説明

燃料電池システム

【課題】 燃料電池システムが低発電出力する際に、発電効率および熱回収湯温の低下を招くことなく燃料電池を早期に暖機する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 燃料電池システムは、燃料電池システムの起動に際して、ステップ112にて、所定条件が成立した場合に燃料電池の発電を開始して所定発電量となるように同燃料電池の発電出力を制御し、ステップ114〜118にて、発電出力がユーザ消費電力を超えた場合にヒータに通電を開始する。検出された熱媒体の温度が通電停止温度以上となった場合、その時点に熱媒体加熱手段への通電を停止するとともに(ステップ120〜124)、その時点以降においてユーザ消費電力に追従するように燃料電池の発電出力を制御する(ステップ126)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を備えた燃料電池システムに関し、特に燃料電池の起動時の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
この燃料電池システムとしては、燃料極および酸化剤極にそれぞれ燃料および酸化剤ガスが供給されそれらの化学反応によって発電する燃料電池10と、燃料電池10の発電出力を交流電力に変換して電源ラインに供給するインバータ11と、燃料電池10との間で熱交換する熱媒体が循環する熱媒体循環回路20と、熱媒体循環回路20上に設けられて熱媒体を循環させる循環手段24と、熱媒体循環回路20上に設けられて通電されて熱媒体を昇温する熱媒体加熱手段32とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の燃料電池システムにおいては、この燃料電池においては発電に伴い内部で水分が発生する。また、燃料電池は、燃料極と空気極との間に介在されている電解質の機能を確保する目的で、燃料電池に供給される改質ガスおよび空気を加湿している。低温環境下においては、これら水分が凍結し燃料電池が起動しないあるいは出力が低下するという問題があり、これに対処するために、燃料電池の一部を集中的に電気ヒータなどで加熱することによりその一部において発電を可能とし、その一部の発電による自己発熱を利用して残りの部分を加熱する起動方法が実施されている。具体的には、燃料電池温度Tfcが運転可能温度(燃料電池バイパス温度Tfb)未満の場合には電気ヒータ32で加熱し、燃料電池バイパス温度Tfb以上になると、発電可能となった一部で発電を開始してその発電による自己発熱と電気ヒータ32による加熱とによりさらに加熱し、ラジエータバイパス温度Trb以上となると、燃料電池全体で発電が可能であると判断して定常運転時の制御を行っている。
【0004】
また、燃料電池システムの起動方法として、燃料ガスを供給して燃料電池の発電を行い、その発電電力を利用して内部負荷である負荷昇温用ヒータを加熱し、このヒータの熱によって燃料電池を昇温する可搬型燃料電池電源の起動方法において、昇温が開始して電池電流が上限値まで増加する間は、電池電圧が下限値に維持されるように電池電流の増加に応じて内部負荷を制御する電圧基準制御ステップと、電池電流が上限値に達してから後は、電池電流が上限値に維持されるように電池電圧の増加に応じて内部負荷を制御する電流基準制御ステップとから成るものが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
この特許文献2に記載の燃料電池システムの起動方法においては、負荷昇温が開始して電池電流が上限値に達するまでの間は、電池電圧が下限値に維持されるように電池電流の増加に応じて内部負荷を制御するので、各瞬時において最大の負荷に電力供給していることとなり、一方、電池電流が上限値に達してから後は、電池電流が上限値に維持されるように電池電圧の増加に応じて内部負荷を制御するので、燃料電池電源の最大発電量を負荷に供給することとなる。すなわち、燃料電池が運転温度に昇温するまでの間、燃料電池が出力可能な最大電力を発電させている。また、燃料電池の発電出力を全て内部負荷であるヒータで消費している。
【特許文献1】特開2003−249251号公報(第7−9頁、図1,3)
【特許文献2】特開平07−29585号公報(第2−3頁、図1−7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の燃料電池システムにおいては、低発電出力域では、燃料電池10の自己発熱量も少なく、これにより燃料電池10の熱媒体(冷却水)の温度上昇が遅く、長時間に渡って熱媒体温度が規定温度以下となり、発電効率の低下を招くという問題があった。また、上述した特許文献1に記載の燃料電池システムにおいては、昇温時の発電出力を全てヒータに使用しているため、燃料電池が暖機されるまでユーザが発電出力を使用することができなかった。一方、発電出力を全てユーザに供給した場合、燃料電池の暖機完了に時間がかかるため、発電効率の低下を招くという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した各問題を解消するためになされたもので、燃料電池システムが低発電出力する際に、発電効率の低下を招くことなく燃料電池の早期暖機とユーザの要求電力の充足との両立を達成可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、燃料極および酸化剤極にそれぞれ燃料および酸化剤ガスが供給されそれらの化学反応によって発電する燃料電池と、この燃料電池の発電出力を供給する電源ラインとを備えた燃料電池システムにおいて、燃料電池を昇温する加熱手段と、燃料電池の発電出力を検出する発電出力検出手段と、電源ラインで消費されるユーザ消費電力を検出するユーザ消費電力検出手段と、燃料電池システムの起動に際して、発電出力を制御するとともに、発電出力のうちユーザ消費電力を超過した電力を加熱手段に供給するように制御する制御手段とを備えたことである。
【0009】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、制御手段は、所定条件が成立した場合に燃料電池の発電を開始して所定発電量となるように同燃料電池の発電出力を制御する第1発電制御手段と、発電出力がユーザ消費電力を超えたか否かを判定する判定手段と、この判定手段によって発電出力がユーザ消費電力を超えたと判定された場合に加熱手段に通電を開始する通電開始手段とを備えたことである。
【0010】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、燃料電池の温度を検出する燃料電池温度検出手段をさらに備え、制御手段は、燃料電池温度検出手段によって検出された燃料電池の温度が通電停止温度以上となった場合、その時点で加熱手段への通電を停止する通電停止手段と、時点以降においてユーザ消費電力に追従するように燃料電池の発電出力を制御する第2発電制御手段とをさらに備えたことである。
【0011】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項3の何れか一項において、燃料電池との間で熱交換する熱媒体が循環する熱媒体循環回路と、この熱媒体循環回路上に設けられて熱媒体を循環させる循環手段とをさらに備え、加熱手段は、熱媒体循環回路上に設けられて通電されて熱媒体を昇温する熱媒体加熱手段であることである。
【0012】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項4において、燃料電池温度検出手段として、熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出手段を採用したことである。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、制御手段が、燃料電池システムの起動に際して、発電出力を制御するとともに、発電出力のうちユーザ消費電力を超過した電力を加熱手段に供給するように制御する。これにより、燃料電池システムの起動時において、燃料電池システムが低発電出力する際に、その低発電出力による自己発熱に加えて超過した電力が供給された加熱手段による加熱によって燃料電池を速やかに暖機することができるので、発電効率の向上を図ることができる。したがって、燃料電池の発電出力をユーザに供給した上で燃料電池の早期暖機に使用するので、燃料電池の早期暖機とユーザの要求電力の充足との両立を達成することができる。
【0014】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1に係る発明において、第1発電制御手段が、所定条件が成立した場合に燃料電池の発電を開始して所定発電量となるように同燃料電池の発電出力を制御し、判定手段が、発電出力がユーザ消費電力を超えたか否かを判定し、通電開始手段が、判定手段によって発電出力がユーザ消費電力を超えたと判定された場合に加熱手段に通電を開始する。これにより、確実にユーザに必要な電力を確保するとともに余剰電力を使用して効率よく燃料電池を暖機することができる。
【0015】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項2に係る発明において、通電停止手段が、燃料電池温度検出手段によって検出された燃料電池の温度が通電停止温度以上となった場合、その時点で加熱手段への通電を停止し、第2発電制御手段が、その時点以降においてユーザ消費電力に追従するように燃料電池の発電出力を制御する。これにより、燃料電池の温度が通電停止温度になれば的確に発電出力をユーザ消費電力に制御するので、最適な発電出力および温度制御をすることができる。
【0016】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3の何れか一項に係る発明において、燃料電池との間で熱交換する熱媒体が循環する熱媒体循環回路と、この熱媒体循環回路上に設けられて熱媒体を循環させる循環手段とをさらに備え、加熱手段は、熱媒体循環回路上に設けられて通電されて熱媒体を昇温する熱媒体加熱手段であることにより、燃料電池の温度調整を容易かつ的確に実施することができる。
【0017】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項4に係る発明において、燃料電池温度検出手段として、熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出手段を採用したことにより、燃料電池の温度を容易かつ的確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による燃料電池システムの一実施の形態について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは燃料電池10とこの燃料電池10に必要な水素ガスを含む改質ガスを生成する改質器20を備えている。
【0019】
燃料電池10は、燃料極11と酸化剤極である空気極12と両極11,12間に介在された電解質13を備えており、燃料極11に供給された改質ガスおよび空気極12に供給された酸化剤ガスである空気(カソードエア)を用いて発電するものである。なお、燃料電池10の空気極12には、空気を供給する供給管61およびカソードオフガスを排出する排出管62が接続されており、これら供給管61および排出管62の途中には、空気を加湿するための加湿器14が設けられている。この加湿器14は水蒸気交換型であり、排出管62中すなわち空気極12から排出される気体中の水蒸気を除湿してその水蒸気を供給管61中すなわち空気極12へ供給される空気中に供給して加湿するものである。なお、空気の代わりに空気の酸素富化したガスを供給するようにしてもよい。
【0020】
改質器20は、燃料を水蒸気改質し、水素リッチな改質ガスを燃料電池10に供給するものであり、バーナ21、改質部22、一酸化炭素シフト反応部(以下、COシフト部という)23および一酸化炭素選択酸化反応部(以下、CO選択酸化部という)24から構成されている。燃料としては天然ガス、LPG、灯油、ガソリン、メタノールなどがあり、本実施の形態においては天然ガスにて説明する。
【0021】
バーナ21は、起動時に外部から燃焼用燃料および燃焼用空気が供給され、または定常運転時に燃料電池10の燃料極11からアノードオフガス(燃料電池に供給され使用されずに排出された改質ガス)が供給され、供給された各ガスを燃焼して燃焼ガスを改質部22に導出するものである。この燃焼ガスは改質部22を(同改質部22の触媒の活性温度域となるように)加熱し、その後燃焼ガス用凝縮器34を通ってその燃焼ガスに含まれている水蒸気が凝縮されて外部に排気される。
【0022】
改質部22は、外部から供給された燃料に蒸発器25からの水蒸気(改質水)を混合した混合ガスを改質部22に充填された触媒により改質して水素ガスと一酸化炭素ガスを生成している(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気を水素ガスと二酸化炭素とに変成している(いわゆる一酸化炭素シフト反応)。これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)はCOシフト部23に導出される。
【0023】
COシフト部23は、この改質ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気をその内部に充填された触媒により反応させて水素ガスと二酸化炭素ガスとに変成している。これにより、改質ガスは一酸化炭素濃度が低減されてCO選択酸化部24に導出される。
【0024】
CO選択酸化部24は、改質ガスに残留している一酸化炭素と外部からさらに供給されたCO酸化用の空気とをその内部に充填された触媒により反応させて二酸化炭素を生成している。これにより、改質ガスは一酸化炭素濃度がさらに低減されて(10ppm以下)燃料電池10の燃料極11に導出される。
【0025】
蒸発器25は、一端が貯水器50内に配置され他端が改質部22に接続された改質水供給管68の途中に配設されている。改質水供給管68には改質水用ポンプ53が設けられている。このポンプ53は制御装置90によって制御されており、貯水器50内の改質水として使用する回収水を蒸発器25に圧送している。蒸発器25は例えばバーナ21から排出される燃焼ガス、改質部22、COシフト部23などの熱によって加熱されており、これにより圧送された改質水を水蒸気化する。
【0026】
改質器20のCO選択酸化部24と燃料電池10の燃料極11とを連通する配管64の途中には、凝縮器30が設けられている。この凝縮器30は改質ガス用凝縮器31、アノードオフガス用凝縮器32、カソードオフガス用凝縮器33および燃焼ガス用凝縮器34が一体的に接続された一体構造体である。改質ガス用凝縮器31は配管64中を流れる燃料電池10の燃料極11に供給される改質ガス中の水蒸気を凝縮する。アノードオフガス用凝縮器32は、燃料電池10の燃料極11と改質器20のバーナ21とを連通する配管65の途中に設けられており、その配管65中を流れる燃料電池10の燃料極11から排出されるアノードオフガス中の水蒸気を凝縮する。カソードオフガス用凝縮器33は、排出管62の加湿器14の下流に設けられており、その排出管62中を流れる燃料電池10の空気極12から排出されるカソードオフガス中の水蒸気を凝縮する。
【0027】
上述した凝縮器31〜34は配管66を介して純水器40に連通しており、各凝縮器31〜34にて凝縮された凝縮水は、純水器40に導出され回収されるようになっている。純水器40は、凝縮器30から供給された凝縮水すなわち回収水を内蔵のイオン交換樹脂によって純水にするものであり、純水化した回収水を貯水器50に導出するものである。なお、貯水器50は純水器40から導出された回収水を改質水として一時的に溜めておくものである。また、純水器40には水道水供給源(例えば水道管)から供給される補給水(水道水)を導入する配管が接続されており、純水器40内の貯水量が下限水位を下回ると水道水が供給されるようになっている。
【0028】
燃料電池システムは、第1熱交換器71と、第1熱交換器71と燃料電池10との間に設けられて第1熱媒体(熱媒体である)が循環される熱媒体循環回路72と、熱媒体循環回路72上に第1熱媒体を循環させる第1ポンプ(循環手段)73が設けられている。これにより、第1熱媒体が燃料電池10を通過する際には第1熱媒体と燃料電池10との間で熱交換が行われる。また、熱媒体循環回路72上には、通電されて第1熱媒体を昇温する熱媒体加熱手段(加熱手段:燃料電池10を加熱する手段である。)であるヒータ78(電気ヒータ)が設けられている。このヒータ78は、電気抵抗が可変であるヒータであり、燃料電池10の発電出力とユーザ消費電力との差に応じてヒータ10の電気抵抗を制御するようになっている。さらに、熱媒体循環回路72の燃料電池10の出口付近には第1熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出手段(燃料電池温度検出手段)である温度センサ85が設けられている。制御装置90は、温度センサ85によって検出された第1熱媒体の温度を入力しその温度に基づいてヒータ78への通電・非通電およびヒータ78の電気抵抗を制御している。
【0029】
また、燃料電池システムは、温水を貯留する温水貯留槽である貯湯槽74を備えている。この貯湯槽74は、1つの柱状容器を備えており、その内部に温水が層状に、すなわち上部の温度が最も高温であり下部にいくにしたがって低温となり下部の温度が最も低温であるように貯留されるようになっている。貯湯槽74の柱状容器の下部には水道水などの水(低温の水)が補給され、貯湯槽74に貯留された高温の温水が貯湯槽74の柱状容器の上部から導出されるようになっている。第1熱交換器71と貯湯槽74との間に第2熱媒体である温水が循環される温水循環回路75と、温水循環回路75上に温水を循環させる第2ポンプ76が設けられている。温水循環回路75の一端および他端は貯湯槽74の上部および下部に接続されている。第2ポンプ76は、貯湯槽74の下部の低温の温水を吸い込んで温水循環回路75を通水させて貯湯槽74の上部に吐出したり、逆に貯湯槽74の上部の高温の温水を吸い込んで温水循環回路75を通水させて貯湯槽74の下部に吐出したりするものである。
【0030】
また、温水循環回路75上に第2熱交換器82が設けられている。この第2熱交換器82、凝縮器30との間には凝縮器熱媒体が循環する凝縮器熱媒体循環回路83が設けられている。凝縮器熱媒体循環回路83上に凝縮器熱媒体を循環させる第3ポンプ84が設けられている。これにより、第2熱交換器82においては、凝縮器熱媒体循環回路83を通過中の凝縮器熱媒体と温水循環回路75を通過中の温水との間で熱交換が行われて、温水より高温である凝縮器熱媒体により温水が昇温される。
【0031】
さらに、燃料電池システムは、インバータ45を備えている。インバータ45は、燃料電池10の発電出力を交流電力に変換して電源ライン(交流用電源ライン)46に供給するものである。電源ライン46は、ユーザに商用電源として使用される交流電力を供給するラインであり、ユーザは電化製品をこの電源ライン46に接続して電化製品を使用する。また、インバータ45は、発電出力を降圧または昇圧して電源ライン(直流用電源ライン)47に供給している。電源ライン47は、燃料電池10の構成部材である各ポンプ73,76,83、各バルブ(図示省略)、バーナ21の着火装置、ヒータ78などの電気部品いわゆる補機に直流電力を供給するラインである。インバータ45は、燃料電池10の発電出力を検出する機能を有し、さらに電源ライン46および47の電気的負荷すなわち各ライン46,47で消費される消費電力を検出する機能も有する。なお、電源ライン46で消費される消費電力を特にユーザ消費電力という。
【0032】
また、上述した温度センサ85、第1〜第3ポンプ73,76,83、インバータ45およびヒータ78は制御装置90に接続されている(図2参照)。制御装置90はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、図3のフローチャートに対応したプログラムを実行して、燃料電池システムの起動に際して、燃料電池10の発電出力を制御するとともに、その発電出力のうちユーザ消費電力を超過した電力をヒータ78に供給する制御を実行している。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
【0033】
次に、上述した燃料電池システムの作動について図3および図4を参照して説明する。制御装置90は、図示しない起動スイッチがオンされると、図3に示すプログラムを実行する。ステップ102において、燃料電池システムの起動が開始される。具体的には、燃焼用燃料および燃焼用空気がバーナ21に供給されて燃焼される。燃焼ガスの加熱によって改質部22が所定温度になると、燃料および改質水が改質部22に供給される。またCO選択酸化部24に酸化用空気が供給される。しかし、改質装置20から導出される改質ガスは燃料電池10には供給されていない。
【0034】
また、制御装置90は、燃料電池の冷却水温度Thを温度センサ85によって検出し、その温度に基づいて第1熱媒体である冷却水の温度を昇温している(ステップ104,106)。具体的には、貯湯槽74の温水を利用して起動開始直後の低温の冷却水を昇温している。すなわち、第2ポンプ76を駆動させて貯湯槽74の上部から高温の温水を第1熱交換器71に送出する。また第1ポンプ73を駆動させ燃料電池10内の冷却水を第1熱交換器71に送出する。これにより第1交換機71にて冷却水が温水によって昇温される。
【0035】
そして、燃料電池10の冷却水温度Thが第1規定温度T1に到達した時点(図4の時刻t1)より後であって、改質装置20の暖機が完了した時点(図4の時刻t2)に、燃料電池10の発電を開始する(ステップ108〜112)。ステップ108にて、冷却水温度Thが第1規定温度T1に到達したか否かを判定し、到達するまでステップ104〜108の処理を繰り返し実行し、到達したならばプログラムをステップ110に進める。ステップ110にて、改質器20の暖機が完了したか否かを判定し、暖機が完了するまでステップ104〜110の処理を繰り返し実行し、完了したならばプログラムをステップ212に進める。暖機完了の判定においては、例えばCO選択酸化部24内が所定温度に到達していれば完了していると判定する。暖機が完了していれば、改質装置20から導出される改質ガス中の水素量および一酸化炭素濃度が規定値に到達していると判定される。なお、第1規定温度T1は、燃料電池10の所望の発電電流値に対して同燃料電池10の燃料極または空気極内の水収支がゼロとなる第1熱媒体の温度として規定されるものであり、予め制御装置90の記憶部91に記憶されている。
【0036】
制御装置90は、ステップ112(第1発電制御手段)にて、改質装置20から導出される改質ガスを燃料電池10に供給するようにして、燃料電池10の発電を開始する。すなわち、上述した所定条件が成立した場合に燃料電池10の発電を開始して所定発電量となるように燃料電池10の発電出力を制御する。所定発電量は、予め設定された起動開始後の最初の目標発電量であり、燃料電池10の最大出力電力以下となるように設定されている。具体的には、時刻t2以降においては、発電出力がユーザ消費電力(ユーザ負荷電力)にかかわらず所定発電量となるまで徐々に増加し、所定発電量に到達した後はその発電量を維持するように発電する。これにより、燃料電池10に能力以上の発電をさせないでダメージを与えることなくでき得る限り自己発熱量を大きくして暖機時間を短縮することができる。
【0037】
このように、燃料電池10の発電が開始すると、発電による自己発熱によって燃料電池10は昇温し、上述した貯湯槽74の温水を利用する冷却水の昇温に加えて、冷却水がさらに昇温される。このように冷却水が自己発熱によって昇温されるなかで、燃料電池10の発電出力がユーザ消費電力(ユーザ負荷電力)を超えると、ヒータ78による加熱よっても冷却水を昇温する。具体的には、制御装置90は、ステップ114において、インバータ45によって燃料電池10の発電出力を検出し、ステップ116において、その検出した発電出力がユーザ負荷電力以上であるかすなわち発電出力がユーザ消費電力を超えたか否かを判定する(判定手段)。ステップ118(通電開始手段)において、ステップ116にて発電出力がユーザ消費電力を超えたと判定された場合にヒータ78に通電を開始する(図4の時刻t3)。これにより、ヒータ78による加熱がさらに加わるので、冷却水の昇温はより加速されることとなる。
【0038】
このように燃料電池10の自己発熱およびヒータ78によって暖機されている間、制御装置90は、燃料電池10の冷却水温度Thを温度センサ85によって検出し(ステップ120)、燃料電池10の冷却水温度Thが通電停止温度である第2規定温度T2(例えば60℃)に到達すると、(図4の時刻t4)、その時点にてヒータ78への通電を停止する(ステップ122)。ステップ120,122は通電停止手段である。また、制御装置90は、燃料電池10の冷却水温度Thが第2規定温度T2に到達した時点以降においては、ユーザ消費電力に追従するように燃料電池10の発電出力を制御する(ステップ126:第2発電制御手段)。なお、第2規定温度T2は、長時間その温度で運転しても一酸化炭素被毒などの影響の小さい温度に設定される。
【0039】
そして、制御装置90は、燃料電池の冷却水温度Thを温度センサ85によって検出し(ステップ128)、燃料電池の冷却水温度Thが定常運転温度Tb(例えば80℃)に到達すると(図4の時刻t5)、それ以降はシステムが停止されるまで、冷却水温度Thが定常運転温度Tbに維持されるように調整する(ステップ126〜132)。具体的には、燃料電池10内の冷却水(熱媒体)が定常運転温度Tbより高温である場合、第2ポンプ76を駆動させて貯湯槽74の下部から低温の温水を第1熱交換器71に流通させ、第1ポンプ73を駆動させて燃料電池10内の冷却水(熱媒体)を第1熱交換器71に流通させ、これにより、燃料電池10内の冷却水を降温させる。なお、定常運転温度Tbは、高効率が得られる温度に設定される。
【0040】
例えば、ユーザ負荷電力が低電力である場合において、本発明を適用しないで発電開始後ユーザ負荷電力に追従する追従制御をすぐ実施すれば、図5に示すように、燃料電池10の冷却水温度は、発電出力が低いため自己発熱が小さく、徐々にしか昇温しないので、発電効率は良くない。しかし、上述した説明から理解できるように、この実施の形態においては、制御装置90が、燃料電池システムの起動に際して、発電出力を制御するとともに、発電出力のうちユーザ消費電力を超過した電力をヒータ78に供給するように制御する。これにより、燃料電池システムの起動時において、燃料電池システムが低発電出力する際に、その低発電出力による自己発熱に加えて超過した電力が供給されたヒータ78による加熱によって燃料電池10を速やかに暖機することができるので、熱回収湯温および発電効率の向上を図ることができる。したがって、燃料電池10の発電出力をユーザに供給した上で燃料電池10の早期暖機に使用するので、燃料電池10の早期暖機とユーザの要求電力の充足との両立を達成することができる。
【0041】
また、第1発電制御手段(ステップ112)が、所定条件が成立した場合に燃料電池10の発電を開始して所定発電量となるように燃料電池10の発電出力を制御し、判定手段(ステップ114,116)が、発電出力がユーザ消費電力を超えたか否かを判定し、通電開始手段(ステップ118)が、判定手段によって発電出力がユーザ消費電力を超えたと判定された場合にヒータ78に通電を開始する。これにより、確実にユーザに必要な電力を確保するとともに余剰電力を使用して効率よく燃料電池を暖機することができる。
【0042】
また、通電停止手段(ステップ124)が、検出された熱媒体の温度が通電停止温度以上となった場合、その時点で熱媒体加熱手段への通電を停止し、第2発電制御手段(ステップ126)が、その時点以降においてユーザ消費電力に追従するように燃料電池10の発電出力を制御する。これにより、第1熱媒体温度が通電停止温度になれば的確に発電出力をユーザ消費電力に制御するので、最適な発電出力および温度制御をすることができる。
【0043】
また、ヒータ78は電気抵抗が可変であるヒータで構成され、燃料電池10の発電出力とユーザ消費電力との差に応じてヒータ78の電気抵抗を制御することにより、ユーザ消費電力を越えた余剰電力を確実かつ的確に無駄なくヒータ78に供給することができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態において、燃料電池10を昇温する加熱手段として熱媒体加熱手段(ヒータ78)を含む熱媒体によって昇温する機構を採用するようにしたが、燃料電池10を昇温するものであれば、このような機構に限られず、例えば燃料電池10を直接ヒータで昇温するような機構を採用するようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施の形態において、燃料電池10の温度を検出する燃料電池温度検出手段として燃料電池10を昇温する熱媒体の温度を検出する温度センサ85を採用するようにしたが、燃料電池10の温度を直接検出する温度センサを採用するようにしてもよい。
【0046】
また、上述した実施の形態において、熱媒体加熱手段は、熱媒体循環回路72上に設けられて通電されて熱媒体を昇温するものであれば、ヒータ78以外のもので構成してもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態において、燃料電池10との間で熱交換する熱媒体が循環する熱媒体循環回路72と、この熱媒体循環回路72上に設けられて熱媒体を循環させる循環手段(ポンプ73)とをさらに備え、加熱手段は、熱媒体循環回路72上に設けられて通電されて熱媒体を昇温する熱媒体加熱手段(ヒータ78)であることにより、燃料電池10の温度調整を容易かつ的確に実施することができる。
【0048】
また、上述した実施の形態において、燃料電池温度検出手段として、熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出手段(温度センサ85)を採用したことにより、燃料電池10の温度を容易かつ的確に検出することができる。
【0049】
また、上述した実施の形態において、ヒータ78は電気抵抗が固定であるヒータで構成され、燃料電池10の発電出力とユーザ消費電力との差となるようにヒータ78に供給される電力を制御するようにしてもよい。これにより、ユーザ消費電力を越えた余剰電力を確実かつ的確に無駄なくヒータ78に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による燃料電池システムの一実施の形態の概要を示す概要図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムを示すブロック図である。
【図3】図2に示した制御装置にて実行される制御プログラムのフローチャートである。
【図4】本発明による燃料電池システムの実施の形態の動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明を適用しない燃料電池システムの実施の形態の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10…燃料電池、11…燃料極、12…空気極、20…改質器、21…バーナ、22…改質部、23…一酸化炭素シフト反応部(COシフト部)、24…一酸化炭素選択酸化反応部(CO選択酸化部)、25…蒸発器、30…凝縮器、31…改質ガス用凝縮器、32…アノードオフガス用凝縮器、33…カソードオフガス用凝縮器、34…燃焼ガス用凝縮器、40…純水器、45…インバータ、46,47…電源ライン、50…貯水器、53…改質水ポンプ、61〜66…配管、68…改質水供給管、71…第1熱交換器、72…熱媒体循環回路、73…第1ポンプ、74…貯湯槽、75…温水循環回路、76…第2ポンプ、78…ヒータ、82…第2熱交換器、83…凝縮器熱媒体循環回路、84…第3ポンプ、85…温度センサ、90…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極および酸化剤極にそれぞれ燃料および酸化剤ガスが供給されそれらの化学反応によって発電する燃料電池と、
該燃料電池の発電出力を供給する電源ラインとを備えた燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池を昇温する加熱手段と、
前記燃料電池の発電出力を検出する発電出力検出手段と、
前記電源ラインで消費されるユーザ消費電力を検出するユーザ消費電力検出手段と、
燃料電池システムの起動に際して、前記発電出力を制御するとともに、前記発電出力のうち前記ユーザ消費電力を超過した電力を前記加熱手段に供給するように制御する制御手段とを備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、制御手段は、
所定条件が成立した場合に前記燃料電池の発電を開始して所定発電量となるように同燃料電池の発電出力を制御する第1発電制御手段と、
前記発電出力がユーザ消費電力を超えたか否かを判定する判定手段と、
該判定手段によって前記発電出力がユーザ消費電力を超えたと判定された場合に前記加熱手段に通電を開始する通電開始手段とを備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2において、前記燃料電池の温度を検出する燃料電池温度検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記燃料電池温度検出手段によって検出された前記燃料電池の温度が通電停止温度以上となった場合、その時点で前記加熱手段への通電を停止する通電停止手段と、前記時点以降において前記ユーザ消費電力に追従するように前記燃料電池の発電出力を制御する第2発電制御手段とをさらに備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項において、前記燃料電池との間で熱交換する熱媒体が循環する熱媒体循環回路と、
該熱媒体循環回路上に設けられて前記熱媒体を循環させる循環手段とをさらに備え、
前記加熱手段は、前記熱媒体循環回路上に設けられて通電されて前記熱媒体を昇温する熱媒体加熱手段であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4において、前記燃料電池温度検出手段として、前記熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出手段を採用したことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−12656(P2006−12656A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189145(P2004−189145)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】