説明

燃料電池のセル構造

【課題】触媒層とガス拡散層との間に、凹凸を有する多孔質層を備えることにより、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【解決手段】電解質層7の両面にそれぞれ触媒層6、電極となる多孔質層5、ガス拡散層18を順に積層して単位セルを構成する燃料電池のセル構造において、前記多孔質層5と触媒層6との接合面を、多数の凹凸部からなる凹凸面Sで形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両面に触媒層と電極となる多孔質層とを積層した構成を有する燃料電池のセル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体高分子型燃料電池のセル構造は、たとえば白金や白金を含む合金等の触媒層を、多孔質層に担持し、前記多孔質層を電解質膜またはガス拡散層上に均一に接合した電極構造のものが知られている。これによれば、プロトン伝導性とガス拡散性のバランスを均等に維持することができる。(例えば、特許文献1、参照。)
【特許文献1】特開2002−298860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、固体高分子型燃料電池における電極は、触媒層はガス拡散層と比較してガスの透過性が低く、電解質膜近傍の触媒粒子に十分にガスが拡散せず、触媒の利用効率が低く、また電解質膜近傍で生成された水分が速やかに除去されないため、発電効率が悪化するという問題があった。
【0004】
そこで本発明では、電解質膜近傍における触媒の利用効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電解質層の両面にそれぞれ触媒層、電極となる多孔質層、ガス拡散層を順に積層して単位セルを構成する燃料電池のセル構造において、前記多孔質層と触媒層との接合面を、多数の凹凸部からなる凹凸面で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、触媒層との接合面を多数の凹凸部からなる凹凸面で形成した多孔質層を該触媒層とガス拡散層との間に設けたことで、多孔質層と触媒層との間の接触面積が増大し、より多くの反応ガスまたは酸化剤ガスが多孔質層と触媒層との間を通過するので、反応ガスがより活性化され、またガス透過性が低い触媒層の電解質膜近傍の触媒層においても十分電解質膜にガスを行き渡らせることが可能となる。これによって、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本実施形態について図1に基づき説明する。この電極構造では、電解質膜7の両面側から触媒層6を積層し、さらに両外側から多孔質層5、ガス拡散層18の順に積層した構成を有している。前記多孔質層5と前記触媒層6との接合面は多数の凹凸部からなる凹凸面Sとしてある。
【0008】
前記凹凸面Sの形成方法の一例を以下に説明する。まず、加温した基盤上にガス拡散層18を載せガス拡散層18を温める。次にカーボン粒子と撥水性を有する電解質とを溶媒で溶かした懸濁液を前記温めたガス拡散層18上に噴霧して塗布し、多孔質層5を構成する。ガス拡散層18の熱により懸濁液が揮発することにより、前記多孔質層5の表面には細かい凹凸部が形成される。ここで、噴霧した懸濁液は半固溶の状態でガス拡散層18に塗着するため、多孔質層5に形成された凹凸部の大きさは前記懸濁液噴霧の粒径に依存する。
【0009】
多孔質層5への触媒層6の積層方法としては、たとえば、触媒層6は、多孔質層5上に、Pt等の貴金属を付したカーボン粒子と電解質膜7と同一の成分で構成された電解質を含む溶液を懸濁した懸濁液を多孔質層5に形成した凹凸面Sに塗布し、触媒層6の凹凸部と対向する面が略平坦になるように形成する。またスクリーン印刷等の手法を用いて多孔質層5へ触媒層6を積層してもよい。なお、触媒金属の担持量としては、電解質膜7の単位面積当たり質量として、例えば0.1〜2.0g/cm2とする。
【0010】
以上の方法で生成したガス拡散層18、多孔質層5および触媒層6を積層したものを加熱し、電解質膜7を圧着することによってセルを構成する。
【0011】
本実施形態の効果について以下に説明する。本構成では、多孔質層5と触媒層6との接合面を多数の凹凸部を有する凹凸面Sにて形成したことにより、反応ガスと触媒層6との接する面積が増加するため、活性化した反応ガスを従来よりも多く得ることが可能となる。また、従来はガス拡散層と比較して触媒層はガスの透過性が低く、電解質膜と接する部分の触媒層にまで、ガスが十分拡散しないので従来は触媒層の利用効率が低く、また電解質膜の近傍で生成された水分が速やかに除去されないため発電効率が低かったが、本実施形態では多孔質層5と触媒層6とを凹凸面Sにて接合したことにより、電解質膜7近傍の触媒層6にまで十分なガスを行き渡らせることが可能となった。
【0012】
一方、前述したような構成を有する反応部の触媒層6と電解質膜7との境界面を略平坦に形成した場合、ガラス転移点温度以上においても粘性の高い電解質からなる電解質膜6を適用した場合であっても、略均一な接合界面を得ることができる。
【0013】
第2実施形態の燃料電池の電極部分について、第1実施形態と異なる部分について図2に基づき説明する。本実施形態の燃料電池の電極部分は、電解質膜14に触媒層13を積層し、さらに両外側から多孔質層12、ガス拡散層20の順に積層する。ここで、前記多孔質層12の前記触媒層13側の面には多数の凹凸部が形成され、前記触媒層13の前記多孔質層12と対向する面においても、第1の実施形態と同様に多孔質層12と触媒層13との接合面を凹凸面(第1の凹凸面)Sとすると共に、触媒層13と電解質層14との間の接合面も、多数の凹凸部を有する第2の凹凸面S2を形成する。
【0014】
均一な厚みの触媒層13は、多孔質層12の凹凸部を有する面に触媒と電解質膜14と同一の成分で構成された電解質を含有する懸濁液を塗布、ホットプレスを施すことによって構成される。
【0015】
次に、前述した触媒層13に電解質膜14を接合する。たとえば、触媒層13と電解質膜14は、ホットプレス等により、電解質膜14と同一の成分からなる電解質材料をガラス転移点温度以上の温度に加熱および溶融して接合する。このとき、電解質膜14はガラス転移点温度以上の温度であるため、十分に流動的であり、触媒層13の凹凸部に円滑に隙間なく充填できる。したがって、電解質膜14に傷等をつけることなく、触媒層13の多孔質層12と接する面に沿って、触媒層13の電解質膜14と接する面にも凹凸を形成することが可能となる。
【0016】
本実施形態における効果について以下に説明する。本発明では、触媒層13の電解質膜14と接する面にも、触媒層13が多孔質層12と接する面に沿って第2の凹凸面S2を形成することにより、触媒層13と電解質膜14とが接する反応面の増加が可能となる。したがって、ガス拡散層20を透過した反応ガスまたは酸化剤ガスが電解質膜14において反応する際、従来の燃料電池よりも反応面の面積が増えるため燃料電池の発電効率を向上することができる。
【0017】
また、第2の凹凸面S2の凹凸部の大きさを第1の凹凸面Sの凹凸部の二分の一以下の高さを有する小さい凹凸部となるように前記触媒層13の電解質膜14との接合面に形成することにより、電解質膜14に触媒層13を圧着する際、電解質膜14の潰れを防止することができる。
【0018】
本実施形態の燃料電池の電極部分について、他の実施形態と異なる部分について図3に基づき説明する。本実施形態の燃料電池の電極部分は、電解質膜11に触媒層9を積層し、さらに両外側から多孔質層8、ガス拡散層19の順に積層する。ここで、第2の実施形態と同様に前記多孔質層8と前記触媒層9との間の接合面を第1の凹凸面Sとすると共に、前記触媒層9と電解質膜11との間の接合面に多数の凹凸部を有する第2の凹凸面S2を形成する。
【0019】
前記触媒層9と前記電解質膜11との間の凹凸面S2に電解質層10を充填し接合する。このとき、略平坦な面を有する電解質膜11と対向する面に第2の凹凸面S2を有する触媒層9とを接合するため、前記電解質膜11と前記触媒層9との間に間隙が生じる。したがって、電解質膜11と同一の成分からなる電解質材料をガラス転移点温度以上の温度に加熱および溶融して接合する。このとき、電解質膜11はガラス転移点温度以上の温度であるため、十分に流動的であり、触媒層9の凹凸部に円滑に隙間なく充填できる。
【0020】
本実施形態における効果について以下に説明する。本発明は、電解質膜11に触媒層9を積層し、さらに両外側から多孔質層8、ガス拡散層19の順に積層し、前記電解質膜11と前記触媒層9との間に隙間なく電解質層10を充填することにより、前記触媒層9と前記電解質層10との表面積が増えるため発電効率を向上することができる。
【0021】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の技術的思想の範囲内で当業者がなしうるさまざまな改良、変更が含まれることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態の電極反応部の構成図である。
【図2】第2の実施形態の電極反応部の構成図である。
【図3】第3の実施形態の電極反応部の構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ガス拡散層
2 多孔質層
3 触媒層
4 電解質膜
5 多孔質層
6 触媒層
7 電解質膜
8 多孔質層
9 触媒層
10 電解質
11 電解質膜
12 多孔質層
13 触媒層
14 電解質膜
18 ガス拡散層
19 ガス拡散層
20 ガス拡散層
S 凹凸面(第1の凹凸面)
S2 第2の凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層の両面にそれぞれ触媒層、電極となる多孔質層、ガス拡散層を順に積層して単位セルを構成する燃料電池のセル構造において、
前記多孔質層と触媒層との接合面を、多数の凹凸部からなる凹凸面で形成したことを特徴とする燃料電池のセル構造。
【請求項2】
前記触媒層と電解質層との接合面を平坦に形成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項3】
前記触媒層と前記電解質層との接合面を、前記凹凸面の凹凸部と対応する位置に凹凸部を有する第2の凹凸面で形成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項4】
前記電解質層は、電解質膜と、この電解質膜と前記第2の凹凸面をなす触媒層との間に充填された電解質材料からなることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池のセル構造。
【請求項5】
前記第2の凹凸面に形成した凹凸部の高さを前記電解質膜の二分の一以下としたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の燃料電池のセル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−310166(P2006−310166A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132879(P2005−132879)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(800000079)株式会社山梨ティー・エル・オー (11)
【Fターム(参考)】