説明

熱交換器

【課題】チタンを含有するステンレス製の部材同士をろう付け不良を生じないように適切に接合することが可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】チタンを含有するステンレス製の第1および第2の部材1,20を有し、かつこれら第1および第2の部材1,20は、ろう付けにより接合されている、熱交換器HEであって、チタンを含有せず、または第1および第2の部材1,20よりもチタン含有率が少ないステンレス製の補助部材4を備えており、この補助部材4は、全体または一部が、第1および第2の部材1,20のろう付け対象部分またはその近傍に配されて、第1および第2の部材1,20とろう付けされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給湯装置における潜熱回収用の熱交換器などとして用いられる熱交換器、さらに詳しくは、伝熱管やこの伝熱管を収容するケースなどの部材がステンレス製とされ、かつそれらステンレス製の部材同士の接合手段として、ろう付けが用いられている熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置における潜熱回収用の熱交換器としては、バーナを用いて発生された燃焼ガスが内部に供給されるケース内に、伝熱管を収容し、この伝熱管内に加熱対象となる湯水を供給させるようにしたものがある。このような構成は、顕熱回収用の熱交換器と同様であるものの、潜熱回収用の熱交換器においては、潜熱回収に伴って発生する強酸性の凝縮水(ドレイン)に起因する各部の腐食を防止する必要がある。このため、潜熱回収用の熱交換器の伝熱管やケースなどは、ステンレス製とされるのが通例である。ステンレスとしては、たとえばJIS規格SUS304などのオーステナイト系のものが耐酸性に優れるため、広く用いられている。ただし、オーステナイト系は、ニッケルを含むため、高価である。そこで、従来においては、コスト低減を目的として、熱交換器の構成部材を、ニッケルを含まないフェライト系ステンレス製とすることもなされている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、従来においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、ケース内に伝熱管が収容された熱交換器では、ケースの側板に孔部を設け、かつこの孔部に伝熱管を挿通させることによって、伝熱管の端部をケースの外部に引き出してヘッダを取り付ける構造がよく採用される。この場合、伝熱管とケースとを固定させるための手段として、ろう付けが用いられる場合が多い。
ここで、従来のろう付作業の一例を簡単に説明すると、まず図12(a)に示すように、ケースの側板8の孔部80に、伝熱管9を挿通させる。次いで、バルジ加工を施し、同図(b)に示すように、伝熱管9のうち、側板8に貫通している部分、およびその近辺を拡管させる。この拡管処理によって、伝熱管9と側板8とを仮固定し、また孔部80内の隙間の幅を調整することができる。ろう材Sについては、符号n20で示すように、たとえば伝熱管9の上部であって、側板8の外面や内面に接近した箇所に、予め配置しておく。このような状態において、ろう材Sを加熱溶融させると、この溶融ろう材は、伝熱管9の外周面および側板8の外面を伝って下向きに流動し、伝熱管9の外周の略全周に行き渡らせることが可能である。
【0005】
一方、フェライト系ステンレスとして一般市場に流通しているものは、安定化元素としてチタンを含んでいる。このようなステンレスでは、ろう付けを行なうべく高温に加熱された際に、その表面に酸化チタンが生成される。この酸化チタンは、ろう材の濡れ性を低下させる要因となる。
【0006】
このようなことから、図12に示した伝熱管9および側板8が、チタンを含むフェライト系ステンレス製である場合には、ろう材回りが悪くなり、ろう付け不良を生じる虞がある。図12に示した手法では、伝熱管9を拡管させているものの、この拡管処理では、孔部80内における隙間の形状や寸法に、ばらつきを生じる場合がある。このようなばらつきが生じた上で、前記したようなろう材の濡れ性が低下する現象を生じると、ろう材の回り性のばらつきが顕著となり、ろう付け不良がより生じ易くなる。ろう付け不良が発生したのでは、燃焼ガスや強酸性のドレインがケースの外部へ漏出する不具合や、ろう付け箇
所に強度不足を生じるといった虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−106970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、チタンを含有するステンレス製の部材同士をろう付け不良を生じないように適切に接合することが可能な熱交換器を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明により提供される熱交換器は、チタンを含有するステンレス製の第1および第2の部材を有し、かつこれら第1および第2の部材は、ろう付けにより接合されている、熱交換器であって、チタンを含有せず、または前記第1および第2の部材よりもチタン含有率が少ないステンレス製の補助部材を備えており、この補助部材は、全体または一部が、前記第1および第2の部材のろう付け対象部分またはその近傍に配されて、前記第1および第2の部材とろう付けされていることを特徴としている。
第1および第2の部材の具体的な材質の代表例として、フェライト系ステンレスを挙げることができる。これに対し、補助部材の具体的な材質の代表例としては、オーステナイト系ステンレスを挙げることができる。
【0011】
このような構成によれば、第1および第2の部材の接合構造部は、それら第1および第2の部材と補助部材とのろう付け部分を有することとなる。ここで、第1および第2の部材は、ろう付け時において表面に生成される酸化チタンに起因し、ろう材の濡れ性が低くなるものであるが、補助部材は、表面に酸化チタンが生成せず、または生成し難いものであるために、補助部材の表面におけるろう材の濡れ性は良好である。このため、ろう材の加熱溶融時には、この溶融ろう材を補助部材の表面に伝わせることにより、所望のろう付け対象部分の略全域に行き渡らせることが可能である。このようなことから、本発明においては、ろう材の回り込み不足に起因するろう付け不良を適切に防止または抑制しつつ、第1および第2の部材を適切に接合することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記第1の部材は、伝熱管であり、前記第2の部材は、前記伝熱管を囲むケースを構成する外装部材である。
【0013】
このような構成によれば、熱交換器の主要構成要素である伝熱管およびケースのそれぞれを、比較的廉価なフェライト系ステンレスとして、全体の製造コストの低減化を図りながらも、それらを適切に接合することが可能となる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記外装部材には、前記伝熱管を前記ケースの内部から外部に引き出すための孔部が設けられ、前記補助部材は、前記伝熱管の挿入用の貫通孔を有していることにより前記伝熱管に外嵌し、かつこの補助部材の全体または一部は、前記外装部材の外面もしくは内面に対向し、または前記外装部材の孔部内のうち、前記伝熱管の周囲の隙間に嵌入しており、前記伝熱管の外周面全周、および前記外装部材の孔部の周縁部全周が、前記補助部材とろう付けされている。
【0015】
このような構成によれば、外装部材の孔部と、この孔部に挿入した伝熱管の外周面との
嵌合部分が気密状態に封止されるように、適切なろう付けを図ることが可能である。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記補助部材は、前記外装部材の外面もしくは内面に対向する対向部と、この対向部から前記伝熱管の軸長方向に突出し、かつ前記外装部材の孔部内のうち、前記伝熱管の周囲の隙間に嵌入する突出部と、を有している。
【0017】
このような構成によれば、補助部材の対向部と突出部とを、外装部材および伝熱管とのろう付けに利用できるために、ろう付け面積を大きくとることができる。したがって、外装部材と伝熱管との接合強度を高め、ろう付け不良を防止するのにより好ましいものとなる。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記補助部材の突出部の外面は、この突出部の先端側から基端側に進むにしたがって前記突出部の幅または直径が大きくなるように傾斜し、かつ前記外装部材の孔部の内周縁に当接可能な傾斜面とされている。
【0019】
このような構成によれば、補助部材の突出部の傾斜面を外装部材の孔部の内周縁に圧接させることにより、これらの部材の仮固定を図ることができる。このことにより、ろう付け前における伝熱管の拡管作業を省略し、熱交換器の製造作業の簡素化を図ることが可能となる。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記伝熱管として、複数の伝熱管を有し、前記外装部材の孔部は、前記複数の伝熱管を一括して挿入させることが可能に形成され、前記補助部材は、前記孔部を閉塞し、かつ前記貫通孔として、前記複数の伝熱管を個々に挿入させるための複数の貫通孔を有する構成とされている。
【0021】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、前記構成とは異なり、外装部材に複数の伝熱管を個々に挿入させるための孔部を複数設けたのでは、これら複数の孔部のそれぞれに伝熱管を挿入する作業が煩雑となる。これに対し、前記構成によれば、外装部材に設けられた1つの孔部に対して複数の伝熱管を一括して挿入すればよいために、前記した煩雑さが解消される。補助部材の複数の貫通孔には、複数の伝熱管を個々に挿入させる必要はあるものの、補助部材は単一化されているためにその作業も容易となる(たとえば、複数の補助部材のそれぞれに設けられた貫通孔に伝熱管を個々に挿入する場合のように、複数の補助部材を取り扱う煩わしさがない)。このようなことから、前記構成によれば、製造作業の容易化を図り、製造コストを低減するのに有利となる。
【0022】
本発明において、好ましくは、前記伝熱管に対する熱交換対象流体の流入または流出を行なわせるためのヘッダを備え、このヘッダが、前記補助部材として用いられている。
【0023】
このような構成によれば、ヘッダが補助部材を兼用しているために、合理的であり、部品点数の増加を抑制することができる。
【0024】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、本発明に係る熱交換器の一例を示す平面断面図であり、(b)は、その正面断面図である。
【図2】(a)は、図1(a)のII−II断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。
【図3】図2(a)のIII−III断面図である。
【図4】図1に示す熱交換器の要部分解斜視図である。
【図5】(a)は、本発明の他の例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)の構造に用いられている補助部材の斜視図である。
【図6】(a)は、本発明の他の例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)の構造に用いられている補助部材の斜視図である。
【図7】(a)は、本発明の他の例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)の構造に用いられている補助部材の斜視図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の他の例を示す要部断面図である。
【図9】本発明の他の例を示す要部断面図である。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の他の例を示す要部断面図である。
【図11】(a),(b)は、本発明の他の例を示す要部断面図である。
【図12】(a),(b)は、従来技術の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1〜図4は、本発明が適用された熱交換器およびこれに関連する構成の一例を示している。
図1に示す熱交換器HEは、給湯装置において湯水加熱を行なうのに利用される熱交換器であって、顕熱回収用の他の熱交換器(図示略)によって顕熱が回収された後の燃焼ガスから潜熱を回収するためのものである。この熱交換器HEは、略直方体状のケース2、このケース2内に収容された複数の伝熱管1、およびろう付け補助用の一対の補助部材4を備えている。
各伝熱管1およびケース2は、チタンを含有するフェライト系ステンレス製であり、補助部材4は、チタンを含有しないオーステナイト系ステンレス製である。
【0028】
ケース2は、チタンを含まないフェライト系ステンレス製の複数枚の板体を溶接して略直方体状に組み立てたものであり、後板部22および前板部23には、燃焼ガス用の給気口24および排気口25が形成されている。このケース2の一対の側板20,21のうち、一方の側板20は、本発明でいう外装部材の一例に相当し、後述するように、ろう付けによる伝熱管1との接合が図られる。
【0029】
複数の伝熱管1は、平面視長円状の複数の螺旋状管体部を有している。これら複数の螺旋状管体部は、互いにサイズが異なっており、略同心の重ね巻き状に配されている。各伝熱管1の上端側および下端側部分は、略水平に延びる直状管体部10a,10bとされ、かつケース2の側板20に設けられた孔部26に挿入されていることにより、ケース2の内部から外部に引き出されている。これら直状管体部10a,10bの端部には、入水用または出湯用の開口部30を有するヘッダ3(3A,3B)が連結されている。ヘッダ3Bから各伝熱管1に供給された水は、各伝熱管1内を流通する過程において前記燃焼ガスにより加熱され、この加熱により生成された温水は、ヘッダ3Aから出湯するようになっている。なお、ヘッダ3と伝熱管1との連結固定は、通常のろう付けにより行なわれている。本実施形態において、ヘッダ3は、伝熱管1とは異なり、チタンを含まないオーステナイト系ステンレス製とされており、ヘッダ3の表面には、ろう材回りを悪化させる酸化チタンは生成されない。このため、ヘッダ3と伝熱管1とのろう付け箇所には、補助部材4に相当する部材は設けられていない。
【0030】
補助部材4は、伝熱管1とケース2の側板20とのろう付けを補助するためのものである。図4によく表われているように、複数の伝熱管1の端部は、略水平方向に並んでおり、側板20の孔部26は、それら複数の伝熱管1の端部を一括して挿通させることが可能な横長状に形成されている。これに対応し、補助部材4は、孔部26を塞ぐことができる
ように孔部26よりもサイズが大きな横長状に形成され、複数の伝熱管1を個々に挿通させるための複数の貫通孔40を有している。
【0031】
図2(b)および図3によく表われているように、補助部材4は、伝熱管1に外嵌した状態でケース2の側板20に隣接した配置とされ、孔部26を塞いでいる。なお、図2以降の図面においては、ろう材Sの位置などを明確にすることを目的として、各構成部材どうしの間に形成されている隙間の幅を実際よりもかなり拡大して示している場合がある。また、ろう材Sについては、ろう付け部分の構造を明確にするために、あえて省略している場合もある。補助部材4は、ケース2の側板20の外面に対向する対向部41、およびこの対向部41から伝熱管1の軸長方向に突出した突出部42を有しており、この突出部42は、側板20の孔部26内のうち、前記伝熱管1の周囲に形成された隙間に嵌入している。本実施形態では、補助部材4を側板20の外面側に配置させているが、本発明では、これとは異なり、補助部材4を側板20の内面側に配置させた構成とすることもできる。この点は、後述する他の実施形態についても同様である。
【0032】
側板20と伝熱管1との接合には、たとえばニッケル製のろう材Sが用いられており、このろう材Sを用いて、側板20および伝熱管1は、補助部材4にろう付けされている。このろう付けは、たとえば図2(b)の符号n1,n2で示す箇所にろう材Sを配置して、このろう材Sを加熱溶融させることにより行なわれている。符号n1に配置されていたろう材Sは、加熱溶融時において、側板20の外面と補助部材4との隙間に進行し、さらには孔部26内のうち、補助部材4の突出部42の周囲に形成されている隙間にも進行して、孔部26の周縁部の全周域に行き渡る。これに対し、符号n2に配置されていたろう材Sは、加熱溶融時において、補助部材4の側面に沿うようにして伝熱管1の外周面の全周域に行き渡るとともに、補助部材4の貫通孔40内のうち、伝熱管1の周囲の隙間にも行き渡る。なお、前記したろう付けの前には、伝熱管1の拡管が適宜行なわれる。この拡管は、伝熱管1内にビレットと称される拡管具を挿入して行なうが、この拡管時において補助部材4の突出部42をも拡管させれば、ケース2、補助部材4、および伝熱管1の三者を仮固定することが可能である。
【0033】
次に、前記した熱交換器HEの作用について説明する。
【0034】
まず、ケース2の側板20と各伝熱管1とは、ともにチタンを含有するフェライト系ステンレスであるために、これらを単に直接ろう付けしただけでは、背景技術の欄で説明したように、それらの表面に生成される酸化チタンに起因してろう材Sの濡れ性が低くなり、ろう付け不良を生じ易い。これに対し、本実施形態の熱交換器HEにおいては、補助部材4がチタンを含有しないオーステナイト系ステンレスであるために、この補助部材4の表面にはろう付け時において酸化チタンは生成されず、ろう材Sの濡れ性はよい。図2(b)を参照して説明したように、補助部材4は、側板20および伝熱管1にろう付けされているが、これら側板20および伝熱管1とのろう付け構造によれば、溶融ろう材を濡れ性の良い補助部材4の表面に伝わせることによって、ろう材回りを良くし、ろう付け対象部位の全域にろう材Sを適切に行き渡らせることが可能である。その結果、ろう付け不良を生じ難くし、たとえばケース2内の燃焼ガスが孔部26の隙間を通過して外部に漏出するといった不具合を適切に防止することができる。
【0035】
本実施形態では、側板20および伝熱管1は、直接的にはろう付けされておらず、補助部材4を介して間接的に接合された構成とされている。ただし、既述したように、側板20および伝熱管1に対する補助部材4のろう付けを適切に行なうことができるために、ケース2に対する伝熱管1の接合強度を高いものとすることが可能である。側板20および伝熱管1は、熱交換器HEの大部分を占める主要構成要素である。本実施形態では、それら側板20および伝熱管1を、ともに比較的廉価なフェライト系ステンレスとしているた
めに、熱交換器HEの全体の製造コストを廉価にする上でも好適である。また、本実施形態では、側板20に設けられた1つの孔部26に複数の伝熱管1が一括して挿入されているために、その挿入操作は容易である。また、補助部材4も、1つの補助部材4によって複数の伝熱管1に対応できる構造とされているために、補助部材4の総数が多くなってその取り扱いが煩わしくなるといった不具合もできる。このようなことから、熱交換器HEの組み立て作業性もよく、製造コストを廉価にする上で一層好ましいものとなる。
【0036】
図5〜図11は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0037】
図5に示す実施形態では、補助部材4の突出部42の外周面が、傾斜面42aとされており、この点が、前記実施形態とは相違している。傾斜面42aは、突出部42の先端側(図面左端側)から基端側に進むにしたがってこの突出部42の幅を大きくするものであり、側板20の孔部26の内周縁に圧接可能である。
本実施形態によれば、傾斜面42aが孔部26の内周縁に圧接させることにより、補助部材4を側板20に仮固定させることができる。このようなことにより、ろう付け前における伝熱管1の拡管処理を省略し、製造工程の簡略化を図る上ことが可能となる。
【0038】
図6に示す実施形態においては、補助部材4には、前記実施形態の突出部42に相当する部位が設けられておらず、側板20の外面に対向する部分のみを有する構成とされている。
本実施形態においては、側板20の外面と補助部材4との隙間にろう材Sを進入させることにより、孔部26の周縁部全周域や伝熱管1の外周面全周域を補助部材4とろう付けすることができる。もちろん、側板20と伝熱管1とを直接ろう付けすることもできる。
【0039】
図7に示す実施形態においては、補助部材4の外周縁の形状およびサイズが、側板20の孔部26に対応したものとされ、補助部材4の略全体が孔部26に嵌入されている。
本実施形態においては、補助部材4の外周面と孔部26の周縁部との全周域をろう付けすることができるとともに、補助部材4の貫通孔40の周縁部と伝熱管1の外周面との全周域をろう付けすることができる。
【0040】
図8に示す実施形態においては、補助部材4がリング状(比較的短寸の円筒状も含む)に形成されている。
より具体的には、同図(a)に示す補助部材4は、貫通孔40を1つのみ有するリング状とされ、かつこの貫通孔40に1本の伝熱管1が挿通された状態で側板20の外面に隣接して配置されている。ろう付けの態様は、図6(a)に示した構造と同様である。
同図(b)に示す補助部材4は、側板20の外面に対向する対向部41と、この対向部41から突出して側板20の孔部26の隙間に嵌入した突出部42とを有している。ろう付けの態様は、図2(b)に示した構造と同様である。
同図(c)に示す補助部材4は、略全体が側板20の孔部26内に嵌入されている。ろう付け態様は、図7(a)に示した構造と同様である。
【0041】
これら図8の実施形態では、1本の伝熱管1に対して、1つの補助部材4を外嵌させる必要があり、また側板20に設けられる孔部26は、1本の伝熱管1を挿通させるのに適するサイズとして、伝熱管1と同数だけ設ける必要がある。このため、複数の伝熱管1をろう付け対象とする場合には、それと同数の補助部材4を用いる必要がある。ただし、側板20と伝熱管1との基本的な接合構造は、先に述べた実施形態と同様であって、ろう材Sの濡れ性が良好な補助部材4を利用することにより、ろう材Sをろう付け対象部位の全域に適切に回り込ませることが可能である。
【0042】
図9に示す実施形態では、補助部材4の上部が屈曲されて、この屈曲部分と側板20との隙間が、ろう材S’(溶融前)を配置しておくための部分とされている。また、孔部26に嵌入する突出部42の外周面は、先端側ほど幅または直径が小さくなるように傾斜している。本実施形態の構成は、図8に示したように補助部材4が略リング状に形成される場合と、図1〜図7に示したように補助部材4が複数の貫通孔40を有するものとされる場合とのいずれにも適用可能である。
本実施形態によれば、補助部材4の上側に配置されたろう材S’を加熱溶融させた際には、図9の矢印で示すような経路でこの溶融ろう材を進行させることができる。したがって、所定のろう付け対象部位に効率良くろう材を行き渡らせることができ、ろう材Sの使用量を少なくするのに好適である。
【0043】
図10に示す実施形態では、ヘッダ3がチタンを含有しないオーステナイト系ステンレス製とされ、本発明でいう補助部材として利用されている。
より具体的には、同図(a)に示す実施形態では、ヘッダ3の側壁部31が、ケース2の側板20に接近した配置とされている。これら側壁部31および側板20の隙間にろう材Sが流れ込んでいるが、このろう材Sの一部は、伝熱管1の外周面に到り、さらには孔部26内のうち、伝熱管1の周囲の隙間に進入している。
同図(b)に示す実施形態では、ヘッダ3の管体部32が、側板20の孔部26内のうち、伝熱管1の周囲の隙間に挿入されている。好ましくは、管体部32は、先端側から基端側に進むほどその外径が大きくなるように、その外周面は傾斜状であり、このことにより、ろう付け前の拡管作業を省略することが可能である。符号n3で示す部分においては、伝熱管1の外周面、ヘッダ3の管体部32の先端寄り部分、および側板20の内面が、互いに接近しており、これらの部分がろう材Sを用いてろう付けされている。側板20の外面および管体部32の外周面に、ろう付けをさらに施す構成とすることもできる。
同図(c)に示す実施形態では、ヘッダ3の管体部32は、その先端部分が側板20の外面近傍に位置している。符号n4で示す部分において、伝熱管1の外周面、ヘッダ3の管体部32、および側板20の外面が接近した配置にあり、これらの部分がろう材Sを用いてろう付けされている。
【0044】
図10(a)〜(c)に示した実施形態によれば、いずれの場合においても、ヘッダ3を本発明でいう補助部材として利用されていることにより、側板20と伝熱管1とを適切にろう付けすることが可能である。補助部材として、ヘッダ3とは別の部材を用いる必要がないため、製造コストの低減を図るのに好適である。
【0045】
図11(a)に示す実施形態においては、ヘッダ3が、伝熱管1と同様に、チタンを含有するフェライト系ステンレス製とされており、このヘッダ3と伝熱管1とのろう付けを補助するための手段として、補助部材4が用いられている。この補助部材4は、たとえば図8(a)に示したものと同様な構成である。本実施形態から理解されるように、本発明は、伝熱管とヘッダとを接合する場合にも適用可能である。
なお、図11(a)では、伝熱管1と側板20とを接合するための手段として、ろう付けはなされておらず、かしめ部材5が用いられている。このかしめ部材5は、同図(b)に示すように、元々は円筒部50の一端にフランジ部51が連設された構成であり、伝熱管1に外嵌され、かつ側板20の内側から孔部26に差し込まれた状態にセッティングされる。このような状態において、同図(b)の矢印で示すように、円筒部50に対して力Fを加えて、円筒部50を同図(a)に示すように変形させる。この変形では、円筒部50の一部が偏平な2つ折り状の部分52となり、この部分の内周面が伝熱管1の外周面に圧接する。また、2つ折り状の部分52とフランジ部51とによって側板20が挟み込まれる。このようなことにより、側板20の孔部26の気密シールを図りつつ、側板20と伝熱管1とを、かしめ部材5を介して強固に接合することが可能である。
【0046】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0047】
本発明でいう補助部材は、チタンの含有率がゼロのものであることが好ましいが、微量のチタンを含有するものであっても、その含有率がろう付け対象となる第1および第2の部材よりも少ないステンレスであればよい。補助部材をオーステナイト系以外のステンレスとすることもできる。
【0048】
本発明でいう第1および第2の部材は、伝熱管とケースの側板との組み合わせ、あるいは図11に示したような伝熱管とヘッダとの組み合わせに限らない。たとえば、伝熱管をケースの上板または底板に貫通させる場合には、伝熱管とケースの上板または底板との組み合わせとすることができ、この場合、ケースの上板または底板が、本願発明でいう接合対象としての外装部材に相当する。また、ケースを構成する2つの部材を接合する場合、あるいはケースに燃焼ガス(加熱用気体)の流れを規制するための部材を接合するような場合であって、それらがチタンを含むステンレス製である場合にも、本発明を適用することが可能である。また、チタンを含むステンレスは、フェライト系ステンレスに限定されない。
【0049】
本発明に係る熱交換器は、給湯装置用のものに限定されない。したがって、伝熱管内を流通する流体や、この流体と熱交換される媒体の種類なども限定されない。伝熱管は、螺旋状のものに限らず、たとえば蛇行状や直管状などの他の形態のものとすることができる。
【符号の説明】
【0050】
HE 熱交換器
S ろう材
1 伝熱管(第1の部材)
2 ケース
3 ヘッダ
4 補助部材
20 ケースの側板(第2の部材)
26 孔部(ケースの側板の)
40 貫通孔(補助部材の)
41 対向部(補助部材の)
42 突出部(補助部材の)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンを含有するステンレス製の第1および第2の部材を有し、かつこれら第1および第2の部材は、ろう付けにより接合されている、熱交換器であって、
チタンを含有せず、または前記第1および第2の部材よりもチタン含有率が少ないステンレス製の補助部材を備えており、
この補助部材は、全体または一部が、前記第1および第2の部材のろう付け対象部分またはその近傍に配されて、前記第1および第2の部材とろう付けされていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記第1の部材は、伝熱管であり、
前記第2の部材は、前記伝熱管を囲むケースを構成する外装部材である、熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器であって、
前記外装部材には、前記伝熱管を前記ケースの内部から外部に引き出すための孔部が設けられ、
前記補助部材は、前記伝熱管の挿入用の貫通孔を有していることにより前記伝熱管に外嵌し、かつこの補助部材の全体または一部は、前記外装部材の外面もしくは内面に対向し、または前記外装部材の孔部内のうち、前記伝熱管の周囲の隙間に嵌入しており、
前記伝熱管の外周面全周、および前記外装部材の孔部の周縁部全周が、前記補助部材とろう付けされている、熱交換器。
【請求項4】
請求項3に記載の熱交換器であって、
前記補助部材は、前記外装部材の外面もしくは内面に対向する対向部と、この対向部から前記伝熱管の軸長方向に突出し、かつ前記外装部材の孔部内のうち、前記伝熱管の周囲の隙間に嵌入する突出部と、を有している、熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換器であって、
前記補助部材の突出部の外面は、この突出部の先端側から基端側に進むにしたがって前記突出部の幅または直径が大きくなるように傾斜し、かつ前記外装部材の孔部の内周縁に当接可能な傾斜面とされている、熱交換器。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記伝熱管として、複数の伝熱管を有し、
前記外装部材の孔部は、前記複数の伝熱管を一括して挿入させることが可能に形成され、
前記補助部材は、前記孔部を閉塞し、かつ前記貫通孔として、前記複数の伝熱管を個々に挿入させるための複数の貫通孔を有する構成とされている、熱交換器。
【請求項7】
請求項2ないし5のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記伝熱管に対する熱交換対象流体の流入または流出を行なわせるためのヘッダを備え、
このヘッダが、前記補助部材として用いられている、熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−251673(P2012−251673A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122457(P2011−122457)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】