説明

燃料電池用カソード電極触媒及びこれを用いた燃料電池

【課題】触媒活性が高くかつ耐食性に優れた燃料電池用カソード電極触媒及びこれを用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】電極触媒は、少なくとも一つの白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素とを含み、その結晶構造が非晶質状態である合金からなる。該合金は、急速冷却法、アトマイズ法、機械的合金化法、スパッタ法、電解析出法、還元析出法により製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用カソード電極触媒及びこれを用いた燃料電池に関し、詳しくは、触媒活性が高くかつ耐食性に優れた燃料電池用カソード電極触媒及びこれを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
小型でかつ100℃以下の低温で動作する固体高分子型燃料電池もしくは直接メタノール型燃料電池は、電気自動車用モバイル電源や家庭用定置型コジェネレーション用電源として、その実用化のさらなる推進が大いに期待されている。これら燃料電池では、全フッ素化型スルホン酸膜を始めとする強酸性の膜を電解質として使用するため、これらに使用される触媒材料には、高活性を維持しながら酸性雰囲気および電位条件で耐え得ることが要求される。現在、触媒材料としては、高価で資源量の少ない白金もしくは白金系合金が実用的に用いられている。そのため、上記触媒に代わる低コストで高活性な新しい高機能触媒の開発が大いに望まれている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【0003】
水素・酸素型燃料電池では、燃料である水素と酸素(もしくは空気)から水が生成する反応が生じる。このときアノード側電極では2H2→4H++4e-の反応が、またカソード側電極では、O2+4H++4e-→2H2Oの化学反応が進む。アノード側電極としては、燃料ガス中に微量に含まれるCOによる被毒防止を目的として、現在、Pt−Ru合金が用いられているが、それに代わるより安価な合金として、Pt−Mo、Pt−Snのような合金の有効性が示唆されている。一方、カソード側電極としては、白金単体ではその触媒活性が不十分であることから、白金に、Fe、Mn、Ni、Cr、Ti等を添加して合金化することによる触媒活性向上効果が報告されている。
【0004】
このような技術背景の中、Ptを始めとする白金族金属とFeやCu、Mo等の卑金属との合金化による触媒活性の向上(例えば、非特許文献3ならびに特許文献2及び3参照)や、それら合金の結晶構造の非晶質化による触媒活性の向上(例えば、特許文献1及び4参照)などの方法が提案されてきた。
しかしながら、白金族元素と卑金属との合金触媒は、実際の電極触媒としての使用環境下では、強い酸性電解質中でかつ高い電極電位にさらされるため発電時間の経過と共に合金中に含まれる卑金属成分が溶出し触媒活性が劣化するという問題があった。一方、合金の結晶構造の非晶質化については、非晶質化可能な元素組合せもしくはその組成範囲が大きく限定されるという問題があり、また、非晶質構造の構造安定性が低く、燃料電池用触媒として使用した場合に、経時的に結晶構造が非晶質から結晶へと変化し、耐食性および触媒活性が低下するおそれがあった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−100374号公報
【特許文献2】特開2003−331855号公報
【特許文献3】特開2001−143714号公報
【特許文献4】特開平7−246336号公報
【非特許文献1】「電子とイオンの機能化学シリーズ 固体高分子型燃料電池のすべて」,エヌ・ティー・エス出版,第4巻,p.398−408
【非特許文献2】岡田達弘,“Material Stage”,Vol.2,No.10,(2003),p.45−53
【非特許文献3】T.Toda eTal.,“J.Electrochm.Soc.”,Vol.145,(1998),p.4185−4188
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、触媒活性が高くかつ耐食性に優れた燃料電池用カソード電極触媒及びこれを用いた燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、少なくとも一つの白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素とを含み、その結晶構造が非晶質状態である合金が、燃料電池用触媒として使用でき、しかも強い酸性電解質中でかつ高い電極電位にさらされていても触媒活性及び耐食性が低下しないことを見い出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも一つの白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素とを含み、その結晶構造が非晶質状態である合金からなることを特徴とする酸素還元反応用触媒、
(2)少なくとも一つの白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素とを含み、その結晶構造が非晶質状態である合金からなることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒、
(3)少なくとも一つの白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素とを含み、さらにCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素を含み、その結晶構造が非晶質状態である合金からなることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒、
(4)前記のB、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の含有率が原子数%で5〜40%であることを特徴とする(2)又は(3)項に記載の燃料電池用カソード電極触媒、
(5)(2)〜(4)のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、加熱溶融した白金族金属に、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素、及び必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素を所定量添加し、100℃/秒以上の速度で急速冷却することを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法、
(6)(2)〜(4)のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、加熱溶融した白金族金属に、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素、及び必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素を所定量添加した後、その溶湯をアトマイズ法により微粒子化させることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法、
(7)(2)〜(4)のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、白金族金属粉末と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の粉末と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素の粉末とを機械的合金化法(メカニカルアロイング又はメカニカルグライディング法)により混合して非晶質合金化することを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法、
(8)(2)〜(4)のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、ターゲットとして、白金族金属と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素とを用いて、室温以下の温度に冷却された基板上にスパッタ成膜することを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法、
(9)(2)〜(4)のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素とをそれぞれ電解溶液中でイオン化した後、通電して、電極材料上に電解析出させることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法、
(10)(2)〜(4)のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素とをそれぞれ電解溶液中でイオン化した後、該電解溶液に還元剤を添加して電極材料上に析出させることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法、
(11)前記電極材料がカーボン材料で構成されていることを特徴とする(9)又は(10)項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法、
(12)(2)〜(4)のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用カソード電極、
(13)(12)項に記載の燃料電池用カソード電極と陽イオン交換樹脂とを含むことを特徴とする膜電極接合体、
(14)(12)項に記載の燃料電池用カソード電極又は(13)項に記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池、および
(15)(12)項に記載の燃料電池用カソード電極又は(13)項に記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする直接メタノール型燃料電池
を提供するものである。
本発明において「非晶質状態」とは、結晶のような原子配列の規則的な周期性がなく、短距離秩序はある(すなわち近接原子の数、結合距離がほぼ定まっている)が、長距離秩序はない固体状態の領域が、体積分率で80%以上あるものをいう。
また、本発明において「原子数%」とは、合金中における所定の原子の原子数についての全原子数に対する割合(原子数比)を100倍したものをいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燃料電池用カソード電極触媒は高い触媒活性及び優れた耐食性を有しており、電極に使用しても触媒活性及び耐食性が低下することがない。このカソード電極触媒を用いた本発明の燃料電池は、長寿命で安定した性能を低コストで実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の酸素還元反応用触媒および燃料電池用カソード電極触媒は、少なくとも一つの白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素とを含み、その結晶構造が非晶質状態である白金族系合金からなることを特徴とする。本発明の酸素還元反応用触媒は、例えば燃料電池用カソード電極触媒や酸素センサーとして用いることができる。以下、本発明の酸素還元反応用触媒については代表的な例である燃料電池用カソード電極触媒を例に挙げて説明する。
【0011】
本発明に用いることができる白金族元素は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)及びルテニウム(Ru)であり、なかでも白金、パラジウム及びロジウムが好ましく、白金が特に好ましい。
【0012】
本発明の燃料電池用カソード電極触媒における合金の非晶質状態は、第2族又は第13〜16族元素のうち、原子半径が白金族元素の95%以下の常温常圧(20℃、101.325kPa)で固体である元素であって、白金族元素との化合物が金属的性質(導電性)を示す元素の原子と白金族元素の原子とが不規則的に配列することで得られる。ここで、金属的性質としての導電性の特徴としては、抵抗値の温度依存性が正、すなわち温度上昇とともに抵抗が増大することが挙げられる。
【0013】
前記の第2族又は第13〜16族元素のうち、原子半径が白金族元素の95%以下の常温常圧で固体である元素であって、白金族元素との化合物が金属的性質(導電性)を示す元素としては、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeが好ましく、なかでもB、Si、Pがより好ましく、ホウ素(B)が特に好ましい。なお、酸素(O)や窒素(N)は、その原子半径が白金族元素よりも小さいが、常温常圧で気体であり、しかも白金族元素との化合物(酸化物又は窒化物)は金属的性質を示さないため好ましくない。
【0014】
結晶における原子半径(Å)は、「金属データブック」,日本金属学会編,改訂3版,丸善,p.8によれば、それぞれ、Pt(1.39)、Pd(1.37)、Ir(1.35)、Rh(1.34)、Os(1.35)、Ru(1.33)、B(0.90)、C(0.77)、Be(1.13)、Si(1.17)、P(1.09)、S(1.02)、Ga(1.24)、As(1.25)、Se(1.16)である。
【0015】
本発明の燃料電池用カソード電極触媒においては、非晶質状態を形成する観点から、前記のB、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の含有率は、原子数%で5〜40%が好ましく、10〜30%がより好ましく、15〜25%が特に好ましい。
【0016】
本発明の燃料電池用カソード電極触媒における合金の非晶質状態は、合金全体に対して体積分率で80%以上、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%存在する。合金における非晶質状態の領域が体積分率で80%以上存在することにより、偏析や格子欠陥などの構造欠陥が生じにくくなり触媒活性及び耐食性の優れた電極触媒を得ることができる。一方、合金における非晶質状態の領域が少なく微結晶集合体等の領域が多くなると、微結晶集合体等の領域のつながりが系全体に行き渡り、この領域の特性が巨視的に顕在化するため好ましくない。
【0017】
本発明の燃料電池用カソード電極触媒は、Cu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素を含むことが好ましく、なかでもTi、V、Cr、Mn、Nb、Moがより好ましい。
前記卑金属遷移元素の含有率は、原子数%で5〜95%が好ましく、10〜70%がより好ましく、20〜60%が特に好ましい。
【0018】
本発明の燃料電池用カソード電極触媒は、液体急冷法、アトマイズ法、スパッタリング法、メッキ法や、メカニカルアロイング又はメカニカルグライディング法などの機械的合金化法などの任意の合金製造方法により製造することができる。
【0019】
例えば、液体急冷法の場合、加熱溶融した白金族金属に、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素、及び必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素を所定量添加し、100℃/秒以上(好ましくは103〜105℃/秒)の速度で急速冷却することで、本発明の燃料電池用カソード電極触媒を製造することができる(例えば、特開平5−138308号公報など参照)。
【0020】
また、アトマイズ法の場合、加熱溶融した白金族金属に、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素、及び必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素を所定量添加した後、その溶湯を、ガス、水、遠心力、プラズマ等を利用して(好ましくはガス、プラズマ)アトマイズすることで、本発明の燃料電池用カソード電極触媒を製造することができる(例えば、特開2002−4015号公報など参照)。
【0021】
また、機械的合金化法の場合、白金族金属粉末と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の粉末と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素の粉末とをメカニカルアロイング又はメカニカルグライディング法により混合して非晶質合金化することで、本発明の燃料電池用カソード電極触媒を製造することができる(例えば、特開平5−117716号公報、特開平7−224301号公報など参照)。
【0022】
また、スパッタリング法の場合、ターゲットとして、白金族金属と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素とを用いて、室温以下の温度に冷却された基板上にスパッタ成膜することで、燃料電池用電極を製造することができる(例えば、特開2003−331855号公報など参照)。またこの時、スパッタ速度を適宜変調させることで、成膜される燃料電池用電極の形状(例えば薄膜状や粒状)を制御することができる。
【0023】
また、例えば、電解メッキ法の場合、白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素とをそれぞれ電解溶液中でイオン化した後、通電して(好ましくは0.5〜4.0A/cm2の電流密度で)、電極材料上に電解析出させることで、燃料電池用電極を製造することができる(例えば、非特許文献4(増本健編「アモルファス金属の基礎」オーム社、p12−13)参照)。またこの時、通電する電流密度を、適宜パルス電流や交流電流に変調させることで、電解析出される燃料電池用電極の形状(例えば薄膜状や粒状)を制御することができる。
【0024】
また、無電解メッキ法の場合、白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素とをそれぞれ電解溶液中でイオン化した後、該電解溶液に還元剤(次亜P酸塩やホウ水素化物など)を添加して電極材料上に析出させることで、燃料電池用電極を製造することができる(例えば、特開2000−87120号公報など参照)。
【0025】
本発明の燃料電池用カソード電極触媒は、好ましくは、触媒担体の表面に担持させて用いることが好ましい。担体としては、例えばグラファイト、グラファイトシート、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、ケッチェンブラック、活性炭、グラシーカーボンのようなC質材料、ラネーNi、ラネー銀のようなポーラス金属などが挙げられ、C質材料が好ましく使用される。C質材料であれば粒径0.01〜100μm、好ましくは0.02〜10μmのものを用いると担持が良好に行われる。
触媒を担体に担持させる方法としては、溶解乾燥法、プラズマ蒸着法、加熱蒸着法、化学蒸着法(CVD法)などの従来公知の方法がいずれも使用できる。
【0026】
本発明においては、このような電極触媒を、必要によりカーボン担持ペースト、ポリテトラフルオロエチレンエマルジョン、高分子電解質溶液及びバインダー等からなる混合物のような形態とし、例えばスプレー法、スクリーン印刷法、刷毛塗り法などの従来公知の方法で電極材料に設けることにより、燃料電池用電極を得ることができる。また、前記電極触媒をカーボン粉末に担持し、さらにその上から固体高分子電解質等で被覆することにより、燃料電池用電極を得ることができる。
【0027】
また、本発明の電極触媒は、上記のスパッタリング法やメッキ法などの方法により、直接電極に担持した形態で燃料電池用電極として供することもできる。このとき、電極材料は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラファイトシート、グラッシーカーボン等のカーボン材料で構成されていることが好ましい。
【0028】
上記の方法で得られた燃料電池用電極を用いて膜電極接合体を形成することができる。ここで膜電極接合体とはMEA(membrane electrode assembly)ともいい、電解質膜(イオン交換膜)と電極の複合体であり、陽イオン交換膜の両側に高分散の触媒及びイオン交換樹脂等からなる多孔質の電極が接合されたものであり、固体高分子型燃料電池(PEFC)に用いられる。膜電極接合体は、例えば、特開2001−6699号公報などを参照して作製することができる。
【0029】
上記の燃料電池用電極は、P酸型燃料電池(PAFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)など任意の燃料電池に用いることができ、特に好ましくは固体高分子型燃料電池に用いることができる。上記の燃料電池用電極および膜電極接合体を用いた固体高分子型燃料電池は、例えば、特開2002−63912号公報などを参照して作製することができる。
【0030】
また、上記の燃料電池用電極および膜電極接合体は直接メタノール型燃料電池に用いることができる。上記の燃料電池用電極および膜電極接合体を用いた直接メタノール型燃料電池は、例えば、特開2002−110191号公報などを参照して作製することができる。
【0031】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
実施例1
白金族元素の代表例として白金、パラジウム、ロジウムを選定し、そのそれぞれにホウ素(B)を添加した際のB含有率による結晶構造の相異について評価を行った。
試料は、超高真空イオンビームスパッタ成膜装置(IBS−5I1、商品名、日立製作所社製)を用いて作製した。具体的には、ターゲット材料にPt及びBの6インチスパッタターゲットを用い、スパッタ成膜された薄膜がそれぞれ下記表1記載の所定の組成比になるようにイオン源出力を調整して同時スパッタを行った。反応雰囲気は真空(10-2Pa以下)とし、反応温度は常温とし、成膜速度は約1Å/秒とした。また成膜は、水冷した基板台に配置したグラッシーカーボン基板上で行った。作製した薄膜の膜厚は約100nmであった。また、ターゲットとして白金の代わりにパラジウム又はロジウムを用いて同様にして試料を作製した。
作製した各試料の結晶構造について測定した結果を表1〜3に示す。結晶構造の同定はX線回折装置(MultiFlex、商品名、(株)リガク社製)および透過電子顕微鏡(JEM−3010、商品名、日本電子(株))を用いて行った。測定結果につき、非晶質の領域が体積分率で80%以上のものを○、80%未満のものを×と評価した。なお、以下の表中において、原子%は原子数%を表す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
表1〜3の結果から明らかなように、白金(Pt)とホウ素(B)との合金からなる触媒においては、B含有率が5〜45原子数%の場合に体積分率で80%以上が非晶質であった。また、パラジウム(Pd)とホウ素(B)との合金からなる触媒においては、B含有率が5〜40原子数%の場合に体積分率で80%以上が非晶質であった。また、ロジウム(Rh)とホウ素(B)との合金からなる触媒においては、B含有率が10〜40原子数%の場合に体積分率で80%以上が非晶質であった。
【0037】
実施例2
ホウ素(B)の代わりに下記表4〜6に記載の元素を含有するようにターゲットを変更し、組成比が(白金族:添加元素)=4:1となるようにスパッタイオン源出力を調整したこと以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。なお、白金族元素については実施例1と同様に白金族元素の代表例として白金、パラジウム、ロジウムを選定した。作製した各試料の結晶構造について実施例1と同様にして測定し評価した。結果を表4〜6に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
表4〜6の結果から明らかなように、白金族元素とAl又はZnとの合金からなる触媒は体積分率で80%以上の非晶質を形成できなかったのに対し、白金族元素とC、Be、Si、P、S、Ga、As又はSeとの合金からなる触媒は体積分率で80%以上が非晶質であった。
【0042】
実施例3
ターゲットとして白金族元素と下記表7〜12記載の卑金属遷移金属元素を用いて、実施例1と同様にして試料を作製した。ターゲット材料は、具体的には、例えば試料No.3−11(a)(Pt(80原子数%)-Nb(20原子数%))の場合、Pt及びNbの6インチスパッタターゲットを用いた。白金族元素については実施例1と同様に白金族元素の代表例として白金、パラジウム、ロジウムを選定した。白金族元素と卑金属遷移元素との組成比が4:1となるようにスパッタイオン源出力を調整した。
さらに、ターゲットとして白金族元素とホウ素と下記表7〜12記載の卑金属遷移金属元素を用いて、実施例1と同様にして試料を作製した。ターゲット材料は、具体的には、例えば試料No.3−11(b)(Pt(64原子数%)-Nb(16原子数%)-B(20原子数%))の場合、Pt、Nb及びBの6インチスパッタターゲットを用いた。この際、白金族元素と卑金属遷移元素との組成比が4:1で、かつB含有率が20原子数%となるようにスパッタイオン源出力を調整した。
作製した各試料の結晶構造について実施例1と同様にして測定し評価した。結果を表7〜12に示す。
【0043】
【表7】

【0044】
【表8】

【0045】
【表9】

【0046】
【表10】

【0047】
【表11】

【0048】
【表12】

【0049】
表7〜12の結果から明らかなように、白金族元素と卑金属遷移金属元素との合金であってホウ素を含有しないものからなる触媒(試料3−1(a)〜3−51(a)、比較例)はいずれも体積分率で80%以上の非晶質を形成できなかった。これに対し、白金族元素と卑金属遷移金属元素とホウ素との合金からなる触媒は体積分率で80%以上が非晶質であった。
【0050】
実施例4
実施例1〜3で作製した電極触媒と同じ組成の試料について、特開平5−138308号公報を参照して液体急冷法により作製した。具体的には、例えばPt(64原子数%)-Nb(16原子数%)-B(20原子数%)の場合、Pt、Nb、Bをそれぞれ原子数%で64%、16%、20%となるように秤量、混合した後、アーク溶解炉中に投入して、約2500℃で加熱溶融させ、さらにその溶湯を公知の単ロール型液体急冷法に従って急冷凝固し、目的の試料を得た。得られた試料の結晶構造をX線回折装置および透過電子顕微鏡を用いて同定したところ、体積分率で80%以上の領域が非晶質となっていることが確認された。以上より液体急冷法によってもスパッタリング法と同様の試料を作製することができることがわかった。
【0051】
実施例5
実施例1〜3で作製した電極触媒と同じ組成の試料について、特開2002−4015号公報を参照してガスアトマイズ法により作製した。具体的には、例えばPt(64原子数%)-Nb(16原子数%)-B(20原子数%)の場合、Pt、Nb、Bをそれぞれ原子数%で64%、16%、20%となるように秤量、混合した後、アーク溶解炉中に投入して、約2500℃で加熱溶融し、その溶湯をアトマイズ圧600kPaで粗分散化すると同時に、流速約20m/秒の回転冷却液中に噴射させた。冷却液中で生成された球状の合金粉末を回収し、その結晶構造をX線回折装置および透過電子顕微鏡を用いて同定したところ、体積分率で80%以上の領域が非晶質となっていることが確認された。以上よりガスアトマイズ法によってもスパッタリング法と同様の試料を作製することができることがわかった。
【0052】
実施例6
実施例1〜3で作製した電極触媒と同じ組成の試料について、特開平5−117716号公報を参照してメカニカルアロイング法により作製した。具体的には、例えばPt(64原子数%)-Nb(16原子数%)-B(20原子数%)の場合、粒径約20μmのPt、Nb、Bの金属粉末をそれぞれ原子数%で64%、16%、20%となるように秤量、混合した後、メディア拡散型ボールミル(スターミルZRS4、商品名、アジサワ・ファインテック社製)に投入し、不活性アルゴン雰囲気中で撹拌子を毎秒100回転の高速で約30時間回転させた。この時、原料粉末の機械化合金化効果の進行を促進するため、ボールミル中には原料粉末と一緒に粒径約500μmのアルミナ製ミルボールを導入した。また、撹拌中は容器片面を水冷した。得られた粉末試料の結晶構造をX線回折装置および透過電子顕微鏡を用いて同定したところ、体積分率で80%以上の領域が非晶質となっていることが確認された。以上よりメカニカルアロイング法によってもスパッタリング法と同様の試料を作製することができた。
【0053】
実施例7
実施例1〜3で作製した電極触媒と同じ組成の試料について、増本健編「アモルファス金属の基礎」オーム社、p12−13を参照して電解メッキ法により作製した。具体的には、例えばPt(64原子数%)-Ni(16原子数%)-P(20原子数%)の場合、H2[PtCl6]・6H2O(ヘキサクロロ白金酸・六水和物)、NiCl2・6H2O(塩化ニッケル・六水和物)、H3PO4(リン酸)をそれぞれ、原子数%で64%、16%、20%となるように配合した水溶液を作製し、アノード極にグラッシーカーボンを用いて、約80℃、1A/cm2で電解を行った。グラッシーカーボン上に析出されたメッキ膜の結晶構造をX線回折装置および透過電子顕微鏡を用いて同定したところ、体積分率で80%以上の領域が非晶質となっていることが確認された。以上より、電解メッキ法によってもスパッタリング法と同様の試料を作製することができた。
【0054】
実施例8
実施例1〜3で作製した電極触媒と同じ組成の試料について、特開2000−87120号公報を参照して無電解メッキ法により作製した。具体的には、例えばPt(64原子数%)-Ni(16原子数%)-P(20原子数%)の場合、H2[PtCl6]・6H2O(ヘキサクロロ白金酸・六水和物)、NiCl2・6H2O(塩化ニッケル・六水和物)、H3PO4(リン酸)をそれぞれ、原子数%で64%、16%、20%となるように配合した水溶液を作製し、さらにその水溶液に、カーボンブラック粉末(Vulcan XC−72、商品名、E−TEK社製)、ヒドラジン(N24)を添加し、約80℃で12時間撹拌を行った。得られた粉末を回収し、カーボン粉末上に析出した合金の結晶構造をX線回折装置および透過電子顕微鏡を用いて同定したところ、体積分率で80%以上の領域が非晶質となっていることが確認された。以上より、無電解メッキ法によってもスパッタリング法と同様の試料を作製することができた。
【0055】
実施例9
実施例1〜3で作製した電極触媒のうち代表的な幾つかの組成の試料を用いて電極を作製した。具体的には、具体的には、実施例1〜3と同様にスパッタ法により、それぞれの触媒をカーボンシート(TGP−H120、商品名、東レ製)上に蒸着させることにより電極を作製した。
作製した電極をカソードに用いて酸素還元反応(カソード反応)に対する触媒活性の評価を行った。触媒活性の評価は、T.Toda etal.,“J.Electrochem.Soc.”,Vol.146,No.10,p.3750−3756(1999)を参照して行った。具体的には、回転ディスク電極を用いた一般的な半電池法の分極測定により行った。ここで、電解液には酸素を飽和させた0.2Mの希硫酸水溶液を用い、また回転ディスク電極の回転速度は1500rpmとした。
【0056】
実施例1〜3で作製した電極触媒を担持した電極の電位が0.75V(vs.標準水素電極電位)における反応電流の大きさにより触媒活性の比較を行った。比較対象は、白金族元素及び/又は卑金属遷移元素のみからなる比較用試料(B、P又はSiを含有しない試料)を用いた。比較した結果について、0.75Vにおける反応電流が、10%以上向上の場合を◎、5%以上10%未満向上の場合を○、変化しなかった場合を△、低下した場合を×と評価した。結果を下記表13に示す。
【0057】
さらに、Pt、Pd又はRhとB(20原子数%)とからなる試料については、当該試料を750℃で24時間熱処理した後にゆるやかに徐冷(1℃/分)して再結晶化させることで結晶構造が結晶となった試料を作製し、上記と同様にして触媒活性の評価を行った。
【0058】
【表13】

【0059】
表13の結果から明らかなように、本発明の触媒を用いた電極は、ホウ素等の白金族元素より小さい元素を含有しない比較サンプルに比べて、0.75Vにおける反応電流量が向上することがわかった。また、ホウ素等の白金族元素より小さい元素を含有する試料であってもその結晶構造が非晶質でなければ反応電流量の向上は見られなかった。
【0060】
実施例10
実施例1〜3で作製した電極触媒のうち代表的な幾つかの組成の試料を用いて実施例8と同様にして電極を作製した。
作製した電極をカソードに用いて耐食性試験を行い、耐食性試験後の酸素還元反応(カソード反応)に対する触媒活性の評価を行った。触媒活性の測定は実施例8と同様にして行った。耐食性試験は、M.WaTanabe eTal.,“J.Electrochem.Soc.”,Vol.141,No.10,p.2659−2668(1994)を参照して行った。具体的には、0.2M希硫酸水溶液中で0.8V(vs.標準水素電極電位)の電位で50時間保持し、その前後の試料の触媒活性の比較により行った。耐食試験前後の試料の触媒活性を比較して、触媒活性の低下が5%以内の場合を○、触媒活性の低下が5%を超える場合を×と評価した。結果を表14に示す。また、耐食試験前の試料の構成元素については電子線マイクロアナライザー(EPMA−1600、商品名、島津製作所製)によって測定した。
【0061】
【表14】

【0062】
表14の結果から明らかなように、本発明の触媒を用いた電極は、耐食試験後の触媒活性の低下が5%以内であり耐食性に優れたものであることがわかった。
【0063】
実施例11
実施例1〜3で作製した電極触媒のうち代表的な幾つかの組成の試料を用いて燃料電池を作製した。まず、実施例1〜3と同様にスパッタ法により、それぞれの触媒をカーボンシート(TGP−H120、商品名、東レ製)上に形成した後、一般的なパーフルオロスルホン酸電解質膜(ナフィオン117、商品名、デュポン社製)にホットプレスすることにより膜電極接合体(MEA)を作製した。ただしアノード側電極にはカーボンシート上に結晶のPtを蒸着させたものを用いた。また、MEAの面積は25cm2とした。作製したMEAの一方の面に水素ガス流路が形成された樹脂含浸黒鉛板からなるセパレータを、裏面に酸素ガス流路が形成された同様のセパレータを重ね合わせ、さらにその両端外部を、それぞれ2枚の無酸素銅でできた集電板、電気絶縁用の絶縁シート、ステンレス製支持板で順に挟み、最後に締結ロッドで固定することで、固体高分子型燃料電池セルを作製した。
燃料電池セル特性の評価は、セル温度80℃、セル圧力は常圧で、アノードガスには加湿した水素を、カソードガスには加湿した酸素をそれぞれ100ml/分で供給して電流−電圧特性を測定し、セル電圧を0.75Vとした時の電流密度値を比較により行った。比較サンプルの電流密度に比べて、10%以上増大した場合を◎、5%以上増大した場合を○、変化しなかった場合を△、低下した場合を×と評価した。結果を表15に示す。
【0064】
【表15】

【0065】
表15の結果から明らかなように、本発明の電極触媒を用いた燃料電池は、優れた燃料電池特性を示すことがわかった。また、アノード側にメタノールを供給する直接メタノール型燃料電池についても作製し、同様に試験したところ、同様に優れた燃料電池特性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素とを含み、その結晶構造が非晶質状態である合金からなることを特徴とする酸素還元反応用触媒。
【請求項2】
少なくとも一つの白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素とを含み、その結晶構造が非晶質状態である合金からなることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒。
【請求項3】
少なくとも一つの白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素とを含み、さらにCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素を含み、その結晶構造が非晶質状態である合金からなることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒。
【請求項4】
前記のB、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の含有率が原子数%で5〜40%であることを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池用カソード電極触媒。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、加熱溶融した白金族金属に、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素、及び必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素を所定量添加し、100℃/秒以上の速度で急速冷却することを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、加熱溶融した白金族金属に、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素、及び必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素を所定量添加した後、その溶湯をアトマイズ法により微粒子化させることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、白金族金属粉末と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の粉末と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素の粉末とを機械的合金化法(メカニカルアロイング又はメカニカルグライディング法)により混合して非晶質合金化することを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、ターゲットとして、白金族金属と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素とを用いて、室温以下の温度に冷却された基板上にスパッタ成膜することを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素とをそれぞれ電解溶液中でイオン化した後、通電して電極材料上に電解析出させることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法であって、白金族元素と、B、C、Be、Si、P、S、Ga、As及びSeからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、必要に応じてCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Sc、Mo、Nb、Zr、Y、Re、W、Ta及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの卑金属遷移元素とをそれぞれ電解溶液中でイオン化した後、該電解溶液に還元剤を添加して電極材料上に析出させることを特徴とする燃料電池用カソード電極触媒の製造方法。
【請求項11】
前記電極材料がカーボン材料で構成されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の燃料電池用カソード電極触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用カソード電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用カソード電極。
【請求項13】
請求項12記載の燃料電池用カソード電極と陽イオン交換樹脂とを含むことを特徴とする膜電極接合体。
【請求項14】
請求項12記載の燃料電池用カソード電極又は請求項13記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項15】
請求項12記載の燃料電池用カソード電極又は請求項13記載の膜電極接合体を含むことを特徴とする直接メタノール型燃料電池。

【公開番号】特開2011−92940(P2011−92940A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289509(P2010−289509)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【分割の表示】特願2005−279919(P2005−279919)の分割
【原出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】