説明

燃料と酸化剤の均一な混合物を提供するための装置および方法

【課題】液体燃料と酸化剤を均一に混合できる蒸発器を提供する。
【解決手段】液体燃料を蒸発器に提供する手段5と、気体状の酸化剤を蒸発器の下流側の混合ゾーン12内に供給する手段4と、混合ゾーン12の下流側の反応ゾーン9からなる装置において、反応ゾーン14内に充填構造3を配列する。これにより、燃料と酸化剤の均一な混合物を反応ゾーン9に供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を蒸発器に供給する手段と、気体状の酸化剤を蒸発器の下流側の混合ゾーンに供給する手段と、混合ゾーンの下流側の反応ゾーンとを含む、燃料と酸化剤の均一な混合物を提供する装置に関する。
【0002】
本発明はさらに、液体燃料を蒸発器に供給するステップと、気体状の酸化剤および蒸発した燃料を蒸発器の下流側の混合ゾーンに供給するステップと、混合ゾーン内で酸化剤と燃料を混合するステップと、混合ゾーン内で物質化した混合物を反応ゾーン内に導入するステップとを含む、燃料と酸化剤の均一な混合物を提供するための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
今日、ディーゼル、燃料油、ガソリン、および灯油などの液体燃料が、熱、機械的作用、および電流を発生させるための最も重要なエネルギー源であり、それはまた、例えば、自動車のエンジン燃焼、およびエンジン独立型ヒーティング、ならびに家庭用バーナで使用されている。それに反して、燃料電池システムでは、液体の炭化水素が、全て燃焼されずに、部分的な酸化反応によって水素に変換される。いずれのタイプの反応にも共通しているのは、液体燃料が、まず気相に変換され、かつ混合室内で空気と混合される必要があり、その後反応室内で変換されることである。この技術では、最適な均一の燃料/空気混合気を求める努力が行われている。というのは、均一性が増すにつれて、すす、NOx、およびCOの形の望ましくない排出の割合を低減することができるからである。反応生成物としてのCOは、反応生成物の範囲では望まれるものであるが、燃焼プロセスの生成物としては望まれないものである。
【0004】
最新のタイプのバーナおよび酸化反応器では、混合室および反応室が、しばしば、モル・シールによって互いから分離され、その結果、自己発火燃料を使用する際、混合室内では酸化反応はまだ始まっておらず、悪影響が及ぼされる。
【0005】
液体燃料の蒸発は、様々な方法によって行うことができる。
【0006】
特許文献1から読み取れるように、例えば、燃料が、不織布金属マットの表面、または例えば織布など類似の構造の表面上にある車両ヒータ内で蒸発され、それにより、液体燃料が、高温の不織布金属マットに施与され、そこで分散され、次いで蒸発される。蒸発後、燃料は、空気と混合され、混合室内で均一化される。この構成では、燃焼室内の燃焼のための空気の供給が、炎を形成することができる燃焼室壁内の複数の空気入口ポートから段階的に行われ、熱伝導、放射および対流により、最終的に、その必要な熱が、蒸発プロセスの受け入れに対して利用できるようになる。
【0007】
しかし、不織布金属マットを用いる燃料の蒸発には欠点がある。ディーゼル燃料の蒸発において測定すると、不織布金属マット上で非常に高い表面温度(約1100℃)、すなわち、具体的には、分解反応が著しく発生してすす生成を引き起こす温度が、400℃を上回る温度を示した。ここでの欠点は、燃料が、不織布マットの表面でのみ空気と接触し、したがって酸化し得ることである。さらに、空気は、段階的に供給されるので、燃焼空気のほとんどが、主に不織布マット上の蒸発後に供給される。不織布マットの表面での対応する空気比が低いと、堆積物が蒸発器上で形成され、この堆積物が、安定した作動を困難にし、耐用年数を縮める。反応条件は、スチーム・クラッキングにおけるものと同様に存在し、その結果、以下に簡単に説明するように、システムのすす生成が生じるようになる。
【0008】
スチーム・クラッキングは、蒸気、ナフサ、の存在下で石油化学に使用される熱分解の1つの方法であり、通常、軽質ガソリン留分が、外だきの分解用コイル状管内で約800〜1400℃の蒸気で非触媒的に分解されて、エテンとプロペンの反応性の低分子化合物を発生させる。さらに、技術的に興味深い、形成される副産物には、とりわけ、芳香族(ベンゾール、トルオール、キシロール)が含まれる。スチーム・クラッキングの目的は、化学工業において必要とされる短鎖オレフインを生成するためである。図4から明らかなように、短鎖オレフインは、高温に達するまで形成されない。エタンからエテンの形成は、約700℃を超える温度においてより容易になり、約1200℃を上回る温度でエテンからエチンの形成が生じる。このような理由で、エテンおよびプロペンを生成するために、800〜900℃の温度(中温熱分解)が使用されるが、アセチレンの形成は、1300℃を超える温度(高温熱分解)で行われることを理解することができる。炭化水素が、元素C(すす)およびHに解離する傾向があることも同様に図4から明白である。こうした望ましくない連鎖反応の程度を低減するために、最適な反応時間(0.2〜0.5秒)の後、このような望ましくない生成物が形成される割合がほとんどゼロになるように、反応混合物をできるだけ早く(0.1秒)十分に冷却することが必要であり、その結果、生成物の組成が、熱力学的平衡によってではなく、反応速度を減速させることによって抑えられるようになる。
【0009】
しかし、上記の化合物は、スチーム・クラッキング時の主成分としての作動条件下では、非常に反応性が高く、凝縮および重合反応を行う傾向があり、その結果、最終的には、すすが形成され、すすが反応コイルを覆うために対応する熱処理能力が損失し、したがって、分解コイルの定期的な交換が必要になる。分解生成物の形成を促進させる分圧を弱めることによってコイル内の熱の良好な径方向の分散を確実にするために、蒸気が付加され、事前に形成された望ましくない高分子の化合物(コークス)が確実に変換される。
【0010】
分解反応はまた、例えば表面金属原子、いわゆる活性中心により、触媒作用によって不均一に行うことができる。例えば、蒸気改質メタン中のニッケル、鉄、コバルトおよび他の炭化水素の触媒効果は、C.H.BartholomewによるApplied Catal. A Gen 212 (2001) 17〜60に記載されている。
【0011】
蒸発器内のこのように対応する高温では、気相において、熱分解反応が蒸発器内で起こる。触媒活性表面(不織布マット、蒸発器または燃焼室壁、グロー・ペンシル)上に事前に形成されたすすの粒子および前駆体が、一様なすす生成のこのプロセスを早めることがある。
【0012】
蒸発器内または燃焼室内で形成されたすすは、蒸発器および燃焼反応に悪影響を及ぼすことがあり、その結果、すす、CO、炭化水素、煙、エアロゾル、ならびに多環芳香族がより多く排出されるようになり、したがって、蒸発器および燃焼室内のすすを取り除くための定期的な再生計画が必要になる。すすは、これを燃焼させることによってほとんどが取り除かれ、そのため、燃焼室をそれに対応して設計する必要がある。対応する高温でのこうしたプロセスは、含まれる物質の輸送によって阻止されるので、すすおよび酸化剤は、燃焼室内で長時間、接触した状態になる必要があり、それに従って燃焼室の容積を増大させることが要求されることがある。さらに、燃焼室の表面において例外的な高温が生じることがあり、その材料特性および耐用年数に悪影響を及ぼす。
【0013】
不織布金属マットおよびそうした雰囲気で感知された温度が約1100℃であると、金属繊維および隣接する構成要素(例えば、グロー・ペンシル、混合室)の材料安定性に関する要求が厳しくなる。
【0014】
不織布金属マットを用いての燃料蒸発とは異なり、特許文献2から読み取れるように、低温炎の原理は、約300℃まで予熱した空気流内の燃料の蒸発に基づく。それによって生じる酸化反応は、20%未満の酸素変換を有する平衡反応であり、その結果、得られた気体混合物は、約480℃の出口温度を有するようになる。
【0015】
低温炎蒸発器には、高温で生じる燃料/空気混合気の自然自己発火を避けるために、低温炎反応(低温酸化)が始まることが可能なように、蒸発器の空気を別のシステム構成要素(例えば電気ヒータ、バーナ)を用いて約300〜500℃の温度まで加熱する必要があるという欠点を有する。しかし、こうした加熱にもかかわらず、空気を予熱することがすばやい低温開始の助けとはならず、動的作動に反することになる。
【0016】
蒸発器またはノズルを用いて生成された燃料/空気混合気を、蒸発器と下流側の反応スペース(燃焼、部分酸化)の間のモル・シールによって蒸発器内の自然自己発火に対して安全防護することができるが、そのために複雑さがさらに増す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ドイツ特許DE3914611C2
【特許文献2】EP1102949B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明は、従来技術の欠点の少なくとも一部を克服するために、不織布マットの蒸発に基づいた燃料と酸化剤の均一な混合物を提供するための装置および方法を提供する目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、反応ゾーン内において、充填構造が、この時、酸化反応が生じる表面および/またはその中に配列され、この酸化反応は、その発熱反応により、充填構造を作動温度に維持するという点で、一般的装置の最新のものである。遊離された熱の一部が、蒸発プロセスの自己維持のために蒸発器の下流側の蒸発ゾーン内で使用され、熱エネルギーの残りは、排出され、生成物の流れと共に循環される。別の場合では、すす生成を促進させることがある、燃料成分(C)の部分的酸化、例えば芳香族化合物およびxが5以上の室温で液体である長鎖炭化水素(C)が発生することが好ましい。
【0020】
充填構造は、本発明による装置の小型形状と適合して寸法設定されるように、25mm〜35mmの直径および15〜50mmの軸方向長さを有するセラミック製の円筒成形物として形成されることが有用に提供される。例えば、直径が30mmであり、軸方向長さが例えば20mmである。セラミック材料を使用する以外にも、例えば、コージライト、金属製の充填構造も可能である。セラミック材料として、例えば、ケイ素、アルミニウム、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、重金属(例えばバリウム)、希土類(例えばイットリウム)の酸化物、またはそれらの混合物を使用することができる。好ましいセラミックは、例えば、コージライトである。さらに、例えば炭化物(例えば炭化ケイ素)、または窒化物などの非酸化物セラミックも使用することができる。金属材料の充填構造は、たいてい、金属製の包装箔(例えば、FeCr合金鋼)から作られ、金属などの網またはメッシュを重ね合わせて充填構造を形成することも同様に可能である。
【0021】
充填構造は、400〜1200cpsiの範囲のセル密度を有する四角形断面の流導管を特色とするが、この流導管は、四角形断面の代わりに、六角形、三角形、円形または波形の断面を特色とすることも可能であることが、有用に提供される。それらの導管は、平行に、または無作為(スポンジに類似して)に配置されてよい。充填構造が特色である多くの様々な形状、例えば、円形、長方形、レーストラック以外にも、セル密度を構成する
可能性は様々である。例えば、約400cpsiのセル密度は、有利なものであるが、現時点では約1200cpsiのセル密度も可能になる。
【0022】
充填構造の表面は触媒として被覆を少なくとも部分的に含むことが、有用に提供される。例えば、希金属被覆が提供されてよい。充填構造の流導管の表面を、大幅に増大させることができ(例えば薄め塗膜、数μmの層厚さ)、触媒を、技術的に明らかな反応率で触媒反応を実施させるように活性化することができる。望ましい部分酸化生成物(例えばCOおよびH)に関する選択性を、水素の触媒生成(部分酸化、オートサーミック改質、蒸気改質)での使用に適した触媒作用的に活性な充填構造を利用することによって高めることができる。一般的な薄め塗膜材料は、アルミニウム、ケイ素、チタンの酸化物であり、一般的な触媒には、例えば、Pt、Pd、Niなどの希少金属が含まれる。
【0023】
さらに、反応ゾーンの後に均一化ゾーンが続くことを提供することができる。充填構造から現れる生成物、例えば、残留した短鎖炭化水素、水素、一酸化炭素、水、二酸化炭素を、充填構造の上流側の燃料/空気混合気に比べ、より容易にその充填構造内で均一な混合物へと再生することができる。この再生は、とりわけ、生成された小さな分子種(例えば水素)の得られた拡散係数によって高められ、火炎率は、使用された長鎖成分に比べて非常に大きくなる。得られた成分の温度が極めて高くなると、材料の輸送、したがって均一性がさらに改善される。炭化水素濃度が低いため、すす生成の傾向は、混合室に比べ、小さいものになる。
【0024】
均一化ゾーンの後に別の反応ゾーンが続くことが、さらに有用に提供される。例えば、別の酸化剤流を加えて燃焼範囲に入るようになるまで空気率を上昇させることにより、得られた生成混合物をさらに酸化させることができる。
【0025】
本発明による装置は、0.5未満の規定された空気率を有する混合室内で動作可能であり、それにより、この装置を自然発火無しで使用することが可能になり、したがって、酸化反応の割合および間接的には混合室内の吸熱分解反応の程度を最小に抑える点において、さらにより有用なものになる。すでに発火した混合物を、消滅するように設計することができる。
【0026】
本装置はさらに、使用される燃料の最終沸点を超えない、すなわちわずかに最終沸点よりも低い温度、ディーゼル燃料の場合は約360℃で、蒸発器と混合ゾーンの間の蒸発ゾーンにおける作動を可能にすることによって有利に改良される。最終沸点温度を超えないことにより、すす生成に至る熱分解生成物の割合は、これに対応して低くなる。温度が低いため、燃料/空気混合気の自然自己発火の傾向が最小限に抑えられる。こうした低温はまた、反応速度が抑えられることにより、熱力学平衡の算出によって予測されるものよりも形成されるすすがより少なくなるという結果になり得る。
【0027】
さらに、蒸発ゾーンおよび混合ゾーンの容積が、燃料と酸化剤の混合物の滞留時間の平均が、酸化反応の反応時間の長さになるように設計され、これもまた、燃料/空気混合気の自然自己発火に対する傾向を最小限に抑える結果をもたらすことが提供される。滞留時間が短いと、熱力学平衡の算出によって予測されるよりも接触時間が短くなるので、すすの形成がより少なくなるという結果になり得る。
【0028】
本発明は、混合物全体、またはすでに物質化した反応生成物が通過する反応ゾーン内に、充填構造が配列されるという点で、一般的な方法に対する改良型である。このようにして、本発明による装置の利点および特有の特徴がまた、1つの方法の範囲内で明白であり、これは、同様に、本発明による装置の好ましい実施形態またはそこから得られる好ましい方法の特徴にも適用される。
【0029】
本発明は、特に装置の別の特徴と併せて充填構造を提供することにより、今や従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服することが可能であることの発見に基づいている。したがって、空気率が混合室内で規定されたように設定されるので、蒸発器は、今や、低温がその中で規定されたように実現するように作動することが可能となり、自然な自己発火が回避される。こうした低温は、例えば分解反応によって促進されるような、システムのすす生成の傾向を低減させる。混合ゾーンおよび酸化ゾーンは、ここでは、実際には分離されており、したがって、モル・シールの必要が解消される。蒸発器内の温度は非常に低く、出力からほとんど独立しており、そのため、それに対応して周囲の構成要素の熱応力が低減される。炭化水素を、この時、触媒を用いて第1の反応段階で選択的に部分的に酸化させることができ、したがって、反応の非選択的状態、特に分解およびすす生成が最小限に抑えられる。触媒を使用しない場合、第1の反応は、第1の反応段階をより高温で実施できるという利点を有する。というのは、触媒は過度に高い温度では非活性になり得るからである。空気率が規定されているので、今や、望ましい反応生成物の形成の工学的制御が可能になる。燃焼反応における裸火とは異なり、全ての気体状の炭化水素分子または気体と混合することができる液体状の炭化水素分子が、この時、この選択された形状の充填構造中を反応しながら、通過させられる。高温と併せると、これによって非常に高い変換率および小型寸法がそれぞれ得られる。炭化水素(潜在的な分解候補物)の濃度の程度がより低いために、第1の反応段階で物質化した水素に富む気体混合物を、ほとんどすすを形成することなく、炭化水素/空気混合物よりもはるかに容易に均一化することができる。さらに、この時、均一化は、大幅に拡張された作動範囲(より高温でより長い滞留時間)内で実施することができ、その後、水素に富む気体混合物を、別の反応ゾーンに供給することができる。混合物が均一であるため、対応する反応ゾーンを極めて小型に設計することができ、均一な生成物の気体組成が保証される。例えば、水素に富む気体混合物を、さらに排出量を低減させて酸化させることができる。混合物が均一化されているので、今や、対応する燃焼室/反応室を、極めて小型に寸法設定することが可能になる。
【0030】
次に、添付の図面を参照して好ましい例の実施形態を用いることにより、本発明を詳細に説明する。
【0031】
本発明の好ましい実施形態の以下の説明において、同じ参照番号は、同じまたは相当の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】液体燃料ベースの均一な燃料/空気混合気を提供するためのシステムの第1の実施形態を示す図である。
【図2】液体燃料ベースの均一な燃料/空気混合気を提供するためのシステムの第2の実施形態を示す図である。
【図3】本発明による装置に関連する時間に応じた温度と出力の曲線を示すグラフである。
【図4】温度に応じた、選択された炭化水素の自由エンタルピーならびに炭素および水素の元素の自由エンタルピーを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に図1を参照すれば、液体燃料ベースの均一な燃料/空気混合気を提供するシステムの第1の実施形態が図示されている。一例として図1に示すように、液体燃料ベースの均一な燃料/空気混合気を提供するシステムの中心的な構成要素は、蒸発器要素1内に配列され、かつ、充填構造を取り付けるための支持要素3bに取り付けられた燃料蒸発器2であり、この充填構造は、機械的固定および熱遮断それぞれのために織布マット3cによって覆われることがある。液体燃料および酸化剤が、それぞれ燃料供給装置5および酸化剤供給装置4を介してシステムに供給される。例えば蒸気などの任意選択の付加物を伴う好ましくは空気である酸化剤が、径方向内側に向けられたポート6を介して混合室12内に入り、この混合室12内で、酸化剤が、混合室12の上流側の蒸発室内で蒸発した燃料と混合される。一般に、蒸発室13および混合室12は、一体型を形成し、蒸発は上流側で、混合は下流側で生じる傾向がより強いが、燃料蒸発器の方向に逆流することもあり、その結果、ここでも燃料と空気が混合されることがある。さらに、不織布金属マット上の低温によって促進されるのと同様に、高温沸点の材料の蒸発が、蒸発室内で不完全に起こることがあり、その結果、燃料が例えば900℃の高温の充填構造の方向に流れるので、この蒸発は、混合室12内で起こるようになる。燃料/空気混合気の酸化は、任意で、電気点火装置7または充填構造によって生じる。充填構造に含まれる反応ゾーン14に隣接す
る均一化ゾーン8は、酸化の結果得られた生成物を均一化する働きをする。次いで、均一化された気体混合物を、例えば別の反応剤/酸化剤供給装置10を介して酸化剤を供給することにより、別の反応ゾーン9内でさらに変換することができる。この供給が設計される方法が、反応ゾーン9内の材料および熱の輸送に大きな影響を及ぼす。例えば、ポート11により、反応生成物が壁に輸送され、その結果、反応熱の一部を簡単に大気に蒸発させることができ、そのため、反応ゾーン9の下流側の構成要素が過熱されるのが防止される。
【0034】
用途に要求されるものに応じて、燃料/空気混合気を提供するためのシステムを、様々な大気温度で作動させることができる。しかし、非常に高温の大気温度(400℃を超える)の場合、過剰な熱が燃料蒸発器に入り、(例えば不織布内で)分解反応が促進される危険性がある。したがって、中温の大気温度が、一般に有利である。しかし、燃料蒸発器に対する用途の要求が、高温の大気における作動である場合、下記に説明するように、蒸発器の熱遮断の提供が有利である。この場合、この熱遮断は、2aおよび3bで特定されるゾーンが低い熱伝導性を特色とする場合、あるいは、例えば2aで特定されたゾーン内で薄い突起部を選択することによって不織布マットに伝導された熱をできるだけ最小になるように設計するために、有利である。さらに、ゾーン2と3bの間の断熱材(図1には図示せず)、例えばセラミック製ディスクを提供することがさらに有利になることがある。また、適用可能な場合は、蒸発器の熱遮断も可能であり、これは同様に酸化剤および燃料の通路にも適用される。
【0035】
次に図2を参照すれば、液体燃料ベースの均一な燃料/空気混合気を提供するシステムの第2の実施形態の図が示されている。図1とは異なり、第2の反応ゾーン内の酸化剤流の供給は、複数回で段階的に行われ、径方向内側に向けられる。
【0036】
次に図3を参照すれば、本発明による装置に関連する時間に応じた温度と出力の曲線を示すグラフが示されている。空気中のディーゼルの蒸発を有するかかるシステムで得られた例示的な結果が、示されている。使用される充填構造は、水素に富む気体混合物が物質化するように、ディーゼル燃料を部分的に酸化させる触媒を含む。この触媒は、例えば電気および熱を発生させるための補助電源装置(APU)で利用することができる。図3は、1kW〜4kW間の熱出力(曲線c)および0.3〜0.35の空気率に対して、蒸発器室(曲線a)内および触媒(曲線b)内で測定された温度を示す。図から明白なように、蒸発室内の温度は、約300℃である。触媒の中心における高温(最高1100℃)にもかかわらず、燃料/空気混合気の逆火は、混合室内では生じない。混合室内の滞留時間が長くなるときでさえも(酸化剤供給装置からの熱出力の4kWから1kWへの低下)、発火は観察されず、したがって安定した作動が実現される。
【0037】
上記の説明、図および特許請求の範囲で開示された本発明の特徴は、それら自体でも、あるいはいかなる組合せにおいても、本発明の実現には必要であり得ることが理解される。
【符号の説明】
【0038】
1 蒸発器構成要素
2 燃料蒸発器
2a 突起部
3 充填構造
3b 支持構成要素
3c 織布マット
4 酸化剤供給装置
5 燃料供給装置
6 ポート
7 電気点火装置
8 均一化ゾーン
9 反応ゾーン
10 反応剤/酸化剤供給装置
11 ポート
12 混合ゾーン/室
13 蒸発ゾーン/室
14 反応ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を蒸発器に供給する手段(5)と、
気体状の酸化剤を前記蒸発器の下流側の混合ゾーンに供給する手段(4)と、
前記混合ゾーン(12)の下流側の反応ゾーンとを含む、燃料と酸化剤の均一な混合物を提供するための装置であって、
前記反応ゾーン(14)内に充填構造(3)が配列されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記充填構造(3)が、25〜35mmの範囲の直径および15〜50mmの範囲の軸方向長さを有するセラミック製の円筒成形物として形成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記充填構造(3)が、400〜1200cpsiの範囲のセル密度を有する四角の断面の流導管を特色とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記充填構造(3)の表面が、触媒として被覆を少なくとも部分的に含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記反応ゾーン(14)の後に均一ゾーン(8)が続くことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記均一化ゾーン(8)の後に別の反応ゾーン(9)が続くことを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
規定された空気率が0.5未満である前記混合室(12)内で動作可能であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記蒸発器(2)と前記混合ゾーン(12)の間の蒸発ゾーン内で、使用する燃料の最終沸点を超えない温度、すなわちわずかに低い温度で動作可能であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記蒸発ゾーン(13)および前記混合ゾーン(12)の容積が、燃料と酸化剤の前記混合物の平均の滞留時間が、酸化反応の反応時間の長さであるように設計されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
液体燃料を蒸発器(2)に供給するステップと、
気体状の酸化剤および蒸発した燃料を前記蒸発器の下流側の混合ゾーン(12)に供給するステップと、
酸化剤および燃料を前記混合ゾーン(12)内で混合するステップと、
前記混合ゾーン(12)内で物質化した前記混合物を反応ゾーン(14)内に導入するステップとを含む、燃料と酸化剤の均一な混合物を提供する方法であって、
充填構造(3)が、前記混合物の全体、またはすでに物質化した反応生成物が通り抜ける前記反応ゾーン(14)内に配列されることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−174696(P2011−174696A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83764(P2011−83764)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【分割の表示】特願2007−550664(P2007−550664)の分割
【原出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(591018763)ベバスト・アクチィエンゲゼルシャフト (102)
【Fターム(参考)】