説明

熱硬化性樹脂組成物及びその製造方法、カラーフィルタ及びその製造方法、液晶表示装置及び有機発光表示装置

【課題】カラーフィルタの製造工程における高温加熱工程時に顔料凝集体の析出が抑制され、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能な熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】キノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体と、顔料分散剤と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分と、溶媒とを含有し、前記キノフタロン系顔料100質量部に対し、前記キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体が0.1〜30質量部、且つ、前記キノフタロン系顔料100質量部に対し、前記キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体が0.1〜30質量部含有する、熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及びその製造方法、当該熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及びその製造方法、並びに当該カラーフィルタを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられる。例えば液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。また、有機発光表示装置では、白色発光の有機発光素子にカラーフィルタを用いた場合は液晶表示装置と同様にカラー画像を形成する。
このような状況下、カラーフィルタにおいても、高輝度化や高コントラスト化、色再現性の向上といった要望が高まっている。
【0003】
カラーフィルタは、通常、ガラス等の透明基板上に3色以上のパターンが形成されたものである。例えば、赤色や緑色の着色パターンを形成するためには、赤色又は緑色顔料のみでは所望の分光スペクトルが得にくいため、黄色顔料を混合して分光スペクトルを調整している。
【0004】
一般に顔料を分散したカラーフィルタは、顔料による光の散乱等により、液晶が制御した偏光度合いを乱してしまうという問題がある。すなわち、光を遮断しなければならないとき(OFF状態)に光が漏れたり、光を透過しなければならないとき(ON状態)に透過光が減衰したりするため、ON状態とOFF状態における表示装置上の輝度の比(コントラスト比)が低いという問題がある。そのため従来、コントラストを高くするのに適したC.I.ピグメントイエロー150が、上記赤色や緑色を調整するための黄色顔料として用いられてきた。しかしながら、C.I.ピグメントイエロー150を用いた場合、輝度が十分に高くならないという問題があった。
【0005】
染料と比較して顔料を用いた場合に透過率が低いという課題を解決するために、特許文献1では、C.I.ピグメントイエロー138を用いた緑色樹脂組成物が開示されている。しかしながら従来、C.I.ピグメントイエロー138を用いると、コントラストが低くなり、特にテレビ用途では使用し難いという問題があった。
C.I.ピグメントイエロー138を用いてコントラストを大きくする試みとして、特許文献2では、C.I.ピグメントイエロー138とC.I.ピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体を用いたカラーペーストが記載されている。
【0006】
一方、特許文献3では、キノフタロン粗顔料を微細な顔料形に変換する方法として、キノフタロン粗顔料を粉砕し、当該粉砕物をキノフタロン系顔料誘導体の存在下の溶媒中で再結晶させる方法、又はキノフタロン粗顔料をキノフタロン系顔料誘導体の存在下で粉砕し、当該粉砕物を溶媒中で再結晶する方法を開示しており、前記キノフタロン系顔料誘導体としてスルホン化キノフタロン系顔料やフタルイミドメチルキノフタロン系顔料を開示している。特許文献3では、キノフタロン系顔料を製造する際に、粉砕された粗顔料の結晶成長を止める結晶化改質剤として、上記キノフタロン系顔料誘導体が用いられている。
【0007】
特許文献4では、ハロゲン化されたフタロシアニンの亜鉛錯体と、キノフタロン系顔料のスルホン酸誘導体を有するインクジェット方式によるカラーフィルタの製造に用いられるカラーフィルタ用緑色インクが開示され、吐出安定性、顔料の分散安定性に優れ、明度、コントラストに優れ、色むら、濃度むらが抑制され、個体間での特性の均一性に優れ、耐久性にも優れたカラーフィルタが製造できるとしている。また、特許文献5では、カラーフィルタ用インクセットにおいて、複数種のインク間での吐出性の均一性を得ることを目的として、C.I.ピグメントグリーン58とキノフタロン系顔料のスルホン酸誘導体を有するグリーンインクが開示されている。しかしながら特許文献4及び特許文献5に記載のインクを用いて製造されたカラーフィルタの輝度及びコントラストは不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11―256053号公報
【特許文献2】特開2002−179979号公報
【特許文献3】特表2004−501911号公報
【特許文献4】特開2009−126984号公報
【特許文献5】特開2009−169214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、従来より分散を強化することでキノフタロン系顔料の微細化を進め、このような微細化キノフタロン系顔料を用いることにより、高輝度で且つ高コントラスト化の要求を達成可能な着色層(塗膜)が得られることをつきとめた。しかしながら、キノフタロン系顔料の微細化に伴い、カラーフィルタの製造工程における高温(230℃以上)加熱工程後、塗膜表面に顔料の凝集体が異物のように析出する問題が発生することがわかった。このような顔料の凝集体が塗膜表面に異物のように析出した場合には、カラーフィルタは不良品として用いることができなくなってしまう。
【0010】
本発明は、このような状況下になされたものであり、カラーフィルタの製造工程における高温加熱工程時に顔料凝集体の析出が抑制され、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能な熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物の製造方法、当該熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された高輝度で且つ高コントラストなカラーフィルタ及びカラーフィルタの製造方法、並びに当該カラーフィルタを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、キノフタロン系顔料に、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体及びキノフタロン系顔料の特定のイミドアルキル化誘導体をそれぞれ特定量組み合わせて分散させた顔料分散液を用いることで、或いは、キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体とを特定量組み合わせて分散させた顔料分散液と、キノフタロン顔料の特定のイミドアルキル化誘導体を溶解させた顔料誘導体溶液を特定量組み合わせることで、高輝度で且つ高コントラスト化の要求を達成しながら、カラーフィルタ工程における高温加熱工程後においても顔料凝集体が析出しない塗膜を作製可能な熱硬化性樹脂組成物が得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0012】
キノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、下記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体と、顔料分散剤と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分と、溶媒とを含有し、前記キノフタロン系顔料100質量部に対し、前記キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体が0.1〜30質量部、且つ、前記キノフタロン系顔料100質量部に対し、前記キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体が0.1〜30質量部含有する、熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0013】
【化1】

(化学式(1)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Xは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、又は−(C=O)−C−(C=O)−により置換されていても良い。nはイミドアルキル基の置換数を示し、1〜5の整数を表す。)
【0014】
本発明は、溶媒中、顔料分散剤の存在下で、少なくともキノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、上記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体とを分散させて顔料分散液を調製する工程(i)と、
前記顔料分散液と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合する工程(ii)とを有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、溶媒中、顔料分散剤の存在下で、少なくともキノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体とを分散させて顔料分散液を調製する工程(iii)と、
上記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を溶媒に溶解乃至分散させた顔料誘導体溶液を調製する工程(iv)と、
前記顔料分散液と、前記顔料誘導体溶液と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合する工程(v)とを有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0016】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物の製造方法においては、前記キノフタロン系顔料が、C.I.ピグメントイエロー138であることが、高輝度な着色層が形成可能である点から好ましい。
【0017】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物の製造方法においては、緑色顔料を含有してもよく、中でも、前記緑色顔料が、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36及びC.I.ピグメントグリーン58よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが、緑色着色層の形成に適している点から好ましい。
【0018】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法においては、前記工程(i)又は工程(iii)において、更に、緑色顔料を加えて分散させてもよい。
また、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法においては、溶媒中、顔料分散剤の存在下で緑色顔料を分散させて顔料分散液を調製する工程(vi)を有し、前記工程(ii)又は(v)において、更に、前記工程(vi)で得られた顔料分散液を混合してもよい。
【0019】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物の製造方法においては、前記顔料分散剤が、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上であることが、顔料同士の凝集を抑制することが可能になり、分散性及び分散安定性が良好で、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能である点から好ましい。また、インクジェット方式に用いる場合には、インクの吐出安定性が向上し、着色層の形状が良好となる点から好ましい。
【0020】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物の製造方法においては、前記ポリアリルアミン誘導体が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有することが、より顔料同士の凝集を抑制することが可能になり、分散性及び分散安定性が良好で、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能である点から好ましい。また、インクジェット方式に用いる場合には、インクの吐出安定性が向上し、着色層の形状が良好となる点から好ましい。
【0021】
【化2】

(式(I)中、XおよびYは、それぞれ独立に水素、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基のいずれかを、Rは遊離のアミノ基、下記一般式(II)又は(III)で示される基を、nは2〜1,000の整数を表す。但しn個のR中、少なくとも1個は一般式(III)で示される基を表す。)
【0022】
【化3】

(式(II)及び式(III)中、Rは遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。)
【0023】
本発明は、透明基板上の所定領域に、前記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物又は前記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法で得られた熱硬化性樹脂組成物をインクジェット方式によって選択的に付着させて、インキ層を形成する工程と、
当該インキ層を加熱することにより硬化させて、所定パターンの硬化層を形成する工程を有する、カラーフィルタの製造方法を提供する。
【0024】
本発明は、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物又は前記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法で得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された、カラーフィルタを提供する。
【0025】
本発明は、前記本発明に係るカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタ又は前記本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置を提供する。
また、本発明は、前記本発明に係るカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタ又は前記本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする有機発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、カラーフィルタの製造工程において高温加熱工程時における顔料凝集体の析出が抑制され、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能な熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物の製造方法、当該熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された高輝度で且つ高コントラストなカラーフィルタ及びカラーフィルタの製造方法、並びに当該カラーフィルタを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物の製造方法、カラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機発光装置について順に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことを言う。また本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味する。
【0029】
1.熱硬化性樹脂組成物
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、キノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、下記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体と、顔料分散剤と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分と、溶媒とを含有し、前記キノフタロン系顔料100質量部に対し、前記キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体が0.1〜30質量部、且つ、前記キノフタロン系顔料100質量部に対し、前記キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体が0.1〜30質量部含有することを特徴とする。
【0030】
【化4】

(化学式(1)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Xは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、又は−(C=O)−C−(C=O)−により置換されていても良い。nはイミドアルキル基の置換数を示し、1〜5の整数を表す。)
【0031】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、顔料としてキノフタロン系顔料を含む黄色顔料を用い、更にキノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を特定量組み合わせて用いることにより、カラーフィルタの製造工程において高温加熱工程時における顔料凝集体の析出が抑制され、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能となる。
【0032】
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
溶媒中での分散時間を長くすることにより、キノフタロン系顔料を微細化しつつ、微細化されて露出された顔料表面に顔料分散剤が適切に吸着して溶媒中での顔料の安定化を図ることができ、キノフタロン系顔料をより均一に微細化することができると推定される。その結果、コントラストが向上した塗膜を得ることができる。
しかしながら、均一に微細化されていたキノフタロン系顔料が塗布された後、カラーフィルタ工程の加熱工程で240℃もの高温が塗膜にかけられると、顔料に吸着されていた顔料分散剤の熱運動により顔料分散剤の吸着が弱まり、微細化されて露出された顔料表面同士の凝集力が強まって、顔料の凝集体が析出してしまうのではないかと推定される。
高温加熱時の塗膜表面に顔料凝集体が析出する現象は、キノフタロン系顔料に、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体のみを添加し、顔料を微細化して顔料分散液を調製した場合も、顕著にみられた。
【0033】
それに対して、本発明の熱硬化性樹脂組成物では、キノフタロン系顔料を含む顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体をそれぞれ特定量と、顔料分散剤とを組み合わせて用いることにより、微細化されて露出された顔料表面に顔料分散剤だけでなく、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体やキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体も吸着していると推定される。
キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体は、キノフタロン系顔料の類似骨格部分により、キノフタロン系顔料の表面に吸着して顔料表面を安定化させやすく、一方、スルホン化部分は、顔料分散剤と相互作用しやすいものと推定される。このような、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体を介することで、溶媒中で剪断をかけながら顔料を微細化しつつ分散することにより、微細化した顔料が安定して分散され、顔料の微細化をより進行でき、その結果コントラストが向上するものと推定される。
また、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体は、キノフタロン系顔料の類似骨格部分により、キノフタロン系顔料の表面に吸着したまま顔料表面を安定化させ、一方、イミドアルキル部分は、前記スルホン酸部分に比べて、顔料分散剤との相互作用が小さいものと推定される。カラーフィルタ工程の加熱工程における240℃もの高温がかけられた場合には、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体は顔料分散剤等との相互作用は小さく、キノフタロン系顔料と吸着しているため微細化された顔料同士が凝集することなく、安定した塗膜を形成できるのではないかと推定される。一方、加熱工程で240℃もの高温が塗膜にかけられると、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体は、キノフタロン系顔料の類似骨格部分のキノフタロン系顔料への吸着力よりも、スルホン化部分と顔料分散剤との相互作用の力が勝り、顔料分散剤が熱運動する際に顔料表面から離れてしまうのではないかと推察される。
【0034】
すなわち、本願では、輝度を高くすることができるキノフタロン系顔料に対して、顔料分散剤と、当該顔料と強い相互作用のあるキノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、当該顔料と相互作用はあるが、顔料分散剤との相互作用が強すぎない、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を組み合わせて分散させることにより、顔料分散性、分散安定性が高く、且つ、高温時においても、微細化された顔料の表面を安定化させたまま維持が可能であるため、カラーフィルタの製造工程における高温加熱工程時に顔料凝集体の析出が抑制され、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能となる。
【0035】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくともキノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体と、顔料分散剤と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分と、溶媒とを必須成分として含有するものであり、必要に応じて他の成分を含有しても良いものである。
以下、このような本発明の熱硬化性樹脂組成物の各成分について順に説明する。
【0036】
<黄色顔料>
本発明に用いられる黄色顔料は、必須成分としてキノフタロン系顔料を含み、必要に応じて更に他の黄色顔料を含んでいても良い。
【0037】
(キノフタロン系顔料)
本発明で用いられるキノフタロン系顔料は、下記化学式(2)で表される構造を有する。
【0038】
【化5】

(化学式(2)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。)
【0039】
上記キノフタロン系顔料を後述するキノフタロン系顔料のスルホン化誘導体、イミドアルキル化誘導体と組み合わせて分散することにより、高輝度で且つ高コントラスト化の要求を達成しながら、カラーフィルタ工程における高温加熱工程後においても顔料凝集体が析出しない着色層(塗膜)を作製可能になる。
【0040】
化学式(2)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表し、特に限定されないが、カラーフィルタの色再現域及び高コントラストを達成しやすい点から、A〜Aのうち4つ以上が塩素原子であることが好ましく、更にA〜Aのうち6つ以上が塩素原子であることが好ましく、中でも、A〜Aの全てが塩素原子である、下記化学式(2’)で表される構造を有するC.I.ピグメントイエロー138を用いることが、高コントラストを達成しやすい点から好ましい。
【0041】
【化6】

【0042】
(他の黄色顔料)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない限り、他の顔料を含んでいても良い。他の黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー60、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー71、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー101、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー106、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー113、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー116、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー119、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー126、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー152、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
他の黄色顔料は、1種単独で又は2種以上混合して用いても良い。
【0043】
本発明に用いられるキノフタロン系顔料は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販のC.I.ピグメントイエロー138(例えば、BASF製、パリオトールイエローK0961HD)等を用いても良い。
【0044】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、黄色顔料全体に対する、キノフタロン系顔料の割合は、カラーフィルタの製造工程における高温加熱工程時に顔料凝集体の析出が抑制され、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能な点から、30質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更により好ましく、他の黄色顔料が実質的に含有しないことが最も好ましい。
【0045】
本発明に用いられる黄色顔料及び後述する緑色顔料の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる顔料の種類によっても異なるが、コントラストを向上させる点から、10〜50nmの範囲内であることが好ましく、10〜30nmの範囲内であることがより好ましい。顔料の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造された液晶表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
なお、上記顔料の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径として得ることができる。次に、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(質量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積(質量)平均粒径を求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0046】
<キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体>
本発明において用いられるキノフタロン系顔料のスルホン化誘導体は、少なくとも1つのスルホ基(−SOH)、スルホナト基及び/又はスルホンアミド基が、前記化学式(2)で表されるキノフタロン系顔料に結合した構造を有するものであり、更に、スルホ基の一部、もしくは全部がアミンやアンモニウムヒドロキシド、クロリド、ブロミド等や、金属等によって塩形成され、スルホン酸塩となっていても良い。
【0047】
キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体は、前記キノフタロン系顔料と類似の骨格を有するため、顔料分散液中にキノフタロン系顔料と共存させた場合、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体のキノフタロン部位が、キノフタロン系顔料の表面に吸着もしくは結合し、スルホン化誘導体のスルホ基、スルホナト基及び/又はスルホンアミド基部分が、分散剤と相互作用することにより、分散工程における顔料同士の凝集を抑制し、顔料分散液の分散性、分散安定性が向上するものと考えられる。
【0048】
スルホン酸基のアミド化合物であるスルホンアミド基としては、下記化学式(A)〜(C)で表されるスルホンアミド基が好ましい。
化学式(A): −SONH−(CH−NR’R”
化学式(B): −SONH−(CH−COOH
化学式(C): −SONH−(CH−SO
化学式(A)において、R’及びR”はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の置換されていても良い飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基、又は、隣接する窒素原子と共に更に窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含んでいても良い複素環を形成したものを表す。
化学式(A)〜(C)において、mはそれぞれ独立に、1〜6の整数である。
【0049】
上記化学式(A)の−SONH−(CH−NR’R”で表される置換基として導入されるアミン成分(−(CH−NR’R”)の代表的なものとしては、ピペリジノメチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジエチルアミノプロピル、ジブチルアミノプロピル、ピペリジノエチル、ピペコリノエチル、モルホリノエチル、ピペリジノプロピル、ピペコリノプロピル、ジエチルアミノヘキシル、ジエチルアミノエトキシプロピル、ジエチルアミノブチル、ジメチルアミノアミル、N−N−メチル−ラウリル−アミノプロピル、2−エチルヘキシルアミノエチル、ステアリルアミノエチル、オレイルアミノエチル等が挙げられる。
【0050】
更に、−SONH−基に、p−ジメチルアミノエチルスルファモイルフェニル、p−ジエチルアミノエチルスルファモイルフェニル、p−ジメチルアミノプロピルスルファモイルフェニル、p−ジエチルアノエチルカルバモイルフェニル等が結合したようなスルホンアミド基であっても良い。
スルホンアミド基としては、中でも、炭素数が5以下であることが好ましい。
【0051】
塩形成していないスルホ基が存在している場合の方が、後述する顔料分散剤との相互作用で、分散剤の顔料吸着力を向上させ、顔料の分散性や分散安定性を向上することができるため好ましい。
【0052】
スルホ基、スルホナト基及び/又はスルホンアミド基のキノフタロン系顔料1分子中の置換数は、1〜5である。中でも、立体障害や分散剤との親和性の点から、1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、更に1であることがより好ましい。
【0053】
キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体は、例えば、黄色顔料を、濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸又はこれらの混合液などにキナクリドン顔料を投入してスルホン化反応を行うことにより製造することができる。スルホン化反応後、反応液を大量の水で希釈するか、あるいはアミン塩を製造する際にはアミン水溶液で中和することが好ましく、得られた懸濁液を濾過した後に水系の洗浄液で洗浄し、乾燥する。用いられるアミン水溶液のアミンを適宜選択することにより、スルホン酸のアミン塩を適宜設計通りに導入できる。また、スルホン酸アミドを製造する際には、上述の方法で得られた黄色顔料のスルホン化物に塩化チオニルを作用させ、スルホン酸クロリドとした後にアミンと混合することでスルホン化アミドを適宜設計どおりに導入できる。
【0054】
上記の方法でスルホン化を行う場合、反応液濃度、反応温度、反応時間などを調整することにより1分子当たりのスルホン酸基やスルホンアミド基の導入量を制御することができる。
【0055】
キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体としては、1種単独で又は2種類以上混合して用いることができる。例えば、スルホン酸基及び/又はスルホンアミド基の種類、置換位置又は置換数が異なるキノフタロン系顔料のスルホン化誘導体を2種以上混合して用いても良い。
【0056】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体の含有量は、前記キノフタロン系顔料100質量部に対して、0.1〜30質量部である。中でも、顔料の分散性及び分散安定性を向上し、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能な点から、前記キノフタロン系顔料100質量部に対して、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体が5〜20質量部であることが好ましく、10〜15質量部であることがより好ましい。
【0057】
<キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体>
本発明において用いられるキノフタロン系顔料イミドアルキル化誘導体は、下記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体である。
【0058】
【化7】

(化学式(1)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Xは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、又は−(C=O)−C−(C=O)−により置換されていても良い。nはイミドアルキル基の置換数を示し、1〜5の整数を表す。)
【0059】
キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体は、前記キノフタロン系顔料と類似の骨格を有するため、顔料分散液中にキノフタロン系顔料と共存させた場合、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体のキノフタロン部位が、キノフタロン系顔料の表面に吸着もしくは結合し、それにより顔料の表面がイミドアルキル基を有するようになることによって、分散工程における顔料同士の再凝集を抑制することができると考えられる。
【0060】
化学式(1)中、Rの炭素数1〜6のアルキレン基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基等が挙げられる。中でも、製造が容易な点から、アルキレン基としては、メチレン基であることが好ましい。
【0061】
化学式(1)中、Xは、アリーレンを表し、1,2−フェニレン、1,2−ナフチレン、2,3−ナフチレン、1,8−ナフチレン、及び2,2’−ビフェニレン等が挙げられる。化学式(1)中のXとしては、フタルイミドとなる1,2−フェニレン、及び、ナフタルイミドとなる1,8−ナフチレンが好ましい。
【0062】
化学式(1)中、Xのアリーレン基に置換されていても良いハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が好ましい。
化学式(1)中、Xのアリーレン基に置換されていても良いアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、及び、置換されたフェニルスルホニル基、例えば、p−トリルスルホニル基、p−クロロフェニルスルホニル基、p−ブロモフェニルスルホニル基等を挙げることができる。
化学式(1)中、Xのアリーレン基に置換されていても良いアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンジル基等を挙げることができる。
【0063】
化学式(1)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表し、特に限定されない。中でも前記キノフタロン系顔料として用いられる顔料とA〜Aが同一であることが、高い耐熱性が得られる点から好ましい。
本発明において用いられる、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体は、中でも、A〜Aが全て塩素原子である、C.I.ピグメントイエロー138のイミドアルキル化誘導体であることが好ましい。
【0064】
化学式(1)中、Rの炭素数1〜6のアルキレン基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基等が挙げられる。中でも、製造が容易な点から、アルキレン基としては、メチレン基であることが好ましい。
【0065】
化学式(1)中、Xは、アリーレンを表し、1,2−フェニレン、1,2−ナフチレン、2,3−ナフチレン、1,8−ナフチレン、及び2,2’−ビフェニレン等が挙げられる。化学式(1)中のXとしては、フタルイミドとなる1,2−フェニレン、及び、ナフタルイミドとなる1,8−ナフチレンが好ましい。
【0066】
化学式(1)中、Xのアリーレン基に置換されていても良いハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が好ましい。
化学式(1)中、Xのアリーレン基に置換されていても良いアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、及び、置換されたフェニルスルホニル基、例えば、p−トリルスルホニル基、p−クロロフェニルスルホニル基、p−ブロモフェニルスルホニル基等を挙げることができる。
化学式(1)中、Xのアリーレン基に置換されていても良いアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンジル基等を挙げることができる。
【0067】
本発明において用いられるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体は、中でも、下記化学式(1’)で表されるフタルイミドアルキル化誘導体であることが、効率的に顔料凝集体を抑制できる点から好ましく、中でも、C.I.ピグメントイエロー138のフタルイミドアルキル化誘導体であることが特に好ましい。
【0068】
【化8】

(化学式(1’)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。Rは、アルキレン基を示し、nはフタルイミドアルキル基の置換数を示し、1〜5の整数を表す。)
【0069】
化学式(1’)で表されるフタルイミドアルキル化誘導体において、アルキレン基Rは、上記化学式(1)と同様のものとすることができ、中でも、メチレン基が、効率的に顔料凝集体を抑制できる点から好ましい。
【0070】
また、上記特定のイミドアルキル基の置換数nは、1〜2であることが好ましく、中でも1であることが、効率的に顔料凝集体を抑制できる点から好ましい。
キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体の分子量が小さい方が、質量あたりの有効成分の割合が増えるため、効率的に顔料の凝集を抑制できる。
【0071】
キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体は、例えば、C.I.ピグメントイエロー138を、パラホルムアルデヒドとフタルイミド等の特定のイミドとを、三酸化硫黄や硫酸中で、反応させることにより製造することができる。なお、合成方法については、特表2004−501911号公報に詳細に記載され、これを参照することができる。キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体としては、1種単独で又は2種類以上混合して用いることができる。例えば、アルキレン基の種類、イミドアルキル基の種類、各種イミドアルキル基の置換位置又は置換数が異なるイミドアルキル化誘導体を2種以上混合して用いても良い。
【0072】
本発明において、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体は、顔料100質量部に対して、0.1〜30質量部含有される。中でも、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体は、顔料100質量部に対して、0.1〜10質量部、更に1〜5質量部含有されることが好ましい。このような含有量で用いられることにより、高輝度で且つ高コントラスト化の要求を達成しながら、カラーフィルタ工程における高温加熱工程後においても顔料凝集体が析出しない塗膜を作製可能になる。
【0073】
<顔料分散剤>
本発明において、顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。また、溶媒に少量溶解するような顔料誘導体を顔料分散剤として用いてもよい。
【0074】
高分子分散剤としては、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;アミノ基を有するポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体のアミノ基の(部分)酸変性物;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩類等を挙げることができる。
【0075】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物においては、高分子分散剤の中でも、顔料同士の凝集を抑制することが可能になり、分散性及び分散安定性が良好で、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能である点から、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。また、インクジェット方式に用いる場合、インクの吐出安定性が向上し、着色層の形状が良好となる点からも、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0076】
ここで、ポリエチレンイミン誘導体とは、6−ヒドロキシヘキサン酸と、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシデカン酸および4−ヒドロキシデカン酸から選択される少なくとも1の他のヒドロキシカルボン酸とから誘導しうる複数の繰り返し単位を各々が含有している複数のポリ(カルボニルアルキレンオキシ)鎖を有していて、6−ヒドロキシヘキサン酸から誘導しうる単位の他のヒドロキシカルボン酸(単数または複数)から誘導しうる単位に対する質量比が90:10〜10:90の範囲内であるポリエチレンイミン基、あるいはそれらの酸との塩を含む分散剤である。
好ましくは、6−ヒドロキシヘキサン酸から誘導しうる単位の、他のヒドロキシカルボン酸(単数または複数)から誘導しうる単位に対する質量比は、20:80から80:20の範囲内であり、特には20:80から50:50の範囲内である。
【0077】
上記ポリエチレンイミン(以下、「PEI」と称する場合がある)基は、分枝でも直鎖でもよく、典型的には少なくとも500、好ましくは少なくとも1,000、特には少なくとも10,000の質量平均分子量を有している。平均分子量は、好ましくは600,000より小さく、より好ましくは200,000より小さく、特には50,000より小さい。
上記ポリ(カルボニルアルキレンオキシ)鎖(本明細書の以下において「PCAO鎖」と称す)は、上記のヒドロキシカルボン酸(または、適当ならば対応するラクトン類)の重合によって誘導しうるポリエステル鎖であり、上記鎖は、6−ヒドロキシヘキサン酸と上記の他のヒドロキシカルボン酸の少なくとも1とから誘導しうる複数のカルボニルアルキレンオキシ(以下、「CAO」と称する場合がある)繰り返し単位を、ブロックまたはランダム配置中に含むコポリエステル鎖である。PCAO鎖は典型的には、平均で、2から100、好ましくは3から40、より好ましくは4から15の上記CAO基を含有しており、鎖終止末端基(chain−stopping terminal group)を、例えば、置換されていてもよいアルキルカルボニル、特には12以上の炭素原子を含有しているアルキルカルボニル基のようなオキシ末端に有していてもよい。
【0078】
PCAO鎖は、PEI基とPCAO鎖のヒドロキシカルボン酸との間に形成される共有アミドおよび/またはイオン性塩結合によってPEI基に付着されていてもよい。当該酸は、本明細書中以下において、PCAO酸と称する場合がある。そのようなアミド結合は、PCAO酸の末端カルボキシレート基とPEI中の第一級または第二級アミノ基との反応によって形成されてもよい一方、塩結合は、PCAO酸の末端カルボキシレート基とPEI中の置換アンモニウム基の正に帯電した窒素原子との間に形成される。
PCAO鎖のPEI基に対する質量比は、典型的には、2:1から30:1、好ましくは3:1から20:1、より好ましくは8:1から20:1、そして特には10:1から15:1の範囲内である。
【0079】
ポリエチレンイミン誘導体は、PCAO鎖に結合していないPEI基中の窒素原子が遊離アミノ基として存在しているようなポリアミンの形態、または上記窒素原子が、有機および/または無機酸から誘導しうる対イオンと会合した置換アンモニウム基として存在しているような塩の形態、または遊離アミノ基と置換アンモニウム基とを含有する中間体形態であってもよい。
ポリエチレンイミン誘導体は、PEIをPCAO酸(単数または複数)またはその前駆体と反応させることにより調製することができる。
【0080】
また、顔料分散剤として用いられるポリアリルアミン誘導体とは、ポリアリルアミンの側鎖のアミノ基をポリエステル、ポリアミド、ポリエステルとポリアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)のいずれかで修飾したものが挙げられる。具体的には、顔料の分散されるべき樹脂に対する相溶性の範囲が広く、且つ優れた顔料分散能を有する、下記一般式(I)で表されるポリアリルアミン誘導体が挙げられる。
【0081】
【化9】

(式(I)中、XおよびYは、それぞれ独立に水素、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基のいずれかを、Rは遊離のアミノ基、下記一般式(II)又は(III)で示される基を、nは2〜1,000の整数を表す。但しn個のR中、少なくとも1個は一般式(III)で示される基を表す。)
【0082】
【化10】

(式(II)及び式(III)中、Rは遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。)
【0083】
本発明に用いられるポリアリルアミン誘導体は、例えばポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる。
更に具体的には、上記ポリアリルアミン誘導体は、例えば、重合度2〜1,000のポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有する、下記一般式(IV)または(V)で表されるポリエステルおよび下記一般式(VI)または(VII)で表されるポリアミドの1種を単独でまたは2種以上を併用して原料として作製することができる。
【0084】
【化11】

(式(IV)中、Rは、炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基を、Rは、水素原子、炭素原子数2〜20で直鎖状の飽和若しくは不飽和アルキル基、又は、炭素原子数2〜20で直鎖状の飽和若しくは不飽和カルボキシアルキル基を表す。また、aは2〜100の整数を表す。)
【0085】
【化12】

(式(V)中、Rは、炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基、CまたはCH=CHを、Rは炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基、ポリアルキレングリコールから2つの水酸基を除いた残基を表す。R及びRは、炭素骨格中にエーテル結合を有していてもよい。Rは、水素原子、炭素原子数2〜20で直鎖状の飽和若しくは不飽和アルキル基、又は、炭素原子数2〜20で直鎖状の飽和若しくは不飽和カルボキシアルキル基を表す。また、bは2〜100の整数を表す。)
【0086】
【化13】

(式(VI)中、Rは、炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基を、Rは、水素原子、炭素原子数2〜20で直鎖状の飽和若しくは不飽和アルキル基、又は、炭素原子数2〜20で直鎖状の飽和若しくは不飽和カルボキシアルキル基を表す。また、cは2〜100の整数を表す。)
【0087】
【化14】

(式(VII)中、R10は、炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基、CまたはCH=CHを、R11は炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基を、R12は、水素原子、炭素原子数2〜20で直鎖状の飽和若しくは不飽和アルキル基、又は、炭素原子数2〜20で直鎖状の飽和若しくは不飽和カルボキシアルキル基を表す。また、dは2〜100の整数を表す。)
【0088】
なお、本発明に用いられるポリアリルアミン誘導体はポリアリルアミンに、一般式(IV)と一般式(V)の繰り返し成分がランダムに重合したポリエステル、一般式(VI)と一般式(VII)の繰り返し成分がランダムに重合したポリアミド、更に一般式(IV)並びに/又は(V)、及び一般式(VI)並びに/又は(VII)の繰り返し成分がランダムに重合したポリエステルアミドを反応させても製造することができる。このポリアリルアミン誘導体は、例えば、重合度2〜1,000のポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有する、下記一般式(IV)または(V)で表されるポリエステルおよび下記一般式(VI)または(VII)で表されるポリアミドの1種を単独でまたは2種以上を併用して原料として作製することができる。
【0089】
本発明に用いられるポリアリルアミン誘導体は、中でもRが遊離のカルボン酸を有するポリエステルからカルボキシル基を除いた残基であることが好ましい。また、上記ポリエステルは500〜20,000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
また、式(I)において、n個のR中、一般式(III)のポリアリルアミンのアミノ基に対する割合が60〜95%であることが好ましい。
【0090】
上記ポリアリルアミン誘導体の市販品としてはアジスパーPB821、PB822、PB881等(味の素ファインテクノ株式会社製)を、上記ポリエチレンイミン誘導体の市販品としてはSolsperse24000、Solsperse33500、(日本ルーブリゾール社製)等を用いることができる。
【0091】
<バインダ成分>
本発明においてバインダ成分は、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与し、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性バインダである。熱硬化性バインダとしては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する熱硬化性樹脂と、硬化剤の組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒が含まれていても良い。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分を含有するため、インクジェット方式に用いるのに適している。
以下、本発明のバインダ成分について具体的に説明する。
【0092】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有するものが通常用いられる。熱硬化性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、エチレン性不飽和結合等が挙げられる。熱硬化性官能基は、中でも、エポキシ基が好ましく用いられる。なお本発明において、熱硬化性樹脂とは、熱硬化処理前から樹脂であるものの他、熱硬化処理後に樹脂となるプレポリマーを含む。
【0093】
熱硬化性樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が好適に用いられる。1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロへキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化し得る公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0094】
熱硬化性樹脂として用いられる比較的分子量の高い重合体であるエポキシ化合物(以下、「バインダ性エポキシ化合物」ということがある)としては、少なくとも下記式(VIII)で表される構成単位及び下記式(IX)で表される構成単位から構成され且つグリシジル基を2個以上有する重合体を用いることができる。
【0095】
【化15】

(式(VIII)中、R13は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R14は炭素数1〜12の炭化水素基である。)
【0096】
【化16】

(式(IX)中、R15は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
【0097】
式(VIII)で表される構成単位をバインダ性エポキシ化合物の構成単位として用いることにより、本発明の樹脂組成物から形成される硬化塗膜に充分な硬度および透明性を付与することができる。式(VIII)において、R13として好ましいのは水素またはメチル基である。R14は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、直鎖脂肪族、脂環式、芳香族いずれの炭化水素基であってもよく、さらに付加的な構造、例えば二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。
【0098】
上記式(VIII)で表される構成単位を誘導するモノマーとして具体的には、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−シクロヘキセニルメチル(メタ)アクリレート、4−イソプロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレートシクロデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び1−パーフルオロアダマンチル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上であることが、高輝度の点から好ましい。
【0099】
式(IX)で表される構成単位は、重合体中にエポキシ基(エポキシの反応点)を導入するために用いられる。当該重合体を含有する樹脂組成物は保存安定性に優れており、保存中および吐出作業中に粘度上昇を生じ難いが、その理由の一つは式(IX)中のエポキシ基がグリシジル基だからであると推測される。
式(IX)で表される構成単位を誘導するモノマーとして具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
式(IX)において、R15として好ましいのは水素またはメチル基であることから式(IX)で表される構成単位を誘導するモノマーとして、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレートを例示することができ、特にグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
【0100】
上記重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、上記重合体は、カラーフィルタの各細部に必要とされる性能、例えば硬度や透明性等が確保できる限り、式(VIII)あるいは式(IX)以外の主鎖構成単位を含んでいてもよい。そのようなモノマーとして具体的には、アクリロニトリル、スチレン等を例示することができる。
【0101】
上記バインダ性エポキシ化合物中の式(IX)の構成単位の含有量は、20〜80質量%であることが好ましく、更には30〜60質量%であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であることにより、硬化膜の硬化性及び基板との密着性を優れたものとすることができるからである。
【0102】
また、上記バインダ性エポキシ化合物の質量平均分子量は、ポリスチレン換算質量平均分子量で表した時に1,000〜30,000であることが望ましく、更には3,000〜15,000であることが好ましい。上記バインダ性エポキシ化合物の分子量が3,000よりも小さすぎるとカラーフィルタの細部としての硬化層に要求される強度、耐溶剤性等の物性が不足し易いからである。又、上記バインダ性エポキシ化合物の質量平均分子量が30,000よりも大きすぎると粘度上昇が起こり易くなり、インクジェット方式で吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が悪くなるおそれや、長期保存の安定性が悪くなるおそれがある。なお上記バインダ性エポキシ化合物は、例えば特開2006−106503号公報の段落番号0148に記載されているような方法で合成することができる。
【0103】
熱硬化性樹脂としては、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(以下、「多官能エポキシ化合物」ということがある。)であって、上記バインダ性エポキシ化合物よりも分子量が小さいものを用いても良い。中でも、上述のように上記バインダ性エポキシ化合物と当該多官能エポキシ化合物を併用することが好ましい。この場合、多官能エポキシ化合物のポリスチレン換算の質量平均分子量は、これと組み合わせるバインダ性エポキシ化合物よりも小さいことを条件に、3,000〜20,000であることが好ましく、更に好ましくは4,000〜15,000である。上記多官能エポキシ化合物の分子量が3000よりも小さすぎるとカラーフィルタの細部としての硬化層に要求される強度、耐溶剤性等の物性が不足し易く、当該分子量が20000よりも大きすぎると粘度上昇が起こり易くなり、インクジェット方式で吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が悪くなるおそれや、長期保存の安定性が悪くなるおそれがあるからである。
【0104】
多官能エポキシ化合物の中でも、酸−エポキシ反応の架橋密度を上げるためには、一分子中にエポキシ基を4個以上有するエポキシ化合物を用いるのが好ましい。特に、インクジェット方式の吐出ヘッドからの吐出性を向上させるために前記バインダ性エポキシ化合物の質量平均分子量を10,000以下とした場合には、硬化層の硬度が低下し易いので、そのような4官能以上の多官能エポキシ化合物を樹脂組成物に配合して架橋密度を充分に上げるのが好ましい。
【0105】
多官能エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2個以上含有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
【0106】
より具体的には、商品名エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(ジャパンエポキシレジン社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名エピコート154(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(ジャパンエポキシレジン社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート1031S(ジャパンエポキシレジン社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(ジャパンエポキシレジン社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学社製)、商品名EHPE3150(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
【0107】
これらの多官能エポキシ化合物の中でも、商品名EHPE3150(ダイセル化学工業社製)などの脂環式エポキシ樹脂、及び、エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂が好ましく、中でも更に商品名EHPE3150(ダイセル化学工業社製)などの脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0108】
上記多官能エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分に対して、5質量%〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは10質量%〜15質量%で配合するのが好ましい。多官能エポキシ化合物の含有量が少な過ぎると、充分な熱硬化性が得られない場合が生じるからである。また、多官能エポキシ化合物の含有量が多過ぎると、保存安定性が悪化する恐れがあるからである。
【0109】
また、上記バインダ性エポキシ化合物と、必要に応じて配合される多官能エポキシ化合物の配合割合は、所望の高輝度と硬化膜の膜強度とすることができるものであれば良いが、上記熱硬化性樹脂組成物に含まれる多官能エポキシ化合物とバインダ性エポキシ化合物の質量比(多官能エポキシ化合物/バインダ性エポキシ化合物)が20/80〜70/30の範囲内であることが好ましく、なかでも、30/70〜60/40の範囲内であることが、インク粘度の安定性と高輝度と硬化膜の膜強度の点から好ましい。
【0110】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては多官能モノマーを添加しても良い。本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いられる多官能モノマーは特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0111】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0112】
また、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0113】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物において優れた硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、例えばジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが好適に用いられる。
【0114】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いられる上記多官能モノマーの含有量は、特に制限はないが、バインダ性エポキシ化合物に対して、通常5〜500質量%、更には20〜300質量%の範囲であることが好ましい。
【0115】
(硬化剤)
本発明に用いられるバインダ成分には、通常、前記熱硬化性樹脂と共に硬化剤が組み合わせて配合される。硬化剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いる。
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
また、本発明に用いられる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができ、好ましくは芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
【0116】
これら硬化剤は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。本発明に用いられる硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂として、エポキシ基を有する化合物を用いる場合には、エポキシ基を含有する成分(バインダ性エポキシ化合物と多官能エポキシ化合物の合計量)100質量部当たり、通常は1〜100質量部の範囲であり、好ましくは1〜50質量部である。硬化剤の配合量が1質量部未満であると、硬化が不充分となり、強靭な塗膜を形成することができないおそれがある。また、硬化剤の配合量が100質量部を超えると、塗膜の基板に対する密着性が劣るおそれがある。
【0117】
(触媒)
本発明のバインダ成分には、硬化層の硬度および耐熱性を向上させるために、酸−熱硬化性官能基間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性触媒を用いることができる。
熱潜在性触媒は、加熱されたとき、触媒活性を発揮し、硬化反応を促進し、硬化物に良好な物性を与えるものであり、必要により加えられるものである。この熱潜在性触媒は、60℃以上の温度で酸触媒活性を示すものが好ましく、このようなものとしてプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、オニウム化合物類等が挙げられ、前記特開平4−218561号公報に記載されているような各種の化合物を使用することができる。
熱潜在性触媒は、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物及び硬化剤の合計100質量部に対して、通常は0.01〜10.0質量部程度の割合で配合する。
【0118】
<溶媒>
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物には、顔料を分散させるためや、バインダ成分を溶解させるために溶媒が含まれる。溶媒としては、該樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶媒であればよく、特に限定されない。
本発明の樹脂組成物に用いる溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのセロソルブ系溶媒;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶媒;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶媒;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶媒;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶媒;N−ヘプタン、N−ヘキサン、N−オクタンなどの飽和炭化水素系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中では、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶媒;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒が好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(CHOCHCH(CH)OCOCH)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート及びシクロヘキサノンよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0119】
中でも、本発明の熱硬化性樹脂組成物をインクジェットインクとして用いる場合には、インクの急激な粘度上昇や目詰まりが発生せず、吐出の直進性や安定性に悪影響を及ぼさないで吐出性を向上させるために、沸点が180℃〜260℃、特に210℃〜260℃で且つ常温(特に18℃〜25℃の範囲)での蒸気圧が0.5mmHg(66.7Pa)以下、特に0.1mmHg(13.3Pa)以下の溶剤成分を主溶剤として用いることが好ましい。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチルなどを例示することができる。なお、「主溶剤」とは、溶剤全量のうち50質量%以上を占める溶剤のことである。主溶剤は、できるだけ高い配合割合で用いるのが望ましく、具体的には70質量%以上、好ましくは80質量%以上である。
【0120】
これらの主溶剤は乾燥が遅いためインクジェットでの間欠吐出性に優れる一方、塗膜形成時に乾燥が遅いことから、生産効率に問題がある場合があるので、生産効率を向上させる目的で、主溶剤に、より低沸点溶剤を混合しても良い。主溶剤と組み合わせて用いることが好ましい他の副溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールオリゴマーエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールオリゴマーエーテルエステル類;酢酸エチル、安息香酸プロピルのような脂肪族又は芳香族エステル類;炭酸ジエチルのようなジカルボン酸ジエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルのようなアルコキシカルボン酸エステル類;アセト酢酸エチルのようなケトカルボン酸エステル類;エタノール、イソプロパノール、フェノールのようなアルコール類又はフェノール類;ジエチルエーテル、アニソールのような脂肪族又は芳香族エーテル類;2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールのようなグリコールオリゴマー類;2−エトキシエチルアセテートのようなアルコキシアルコールエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類等が挙げられる。
【0121】
<任意添加成分>
(緑色顔料)
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、更に緑色顔料を組み合わせて緑色熱硬化性樹脂組成物として用いることができる。
緑色顔料は、特に限定されず、所望の色が得られるように適宜選択することができる。緑色顔料は、1種単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
また、所望の性能を達成するために、これらの緑色顔料の中から1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることが好ましい。
【0122】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を緑色熱硬化性樹脂組成物とする場合には、顔料(顔料誘導体を除く)中の緑色顔料の含有量は特に限定されない。中でも、所望の緑色を得ることができ、カラーフィルタの製造工程における高温加熱工程時に顔料凝集体の析出が抑制され、高輝度及び高コントラストな緑色着色層が形成可能な点から、顔料(顔料誘導体を除く)中の緑色顔料の含有量は10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることが更により好ましい。
【0123】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ各種添加剤を含むものであってもよい。
例えば、本発明の効果が損なわれない限り、更に他の顔料誘導体を含んでいても良い。このような顔料誘導体は、顔料骨格に官能基を付与し、様々な機能を顔料に付加する役割を持つ化合物である。顔料分散時に顔料誘導体を顔料に添加すると、顔料誘導体の顔料類似骨格が顔料表面に吸着もしくは結合し、それにより顔料の表面が極性を有するようになることによって、分散剤と顔料間の親和性が向上し、分散性、分散安定性を確保できると考えられる。
【0124】
その他、添加剤としては、例えば重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
これらの中で、用いることができるレベリング剤としては、例えばポリオキシアルキレン系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、特殊アクリル系重合体、ビニルエーテル系重合体等のビニル系重合体などが挙げられる。
さらに、界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0125】
<熱硬化性樹脂組成物における各成分の配合割合>
顔料誘導体を含む顔料の合計の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%の割合で配合することが好ましい。顔料が少なすぎると、熱硬化性樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0〜4.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがあり、また顔料が多すぎると、熱硬化性樹脂組成物を基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがあり、またその熱硬化性樹脂組成物中の顔料分散に使われる分散剤の量の比率も多くなるために現像性、耐熱性等の特性も不十分になるおそれがある。尚、本発明において固形分は、上述した溶媒以外のもの全てであり、溶媒中に溶解しているバインダ成分等も含まれる。
また、顔料分散剤の合計の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、1〜40質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、1質量%未満の場合には、顔料を均一に分散することが困難になる恐れがあり、40質量%を超える場合には、硬化性の低下を招く恐れがある。
熱硬化性樹脂を含むバインダ成分は、これらの合計量が、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して10〜80質量%、好ましくは20〜60質量%の割合で配合するのが好ましい。
また、溶媒の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではない。該溶媒を含む上記熱硬化性樹脂組成物の全量に対して、通常、65〜95質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも75〜88質量%の範囲内であることが好ましい。上記溶媒の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0126】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、後述する本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法によって好適に製造することができる。しかし、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、後述する本発明に係る製造方法によって製造されたものに限られるものではない。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物の構成を有するものは、いかなる製造方法によって製造されたものであっても、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる。
【0127】
2.熱硬化性樹脂組成物の製造方法
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の第一の製造方法は、
溶媒中、顔料分散剤の存在下で、少なくともキノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、下記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体とを分散させて顔料分散液を調製する工程(i)と、
前記顔料分散液と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合する工程(ii)とを有することを特徴とする。
【0128】
また、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の第二の製造方法は、
溶媒中、顔料分散剤の存在下で、少なくともキノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体とを分散させて顔料分散液を調製する工程(iii)と、
下記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を溶媒に溶解乃至分散させた顔料誘導体溶液を調製する工程(iv)と、
前記顔料分散液と、前記顔料誘導体溶液と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合する工程(v)とを有することを特徴とする。
【0129】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法によれば、カラーフィルタの製造工程における高温加熱工程時に顔料凝集体の析出が抑制され、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能な熱硬化性樹脂組成物が得られる。
以下、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法を、第一の製造方法、第二の製造方法の順に説明する。なお、本発明の製造方法に用いられる各成分及びその含有量は、前記熱硬化性樹脂組成物と同様のものとすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0130】
<熱硬化性樹脂組成物の第一の製造方法>
本発明に係る第一の製造方法は、まず、工程(i)により顔料分散液を調製し、次に、当該顔料分散液と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合することにより、熱硬化性樹脂組成物が得られる。
本発明の第一の製造方法によれば、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体の存在下で、キノフタロン系顔料を分散させることにより、顔料の凝集を防ぎ、顔料の分散性、分散安定性が向上する熱硬化性樹脂組成物が得られる。
【0131】
緑色熱硬化性樹脂組成物とする場合には、工程(i)において、更に緑色顔料を加えて分散させてもよい。
また、緑色熱硬化性樹脂組成物とする場合には、工程(i)で調整される顔料分散液とは別に、溶媒中、顔料分散剤の存在下で緑色顔料を分散させて顔料分散液を調製する工程(vi)を有していてもよい。
【0132】
工程(i)及び工程(vi)における、顔料分散方法は特に限定されず、公知の分散機を用いて分散することができる。分散機としては、2本のロール、3本のロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜2.00mmが好ましく、より好ましくは、0.05〜1.0mmである。
【0133】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.5〜5.0μmのメンブランフィルターで濾過することが好ましい。
本発明においては、公知の分散機を用いて分散させる分散時間は、適宜調整され、特に限定されない。
このようにして、顔料粒子の分散性に優れた顔料分散液が得られる。
【0134】
前記顔料分散液と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合する工程において、混合する方法は、特に限定されない。例えば、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分及び任意の添加成分を溶媒に溶解して、バインダ溶液を調製し、当該バインダ溶液と前記顔料分散液とを混合する方法が挙げられる。
【0135】
<熱硬化性樹脂組成物の第二の製造方法>
本発明に係る第二の製造方法は、まず、工程(iii)により顔料分散液を調製する。また、これとは別に、化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を溶媒中に溶解乃至分散させた顔料誘導体溶液を調製する。次に前記顔料分散液と、前記顔料誘導体溶液、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合することにより、熱硬化性樹脂組成物が得られる。
本発明の第二の製造方法においては、顔料凝集体の析出を制御可能な化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を、顔料の分散時には添加せず、顔料分散液とは独立に熱硬化性樹脂組成物に添加することにより、顔料の分散性、分散安定性がより向上し、カラーフィルタの製造工程における高温加熱工程時に顔料凝集体の析出が抑制され、よりコントラストが向上した熱硬化性樹脂組成物が得られる。
【0136】
上記第二の製造方法により、顔料分散性がより向上し、コントラストがより向上する効果を発揮する作用としては、以下のように推定される。
顔料のイミドアルキル化誘導体は、イミド部分の極性が弱いため、240℃もの高温が塗膜にかけられても、スルホ基のように顔料分散剤との強い相互作用を受け難く、むしろ相対的に顔料表面との吸着力の方が強く、顔料表面を安定化させるため、微細化された顔料同士が凝集することなく、安定した塗膜を形成できるのではないかと推定される。
しかしながら、顔料のイミドアルキル化誘導体は、イミド部分の極性が弱いため、イミドアルキル化誘導体で処理された顔料を使用したり、顔料を分散する時にイミドアルキル化誘導体を添加すると、特定のイミドアルキル基によって顔料表面の極性が弱まるため、むしろ顔料分散剤と吸着し難くなり、顔料の分散性や顔料分散液の安定性が低下してしまうと推定される。
【0137】
本発明の第二の製造方法によれば、顔料分散液を調製するまでの工程においては、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体のみの存在下でキノフタロン系顔料を分散させ、顔料のイミドアルキル化誘導体を添加しないので、顔料分散時に顔料表面の極性が弱まることなく、顔料の分散性や安定性をより向上することができる。
次いで、微細化した顔料分散液を調製後に、顔料のイミドアルキル化誘導体を添加することにより、高温加熱工程において熱運動により顔料分散剤の吸着が弱まった際には、相対的に顔料表面との吸着力が強い顔料のイミドアルキル化誘導体が、代わりに顔料表面を安定化させるのではないかと推定される。その結果、高温時も、顔料のイミドアルキル化誘導体が微細に分散された顔料表面を安定化させたまま維持することが可能となるため、高コントラスト化の要求を達成しながら、カラーフィルタ工程における高温加熱工程後においても顔料凝集体が析出しない塗膜の作製が可能となるものと推定される。
【0138】
緑色熱硬化性樹脂組成物とする場合には、工程(iii)において、更に緑色顔料を加えて分散させてもよい。
また、緑色熱硬化性樹脂組成物とする場合には、工程(iii)で調整される顔料分散液とは別に、溶媒中、顔料分散剤の存在下で緑色顔料を分散させて顔料分散液を調製する工程(vi)を有していてもよい。
【0139】
工程(iii)及び工程(vi)のにおける、顔料分散方法は前記工程(i)及び工程(vi)と同様とすることができる。
【0140】
前記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を溶媒に溶解乃至分散させた顔料分散体溶液を調製する方法は、特に限定されない。分散させる場合には、前記顔料分散剤を用いて、前記工程(i)及び(vi)と同様に、前記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を分散させればよい。
また、前記顔料分散液と、前記顔料誘導体溶液と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合する工程において、混合する方法は、特に限定されない。
【0141】
次に、本発明に係るカラーフィルタ及びカラーフィルタの製造方法について説明する。
3.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明の熱硬化性樹脂組成物又は前記本発明の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物(以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物等という場合がある)を硬化させて形成されてなる着色層であることを特徴とする。
このような本発明のカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層(硬化層)3とを有している。
【0142】
<着色層>
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層(硬化層)は、前述した本発明の熱硬化性樹脂組成物等を用いて硬化させて形成された着色層が含まれていれば、特に限定されないが、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、3色以上の着色層を含む着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、熱硬化性樹脂組成物等の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0143】
<遮光部>
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。この遮光部としては、例えば、黒色顔料をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものや、クロム、酸化クロム等の金属薄膜等が挙げられる。この金属薄膜は、CrO膜(xは任意の数)及びCr膜が2層積層されたものであってもよく、また、より反射率を低減させたCrO膜(xは任意の数)、CrN膜(yは任意の数)及びCr膜が3層積層されたものであってもよい。
当該遮光部が黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものである場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、遮光部用カラーフィルタ用黒色樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0144】
上記の場合であって、遮光部の形成方法として印刷法やインクジェット法を用いる場合、バインダ樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0145】
また、上記の場合であって、遮光部の形成方法としてフォトリソグラフィー法を用いる場合、バインダ樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。この場合、黒色着色剤及び感光性樹脂を含有する遮光部用カラーフィルタ用黒色樹脂組成物には、光重合開始剤を添加してもよく、さらには必要に応じて増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0146】
一方、遮光部が金属薄膜である場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィー法、マスクを用いた蒸着法、印刷法等を挙げることができる。
【0147】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2〜0.4μm程度で設定され、黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5〜3.0μm程度で設定される。
【0148】
<透明基板>
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0149】
本発明に係るカラーフィルタは、後述する本発明に係るカラーフィルタの製造方法によって好適に製造することができる。しかし、本発明に係るカラーフィルタは、後述する本発明に係る製造方法によって製造されたものに限られるものではない。すなわち、本発明のカラーフィルタの構成を有するものは、いかなる製造方法によって製造されたものであっても、本発明のカラーフィルタに含まれる。
【0150】
4.カラーフィルタの製造方法
本発明に係るカラーフィルタの製造方法は、透明基板上の所定領域に、前記本発明の熱硬化性樹脂組成物又は、前記本発明の熱硬化性樹脂組成物の製造方法で得られた熱硬化性樹脂組成物をインクジェット方式によって選択的に付着させて、インキ層を形成する工程と、当該インキ層を加熱することにより硬化させて、所定パターンの硬化層を形成する工程を有する。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法を説明する。なお、着色層、透明基板、及び遮光部は、前記本発明のカラーフィルタと同様のものすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0151】
まず、前記本発明の熱硬化性樹脂組成物等を含み、その他必要に応じて各色用の顔料がそれぞれ配合されたカラーフィルタ用樹脂組成物を用意する。そして、透明基板1の表面に、遮光部2のパターンにより画成された各色の着色層形成領域に、対応する色のカラーフィルタ用樹脂組成物をインクジェット方式によって選択的に付着させてインキ層を形成する。このインキの吹き付け工程において、カラーフィルタ用樹脂組成物は、インクジェットヘッドの先端部で粘度増大を起こし難く、良好な吐出性を維持し続ける必要がある。各色のカラーフィルタ用樹脂組成物を、複数のヘッドを使って同時に基板上に吹き付けることもできるので、印刷等の方法で各色ごとに着色層を形成する場合と比べて作業効率を向上させることができる。
次に、各色のインキ層を乾燥し必要に応じてプリベークした後、適宜加熱することにより硬化させる。インキ層を適宜加熱すると、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる硬化性樹脂の架橋要素が架橋反応を起こし、インク層が硬化して着色層3が形成される。
【0152】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
5.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、前記本発明のカラーフィルタ又は前記本発明のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタ(以下、本発明のカラーフィルタ等という場合がある)と、対向基板と、前記カラーフィルタ等と前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0153】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0154】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルタ及び対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタ及び対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0155】
次に、本発明の有機発光表示装置について説明する。
6.有機発光表示装置
本発明の有機発光表示装置は、前述した本発明のカラーフィルタ等と、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。
カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0156】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0157】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び表中において、以下の略号を用いる場合がある。
・P.G.58:C.I.ピグメントグリーン58
・P.Y.138:C.I.ピグメントイエロー138
・P.Y.138−SO3H:C.I.ピグメントイエロー138スルホン化誘導体
・P.Y.138−PIM:C.I.ピグメントイエロー138フタルイミドメチル化誘導体
・P.Y.150:C.I.ピグメントイエロー150
・PB881:「PB881(商品名)」(味の素ファインテクノ(株)製)
・BDGAC:ブチルジグリコールアセテート(ダイセル化学工業(株)製)
・GMA:グリシジルメタクリレート
・CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
・EEP:3−エトキシプロピオン酸エチル
【0158】
(1)顔料分散液の調製
下記第1表の配合量に従って各顔料、顔料分散剤、顔料誘導体、溶媒、及び2.0mmジルコニアビーズ30質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)社製)にて1時間振とうし、次いで前記ジルコニアビーズを取り除いてから粒径0.1mmのジルコニアビーズ60質量部をマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて黄色顔料分散液1は20時間、黄色顔料分散液2は30時間、黄色顔料分散液3及び4は60時間、緑色顔料分散液は5時間分散を行い、黄色顔料分散液1〜4及び緑色顔料分散液をそれぞれ調製した。
【0159】
【表1】

【0160】
(2)顔料誘導体分散液の調製
第2表の配合量に従って、顔料誘導体、顔料分散剤、溶媒、及び2.0mmジルコニアビーズ30質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)社製)にて1時間振とうし、次いで前記ジルコニアビーズを取り除いてから粒径0.1mmのジルコニアビーズ60質量部をマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、顔料誘導体分散液を調製した。
【0161】
【表2】

【0162】
(3)熱硬化性透明樹脂組成物の調製
バインダ性エポキシ化合物、多官能エポキシ化合物、多官能モノマー、硬化剤及び溶媒を第3表に示される配合量で均一になるまで混合、溶解して熱硬化性透明樹脂組成物を調製した。
なお、バインダ性エポキシ化合物としては、GMA/CHMA共重合体(重量平均分子量:8000、有効成分含有量:40%、溶媒:BDGAC)を、多官能エポキシ化合物としては、「EHPE3150(商品名)」(ダイセル化学工業(株)社製)を、多官能モノマーとしては「アロニックスM−403(商品名)(東亜合成(株)社製)を、硬化剤としては「リカシッドMTA−15」(新日本理科(株)社製)をそれぞれ用いた。
【0163】
【表3】

【0164】
(4)熱硬化性樹脂組成物の調製(実施例1〜3)
第4表の配合量に従って、緑色顔料分散液と、各黄色顔料分散液、黄色顔料誘導体分散液、熱硬化性透明樹脂組成物、レベリング剤、溶媒を均一になるまで混合し、さらにメッシュサイズ0.2μmである加圧ろ過装置によりろ過することにより、実施例1〜3の熱硬化性樹脂組成物1〜3を得た。
なお、レベリング剤としてはLHP−90:「ディスパロン LHP−90(商品名)」(楠本化成(株)社製)を用いた。
【0165】
【表4】

【0166】
(5)熱硬化性樹脂組成物の調製(比較例1〜3)
第5表の配合量に従って、緑色顔料分散液と、各黄色顔料分散液、黄色顔料誘導体分散液、熱硬化性透明樹脂組成物、レベリング剤、溶媒を均一になるまで混合し、さらにメッシュサイズ0.2μmである加圧ろ過装置によりろ過することにより、比較例1〜3の熱硬化性樹脂組成物4〜6を得た。
【0167】
【表5】

【0168】
(6)評価
実施例1〜3及び比較例1〜3の熱硬化性樹脂組成物について、下記の方法により、評価用基板を作製し色度座標・コントラストの光学特性を測定した。熱硬化性樹脂組成物の評価結果を第6表に示す。
【0169】
<評価用基板作製方法>
上記熱硬化性樹脂組成物を、厚み0.7mmで10mm×10mmのガラス基板(日本電気硝子(株)社製、「OA−10GF」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、90℃のホットプレート上で5分間プレベイクを行った。その後200℃のホットプレート上で5分間のポストベイクを行い、更にその後、240℃のクリーンオーブン内で40分間のポストベイクを行い、カラーフィルタ層を形成した。
【0170】
<光学特性(色度座標・コントラスト)評価方法>
上記、基板作製工程においてプレベイク後と240℃のポストベイク後の基板についてオリンパス(株)社製 顕微分光測定装置OSP200を用いて色度座標(Y、x、y)を、更に壺坂電機(株)社製 コントラスト測定装置 CT−1を用いてコントラストを測定した。またプレベイク後のコントラストをCR、240℃のポストベイク後のコントラストをCR’と略記しCR’/CR×100=CR保持率としてポストベイクによるコントラスト低下の抑制効果を評価した。結果を第6表に示す。なお、第6表のY(輝度)は、240℃のポストベイク後の測定値である。
【0171】
【表6】

【0172】
(7)結果のまとめ
分散時間が30時間の黄色顔料分散液2を用いた比較例1では、顔料の微細化が十分でないため、コントラストの値が低かった。一方、分散時間が60時間の黄色顔料分散液3を用いた比較例2では、ポストベイク前のコントラストは向上したものの、ポストベイクにおいて、コントラストが大きく低下し、コントラスト保持率が低かった。
キノフタロン系顔料とキノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を有する実施例1及び2では、比較例2と同様に分散時間が60時間の黄色顔料分散液3、4を用いた場合であっても、ポストベイク後のコントラストはほとんど低下せず、コントラスト保持率が高いことが分かった。また、実施例1及び2は、比較例1及び2と比べ、輝度も向上した。
熱硬化性樹脂組成物は、実施例1のように、キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体とを含む顔料分散液と、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体溶液を混合して調製することもでき、実施例2のように、キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を分散させて調製することもできることが分かった。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、実施例3のように緑色熱硬化性樹脂組成物とした場合であっても、ポストベイク時にコントラストが低下することなく、従来のC.I.ピグメントイエロー150を用いた比較例3の緑色熱硬化性樹脂組成物と比べて高い輝度及びコントラスト値を示した。
【符号の説明】
【0173】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層(硬化層)
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、下記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体と、顔料分散剤と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分と、溶媒とを含有し、前記キノフタロン系顔料100質量部に対し、前記キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体が0.1〜30質量部、且つ、前記キノフタロン系顔料100質量部に対し、前記キノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体が0.1〜30質量部含有する、熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(化学式(1)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Xは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、又は−(C=O)−C−(C=O)−により置換されていても良い。nはイミドアルキル基の置換数を示し、1〜5の整数を表す。)
【請求項2】
更に、緑色顔料を含有する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記キノフタロン系顔料が、C.I.ピグメントイエロー138である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記緑色顔料が、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36及びC.I.ピグメントグリーン58よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2又は3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記顔料分散剤が、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアリルアミン誘導体が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】

(式中、XおよびYは、それぞれ独立に水素、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基のいずれかを、Rは遊離のアミノ基、下記一般式(II)又は(III)で示される基を、nは2〜1,000の整数を表す。但しn個のR中、少なくとも1個は一般式(III)で示される基を表す。)
【化3】

(式(II)及び式(III)中、Rは遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。)
【請求項7】
溶媒中、顔料分散剤の存在下で、少なくともキノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体と、下記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体とを分散させて顔料分散液を調製する工程(i)と、
前記顔料分散液と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合する工程(ii)とを有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【化4】

(化学式(1)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Xは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、又は−(C=O)−C−(C=O)−により置換されていても良い。nはイミドアルキル基の置換数を示し、1〜5の整数を表す。)
【請求項8】
溶媒中、顔料分散剤の存在下で、少なくともキノフタロン系顔料を含む黄色顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン化誘導体とを分散させて顔料分散液を調製する工程(iii)と、
下記化学式(1)で表されるキノフタロン系顔料のイミドアルキル化誘導体を溶媒に溶解乃至分散させた顔料誘導体溶液を調製する工程(iv)と、
前記顔料分散液と、前記顔料誘導体溶液と、熱硬化性樹脂を含むバインダ成分とを混合する工程(v)とを有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【化5】

(化学式(1)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Xは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、又は−(C=O)−C−(C=O)−により置換されていても良い。nはイミドアルキル基の置換数を示し、1〜5の整数を表す。)
【請求項9】
前記工程(i)又は工程(iii)において、更に、緑色顔料を分散させる、請求項7又は8に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
溶媒中、顔料分散剤の存在下で緑色顔料を分散させて顔料分散液を調製する工程(vi)を有し、前記工程(ii)又は(v)において、更に、前記工程(vi)で得られた顔料分散液を混合する、請求項7又は8に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記キノフタロン系顔料が、C.I.ピグメントイエロー138である、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記緑色顔料が、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36及びC.I.ピグメントグリーン58よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記顔料分散剤が、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上である、請求項7乃至13のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記ポリアリルアミン誘導体が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、請求項7乃至14のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【化6】

(式中、XおよびYは、それぞれ独立に水素、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基のいずれかを、Rは遊離のアミノ基、下記一般式(II)又は(III)で示される基を、nは2〜1,000の整数を表す。但しn個のR中、少なくとも1個は一般式(III)で示される基を表す。)
【化7】

(式(II)及び式(III)中、Rは遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。)
【請求項15】
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物又は請求項7乃至14のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法で得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された、カラーフィルタ。
【請求項16】
透明基板上の所定領域に、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物又は請求項7乃至14のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法で得られた熱硬化性樹脂組成物をインクジェット方式によって選択的に付着させて、インキ層を形成する工程と、
当該インキ層を加熱することにより硬化させて、所定パターンの硬化層を形成する工程を有する、カラーフィルタの製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載のカラーフィルタ又は請求項16に記載のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項18】
請求項15に記載のカラーフィルタ又は請求項16に記載のカラーフィルタの製造方法により得られたカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする有機発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246469(P2012−246469A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121946(P2011−121946)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】