説明

照明装置

【課題】従来の起床装置では、睡眠の状態に合わせた調光についてはなんら考慮されておらず、例えば照明開始時刻に深い睡眠状態である場合には光量が足りず十分に覚醒することができないという事や、逆に浅い睡眠状態である場合には設定時刻前に覚醒してしまうという恐れがあったため起床時の覚醒度を促進する装置としては不完全なものであった。
【解決手段】本発明の照明装置によれば、睡眠ステージに合わせて照明の点灯時間および点灯時刻毎の調光度を調整することにより、個人差や睡眠状態による起床時における覚醒度の違いを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の睡眠ステージに対応した照明により設定した起床時刻における覚醒度を促進する照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
起床時刻に合わせて睡眠中の使用者に対する照明を調光制御することによって起床時の覚醒度を促進する装置として、覚醒度を促進する照明装置が知られている。例えば、設定した起床時刻に合わせて徐々に光量を上げていく事により覚醒度を促進する照明装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−215279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の起床用照明装置では、睡眠の状態に合わせた照明制御についてはなんら考慮されておらず、例えば点灯開始時刻に深い睡眠状態である場合には光量が足りないので十分に覚醒することができず、逆に浅い睡眠状態である場合には設定された起床時刻前に覚醒してしまうという恐れがあったため、起床時の覚醒度を促進する装置としては不十分なものであった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、人の睡眠ステージに対応した照明を行うことにより、個人差や睡眠状態による起床時における覚醒度の違いを抑制した照明装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の照明装置は、起床時刻を設定可能な計時部と;使用者の睡眠ステージを判定する判定部と;前記判定部によって判定された睡眠ステージに対応して、前記計時部によって設定された起床時刻前の照明の点灯スケジュールおよび点灯スケジュール内における時刻毎の光量を決定する演算部と;前記演算部によって決定した点灯時間および点灯時間内における時刻毎の光量に応じて調光可能な照明制御部と;を具備していることを特徴とする。
【0006】
本発明に用いる用語の技術的意味は次の通りである。
【0007】
本発明の照明装置の制御対象は、室内の主照明であってもよいし、スポット的に照射される照明であってもよい。ただし、いずれの照明であっても使用者に確実に光が照射されるように設置しておく必要がある。また、制御対象である光源は照明装置と別体に設けてもよいし、一体に設けたものであってもよい。さらに、光源は、LED、白熱電球 蛍光ランプなどの調光可能な光源であればよい。
【0008】
本発明における睡眠ステージとは、使用者の睡眠状態の深さを示す指標であり生体情報を検出し、その特徴点を抽出、分析することによって得られる。
【0009】
本発明の睡眠ステージの判定は、脳波、眼球運動、筋電図、脈波などを測定することによって行うことができる。
【0010】
脈波の測定では、交感神経および副交感神経の活動が分かり、副交感神経が優位であればノンレム睡眠、交感神経が優位であればレム睡眠と判定することができる。
【0011】
本発明の演算部は、睡眠時間中の睡眠ステージの判定を基に起床時間を考慮して照明の点灯時間および点灯時間内における時刻毎の光量を決定する。
【0012】
また、この演算部には起床時間における睡眠ステージを過去の睡眠情報履歴を参照することによって予測する機能を設けておいてもよい。
【0013】
一般に人の睡眠サイクルは90〜120分を1サイクルとして、深い睡眠と浅い睡眠とを繰り返している。このため、起床時刻前の睡眠ステージに関する情報をリアルタイムで集めておくと睡眠サイクルを予測することができて起床時刻における睡眠ステージを予測することが可能となる。また、このようにリアルタイムでの睡眠ステージの情報を例えば数日間に渡って測定し使用者のデータベースとして蓄積しておき、これを予測の判断情報として活用してもよい。
【0014】
本発明の調光制御部は、演算部によって決定された点灯時間および調光度に従って点灯制御される。
【0015】
請求項2の照明装置は、脈波を測定することによって睡眠ステージを判別することを特徴とする。
【0016】
請求項3の照明装置は、脳波、眼球運動、筋電図を測定することによって睡眠ステージを1〜4に判別することを特徴とする。
【0017】
睡眠ステージは一般に脳波、眼球運動、筋電図に表れる特長を解析することによって4つのステージに分類される。
【0018】
請求項4の照明装置は、前記スケジュール内の点灯時間および時刻毎の光量の積分値は睡眠ステージが1から4になるに従って大きくなることを特徴とする。
【0019】
請求項5の照明装置は、前記照明の主光源はLEDであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の照明装置によれば、睡眠ステージに合わせて照明の点灯時間および点灯時刻毎の調光度を調整することにより、個人差や睡眠状態による起床時における覚醒度の違いを抑制することができる。
【0021】
請求項2の照明装置によれば、脈波を測定するので睡眠ステージの測定部を小形化することができ、睡眠の妨げになりにくい。
【0022】
請求項3の照明装置によれば、睡眠状態が深くなるほど照射される光量の積分値を多くし、起床時刻前に覚醒することを防止することができる。
【0023】
請求項4の照明装置によれば、脳波、眼球運動、筋電図を測定するため確実に睡眠ステージを測定することができる。
【0024】
請求項5の照明装置によれば、主光源をLEDとすることで細かい調光が可能になり睡眠ステージに合わせた微小な調光変化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至2に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態の照明装置を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、この照明装置は起床時刻を設定可能に計時する計時部1、使用者の手に装着できる脈波測定器2aおよび脈波測定器2aと無線通信によって情報の送受信が可能な本体部2bとによって構成され睡眠ステージを判定可能な判定部2、計時部1からの現時刻や設定された起床時刻などの時間情報および判定部2からの判定結果によって点灯時間および点灯時間中の時刻毎の調光度を決定する演算部3、演算部3からの情報に従って点灯する点灯制御部4、この点灯制御部4に制御され主光源がLEDである照明器具5、アラーム機能6を備えている。
【0028】
図2、3に示すように、図1において、計時部1、判定部2、演算部3を睡眠ステージ計測装置10として構成してもよいし、計時部1、判定部2によって睡眠ステージ計測装置10を構成し演算部3および点灯制御部4を照明器具5に設置してもよい。アラーム機能6は睡眠ステージ計測装置10または照明器具5に設けてもよく、起床時刻にテレビやオーディオ等の機器をオン操作する信号送信機能または目覚まし音であってもよい。
【0029】
次に判定部2による睡眠ステージの判定方法および演算部3による演算の方法について説明する。
【0030】
まず、睡眠中の脈波を測定し、その変動を周波数解析することによって交感神経および副交感神経の状態を把握することができる。この周波数解析では交感神経および副交感神経の活動を反映してそれぞれ低周波数側と高周波数側にピークが形成される。このピークの相対値からどちらの自律神経が優位に活動しているかがわかる。この自律神経は、大脳の休息を制御する脳幹の活動を反映しているため、間接的に大脳の休息状態を知る事ができる。例えば測定の結果、交感神経が優位であればレム睡眠となり、覚醒に近い状態であると判定される。逆に副交感神経が優位であればノンレム睡眠となり、深い睡眠状態であると判定される。
【0031】
この判定部2によって判定された結果が演算部3に送信され、点灯制御の条件が計算される。
【0032】
図4(a)、(b)、(c)は、ある起床時間から所定の時間前の時刻において演算部3によって計算された睡眠ステージ毎の調光度スケジュールである。これらの調光度スケジュールは起床時刻、起床時刻から所定時間前の睡眠ステージなどによって最適な形態が選択される。
【0033】
図4(a)は、点灯開始時の明るさを睡眠ステージ毎に変化させたものである。
【0034】
図4(b)は、点灯開始時刻を睡眠ステージ毎に変化させたものである。図4(c)は、点灯開始からの明るさの傾きを睡眠ステージ毎に変化させたものである。
【0035】
なお、睡眠ステージの判定時刻は設定された起床時間に対して睡眠サイクルの1サイクルよりも短い時間内であることが好ましい。例えば睡眠サイクルが90分で1サイクルの場合には起床時刻に対して90分よりも短い時間内である。また、判定時刻が起床時刻に近すぎると急激に強い光照射を必要とする場合があるため、30分前遅くとも10分前には判定しておくことが望ましい。
【0036】
また、この演算部には起床時刻における睡眠ステージを過去の睡眠情報履歴を参照することによって予想できる機能を設けておいてもよい。この場合はさらに的確に調光度スケジュールを決定することができる。また、リアルタイムで睡眠ステージを判定し調光度スケジュールにフィードバックしてもよい。
【0037】
図5は、睡眠中の睡眠ステージの変化を時刻毎に計測した一例を示している。例えば、6:30は睡眠ステージ2と判断できる。このように人の睡眠は深い睡眠状態と浅い睡眠状態とを1サイクルとする睡眠サイクルを繰り返している。この図5における1サイクルは約70分前後となる。
【0038】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は判定部2によって脳波、眼球運動、筋電図を測定し睡眠ステージを1〜4に分類する。
【0039】
図6を参照しながら睡眠ステージ1〜4の定義について説明する。
【0040】
(睡眠ステージ1)
【0041】
脳波はα波が50%以下になり、θ波や頭蓋頂鋭−過波(vertex sharp transient、vertex sharp wave: 頭蓋頂鋭波)が出現する。頭蓋頂鋭−過波は、陰性相の振幅が最も大きな二層性あるいは三層性の波で、両側の頭頂部および中心部に最も優勢に出現する。波の形から瘤波(hump)ともよばれる。また、この段階では緩徐な眼球運動(slow eye movements:SEMs)がみられ、おとがい筋筋電図の振幅は覚醒時よりも低下する。
【0042】
(睡眠ステージ2)
【0043】
脳波に睡眠紡錐波(sleep spindle、spindle:紡錘波)やK複合(K complex)が出現する。睡眠が深くなるにつれてδ波も出現してくるが、2Hz以下で75μV以上のδ波は判定区間の20%以下である。紡錘波はマニュアル(Rechtschaffenら、1968)では12〜14Hzで、持続0.5秒以上と定義されているが、12〜16Hzの波も含めることもある(日本睡眠学会睡眠段階自動判定小委員会、1996)。K複合は頭蓋頂鋭−過波に似た遅い成分と紡錘波から成る早い成分で構成されている。
【0044】
(睡眠ステージ3)
【0045】
2Hz以下、75μV以上のδ波が判定区間の20〜50%を占める。
【0046】
(睡眠ステージ4)
【0047】
2Hz以下、75μV以上のδ波が判定区間の50%以上を占める。
【0048】
本発明による第2の実施形態では上記分類方法に従って睡眠ステージを判定する。なお、判定後の動作については第1の実施形態と同一であるので詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態の照明装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の照明装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の照明装置を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態の睡眠ステージ毎の調光度スケジュールを示す図である。
【図5】睡眠中の睡眠ステージの変化を時刻毎に計測した一例を示した図である。
【図6】睡眠ステージ1〜4の脳波、眼球運動、筋電図を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 計時部
2 判定部
3 演算部
4 照明制御部
5 照明器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起床時刻を設定可能な計時部と;
使用者の睡眠ステージを判定する判定部と;
前記判定部によって判定された睡眠ステージに対応して、前記計時部によって設定された起床時刻前の照明の点灯スケジュールおよび点灯スケジュール内における時刻毎の光量を決定する演算部と;
前記演算部によって決定した点灯時間および点灯時間内における時刻毎の光量に応じて調光可能な照明制御部と;
を具備していることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記判定部は、脈波を測定することによって睡眠ステージを判別することを特徴とする請求項1に記載された照明装置。
【請求項3】
前記判定部は脳波、眼球運動、筋電図を測定することによって睡眠ステージを1〜4に判別することを特徴とする請求項1または2に記載された照明装置。
【請求項4】
前記スケジュール内の点灯時間および時刻毎の光量の積分値は睡眠ステージが1から4になるに従って大きくなることを特徴とする請求項2または4に記載された照明装置。
【請求項5】
前記照明の主光源はLEDであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−86489(P2008−86489A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269575(P2006−269575)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】