説明

燃料デリバリパイプ締結構造

【課題】内燃機関の燃料デリバリパイプの強度を低下させることなく、シリンダヘッド側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる燃料デリバリパイプ締結構造の提供。
【解決手段】パイプ側ボス8,16を補強するリブ8b,16bを薄くして燃料デリバリパイプ2の両端側の締結部を低剛性化している。このためシリンダヘッド4と燃料デリバリパイプ2との熱膨張差により応力が集中する燃料デリバリパイプ2の両端部において中央部よりも応力による締結部の変形量を大きくできる。このため燃料デリバリパイプ2の強度を低下させることなく、シリンダヘッド4側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。このことにより燃料デリバリパイプ2全体が反ることがなく、燃料噴射弁6と燃料デリバリパイプ2とのシール性を維持できる。そしてシリンダヘッド4と燃料デリバリパイプ2との締結部に応力が集中することがなく耐久性を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダヘッドに複数の噴射ノズルを設けて複数気筒にガソリン等の燃料を供給する燃料デリバリパイプが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
特許文献1では、燃料デリバリパイプの内圧付加時に燃料デリバリパイプの中央部付近に設けたソケットとの接続部に高い応力集中が生じて、そのアブゾーブ壁面が破損するのを、燃料デリバリパイプの中央部をリブにより補強することにより防止している。
【0003】
特許文献2では、燃料デリバリパイプとシリンダヘッドとの温度差に起因した熱膨張差によるインジェクタと燃料デリバリパイプとの軸ずれを、燃料デリバリパイプを分割してフレキシブルに連結することで防止している。このことによりインジェクタと燃料デリバリパイプとを連結している部分のゴム製オーリングのシール性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−255361号公報(第5〜6頁、図1)
【特許文献2】特開2000−120504号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの材質の違いにより、あるいは温度差により、これらの間で膨張程度が異なる場合がある。例えばシリンダヘッドをアルミニウム合金製とし、燃料デリバリパイプを鉄合金製とした場合、鉄合金よりもアルミニウム合金の線膨張率が大きいので、内燃機関運転により昇温すると燃料デリバリパイプが引き延ばされる力をシリンダヘッド側から受ける。逆に低温化すると燃料デリバリパイプが縮められる力をシリンダヘッド側から受ける。
【0006】
シリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの材質が同じであっても、シリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの間の温度差により、同様に燃料デリバリパイプが引き延ばされたり、燃料デリバリパイプが縮められたりする力をシリンダヘッド側から受ける。
【0007】
このような歪みを燃料デリバリパイプが受けると、燃料デリバリパイプ全体が反ることにより、燃料噴射弁と燃料デリバリパイプとのシール性を低下させるおそれがある。あるいはシリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの締結部に応力が集中して耐久性を低下させるおそれがある。
【0008】
特許文献1の構成では、燃料デリバリパイプ自身の内圧による変形の問題であり、したがってシリンダヘッドとの線膨張率差に基づく変形については対策されていない。
特許文献2の構成では、燃料デリバリパイプを分割することにより熱膨張差を個々の部分で小さくしてシリンダヘッド側とのずれを小さくしている。しかし、このように燃料デリバリパイプを分割したために燃料デリバリパイプ自体の強度が低下する。
【0009】
本発明は、燃料デリバリパイプの強度を低下させることなく、シリンダヘッド側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる燃料デリバリパイプ締結構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の燃料デリバリパイプ締結構造では、内燃機関のシリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの締結構造であって、前記シリンダヘッドと前記燃料デリバリパイプとにそれぞれ3つ以上設けられたボス間をボルト締結することにより形成された締結部は、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする。
【0011】
締結部が燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることにより、シリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの熱膨張差により応力が集中する燃料デリバリパイプの両端部においては、中央部よりも応力による締結部の変形量を大きくできる。すなわち燃料デリバリパイプの両端部では締結部の柔軟性を高めることができる。
【0012】
このため燃料デリバリパイプを分割しなくても両端側での応力集中を防止でき、燃料デリバリパイプの強度を低下することなく、シリンダヘッド側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
【0013】
請求項2に記載の燃料デリバリパイプ締結構造では、請求項1に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッド又は前記燃料デリバリパイプにおけるボスを補強するリブを、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも薄く又は無くすことで、前記締結部が前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする。
【0014】
両端側の締結部の低剛性化はボスを補強するリブを薄くしたり無くしたりすることで容易に実現できる。
請求項3に記載の燃料デリバリパイプ締結構造では、請求項1に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッド又は前記燃料デリバリパイプにおけるボスの径を、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも小径とすることで、前記締結部が前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする。
【0015】
両端側の締結部の低剛性化はボスの径を小径とすることで容易に実現できる。
請求項4に記載の燃料デリバリパイプ締結構造では、請求項1に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッドのボスと前記燃料デリバリパイプのボスとのトータルの高さを、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも高くすることで、前記締結部が前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする。
【0016】
シリンダヘッドのボスと燃料デリバリパイプのボスとのトータルの高さを高くすると、締結部として柔軟性が増して低剛性化できる。したがって両端側の低剛性化は、シリンダヘッドのボスと燃料デリバリパイプのボスとのトータルの高さを高くすることで容易に実現できる。
【0017】
請求項5に記載の燃料デリバリパイプ締結構造では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッドはアルミニウム合金製であることを特徴とする。
【0018】
シリンダヘッドとしては剛性は低いが線膨張率が大きいアルミニウム合金製が挙げられる。この場合にはシリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの熱膨張差が大きくなる傾向にあるが、前述したごとく、燃料デリバリパイプを分割しなくても両端側での応力集中を防止でき、燃料デリバリパイプの強度を低下することなくシリンダヘッド側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
【0019】
請求項6に記載の燃料デリバリパイプ締結構造では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記燃料デリバリパイプは鉄合金製であることを特徴とする。
【0020】
燃料デリバリパイプとしては線膨張率は小さいが剛性の高い鉄合金製が挙げられる。この場合にはシリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの熱膨張差により応力集中が生じ易くなるが、前述したごとく、燃料デリバリパイプを分割しなくても両端側での応力集中を防止でき、燃料デリバリパイプの強度を低下することなく、シリンダヘッド側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
【0021】
請求項7に記載の燃料デリバリパイプ締結構造では、請求項1に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッドはアルミニウム合金製であり、前記燃料デリバリパイプは鉄合金製であり、前記シリンダヘッドのボスと前記燃料デリバリパイプのボスとのトータルの高さに対する前記シリンダヘッドのボスの高さの割合を、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも大きくすることで、前記締結部が前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする。
【0022】
このようにシリンダヘッドが燃料デリバリパイプよりも材質的に低剛性である材料を用いている場合には、両端側の低剛性化はシリンダヘッドのボスについてその高さ割合を大きくすることにより容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A),(B)実施の形態1の燃料デリバリパイプ及びシリンダヘッドとの締結状態を説明する斜視図。
【図2】(A),(B)実施の形態2の燃料デリバリパイプ及びシリンダヘッドとの締結状態を説明する斜視図。
【図3】(A)〜(C)実施の形態3の燃料デリバリパイプ及びシリンダヘッドとの締結状態を説明する斜視図。
【図4】(A),(B)実施の形態4の燃料デリバリパイプとシリンダヘッドとの締結状態を説明する斜視図。
【図5】実施の形態5の燃料デリバリパイプとシリンダヘッドとの締結状態を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施の形態1]
〈実施の形態1の構成〉図1は、内燃機関であるガソリンエンジン用の燃料デリバリパイプ2及びシリンダヘッド4との締結状態を示している。この燃料デリバリパイプ2は鉄合金製である。この燃料デリバリパイプ2が取り付けられる内燃機関のシリンダヘッド4はアルミニウム合金製である。図1の(A)は燃料デリバリパイプ2の構成とこれに取り付けられる燃料噴射弁6とを示し、図1の(B)は燃料デリバリパイプ2がシリンダヘッド4に燃料噴射弁6と共に取り付けられた状態を示している。
【0025】
シリンダヘッド4に配置された燃料噴射弁6は、その先端側が吸気ポートあるいは燃焼室に向けられて配置されており、燃料デリバリパイプ2側から燃料噴射弁6に供給された燃料は燃料噴射弁6から吸気ポートや燃焼室内に噴射される。
【0026】
燃料デリバリパイプ2内の燃料通路には、燃料ポンプによって燃料導入口2aから燃料が供給される。特に燃焼室内に燃料噴射する構成では、燃料噴射弁6の先端に筒内圧が直接加わる。このような筒内圧に抗して燃焼室内に燃料が噴射できるように、高圧の燃料が高圧ポンプから燃料デリバリパイプ2へ供給される。
【0027】
燃料デリバリパイプ2は、5つのパイプ側ボス8,10,12,14,16が全体に渡って間隔を置いて形成されている。このパイプ側ボス8〜16のボルト挿通孔8a,10a,12a,14a,16aを介してボルト18がシリンダヘッド4に形成されたシリンダヘッド側ボス20,22,24,26,28の螺合孔に螺入されている。このことで燃料デリバリパイプ2はシリンダヘッド4に締結されている。このように燃料デリバリパイプ2とシリンダヘッド4とで、それぞれのボス8〜16,20〜28間をボルト締結することにより5つの締結部が形成されている。
【0028】
燃料デリバリパイプ2には、燃料噴射弁6を取り付けるための挿入部30,32,34,36が設けられている。本実施の形態では内燃機関は直列4気筒であるので、挿入部30〜36は気筒数とその配置に適合させて4つが設けられている。この挿入部30〜36には、図1の(A)に示したごとく、燃料噴射弁6の後端部6aをオーリング6bと共に挿入して嵌合する。
【0029】
燃料デリバリパイプ2に設けられたパイプ側ボス8〜16にはそれぞれリブ8b,10b,12b,14b,16bにより補強されている。ただし補強しているリブ8b〜16bの厚さは同じではなく、燃料デリバリパイプ2の両端側のパイプ側ボス8,16に対するリブ8b,16bは、中央側のパイプ側ボス10,12,14に対するリブ10b,12b,14bよりも薄くされている。
〈実施の形態1の作用〉上述したごとく燃料デリバリパイプ2の両端側のパイプ側ボス8,16に対するリブ8b,16bと、中央側のパイプ側ボス10〜14に対するリブ10b〜14bとの厚さ関係が設定されている。このことにより燃料デリバリパイプ2とシリンダヘッド4とを接続する締結部(パイプ側ボス8〜16とシリンダヘッド側ボス20〜28とをそれぞれボルト18にて締結した構成)は、燃料デリバリパイプ2の両端側では中央側よりも低剛性に設定されている。
【0030】
シリンダヘッド4と燃料デリバリパイプ2とは前述したごとく材質が異なり、アルミニウム合金製であるシリンダヘッド4の線膨張率は鉄合金製の燃料デリバリパイプ2に比較して高い。このため内燃機関運転が開始されて内燃機関が昇温すると、シリンダヘッド4は締結部を介して燃料デリバリパイプ2に対してその伸張方向の力(図1の(B)の矢線F1,F2)を与える。このことによりシリンダヘッド側ボス20〜28及びボルト18を介して、パイプ側ボス8〜16に応力が作用する。
【0031】
この応力はパイプ側ボス8〜16の先端を中央側に倒すように捻るモーメントM1,M2を生じる。このモーメントM1,M2は中央側のパイプ側ボス10〜14に比較して、両端側のパイプ側ボス8,16では大きい。
【0032】
もしこの両端側のパイプ側ボス8,16を補強しているリブ8b,16bが中央側のリブ10b〜14bと同様に厚いことにより、パイプ側ボス8,16が捩れないように強固に保持していた場合には、燃料デリバリパイプ2全体が反ってしまい、燃料噴射弁6と挿入部30〜36との間のシール性を低下させるおそれがある。
【0033】
あるいは燃料デリバリパイプ2が剛直で反らない場合には、パイプ側ボス8,16の締結面8c,16cは、シリンダヘッド側ボス20,28とは横ずれや分離を生じる。昇温時にこのようなずれや分離が生じ、内燃機関停止時に冷却されて再度元に戻る状態を繰り返すと、ボルト18が緩んで締結部の耐久性が低下するおそれがある。
【0034】
本実施の形態では、両端側のパイプ側ボス8,16を補強しているリブ8b,16bが中央側のリブ10b〜14bよりも薄い。このことにより、燃料デリバリパイプ2に対する両端側のパイプ側ボス8,16とシリンダヘッド側ボス20,28とをボルト18にて締結することにより形成されている締結部は、中央側に比較して低剛性化されている。
【0035】
このことにより両端側のパイプ側ボス8,16は、熱膨張差によりシリンダヘッド4から両端側のパイプ側ボス8,16を引き離す方向へ力を受けると、低剛性であることにより、図1の(B)に示したモーメントM1,M2に対して柔軟に対応して大きく中央側に先端が傾くように捩れる。
【0036】
このため燃料デリバリパイプ2の両端側におけるパイプ側ボス8,16の締結面8c,16cがシリンダヘッド側ボス20,28に対して横ずれしたり分離したりすることがなく、常に密着した状態を維持する。したがってボルト18が緩むことはない。
〈実施の形態1の効果〉(1)本実施の形態では、燃料デリバリパイプ2とシリンダヘッド4との締結において、燃料デリバリパイプ2の両端側の締結部の低剛性化は、パイプ側ボス8,16を補強するリブ8b,16bを薄くしたことで実現している。
【0037】
このように締結部が、燃料デリバリパイプ2の両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることにより、シリンダヘッド4と燃料デリバリパイプ2との熱膨張差により応力が集中する燃料デリバリパイプ2の両端部において中央部よりも応力による締結部の変形量を大きくできる。すなわち燃料デリバリパイプ2の両端部で締結部の柔軟性を高めることができる。
【0038】
このため燃料デリバリパイプ2を分割しなくても両端側での応力集中を防止でき、燃料デリバリパイプ2の強度を低下させることなく、シリンダヘッド4側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
【0039】
更にこのことにより燃料デリバリパイプ2全体が反ることがなく、燃料噴射弁6と燃料デリバリパイプ2とのシール性を維持できる。そしてシリンダヘッド4と燃料デリバリパイプ2との締結部に応力が集中することがなく耐久性を維持することができる。
【0040】
[実施の形態2]
〈実施の形態2の構成〉本実施の形態の燃料デリバリパイプ102は、図2に示すごとく両端側のパイプ側ボス108,116については、前記実施の形態1と異なり、リブを無くしている。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
〈実施の形態2の作用〉このように本実施の形態では、中央側のパイプ側ボス110,112,114についてはこれを補強しているリブ110b,112b,114bが存在するが、両端側のパイプ側ボス108,116には補強するリブが存在しない。このことにより燃料デリバリパイプ102に対する両端側のパイプ側ボス108,116とシリンダヘッド側ボス120,128とをボルト118にて締結することにより形成されている締結部は中央側の締結部に比較して低剛性化されている。
【0041】
このことにより前記実施の形態1の場合と同様に、両端側のパイプ側ボス108,116は、シリンダヘッド104との熱膨張差により引き離す方向へ力を受けると、前記実施の形態1の場合よりも低剛性であることにより、特に大きく中央側に先端が傾くように捩れる。
【0042】
このため両端側のパイプ側ボス108,116の締結面108c,116cがシリンダヘッド側ボス120,128に対して横ずれしたり分離したりすることがなく、常に密着した状態を維持する。したがってボルト118が緩むことはない。
〈実施の形態2の効果〉(1)本実施の形態では、燃料デリバリパイプ102とシリンダヘッド104との締結において、燃料デリバリパイプ102の両端側の低剛性化は、パイプ側ボス108,116を補強するリブを無くしたことで実現している。
【0043】
このように締結部が燃料デリバリパイプ102の両端側では中央側よりも特に低剛性に設定されていることにより、中央部よりも応力による締結部の変形量を特に大きくできる。すなわち燃料デリバリパイプ102の両端部で、締結部の柔軟性を大きく高めることができる。
【0044】
このため燃料デリバリパイプ102を分割しなくても両端側での応力集中を防止でき、燃料デリバリパイプ102の強度を低下することなく、シリンダヘッド104側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
【0045】
更にこのことにより燃料デリバリパイプ102全体が反ることがなく、燃料噴射弁106と燃料デリバリパイプ102とのシール性を維持できる。そしてシリンダヘッド104と燃料デリバリパイプ102との締結部に応力が集中することがなく耐久性を維持することができる。
【0046】
[実施の形態3]
〈実施の形態3の構成〉本実施の形態の燃料デリバリパイプ202は、図3の(A),(B)に示すごとく両端側のパイプ側ボス208,216に対してリブ208b,216bが設けられている。このリブ208b,216bは、中央側のパイプ側ボス210,212,214のリブ210b,212b,214bと同じ厚さである。
【0047】
更に、両端側のパイプ側ボス208,216の径が中央側のパイプ側ボス210〜214の径よりも小さくされている。他の構成は前記実施の形態1と同じである。
〈実施の形態3の作用〉このように両端側のパイプ側ボス208,216の高さ(縦方向の長さ)は中央側のパイプ側ボス210〜214と同じであるが、両端側のパイプ側ボス208,216の方が中央側のパイプ側ボス210〜214よりも細くされている。
【0048】
このことにより締結部が燃料デリバリパイプ202の両端側では中央側よりも低剛性に設定されている。したがってシリンダヘッド204と燃料デリバリパイプ202との熱膨張差により応力が集中する燃料デリバリパイプ202の両端部において中央部よりも応力による締結部の変形量を大きくできる。すなわち燃料デリバリパイプ202の両端部で締結部の柔軟性を大きく高めることができる。
【0049】
図3の(B)に示したシリンダヘッド204のシリンダヘッド側ボス220,222,224,226,228は全て同一の高さで同一の径であった。この代わりに、図3の(C)に示すごとく、燃料デリバリパイプ202の両端側のパイプ側ボス208,216に対応するシリンダヘッド側ボス232,240を、中央側のシリンダヘッド側ボス234,236,238よりも径を小さくしても良い。
【0050】
このことにより燃料デリバリパイプ202の両端における締結部(パイプ側ボス208,216とシリンダヘッド側ボス232,240との締結構成)が、図3の(B)よりも更に低剛性化できる。
【0051】
このため燃料デリバリパイプ202を分割しなくても両端側での応力集中を防止でき、シリンダヘッド204,230側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
〈実施の形態3の効果〉(1)本実施の形態では、燃料デリバリパイプ202とシリンダヘッド204,230との締結において、燃料デリバリパイプ202の両端側の締結部の低剛性化は、締結部(パイプ側ボス208,216、あるいはパイプ側ボス208,216及びシリンダヘッド側ボス232,240)の径を小さくしたことで実現している。
【0052】
このことにより前記実施の形態1にて述べたごとく、燃料デリバリパイプ202を分割しなくても両端側での応力集中を防止でき、燃料デリバリパイプ202の強度を低下することなく、シリンダヘッド204,230側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
【0053】
更に燃料デリバリパイプ202全体が反ることがなく、燃料噴射弁206と燃料デリバリパイプ202とのシール性を維持できる。そしてシリンダヘッド204,230と燃料デリバリパイプ202との締結部に応力が集中することがなく耐久性を維持することができる。
【0054】
[実施の形態4]
〈実施の形態4の構成〉本実施の形態における締結部は、図4の(A)、(B)にそれぞれ示すごとくである。
【0055】
図4の(A)に示す燃料デリバリパイプ302では、両端側のパイプ側ボス308,316に対して設けられているリブ308b,316bは、中央側のパイプ側ボス310,312,314のリブ310b,312b,314bと同じ厚さである。両端側のパイプ側ボス308,316の径及び長さは、前記実施の形態1と同様に中央側のパイプ側ボス310,312,314と同じである。
【0056】
シリンダヘッド304については、そのシリンダヘッド側ボス320,322,324,326,328は高さが異なる。燃料デリバリパイプ302の両端側のパイプ側ボス308,316に対応するシリンダヘッド側ボス320,328の高さ(縦方向の長さ)の方が中央側に対応するシリンダヘッド側ボス322,324,326よりも高く形成されている。尚、全てのシリンダヘッド側ボス320〜328の頂部は、その上下位置に置いては同一の位置に存在する。
【0057】
図4の(B)に示す燃料デリバリパイプ402において、各パイプ側ボス408,410,412,414,416のリブ408b,410b,412b,414b,416bは全て同じ厚さである。両端側のパイプ側ボス408,416の径は中央側のパイプ側ボス410,412,414と同じであるが、高さ(縦方向の長さ)が両端側のパイプ側ボス408,416の方が高い。
【0058】
シリンダヘッド404については、そのシリンダヘッド側ボス420,422,424,426,428の高さ(縦方向の長さ)は全て同じである。ただし、パイプ側ボス408〜416の底部位置に対応して、シリンダヘッド側ボス420〜428の上下位置が調節されている。
〈実施の形態4の作用〉このようにパイプ側ボス308〜316,408〜416とシリンダヘッド側ボス320〜328,420〜428とのトータルの高さを、燃料デリバリパイプ302,402の両端側では中央側よりも高くしている。
【0059】
このことにより締結部が燃料デリバリパイプ302,402の両端側では中央側よりも低剛性に設定されている。したがってシリンダヘッド304,404と燃料デリバリパイプ302,402との熱膨張差により応力が集中する燃料デリバリパイプ302,402の両端部において中央部よりも応力による締結部の変形量を大きくできる。すなわち燃料デリバリパイプ302,402の両端部で締結部の柔軟性を大きく高めることができる。
〈実施の形態4の効果〉(1)本実施の形態では、燃料デリバリパイプ302,402とシリンダヘッド304,404との締結において、燃料デリバリパイプ302,402の両端側の低剛性化は、締結部のトータルの高さを燃料デリバリパイプ302,402の両端側で高くすることで実現している。
【0060】
このことにより前記実施の形態1にて述べたごとく、燃料デリバリパイプ302,402を分割しなくても両端側での応力集中を防止でき、燃料デリバリパイプ302,402の強度を低下することなく、シリンダヘッド304,404側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
【0061】
更に燃料デリバリパイプ302,402全体が反ることがなく、燃料噴射弁306,406と燃料デリバリパイプ302,402とのシール性を維持できる。そしてシリンダヘッド304,404と燃料デリバリパイプ302,402との締結部に応力が集中することがなく耐久性を維持することができる。
【0062】
[実施の形態5]
〈実施の形態5の構成〉本実施の形態の締結部は、図5に示すごとくである。
図5に示す燃料デリバリパイプ502は、両端側のパイプ側ボス508,516に対して設けられているリブ508b,516bは中央側のパイプ側ボス510,512,514のリブ510b,512b,514bと同じ厚さである。両端側のパイプ側ボス508,516の径は、中央側のパイプ側ボス510,512,514と同じであるが、高さ(縦方向の長さ)は両端側のパイプ側ボス508,516は、中央側のパイプ側ボス510,512,514より低い。尚、これらのパイプ側ボス508〜516は頂部の上下位置が一致するように形成されている。
【0063】
シリンダヘッド504において、燃料デリバリパイプ502の両端側のパイプ側ボス508,516に対応するシリンダヘッド側ボス520,528は、シリンダヘッド504からの高さ(縦方向の長さ)が中央側に対応するシリンダヘッド側ボス522,524,526よりも高い。
【0064】
そしてパイプ側ボス508〜516とこれに対応するシリンダヘッド側ボス520〜528との接続により形成される5つの締結部については、そのトータルの高さ(縦方向の長さ)は全て同じとされている。
【0065】
したがって両側の締結部では、中央側の締結部に比較してトータルの高さに対するシリンダヘッド側ボス520,528の高さの割合は、中央側よりも大きい。
〈実施の形態5の作用〉このように燃料デリバリパイプ502の両端側における締結部は、その高さに占めるシリンダヘッド側ボス520,528の割合を、中央側よりも大きくしている。燃料デリバリパイプ502は鉄合金製であり、シリンダヘッド504はアルミニウム合金製である。このため燃料デリバリパイプ502の両端側の締結部は、アルミニウム合金の割合が大きいことにより中央側よりも低剛性に設定されている。
〈実施の形態5の効果〉(1)燃料デリバリパイプ502とシリンダヘッド504との締結においては、燃料デリバリパイプ502の両端側の低剛性化は、締結部のトータルの高さに占めるシリンダヘッド側ボス520,528の割合を大きくすることで実現している。
【0066】
このことにより前記実施の形態1にて述べたごとく、燃料デリバリパイプ502を分割しなくても両端側での応力集中を防止でき、燃料デリバリパイプ502の強度を低下することなく、シリンダヘッド504側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
【0067】
更に燃料デリバリパイプ502全体が反ることがなく、燃料噴射弁506と燃料デリバリパイプ502とのシール性を維持できる。そしてシリンダヘッド504と燃料デリバリパイプ502との締結部に応力が集中することがなく、耐久性を維持することができる。
【0068】
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態における締結部の剛性を低下する構成を組み合わせても良い。このことにより更なる低剛性化を実現することができる。
【0069】
・前記各実施の形態では、燃料デリバリパイプは鉄合金製であり、シリンダヘッドはアルミニウム合金製であったが、これ以外の材質の組み合わせでも良い。
更に、燃料デリバリパイプとシリンダヘッドとが同一の材質でも温度差により熱膨張差が生じる。したがって燃料デリバリパイプとシリンダヘッドとが同一の材質であっても、前記実施の形態1〜4に示した構成を採用することで、燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも締結部を低剛性にできると共に、燃料デリバリパイプの強度を低下させることなく、シリンダヘッド側との熱膨張差に伴う歪みを緩和することができる。
【符号の説明】
【0070】
2…燃料デリバリパイプ、2a…燃料導入口、4…シリンダヘッド、6…燃料噴射弁、6a…後端部、6b…オーリング、8,10,12,14,16…パイプ側ボス、8a,10a,12a,14a,16a…ボルト挿通孔、8b,10b,12b,14b,16b…リブ、8c,16c…締結面、18…ボルト、20,22,24,26,28…シリンダヘッド側ボス、30,32,34,36…挿入部、102…燃料デリバリパイプ、104…シリンダヘッド、106…燃料噴射弁、108,110,112,114,116…パイプ側ボス、108c,116c…締結面、110b,112b,114b…リブ、118…ボルト、120,128…シリンダヘッド側ボス、202…燃料デリバリパイプ、204…シリンダヘッド、206…燃料噴射弁、208,210,212,214,216…パイプ側ボス、208b,210b,212b,214b,216b…リブ、220,222,224,226,228…シリンダヘッド側ボス、230…シリンダヘッド、232,234,236,238,240…シリンダヘッド側ボス、302…燃料デリバリパイプ、304…シリンダヘッド、306…燃料噴射弁、308,310,312,314,316…パイプ側ボス、308b,310b,312b,314b,316b…リブ、320,322,324,326,328…シリンダヘッド側ボス、402…燃料デリバリパイプ、404…シリンダヘッド、406…燃料噴射弁、408,410,412,414,416…パイプ側ボス、408b,410b,412b,414b,416b…リブ、420,422,424,426,428…シリンダヘッド側ボス、502…燃料デリバリパイプ、504…シリンダヘッド、506…燃料噴射弁、508,510,512,514,516…パイプ側ボス、508b,510b,512b,514b,516b…リブ、520,522,524,526,528…シリンダヘッド側ボス、M1,M2…モーメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドと燃料デリバリパイプとの締結構造であって、前記シリンダヘッドと前記燃料デリバリパイプとにそれぞれ3つ以上設けられたボス間をボルト締結することにより形成された締結部は、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする燃料デリバリパイプ締結構造。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッド又は前記燃料デリバリパイプにおけるボスを補強するリブを、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも薄く又は無くすことで、前記締結部が前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする燃料デリバリパイプ締結構造。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッド又は前記燃料デリバリパイプにおけるボスの径を、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも小径とすることで、前記締結部が前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする燃料デリバリパイプ締結構造。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッドのボスと前記燃料デリバリパイプのボスとのトータルの高さを、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも高くすることで、前記締結部が前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする燃料デリバリパイプ締結構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッドはアルミニウム合金製であることを特徴とする燃料デリバリパイプ締結構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記燃料デリバリパイプは鉄合金製であることを特徴とする燃料デリバリパイプ締結構造。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料デリバリパイプ締結構造において、前記シリンダヘッドはアルミニウム合金製であり、前記燃料デリバリパイプは鉄合金製であり、前記シリンダヘッドのボスと前記燃料デリバリパイプのボスとのトータルの高さに対する前記シリンダヘッドのボスの高さの割合を、前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも大きくすることで、前記締結部が前記燃料デリバリパイプの両端側では中央側よりも低剛性に設定されていることを特徴とする燃料デリバリパイプ締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92123(P2013−92123A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235200(P2011−235200)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】