説明

熱交換器及びその製造方法

【課題】熱交換器の熱交換性能を良好に維持しつつ、製造コストを引き下げる。
【解決手段】
直管部及び曲管部を連続させて蛇行状に形成された冷媒チューブ2を、相互に間隔を置いて配置された複数のプレートフィンに形成された長孔3Aに貫通させて取り付ける熱交換器の製造方法において、長孔3A両端の円孔部3aの外周縁部に、周方向に沿って放射状に複数のスリット3cを列設し、冷媒チューブ2の曲管部を長孔3Aに貫通させる際に、冷媒チューブ2の外壁によってスリット3c間の帯状部3dを押し広げてスリット3cの根元部で屈曲させ、該屈曲した帯状部3dを冷媒チューブ2外壁面に圧接させて固定する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機、ショーケースなどの冷凍サイクルの熱交換器(蒸発器や凝縮器)に使用される熱交換器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒漏れ防止用として、特許文献1には、冷媒通路を1本の連続した冷媒チューブ(シームレスチューブ)で構成した接合部を有しない熱交換器が開示されている。
この種の熱交換器では、直管部及び曲管部を連続させて蛇行状に形成された冷媒チューブを、相互に間隔を置いて配置された複数のプレートフィンに形成された長孔に貫通させて取り付けている。
【0003】
また、長孔両端部の周縁部にバーリング加工を施し、バーリング部を冷媒チューブ外壁に密着させることにより、熱交換効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−138992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のバーリング加工は、高価な型を用いる必要があるため製造コストが高くなる。
また、バーリング部が硬くなって、冷媒チューブを貫通させる際の抵抗が大きくなり、その結果、冷媒チューブが変形する等、歩留まりが悪化してさらに製造コストが高くなる等の問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明に係る熱交換器は、
直管部及び曲管部を連続させて蛇行状に形成された冷媒チューブと、該冷媒チューブが貫通する長孔を複数有し、相互に間隔を置いて配置された複数のプレートフィンと、を含んで構成される熱交換器であって、
前記プレートフィンの前記長孔両端部の外周縁部に、周方向に沿って放射状に複数のスリットが列設され、前記周方向に沿って屈曲変形された該スリット間の帯状部が、冷媒チューブ外壁面に圧接して固定された構造を有していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る熱交換器の製造方法は、
直管部及び曲管部を連続させて蛇行状に形成された冷媒チューブと、該冷媒チューブが貫通する長孔を複数有し、相互に間隔を置いて配置された複数のプレートフィンと、を含んで構成される熱交換器の製造方法であって、
前記プレートフィンの前記長孔両端部の外周縁部に、周方向に沿って放射状に複数のスリットを列設し、
前記冷媒チューブを前記長孔に貫通させる際に、前記冷媒チューブの外壁によって前記スリット間の帯状部を押し広げて前記周方向に沿って屈曲させ、該屈曲した帯状部を冷媒チューブ外壁面に圧接させて固定する構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このようにすれば、冷媒チューブをプレートフィンの長孔に貫通させる際に、スリット間に形成される帯状部が、冷媒チューブの外壁によって押し広げられることにより容易に屈曲し、該屈曲した帯状部が冷媒チューブ外壁面に圧接して固定される。
【0009】
これにより、冷媒チューブとプレートフィンとの間で熱伝達効率が向上し、熱交換効率を良好に維持できる。
また、バーリング加工が不要となりバーリング加工用の高価な型が不要となると共に、冷媒チューブが長孔を貫通する時の抵抗が小さいため、冷媒チューブの変形等による歩留まりの悪化が抑制され、製造コストを引き下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】自動販売機、ショーケースなどの冷凍サイクルの熱交換器に適用される熱交換器を示す斜視図である。
【図2】同上熱交換器の冷媒チューブを示す正面図である。
【図3】同上熱交換器のプレートフィンを示す図である。
【図4】同上熱交換器の一方の端板を示す図である。
【図5】同上熱交換器の他方の端板を示す図である。
【図6】同上冷媒チューブの曲管部を図2のA方向から視た図である。
【図7】同上プレートフィンに形成される長孔の拡大図である。
【図8】同上の冷媒チューブをプレートフィンの長孔に挿入するときの工程を示す図である。
【図9】図8(C)のX部をB方向から見た状態を拡大して示した図である。
【図10】プレートフィンに形成される長孔の別の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、自動販売機、ショーケースなどの冷凍サイクルの熱交換器に適用される熱交換器の斜視図を示す。
図1において、熱交換器1は、図2に示すように直管部2A及び曲管部2Bが連続し、かつ縦横に複数ずつ列をなして蛇行状に屈曲加工された冷媒チューブ2と、図3に示すように該冷媒チューブ2が貫通する長孔3Aを複数有し、相互に間隔を置いて配置された複数のプレートフィン3と、を含んで構成される。
【0012】
前記複数のプレートフィン3を挟んで、両側端には、冷媒チューブ2の曲管部2Bを、長孔4a,5aを貫通させて外側に突出させた状態で支持する端板4,5が配設されている(図4,図5参照)。なお、一方の端板4(または端板5)には、蛇行状の冷媒チューブ2の両端部が端板4の円孔4bを貫通して突出して支持され、該冷媒チューブ2の両端部は、冷媒サイクルを構成する外部の冷媒チューブ(図示せず)に接続される。
【0013】
冷媒チューブ2には、一般に熱伝導率の大きい材料として例えば、銅、アルミ材等が用いられ、プレートフィン3には軽量で熱伝導率の大きい材料として例えば、アルミ材等が用いられる。端板4、5には、強度確保のため、例えば鋼材等が用いられる。
【0014】
ここで、端板4,5の長孔4a,5a及び円孔4bは、図4、図5に示すように、冷媒チューブ2の貫通時の摩擦抵抗を低減できるように、冷媒チューブ2の曲管部2Bを貫通方向からみた投影外郭線より若干大きめに形成させてある。
【0015】
一方、プレートフィン3の長孔3Aは、図7に拡大して示すように、以下のように形成されている。冷媒チューブ2貫通前の状態で、長孔3Aは、両端の円孔部3aと、これら円孔部3a相互を連繋する連繋孔部3bと、を有している。
【0016】
円孔部3aは、冷媒チューブ2の直管部2Aの直径より小さい直径を有した円形状に形成されている。
連繋孔部3bは、円孔部3aの直径より幅が狭く、かつ、中央部で最も幅が狭くなるように輪郭線を湾曲させて形成されている。
【0017】
両端の円孔部3aの外側周縁部には、周方向に沿って放射状に複数のスリット3cが形成されている。これら複数のスリット3cの最深部を結ぶ円の直径は、円孔部3aを貫通する冷媒チューブ2部分(直管部2A)の直径より少し大きく形成されている。
【0018】
次に、上記熱交換器1の製造方法について説明する。
冷媒チューブ2は、ストレートなパイプを縦横に複数列をなすように蛇行状に曲げ加工して形成される。また、図6に示すように、曲管部2Bは、熱交換器1の組立前において、後述するように、長孔3Aの連繋孔部2cを貫通しやすくするため、該連繋孔部2cの長手方向と平行に若干偏平に加工されて幅が狭く形成される。
【0019】
複数枚のプレートフィン3を、治具を挟んで相互に所定の間隔をあけて設置し、該設置された複数枚のプレートフィン3に対し、上記蛇行状の冷媒チューブ2を、その曲管部2Bからプレートフィン3の長孔3Aに挿入する。
【0020】
ここで、まず、曲管部2Bの先端部が長孔3Aの連繋孔部3bを貫通する。この際、曲管部2Bは、連繋孔部3bを外側に押し拡げて変形させるが、上記のように曲管部2Bは連繋孔部3bの長手方向と平行に偏平な幅狭に加工されているので、変形量を少なくすることができる。
【0021】
これにより、曲管部2Bの連繋孔部3b貫通時に、連繋孔部3b変形による抵抗を小さくしつつ、連繋孔部3bの開口面積をできるだけ小さくしてプレートフィン3の表面積を大きくすることができ、熱交換効率を向上できる。
【0022】
また、特許文献1の図8のように、連繋孔部を両端の円孔より幅狭の矩形状とした場合は、曲管部の連繋孔部貫通時に、連繋孔部の両側縁部が細長い矩形状に起こされ、それらの両端部に形成される角部によって、プレートフィン間を流通する空気流が乱流を生じやすくなる。これにより、プレートフィンの放熱性能(凝縮器の場合)または吸熱性能(蒸発器の場合)が変動しやすく、安定した熱交換性能が得られにくい。
【0023】
これに対し、本実施形態では、連繋孔部3bが中央部で凸の円弧状の輪郭を有しているため、曲管部の連繋孔部貫通時に該円弧状の凸部が起こされ、角部を有しない。このため、プレートフィン間を流通する空気流に乱流が生じにくくなり、プレートフィンの放熱性能または吸熱性能を一定に保つことができ、安定した熱交換性能を確保できる。
【0024】
なお、連繋孔部の形状を、曲管部2Bの偏平な幅と同一、若しくはやや大きい幅を有する矩形状として、曲管部2B貫通時の摩擦抵抗を無くすか、できるだけ小さくすることもできる。
【0025】
曲管部2Bの両端部から直管部2Aに移行する部分が長孔3Aの円孔部3aを貫通する際には、直管部2Aの直径は、円孔部3aの直径より大きく、また、多数のスリット3cの最深部相互を結ぶ円の直径より小さく形成されているので、図8(A)〜(C)及び図9に示すように、プレートフィン3のスリット3c間の各帯状部3dが冷媒チューブ2の挿入先側に押し曲げられつつ、冷媒チューブ2の外壁面に圧接して固定される。
【0026】
このようにして、蛇行状の冷媒チューブ2を、全てのプレートフィン3の長孔3Aを貫通させて、曲管部2Bが両端のプレートフィン3から突出させた状態で取り付ける。
次いで、両端のプレートフィン3の外側に、それぞれ端板4,5を、これらに形成された長孔4a,5a及び円孔4bに冷媒チューブ2を貫通させて、取り付ける。なお、両側の端板4,5とプレートフィン3との間に、治具を挟んで、所定の間隔を設けてよいが、端板4,5とプレートフィン3とを接合して取り付けてもよい。
【0027】
また、一方の端板4に形成された一対の円孔4bには、蛇行状の冷媒チューブ2の両端部が貫通する。
次いで、上記プレートフィン3への取付後の冷媒チューブ2内に、高圧に加圧された水または油等の液体を注入する。これにより、液圧によって冷媒チューブ2が拡開され、プレートフィン3の各帯状部3dが、より大きく変形して冷媒チューブ2の外壁面との接触面積を増大させつつ、より強い力で圧接する。
【0028】
これにより、冷媒チューブ2−プレートフィン3間の熱伝達率が高められる。
また、曲管部2Bの偏平に加工された部分が、液圧によって、元の円形断面、またはこれに近い形状に戻され、冷媒の流通抵抗を良好に維持できる。
【0029】
さらに、前記液圧による冷媒チューブ2の拡開により、冷媒チューブ2が端板4,5の長孔4a,5a及び円孔4bに、より強く圧接して強固に取り付けられる。
最後に、プレートフィン相互間、プレートフィンと端板間との間隔設定用の治具を取り除き、熱交換器1の製造を完了する。
【0030】
かかる構成とすれば、プレートフィン3の長孔3A外周縁部に形成されて屈曲される帯状部3dが、冷媒チューブ2外壁に圧接して密着するので、冷媒チューブ2−プレートフィン3間の熱伝達率が高められ、熱交換効率、ひいては、本熱交換器を用いた冷凍サイクルの熱効率を良好に維持できる。
【0031】
また、プレートフィンの長孔周縁部に冷媒チューブ外壁と接触させるためのバーリング加工を施すことが不要となり、バーリング加工用の高価な型が不要となる。
また、バーリング加工したときには、硬くなったバーリング部を貫通する際の変形による歩留まりの低下を生じるが、本実施形態では、冷媒チューブの長孔への挿入時に、スリットにより形成される帯状部が容易に変形するため、高い歩留まりを維持できる。
【0032】
このように、熱交換器の高い性能を確保しつつ、製造コストを大幅に引き下げることができる。
なお、本実施形態では、冷媒チューブ2を複数枚のプレートフィン3に貫通させた後で、端板4,5を両側から冷媒チューブ2に貫通して取り付ける構成のものを示したが、複数枚のプレートフィン3と端板4,5とに同時に冷媒チューブ2に貫通して取り付ける構成としてもよい。この場合、2つの端板は、共に、図5に示したように長孔を配設した形状となる。
【0033】
また、冷媒チューブとプレートフィンのみで熱交換器の強度が確保される場合には、端板を省略することもできる。
さらに、図10に示すように、長孔3Aの連繋孔部3bの外縁部にもスリット3eを設けてもよく、曲管部2Bの貫通時に、スリット3e間の帯状部3fが容易に変形して、変形時の抵抗をより小さくすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1…熱交換器
2…冷媒チューブ
3…プレートフィン
3A…長孔
3a…円孔部
3b…連繋孔部
3c…スリット
3d…帯状部
4…端板
4a…長孔
4b…円孔
5…端板
5a…長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部及び曲管部を連続させて蛇行状に形成された冷媒チューブと、該冷媒チューブが貫通する長孔を複数有し、相互に間隔を置いて配置された複数のプレートフィンと、を含んで構成される熱交換器であって、
前記プレートフィンの前記長孔両端部の外周縁部に、周方向に沿って放射状に複数のスリットが列設され、前記周方向に沿って屈曲変形された該スリット間の帯状部が、冷媒チューブ外壁面に圧接して固定された構造を有していることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記プレートフィンの長孔は、両端が円形状の円孔部と、これら円孔部相互を連繋する連繋部とを備え、前記円孔部の外周縁部に前記スリットが形成されている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記長孔の連繋部は、前記円孔部の直径より狭い幅を有して形成されている請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
直管部及び曲管部を連続させて蛇行状に形成された冷媒チューブと、該冷媒チューブが貫通する長孔を複数有し、相互に間隔を置いて配置された複数のプレートフィンと、を含んで構成される熱交換器の製造方法であって、
前記プレートフィンの前記長孔両端部の外周縁部に、周方向に沿って放射状に複数のスリットを列設し、
前記冷媒チューブを前記長孔に貫通させる際に、前記冷媒チューブの外壁によって前記スリット間の帯状部を押し広げて前記周方向に沿って屈曲させ、該屈曲した帯状部を冷媒チューブ外壁面に圧接させて固定する構成としたことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項5】
前記冷媒チューブを前記複数枚のプレートフィンを貫通して取り付けた後、前記冷媒チューブ内に、高圧に加圧された液体を注入し、液圧によって冷媒チューブを拡開して前記プレートフィンの帯状部をさらに変形させつつ冷媒チューブ外壁との接触面積を増大させる請求項4に記載の熱交換器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−202560(P2012−202560A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64764(P2011−64764)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(511074589)サンワサーモテック株式会社 (1)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)