説明

熱感知器及びこれを用いた火災警報器

【課題】外部温度が所定の温度以上になったことを即時に検知することの可能な熱感知器及びこれを用いた火災警報器を提供する。
【解決手段】一端側に蓋部101aが設けられた筒体101と、筒体101の中空部に設けられ、外部温度が所定の温度(例えば60℃)以上になったときに蓋部101aとの接点102aが筒体101の熱膨張に基づきオフとなると、検知信号を出力する検知信号出力部102とを備えたので、外部の空気熱を筒体101に直接伝えることができ、外部温度の変化に伴う筒体101の熱膨張または収縮を迅速に行うことができる。従って、外部温度が所定の温度以上になったことを即時に検知することができ、例えば屋内で火災が発生したこと等の検出精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば室内の温度が所定の温度以上になったことを検知することの可能な熱感知器及びこれを用いた火災警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱感知器として、熱膨張部材と、外部温度が所定の温度以上になったときに接点が熱膨張部材の熱膨張または収縮に基づきオンまたはオフとなると、所定の検知信号を出力する検知信号出力部とを備えたものが知られている。
【0003】
この熱感知器は、熱膨張部材が、熱伝導性を有するハウジング内に収容されており、該ハウジングを介して伝わった外部の空気熱に基づき熱膨張または収縮するようになっている。
【特許文献1】実公平7−35267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来例では、熱膨張部材がハウジング内に収容されているので、外部温度が所定の温度に達した場合でも、ハウジングの熱伝導率によっては接点がオンまたはオフになるまでの時間が長くなり、外部温度が所定の温度以上になったことを即時に検知することが困難であった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外部温度が所定の温度以上になったことを即時に検知することの可能な熱感知器及びこれを用いた火災警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱感知器は、前記目的を達成するために、一端側に蓋部が設けられた筒状の熱膨張部材と、熱膨張部材の中空部に設けられ、外部温度が所定の温度以上になったときに蓋部との接点が熱膨張部材の熱膨張または収縮に基づきオンまたはオフとなると、所定の検知信号を出力する検知信号出力部とを備えている。
【0007】
また、本発明の火災警報器は、前記目的を達成するために、前記熱感知器と、熱感知器から検知信号が入力されたときに所定の警報情報を出力する警報情報出力部とを備えている。
【0008】
これにより、筒状の熱膨張部材が外部に露出した状態で設けられ、外部温度が所定の温度以上になったときに所定の検知信号を出力する検知信号出力部が熱膨張部材の中空部に設けられていることから、外部の空気熱を熱膨張部材に直接伝えることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外部の空気熱を熱膨張部材に直接伝えることができるので、外部温度の変化に伴う熱膨張部材の熱膨張または収縮を迅速に行うことができる。従って、外部温度が所定の温度以上になったことを即時に検知することができ、例えば屋内で火災が発生したこと等の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図7は本発明の一実施形態を示すもので、図1は火災警報器の斜視図、図2は熱感知器の断面図、図3は火災警報器の機能構成図、図4は火災警報器の動作を示すフロー図、図5は実施形態の変形例を示す火災警報器の機能構成図、図6は火災警報装置の機能構成図、図7は実施形態の変形例を示す熱感知器の断面図である。
【0011】
本発明の火災警報器10は、天井等に取付けられ、室内の温度が所定温度に達したときに、警報情報としての音声情報を出力するようになっている。
【0012】
火災警報器10は、図1に示すように、火災警報器10を天井等に取り付けるための取付部11と、室内の温度等を検知するための熱感知器100とからなり、取付部11を天井等に設けられた取付溝(図示省略)に挿入することにより、天井等に取付けられるようになっている。なお、取付部11には、熱による膨張係数の小さい素材を用いると好適であり、これに対応して本実施形態では、取付部11を、エンジニアプラスチック等の樹脂で構成している。また、取付部11を、アルミニウム等の金属で構成してもよい。さらに、取付部11の下端には、例えばアルミフィルム等のように、光または熱を反射する周知の反射部材11aが設けられており、反射部材11aは、火元からの輻射熱を熱感知器100側に反射するようになっている。さらにまた、火災警報器10の内部には、警報情報出力部110と、電源部120と、電源供給部130とが設けられている。
【0013】
熱感知器100は、図2に示すように、火災警報器10の下部に設けられており、上下方向に延びるように形成された筒体101と、検知信号出力部102とから構成されている。
【0014】
筒体101は、所定の厚さ寸法(例えば1mm)を有するシリコーンゴム板を円筒状に加工することによって形成されており、外部温度に基づき上下方向に熱膨張または収縮するようになっている。また、筒体101の上端は取付部11に固定されており、筒体101の下端には、筒体101の中空部を覆うように形成された蓋部101aが設けられている。この場合、筒体101の上端が固定されていることから、筒体101の下端側が外部温度に基づき上下方向に熱膨張または収縮する。蓋部101aは、筒体101とは異なる部材で形成されており、本実施形態ではアルミニウム等の金属から構成されている。なお、蓋部101aを、筒体101と一体に形成してもよい。
【0015】
検知信号出力部102は周知のタッチセンサであり、筒体101の中空部に設けられている。検知信号出力部102の上端は取付部11に固定されており、検知信号出力部102の下端には、蓋部101aに接触可能な可動接点102aが下方に突出するように設けられている。可動接点102aは、外部温度が常温のときには蓋部101aによって上方即ち検知信号出力部102の内部に向かって押圧されるようになっている。この場合、可動接点102aはオン状態となっている。また、可動接点102aは、復元したとき、即ち下方に完全に突出したときにオフ状態となる。検知信号出力部102は、可動接点102aがオフ状態になると、所定の検知信号を出力するようになっている。
【0016】
なお、検知信号出力部102は、筒体101と離間した状態で設けられている。これにより、筒体101は、筒体101と接触しながら熱膨張または収縮することがないので、熱膨張量または収縮量が筒体101との摩擦によって変化することを防ぐことができる。
【0017】
ここで、熱感知器100の動作について図2を参照して説明する。まず、外部温度が常温のときには、図2(a)に示すように、可動接点102aが蓋部101aによって検知信号出力部102の内部方向に付勢されている。ここで、外部温度が上昇すると、筒体101の熱膨張に伴って蓋部101aが下方に移動することにより、可動接点102aが蓋部101aに接触しながら復元していく。そして、外部温度が所定の温度(例えば60℃)以上に達すると、図2(b)に示すように、可動接点102aは蓋部101aから離間して完全に復元することによりオフとなる。この場合、検知信号出力部102から検知信号が出力される。また、外部温度が低下した場合には筒体101の収縮に伴って蓋部101aが上方に移動する。そして、外部温度が所定の温度(例えば60℃)未満になると、蓋部101aが可動接点102aに接触することにより、可動接点102aはオン状態となる。
【0018】
警報情報出力部110は、小型のスピーカと、CPU及びRAM、ROM等のメモリ等を備えている。警報情報出力部110は、電力供給状態で駆動して、自己のメモリに格納された所定の音声情報を出力するようになっている。
【0019】
電源部120は、火災警報器10に設けられた電池であり、警報情報出力部110に駆動電力を供給するようになっている。なお、電源部120として商用電源を用いてもよい。また、電源部120の+側には、熱感知器100と電源供給部130が接続されている。
【0020】
電源供給部130はサイリスタ等から構成されており、図3に示すように電源部120と警報情報出力部110との間に設けられている。電源供給部130は、サイリスタのアノード側に電源部120が接続され、カソード側に警報情報出力部110が接続されている。また、電源供給部130は、熱感知器100から検知信号が出力されると、該検知信号がサイリスタのゲートを通過するように接続されている。即ち、検知信号出力部102の接触部102aがオフとなったときに電源部120から警報情報出力部110に駆動電力が供給されるようになっている。
【0021】
以上のように構成された火災警報器10の動作について図4のフロー図を参照して説明する。まず、火災が発生すると、外部温度の上昇により熱感知器100の筒体101が熱膨張する。この場合、筒体101が外部に露出していることから、外部の空気熱を熱膨張部材に直接伝えることが可能となる。この場合、火元からの輻射熱が、取付部11に設けられた反射部材11aによって効率良く熱膨張部材に伝えられる。そして、外部温度が所定の温度(例えば60℃)以上になると検知信号出力部102の可動接点102aがオフになる(ステップS1)。この場合、検知信号出力部102から検知信号が出力され、該検知信号が電源供給部130に入力される(ステップS2)。そして、検知信号が電源供給部130に入力されると、警報情報出力部110の駆動電源が電源部120から警報情報出力部110に供給される(ステップS3)。次いで、警報情報出力部110は、電源部120から駆動電源が供給されることにより駆動して、警報情報としての音声情報を出力する(ステップS4)。
【0022】
このように、本実施形態の熱感知器100によれば、一端側に蓋部101aが設けられた筒体101と、筒体101の中空部に設けられ、外部温度が所定の温度(例えば60℃)以上になったときに蓋部101aとの接点102aが筒体101の熱膨張に基づきオフとなると、検知信号を出力する検知信号出力部102とを備えたので、外部の空気熱を筒体101に直接伝えることができ、外部温度の変化に伴う筒体101の熱膨張または収縮を迅速に行うことができる。従って、外部温度が所定の温度以上になったことを即時に検知することができ、例えば屋内で火災が発生したこと等の検出精度を向上させることができる。
【0023】
また、筒体101をシリコーンゴムで形成したので、熱感知器100の耐熱性や耐水性を向上させることができる。
【0024】
さらに、蓋部101aを、筒体101とは異なる部材で形成したので、筒体101の加工が容易になり、蓋部101aを筒体101と一体に設けることにより製造コストが増大することを抑制することができる。
【0025】
さらにまた、本実施形態の火災警報器10によれば、前記熱感知器100と、熱感知器100から検知信号が入力されたときに音声情報を出力する警報情報出力部110とを備えたので、外部の空気熱を熱感知器100の筒体101に直接伝えることができ、外部温度の変化に伴う筒体101の熱膨張または収縮を迅速に行うことができる。従って、外部温度が所定の温度以上になったことを即時に検知することができ、屋内で火災が発生したことを迅速に検出することができる。
【0026】
また、警報情報出力部110用の電源部120と、熱感知器100から検知信号が入力されたときにのみ電源部120から警報情報出力部110に駆動電力を供給する電源供給部130とを備え、警報情報出力部110は、電力供給状態で警報情報を出力するので、例えば火災が発生していないときの火災警報器10全体の電力消費量を低減させることができることから、省エネルギー化を実現することができる。
【0027】
なお、上記実施形態は本発明の一具体例に過ぎず本発明が上記実施形態のみに限定されることはない。例えば、上記実施形態では、熱感知器100の可動接点102aがオフとなったときにのみ電源部120から警報情報出力部110に駆動電力を供給するものを示したが、熱感知器100の102aがオンとなったときにのみ警報情報出力部110に駆動電力を供給するように構成した場合でも、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。また、筒体101の収縮に基づき可動接点102aがオンまたはオフとなるように構成してもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、火災警報器10が警報情報としての音声情報を出力するようになっているが、火災警報器10を、所定の火災警報装置20に対して警報信号を送信するように構成してもよい。この場合、火災警報器10には、図5に示すように、火災警報装置20に対して警報信号を出力する警報信号出力部140が、警報情報出力部110の代わりに設けられている。火災警報器10は、火災警報装置20との間で無線通信を行うようになっており、火災警報装置20は、火災警報器10から警報信号を受信すると、警報情報としての音声情報を出力するようになっている。警報信号出力部140は、CPU及びRAM、ROM等のメモリと、RF(Radio Frequency)回路と、A/D変換回路と、アンテナ等を備えており、上記実施形態と同様に熱感知器100から検知信号が出力されると電力供給状態となって、自己のメモリに格納された所定の警報信号を火災警報装置20に出力するようになっている。
【0029】
また、火災警報装置20は、図6に示すように、火災警報器10との間で無線通信を行う通信制御部21と、音声情報を出力する警報出力部22とを備えている。通信制御部21は、CPU及びRAM、ROM等のメモリと、RF回路と、A/D変換回路と、アンテナ等とを備えており、火災警報器10から警報信号を受信するようになっている。また、通信制御部21は、警報信号を受信したときに自己のメモリに格納された音声情報を警報出力部22に送信するようになっている。警報出力部22は周知のスピーカであり、通信制御部22から受信した音声情報を外部に出力する。
【0030】
このように構成することで、警報情報出力部110を火災警報器10に設ける必要がないことから、火災警報器10の製造コストを低減させることが可能になる。
【0031】
さらに、図7に示すように、熱感知器100の筒体101を水平方向に延びるように設けてもよい。この場合、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を示す火災警報器の斜視図
【図2】熱感知器の断面図
【図3】火災警報器の機能構成図
【図4】火災警報器の動作を示すフロー図
【図5】実施形態の変形例を示す火災警報器の機能構成図
【図6】火災警報装置の機能構成図
【図7】実施形態の変形例を示す熱感知器の断面図
【符号の説明】
【0033】
10…火災警報器、100…熱感知器、101…筒体、101a…蓋部、102…検知信号出力部、102a…可動接点、110…警報情報出力部、120…電源部、130…電源供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に蓋部が設けられた筒状の熱膨張部材と、
熱膨張部材の中空部に設けられ、外部温度が所定の温度以上になったときに蓋部との接点が熱膨張部材の熱膨張または収縮に基づきオンまたはオフとなると、所定の検知信号を出力する検知信号出力部とを備えた
ことを特徴とする熱感知器。
【請求項2】
前記熱膨張部材をシリコーンゴムで形成した
ことを特徴とする請求項1記載の熱感知器。
【請求項3】
前記蓋部を、熱膨張部材とは異なる部材で形成した
ことを特徴とする請求項1または2記載の熱感知器。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の熱感知器と、
熱感知器から検知信号が入力されたときに所定の警報情報を出力する警報情報出力部とを備えた
ことを特徴とする火災警報器。
【請求項5】
前記警報情報出力部用の電源部と、
熱感知器から検知信号が入力されたときにのみ電源部から警報情報出力部に駆動電力を供給する電源供給部とを備え、
警報情報出力部は、電力供給状態で前記警報情報を出力する
ことを特徴とする請求項4記載の火災警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−69952(P2009−69952A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235251(P2007−235251)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(505278931)株式会社まるや (10)
【出願人】(390023216)株式会社タイセー (8)
【出願人】(300054631)有限会社エフ・テイ・イノベーション (14)
【Fターム(参考)】