板21の左端とが交差する位置が、読取基準位置P01となっている。コンタクトガラス18に載置される原稿は、その1つの角部、すなわち左端でかつ後端に位置する角部(基準の角部)をこの読取基準位置P01に合わせた位置(所定の位置)に載置される。図3,図4においては、基準の角部を読取基準位置P01に合わせた状態の種々のサイズの原稿を図示している。ここで、各サイズの原稿における、基準の角部の対角に相当する位置には、それぞれの原稿のサイズ、及び向きを表示してある。例えば、図3中のB5,A4は、それぞれの原稿における「長辺」を左指示板20に合わせたときの原稿の位置を示す。以下、これを原稿の「横置き」という。また、B5R,A4Rは、それぞれの原稿における「短辺」を左指示板20に合わせたときの原稿の位置を示している。以下、この「R」が付されたものを原稿の「縦置き」といって、「横置き」とは区別している。なお、これに従うと、図3中の「B4」,「A3」については、本来、「B4R」,「A3R」と表記すべきものであるが、これらのサイズの原稿は、横置きすることができず、つまり、一通りの置き方しかできず、区別する必要がないので、簡略化して表記している。
【0019】
上述の「B5」,「B5R」,「A4」,「A4R」,「B4」,「A3」等の表記は,実際は、コンタクトガラス18上ではなく、左指示板20及び後指示板21に表記されている。例えば、左指示板20における符号P1,P2,P3,P4で示す位置には、この順に「B5R」,「A4R」,「B5,B4」,「A4,A3」という表記がなされている。一方、後指示板21における符号P5,P6,P7,P8で示す位置には、この順に「B6R,B5」,「A5R,A4」,「B5R」,「A4R」という表記がなされている。これにより、ユーザは、原稿をコンタクトガラス18上の所定の位置に載置したときに、その原稿サイズ及び向きを知ることができる。したがって、例えば、原稿の画像読取り結果に基づいて複写機やプリンタによって紙等のシート上に画像を形成するような場合には、画像形成に供されるシートのサイズや向きを選択する際の参考とすることができる。なお、図4中では、原稿サイズを、インチサイズで表示している。図3中のコンタクトガラス18における、「A4,A3」の通紙幅よりも少し広い幅が、画像の最大読取幅(最大照射幅)となり、また図4中のコンタクトガラス18における、「11×17」の搬送長さよりも少し長い範囲が、画像の最大読取長さ(最大照射長さ)となる。後述する光源12は、最大読取幅と最大読取長さとに囲まれた最大読取領域全体を照射することができるようになっている。
【0020】
図1〜図4に示すように、コンタクトガラス18の左端側の下方には、照明用光学移動枠ユニット23が配設されている。照明用光学移動枠ユニット23は、上述の最大読取幅よりも前後方向の長さが長い移動枠24を有している。この移動枠24には、光源12が取り付けられた光源用メイン基板(基板)25と、凹面鏡26と、第1ミラー27が搭載されている。このうち光源用メイン基板25は、図3,図4に示すように、前後方向の長さが、最大読取幅よりも長くなるように形成されていて、その上面には、光源12が取り付けられている。本実施形態では、光源12は、点光源であるLED素子L1〜L22を複数(図3,図4では22個)、前後方向にライン状に整列させて構成している。ここで、ライン状とは、1本の直線上に整列された場合に限らず、例えば千鳥状に整列して、実質的に直線状である場合も含めるものとする。これらLED素子L1〜L22は、ライン方向(前後方向)に沿って原稿の画像面を光量ムラなく照射できる所定のピッチP(本実施形態では例えば15mm)で整列されている。図3,図4において、最後端のLED素子L1の中心から、最前端のLED素子L22の中心までの距離が、315mm(=15mm×21)に設定されていて、これらLED素子L1とLED素子L22との間に、図3に示す例では、通紙幅が最大のA4サイズの原稿の長辺(=297mm)、又はA3サイズの原稿の短辺(=297mm)が入るように、また図4に示す例では、長辺又は短辺の長さが11インチ(≒279mm)の原稿の長辺又は短辺が入るように設定されている。複数のLED素子L1〜L22によって構成された光源12は、図1に示すように、コンタクトガラス18の上面に設定されている読取ラインLを右斜め下方から照射するようになっている。
【0021】
図1に示すように、凹面鏡26は、読取ラインLから下ろした垂線hに対して、上述の光源12とほぼ線対称の位置に配置されている。上述のように、光源12は、コンタクトガラス18上の原稿を右斜め下方から照射しているため、原稿の左端に影が形成されて、この影が前後方向の直線上の画像として読み込まれがちである。凹面鏡26は、光源12からの光を反射して読取ラインLに導いて、この影を除去するためのものである。照明用光学移動枠ユニット23における、読取ラインLの直下に位置する部分には、第1ミラー27が配設されている。第1ミラー27は、左斜め上の45度を向けた状態で取り付けられている。以上のように、照明用光学移動枠ユニット23は、移動枠24に光源12、光源用メイン基板25、凹面鏡26、第1ミラー27を搭載した状態で、左右方向に敷設したガイド部材(不図示)に沿って左右方向に移動できる。つまり、ライン状(線状)の光源12に対して、直交する方向に移動することができるようになっている。この照明用光学移動枠ユニット23は、右方に移動しながら読取ラインLに向けて光源12から光を照射し、原稿の画像面からの反射光を次に説明する第2ミラー28に導くものである。
【0022】
図1,図2に示すように、コンタクトガラス18の左端側の下方には、上述の照明用光学移動枠ユニット23の左方に、反射用光学移動枠ユニット30が配設されている。反射用光学移動枠ユニット30は、上述の最大読取幅よりも前後方向の長さが長い移動枠31を有している。この移動枠31には、右斜め下45度を向けた状態で第2ミラー28が、また右斜め上45度を向けた状態で第3ミラー32が搭載されている。さらに、この移動枠31は、その前端と後端とにおいて、可動プーリ33を回動自在に支持している。以上のように、反射用光学移動枠ユニット30は、第2ミラー28、第3ミラー32、可動プーリ33を搭載した状態で、左右方向に敷設されたガイド部材(不図示)に沿って左右方向に移動できるようになっている。この反射用光学移動枠ユニット30は、右方に移動しながら、上述の照明用光学移動枠ユニット23の第1ミラー27からの光を第2ミラー28、第3ミラー32で反射して後述の結像レンズ13に導くものである。
【0023】
図2に示すように、筐体16の左端近傍には前端と後端とに固定左プーリ34,34が、また筐体16の右端近傍には前端と後端とに固定右プーリ35,35がそれぞれ回動自在に配設されている。また、図2中の固定右プーリ35,35の下方には、正逆回転可能なモータ36が配設されている。さらに、モータ36の左方には、駆動軸37と一体の駆動プーリ38が配設されていて、モータ36の出力軸40と駆動プーリ38との間には、駆動ベルト41が張設されている。駆動軸37の前端と後端とには、ワイヤドラム42,42が固定されており、これらワイヤドラム42,42には、それぞれ光学ワイヤ43,43が巻き掛けられている。これら光学ワイヤ43,43の一方の端部44,44は、筐体16の左側壁45の内面に固定されている。光学ワイヤ43,43は、ここから右方に延びて、反射用光学移動枠ユニット30の可動プーリ33,33の右半部に掛け渡されて左方に折り返し、固定左プーリ34,34の左半部に掛け渡された後、右方に折り返して固定右プーリ35,35に向かって延びる。さらに、固定右プーリ35,35の右半部に掛け渡されて左方に延び、途中で照明用光学移動枠ユニット23に固定された後、さらに左方に延びて、可動プーリ33,33の左半部に掛け渡されて右方に折り返し、レンズ取付台46上に突設されたフック47に係止される。このような光学ワイヤ43,43の引き回しに基づき、モータ36が図2中の反時計回りに回転すると、駆動ベルト41、駆動プーリ38、駆動軸37を介して、ワイヤドラム42,42が同じく反時計回りに回転する。これに伴い、光学ワイヤ43,43に引かれて、照明用光学移動枠ユニット23及び反射用光学移動枠ユニット30が右方に移動する。この際、反射用光学移動枠ユニット30は、その可動プーリ33,33がいわゆる動滑車として作用するため、移動距離が照明用光学移動枠ユニット23の移動距離の半分となる。これにより、照明用光学移動枠ユニット23及び反射用光学移動枠ユニット30の移動にかかわらず、コンタクトガラス18から結像レンズ13に至る光路長が一定に保持されて、次に説明する結像レンズ13を通過した光がCCD14上で像を結ぶようになっている。なお、本実施形態では、上述のように光源12を移動させるための構成全体が駆動装置(移動装置)に相当する。
【0024】
図2に示すように、結像レンズ13は、上述のレンズ取付台46に固定されたレンズ取付板48上に固定されている。光源12から照射された光は、原稿の画像面で反射されて、図1に示す光路Kをたどる。すなわち、画像面からの反射光は、第1ミラー27、第2ミラー28、第3ミラー32で反射されて結像レンズ13に入射される。入射された光は、次に説明するCCD14上で結像される。
【0025】
CCD14は、その左端面に固定されて上端部50が左方に折曲されたCCD取付板51を介して、上述のレンズ取付台46に固定する「コ」字形のCCD調整板52に取り付けられている。CCD調整板52の前端部と後端部には、内径に雌ねじが螺刻されたボス53,53が固定されていて、これらのボス53,53には、CCD取付板51の上端部50を貫通したピン54,54が螺合されている。さらに、CCD取付板51とCCD調整板52との間には、圧縮ばね55,55が介装されていて、CCD取付板51を上方に付勢している。この状態で、ピン54,54を時計回りあるいは反時計回りに回すことで、CCD取付板51を介してCCD14の高さ位置を微調整することができる。この微調整をCCD14の前端部及び後端部で行うことで、CCD14の上下方向の位置調整を行うことができるようになっている。
【0026】
以上のように、光学系の光源12によって原稿の画像面を読取ラインLに沿って照射(主走査)し、さらに駆動系によって読取ラインLを右方に移動させて走査(副走査)することにより、原稿の画像面をその全領域にわたってCCD14で順次に読み取ることができる。
【0027】
以上で、照明装置10及びこれを備えた画像読取装置11の概略についての説明を終える。
【0028】
次に、図5〜図9を参照して、照明装置10について詳述する。なお、これらの図を参照して説明する照明装置10は、上述の図1〜図4で説明した照明装置10とは、一部の構成が異なる。上述の図5〜図9のうち、図5は、複数のLED素子を千鳥状に並べて構成した光源12を上方から見た図である。図6は、図5中のX−X線矢視拡大図である。図7は、LED素子の照射角α及び隣接するLED素子の中心間のピッチPと、LED素子の発光面から原稿面までの距離Hとの関係を説明する図である。図8は、P/H=1.45の場合の最大リップルを説明する図である。図9は、P/H=1.55の場合の最大リップルを説明する図である。
【0029】
図1〜図4に示す照明装置10においては、複数のLED素子は、1本の直線上に整列されていた。これに対し、図5に示す照明装置10においては、光源12は、複数のLED素子が2列に並べられ、全体として千鳥状に整列されて実質的に直線状を構成している。具体的には、図1に示す凹面鏡26に代えて、さらに複数のLED素子が1列に整列された状態で配置されている。なお、光源12及び移動枠24の構成が異なる点を除いて、他の構成は、図1〜図4に示すものと同様である。
【0030】
図5に示すように、透明の(光透過性の)コンタクトガラス18の左端には前後方向に長い左指示板20が配設され、後端には左右方向に長い後指示板21が配置されている。そして、照明用光学移動枠ユニット23及び反射用光学移動枠ユニット30は、左指示板20に対して平行に配置されるとともに、上述のように左右方向に移動可能に構成されている。図6に示すように、移動枠24は、読取ラインLから、コンタクトガラス18に対して垂直に降ろした垂線hに対して線対称に形成されている。移動枠24は、第1の傾斜面24aと第2の傾斜面24bとを有している。各傾斜面24a,24bは、それぞれの法線方向が上述の読取ラインLを向くように傾斜されている。各傾斜面24a,24bには、方形板状の光源用メイン基板25が複数、取り付けられる。これらの光源用メイン基板25は、各傾斜面24a,24bにおいて、後述するLED素子のピッチPの2倍の間隔をもって1列に整列されている。本例では、各光源用メイン基板に25にそれぞれ1つのLED素子が配置されている。図5に示すように、第1の傾斜面24aには、後端側から前端側にかけて、それぞれ光源用メイン基板25と一体のLED素子L1,L3,……L(2n+1)が、ピッチPの2倍の間隔で並べられている。一方、第2の傾斜面24bには、後端側から前端側にかけて、それぞれ光源用メイン基板25と一体のLED素子L2,L4,……L(2n)が、ピッチPの2倍の間隔で並べられている。ただし、nは自然数とする。そして、前後方向の配置について、LED素子L1,L3の間にLED素子L2が位置し、LED素子L3,L5の間にLED素子L4が位置するようになっている。つまり、LED素子L1,L2,L3,L4,L5,……が交互に千鳥状に配置されている。そして、本例では、これらLED素子の前後方向の間隔がピッチPとなる。なお、本例では、光源用メイン基板25をピッチPで1本の直線上に整列させることができないために、上述のように千鳥状に配置したが、読取ラインLを照射するという観点からは、LED素子を千鳥状に配置した場合と、LED素子を1本の直線上に配置した場合とで、実質的な差異はほとんどない。
【0031】
図6に示すように、第1の傾斜面24a上及び第2の傾斜面24b上に、光源用メイン基板25を介して取り付けられたLED素子は、それぞれの発光面の中心から延びる法線が読取ラインLを通るように配置されている。発光面の中心から読取ラインまでの距離をHとする。
【0032】
図5,図6に示すように、移動枠24における読取ラインLの直下に位置する部分には、前後方向に長いスリット24cが形成されている。LED素子から照射されて、原稿面で反射された光は、このスリット24cを通過して、第1ミラー27に到達するようになっている。
【0033】
前述のように、点光源としてのLED素子を複数個、整列させて光源12を構成する場合、LED素子の使用個数を少なくすればコストアップを抑制することができる。一方、LED素子の使用個数が少なすぎると、原稿面に光量ムラが発生する。
【0034】
そこで、本発明では、以下のような実験1〜6を行って、原稿面の光量ムラが許容範囲内で、極力、LED素子の使用個数を少なくする条件を求めるようにした。
【0035】
ここで、LED素子単体の光量(単体光量)をA、全体の光量(全体光量)をB、LED素子の照射角度(照射角)をα、隣接するLED素子の中心間のピッチ(LEDピッチ)をP、LED素子の発光面から原稿面までの距離(原稿面距離)をHとした。ここで、照射角αは、図7に示すように、LED素子の発光面から発光された光が原稿面を照射する際に、光量が半分になる部分の立体角に相当する角度をいう。また、原稿面距離Hは、図6に示すように、LED素子の発光面の中心に立てた法線における発光面の中心と読取ラインLとの距離をいう。
【0036】
ここで、前述のように、P/H(LEDピッチ/原稿面距離)と照射角αとの間には、正の相関関係があることが予想される。そこで、以下の実験1〜6では、上述の条件のうち、単体光量Aを40000[lx]と一定にして、照射角αとP/Hとの関係を求めるようにした。ただし、原稿面距離Hについては、LED素子の光量を確保するためには、可及的小さく設定することが好ましいため、本実験においては、H=6[mm]と一定にした。なお、全体光量Bについては、LEDピッチPを変化させることに付随して変化することになる。
【0037】
本実施形態では、LED素子の使用個数を少なくする条件として、まず、A/Bの目標値を、A/B≧0.5とした。近年のLED素子の高輝度化を考慮すると、原稿面の全体光量Bに対する単体光量Aの割合、A/Bを大きくして、必要光量を得るためのLED素子の数量を少なくすることが好ましいからである。次に、光量ムラの許容範囲(目標値)を、最大リップルが2.5%以下であるとした。光量ムラについては、最大リップルが2.5%以下であれば、実用上、何の問題もない。
【0038】
実験1〜6のうち、実験1(図8)と実験2(図9)とは、照射角αについてはいずれも120[度]とし、LEDピッチPについては、実験1では8.7[mm]、実験2では9.3[mm]とした。また、実験3(図10)と実験4(図11)とは、照射角αについてはいずれも90[度]とし、LEDピッチPについては、実験3では6.9[mm]、実験4では7.5[mm]とした。また、実験5(図12)と実験6(図13)とは、照射角αについてはいずれも60[度]とし、LEDピッチPについては、実験5では4.5[mm]、実験6では5.0[mm]とした。
【0039】
以下、実験1〜6について詳述する。
【0040】
図8に、実験1の条件及び結果を示す。
【0041】
実験1の条件は、
照射角α :120[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:8.7[mm]
(∴P/H=8.7/6.0=1.45)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:1.31[%]<2.5
全体光量B :57000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/57000)≒0.70>0.5
となった。
【0042】
以上の実験1より、照射角α=120[度]、P/H=1.45では、A/B、最大リップルLのいずれも目標値を満足していることがわかった。
【0043】
図9に、実験2の条件及び結果を示す。
【0044】
実験1の条件は、
照射角α :120[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:9.3[mm]
(∴P/H=9.3/6.0=1.55)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:3.44[%]>2.5
全体光量B :54000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/54000)≒0.74>0.5
となった。
【0045】
以上の実験2より、照射角α=120[度]、P/H=1.55では、A/Bは、目標値を満足するが、最大リップルLは、目標値を満足しないことがわかった。
【0046】
以上の実験1及び実験2から、照射角α=120[度]の場合には、最大リップルLが目標値となるP/Hは、1.45と1.55との間にあることがわかり、さらに、H=6[mm]であることから、8.7<P<9.3であることがわかる。
【0047】
そこで、Pの値をこの範囲内で変化させて、さらに実験を行ったところ、P=9.0(P/H=1.50)のときに、最大リップルLが目標値となることが判明した。
【0048】
図10に、実験3の条件及び結果を示す。
【0049】
実験3の条件は、
照射角α :90[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:6.9[mm]
(∴P/H=6.9/6.0=1.15)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:1.11[%]<2.5
全体光量B :68000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/68000)≒0.59>0.5
となった。
【0050】
以上の実験3より、照射角α=90[度]、P/H=1.15では、A/B、最大リップルLのいずれも目標値を満足していることがわかった。
【0051】
図11に、実験4の条件及び結果を示す。
【0052】
実験4の条件は、
照射角α :90[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:7.5[mm]
(∴P/H=7.5/6.0=1.25)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:3.46[%]>2.5
全体光量B :62000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/62000)≒0.65>0.5
となった。
【0053】
以上の実験4より、照射角α=90[度]、P/H=1.25では、A/Bは、目標値を満足するが、最大リップルLは、目標値を満足しないことがわかった。
【0054】
以上の実験3及び実験4から、照射角α=90[度]の場合には、最大リップルLが目標値となるP/Hは、1.15と1.25との間にあることがわかり、さらに、H=6[mm]であることから、6.9<P<7.5であることがわかる。
【0055】
そこで、Pの値をこの範囲内で変化させて、さらに実験を行ったところ、P=7.2(P/H=1.20)のときに、最大リップルLが目標値となることが判明した。
【0056】
図12に、実験5の条件及び結果を示す。
【0057】
実験5の条件は、
照射角α :60[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:5.0[mm]
(∴P/H=5.0/6.0=0.83)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:0.95[%]<2.5
全体光量B :78000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/78000)≒0.51>0.5
となった。
【0058】
以上の実験5より、照射角α=60[度]、P/H=0.83では、A/B、最大リップルLのいずれも目標値を満足していることがわかった。
【0059】
図13に、実験6の条件及び結果を示す。
【0060】
実験6の条件は、
照射角α :60[度]
原稿面距離H :6.0[mm]
LEDピッチP:5.5[mm]
(∴P/H=5.5/6.0≒0.92)
単体光量A :40000[lx]
とした。この結果、
最大リップルL:4.00[%]>2.5
全体光量B :70000[lx]
となり、A/Bについては、
A/B(=40000/70000)≒0.57>0.5
となった。
【0061】
以上の実験6より、照射角α=60[度]、P/H=0.92では、A/Bは、目標値を満足するが、最大リップルLは、目標値を満足しないことがわかった。
【0062】
以上の実験3及び実験4から、照射角α=60[度]の場合には、最大リップルLが目標値となるP/Hは、0.83と0.92との間にあることがわかり、さらに、H=6[mm]であることから、5.0<P<5.5であることがわかる。
【0063】
そこで、Pの値をこの範囲内で変化させて、さらに実験を行ったところ、P=5.3(P/H=0.88)のときに、最大リップルLが目標値となることが判明した。
【0064】
図13に、以上の実験1〜実験6の結果、及びこれらの実験結果に基づいてさらに行った実験の結果をまとめる。なお、A/Bについては、いずれの実験においても満足していた。
【0065】
図13から、最大リップルを目標値とする、照射角αとP/Hの関係は、照射角αが120[度](≒2.09[rad])のときは、P/H=1.50、照射角αが90[度](≒1.57[rad])のときは、P/H=1.20、照射角αが60[度](≒1.57[rad])のときは、P/H=0.88となることがわかる。
【0066】
図15に、これらの関係を示す。同図に示すように、照射角αをX軸上にとり、P/HをY軸上にとると、これらは、ほぼ直線上に並ぶことがわかる。
【0067】
そこで、これらの関係を直線近似して、
P/H=aα+b
と表して、a及びbの値を求める。
【0068】
この結果、
a=0.6
b=0.25
を得ることができる。これらから、以下の式、
P/H=0.6α+0.25
を得ることができる。
【0069】
以上の結果から、
P/H≦0.6α+0.25
の関係を満足するように、照射角α、LEDピッチP、原稿面距離Hの組み合わせを選択することにより、原稿面での照度が高く、かつ照度ムラのない配光を、少ないLED素子の使用個数で得ることができる。
【0070】
以上の説明では、LED素子L1〜L35を千鳥状に整列させた場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、直線上に整列させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
上述では、本発明の照明装置を画像読取装置に使用する場合を例に説明したが、本発明は、これ以外に例えば、点光源を複数、ライン状に整列させて棒状の光源を構成し、その光源による照射ムラをなくすような場合にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】画像読取装置の縦断面を正面側(前側)から見た図であり、光学系を説明する図である。
【図2】画像読取装置の縦断面を正面側(前側)から見た図であり、駆動系を説明する図である。
【図3】光源と原稿のサイズと画像読取時の原稿の位置との関係を説明する上面図であり、原稿サイズがA列,B列である場合を説明する図である。
【図4】光源と原稿のサイズと画像読取時の原稿の位置との関係を説明する上面図であり、原稿サイズがインチサイズである場合を説明する図である。
【図5】複数のLED素子を千鳥状に並べて構成した光源を上方から見た図である。
【図6】図5中のX−X線矢視拡大図である。
【図7】LED素子の照射角α及び隣接するLED素子の中心間のピッチPと、LED素子の発光面から原稿面までの距離Hとの関係を説明する図である。
【図8】実験1の結果、すなわち、照射角αが120度で、P/H=1.45の場合の最大リップルを説明する図である。
【図9】実験2の結果、すなわち、照射角αが120度で、P/H=1.55の場合の最大リップルを説明する図である。
【図10】実験3の結果、すなわち、照射角αが90度で、P/H=1.15の場合の最大リップルを説明する図である。
【図11】実験4の結果、すなわち、照射角αが90度で、P/H=1.25の場合の最大リップルを説明する図である。
【図12】実験5の結果、すなわち、照射角αが60度で、P/H=0.75の場合の最大リップルを説明する図である。
【図13】実験6の結果、すなわち、照射角αが60度で、P/H=0.83の場合の最大リップルを説明する図である。
【図14】実験1〜実験4の結果を説明する図である。
【図15】照射角αとP/Hとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10……照明装置、11……画像読取装置、12……光源、13……結像レンズ、14……CCD(固体撮像素子)、15……駆動装置(移動装置)、A……LED素子単体の光量、B……全体の光量、L1〜L35……LED素子(点光源)、H……LED素子の発光面から原稿面までの距離、P……隣接するLED素子の中心間のピッチ、α……LED素子の照射角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン状に整列された複数の点光源により原稿の画像面をライン状に照射する光源と、前記ラインに対して前記原稿が直交する方向に移動するように前記光源と前記原稿とを相対移動させる移動装置と、を備えた照明装置において、
画像を読み取る際の前記点光源単体の光量をA、全体の光量をB、前記点光源の照射角をα(rad)、隣接する前記点光源の中心間のピッチをP、前記点光源の発光面から原稿面までの距離をH、としたときに、これらの値が、次式、
A/B≧0.5
P/H≦0.6α+0.25
を満足するように設定されている、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記点光源の発光面が原稿面に対して傾斜して配置されている場合において、前記距離Hが、前記点光源の発光面の中心からの法線と原稿面との交点と、前記点光源の発光面の中心との距離である、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
光源と原稿とを相対移動させながら前記原稿の画像面を照射する照明装置と、前記照明装置から出射されて前記原稿の画像面で反射された反射光により画像を結像する結像レンズと、固体撮像素子とを備えた画像読取装置において、
前記照明装置が、請求項1又は2に記載の照明装置であることを特徴とする画像読取装置。
【請求項1】
ライン状に整列された複数の点光源により原稿の画像面をライン状に照射する光源と、前記ラインに対して前記原稿が直交する方向に移動するように前記光源と前記原稿とを相対移動させる移動装置と、を備えた照明装置において、
画像を読み取る際の前記点光源単体の光量をA、全体の光量をB、前記点光源の照射角をα(rad)、隣接する前記点光源の中心間のピッチをP、前記点光源の発光面から原稿面までの距離をH、としたときに、これらの値が、次式、
A/B≧0.5
P/H≦0.6α+0.25
を満足するように設定されている、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記点光源の発光面が原稿面に対して傾斜して配置されている場合において、前記距離Hが、前記点光源の発光面の中心からの法線と原稿面との交点と、前記点光源の発光面の中心との距離である、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
光源と原稿とを相対移動させながら前記原稿の画像面を照射する照明装置と、前記照明装置から出射されて前記原稿の画像面で反射された反射光により画像を結像する結像レンズと、固体撮像素子とを備えた画像読取装置において、
前記照明装置が、請求項1又は2に記載の照明装置であることを特徴とする画像読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−197432(P2008−197432A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33207(P2007−33207)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
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