説明

熱伝導性樹脂ペーストおよびそれを用いた光ディスク装置

【課題】硬化重合後も柔軟性を有し、光ピックアップ光源の発熱による熱劣化を軽減する熱伝導性樹脂ペーストおよびそれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。
【解決手段】硬化性ベース樹脂と、熱伝導性の粒子とを含む熱伝導性樹脂ペーストであって、硬化性ベース樹脂は、1分子中に官能性オキシラン環を2つ持つ2官能基エポキシモノマーと1分子中に官能性オキシラン環を1つ持つ単官能基エポキシモノマーと酸化防止剤とを略2:8:3の配合重量比率で含む構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発熱体の熱を他の周辺部材に逃がす媒体として機能する熱伝導性樹脂ペーストおよびそれを用いた光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学記録媒体として、DVD、CD−R、CD−RW等の種々の光ディスクが開発されている。DVDにおいては、波長約650nmのレーザ光により情報の記録または再生が行なわれ、一方、CD−RやCD−RWにおいては、波長約780nmのレーザ光により情報の記録または再生が行なわれており、情報の記録、再生を精度高く行なうためには、光源の光軸ずれが無いことが必要条件である。
【0003】
このような複数種類の光ディスクに対して、情報の記録または再生を行なう光ディスク装置において、光ディスク装置に搭載される光ピックアップの光源の発熱により約80℃まで光源温度は上昇する。そのため、光源の熱を結合ベースに逃がしている。
【0004】
例えば、光源と結合ベースとの間の隙間に熱伝導性のあるシリコーン系グリースを塗り、光源で発していた熱を結合ベースに伝導していた。この際、光源と結合ベースとの間は接合材で固定されているが、シリコーン系熱伝導性グリースは、硬化重合時もしくは硬化重合後の膨張収縮でも柔軟性を維持しているため、光源の光軸をずらす応力を前記接合材に対して与えることは無かった。
【0005】
しかし、媒体であるシリコーンオイルが経時でオイルブリードする「ポンピングアウト現象」が発生していた。そのため、オイルブリードした後は、約80℃まで上昇する発熱体の熱を伝導する機能を十分に果たすことができず、装置に不具合をもたらす恐れがあった。
【0006】
そのため、従来は、硬化性のエポキシ樹脂に熱伝導性物質を配合した熱伝導性エポキシ樹脂を用いていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第1943804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術では、以下のような問題が生じていた。
【0009】
すなわち、従来の熱伝導性エポキシ樹脂では、硬化重合後は硬直し柔軟性が無い上に、光ピックアップの光源の発熱により、エポキシ樹脂が劣化し、硬度が高まるため、光源の光軸をずらしたり、熱伝導性エポキシ樹脂が被着体から界面剥離したり、熱伝導性エポキシ樹脂内部で凝集破壊したりして、熱伝導機能に不具合をもたらす恐れがあり、採用が困難となる問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、硬化重合後も柔軟性を有し、光ピックアップ光源の発熱による熱劣化を軽減する熱伝導性樹脂ペーストおよびそれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、硬化性ベース樹脂と、熱伝導性の粒子とを含む熱伝導性樹脂ペーストであって、前記硬化性ベース樹脂は、1分子中に官能性オキシラン環を2つ持つ2官能基エポキシモノマーと1分子中に官能性オキシラン環を1つ持つ単官能基エポキシモノマーと酸化防止剤とを略2:8:3の配合重量比率で含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
これにより、硬化重合後も柔軟性を有し、光ピックアップ光源の発熱による熱劣化を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップを示す斜視図
【図2】本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップを示す分解斜視図
【図3】本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップの光源を示す斜視図
【図4】本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップの光源を示す斜視図
【図5】本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップの組立て方法を示す図
【図6】本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップの組立て方法を示す図
【図7】本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップを搭載した光ディスク装置を示す図
【図8】本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップの装着方法を示す図
【図9】モノマーに占める単官能基エポキシモノマーの割合と熱伝導性樹脂ペースト硬化物のヤング率の関係を示す図
【図10】総エポキシモノマー100重量部に対して配合された酸化防止剤の配合割合と熱伝導性樹脂ペースト硬化物のヤング率の関係を示す図
【図11】総エポキシモノマー100重量部に対して配合された酸化防止剤を30重量部配合した場合の酸化防止剤の各系統と熱伝導性樹脂ペースト硬化物のヤング率の 関係を示す図
【図12】硬化剤の種類と熱伝導性樹脂ペーストの貯蔵安定性の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
請求項1記載の発明は、硬化性ベース樹脂と、熱伝導性の粒子とを含む熱伝導性樹脂ペーストであって、硬化性ベース樹脂は、1分子中に官能性オキシラン環を2つ持つ2官能基エポキシモノマーと1分子中に官能性オキシラン環を1つ持つ単官能基エポキシモノマーと酸化防止剤とを略2:8:3の配合重量比率で含むことを特徴とするものである。これにより、2官能基エポキシモノマーに対する単官能基エポキシモノマーの添加量を、一般的添加量の数十倍以上の高濃度配合することで、ポリマー連鎖を切断し、熱伝導性樹脂ペーストに柔軟性を持たせることができるので、硬化重合後の熱伝導性樹脂ペーストの硬度を所定以下の柔軟性のあるものにできる。また、2官能基エポキシモノマーと単官能基エポキシモノマーとの配合重量比率を略2:8として、単官能基エポキシモノマーの比率を抑え、2官能基エポキシモノマーによるポリマー連鎖で3次元構造を形成しているので、硬化プロセス後の熱伝導性樹脂ペーストのゲル化状態も保たれ、熱伝導性樹脂ペーストの流動化を防止できる。その結果、熱伝導性樹脂ペーストが硬化重合後であっても、熱伝導性樹脂ペースト自体の柔軟性、および、被着体との接着性を保つことで、発熱体である光源の角度調整の障害となることなく、また、熱伝導性樹脂ペーストの流動化を防止しつつ、発熱体の熱を十分に伝導することが可能となる。また、エポキシ樹脂は、一般的に硬化収縮率が低いため、硬化収縮に伴う被着体からの界面剥離や樹脂自体の凝集破壊などの熱流路を絶つ現象を回避することが可能となる。
【0015】
さらに、総エポキシモノマーと酸化防止剤との配合重量比率を略10:3と、エポキシモノマーに対する酸化防止剤を一般的添加量の数十倍から数百倍の高濃度配合することで、硬化重合後の熱伝導性樹脂ペーストが発熱体である光源から発生する熱に長期間さらされても、材料酸化に伴う劣化が抑えられ、熱伝導性樹脂ペースト自体の柔軟性および被着体との接着性を保ち、顕著な信頼性向上が可能となる。
【0016】
請求項2記載の発明は、酸化防止剤において、ラジカル捕捉作用を有する第1の酸化防止剤と過酸化物分解作用を有する第2の酸化防止剤との配合重量比率を略1:2にしたことを特徴とするとするものである。これにより、硬化性ベース樹脂の1次酸化で発生するラジカルを捕捉し、無効化する。さらに、第2の酸化防止剤を第1の酸化防止剤の略2倍配合することで、発生した過酸化物を無害物質に分解し、新たなラジカルと過酸化物が発生する連鎖的かつ継続的な2次酸化の強力な酸化メカニズムを遮断することが可能となる。
【0017】
請求項3記載の発明は、酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤と、ホスファイト系酸化防止剤と、イオウ系酸化防止剤とを含むことを特徴とするものである。フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤の各系統単独、または、2系統混合では酸化防止効果が不十分で、3系統混合で最高の酸化防止効果を発現する。3系統混合では、まず、フェノール系酸化防止剤が硬化性ベース樹脂の1次酸化で発生するラジカルを捕捉し、無効化する。さらに、ホスファイト系酸化防止剤およびイオウ系酸化防止剤が発生した過酸化物を無害物質に分解し、新たなラジカルが発生する2次酸化の連鎖的メカニズムを防止することが可能となる。
【0018】
請求項4記載の発明は、フェノール系酸化防止剤とホスファイト系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤との配合重量比率を略1:1:1にしたことを特徴とするものである。これにより、1次酸化と2次酸化の連鎖的メカニズムを最も効率的に遮断し、特に、イオウ系の酸化防止剤はホスファイト系に比べると過酸化物の分解速度は遅いため、2次酸化を長期間防止する相乗効果があり、安定的な酸化防止能の向上が可能となる。
【0019】
請求項5記載の発明は、酸化防止剤が、2官能基エポキシモノマーと、単官能基エポキシモノマーとを含む混合体と相溶性があることを特徴とするものである。これにより、酸化防止剤が、2官能基エポキシモノマーと、単官能基エポキシモノマーとの混合体に均一に分散するため、熱伝導性ペーストの柔軟性のバラツキがなくなり、安定した柔軟性を得ることができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、硬化性ベース樹脂が、さらに潜在性硬化剤を含み、2官能基エポキシモノマーは、ビスフェノールA型、または、ビスフェノールF型に分類されるエポキシモノマーが配合され、潜在性硬化剤は、フェノール基で硬化剤活性部をマスキングしたポリアミン系の硬化剤であることを特徴とするものである。これにより、フェノール基で硬化剤活性部をマスキングしたポリアミン系の硬化剤は、ビスフェノールA型、または、ビスフェノールF型の2官能基エポキシモノマーとの硬化反応性が高いので、硬化後、安定した架橋構造を形成することが可能となる。
【0021】
請求項7記載の発明は、単官能基エポキシモノマーが、低結晶化グレードであることを特徴とするものである。これにより、硬化重合前の熱伝導性樹脂ペーストの長期保管において、保存温度変化により単官能基エポキシモノマーと2官能基エポキシモノマーが結晶化反応を起こし、結晶析出もしくは結晶沈降することを防止し、分散性を安定に保つことが可能となる。
【0022】
請求項8記載の発明は、熱伝導性樹脂ペーストは、分散剤が配合されていることを特徴とするものである。これにより、粒子の分散性が増し、そのため樹脂ペーストの粘度が下がり、ディスペンサによる吐出量を増加させることができる。また、基材への塗れ性の向上や、樹脂の流動性の制御にも大きな効果を示す。
【0023】
請求項9記載の発明は、熱伝導性樹脂ペーストは、硬化重合前の粘度が5Pa・s〜150Pa・s(25℃)の範囲であることを特徴とするものである。これにより、硬化前の熱伝導性樹脂ペーストを小径ノズルの注入具を有するディスペンサから吐出する場合、ノズル目詰り無く、吐出量安定性を向上させることが可能となる。
【0024】
請求項10記載の発明は、レーザ光を発光する光源と、光源の位置を規制し固定する結合ベースとを備える光ディスク装置において、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂ペーストによって、光源と、結合ベースとを固定することを特徴とするものである。これにより、光源から発生する熱に長期間さらされても、材料酸化に伴う劣化が抑えられ、熱伝導性樹脂ペースト自体の柔軟性および被着体との接着性を保ち、衝撃に対する耐性が高まり、光源で発生した熱を信頼性高く、結合ベースに逃がすことが可能となる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1,図2は、本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップを示す斜視図および分解斜視図である。
【0027】
図1,図2において、光源1,受光素子2および光学部材4,5はそれぞれ結合ベース3に接合されている。光源1と光学部材4,5の間には結合ベース3に設けた貫通孔3aが存在しており、光源1から出射された光は貫通孔3aを通過して光学部材4,5に入射され、光学部材5から出射された光は、少なくとも対物レンズ(図示せず)等の集光手段を通して、光ディスク(図示せず)に照射され、光ディスクに対して所定の情報記録等を行なう。
【0028】
また、光ディスクから反射してきた光は、少なくとも対物レンズなどを通過し、光学部材5に入射され、光学部材5の内部で1ないし複数回反射などを行なった後に、受光素子2に入射される。受光素子2では、入射した光を電気信号に変換し、その電気信号は信号生成系の回路部に送られ、その回路部においてトラッキングエラー信号,フォーカスエラー信号,RF信号などを生成し、それら各信号を基に、光ピックアップのトラッキング制御やフォーカス制御を行ない、さらにRF信号から所望の情報を生成する。
【0029】
光源1は結合ベース3の後部から取付けられ、光源1の先端における光出射部と結合ベース3に取付けられた光学部材4が対向するように互いに結合ベース3に取付けられている。また、受光素子2の光入射面は少なくとも光学部材5の側方部と対向しており、光学部材5の底部には光学部材4が対向している。
【0030】
以下、各部ついて、詳細に説明する。
【0031】
まず、光源1について説明する。
【0032】
図3,図4は、本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップの光源を示す斜視図である。
【0033】
光源1としては、例えば、図3,図4に示されるフレームレーザ光源が好適に用いられる。光源1としてのフレームレーザ光源は、プレート6の一部をモールド部材7で覆うように構成されている。プレート6としては、Cu,Cu合金,Ag,Ag合金,Al,Al合金,Fe,Fe合金などの金属製の板状体が好ましく用いられ、さらに好ましくは、この板状体の上に半田付け性のよい材料をメッキや蒸着などの手段でコーティングすることが好ましい。なお、本実施の形態では、板状体を金属材料で構成したが、金属材料以外でも熱伝導性がよく、導電性が高い材料、例えば導電性セラミック等を用いることができる。本実施の形態では、プレート6は両方向にはみ出た、側方部6a,6bを設けており、この側方部6a,6bは放熱を促すように設けたり、あるいは他の部材への取付け性を向上させるように設けたりする。
【0034】
プレート6には、絶縁部を有するサブマウント8を介して半導体レーザ素子9を設けており、半導体レーザ素子9の上面はプレート6とAuなどのワイヤで電気的に接続されている。この時、半導体レーザ素子9の光出射面はフレームレーザ光源の上部に配置される。サブマウント8の基台は絶縁材料で構成され、サブマウント8の半導体レーザ素子9が形成される面には分離された電極11,12が形成され、電極11,12上に半導体レーザ素子9が電気的に接合されている。
【0035】
半導体レーザ素子9は、モノブロックすなわち、1つのブロックに1ないし複数の異なる波長の光を出射する構成となっている。本実施の形態では、波長約650nm(例えばDVD系)のレーザ光と、波長約780nm(CD系)のレーザ光を出射する半導体レーザ素子9を用いた。なお、半導体レーザ素子9から出射される光は1つでもよいし、また、三つ以上の互いに波長の異なる光を照射してもよい。本実施の形態における光ピックアップの場合、特に、複数の互いに異なる波長の光を出射する半導体レーザ素子9を用いる場合に適している。また、本実施の形態では、互いに波長の異なる複数の光を出射する場合に、半導体レーザ素子9としてはモノブロックを用いたが、1つのブロックで1つの波長の光束を出射する半導体レーザ素子9を複数個のプレート6の上に複数実装して、互いに異なる波長の光を複数出射してもよい。この場合には、光源1のサイズが大きくなる可能性はあるが、任意の異なる波長の光束を出射する半導体レーザ素子9を搭載できるので、大幅に波長の異なる複数の光束を出射する構成とすることが容易である。
【0036】
端子部13はプレート6と一体形成されている。すなわち、プレート6と端子部13は電気的に接続されている。また、端子部14,15は、プレート6および端子部13とは分離して設けており、モールド部材7にて互いに固定されている。端子部14の端部は導電性のワイヤ16を介して電極12と電気的に接合しており、端子部15はワイヤ17を介して電極11と互いに電気的に接合されている。
【0037】
例えば、半導体レーザ素子9がDVD系の光ディスクに対して情報の記録/再生の少なくとも一方を行なう光束と、CD系の光ディスクに対して、情報の記録/再生の少なくとも一方を行なう光束を出射させる場合には、端子部13はグランドに接続し、端子部14はDVD系の光束を出射させる様な電流を供給する回路に接続し、端子部15はCD系の光束を出射させる様な電流を供給する回路に接続される。すなわち、DVD系の光束を出射させる場合には、例えば電流は端子部14,ワイヤ16,電極12,半導体レーザ素子9,ワイヤ10,プレート6,端子部13の順に流れる。CD系の光束を出射させる場合には、例えば電流は端子部15,ワイヤ17,電極11,半導体レーザ素子9,ワイヤ10,プレート6,端子部13の順に流れる。
【0038】
結合ベース3は、比較的、軽量,高精度での形状加工性,放熱性等を兼ね備えた材料で形成させることが好ましく、例えば、Zn,Zn合金,Al,Al合金,Ti,Ti合金などが好適に用いられる。本実施の形態では、低コストのZnダイキャストで結合ベース3を構成した。
【0039】
以上のように構成された光ピックアップにおいて、その組立て方法について図5,図6を用いて説明する。
【0040】
図5,図6は、本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップの組立て方法を示す図である。
【0041】
図5に示すように、光源1を結合ベース3の底部側から空間部分35に挿入するとともに、側方部6b,6aが隙間38,40に配置される。また、受光素子2も側壁の取付部23,24に当接させ、しかも受光素子2、あるいは取付部の少なくとも一方の面に紫外線硬化接着剤を塗布しておく。そして、光源1を発光させてX軸方向に移動させてバランス調整を行ない、しかも受光素子2も、Y軸やZ軸方向に移動させて、高さ調整やS字調整を行なう。
【0042】
各部材に対して、所定の位置に調整され、光源1と受光素子2の位置関係において、確実に光ディスクへ光源1からの光が導かれ、しかも光ディスクからの光が受光素子2に入射されることがほぼ確認されたら、今度は、光源1と結合ベース3の間にアクリル系樹脂の紫外線硬化接着剤を塗布しておき、図5に示すZ軸に沿って、光源1を移動させ、例えばDVDに用いられる光のデフォーカス調整を行なう。デフォーカス調整が終了したら、紫外線を照射し、光源1と結合ベース3を仮固定する。この時、紫外線硬化接着剤は、側方部6a,6bか接合部41,42の少なくとも一方に塗布しておく。また、光源1の位置調整の際には、目視あるいは自動機械による画像認識で、観測しながら行なわれる。
【0043】
また、光源1と結合ベース3の仮固定は、機械的固定でもよい。この場合、光源1のモールド部7を加圧する方法や光源1の端子部13、14、15をクランプする方法などがある。
【0044】
光源1と結合ベース3を仮固定したら、図6に示すように、突出部36,37、39とプレート6の境界領域に、エポキシ樹脂系接着剤,瞬間接着剤,紫外線硬化接着剤などの有機接着剤等のバルク状(粉体や顆粒状体を含む)の接合材200をそれぞれ供給し、光源1と結合ベース3との本固定を行なう。
【0045】
光源1と結合ベース3の本固定後、図6に示すように、本発明の熱伝導率の高い熱伝導性樹脂ペースト100を光源1のプレート6の側方部6a、6bと結合ベース3を接合するように、ノズル内径の細い注入具等を用いて塗布し、室温硬化または熱硬化することで固着される。
【0046】
このようにして、熱伝導率の高い熱伝導性樹脂ペースト100で接合された光源1のプレート6の側方部6a、6bと結合ベース3は、従来のものより熱伝導率が高いので、光源1で発生した熱を効果的に結合ベース3に逃がすことができ、光源1の熱対策に有効となる。
【0047】
図7は、本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップを搭載した光ディスク装置を示す図である。図7において、筐体500は上部筐体部500aと下部筐体部500bを組み合わせて構成されている。なお、上部筐体部500aと下部筐体部500bとは螺旋などを用いて、互いに固着されている。スピンドルモータ502は筐体500に出没自在に設けられたトレイ501に設ける。光ピックアップ503には図1〜図6に示す光ピックアップが用いられ、光ディスクに情報を書き込むかあるいは情報を読み出す動作の少なくとも一方を行なう。また、光ピックアップ503は、光ディスクの半径方向に移動可能に保持されたキャリッジ(図示せず)に搭載されている。ベゼル504はトレイ501の前端面に設け、トレイ501が筐体500内に収納された時に、トレイ501の出没口505を塞ぐように構成されている。レール506,507はそれぞれトレイ501および筐体500の双方に摺動自在に取付けられる。トレイ501の両側部にこのレール506,507は設けており、このレール506,507にて図7で示す矢印P方向に筐体500からトレイ501が出没自在に取付けられている。
【0048】
トレイ501の前端面に設けたベゼル504にはイジェクトスイッチ508を設けている。
【0049】
図8は、本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストを使用した光ピックアップの装着方法を示す図である。
【0050】
図8に示すように、光ピックアップをキャリッジ600に設けた切り欠き部615に挿入し、突起617,616をそれぞれ固定部18,19に設けた貫通孔18a,19aに挿入する。この時に突起616,617の直径は、貫通孔18a,19aの直径よりもやや小さくなっており、突起616,617を貫通孔18a,19aに挿入した後でも光ピックアップは、多少移動自在となるように構成されているので、装着した後も、光ピックアップとキャリッジ600は相対的に多少の範囲で移動可能となるので、光軸調整などを精度よく行なうことができる。光学調整などが終了したら、突起616,617をカシメたり、溶着したりしてキャリッジ600と光ピックアップを固定する。あるいは固定部18,19とキャリッジ600の間に接着剤を塗布したりして、互いに固定される。
【0051】
このように、光源1や光学部材4,5を直接固定した結合ベース3に一体に固定部18,19を設け、その固定部18,19を直接キャリッジ600等の他の部材に接合する構成であるので、光軸調整が確実に行なえ、しかも強固に光ピックアップをキャリッジ600に固定できる。
【0052】
本発明の熱伝導性樹脂ペースト100は硬化性ベース樹脂と、熱伝導性物質の粒子と、からなる熱伝導性樹脂ペーストである。そこで、熱伝導性樹脂ペースト100の詳細構成を硬化性ベース樹脂と熱伝導性物質に分けて詳細に説明する。(表1)に材料配合量と樹脂特性の関係、および、本発明の熱伝導性樹脂ペースト100の実施例1〜8および、その比較例1〜3を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
まず、(表1)の実施例1に示す本発明の熱伝導性樹脂ペースト100に配合される硬化性ベース樹脂について説明する。
【0055】
硬化重合後の熱伝導性樹脂ペースト100が発熱体である光源から発生する熱に長期間さらされても、材料酸化に伴う劣化が抑えられ、熱伝導性樹脂ペースト100自体の柔軟性および被着体との接着性を保ち、顕著な信頼性向上が可能となる構成とするため、硬化性ベース樹脂は、1分子中に官能性オキシラン環を2つ持つ2官能基エポキシモノマーと1分子中に官能性オキシラン環を1つ持つ単官能基エポキシモノマーと酸化防止剤とを略2:8:3の配合重量比率で含む構成とする。
【0056】
ここで、図9にモノマーに占める単官能基エポキシモノマーの割合と熱伝導性樹脂ペースト硬化物のヤング率の関係を示す。
【0057】
また、図10に総エポキシモノマー100重量部に対して配合された酸化防止剤の配合割合と熱伝導性樹脂ペースト硬化物のヤング率の関係を示す。
【0058】
また、図11に総エポキシモノマー100重量部に対して配合された酸化防止剤を30重量部配合した場合の酸化防止剤の各系統と熱伝導性樹脂ペースト硬化物のヤング率の関係を示す。
【0059】
硬化性ベース樹脂を構成する2官能基エポキシモノマーとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール#200ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール#400ジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンBPAジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール#400ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1・6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、水添BPAジグリシジルエーテル、2,3−ジブロモ・ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、アルキルジグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0060】
本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストでは、2官能基エポキシモノマーとして、ポリオキシアルキレンBPAジグリシジルエーテルを使用した。
【0061】
また、硬化性ベース樹脂を構成する単官能基エポキシモノマーとしては、メチルグリシジルエーテル、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、グリシード、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル、アルキルモノグリシジルエーテル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、セカンダリブチルフェノールモノグリシジルエーテル、3級カルボン酸グリシジルエステルなどがあげられる。
【0062】
ここで、硬化重合前の熱伝導性樹脂ペーストの長期保管において、保存温度変化により単官能基エポキシモノマーと2官能基エポキシモノマーが結晶化反応を起こし、結晶析出もしくは結晶沈降することを防止し、分散性を安定に保つために、単官能基エポキシモノマーは、結晶析出もしくは結晶沈降しにくい低結晶化グレードのものであることが好適である。
【0063】
また、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などがあげられる。
【0064】
フェノール系酸化防止剤としては、AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80、AO−330(以上、ADEKA社製商品名)、SP、SP−23(以上、三光社製商品名)などがあげられる。
【0065】
また、ホスファイト系酸化防止剤としては、PEP−4C、PEP−8、PEP−36、HP−10、2112、260、C、3010、TPP(以上、ADEKA社製商品名)などがあげられる。
【0066】
イオウ系酸化防止剤としては、AO−412S、AO−503(以上、ADEKA社製商品名)などがあげられる。
【0067】
本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストでは、酸化防止剤として、AO−80、260、AO−412S(以上、ADEKA社製商品名)を使用した。
【0068】
ここで、硬化性ベース樹脂は、2官能基エポキシモノマーと酸化防止剤とを略2:8:3の配合重量比率で含む構成である。これにより、2官能基エポキシモノマーに対する単官能基エポキシモノマーの添加量を、一般的添加量の数十倍以上の高濃度配合することで、ポリマー連鎖を切断し、熱伝導性樹脂ペースト100に柔軟性を持たせることができるので、硬化重合後の熱伝導性樹脂ペースト100の硬度を所定以下の柔軟性のあるものにできる。また、2官能基エポキシモノマーと単官能基エポキシモノマーとの配合重量比率を略2:8として、単官能基エポキシモノマーの比率を抑え、2官能基エポキシモノマーによるポリマー連鎖で3次元構造を形成しているので、硬化プロセス後の熱伝導性樹脂ペースト100のゲル化状態も保たれ、熱伝導性樹脂ペースト100の流動化を防止できる。その結果、熱伝導性樹脂ペースト100が硬化重合後であっても、熱伝導性樹脂ペースト自体の柔軟性および被着体との接着性を保つことで、発熱体である光源の角度調整の障害となることなく、また、熱伝導性樹脂ペースト100の流動化を防止しつつ発熱体の熱を十分に伝導することが可能となる。また、エポキシ樹脂は一般的に硬化収縮率が低いため、硬化収縮に伴う被着体からの界面剥離や樹脂自体の凝集破壊などの熱流路を絶つ現象を回避することが可能となる。
【0069】
さらに、総エポキシモノマーと酸化防止剤との配合重量比率を略10:3と、エポキシモノマーに対する酸化防止剤を一般的添加量の数十倍から数百倍の高濃度配合することで、硬化重合後の熱伝導性樹脂ペースト100が発熱体である光源から発生する熱に長期間さらされても、材料酸化に伴う劣化が抑えられ、熱伝導性樹脂ペースト自体の柔軟性および被着体との接着性を保ち、顕著な信頼性向上が可能となる。
【0070】
ここで、光源1と結合ベース3とは、エポキシ樹脂系接着剤,瞬間接着剤,紫外線硬化接着剤などの有機接着剤等のバルク状(粉体や顆粒状体を含む)の接合材200で固定されるが、図9に示すように、総エポキシモノマーに占める単官能基エポキシモノマーの割合が略60wt%未満であると、硬化重合後の熱伝導性樹脂ペーストのヤング率が接合材200のヤング率より高く、柔軟性が無いため、光源1の光軸をずらす応力を接合材200に対して与え、信頼性問題を起こす可能性があった。
【0071】
一方、図9に示すように、総エポキシモノマーに占める単官能基エポキシモノマーの割合が略95wt%を超えると、熱伝導性樹脂ペーストは、硬化重合後でもゲル化が不十分で流動性が高いため、熱伝導性樹脂ペーストの流出やタックに伴う他部材への貼り付き等が発生するので不適である。従って、(表1)の実施例1に示すように、総エポキシモノマーに占める単官能基エポキシモノマーの割合は、略80wt%が好適である。
【0072】
また、熱伝導性樹脂ペーストに総エポキシモノマー100重量部に対し、酸化防止剤が略30重量部以下の配合であれば、2官能基エポキシモノマーと、単官能基エポキシモノマーと、からなる混合体と相溶性があり、これにより、熱伝導性物質の高充填が可能になり、かつ、熱伝導性物質の充填プロセス時における熱伝導性物質の均一分散が可能となる。しかし、酸化防止剤が略30重量部を超えると、2官能基エポキシモノマーと、単官能基エポキシモノマーと、からなる混合体との相溶性維持が困難となり、熱伝導性物質の高充填が困難になり、かつ、熱伝導性物質の充填プロセス時における熱伝導性物質の均一分散が困難となる。
【0073】
また、光ディスク装置に搭載される光ピックアップの光源の発熱により約80℃まで光源温度は上昇するため、高い信頼性を保つためには、一般的には、80℃で1000時間を経過した場合でも、接合剤200のヤング率を超える変化は抑える必要があるが、図10の比較例1〜3に示すように、熱伝導性樹脂ペーストに総エポキシモノマー100重量部に対し、酸化防止剤が略30重量部を下回る配合であれば、材料酸化に伴う劣化が経時的に進行し、1000時間後には、ヤング率上昇が接合剤200のヤング率を超える変化を示し、熱伝導性樹脂ペースト自体の柔軟性および被着体との接着性を保ち続けることができない。
【0074】
一方、図10の実施例1に示すように、熱伝導性樹脂ペーストに総エポキシモノマー100重量部に対し、前記酸化防止剤を略30重量部配合することで、硬化重合後の熱伝導性樹脂ペーストが発熱体である光源から発生する熱に長期間さらされても、材料酸化に伴う劣化が抑えられ、熱伝導性樹脂ペースト自体の柔軟性および被着体との接着性を保ち、顕著な信頼性向上が可能となる。
【0075】
また、図11に示すように、熱伝導性樹脂ペーストに総エポキシモノマー100重量部に対し、酸化防止剤総量を略30重量部配合した場合を酸化防止剤無配合の場合を比較すると、実施例2に示すように、フェノール系酸化防止剤単独添加では、熱劣化を抑える効果が認められる。同様に、実施例3、実施例4にそれぞれ示すように、ホスファイト系酸化防止剤,イオウ系酸化防止剤の酸化防止剤各系統の単独配合でも、フェノール系酸化防止剤単独よりも効果が低いが効果は認められる。
【0076】
また、2系統の酸化防止剤をブレンドすることにおいては、図11の実施例5に示すように、ホスファイト系酸化防止剤,イオウ系酸化防止剤を等量配合することでは、フェノール系酸化防止剤を単独配合するよりも効果が低いが効果は認められる。
【0077】
つまり、フェノール系酸化防止剤は熱劣化を抑える主要材料であり、総エポキシモノマー100重量部に対し、フェノール系の第1の酸化防止剤を少なくとも略10重量部配合することが、1次酸化を防止する上で有効である。また、ホスファイト系またはイオウ系の第2の酸化防止剤を少なくとも略20重量部配合することが、2次酸化を防止する上で有効である。従って、熱伝導性樹脂ペーストに総エポキシモノマー100重量部に対し、酸化防止剤総量を略30重量部配合した場合、図11の実施例6、実施例7に示すように、酸化防止剤において、ラジカル捕捉作用を有するフェノール系の第1の酸化防止剤と、過酸化物分解作用を有するホスファイト系またはイオウ系の第2の酸化防止剤とを、配合重量比率を略1:2でブレンド添加した場合、硬化性ベース樹脂の1次酸化で発生するラジカルを捕捉し、無効化する。さらに、発生した過酸化物を無害物質に分解し、新たなラジカルと過酸化物が発生する連鎖的かつ継続的な2次酸化の強力な酸化メカニズムを遮断し、フェノール系酸化防止剤を単独配合するよりも高い効果が得られる。
【0078】
また、図11の実施例1に示すように、フェノール系酸化防止剤とホスファイト系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤との配合重量比率を略1:1:1にブレンドすることで、1次酸化と2次酸化の連鎖的メカニズムを最も効率的に遮断し、より高い効果が得られる。特に、イオウ系の酸化防止剤はホスファイト系に比べると過酸化物の分解速度は遅いため、2次酸化を長期間防止する相乗効果があり、安定的な酸化防止能の向上が可能となる。
【0079】
このように、フェノール系,ホスファイト系,イオウ系の3系統の酸化防止剤を略1:1:1にブレンドすることが最も高い効果が得られる。また、硬化性ベース樹脂を構成する2官能基エポキシモノマーは、ビスフェノールA型、または、ビスフェノールF型に分類されるエポキシモノマーが配合され、かつ、硬化剤は、硬化プロセス後の熱伝導性樹脂ペーストのゲル化状態を保つために、フェノール基で硬化剤活性部をマスキングしたポリアミン系の熱硬化性の潜在性硬化剤が好適である。これにより、熱硬化前の硬化性ベース樹脂は、ロングポットライフであるため、硬化温度以下において、熱伝導性樹脂ペースト100の粘度が安定するのでハンドリング性が安定し、かつ、長時間の安定貯蔵が可能となる。
【0080】
ここで、図12に硬化剤の種類と熱伝導性樹脂ペーストの貯蔵安定性の関係を示す。貯蔵安定性は、ディスペンサ吐出において、吐出量の変化を測定することで確認している。図12に示すように、潜在性硬化剤を使用した実施例1の場合、室温レベル(25℃)の貯蔵環境では粘度上昇幅は低く、ディスペンサ吐出性は安定しており、ロングポットライフである。一方、実施例1の潜在性硬化剤に換えて同量の硬化剤活性部がマスキングされていないポリアミドアミン系の顕在性硬化剤を使用した場合、貯蔵環境において粘度上昇が顕著であり、ディスペンサ吐出量の低下が著しく、ディスペンサ吐出安定が無いため、実施例1のように熱伝導性ペーストには潜在性硬化剤を加えるのが好ましい。
【0081】
ビスフェノールA型、または、ビスフェノールF型に分類される2官能基エポキシモノマーとしては、EXA−4850−150、EXA−4850−1000、HP−4032D(以上、大日本インキ社製商品名)、EP−4000、EP−4000SS、EP−4003S、EP−4100E、EP−4901E、EPR−4030、EPR−4033、EPU−78−13S、EP−49−23、EP−49−25(以上、ADEKA社製商品名)、jER828(ジャパンエポキシレジン社製商品名)などがあげられる。
【0082】
本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストでは、2官能基エポキシモノマーとして、EP−4003S(ジャパンエポキシレジン社製商品名)を使用した。
【0083】
また、ポリアミン系の潜在性硬化剤としては、EH−4357S、EH−4380S(以上、ADEKA社製商品名)などがあげられる。
【0084】
本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストでは、ポリアミン系の潜在性硬化剤として、EH−4357S(ADEKA社製商品名)を使用した。
【0085】
また、熱伝導性樹脂ペーストには、分散剤が配合されており、粒子の分散性が増し、そのため熱伝導性樹脂ペーストの粘度が下がり、ディスペンサによる吐出量を増加させることができる。また、被着体への塗れ性の向上や、熱伝導性樹脂ペーストの流動性の制御にも大きな効果を示す。
【0086】
分散剤としては、例えば、ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース17000、18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース36000、ソルスパース37000、ソルスパース38000、ソルスパース41000、ソルスパース42000、ソルスパース43000、ソルスパース46000、ソルスパース54000(以上、ルーブリゾール社製商品名)、ディスパービック130、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2020、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2096、ディスパービック2150(以上、ビックケミー社製商品名)、エフカ46、エフカ47、エフカ452、エフカLP4008、エフカ4009、エフカLP4010、エフカLP4050、LP4055、エフカ400、エフカ401、エフカ402、エフカ403、エフカ450、エフカ451、エフカ453、エフカ4540、エフカ4550、エフカLP4560、エフカ120、エフカ150、エフカ1501、エフカ1502、エフカ1503(以上、エフカ社製商品名)、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB814、アジスパーPN411、アジスパーPA111(以上、味の素社製商品名)、などを用いることも可能である。
【0087】
本発明の一実施の形態における熱伝導性樹脂ペーストでは、分散剤として、アジスパーPB711(味の素社製商品名)を使用した。
【0088】
また、熱伝導性樹脂ペースト100は、硬化重合前の粘度が5Pa・s〜150Pa・s(25℃)の範囲が好適である。これにより、硬化前の熱伝導性樹脂ペースト100を小径ノズルの注入具を有するディスペンサから吐出する場合、ノズル目詰り無く、吐出量安定性を向上させることが可能となる。
【0089】
次に、本発明の熱伝導性樹脂ペースト100に配合される熱伝導性物質について詳細に説明する。
【0090】
本発明の熱伝導性樹脂ペースト100に配合される熱伝導性物質は、20W/m・K以上の熱伝導率を有する略球状の酸化アルミ粒子、および、150W/m・K以上の熱伝導率を有する略球状の窒化アルミ粒子で構成する。
【0091】
熱伝導率が酸化アルミ粒子より高い窒化アルミ粒子を酸化アルミ粒子と混合することにより、酸化アルミ粒子単独よりもさらに高い熱伝導性を付与することが可能となる。
【0092】
また、熱伝導性物質を略球状にすることで、熱伝導性粒子の比表面積が最小となり、硬化性ベース樹脂に熱伝導性を高充填した場合の樹脂粘度を低く抑える効果がある。
【0093】
また、酸化アルミ粒子の表面は、フェニル基とアミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理が施されている。これにより、フェニル基とアミノ基は無機材料である酸化アルミ粒子と有機材料であるポリマーとの化学結合を仲介し、シランカップリング剤による化学的性質の異なる無機材料である酸化アルミ粒子と有機材料であるポリマーとの間の界面形成が促進され、ポリマーとの濡れ性が向上するので、酸化アルミ粒子の分散性が向上し、高充填時の粘度上昇を抑える効果がある。その結果、酸化アルミ粒子の高充填が可能となる。
【0094】
また、窒化アルミ粒子については、表面突起がある凹凸状の窒化アルミの破砕一次粒子を焼結助剤である酸化イットリウムと、粒度制御剤である窒化ホウ素と、を加え高温焼結する表面処理することで略球状の2次粒子を得ることができる。その結果、ポリマーとの濡れ性が向上する。これにより窒化アルミ粒子の分散性が向上し、高充填時の粘度上昇を抑える効果がある。その結果、窒化アルミ粒子の高充填が可能となる。
【0095】
また、窒化アルミ粒子表面は、多糖類で水酸基被覆またはシリケート被覆で表面処理され、吸湿および水和等の耐水性劣化を防止し、窒化アルミと水が反応してアンモニアが発生したり、pHが上昇したりすることを防止している。
【0096】
熱伝導性樹脂ペースト100は、上記のように処理された略球状の窒化アルミ粒子および径の異なる2種類の略球状の酸化アルミ粒子を含み、窒化アルミ粒子の平均粒径を略40μm以上、径の大きい酸化アルミ粒子の平均粒径を略10μm、および径の小さい酸化アルミ粒子の平均粒径を略0.5μmとし、窒化アルミ粒子、径の大きい酸化アルミ粒子、および径の小さい酸化アルミ粒子の配合重量比率を略5:5:1と構成し、さらに、熱伝導性樹脂ペースト100における硬化性ベース樹脂と熱伝導性物質の粒子との配合重量比率を略1:9に構成する。
【0097】
ここで、単位体積当たりの窒化アルミ粒子間のギャップ長は大粒径であるほど短くできるので、熱伝導性樹脂ペーストの熱伝導率を高めることができる。
【0098】
また、平均粒径の大きい窒化アルミ粒子だけで熱伝導性物質を構成するのではなく、窒化アルミ粒子より平均粒径の小さい酸化アルミ粒子を含め、さらに、酸化アルミ粒子の中で平均粒径の大きい酸化アルミ粒子だけではなく、平均粒径の小さい酸化アルミ粒子を含めたので、熱伝導性物質の粒子の割合を硬化性ベース樹脂に対して極めて多く含む状態でも、硬化前の熱伝導性樹脂ペースト100の粘度を所定値以下に低く抑えることができ、ノズル内径の細い注入具から熱伝導性樹脂ペースト100を出して、狭い隙間に熱伝導性樹脂ペースト100を注入する作業が可能となる。
【0099】
さらに、潜在性硬化剤は、液状、または、平均粒径40μm以下かつ最大粒径150μm以下の粒子、および、酸化アルミ粒子と窒化アルミ粒子は、最大粒径150μm以下の粒子であることが、ノズル内径が略200μmの極細注入具から熱伝導性樹脂ペースト100をノズル目詰り無く出して、極めて狭い隙間に熱伝導性樹脂ペースト100を注入する作業が可能となるため好適である。
【0100】
また、熱伝導性物質の粒子の割合を硬化性ベース樹脂に対して極めて多く含むので、熱伝導性樹脂ペースト100の熱伝導率を高くすることも可能となり、(表1)の実施例1に示すように、約6.8W/m・Kの高熱伝導率を得ることができる。
【0101】
また、同様に(表1)の実施例8に示すように、窒化アルミ粒子の平均粒径を略40μm以上、径の大きい酸化アルミ粒子の平均粒径を略10μm、および径の小さい酸化アルミ粒子の平均粒径を略0.5μmとし、窒化アルミ粒子、径の大きい酸化アルミ粒子、および径の小さい酸化アルミ粒子の配合重量比率を略7:5:1と構成し、酸化アルミより熱伝導率が高い窒化アルミの充填割合を高め、熱伝導性樹脂ペースト100における硬化性ベース樹脂と熱伝導性物質の粒子との配合重量比率を略1:10に構成することで、所定値範囲で硬化前の熱伝導性樹脂ペースト100の粘度は高くなるが、約8.5W/m・Kのさらに高い熱伝導率を得ることも可能である。
【0102】
しかし、硬化性ベース樹脂と熱伝導性物質の粒子との配合重量比率を略1:11の構成に熱伝導性物質の粒子の比率を高め過ぎると、ポリマーと熱伝導性物質の粒子との十分な濡れ性を保てないことで、硬化前の熱伝導性樹脂ペースト100の粘度も所定値以上に高くなるばかりでなく、熱伝導性物質の均一分散と高充填が困難となり、結果的に硬化物は非常に脆弱な性状となるため不適である。
【0103】
従って、熱伝導性樹脂ペースト100において、熱伝導性物質の粒子に上記の表面処理を施された窒化アルミ粒子と酸化アルミ粒子を使用し、硬化性ベース樹脂と熱伝導性物質の粒子との配合重量比率を略1:9に構成することで、硬化前の熱伝導性樹脂ペースト100の粘度を所定値以下に低く抑えることができ、高い熱伝導率を得ることができる。
【0104】
次に、熱伝導性樹脂ペースト100の作製プロセスと保存手段について説明する。
【0105】
まず、熱伝導性樹脂ペースト100の作製プロセスは、硬化性ベース樹脂と酸化アルミ粒子と窒化アルミ粒子とを真空撹拌脱泡ミキサーで混練されることで、熱伝導性樹脂ペースト100中に気泡残存無く、しかも、熱伝導性物質が均一に分散攪拌されるので安定した熱伝導率と被着体との高い密着性が保つことが可能となる。
【0106】
また、熱伝導性樹脂ペースト100の長期保存手段は、硬化性ベース樹脂と酸化アルミ粒子と窒化アルミ粒子とを混練直後、−5℃より低温で冷却し、−5℃より高くない温度で貯蔵されていることで、混練後の熱伝導性樹脂ペースト100の硬化重合速度が大幅に低下するため、熱伝導性樹脂ペースト100のポットライフを長くすることが可能となる。
【0107】
以上の内容により、本発明の熱伝導性樹脂ペースト100によれば、2官能基エポキシモノマーに対する単官能基エポキシモノマーの添加量を、一般的添加量の数十倍以上の高濃度配合することで、ポリマー連鎖を切断し、熱伝導性樹脂ペースト100に柔軟性を持たせることができるので、硬化重合後の熱伝導性樹脂ペースト100の硬度を所定以下の柔軟性のあるものにできる。また、2官能基エポキシモノマーと単官能基エポキシモノマーとの配合重量比率を略2:8として、単官能基エポキシモノマーの比率を抑え、2官能基エポキシモノマーによるポリマー連鎖で3次元構造を形成しているので、硬化プロセス後の熱伝導性樹脂ペースト100のゲル化状態も保たれ、熱伝導性樹脂ペースト100の流動化を防止できる。その結果、熱伝導性樹脂ペースト100が硬化重合後であっても、熱伝導性樹脂ペースト自体の柔軟性および被着体との接着性を保つことで、発熱体である光源の角度調整の障害となることなく、また、熱伝導性樹脂ペースト100の流動化を防止しつつ発熱体の熱を十分に伝導することが可能となる。また、エポキシ樹脂は一般的に硬化収縮率が低いため、硬化収縮に伴う被着体からの界面剥離や樹脂自体の凝集破壊などの熱流路を絶つ現象を回避することが可能となる。
【0108】
さらに、総エポキシモノマーと酸化防止剤との配合重量比率を略10:3と、エポキシモノマーに対する酸化防止剤を一般的添加量の数十倍から数百倍の高濃度配合することで、硬化重合後の熱伝導性樹脂ペースト100が発熱体である光源から発生する熱に長期間さらされても、材料酸化に伴う劣化が抑えられ、熱伝導性樹脂ペースト自体の柔軟性および被着体との接着性を保ち、衝撃に対する耐性が高まる。
【0109】
さらに、熱伝導性物質の粒子の割合を硬化性ベース樹脂に対して極めて多く含ませることができるので、熱伝導性樹脂ペースト100の熱伝導率を高くすることができる。
【0110】
さらに、硬化前の熱伝導性樹脂ペースト100の室温における粘度を所定値以下に低く長時間保ち、かつ、含有する粒子の最大粒径を所定値以下であるので、ノズル内径が極細注入具から熱伝導性樹脂ペースト100をノズル目詰り無く吐出量安定して出して、極めて狭い隙間に熱伝導性樹脂ペースト100を注入する作業が可能となる。
【0111】
また、熱伝導性樹脂ペースト100を用いた光ディスク装置では、レーザ光を発光する光源で発生した熱を効率良く逃がすことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本発明の熱伝導性樹脂ペーストおよびそれを用いた光ディスク装置は、硬化重合後も柔軟性を有し、熱劣化を軽減することができるため、例えば光ディスクの半導体レーザ素子の熱を他の周辺部材に逃がす媒体として有用である。
【符号の説明】
【0113】
1 光源
2 受光素子
3 結合ベース
3a 貫通孔
4,5 光学部材
6 プレート
6a,6b 側方部
7 モールド部材
8 サブマウント
9 半導体レーザ素子
10 ワイヤ
11、12 電極
13,14,15 端子部
16、17 ワイヤ
18、19 固定部
18a、19a 貫通孔
35 空間部分
36、37、39 突出部
38、40 隙間
41、42 接合部
100 熱伝導性樹脂ペースト
200 接合材
500 筐体
500a 上部筐体部
500b 下部筐体部
501 トレイ
502 スピンドルモータ
503 光ピックアップ
504 ベゼル
505 出没口
506、507 レール
508 イジェクトスイッチ
600 キャリッジ
615 切り欠き部
616、617 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性ベース樹脂と、熱伝導性の粒子とを含む熱伝導性樹脂ペーストであって、前記硬化性ベース樹脂は、1分子中に官能性オキシラン環を2つ持つ2官能基エポキシモノマーと1分子中に官能性オキシラン環を1つ持つ単官能基エポキシモノマーと酸化防止剤とを略2:8:3の配合重量比率で含むことを特徴とする熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項2】
前記酸化防止剤は、ラジカル捕捉作用を有する第1の酸化防止剤と過酸化物分解作用を有する第2の酸化防止剤との配合重量比率を略1:2にしたことを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項3】
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤と、ホスファイト系酸化防止剤と、イオウ系酸化防止剤とを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項4】
前記フェノール系酸化防止剤と前記ホスファイト系酸化防止剤と前記イオウ系酸化防止剤との配合重量比率を略1:1:1にしたことを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項5】
前記酸化防止剤は、前記2官能基エポキシモノマーと、前記単官能基エポキシモノマーとを含む混合体と相溶性があることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項6】
前記硬化性ベース樹脂は、さらに潜在性硬化剤を含み、前記2官能基エポキシモノマーは、ビスフェノールA型、または、ビスフェノールF型に分類されるエポキシモノマーが配合され、前記潜在性硬化剤は、フェノール基で硬化剤活性部をマスキングしたポリアミン系の硬化剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項7】
前記単官能基エポキシモノマーは、低結晶化グレードであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項8】
前記熱伝導性樹脂ペーストは、分散剤が配合されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項9】
前記熱伝導性樹脂ペーストは、硬化重合前の粘度が5Pa・s〜150Pa・s(25℃)の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項10】
レーザ光を発光する光源と、前記光源の位置を規制し固定する結合ベースとを備える光ディスク装置において、請求項1〜9のいずれか1項に記載の前記熱伝導性樹脂ペーストによって、前記光源と、前記結合ベースとを固定することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−248277(P2010−248277A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95825(P2009−95825)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】