説明

熱交換器およびこれを備えた温水装置

【課題】伝熱管を単段化して全体の薄型化を図る場合において、入水側の領域においてドレインが発生することや、出湯側の領域において伝熱管内を流通する湯水が沸騰するといったことを適切に防止または抑制することが可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】複数のフィン2Aに貫通した複数の直状管体部11aが単段に設けられた蛇行状の伝熱管T1と、これらの周囲を囲む複数の側壁部を有する缶体6と、を備えており、伝熱管T1における湯水の流通は、入水側管体部11a'から出湯側管体部11a"に向けて一方向になされるように構成された、熱交換器HE1であって、入水側管体部11a'と側壁部60cとの隙間C1の幅L1は、出湯側管体部11a"と側壁部30aとの隙間C1の幅L2よりも大きくされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの加熱用気体からフィンチューブタイプの伝熱管を用いて熱回収を行なうように構成された熱交換器、およびこの熱交換器を備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス給湯装置などの温水装置に用いられている熱交換器としては、間隔を隔てて並んだ多数枚のプレート状のフィンに伝熱管を貫通させ、かつこの伝熱管やフィンの周囲を缶体によって囲んだ構造のものがよく用いられている。このような構造の熱交換器においては、熱回収量を多くするための手段として、伝熱管を上下複数段に設ける場合が多い。ただし、このような手段によれば、熱交換器の上下高さ方向のサイズが大きくなる。そこで、従来においては、伝熱管を蛇行状に形成し、かつこの伝熱管を缶体の上下高さにおいて単段(1段)に設ける手段がある(たとえば、特許文献1を参照)。このような構成によれば、熱交換器全体の上下高さ寸法を小さくし、製造コストを低減することができる利点が得られる。
【0003】
しかしながら、前記したように伝熱管の単段化を図る場合には、次に述べるような不具合を生じる虞がある。
【0004】
すなわち、伝熱管を蛇行状に形成して単段に設けた場合において、この伝熱管の一端を入水口とし、かつ他端を出湯口として、伝熱管に通水を行なわせると、その通水方向は一方向となる。このような一方向の通水がなされる状態において、たとえば伝熱管の下方に配置されたバーナを燃焼駆動させて伝熱管を加熱すると、伝熱管の入水口寄り領域と出湯口寄り領域とでは、大きな温度差を生じる。具体的には、伝熱管の入水口寄り領域は、比較的低温の水が供給されたばかりであって、この水はバーナによって充分に加熱されていない状態にあるために、低温領域となる。これに対し、出湯口寄り領域では、入水口から出湯口に到達する迄の期間にわたってバーナにより充分に加熱された湯水が流通するために、高温領域となる。
このような現象を生じた場合、低温領域である入水口寄り領域においては、燃焼ガス中の水蒸気が凝縮し、燃焼ガス中の硫黄酸化物や窒素酸化物などを含んだ強酸性のドレイン(凝縮水)が発生し易い。強酸性のドレインが発生すると、伝熱管やフィンが耐酸性を有しないたとえば銅製とされているような場合において、これらが腐食し易くなる。一方、高温領域である出湯口寄り領域においては、伝熱管内を流通する湯水が過熱状態となって沸騰し、また伝熱管の高温酸化を生じるといったことが懸念される。したがって、これらの現象を適切に防止または抑制することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−18874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、伝熱管を単段化して全体の薄型化を図る場合において、入水側の領域においてドレインが発生することや、出湯側の領域において伝熱管内を流通する湯水が沸騰するといったことを適切に防止し、または抑制することが可能な熱交換器、およびこの熱交換器を備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、プレート状の複数のフィンに貫通した複数の直状管体部を有する伝熱管と、前記複数の直状管体部および前記複数のフィンの周囲を囲む複数の側壁部を有し、かつ上下両面部が加熱用気体の流出入用の開口部とされる缶体と、を備えており、前記伝熱管は、前記複数の直状管体部が前記缶体の前後または左右の幅方向に間隔を隔てて並ぶとともに前記缶体の上下高さ方向に単段に設けられて連結用管体部を介して一連に接続された蛇行状に形成されており、前記伝熱管の前記幅方向の両端に位置する2つの直状管体部のうち、一方は入水側管体部とされ、かつ他方は出湯側管体部とされ、前記伝熱管における湯水の流通は、前記入水側管体部から前記出湯側管体部に向けて一方向になされるように構成された、熱交換器であって、前記入水側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第1の側壁部との隙間の幅は、前記出湯側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第2の側壁部との隙間の幅よりも大きくされていることを特徴としている。
ここで、缶体の側壁部(第1の側壁部,第2の側壁部)は、缶体の主要部材とは別体の部材(たとえば、後述する実施形態の仕切部材3)を用いて構成された側壁部をも含む概念である。
【0009】
このような構成によれば、伝熱管の入水側管体部と缶体の第1の側壁部との隙間を通過する加熱用気体の流量を多くする一方、出湯側管体部と缶体の第2の側壁部との隙間を通過する加熱用気体の流量を少なくすることができる。このため、伝熱管に低温の湯水が入水される場合であっても、入水側管体部およびその近傍部分に対する加熱量を多くして、これらの部分の温度を上昇させることができ、ドレインが発生することを防止または抑制することが可能となる。したがって、ドレインに起因して伝熱管やフィンが腐食し易くなるといった不具合を回避することができる。一方、伝熱管の出湯側管体部およびその近傍部分については、加熱用気体による加熱量を少なくすることができるために、伝熱管内を流通する湯水が過熱状態となって沸騰することや、伝熱管が高温酸化するといったことも適切に防止または抑制することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の側面により提供される熱交換器は、プレート状の複数のフィンに貫通した複数の直状管体部を有する伝熱管と、前記複数の直状管体部および前記複数のフィンの周囲を囲む側壁部を有し、かつ上下両面部が加熱用気体の流出入用の開口部とされる缶体と、を備えており、前記伝熱管は、前記複数の直状管体部が前記缶体の前後または左右の幅方向に間隔を隔てて並ぶとともに前記缶体の上下高さ方向に単段に設けられて連結用管体部を介して一連に接続された蛇行状に形成されており、前記伝熱管の前記幅方向の両端に位置する2つの直状管体部のうち、一方は入水側管体部とされ、かつ他方は出湯側管体部とされ、前記伝熱管における湯水の流通は、前記入水側管体部から前記出湯側管体部に向けて一方向になされるように構成された、熱交換器であって、前記複数のフィンには、これら複数のフィンどうしの間を前記加熱用気体が通過する際の抵抗となるように前記各フィンの表面の一部を突出させた加熱用気体の流れ規制部が複数設けられており、これら複数の流れ規制部は、前記複数の直状管体部が並ぶ方向において不均一に設けられ、前記入水側管体部の周辺部分よりも前記出湯側管体部の周辺部分の方が前記加熱用気体の流れに対する抵抗が大きくなるように構成されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、各ファンに加熱用気体の流れ規制部が所定の偏った状態に設けられていることに基づき、入水側管体部の周辺部には多くの加熱用気体が流れ易くなり、かつ出湯側管体部の周辺部には多くの加熱用気体が流れ難くなる作用が得られる。したがって、本発明の第1の側面によって提供される熱交換器と同様に、伝熱管の入水側管体
部およびその近傍部分の温度を高くし、この領域にドレインが発生することを適切に防止または抑制することができる。また、伝熱管の出湯側管体部およびその近傍部分が過当な高温領域にならないようにし、伝熱管内を流通する湯水が沸騰することや、伝熱管が高温酸化するといったことも適切に防止または抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記流れ規制部として、前記出湯側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第2の側壁部との間またはその上方もしくは下方に位置する最出湯側の流れ規制部が設けられている一方、前記入水側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第1の側壁部との間およびその上下方の位置には、流れ規制部は設けられておらず、または前記最出湯側の流れ規制部よりも前記加熱用気体の流れに対する抵抗が小さい流れ規制部が設けられた構成とされている。
【0013】
このような構成によれば、伝熱管の入水側管体部と缶体の第1の側壁部との間には、加熱用気体が多く流れ易くなり、出湯側管体部と缶体の第2の側壁部との間には、加熱用気体が多く流れないようにすることができる。したがって、入水側管体部およびその周辺部の温度を高め、また出湯側管体部およびその周辺部が過当な高温領域になることを抑制するのに好適である。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記流れ規制部として、前記複数の直状管体部どうしの間に設けられた複数の流れ規制部があり、これら複数の直状管体部のうち、前記入水側管体部とこれに隣接する直状管体部との間およびその上下方の領域に設けられている流れ規制部は、他の直状管体部どうしの各間およびその上下方の領域に設けられている流れ規制部よりも前記加熱用気体の流れに対する抵抗が小さい構成とされている。
【0015】
このような構成によれば、伝熱管の入水側管体部とこれに隣接する直状管体部との間を流れる加熱用気体の量を多くすることができる。したがって、入水側管体部およびその周辺領域の温度をより高めることが可能であり、ドレインの発生を防止する上で一層好ましい。
【0016】
本発明においては、第1および第2の側面により提供される熱交換器のそれぞれの特徴的な構成の双方を備えた構成とすることが可能である。
具体的には、第2の側面により提供される熱交換器において、前記入水側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第1の側壁部との隙間の幅は、前記出湯側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第2の側壁部との隙間の幅よりも大きくされた構成とすることが可能である。
【0017】
このような構成によれば、入水側管体部およびその周辺部が低温領域となってドレインが発生することや、出湯側管体部およびその周辺部が過熱状態となることを、より徹底して防止することができる。
【0018】
本発明の第3の側面により提供される温水装置は、本発明の第1または第2の側面により提供される熱交換器を備えていることを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、本発明の第1または第2の側面により提供される熱交換器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用された熱交換器(1次熱交換器)を備えた温水装置の一例を示す概略正面断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1に示す1次熱交換器の平面断面図である。
【図5】図1に示す温水装置の要部概略正面断面図である。
【図6】(a)は、図5のVIa−VIa断面図であり、(b)は、(a)のVIb−VIb断面図である。
【図7】図5のVII−VII断面図である。
【図8】図1に示す1次熱交換器に仕切部材を装着する状態を示す要部分解断面図である。
【図9】図1に示す温水装置の2次熱交換器を示す平面断面図である。
【図10】本発明に係る温水装置の他の例を示す概略正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1〜図9は、本発明が適用された温水装置、およびこれに関連する構成の一例を示している。
図1によく表われているように、本実施形態の温水装置WH1は、バーナ5、1次熱交換器HE1、2次熱交換器HE2、およびこれら全体を囲む外装ケース90を備えている。この温水装置WH1は、一般給湯と、風呂給湯または暖房用給湯との2系統の給湯動作を独立して行なうことが可能であり、1次熱交換器HE1、および2次熱交換器HE2は、ともに1缶2回路方式である。
【0024】
1次熱交換器HE1は、本発明に係る熱交換器の一例に相当し、1つの缶体6内に、平面視蛇行状の第1および第2の伝熱管T1,T2が収容された構成である。2次熱交換器HE2は、1つのケース7内に、螺旋状に形成された複数の第3および第4の伝熱管T3,T4が収容された構成であり、本発明に係る熱交換器には相当しない。
【0025】
バーナ5は、たとえばガスバーナであり、ファン51からバーナケース50内に上向きに送られてくる燃焼用空気を利用して燃料ガスを燃焼させる。ただし、このバーナ5は、燃料の燃焼動作を個別に制御可能な第1および第2の燃焼領域A1,A2を有している。第1および第2の燃焼領域A1,A2の上方領域は、仕切部材52によって仕切られ、第1および第2の燃焼領域A1,A2のそれぞれにおいて発生された燃焼ガスは第1および第2の伝熱管T1,T2に向けて個別に進行するようになっている。
【0026】
1次熱交換器HE1は、燃焼ガスから顕熱を回収するためのものであり、この1次熱交換器HE1を構成する缶体6、第1および第2の伝熱管T1,T2、ならびに後述するフィン2A,2Bは、いずれも銅製である。この1次熱交換器HE1の缶体6は、上下方向に起立した側壁部60a〜60dを有する平面視略矩形の枠状である。ただし、本発明でいう「缶体の側壁部」の概念には、後述する仕切部材3の側壁部30aも含まれる。缶体6の上下両面部は、矩形状に開口しており、燃焼ガスの流出入口に相当する。バーナ5によって発生された燃焼ガスは、缶体6内をその下方から上方に向けて通過する。
【0027】
図4に示すように、第1の伝熱管T1は、フィン2Aに貫通する複数の直状管体部11aが略U字状の連結用管体部12aを介して一連に繋がった平面視蛇行状である。より具体的には、複数の直状管体部11aは、缶体6の前後方向に延びる向きとされて、缶体6の左右幅方向である水平方向に略一定間隔で並び、かつ上下高さ方向に単段に設けられた状態とされている。各直状管体部11aの両端部は、缶体6の側壁部60a,60bを貫
通し、かつこれら側壁部60a,60bにロウ付などの手段を用いて接合されている。互いに隣り合う直状管体部11aの端部どうしは、U字管を利用した連結用管体部12aを介して接続されている。第2の伝熱管T2は、フィン2Bに貫通して上下高さ方向に単段に設けられた複数の直状管体部11bと連結用管体部12bとを有しており、第1の伝熱管T1と同様に、それらは平面視蛇行状に繋がり、かつ側壁部60a,60bに支持されている。第1および第2の伝熱管T1,T2は、略同一高さに揃えられて、缶体6の左右幅方向に並んでいる。
【0028】
第1および第2の伝熱管T1,T2の入水口15a,15bは、缶体6の側壁60c,60dに最も接近した位置の直状管体部11a,11bに、継手用管体12a',12b'を連結して設けられている。なお、継手用管体12a',12b'またはこれに相当する部材を用いることなく、入水側管体部11a',11b'の一端開口部をそのまま入水口とすることもできる。この点は、次の出湯口16a,16bも同様である。出湯口16a,16bは、後述する仕切部材3に最接近した直状管体部11a,11bの一端開口部である。このような構成により、入水口15a,15bに供給されたそれぞれの湯水は、第1および第2の伝熱管T1,T2に沿って蛇行して流れるものの、矢印N1,N2に示すように、缶体6の側壁60c,60dに接近した位置から仕切部材3側に向けて一方向に流れ、出湯口16a,16bに到達する。なお、本発明においては、前記湯水の流通方向を前記方向とは反対とすることもできる。
【0029】
フィン2A,2Bは、燃焼ガスからの熱回収量を多くするためのものであり、缶体6の左右幅方向に延びた薄手のプレート状である。図5に示すように、フィン2A,2Bの一端部は、缶体6の側壁部60c,60dにロウ付けなどの手段を用いて接合されている。一方、図8に示すように、フィン2A,2Bの他端部は、缶体6には接合されておらず、これらの間に形成された隙間68には、フィン2A,2B間を仕切る仕切部材3が挿入して装着されている。仕切部材3は、たとえば耐熱性に優れた金属板が断面コ字状またはこれに類する形態に屈曲されて構成されたものであり、一側縁部(図面では下側縁部)どうしが繋がり、かつ互いに隙間を隔てて対向する一対の板状の側壁部30a,30bを有している。これら一対の側壁部30a,30bは、バネ性をもって撓み変形可能であり、このことにより仕切部材3は、その厚みが変更可能である。この仕切部材3は、厚みがやや小さくなるように圧縮された状態で隙間68に挿入されて保持されている。
【0030】
第1の伝熱管T1およびフィン2Aについては、缶体6の側壁部60cに対向接近する直状管体部11a(入水側管体部11a')寄りの領域が低温領域になることを抑制し、かつ仕切部材3の側壁部30aに対向接近する直状管体部11a(出湯側管体部11a")寄りの領域が過熱状態になることを抑制するための手段として、次のような手段が講じられている(なお、缶体6の側壁部60cは、本発明でいう第1の側壁部の一例に相当し、仕切部材3の側壁部30aは、本発明でいう第2の側壁部の一例に相当する。本発明でいう第1および第2の側壁部は、缶体自体が具備している側壁部に限らず、缶体とは別体に形成された部材であって、缶体に直接または間接的に取付けられた部材によって構成されたものであってもよい)。
【0031】
図5において、入水側管体部11a'と側壁部60cとの隙間C1の幅L1は、出湯側管体部11a"と側壁部30aとの隙間C2の幅L2よりも大きくされている。このことにより、後述するように、隙間C1を通過する燃焼ガスの量を多くする一方、隙間C2を通過する燃焼ガスの量を少なくすることができる。なお、複数の直状管体部11aの配列ピッチは、一定とされている(ただし、入水側管体部11a'に接近するほど直状管体部11aの配列ピッチを徐々に大きくし、入水側管体部11a'寄り領域を通過する燃料ガスの量を多くするように構成してもかまわない)。
【0032】
フィン2Aには、燃焼ガスの流れ規制部20,21が設けられている。この流れ規制部20,21は、フィン2Aの複数箇所を部分的に突出させた部分であって、本来的には、フィン2Aと燃焼ガスとの接触度合いを高めて熱回収量を多くするためのものであるが、本実施形態においては、燃焼ガスの流通量制御にも利用されている。これら流れ規制部20,21は、缶体6の幅方向において均一な分布には設けられておらず、入水側管体部11a'の周辺部分よりも出湯側管体部11a"の周辺部分の方が、燃焼ガス流れに対する抵抗が大きくなるように設けられている。より具体的には、出湯側管体部11a"と側壁部30aとの隙間C2の上方には、流れ規制部20(本発明でいう最出湯側の流れ規制部)が設けられているのに対し、入水側管体部11a'と側壁部60cとの隙間C1およびその上下には、流れ規制部20に相当する流れ規制部は設けられていない。ただし、これに代えて、隙間C2およびその上下のいずれかに流れ規制部20よりも小サイズ(低抵抗)の流れ規制部を設けた構成とすることができる。流れ規制部20は、たとえば図7に示すように、フィン2Aの一部がフィン2Aの前方または後方に適当な寸法だけ突出するように押し出された形態である。
【0033】
隣り合う直状管体部11aの各間およびその上方領域には、複数の流れ規制部21が設けられている。これらのうち、入水側管体部11a'とこれに隣接する直状管体部11aどうしの間およびその上方領域に設けられた流れ規制部21(21a)は、これ以外の流れ規制部21よりも燃焼ガス流れに対する抵抗が小さくなるように構成されている。本実施形態では、そのための手段として、流れ規制部21aの数を、他の箇所に設けられた流れ規制部21の数よりも少なくしている。ただし、本発明においては、これに代えて、または加えて、流れ規制部21,21aのサイズを相違させるようにしてもかまわない。流れ規制部21(21aも含む)は、たとえば図6に示すような形態であり、切り起こしの手法を用いて形成されている。すなわち、流れ規制部21は、フィン2Aに略平行な2条の切り目を形成した後に、これら2条の切り目に挟まれた部分を断面コ字状に屈曲させるようにしてフィン2Aの前方または後方に突出させたものである。
【0034】
フィン2Bには、熱回収量を多くするための凸状部(流れ規制部)が適宜設けられているものの、伝熱管T2の入水側部分への燃焼ガス通過量を出湯側部分の燃焼ガス通過量よりも積極的に多くするための手段はとくに講じられていない。これは、伝熱管T2は、風呂給湯用または暖房給湯用であって、伝熱管T1と比較すると、バーナ5による加熱量が少ないために、入水側においてドレインが発生し難く、また出湯側において過熱状態が生じ難いためである。ただし、本実施形態とは異なり、伝熱管T2についても、伝熱管T1と同様に、入水側部分への燃焼ガス通過量を多くし、かつ出湯側部分への燃焼ガス通過量を少なくするための手段を講じてもよい。
【0035】
図1において、2次熱交換器HE2は、1次熱交換器HE1を通過した燃焼ガスから潜熱を回収するためのものであり、1次熱交換器HE1上に載設されたケース7内に、複数の第3および第4の伝熱管T3,T4が収容され、かつそれらの間が仕切板74を介して仕切られた構成である。第3および第4の伝熱管T3,T4、ならびにケース7は、潜熱回収に伴って発生する強酸性のドレインに対する耐食性を有すべくその材質はたとえばステンレスである。図9に示すように、複数の第3の伝熱管T3は、サイズが相違する螺旋状管体として形成されて、重ね巻き状に配列されており、それらの上下両端部は、ケース7の外部に引き出されて通水用のヘッダ75a,75bと連結されている。複数の第4の伝熱管T4も、その基本的な形態は第3の伝熱管T3と同様であり、重ね巻き状に配列された螺旋状管体として形成され、かつその上下両端部には、通水用のヘッダ75c,75dが連結されている。
【0036】
2次熱交換器HE2のケース7は、底壁部70aに給気口71a,71bを有し、かつ前壁部70bに排気口72を有している。図2に示すように、1次熱交換器HE1の第1
の伝熱管T1が設けられた箇所を通過した燃焼ガスは、給気口71aからケース7内に進行し、第3の伝熱管T3どうしの隙間を通過した後に排気口72から外部に排出される。また、図3に示すように、1次熱交換器HE1の第2の伝熱管T2が設けられた箇所を通過した燃焼ガスは、給気口71bからケース7内に進行し、第4の伝熱管T4どうしの隙間を通過した後に排気口72から外部に排出される。このような過程において、燃焼ガスから第3および第4の伝熱管T3,T4により潜熱回収がなされる。潜熱回収に伴って発生した強酸性のドレインは、第3および第4の伝熱管T3,T4からケース7の底壁部70a上に流れ落ちてから、図示されていないドレイン排出口を通過してケース7の外部に排出されるようになっている。
【0037】
図1に示すように、外装ケース90の底部または側部には、給水管80a,80bが接続される外部入水口90a,90b、および出湯管81a,81bが接続される外部出湯口92a,92bが設けられている。外部入水口90aに供給された湯水は、配管部92aを介してヘッダ75bに供給されることにより、2次熱交換器HE2の第3の伝熱管T3内を流通する。その後、この湯水は、ヘッダ75aおよび配管部93aを介して1次熱交換器HE1の入水口15aに送られ、第1の伝熱管T1内を通過する。第1の伝熱管T1を通過して出湯口16aに到達した湯水は、その後に配管部94aを介して外部出湯口92aに到達する。外部出湯口92aに到達した湯水は、たとえば台所や洗面所などに供給される。
【0038】
一方、外部入水口90bに供給された湯水は、配管部92bを介してヘッダ75dに供給されることにより、2次熱交換器HE2の第4の伝熱管T4内を流通する。その後、この湯水は、ヘッダ75cおよび配管部93bを介して1次熱交換器HE1の入水口15bに送られ、第2の伝熱管T2内を通過する。第2の伝熱管T2を通過して出湯口16bに到達した湯水は、その後に配管部94bを介して外部出湯口91bに到達し、風呂給湯用または暖房給湯用として所定の箇所に供給される。
【0039】
次に、前記した温水装置WH1の作用について説明する。
【0040】
まず、1次熱交換器HE1の第1および第2の伝熱管T1,T2は、複数の直状管体部11a,11bが、上下方向に単段(1段)に設けられた構成である。このため、直状管体部11a,11bを上下複数段に設けた場合と比較して、1次熱交換器HE1を薄型化し、温水装置WH1全体の小型化、ならびに製造コストの低減を図ることができる。
【0041】
バーナ5を燃焼駆動させて、燃焼ガスを1次熱交換器HE1に向けて進行させた場合、入水側管体部11a'の周辺部分には比較的多くの燃焼ガスを供給させることができるとともに、出湯側管体部11a"の周辺部分には余り多くの燃焼ガスが供給されないようにすることができる。これは、既述したように、隙間C1,C2の幅L1,L2が、L1>L2の関係にあることや、隙間C2についてはその上方に燃焼ガスの流れ規制部20が設けられて燃焼ガス流れに対する抵抗を生じるのに対し、隙間C1については流れ規制部20に相当する手段が設けられておらず、燃焼ガス流れに対する抵抗が小さくされていることによる。さらに、複数の流れ規制部21aは、他の流れ規制部21よりも燃焼ガス流れに対する抵抗が小さく、入水側管体部11a'とこれに隣接する直状管体部11aとの間にも燃焼ガスが流入し易いことにもよる。
【0042】
伝熱管T1には、2次熱交換器HE2の伝熱管T3を通過して加熱された湯水が供給されるものの、伝熱管T3への入水温度がかなり低い場合には、伝熱管T1への入水温度が比較的低くなる。これに対し、前記したように入水側管体部11a'の周辺部分に比較的多くの燃焼ガスが供給されると、伝熱管T1に低温の湯水が供給された場合であっても、入水側管体部11a'の周辺部分が低温状態に維持されることは適切に抑制される。その結果
、それらの部分に多くのドレインが発生しないようにし、ドレインに起因して入水側管体部11a'やフィン2Aが腐食し易くなる不具合を適切に抑制することができる。
【0043】
一方、伝熱管T1内の湯水温度は、この伝熱管T1の末端に相当する出湯側管体部11a"において最も高温となる。これに対し、この出湯側管体部11a"の周辺部分については、既述したように、燃焼ガス供給量が多くならないようにされる。したがって、出湯側管体部11a"およびその周辺部分において、湯水が加熱状態となって沸騰することを適切に防止することができる。湯水が沸騰すると、伝熱管T1内に気泡が生じ、円滑な湯水流通が行なわれなくなる他、伝熱管T1が湯水によって冷却されなくなって伝熱管T1が熱損傷するといった不具合を生じるが、本実施形態によれば、そのような不具合も適切に防止することが可能である。
【0044】
図10は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付し、その説明は省略する。同図に示す温水装置WH2においては、1次熱交換器HE1および2次熱交換器HE2が、1缶2回路には構成されておらず、一系統のみの給湯機能を備えたものとして構成されている。本実施形態においては、前記実施形態の仕切部材3に相当する部材は用いられておらず、出湯側管体部11a"には、缶体6の側壁部60d'が対向接近している。したがって、この側壁部60d'が、本発明でいう第2の側壁部の他の具体例に相当する。
【0045】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0046】
入水側管体部11a'の周辺領域の燃焼ガス供給量を多くし、かつ出湯側管体部11a"の周辺領域の燃焼ガス供給量を少なくするための手段としては、隙間C1,C2の幅L1,L2を、L1>L2の関係に設定する手段のみを適用し、フィン2Aに設けられる燃焼ガス用の流れ規制部20,21を不均一に設ける手段を適用しない構成としてもよい。また、これとは反対に、燃焼ガス用の流れ規制部20,21を不均一に設ける手段を適用し、L1>L2の関係に設定する手段を適用しない構成とすることもできる。
【0047】
本発明でいう加熱用気体の流れ規制部は、複数のフィンどうしの間を加熱用気体が通過する際の抵抗となるように各フィンの表面の一部を突出させた形態を有するものであればよい。したがって、前記したようにフィンの一部を押し出したもの、きり起こし状に形成したものの他、たとえばバーリング孔(孔の周辺部分が凸状に起立)とすることもできる。
【0048】
本発明に係る温水装置は、必ずしも1次および2次の2つの熱交換器を備えたものとして構成されていなくてもよく、熱交換器として、本発明に係る熱交換器を1つのみ用いた温水装置とすることもできる。上述の実施形態では、バーナの上方に熱交換器が設けられて、燃焼ガスが熱交換器の下方から上方に向けて進行するいわゆる正燃方式とされているが、これとは反対に、バーナの下方に熱交換器が設けられて、燃焼ガスが上方から下方に向けて進行する逆燃方式とすることも可能である。本発明でいう加熱用気体としては、バーナを利用して発生させた燃焼ガスに限らず、たとえば燃料電池やガスエンジンなどから排出される高温の排ガスを利用することもできる。本発明でいう温水装置とは、湯を生成する機能を備えた装置の意であり、一般給湯用、風呂給湯用、暖房用、あるいは融雪用などの各種の給湯装置、および給湯以外に用いられる湯を生成する装置を広く含む。
【符号の説明】
【0049】
WH1,WH2 温水装置
HE1 1次熱交換器(本発明に係る熱交換器)
HE2 2次熱交換器
T1 第1の伝熱管(伝熱管)
C1,C2 隙間
2A フィン
3 仕切部材
6 缶体
11a 直状管体部
11a' 入水側管体部
11a" 出湯側管体部
12a 連結用管体部
20,21 流れ規制部(加熱用気体の流れ規制部)
30a 側壁部(第2の側壁部)
60c 側壁部(第1の側壁部)
60d’ 側壁部(第2の側壁部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート状の複数のフィンに貫通した複数の直状管体部を有する伝熱管と、
前記複数の直状管体部および前記複数のフィンの周囲を囲む複数の側壁部を有し、かつ上下両面部が加熱用気体の流出入用の開口部とされる缶体と、を備えており、
前記伝熱管は、前記複数の直状管体部が前記缶体の前後または左右の幅方向に間隔を隔てて並ぶとともに前記缶体の上下高さ方向に単段に設けられて連結用管体部を介して一連に接続された蛇行状に形成されており、
前記伝熱管の前記幅方向の両端に位置する2つの直状管体部のうち、一方は入水側管体部とされ、かつ他方は出湯側管体部とされ、前記伝熱管における湯水の流通は、前記入水側管体部から前記出湯側管体部に向けて一方向になされるように構成された、熱交換器であって、
前記入水側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第1の側壁部との隙間の幅は、前記出湯側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第2の側壁部との隙間の幅よりも大きくされていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
プレート状の複数のフィンに貫通した複数の直状管体部を有する伝熱管と、
前記複数の直状管体部および前記複数のフィンの周囲を囲む側壁部を有し、かつ上下両面部が加熱用気体の流出入用の開口部とされる缶体と、を備えており、
前記伝熱管は、前記複数の直状管体部が前記缶体の前後または左右の幅方向に間隔を隔てて並ぶとともに前記缶体の上下高さ方向に単段に設けられて連結用管体部を介して一連に接続された蛇行状に形成されており、
前記伝熱管の前記幅方向の両端に位置する2つの直状管体部のうち、一方は入水側管体部とされ、かつ他方は出湯側管体部とされ、前記伝熱管における湯水の流通は、前記入水側管体部から前記出湯側管体部に向けて一方向になされるように構成された、熱交換器であって、
前記複数のフィンには、これら複数のフィンどうしの間を前記加熱用気体が通過する際の抵抗となるように前記各フィンの表面の一部を突出させた加熱用気体の流れ規制部が複数設けられており、これら複数の流れ規制部は、前記複数の直状管体部が並ぶ方向において不均一に設けられ、前記入水側管体部の周辺部分よりも前記出湯側管体部の周辺部分の方が前記加熱用気体の流れに対する抵抗が大きくなるように構成されていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器であって、
前記流れ規制部として、前記出湯側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第2の側壁部との間またはその上方もしくは下方に位置する最出湯側の流れ規制部が設けられている一方、
前記入水側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第1の側壁部との間およびその上下方の位置には、流れ規制部は設けられておらず、または前記最出湯側の流れ規制部よりも前記加熱用気体の流れに対する抵抗が小さい流れ規制部が設けられた構成とされている、熱交換器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の熱交換器であって、
前記流れ規制部として、前記複数の直状管体部どうしの間に設けられた複数の流れ規制部があり、これら複数の直状管体部のうち、前記入水側管体部とこれに隣接する直状管体部との間およびその上下方の領域に設けられている流れ規制部は、他の直状管体部どうしの各間およびその上下方の領域に設けられている流れ規制部よりも前記加熱用気体の流れに対する抵抗が小さい構成とされている、熱交換器。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記入水側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第1の側壁部との隙間の幅は、前記出湯側管体部とこれに対向接近する前記缶体の第2の側壁部との隙間の幅よりも大きくされている、熱交換器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の熱交換器を備えていることを特徴とする、温水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96609(P2013−96609A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238066(P2011−238066)
【出願日】平成23年10月29日(2011.10.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】