説明

熱伝導率を向上させた発光デバイス・アセンブリ、それを含むシステム及び熱伝導率を向上する方法

【課題】LEDからの放熱性能を向上させることのできる発光デバイス・アセンブリ、システム、及びその方法を提供する。
【解決手段】本発明による発光デバイス・アセンブリ(10、50)は、発光ダイオードチップ(100、500−1、500−N)と、2つの端子を持つ基板であって、第1の端子(101、501)が少なくともLEDチップと同じ幅を持ち、封入されたアセンブリ全体の垂直断面積の少なくとも30%の垂直断面積を持つ部分(103、503)を有する基板と、LEDチップを基板の第1の端子へと接続する接着剤(102、502−1、502−N)とを収容する1つ以上の封入層(108、508)を具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子デバイスに関するものであり、より具体的には放熱特性を高めた発光ダイオード(LED)に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)とは、大量の光子を外部に放射することにようにして電気エネルギーを光へと変換するために特別な構造を有する複合的な固体半導体デバイスである。LEDは一般に、そのサイズが小型であること、耐久性があること、そして長寿命であることから、白熱灯よりも好まれる。加えて、LEDは電気エネルギーから光へと変換する際に放射される熱が少ないことからも白熱灯よりも好まれるのである。
【0003】
LEDランプは、ビデオ信号、交通信号灯及び自動車のブレーキライト等、様々な用途に幅広く使用されている。LEDはさらに、テレビやビデオカセットレコーダ、車の電子部品等の機器における可視インジケータとして様々な民生用電子製品及びサービスにおいても使用されている。LEDは、多くの電子機器において回路が閉じた場合を知らせる「パイロット」ランプとして動作する場合も多い。さらにLEDは、普及している自動挿入機器を使った量産に非常に適していることから、電子部品産業においてもボードアセンブラの用途に用いられることも多い。
【0004】
発光デバイス・アセンブリの動作中においては、基板に接続された2つの端子を通じて電流がLED中を流れる。LEDは電気エネルギーが光エネルギーへと変換された場合に点灯することになる。電気から光エネルギーへの変換は、一般に100%の効率で行われるものではなく、この結果、この変換プロセス中に幾分かの熱が生じることになる。
【0005】
LEDが起動すると、アセンブリにおいては電圧が徐々に上がり、電流が急速に増加する。最も伝導の大きい方向において約20mAの順方向電流を生じるには、一般に約1.9Vの順方向電圧が必要とされる。よって20mAにおける電圧は、そのLEDの製作に使用した半導体材料の種類に応じて異なることになる。例えば、アルミニウム・インジウム・ガリウム燐(AlInGaP)LEDに要するのは1.9Vであるが、インジウム・ガリウム窒素(AlGaN)LEDには3.4Vが必要である。順方向バイアス電圧によって電子及び正孔は空乏領域へと入って再結合する。即ち、この電圧により提供される外部エネルギーが伝導帯の電子を励起させ、これらが価電子帯へと落ちて正孔と再結合することから、可視スペクトルにおける光放射が生じるのである。
【0006】
LEDにより放射される光子数を最大化し、これによりもっと大量の光を生じさせる為には、順方向電流を最大化しなければならない。順方向電流が大きくなると伝導帯においてより多くの電子が励起されることになり、より大量の光子が放射されることになる。LEDが放射する光は、LED中を通る電流に直接比例する。光出力と電流の関係に直線性があったとしても、図2に示したように、より大量の電流を流すことによるLEDの自己加熱でLEDの作動温度が上昇するに従い、LEDの放射曲線に効率低下が生じてしまう。また、変換効率も低下することになる。従ってこのプロセスでは、駆動電流の上昇に伴い、より大量の熱が発生することによる損失が出るのである。LEDの発光性能は最大の重要課題であり、この発光性能を維持する為には、生じた熱を除去しなければならないのである。
【0007】
LED業界においては、デバイス全体としての伝熱能力を得る上で、熱抵抗が参照される。例えば、5mmのスルーホールランプは一般に、240℃/Wの熱抵抗(ピンへの接合部)を持っており、これはLEDが1Wの熱を放出する場合、LEDとピン中のその地点との間の温度差が240℃であることを示す。従って、これらのデバイスからの熱除去能力を最大化する為には、熱抵抗を改善することが望ましい。
【0008】
従来デザインの特定の実施例として、ある種の導電性接着剤を使ってLEDチップを一般的にはリードフレームである基板へと固定したものがある。基板は軸方向に伸びる2つの端子を持っており、第1の端子の一部分は空洞部と直線的な部分から構成されている。電気接続はLEDチップと基板の第2の端子との間に作られる。この組立部品は光学的に透明なエポキシにより封入される。
【0009】
従来デザインの更なる実施例として、特許文献1においてLEDの二重封入層が開示されている。第1の封入層は光、即ち放射に対して透明であり、第2の封入層はLEDの動作温度を低下させる為に高い熱伝導率を持つものである。二重封入層によれば熱伝導率はある程度改善するものであるが、LEDからの熱除去能力はさらに改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許番号第6,518,600号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
熱の除去は、一般に、基板の第1の端子までへの伝導に制約されている。第1の端子の第1の部分の垂直方向の断面積は通常、封入されたアセンブリの総垂直断面積の30%以上を構成することは無い為、LEDから大量の熱を除去することは一般的に困難なのである。よって過去においては、これらのデバイスにおける順方向電流の最高値は50mA以下(一般的には10〜40mAの範囲)に制約されている。従って、これらのパラメータとした結果、望まれるよりも効率が悪く、性能も低いLEDを作らざるを得なかったのである。LEDの利用は普及していることから、LEDからの熱の除去能力を強化する(放熱性能を向上させる)ことのできる方法を見出すことにより、これらのデバイスの性能を改善する必要があるのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施例は、発光ダイオード(LED)チップ、2つの端子を持つ基板(望ましくはリードフレーム)であって、一方の端子が少なくともLEDチップと同じ幅と、封入されたアセンブリ全体の垂直断面積における30%以上の垂直断面積と、LEDチップを収容する空洞を持つ部分を含んでいることを特徴とする基板と、LEDチップ及び基板を接続する金属性接着剤とを具備した発光デバイス・アセンブリを提供するものである。このアセンブリは少なくとも1層の封入層で封入されている。できれば、強化した熱伝導特性を持つ第1の封入材の層により第1の端子の拡張した部分を収容し、そして光学的に透明な第2の封入材の層を第1の封入材の層に取り付ける形でアセンブリの残りの部分を収容するようにすることが望ましい。
【0013】
本発明の実施例は、発光デバイス・アセンブリの放熱特性を強化する為の方法を提供するものであり、この方法は、LEDチップを、少なくともLEDチップと同じ幅と、封入されたアセンブリの総垂直断面積における30%以上の垂直断面積を持つ部分を含む第1の端子中の空洞内に配置するステップと、LEDチップを基板の第1の端子へと金属系接着剤により接着して取付、接続するステップと、基板の第2の端子を第1の端子の近傍に配置するステップと、そしてLEDを基板の第2の端子へと接続して取り付けるステップとを含む。方法はさらに、第1の端子の拡張した部分を第1の封入材の層で封入し、この第1の封入材の層に対して第2の封入材の層をアライメントすることによりアセンブリの残りの部分を封入するステップを含む。方法の更なる実施例においては、第1の封入材の層へとフィラーを導入することによりアセンブリの熱伝導率が高められている。
【0014】
上の説明は、本発明の詳細な説明に対するより深い理解を得る上で本発明の特徴及び技術的利点の概要を要約して説明したものである。本発明の更なる特徴及び利点は、本発明の請求項の対象を構成する以下の説明に記載されている。開示した概念及び特定の実施例は、本発明と同じ目的を実施する為に他の構造へと変更すること、或いは他の構造を設計する場合の基本として容易に用いることが出来ることは、当業者には明らかである。さらに、このような同等の構造は、請求項に定める本発明の精神及び範囲から離れるものではないことも当業者には明らかである。本発明の特性とされる新規の特徴は、添付図を参照しつつ以下の説明を読むことにより、更なる目的及び利点と共にその構造及び動作方法の両面において容易に理解することが出来るものである。しかしながら図の各々は説明することのみを目的に提供されるものであり、本発明の定義及び限界を示すことを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に基づく発光デバイス・アセンブリを描いた図である。
【図2】代表的なLEDの発光特性を説明するグラフである。
【図3】本発明の一実施形態に基づくフローチャートである。
【図4】従来の発光デバイス・アセンブリを描いた図である。
【図5】本発明の一実施形態に基づく発光デバイス・アセンブリを描いた図である。
【図6】本発明の更なる実施形態に基づくフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、放熱特性を向上させた発光デバイス・アセンブリを提供するシステム及び方法に関するものである。本発明のより深い理解を得る為に、以下に添付図面を参照して、最良の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明の実施例は、基板と、エポキシ系接着剤の代わりに金属系接着剤を用いて接続したLEDチップとを用いたものである。本発明において使用する基板は、2つの端子を含んでおり、一方の端子は、少なくともLEDチップと同じ幅と、封止されるアセンブリ全体の垂直断面積の30%以上を占める垂直断面積とを持つ部分を含んでいることが望ましい。第1の端子の拡張した部分は、熱伝導特性を強化した第1の封入材の層で封入される。その後、光学的に透明な第2の封入材の層が、アセンブリの残りの部分を収容するように、第1の封入材の層の一方の側に取り付けられる。代わりにシェル又はモールドを使用することも可能であり、この場合、LEDチップへと接続した基板をシェルの内部へと配置し、第2の封入材の層がシェル中に注ぎ込まれ、その後第1の封入材の層が注ぎ込まれる。第1及び第2の封入材の層が固化し、アセンブリの残りの部分を収容するシェルの形状となる。
【0018】
実施例を説明する前に、理解を容易にする上で図4に示した従来デバイス40を参照する。従来デザインにおいては、一般に空洞404を持つリードフレームである基板は、LEDチップ400へと接続されており、二つの端子を持っている。第1の端子401は第1の部分403及び直線的部分405を持っており、第2の端子407は電気接続406を通じて第1の端子401へと接続している。第1の端子401における第1の部分403は、典型的にはこの第1の端子部分403が作られた封入アセンブリの総垂直断面積の30%しか構成しておらず、LEDチップ400からの放熱に使用出来る面積は小さくなっている。導電性接着剤402を使用してLEDチップ400が基板の第1の端子401へと固定される。導電性接着剤は、典型的にはエポキシ系のものであり、これは劣悪な熱伝導性能と、大量の熱の発生を招くものである。よってLED400から発された熱は、熱伝達に最小面積しか提供しない第1の端子401における第1の部分403に留まることになるのである。発光デバイス・アセンブリ40の収容には、少なくとも1つの封入層408が使用されている。
【0019】
図1に示したように、一実施例における発光デバイス・アセンブリ10は、有利な金属系接着剤102を用いてリードフレームの第1の端子101へと接着して取り付けられたLEDチップ100を含んでいる。このような金属系接着剤はLED100と基板の第1の端子101の部分103との間に良好な熱伝導特性を提供するものである。これは従来技術(図4)におけるエポキシ系接着剤402の劣悪な熱伝導特性とは対照的な点である。第1の端子101はLEDチップ100を収容してLEDチップ100から光を集める為の空洞104を含む部分103を持っている。このような部分103は、少なくともLEDチップ100の幅と同じ幅を持っている。第1の端子101における部分103の垂直断面積は、その第1の端子の部分103を含む封入アセンブリの総垂直断面積の少なくとも30%を占めている。封入パッケージ108のサイズが固定の場合、このような部分103は一般に、封入パッケージ108の端部と面一となる地点まで拡張することが出来る。しかしながら、他の実施例においては、第1の端子101の部分103を封入パッケージ108から突き出るまで伸ばし、その後部分103をPCBの金属パッド等の金属と接触させるように配置することが出来る。金属同士を接触配置させると熱伝導が増大する。
【0020】
一般に、封入パッケージ109におけるドーム型部分の基部の直径、或いは封入パッケージ109の円筒形部分の直径は、3mm、4mm又は5mmのいずれかである。従って、LEDパッケージのタイプは、3mm、4mm又は5mmスルーホールランプと呼ばれており、第1及び第2の端子の直線部分が実装PCB等の部品の穴へと挿入されることを示している。他の封入パッケージサイズは可能であるが、これらは一般的ではなく、工業規格に合致しない場合が多い。よってパッケージ109の円筒形部分は、一般に垂直方向に伸ばすことは出来るが、パッケージ109の直径は一定に保たれるものである。従って、第1の端子における部分103の垂直断面積と封入アセンブリの総垂直断面積との間の比率を決定する場合、封入パッケージ108の面積の増大によりその比率を変えることになるのである。
【0021】
従来技術においては、5mmスルーホールランプが使用された場合、第1の端子401における部分403の面積は約0.00996平方インチということになる。しかしながら、推奨される実施例においては、第1の端子101における部分103の面積は少なくとも0.014平方インチあり、これはこの領域の約41%増を意味するものである。部分103の面積を拡張したことにより、より大量の金属が封入パッケージ108と接触することになり、放熱量も増加する。しかしながら第1の端子部分403の面積は、使用されるスルーホールランプの直径によって異なることは言うまでもない。例えば、3mmスルーホールランプが使用された場合に計算されるこの面積は5mmランプの場合よりも小さくなるものの、同様のパーセンテージの増加を実現することが可能である。
【0022】
さらに、第1の端子101は、第1の端子部分103の延長部として直線部分105を含む。第1の端子101における部分105の面積は、第1の端子101の部分103よりも小さいことから、第1の端子部分103を拡張してより広い面積とすることが出来るが、しかしこれは発光デバイス・アセンブリ10における短絡を回避する為に第1の端子部分103と第2の端子107が接触しない程度としなければならない。第2の端子107と第1の端子101における直線部分105の寸法は、PCBにおいてそうであるように、端子取り付け用の穴が固定されている限りにおいては一定であることに留意が必要である。第1の端子101の部分103を拡張した場合、封入パッケージ108中に埋め込まれる直線部分105の面積が小さくなり、熱が直線部分105及びPCB等に入る前に熱を放出することが出来る面積がより大きくなるのである。
【0023】
熱伝導性能は、Q/t=kA(Thot−Tcold)/dの式で表される(Q/tが熱伝達速度、kが熱伝導率、Aが垂直断面積、Thotが最高温度、Tcoldが最低温度、そしてdが使用材料の厚さである)。熱伝達速度は熱伝導率と垂直断面積に比例する。第1の端子101が拡張された場合、水平断面積が大きくなる為に熱伝達速度は高まる。5mmスルーホールランプを使用した場合を考えると、従来技術においては第1の端子401の直線部分405は0.0004平方インチの水平断面積を持つ。しかしながら、推奨される実施例においては、第1の端子101の面積は0.00112平方インチ分増大することになり、これは約280%の増加を意味する。従って増大した面積はPCBへの放熱に使用可能なのである。第1の端子101の直線部分105への入口地点は固定されてはいるものの、第1の端子部分103が拡張された場合は、熱がPCBとの交点に届く前に第1の端子101中でより大量の熱を放熱することが可能である。しかしながら、第1の端子の拡張させた部分103の面積は、使用されるスルーポールランプのパッケージ径によって変化する点に留意が必要である。
【0024】
さらに、発光デバイス・アセンブリ10の熱伝導率を増大させ、LEDチップ100からより大量の熱を基板へと送る為に、第1の端子101及び第2の端子107の全体を含むがこれらに限られないアセンブリ10中における全ての金属要素の厚さを増大させるという他の実施例がある。アセンブリ10の熱容量を大きくする為に、この厚さの増大は、一般に金属であるバルク材料をさらに用いることで実施することが望ましい。代わりに、選択的に第1の端子101の部分103に限定して厚さを増大させることも可能である。
【0025】
第1の端子101の全体的な面積を大きくすることにより、これに応じて封入パッケージ108と接触する金属量も増大することになる。よって封入パッケージ108が良好な熱伝導率を持ち、第1の端子101の部分103が封入パッケージ108とより大きな接触を持つ場合、LEDアセンブリ10の放熱性能は改善されるのである。
【0026】
通常は金ワイヤ106である電気接続は、LED100の一端とリードフレームの第2の端子107との間に作られる。次にリードフレームが少なくとも1つの封入層108、109に封入される。出来ればこのリードフレームは、通常は第1の端子101における部分103の上部あたりの高さまでの空洞104内部を除き、第1の端子101の部分103を包む第1の封入材の層108中に収容することが望ましい。光学的に透明な第2の封入材の層109は、第1の封入材における層108の一方の側に空洞104を覆うように設けられる。第2の封入材の層109は、一般にレンズ形状に作られる。代わりに、シェル又はモールドを用いて二重封入を実現しても良い。LEDチップ100を基板に接続した後にそのようなシェル中に入れる。その後第2の層用の封入材109をシェル中に注ぎ、続いて第1の層用の封入材108を設ける。アセンブリの残りの部分を封入するように、これらの封入材108、109がシェル形状に固化する。
【0027】
本発明の一実施例においては、少なくとも1つの封入層108、109が発光デバイス・アセンブリ10を封入することになっている。しかしながら、二重封入層108、109とすることにより、アセンブリ10の放熱性を強化する働きが得られる。
【0028】
このような二重系においては、第1の封入材の層108は強化された熱伝導率を持ち、第1の端子の101における部分103と接触している場合には放熱器として作用する。第1の封入材の層108は一般に、熱伝導率を高める為に熱伝導性フィラーを含ませたポリマー系封入材である。第1の封入材の層108用フィラーは、セラミック、ガラス、又はアルミニウム粒子を含むものとすることが出来る。これらのフィラー選択肢の各々は、熱伝導率に著しい向上をもたらすものである。例えば、フィラーを含まないエポキシ系の封入材は一般に約0.2W/mKの熱伝導率を持っているが、好適なフィラーを加えた封入材108であれば、少なくとも10〜20W/mKまで熱伝導率を向上させることが出来るのである。フィラーを付加した場合、第1の封入材の層108は透明である必要はない。第1の封入材の層108を半透明或いは不透明としても、デバイス性能に損失を与えることはないのである。第2の封入材の層109は、LED光、即ちLED放射に対して透明である等、光学的に透明なものとすることが望ましい。
【0029】
発光デバイス・アセンブリ10への導入が望ましいとされるこの二重封入構造は、単一封入構造が望まれる場合においては採用しなくても良い。しかしながら、従来技術によって二重封入構造の熱抵抗は単一封入構造のLEDよりも21.5%も低いことが示されている。計測中に生じ得るバラツキを考慮しても、少なくとも10%、望ましくは11〜21.5%の熱抵抗の低下を二重封入構造によって得ることが出来る。よって二重封入層は熱伝導率を高めるものであり、そして金属系接着剤を採用すると同時に第1の端子101の部分103を拡張することにより、LEDから除去される熱の量をさらに大きくすることが出来るのである。
【0030】
リードフレーム上で第1の端子の部分103をLEDチップ100へと固定する金属系接着剤102としては、はんだ合金が望ましいが、通常、これは錫又は金ベースの合金である。しかしながら、このような接着剤としてはインジウム等の単一元素のものを使用しても良い。エポキシ系接着剤と比較すると、金属系接着剤はLED100と第1の端子101の部分103との間により良好な熱伝導を提供するものである。従ってこの代替によって熱伝導率に約10倍の向上を得ることが出来るのである。例えば、エポキシ系接着剤の熱伝導率は6W/mKであるのに対し、金属系接着剤の熱伝導率は50〜100W/mKである。
【0031】
従って、金属系接着剤をアセンブリ10に導入すると共に第1の端子101における部分103の大きさを拡張した場合、熱抵抗は最大でも150℃/Wへと改善され、従来技術と比べると、熱抵抗に少なくとも38%の改善が得られることになるのである。
【0032】
次に図5を参照するが、この発光デバイス・アセンブリ50は本発明の他の実施例を示すものである。このようなアセンブリ50は、第2の端子が少なくとも2つ(507−1〜507−N)あるという点が図1に描いた実施例と異なっている。従って、第1の端子501の空洞504中に収容されるLEDチップは2つ以上(500−1〜500−N)あり、これらは金属系接着剤502−1〜502−Nにより接着して取付、接続されている。各LEDチップ500−1〜500−Nは、通常は金ワイヤである電気接続506−1〜506−Nを通じて対応する第2の端子507−1〜507−Nへと取り付けられる。少なくとも1つの封入層508、509が発光デバイス・アセンブリ50を封入している。
【0033】
従って、発光デバイス・アセンブリの熱伝導率を向上させるには、アセンブリは金属系接着剤、拡張した第1の端子の部分及び封入層を、熱がPCBへと伝わる前の第1次放熱要素として頼るものである(更なる放熱性を得る為に他の造作をさらに導入することも可能である)。金属系接着剤は、LEDに直接接触していることから、LEDチップ100を発生源とする熱を最初に放散することになる。熱は金属系接着剤を通じてLED100から除去され、第1の端子101の拡張部分103へと入る。第1の端子101の部分103は拡張されていることから、熱伝導及び熱放散に供される面積はより大きく、さらには、上述したように第1の封入材の層が良好な熱伝導率を持っている場合においては、PCBへと入る前に更なる熱の放出経路が使えるのである。
【0034】
次に図3を参照しつつ説明するが、本発明の他の実施例は、発光デバイス・アセンブリの放熱特性を向上させる為の方法を提供するものである。この方法は、プロセス301に示すように、LEDチップを第1の端子の、少なくともLEDチップと同じ幅にまで拡張した、封入アセンブリの垂直総断面積の少なくとも30%はある垂直断面積を持つ部分の空洞中に配置するステップを含む。プロセス302においては、LEDチップ(チップ100等)を、望ましくはリードフレームである基板の空洞中の、第1の端子の拡張した部分へと接着して取り付ける。このボンディングには金属系接着剤を使用することが望ましい。プロセス303に示したように、第1の端子の傍に第2の端子が配置される。プロセス304においては、第2の端子がLEDチップへと接続される。プロセス305においては、第1の端子の拡張部分が第1の封入材の層により封入され、プロセス306において第2の封入材の層が第1の封入材の層に対し、アセンブリ全体が封入されるように配置される。さらに、熱伝導率を高める為にフィラーを第1の封入材の層に導入しても良い。
【0035】
本発明の方法の更なる実施例として、図6に、発光デバイス・アセンブリの放熱特性を強化する方法を提供する例を示す。図6の方法も図3に示した方法と同様に、プロセス601に示したように、LEDチップを第1の端子の、少なくともLEDチップと同じ幅にまで拡張した、封入アセンブリの垂直総断面積の少なくとも30%はある垂直断面積を持つ部分の空洞中に配置するステップを含む。LEDチップは、プロセス602に示すように、基板の空洞中で第1の端子の拡張部分に金属系接着剤により接着して取り付けられる。プロセス603においては、LEDチップが基板の第2の端子へと取り付けられる。しかしながら、プロセス604においては、LEDチップが接続された基板はシェル、即ちモールド(鋳型)へと挿入される。その後、第2の層の封入材がプロセス605においてシェル中へと注入され、その後プロセス606において第1の層の封入材がシェルへと注入され、これらの封入材が固化されてアセンブリの残りの部分を封止するシェル形状を形成する。
【0036】
先の説明は、発光デバイス・アセンブリに導入されて実施された本発明に関する説明であり、他の実施例においてはLEDチップをレーザーダイオード又は他の推奨される発光デバイスに置き換えたものもある。LED同様、レーザーダイオードは電流を光へと変換する複雑な半導体であるが、これも熱の除去能力の増強、よって本発明が提供する強化した熱伝導率から恩恵を得るものである。
【0037】
上述の実施形態に即して本発明を説明すると、本発明は、(a)発光ダイオード(LED)チップ(100、500−1、500−N)と、(b)2つの端子を持つ基板であって、2つの端子のうち、第1の端子(101、501)が少なくともLEDチップと同じ幅を持ち、封入されたアセンブリ全体の垂直断面積の少なくとも30%の垂直断面積を持つ部分(103、503)を有する基板と、(c)LEDチップを基板の第1の端子へと接続する接着剤(102、502−1、502−N)とを収容する1つ以上の封入層(108、508)を具備したことを特徴とする発光デバイス(10、50)アセンブリを提供する。
【0038】
好ましくは、第1の端子(101、501)の部分(103、503)が、1つ以上の封入層(108、508)の一端と少なくとも面一となるように拡張されている。
【0039】
好ましくは、第1の端子(101、501)の部分(103、503)が、アセンブリの熱容量を増大させ、LEDチップ(100、500−1、500−N)からより大量の熱を吸い出す為に厚くされる。
【0040】
好ましくは、1つ以上の封入層(108、508)が、前記第1の端子(101、501)の前記部分を実質的に収容する、熱伝導率を強化した第1の封入材の層と、前記アセンブリの残りの部分を封入する為に前記第1の層の封入材を一端に取り付けられた第2の封入材の層を有している。
【0041】
好ましくは、第1の封入材の層(108、508)が、透明材料、半透明材料、不透明材料、及びポリマー系材料から成るグループから選択される。
【0042】
さらに、本発明は、アセンブリを収容する1つ以上の封入層(108、508)を具備したシステムであって、アセンブリが、(a)少なくとも1つの発光ダイオード(LED)チップ(100、500−1、500−N)と、(b)端部から封入層へと入る第1の端子(101、501)であって、少なくともLEDチップと同じ幅を持つ部分(103、503)を有し、当該部分が1つ以上の封入層の端部と少なくとも面一となるように拡張されている第1の端子と、(c)少なくとも1つのLEDチップと対応する数の少なくとも1つの第2の端子(107、507−1、507−N)と、(d)少なくとも1つのLEDチップを第1の端子へと接続する少なくとも1つの接着剤(102、502−1、502−N)とを具備したことを特徴とするシステムを提供する。
【0043】
好ましくは、1つ以上の封入層(108、508)が、第1の端子(101、501)の部分を実質的に収容する、熱伝導率を強化した第1の封入材の層と、アセンブリの残りの部分を収容する為に第1の層における封入材の一端に取り付けられた第2の封入材の層とを具備する。
【0044】
更に、本発明は、発光デバイス(10、50)アセンブリの発光ダイオード(LED)(100、500−1、500−N)の放熱特性を強化する為の方法であって、LEDチップを、少なくともLEDチップと同じ幅と、アセンブリ全体の垂直断面積の少なくとも30%を占める垂直断面積とを持つ部分を含む第1の端子の空洞中に配置するステップ(601)と、LEDチップを第1の端子へと接着剤により取り付けるステップ(602)と、LEDチップを第2の端子へと接続するステップ(603)と、LEDチップへと接続された端子の一部分をシェル中へと挿入するステップ(604)と、第2の封入材の層をシェルへと注ぎ込むステップ(605)と、第1の封入材の層をシェルへと注ぎ込み、第1及び第2の層の封入材を固化させ、シェルの形状を形成するステップ(606)とを有することを特徴とする方法を提供する。
【0045】
好ましくは、第1の層の封入材中にフィラーを導入して熱伝導率を強化するステップをさらに有する。
【0046】
以上のように、本発明及びその利点を詳細にわたって説明して来たが、請求項に定義される本発明の精神及び範囲から離れることなく様々な変更、置換、及び改変を加えることが出来ることは言うまでもない。さらに、本願の範囲は、本明細書において説明したプロセス、機械、製造法、物質の構成、手段、方法及びステップの特定の実施例に限られたものではない。本発明の開示から本願に記載された対応実施例と実質的に同じ機能を実施する、或いは実質的に同じ結果を得ることが出来る、現在既存の、或いは将来的に開発されるであろうプロセス、機械、製造法、物質の構成、手段、方法及びステップを本発明に基づいて実施することが出来ることは、当業者であれば容易に想至することが出来る。よって本願請求項は、そのようなプロセス、機械、製造法、物質の構成、手段、方法及びステップをその範囲に含むことを意図したものである。
【符号の説明】
【0047】
10、50 発光デバイス
100、500−1、500−N 発光ダイオード(LED)チップ
101、501 基板の第1の端子
102、502−1、502−N 接着剤
103、503 第1の端子の拡張部分
107、507−1、507−N 第2の端子
108、508 封入層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光デバイスアセンブリであって、
空洞(104)と前記空洞(104)を含む当該発光デバイスアセンブリの総垂直断面積の少なくとも30%の垂直断面積を有する部分(103)と前記当該発光デバイスアセンブリの総垂直断面積の少なくとも30%の垂直断面積を有する部分(103)の下部から延びる直線部分(105)とを含む第1の端子(101)と、
前記空洞(104)に金属系接着剤(102)を介して設置されるLEDチップ(100)と、
前記LEDチップ(100)に接続され、拡張した部分と直線部分とを含む第2の端子(107)と、
前記第1の端子(101)については上部当たりの高さまで空洞104を除き、前記第1の端子(101)の部分(103)を少なくとも収納し、前記第2の端子(107)については前記拡張部を少なくとも収容する熱伝導性の第1の封入材の層(108)と、
前記第1の封入材の層(108)の上に配置され、空洞(104)を覆うように設けられる透明な第2の封入材の層(109)とを備え、
前記熱伝導性の第1の封入材の層(108)は熱電導性のフィラーを含むポリマー径材料からなり、
前記第1の端子と前記第2の端子とは上端が同じ高さである
ことを特徴する発光デバイスアセンブリ。
【請求項2】
前記金属系接着剤(102)は、錫若しくは金ベースのはんだ合金、又はインジウムからなる、請求項1に記載の発光デバイスアセンブリ。
【請求項3】
前記第1の封入材の層(108)は、熱伝導性フィラーを含むポリマー系材料からなる、請求項1又は請求項2に記載の発光デバイスアセンブリ。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラーは、セラミック、ガラス、又はアルミニウム粒子からなる、請求項3に記載の発光デバイスアセンブリ。
【請求項5】
発光デバイスアセンブリを作成する方法であって、
前記LEDチップを金属系接着剤を介して,空洞(104)と前記空洞(104)を含む当該発光デバイスアセンブリの総垂直断面積の少なくとも30%の垂直断面積を有する部分(103)と前記当該発光デバイスアセンブリの総垂直断面積の少なくとも30%の垂直断面積を有する部分(103)の下部から延びる直線部分(105)とを含む第1の端子(101)の前記空洞(104)に配置するステップ(302)と、
前記LEDチップを拡張した部分と直線部分とを含む第2の端子に接続するステップ(304)と、
前記第1の端子(101)については上部当たりの高さまで空洞104を除き、前記第1の端子(101)の部分(103)を少なくとも収納し、前記第2の端子(107)については前記拡張部を少なくとも収納するように一部を熱伝導性の第1の封入材の層の中に封入するステップ(305)と、
前記空洞(104)を覆うように前記第1の封入材の層の上に透明な第2の封入材の層を配置するステップ(306)とを含み、
前記第1の端子(101)と前記第2端子(107)とは上端が同じ高さである
ことを特徴する発光デバイスアセンブリを形成する方法。
【請求項6】
前記金属系接着剤(102)は、錫若しくは金ベースのはんだ合金、又はインジウムからなる、請求項5に記載の発光デバイスアセンブリを形成する方法。
【請求項7】
前記第1の封入材の層(108)は、熱伝導性フィラーを含むポリマー系材料からなる、請求項5又は請求項6に記載の発光デバイスアセンブリを形成する方法。
【請求項8】
前記熱伝導性フィラーは、セラミック、ガラス、又はアルミニウム粒子からなる、請求項7に記載の発光デバイスアセンブリを形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110435(P2013−110435A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−22213(P2013−22213)
【出願日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【分割の表示】特願2004−239553(P2004−239553)の分割
【原出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(312015417)インテレクチュアル ディスカバリー カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】