説明

熱膨張した微小球およびその製造方法

【課題】充填性の良い熱膨張した微小球とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を、膨張開始温度以上に加熱して膨張させる製造方法で得られる熱膨張した微小球であって、その空隙率が0.70以下である熱膨張した微小球。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張した微小球およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を外殻とし、その内部に発泡剤が封入された構造を有する熱膨張性微小球は、一般に熱膨張性マイクロカプセルと呼ばれている。熱可塑性樹脂としては、通常、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体等が用いられている。また、発泡剤としてはイソブタンやイソペンタン等の炭化水素が主に使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような熱膨張性マイクロカプセルを加熱膨張させることによって、軽量な中空微粒子(熱膨張した微小球)が得られる。熱膨張性マイクロカプセルを膨張させる方法として、たとえば、熱膨張性マイクロカプセルの分散液を加熱空気中に噴霧して膨張と乾燥を同時に行う方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、使用した分散機の先端に凝集体が生成する可能性が高く問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、本発明者らは、中空微粒子の製造方法として、乾式で、熱膨張性マイクロカプセルを熱風気流に接触膨張させ、原料である熱膨張性マイクロカプセルの残存量を低くし、凝集微小球の生成をできるだけ抑制することができる方法を開発した(特許文献3参照)。
【特許文献1】米国特許第3615972号明細書
【特許文献2】特公昭59−53290号公報
【特許文献3】国際公開第2005/049698号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この方法で得られる熱膨張した微小球(中空微粒子)の物性については、かなり満足できるものの、さらに物性の向上が求められている。たとえば、中空微粒子は、一般に重量の割に非常に嵩高い(つまり、充填性が低く、空隙率が高い)。このため、その保管効率や輸送効率が極端に低い等の問題がある。
また、熱膨張した微小球を他の材料と混合して中空微小球組成物を調製する場合、攪拌混合中に熱膨張した微小球が外力(混合応力)を受けて、その破壊やつぶれが発生することがある。それゆえ、熱膨張した微小球については、混合応力に対する高い耐久性が(つまり、繰り返し圧縮耐久性)が求められる。熱膨張時に過加熱状態になることによって生じる凝集微小球(過発泡微小球)は、一般に粒子径に対する外殻シェルの厚みが薄くなる。このために、過発泡微小球では繰り返し圧縮耐久性が低いという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、充填性の良い熱膨張した微小球とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、充填性は一定体積に充填される中空微粒子の個数が多くなれば改善されることは言うまでもないが、そのためには、本発明者ら既に開発した特許文献3記載の乾式での中空微粒子の製造方法をさらに改良することが近道と考えた。そして、この製造方法の改良を検討する中で、熱風気流の温度は一様ではなく、装置に由来する問題として、その温度測定箇所によっては約50℃という非常に大きな温度差(熱風気流中の各点における温度のばらつき)が生じることがあることが判明した。そして、この温度のばらつきを小さくする各種の工夫によって、予想外にも、充填性が良く(すなわち、空隙率が低く)、また、繰り返し圧縮耐久性が高い熱膨張した微小球が得られるという知見を新たに見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる熱膨張した微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を、膨張開始温度以上に加熱して膨張させる製造方法で得られる熱膨張した微小球であって、その空隙率が0.70以下である。
【0009】
また、本発明にかかる熱膨張した微小球の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風気流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程と、前記気体流体を前記分散ノズルの下流部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風気流中に分散させる工程と、分散した熱膨張性微小球を、気流中における温度差が40℃以下である前記熱風気流に接触させ、前記熱風気流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程とを含む。
【0010】
本発明にかかる別の熱膨張した微小球の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風気流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程と、前記気体流体を前記分散ノズルの下流部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風気流中に分散させる工程と、分散した熱膨張性微小球を、前記熱風気流の上流に設置された乱流発生部材により発生した乱流を含む熱風気流中で、膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱膨張した微小球は良好な充填性を有する。また、本発明の熱膨張した微小球は、凝集微小球や真比重の大きな微小球の含有率が極めて低く、その嵩比重のばらつきが小さく、流動性の点でも優れている。
【0012】
本発明の熱膨張した微小球の製造方法では、分散した熱膨張性微小球を、気流中における温度差が40℃以下である前記熱風気流に接触させ、および/または熱風気流の上流に設置された乱流発生部材により発生した乱流を含む熱風気流に接触させるため、熱膨張性微小球をほぼ均一な温度条件で加熱膨張させることができる。したがって、得られる熱膨張した微小球は、良好な充填性を有する。また、得られる熱膨張した微小球は、過加熱状態になることによって生じる凝集微小球(過発泡微小球)や加熱不足になることによって生じる真比重の大きな微小球の含有率が極めて低く、その嵩比重のばらつきが小さく、流動性、繰り返し圧縮耐久性の点でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】製造装置の発泡工程部の概略図(a)、熱風気流における所定面内温度を説明するための平面図(b)である。
【図2】本発明で用いる製造装置の発泡工程部の例を示す概略図である。
【図3】本発明で用いる製造装置の発泡工程部の別の例を示す概略図である。
【図4】本発明で用いる製造装置の発泡工程部のさらに別の例を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
[熱膨張性微小球]
本発明にかかる製造方法で用いる熱膨張性微小球は、その平均粒子径が1〜100μmであり、熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成されており、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示す。
【0015】
発泡剤は、熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質であれば特に限定はなく、たとえば、炭素数1〜12の炭化水素及びそれらのハロゲン化物;含弗素化合物;テトラアルキルシラン;アゾジカルボンアミド等の加熱により熱分解してガスを生成する化合物等を挙げることができる。これらの発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0016】
炭素数1〜12の炭化水素としては、たとえば、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、ブタン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロオクタン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル等の炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
【0017】
炭素数1〜12の炭化水素のハロゲン化物としては、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらのハロゲン化物は、上述した炭化水素のハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等)であることが好ましい。
【0018】
含弗素化合物は、分子内に弗素原子を含む化合物であれば特に限定されないが、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まず、炭素数2〜10の化合物が好ましい。含弗素化合物としては、たとえば、C327OCF2H、C3HF6OCH3、C2HF4OC223、C223OC223、C4HF8OCH3、C325OC232、C3HF6OC223、C334OCHF2、C3HF6OC325、C436OCHF2、C334OC2HF4、C3HF6OC334、C37OCH3、C49OCH3、C49OC25、C715OC25等のハイドロフルオロエーテルが挙げられる。ハイドロフルオロエーテルの(フルオロ)アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0019】
発泡剤は、熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質であればよく、たとえば、その全量が含弗素化合物で構成されていてもよいが、含弗素化合物とともに、熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する、含弗素化合物以外の物質を併用してもよい。このような物質については、特に限定されるものではなく、たとえば、上述した発泡剤として例示したものの中から選択して用いることができる。含弗素化合物以外の物質は、熱膨張性微小球の熱膨張温度域に応じて、適宜選択することができる。
【0020】
発泡剤が含弗素化合物を含む場合、含弗素化合物の重量割合が、発泡剤全体の50重量%超であることが好ましく、80重量%超であることがさらに好ましく、95重量%超であることが特に好ましい。発泡剤における含弗素化合物の重量割合が高いほど、含弗素化合物の物性が熱膨張性微小球に反映され、熱膨張性微小球に対して難燃性や不燃性等の物性を付与することができる。
【0021】
熱膨張性微小球は、たとえば、ラジカル重合性単量体を必須成分として含む単量体混合物を重合して得られる熱可塑性樹脂から構成され、単量体混合物に重合開始剤を適宜配合して重合することにより、熱膨張性微小球の外殻を形成することができる。
【0022】
ラジカル重合性単量体としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド等のマレイミド系単量体等を挙げることができる。カルボキシル基含有単量体については、一部または全部のカルボキシル基が重合時に中和されていてもよい。
【0023】
これらのラジカル重合性単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、単量体混合物が、ニトリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、スチレン系単量体、酢酸ビニルおよび塩化ビニリデンから選ばれた少なくとも1種のラジカル重合性単量体を含む単量体混合物であると好ましい。特に、単量体混合物が、ニトリル系単量体を必須成分として含む単量体混合物であると好ましい。ニトリル系単量体の重量割合は、単量体混合物に対して、好ましくは20重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上であり、特に好ましくは70重量%以上である。さらに、耐熱性を考慮すると、ニトリル系単量体の重量割合は、単量体混合物に対して、好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
【0024】
また、単量体混合物が、ニトリル系単量体とともにカルボキシル基含有単量体を必須成分として含む単量体混合物であると、耐熱性を付与できるとともに、熱膨張性微小球を膨張させることによって得られる熱膨張した微小球について、再膨張できる余力を有するように製造することができ、かつ90℃以上(好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上)の温度で、再膨張を開始させるように設定することができるため、さらに好ましい。ニトリル系単量体の重量割合は、内包された発泡剤の内包保持率及び発泡性、さらには熱膨張した微小球の再膨張開始温度を調節すること等を考慮すると、単量体混合物に対して、好ましくは20〜80重量%であり、さらに好ましくは20〜60重量%であり、特に好ましくは20〜50重量%であり、最も好ましくは20〜40重量%である。また、カルボキシル基含有単量体の重量割合は、熱膨張した微小球の再膨張開始温度を調節すること、さらには内包された発泡剤の内包保持率及び発泡性等を考慮すると、単量体混合物に対して、好ましくは20〜80重量%であり、さらに好ましくは40〜80重量%であり、特に好ましくは50〜80重量%であり、最も好ましくは60〜80重量%である。
【0025】
単量体混合物は、上記ラジカル重合性単量体以外に、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体(架橋剤)を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合させることにより、本製造方法で得られた熱膨張した微小球に含まれる凝集微小球の含有率が小さくなり、熱膨張後の内包された発泡剤の保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
【0026】
なお、本発明において、熱膨張後の発泡剤の内包保持率(%)は、膨張する前の熱膨張性微小球に内包された発泡剤の内包率をG1とし、熱膨張させて得られる熱膨張した微小球に内包された発泡剤の内包率をG2とすると、G2/G1×100で定義される。
【0027】
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記で、「PEG#○○○ジ(メタ)アクリレート」と表記されている一連の化合物は、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートで、そのポリエチレングリコール部分の平均分子量が○○○であることを意味する。
【0029】
架橋剤の重量割合については、特に限定はないが、架橋の程度、外殻に内包された発泡剤の内包保持率、耐熱性及び熱膨張性を考慮すると、単量体混合物に対して、好ましくは0.01〜5重量%であり、さらに好ましくは0.05〜3重量%である。
【0030】
重合開始剤については、特に限定はなく、公知の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、たとえば、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物;2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができる。重合開始剤は、ラジカル重合性単量体に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
【0031】
重合開始剤の重量割合については、特に限定はないが、膨張性能、内包保持性等を考慮すると、単量体混合物に対して、好ましくは0.2〜7.0重量%であり、さらに好ましくは0.3〜5.0重量%、もっとも好ましくは0.4〜3.0重量%である。
【0032】
熱膨張性微小球は、従来公知の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法で使用される種々の手法を用いて製造することができる。熱膨張性微小球の製造方法としては、ラジカル重合性単量体を必須成分とし任意に架橋剤を含む単量体混合物を、発泡剤および重合開始剤と混合し、得られた混合物を適当な分散安定剤等を含む水系懸濁液中で懸濁重合させる方法等を挙げることができる。
【0033】
水系における分散安定剤としては、コロイダルシリカ、コロイダル炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、蓚酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、アルミナゾル等が挙げられる。分散安定剤は、単量体混合物に対して0.1〜20重量%の割合で使用されるのが好ましい。その他に、分散安定補助剤として、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等の高分子タイプの分散安定補助剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の陽イオン界面活性剤、アルキル硫酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン等の両イオン性界面活性剤等の各種乳化剤を用いてもよい。分散安定補助剤は、単量体混合物に対して0.05〜2重量%の割合で使用されるのが好ましい。
【0034】
分散安定剤を含有する水系懸濁液は、分散安定剤及び分散安定補助剤等を水(たとえば、イオン交換水)に配合して調製する。重合時の水系懸濁液のpHは、使用する分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。また、水系懸濁液中に水溶性還元剤を添加してもよく、重合中の凝集微小球の生成が抑制される。水溶性還元剤としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩や、塩化第一スズ、塩化第二スズ、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、水溶性アスコルビン酸類等が挙げられる。これらの中でも、水中での安定性の面から亜硝酸アルカリ金属塩が好ましい。その添加量は、単量体混合物に対して好ましくは0.0001〜1重量%、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量%である。
【0035】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは45〜90℃、特に好ましくは50〜85℃の範囲で制御される。重合初期圧力についてはゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPa、特に好ましくは0.2〜2.0MPaの範囲である。
【0036】
得られた熱膨張性微小球において、発泡性能が良好で、熱膨張性微小球の外殻である熱可塑性樹脂の厚みが内包された発泡剤の内包保持率を確保することができるという観点から、発泡剤の重量割合は熱膨張性微小球全体の2〜85重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは7〜50重量%となるように調整される。特に、発泡剤が含弗素化合物を含む場合、好ましくは10〜60重量%であり、さらに好ましくは15〜50重量%である。
【0037】
熱膨張性微小球の平均粒子径については、用途に応じて自由に設計することができるために特に限定されないが、通常1〜100μm、好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは5〜60μmである。
【0038】
また、熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定されないが、好ましくは30%以下、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)および(2)で算出される。
【0039】
【数1】

(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xi はi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0040】
熱膨張性微小球は、外殻および発泡剤以外の成分によって付加や修飾等されたものであってもよい。たとえば、熱膨張性微小球においてその外殻の外表面に微粒子充填剤を付着させて用いることが、使用時における分散性の向上及び流動性改善の観点から、好ましい。
【0041】
微粒子充填剤は、有機系及び無機系充填剤のいずれでもよく、その種類及び量は、使用目的に応じて適宜選定される。
【0042】
有機系充填剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム等の金属セッケン類;ポリエチレンワックス、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、硬化ひまし油等の合成ワックス類;ポリアクリルアミド、ポリイミド、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂粉体等が挙げられる。
【0043】
無機系充填剤としては、層状構造を有するもの、たとえば、タルク、マイカ、ベントナイト、セリサイト、カーボンブラック、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、弗化黒鉛、弗化カルシウム、窒化ホウ素等;その他、シリカ、アルミナ、雲母、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、セラミックビーズ、ガラスビーズ、水晶ビーズ等が挙げられる。
これらの微粒子充填剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0044】
微粒子充填剤の平均粒子径は、付着前の熱膨張性微小球の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。ここで、平均粒子径とは、一次粒子における平均粒子径を意味する。
【0045】
熱膨張性微小球への微粒子充填剤の付着量は、特に限定はないが、微粒子充填剤による機能を十分に発揮でき、熱膨張性微小球の真比重の大きさ等を考慮すると、付着前の熱膨張性微小球に対して好ましくは0.1〜95重量%、さらに好ましくは0.5〜60重量%、特に好ましくは5〜50重量%、最も好ましくは8〜30重量%である。
【0046】
熱膨張性微小球の外表面への微粒子充填剤の付着は、熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを混合することによって行うことができる。混合については、特に限定はなく、容器と攪拌バネといった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラマシン(株式会社セイシン企業製)等を用いてもよい。
【0047】
熱膨張性微小球に含まれる水分量は、加熱膨張が均一に行えるという観点から、5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0048】
なお、熱膨張性微小球は、たとえば、自動車等の塗料の軽量化充填剤、壁紙や衣服装飾用の発泡インク用発泡粒子、樹脂組成物軽量化のための発泡材、爆薬の鋭感剤、乱反射材、造孔材等の用途に使用できる。
【0049】
[熱膨張した微小球の製造方法]
本発明にかかる熱膨張した微小球の製造方法は、上記で説明した出発原料である熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風気流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程(噴射工程)と、前記気体流体を前記分散ノズルの下流部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風気流中に分散させる工程(分散工程)と、分散した熱膨張性微小球を、気流中における温度差が40℃以下である前記熱風気流に接触させ、前記熱風気流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程(膨張工程)とを含む製造方法である。
【0050】
本発明にかかる別の熱膨張した微小球の製造方法は、上記で説明した出発原料である熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風気流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程(噴射工程)と、前記気体流体を前記分散ノズルの下流部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風気流中に分散させる工程(分散工程)と、分散した熱膨張性微小球を、前記熱風気流の上流に設置された乱流発生部材により発生した乱流を含む熱風気流中で、膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程(膨張工程)とを含む製造方法である。
【0051】
上記2つの製造方法において、噴射工程および分散工程は共通である。また、一方の膨張工程の要件は他方の膨張工程の要件をさらに備えていてもよい。
【0052】
まず、共通の構造を有する図1(a)を参照しながら、本発明の製造方法で使用される製造装置の発泡工程部を説明する。なお、図1(a)に示した発泡工程部はその一例であり、これに限定されない。発泡工程部は、出口に分散ノズル4を備え且つ中央部に配置された気体導入管(番号表記せず)と、分散ノズル4の下流部に設置された衝突板5と、気体導入管の外周囲に間隔を空けて配置された過熱防止筒3と、過熱防止筒3の外周囲に間隔を空けて配置された熱風ノズル1とを備える。発泡工程部においては、気体導入管内の矢印方向に熱膨張性微小球を含む気体流体6が流されており、気体導入管と過熱防止筒3との間に形成された空間には、熱膨張性微小球の分散性の向上および気体導入管と衝突板の過熱防止のための不活性ガス流7が矢印方向に流されている。さらに、過熱防止筒3と熱風ノズル1との間に形成された空間には、熱風気流8が矢印方向に流されている。過熱防止筒3の内部には、冷却のために、冷媒流2が矢印方向に流されている。気体導入管および/または衝突板5は過熱防止機能を備えていると、凝集微小球や熱融着体の生成抑制のため好ましい。
【0053】
衝突板5は、上記で説明した気体導入管等の部材に固定されて設置されていてもよく、また、上記で説明した各部材とは別の部材に固定されて設置されていてもよい。衝突板5の形状は特に限定されないが、紡錘形、円錐形、角錐形、球形、半球形、およびこれらを組み合わせた形状等を挙げることができる。
【0054】
噴射工程では、熱膨張性微小球を含む気体流体6を、出口に分散ノズル4を備え且つ熱風気流8の内側に設置された気体導入管に流し、気体流体6を前記分散ノズル4から噴射させる。気体流体6については、熱膨張性微小球を含む気体の流体であれば、特に限定はないが、熱膨張性微小球を含み、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性気体の流体であると好ましい。また、気体流体6に含まれる水分量は、熱膨張性微小球の分散性の観点からは、好ましくは30g/m3以下、さらに好ましくは9.3g/m3以下である。気体流体6の流速については、特に限定はないが、次の分散工程において、どの熱膨張性微小球に対してもできるだけ同じ熱履歴を受けさせて熱風気流8中で膨張できるように調整される。
【0055】
次に、分散工程では、気体流体6を分散ノズル4の下流部に設置された衝突板5に衝突させ、熱膨張性微小球が熱風気流8中に万遍なく分散するように、操作される。ここで、分散ノズル4から出た気体流体6は、不活性ガス流7とともに衝突板5に向かって誘導され、これと衝突する。
【0056】
最後に、膨張工程では、分散した熱膨張性微小球を熱風気流8中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる。その際の熱風気流は、気流中における温度差が40℃以下であるか、および/または、この熱風気流の上流に設置された乱流発生部材により発生した乱流を含む。その結果、略全ての熱膨張性微小球に対して略同一の熱履歴を連続的に与えることができるため、得られた熱膨張した微小球は良好な充填性を有することができる。
【0057】
つまり、充填性の良好な熱膨張した微小球を製造するために、種々の工夫がなされたが、例えば、所定の温度に温められた熱風を熱膨張性微小球に対して供給することのみでは、製造装置の熱風気流を供給する配管の太さ及び屈曲態様、気流の流速、各ノズルの直径等、種々の因子が複雑に関係することにより、熱膨張性微小球に熱風気流を接触させる際に、均等(たとえば、同じ流速又は圧力で)に、同じ温度の熱風気流を、連続的に供給し得ない現象が発生する。たとえば、熱風気流を供給する配管では、熱損失をできるだけ小さくする必要があるため、その配管は全体としては短く、屈曲態様の構造を有している場合が多い。この屈曲部では、通常、外周側では温度が高く、内周側では温度が低く観測される。そして、このような場合に、得られた熱膨張した微小球において空隙率が低くなることがあることが、予想外に見出された。しかし、上述したように、全ての熱膨張性微小球に対して温度分布の少ない熱風気流を接触させるという極めて簡便な手法により、充填性が極めて優れた熱膨張した微小球を得ることができる。
【0058】
「気流中における温度差が40℃以下である」とは、熱風気流が分散した熱膨張性微小球と接触する際又はその直前の熱風気流8中の各点における温度を測定した際に、その最高温度と最低温度との温度差(以下、単に「温度差」ということがある。)が40℃以下であることをいう。言い換えると、分散した熱膨張性微小球と接触する際又はその直前の熱風気流に、40℃以下の温度分布しか存在しないことをいう。温度差(又は温度分布)は、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下、特に好ましくは10℃以下、最も好ましくは5℃以下である。
【0059】
ここで、上記温度を測定する各点は、いずれも、熱風気流8の流方向と垂直な平面上にほぼ位置しているものとし、上記温度測定した各点が、分散した熱膨張性微小球が前記熱風気流8と最初に接触する点よりも上流で、後述の乱流発生材よりも下流に位置すると良い。上記温度測定した各点が、熱風ノズル下流端付近に位置するとさらに良い。例えば、図1(a)における矢印X上の平面上が挙げられる。上記温度測定した各点の数については、特に限定はないが、4ヶ所以上が好ましく、6ヶ所以上がさらに好ましく、8ヶ所以上が特に好ましい。なお、温度測定する各点は、熱風気流8の流方向と垂直な平面上にほぼ位置し、且つ、ある中心点(好ましくは、気体導入管の中心線と、熱風気流8の流方向と垂直な平面との交点)を有する円周上にほぼ配置され、しかも、隣り合う各点同士がほぼ等間隔に配置されていることが好ましい。具体的には、図1(b)に示すように、温度測定する各点が、中心点が点Oである円の円周上にほぼ位置した点A、点B、点C、点Dの4点(4点がこの順番に円周上に位置する)であり、しかも、互いに隣り合う各点間の距離(距離AB、距離BC、距離CD、距離DA)もほぼ同じ距離であることが好ましい。
【0060】
また、膨張工程では、熱風気流8が熱膨張性微小球と接触する際、熱風気流8中に乱流を含んでいてもよい。つまり、熱風気流の上流に設置された乱流発生部材により、乱流が生じるようになっていてもよい。このような乱流の発生によって、流れる場所によって異なる温度を有する熱風気流8の流れを乱し、分散した熱膨張性微小球と接触する際に、熱風気流8の温度差を低減させることができる。乱流発生部材は、たとえば、金網等の網状物9(図2参照)、トレイ、リング10(図3参照)等が挙げられる。なお、乱流発生部材は、圧損失がなるべく生じないように設置することが好ましい。たとえば、配管が屈曲し、その後に配管がまっすぐになっている図1(a)では、まっすぐの配管部分でできるだけ屈曲部に近い部分(たとえば、番号3と記載された箇所の近辺)に設置することが好ましい。
【0061】
温度差を小さくするための方法及び乱流を発生させる方法は、上記に限定されず、他の方法を採用してもよい。他の方法としては、たとえば、1)熱風源を1つに限るのではなく、複数の熱風源から得られる熱風気流を混合して流路の長短によって生じる温度差を小さくしてもよく、2)上記1)において、初期において渦巻流となるように複数の熱風源から得られる熱風気流を混合して温度差を小さくしてもよく、また、3)熱風ノズルの上流に、すなわち、熱風気流8の上流に、乱流発生部材として、断面が熱風流路よりも広い空間(たとえば、エクスパンションチャンバー(膨張室)11等、図4参照)を設けて、結果的に温度差を小さくしてもよい。このとき、図4にも示すように、エクスパンションチャンバーに入る側の熱風流路の断面積は、エクスパンションチャンバーから出る側の熱風流路の断面積よりも大きい方が好ましい。
【0062】
このようにして、熱膨張性微小球を熱膨張させ、冷却部分に通過させる等して、外殻である熱可塑性樹脂の軟化点以下の温度まで冷却し、熱膨張した微小球が回収される。回収に当たっては、サイクロンやバグフィルター等の一般的な固気分離装置を用いるとよい。
【0063】
本発明の製造方法において、膨張条件を制御することによって、得られる熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有しないようにすることができるし、また、得られる熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有するようにすることもできる。膨張条件の制御については、特に限定はない。
【0064】
本発明の製造方法においては、エネルギー効率が高く、温度制御が容易で、原料であるどの熱膨張性微小球に対してもほぼ同一の熱履歴を連続的に与えることができ、気流中での分散性を増大させることができる。このため、得られた熱膨張した微小球は良好な充填性、良好な繰り返し圧縮耐久性を有する。また、膨張前後における粒度分布の変動係数の変化が小さく、得られた熱膨張した微小球の品質(特に粒子径分布および真比重の分布)の均一性が高い。すなわち、得られた熱膨張した微小球に含まれる過加熱状態になることによって生じる凝集微小球(過発泡微小球)や加熱不足になることによって生じる真比重の大きな微小球(原料やわずかに膨張した微小球)の生成ができるだけ抑制されており、その嵩比重のばらつきが小さい。
【0065】
また、この方法においては、上記に示すように膨張条件を容易に制御することができる。したがって、ほぼ完全に熱膨張した微小球を製造できるし、所望の再膨張できる余力を有する熱膨張した微小球も製造できる。
【0066】
[熱膨張した微小球]
本発明にかかる熱膨張した微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球を、膨張開始温度以上に加熱して膨張させる製造方法で得られる熱膨張した微小球である。ここで、原料となる熱膨張性微小球については、特に限定はないが、上記で説明した熱膨張性微小球が好ましい。また、熱膨張性微小球を膨張開始温度以上に加熱して膨張させる製造方法についても、特に限定はないが、上記で説明した製造方法が好ましい。
【0067】
本発明の熱膨張した微小球は、その空隙率が0.70以下であり、好ましくは0.65以下、より好ましくは0.55以下、さらに好ましくは0.45以下、特に好ましくは0.40以下、最も好ましくは0.35以下である。
空隙率は、充填性を評価する物性値であり、熱膨張した微小球のかさ高体積に占める空隙の割合を表す。したがって、空隙率が低いほど充填性は良好であり、保管効率や輸送効率が良好で、熱膨張した微小球の取扱性もよい。
【0068】
本発明の熱膨張した微小球は、その繰り返し圧縮耐久性が75%以上であり、好ましくは78%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは83%以上、特に好ましくは85%以下、最も好ましくは88%以上である。
繰り返し圧縮耐久性は、熱膨張した微小球を他の材料と混合した際、混合応力に対する耐久性を評価した物性値であり、その測定方法は実施例で詳しく説明する。繰り返し圧縮耐久性が高いほど、混合応力に対する耐久性が高くなる。
【0069】
他の材料としては特に限定はないが、たとえば、天然ゴムやブチルゴムやシリコンゴムなどのゴム類、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ウレタン系やシリコン系等のシーリング材料、塩化ビニル系やアクリル系の塗料、セメントやモルタルやコージエライトなどの無機物などが挙げられる。これらの他の材料と熱膨張した微小球とを混合することによって、中空微小球組成物を調製することができる。
【0070】
熱膨張した微小球の平均粒子径については、用途に応じて自由に設計することができるために特に限定はないが、発泡剤の内包保持率や耐久性の観点からは、好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは5〜800μm、特に好ましくは10〜500μmである。
【0071】
また、熱膨張した微小球の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、好ましくは30%以下、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下である。変動係数CVが30%以上であると繰り返し圧縮に対する耐久性が低くなることもある。
【0072】
熱膨張した微小球は、粒子径の均一性が保持されるという観点からは、膨張前後における粒度分布の変動係数CVの変化が±10%以内であり、好ましくは±5%以内、さらに好ましくは±3%以内、特に好ましくは±1%以内である。変動係数CVの定義は、既に上記[熱膨張性微小球]の項の計算式(1)および(2)で説明した。なお、変動係数CVの変化は、(得られた熱膨張した微小球の粒度分布の変動係数)−(原料である熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数)で定義される。
【0073】
熱膨張した微小球中に含まれる凝集微小球の含有率は、真比重の均一性が保持されるという観点からは、5重量%以下であり、好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。なお、凝集微小球の存在確認は、電子顕微鏡による目視観察で行い、その定量はスクリーニングした後のスクリーニング残留量を測定して行われる。
【0074】
25℃において、熱膨張した微小球中に含まれる真比重0.79g/cc以上の微小球の含有率(以下では単に「沈降成分率」ということがある。)は、真比重の均一性が保持されるという観点からは、5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。0.79g/cc以上の微小球の含有率は、イソプロピルアルコール(25℃における比重:0.79)を用いた比重差分離後の沈降成分の定量により測定される。
【0075】
上記製造方法における膨張条件を制御することによって、得られる熱膨張した微小球が再膨張開始温度を有するようにすることもできる。その場合、再膨張開始温度は、90℃以上であり、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である。
【0076】
また、再膨張開始温度を有する場合の熱膨張した微小球の最大膨張温度における再膨張倍率は、100%超であり、好ましくは105%以上であり、さらに好ましくは120%以上であり、特に好ましくは130%以上であり、最も好ましくは150%以上である。
【0077】
熱膨張した微小球の用途としては、特に限定はなく、自動車等の塗料の軽量化充填剤、壁紙や衣服装飾用の発泡インク用発泡剤、樹脂組成物軽量化のための発泡剤、爆薬の鋭感剤、乱反射材、造孔材等を挙げることができる。
【0078】
以下の実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(測定方法および定義)
〔平均粒子径と粒度分布の測定〕
測定装置として、レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製 HEROS&RODOS)を使用した。乾式分散ユニットの分散圧は5.0bar、真空度は5.0mbarで乾式測定法により測定し、D50値を平均粒子径とした。
【0079】
〔真比重の測定〕
真比重ρpは環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB1)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100ccの充満されたメスフラスコの重量(WB2)を秤量した。
【0080】
また、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS1)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50ccの熱膨張した微小球を充填し、熱膨張した微小球の充填されたメスフラスコの重量(WS2)を秤量した。そして、熱膨張した微小球の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS3)を秤量した。そして、得られたWB1、WB2、WS1、WS2およびWS3を下式に導入して、熱膨張した微小球の真比重(ρp)を計算した。
ρp=[(WS2−WS1)×(WB2−WB1)/100]/[(WB2−WB1)−(WS3−WS2)]
【0081】
〔25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率(沈降成分率)〕
加熱膨張後に得られる混合物を比重0.79(25℃)であるイソプロピルアルコールに添加し、比重0.79を基準にして、液面に浮上するものは真比重0.79g/cc未満であり、これに沈降するものは真比重0.79g/cc以上であるという比重差を利用した分離を行い、沈降した成分を定量して、沈降成分率(重量%)を測定した。
具体的には、環境温度25℃において、熱膨張した微小球10gを容量1Lの分液ロートに充填し、その分液ロートに700ccのイソプロピルアルコールを入れ、約3分間混合し静置した。その後、液面浮上成分と沈降成分とをそれぞれ分取した。沈降成分を乾燥後にその重量を測定し、Wd(g)とした。沈降成分率は下記の式により計算される。
沈降成分率(重量%)=Wd/10×100
【0082】
〔かさ比重の測定〕
測定に用いる内径φ50mm、内容積100ccのステンレスカップを用意し、その重量(Wb)を測定した。次いで、ステンレスカップの上部に粉体流出防止用の円筒カバーを装着し、その内部に試料(熱膨張した微小球)を200cc充填したのち180回タッピング後、円筒カバーをはずしブレードですり切りした後のステンレスカップの重量(Wa)を測定した。なお、タッピングの条件は、1回/秒の速度で180回、振幅高さは15mmであった。
かさ比重ρb(g/cc)は下記の式により計算した。
ρb(g/cc)=(Wa−Wb)/100
【0083】
〔充填性〕
充填性は下記の式により計算される空隙率εで評価した。
ε=1−ρb/ρp
ε:空隙率
ρb:試料(熱膨張した微小球)のかさ比重(g/cc)
ρp:試料(熱膨張した微小球)の真比重(g/cc)
【0084】
〔熱膨張性微小球の含水率の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
【0085】
〔熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率の測定〕
熱膨張性微小球1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量(W1)を測定した。アセトニトリル30mlを加え均一に分散させ、30分間室温で放置した後に、120℃で2時間加熱し乾燥後の重量(W2)を測定した。発泡剤の内包率は、下記の式により計算される。
内包率(重量%)=(W1−W2)(g)/1.0(g)×100−(含水率)(重量%)
(式中、含水率は、上記方法で測定される。)
【0086】
〔内包保持率〕
発泡剤の内包保持率は、膨張前の発泡剤の内包率(G1)に対する膨張後の発泡剤の内包率(G2)の割合であり、下記の式により計算される。
内包保持率(%)=G2/G1×100
【0087】
〔(再)膨張開始温度及び最大(再)膨張温度の測定〕
測定装置として、DMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。熱膨張性微小球(または熱膨張した微小球)0.5mgを直径6.0mm、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、その上に直径5.6mm、厚み0.1mmのアルミ蓋をのせ試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さ(H1)を測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を(再)膨張開始温度とし、最大変位量(H2)を示したときの温度を最大(再)膨張温度とした。なお、最大(再)膨張温度における(再)膨張倍率(E)は以下に示す計算式により算出される。
E(%)=H2/H1×100
【0088】
〔凝集微小球の含有率の測定〕
凝集微小球の存在は、電子顕微鏡による目視観察で確認した。
まず、熱膨張した微小球の平均粒子径をRを測定する。次いで、全熱膨張した微小球に含まれる凝集微小球を目開きがRの約2.0倍(±0.05倍の誤差は許容される)のスクリーンを用いてスクリーニングした後のスクリーニング残留量から、凝集微小球の含有率を算出した。なお、目開きが2.0Rのスクリーンがない場合は、目開きが1.8R〜2.0Rの範囲(但し、2.0Rを除く)にある所定のスクリーンを用いたスクリーニング残留量と、目開きが2.0R〜2.2Rの範囲(但し、2.0Rを除く)にある所定のスクリーンを用いたスクリーニング残留量とから、目開きが2.0Rのスクリーンを使用したときに相当するスクリーニング残留量を比例配分法で算出してもよい。目開きが1.8R〜2.0Rの範囲(但し、2.0Rを除く)にある所定のスクリーンおよび目開きが2.0R〜2.2Rの範囲(但し、2.0Rを除く)にある所定のスクリーンを選択する場合、いずれにおいても、目開きが2.0Rにできるだけ近いスクリーンを選択することが好ましい。スクリーニングに使用する試料の容量については、1L以上とする。
【0089】
〔繰り返し圧縮耐久性の測定〕
熱膨張した微小球2.00mgを直径6mm(内径5.65mm)および深さ4.8mmのアルミカップに入れ、熱膨張した微小球層の上部に直径5.6mmおよび厚み0.1mmのアルミ蓋を載せたものを試料とする。次いで、DMA(DMAQ800型、TA instruments社製)を使用し、この試料に25℃の環境下で加圧子によりアルミ蓋の上部から2.5Nの力を加えた状態での中空微粒子層の高さL1を測定する。その後、熱膨張した微小球層を2.5Nから18Nまで10N/minの速度で加圧後、18Nから2.5Nまで10N/minの速度で除圧する操作を、8回繰り返した後、加圧子によりアルミ蓋上部から2.5Nの力を加えた状態の熱膨張した微小球層の高さL2を測定する。そして、次式に示すように、測定した熱膨張した微小球層の高さL1とL2との比を繰り返し圧縮耐久性とする。
繰り返し圧縮耐久性(%)=(L2/L1)×100
【0090】
〔実施例1〕
原料の熱膨張性微小球としてマツモトマイクロフェア−F−100D(松本油脂製薬株式会社製、外殻熱可塑性樹脂:ニトリル系共重合体、平均粒子径:25μm)を用いて、図2に示す発泡工程部を備えた製造装置(乱流発生部品:30メッシュ金網)で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。なお、分散した熱膨張性微小球と熱風気流8とが接触する前において、熱風気流8の流方向と垂直な平面上にほぼ位置している熱風気流8中の各点(測定点は熱風ノズル下流端付近であり、測定箇所は全部で8ヶ所であり、熱風ノズル下流端からほぼ等距離で、隣り合う測定箇所同士もほぼ等間隔にある。)における温度を測定したとき、その温度差(最高温度と最低温度の温度差)は30℃であった。
膨張条件については、原料供給量0.10kg/h、原料分散気体量0.03m/min、熱風流量0.5m/min、熱風温度180℃に設定した。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0091】
〔実施例2〕
実施例1で、製造装置を図3に示す発泡工程部を備えた製造装置(乱流発生部品:リング)に変更する以外は、実施例1と同様に加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。温度差は5℃であった。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例3〕
実施例1で、製造装置を図4に示す発泡工程部を備えた製造装置(乱流発生部品:エクスパンションチャンバー)に変更する以外は、実施例1と同様に加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。温度差は1℃であった。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0093】
〔比較例1〕
実施例1で、製造装置を図1(a)に示す発泡工程部を備えた製造装置(乱流発生部品:無)に変更する以外は、実施例1と同様に加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。温度差は50℃であった。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0094】
〔比較例2〕
実施例1で、製造装置として循風乾燥機を使用した。具体的にはマツモトマイクロフェア−F−100Dを100g秤量し離型紙上に約100cm2の面積に拡げて180℃の循風乾燥機内で15分間加熱処理することで、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0095】
〔実施例4〕
実施例1で用いたマツモトマイクロフェア−F−100Dとステアリン酸カルシウム(アデカ・ファインケミカル株式会社製、品名:エフコ・ケムCA−ST微粉、平均粒子径:2.0μm)とを重量比9:1の割合で、スーパーミキサー(株式会社カワタ製)を用いて均一に混合し、ステアリン酸カルシウムが外表面に付着した熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球を試作品1とした。
【0096】
実施例3で、マツモトマイクロフェア−F−100Dの代わりに試作品1を用いた以外は、実施例3と同様に加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
〔実施例5〕
(試作品2の製造)
イオン交換水500gに、塩化ナトリウム150g、アジピン酸−ジエタノールアミン縮合物3.0g、コロイダルシリカ20g(有効成分量:20%)および亜硝酸ナトリウム0.15gを加えた後、均一に混合してこれを水相とした。
アクリロニトリル180g、メタクリロニトリル45g、メタクリル酸75g、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.2g、アゾビスイソブチロニトリル2.0gおよびC37OCH3150gを混合、撹拌、溶解し、これを油相とした。
【0099】
水相と油相を混合し、ホモミキサーで3,000rpmにて2分間予備混合し、10,000rpmにて2分間撹拌して縣濁液とした。これを反応器に移して窒素置換をしてから撹拌しつつ、61℃で20時間重合した。重合後、重合生成物を濾過、乾燥した。得られた熱膨張性微小球は、平均粒子径25μm、変動係数CV24%、膨張開始温度143℃、最大膨張温度205℃であった。得られた熱膨張性微小球を試作品2とした。
試作品2に封入された発泡剤の内包率を測定したところ、31.8重量%であった。
試作品2に着火源を近づけたが燃焼することはなかった。
【0100】
(試作品2の熱膨張)
次に、実施例1で、原料の熱膨張性微小球として上記試作品2を用い、熱風温度を240℃に設定する以外は、実施例1と同様に加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。なお、分散した熱膨張性微小球と熱風気流8とが接触する前において、熱風気流8の流方向と垂直な平面上にほぼ位置している熱風気流8中の各点(測定点は熱風ノズル下流端付近であり、測定箇所は全部で8ヶ所であり、熱風ノズル下流端からほぼ等距離で、隣り合う測定箇所同士もほぼ等間隔にある。)における温度を測定したとき、その温度差(最高温度と最低温度の温度差)は30℃であった。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0101】
〔実施例6〕
実施例5で、製造装置を図3に示す発泡工程部を備えた製造装置(乱流発生部品:リング)に変更する以外は、実施例5と同様に加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。温度差は5℃であった。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0102】
〔実施例7〕
実施例5で、製造装置を図4に示す発泡工程部を備えた製造装置(乱流発生部品:エクスパンションチャンバー)に変更する以外は、実施例5と同様に加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。温度差は1℃であった。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0103】
〔比較例3〕
実施例5で、製造装置を図1(a)に示す発泡工程部を備えた製造装置(乱流発生部品:無)に変更する以外は、実施例5と同様に加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。温度差は50℃であった。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0104】
〔実施例8〕
試作品2とカーボンブラック(ライオン株式会社製、品名:ケッチェンブラックECP600JD、平均粒子径:34nm)とを重量比9:1の割合で、スーパーミキサー(株式会社カワタ製)を用いて均一に混合し、カーボンブラックが外表面に付着した熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球を試作品3とした。
実施例6で、試作品2の代わりに試作品3を用いた以外は、実施例6と同様の製造方法で加熱膨張させ、膨張した微小球を製造した。
得られた膨張した微小球の物性を測定し、その結果を表2に示す。
【0105】
【表2】

【符号の説明】
【0106】
1 熱風ノズル
2 冷媒流
3 過熱防止筒
4 分散ノズル
5 衝突板
6 熱膨張性微小球を含む気体流体
7 不活性ガス流
8 熱風気流
9 網状物(メッシュ)
10 リング
11 エクスパンションチャンバー(膨張室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂としてニトリル系単量体を必須成分として含む単量体混合物に由来する構造単位を有し、前記ニトリル系単量体の重量割合が前記単量体混合物に対して20重量%以上である外殻と、それに内包され且つ前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する発泡剤とから構成され、平均粒子径が1〜100μmである熱膨張性微小球が、膨張開始温度以上に加熱されて熱膨張した微小球であって、
該熱膨張した微小球は、
空隙率が0.70以下であり、
凝集微小球の含有率が5重量%以下であり、且つ
25℃における真比重が0.79g/cc以上である微小球の含有率が5重量%以下であることを特徴とする熱膨張した微小球。
【請求項2】
繰り返し圧縮耐久性が75%以上である、請求項1に記載の熱膨張した微小球。
【請求項3】
前記熱膨張性微小球が、さらに、前記外殻の外表面に付着した微粒子充填剤を含み、前記微粒子充填剤の平均粒子径が付着前の熱膨張性微小球の平均粒子径の1/10以下である、請求項1又は2に記載の熱膨張した微小球。
【請求項4】
前記発泡剤が、エーテル構造を有し、塩素原子および臭素原子を含まない、炭素数2〜10の含弗素化合物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張した微小球。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ニトリル系単量体とカルボキシル基含有単量体とを必須成分として含む単量体混合物に由来する構造単位を有し、
前記ニトリル系単量体の重量割合が前記単量体混合物に対して20〜80重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体の重量割合が80〜20重量%である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の熱膨張した微小球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18990(P2013−18990A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210954(P2012−210954)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2007−535537(P2007−535537)の分割
【原出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】