説明

燃料電池用燃料極およびその製造方法

【課題】熱応力に対する構造信頼性を向上可能な燃料電池用燃料極を提供する。上記燃料極の製造に適した製造方法、材料を提供する。
【解決手段】燃料極3は、構造体31と、電子導電体32とを少なくとも含有する。構造体31は、コア部311と、コア部311の外周を覆う表層312とを備える。コア部311の主成分は酸素イオン導電体、表層312の主成分はプロトン導電体である。燃料極3は、コア部311とコア部311の外周を覆う表層312とを備え、コア部311の主成分が酸素イオン導電体、表層312の主成分がプロトン導電体である構造体31から構成される粉末と、電子導電体32から構成される粉末とを少なくとも含む混合物を焼成することにより製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用燃料極およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、電解質として固体電解質を利用した燃料電池に用いられる燃料極およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、反応物質(燃料)と酸化剤(空気や酸素)とを電池内部に供給することによって電気エネルギーを発生させる変換器である。燃料電池の基本的な要素は、燃料極、電解質、空気極である。これら基本要素の接合体が単セルと称される。従来、電解質として固体電解質を利用した固体電解質型の燃料電池が知られている。この種の燃料電池としては、例えば、固体電解質として安定化ジルコニア等の固体酸化物セラミックスを用いた固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCということがある。)がある。
【0003】
上記燃料電池において、出力電圧を大きくするためには、固体電解質のオーム抵抗や、燃料極、空気極で生じる反応に伴う過電圧を小さくする必要がある。近年、例えば、燃料極の過電圧を低減し、出力電圧を向上させるため、プロトン導電体を用いる試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電子導電体であるNiと酸素イオン導電体であるイットリア安定化ジルコニアとの混合物中に、プロトン導電体であるSrZrO等のペロブスカイト型酸化物を添加し、これを焼成して作製した燃料極が開示されている。
【0005】
なお、特許文献2には、板状セリア系母材の表面にBaO塗膜を形成して熱処理することにより、BaCe(1−x)Sm(x)(3−α)のペロブスカイト型結晶が表面に成長したセリア系固体電解質が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−66813号公報
【特許文献2】特開2005−243473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の燃料極は以下の点で問題がある。すなわち、プロトン導電体の熱膨張係数は、電子導電体や酸素イオン導電体の熱膨張係数と大きく異なっている。そのため、プロトン導電体自体を含む従来の燃料極は、燃料電池の使用時に生じた熱応力により亀裂が発生するおそれがあり、構造信頼性が低い。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、熱応力に対する構造信頼性を向上させることが可能な燃料電池用燃料極を提供しようとするものである。また、上記燃料電池用燃料極の製造に適した製造方法、材料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、コア部と該コア部の外周を覆う表層とを備えた構造体と、電子導電体とを少なくとも含有し、上記コア部の主成分が酸素イオン導電体であり、上記表層の主成分がプロトン導電体であることを特徴とする燃料電池用燃料極にある(請求項1)。
【0010】
本発明の他の態様は、コア部と該コア部の外周を覆う表層とを備えた構造体から構成される粉末と、電子導電体から構成される粉末とを少なくとも含む混合物を得る混合物形成工程と、得られた混合物を焼成する焼成工程とを有し、上記コア部の主成分が酸素イオン導電体であり、上記表層の主成分がプロトン導電体であることを特徴とする燃料電池用燃料極の製造方法にある(請求項7)。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、コア部と該コア部の外周を覆う表層とを備え、かつ上記コア部の主成分が酸素イオン導電体であり、上記表層の主成分がプロトン導電体である構造体から構成されることを特徴とする粉末にある(請求項12)。
【発明の効果】
【0012】
先ず、上記燃料電池用燃料極の作用効果について述べる。従来技術は、燃料極中にプロトン導電体自体をそのまま添加する。そのため、従来の燃料極は、内部に含まれる電子導電体や酸素イオン導電体等の他材料とプロトン導電体との熱膨張係数の差が大きく、熱応力に対する構造信頼性に劣る。
【0013】
これに対し、上記燃料電池用燃料極(以下、単に「燃料極」ということがある。)は、コア部とコア部の外周を覆う表層とを備えた構造体と、電子導電体とを含有している。そして、上記構造体は、コア部の主成分が酸素イオン導電体であり、表層の主成分がプロトン導電体である。そのため、構造体の熱膨張係数は、コア部の酸素イオン導電体の熱膨張係数に近くなり、表層のプロトン導電体の熱膨張係数の影響を受け難くなる。それ故、燃料極中に含まれうる電子導電体や酸素イオン導電体等の他材料と構造体との熱膨張係数の差を小さくすることができる。これにより、上記燃料極は、熱膨張係数の差に起因する熱応力を緩和することが可能となり、熱応力に対する構造信頼性に優れる。
【0014】
また、燃料に含まれる水素(気相)の燃料極への吸着・解離は、主成分がプロトン導電体である構造体の表層でおこる。そのため、プロトン導電体自体を含有する従来の燃料極に比較して、少ないプロトン導電体の量でも吸着・解離の促進効果を得ることができる。それ故、上記燃料極は、反応に伴う過電圧(以下、「反応過電圧」ということがある。)を低減することができ、出力電圧の向上に寄与することができる。また、プロトン導電体の量を低減することができるので、低コスト化の観点からも有利である。
【0015】
次に、上記燃料電池用燃料極の製造方法の作用効果について述べる。上記製造方法では、混合物の材料として、コア部とコア部の外周を覆う表層とを備え、かつコア部の主成分が酸素イオン導電体であり、表層の主成分がプロトン導電体である構造体から構成される粉末を用いている。そしてこの粉末と、電子導電体とを含んでなる未焼成の混合物を焼成することにより、焼結体としての燃料極を得る。そのため、上記製造方法は、従来技術のようにプロトン導電体の粉末そのものを混合物に含有させる必要がない。それ故、熱応力に対する構造信頼性に優れた上述の燃料極を好適に得ることができる。
【0016】
次に、上記粉末の作用効果について述べる。上記粉末は、コア部とコア部の外周を覆う表層とを備え、かつコア部の主成分が酸素イオン導電体であり、表層の主成分がプロトン導電体である構造体から構成されている。そのため、燃料極の製造時に原料としてプロトン導電体の粉末そのものを用いる代わりに、上記構造体から構成される粉末を用いることにより、燃料極中に含まれうる電子導電体や酸素イオン導電体等の他材料との熱膨張係数の差に起因する熱応力を緩和することができる。それ故、熱応力に対する構造信頼性に優れた上述の燃料極の製造に適している。
【0017】
以上、本発明によれば、熱応力に対する構造信頼性を向上させることが可能な燃料電池用燃料極を提供することができる。また、上記燃料電池用燃料極の製造に適した製造方法を提供することができる。また、上記燃料電池用燃料極の製造に適した材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例に係る燃料電池単セルを模式的に示した説明図である。
【図2】図1における燃料極の部位Aを拡大して模式的に示した説明図である。
【図3】作製した燃料電池単セルの試料における燃料極側の電極反応抵抗を示した図である。
【図4】作製した燃料電池単セルの試料における燃料極側の電極反応抵抗を示した図である。
【図5】構造体の熱膨張係数を、バリウムジルコネート、イットリア安定化ジルコニアの熱膨張係数と比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、上記燃料極について説明する。上記燃料極は、電解質として固体電解質を用いる燃料電池に好適に適用することができる。固体電解質としては、例えば、イットリア、スカンジア等の酸化物が固溶された安定化ジルコニア(部分安定化ジルコニアも含む、以下省略)やセリア系固溶体等の酸素イオン導電性を示す固体酸化物などを例示することができる。以下、固体電解質として固体酸化物を用いた固体酸化物形燃料電池をSOFCということがある。
【0020】
燃料極は、コア部とコア部の外周を覆う表層とを備えた構造体と、電子導電体とを含有する。燃料極は、上記以外にも、さらに、酸素イオン導電体を含有することができる(請求項2)。この場合には、燃料極中の反応場を増加させることができる。そのため、構造体による水素の吸着・解離の促進効果と反応場の増大効果とが相まって、反応過電圧を低減しやすくなり、出力電圧の向上にいっそう寄与しやすくなる。
【0021】
構造体は、コア部の主成分が酸素イオン導電体であり、表層の主成分がプロトン導電体である。「コア部の主成分が酸素イオン導電体である」とは、コア部の50質量%以上が酸素イオン導電性を有する酸素イオン導電体であることをいう。なお、酸素イオン導電体は、実質的に酸素イオン導電性を有する物質のみならず、酸素イオン導電性および僅かな電子導電性を有する物質も含むことができる。コア部における酸素イオン導電体以外の成分としては、例えば、表層の成分であるプロトン導電体、製造上不可避な不純物などを例示することができる。このようにコア部には、表層の成分であるプロトン導電体が混ざっていてもよい。また、「表層の主成分がプロトン導電体である」とは、表層の50質量%以上がプロトン導電性を有するプロトン導電体であることをいう。表層におけるプロトン導電体以外の成分としては、例えば、コア部の成分である酸素イオン導電体、製造上不可避な不純物などを例示することができる。このように表層には、コア部の成分である酸素イオン導電体が混ざっていてもよい。なお、構造体に含まれるプロトン導電体は、構造体表面から内部に向かってプロトン導電体の存在割合が少なくなるように傾斜して存在していてもよい。なお、コア部の酸素イオン導電体や、表層のプロトン導電体の割合は、電子プローブマイクロアナライザ(以下、EPMA)による元素マッピング等により測定することができる。
【0022】
構造体の表層は、コア部の外周のほぼ全てを覆うように存在していてもよいし、コア部の外周の一部を覆うように存在していてもよい。表層によるコア部外周の被覆率は、プロトン導電性の確保の観点から、好ましくは、60%以上、より好ましくは、80%以上、さらに好ましくは、90%以上とすることができる。
【0023】
上記燃料極において、構造体における、コア部の主成分である酸素イオン導電体は、安定化ジルコニアおよびセリア系固溶体から選択される1種または2種以上、表層の主成分であるプロトン導電体は、プロトン導電性を示すペロブスカイト型酸化物とすることができる(請求項3)。
【0024】
この場合には、SOFCに好適な燃料極となる。すなわち、SOFCは、例えば、600℃〜800℃の温度域で運転されうるため、電池運転時と電池停止時との温度差が大きい。そのため、燃料極中に含まれる材料間の熱膨張係数の差が大きいと、熱応力が発生しやすい。ところが、上記構成を有する燃料極とした場合には、SOFCの運転温度域で使用された場合であっても、熱膨張係数の差に起因する熱応力の発生を緩和することができ、熱応力に対する構造信頼性に優れる。
【0025】
上記構造体における安定化ジルコニアとしては、例えば、Y、Sc、Gd、Sm、Yb、Nd等の希土類酸化物を1種または2種以上含む安定化ジルコニアなどを例示することができる。上記構造体におけるセリア系固溶体としては、例えば、Gd、Sm、Y、La等の希土類酸化物を1種または2種以上含むセリア系固溶体などを例示することができる。上記構造体におけるペロブスカイト型酸化物としては、例えば、Y、Sc、Gd、Sm、Yb、Nd、La等の希土類酸化物を1種または2種以上含みうるバリウムジルコネート、ストロンチウムジルコネート、バリウムセレート、ストロンチウムセレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていてもよい。
【0026】
また、燃料極中に含まれうる酸素イオン導電体としては、例えば、安定化ジルコニア、セリア系固溶体などを例示することができる。なお、この場合における具体的な安定化ジルコニア、セリア系固溶体は、構造体のコア部の説明で例示した上記安定化ジルコニア、セリア系固溶体を適用することができる。
【0027】
上記燃料極において、構造体における、コア部の中心から表層の表面までの距離に対する表層の厚みの割合は、ほぼ一定であってもよいし、異なる部分があってもよい。構造体における、コア部の中心から表層の表面までの距離に対する表層の厚みの割合は、好ましくは、5〜50%、より好ましくは、10〜40%の範囲内とすることができる(請求項4)。
【0028】
この場合には、材料間の熱膨張係数の差に起因する熱応力の緩和効果と、燃料極への水素の吸着・解離の促進効果とのバランスに優れる。そのため、熱応力に対する構造信頼性の向上効果と、反応過電圧の低減による出力電圧の向上効果とのバランスに優れる。なお、表層の厚みは、電子プローブマイクロアナライザ(以下、EPMA)による元素マッピング等により測定することができる。
【0029】
上記燃料極において、構造体に対する表層の質量割合は、好ましくは、50〜90%、より好ましくは、70〜90%、さらに好ましくは、80〜90%の範囲内とすることができる。
【0030】
この場合にも、材料間の熱膨張係数の差に起因する熱応力の緩和効果と、燃料極への水素の吸着・解離の促進効果とのバランスに優れる。そのため、熱応力に対する構造信頼性の向上効果と、反応過電圧の低減による出力電圧の向上効果とのバランスに優れる。なお、表層の質量割合は、EPMAによる元素分析等により測定することができる。
【0031】
上記燃料極において、構造体の含有量は、好ましくは、3〜20質量%、より好ましくは、5〜10質量%の範囲内であるとよい。
【0032】
この場合にも、材料間の熱膨張係数の差に起因する熱応力の緩和効果と、燃料極への水素の吸着・解離の促進効果とのバランスに優れる。そのため、熱応力に対する構造信頼性の向上効果と、反応過電圧の低減による出力電圧の向上効果とのバランスに優れる。なお、上記構造体の含有量は、EPMAによる元素分析等により測定することができる。
【0033】
上記燃料極において、電子導電体は、燃料電池の作動温度において電子導電性を示すことができればいずれの物質でも用いることができる。電子導電体としては、例えば、ニッケル、鉄、チタンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0034】
上記燃料極の厚みは、燃料電池の形状等を考慮して、例えば、30〜1000μmの範囲から適宜選択することができる。
【0035】
次に、燃料電池単セルおよび燃料電池について説明する。燃料電池単セルは、固体電解質層の少なくとも一方面に上記燃料極を有する(請求項5)。燃料電池単セルは、より具体的には、固体電解質層と、固体電解質層の一方面に設けられた上記燃料極と、固体電解質層の他方面に設けられた空気極とを有する構成とすることができる。固体電解質層と空気極との間には、中間層を介在させることができる。
【0036】
また、燃料電池は、この燃料電池単セルを有する(請求項6)。燃料電池は、より具体的には、燃料電池単セルをセパレータを介して複数積層してなる燃料電池スタックなどとして構成することができる。燃料電池単セルとセパレータとの間には、集電体が設けられていてもよい。
【0037】
これらの燃料電池単セルおよび燃料電池は、熱応力に対する構造信頼性に優れた上記燃料極を用いているため、信頼性の高い燃料電池単セル、燃料電池になる。また、反応過電圧を低減可能な上記燃料極を用いているので、出力電圧の向上に有利な燃料電池単セル、燃料電池になる。
【0038】
なお、固体電解質としては、上述したものを例示することができる。また、空気極の材料としては、例えば、ランタン−マンガン系酸化物、ランタン−コバルト系酸化物、ランタン−鉄系酸化物等の導電性を有するペロブスカイト型酸化物などを例示することができる。
【0039】
燃料電池単セルおよび燃料電池の形状は、平板型、扁平型などの平面状、円筒状などの形状を採用することができる。好ましくは、セル製造性に優れる平面型であるとよい。燃料電池単セルおよび燃料電池は、固体電解質層、燃料極層、空気極層のいずれの発電主要素を支持体として機能させてもよい。発電主要素以外のものを別途支持体として具備することもできる。
【0040】
次に、上記燃料極の製造方法および上記粉末について説明する。上記燃料極の製造方法では、混合物形成工程において、コア部とコア部の外周を覆う表層とを備えた構造体から構成される粉末と、電子導電体から構成される粉末とを少なくとも含む混合物を形成する。なお、構造体、電子導電体の構成については、燃料極の説明で例示した内容に準ずるため、説明は省略する。
【0041】
上記燃料極の製造方法において、上記混合物は、さらに、酸素イオン導電体から構成される粉末を含むことができる(請求項8)。なお、酸素イオン導電体の構成については、燃料極の説明で例示した内容に準ずるため、説明は省略する。
【0042】
この場合には、得られる燃料極中の反応場を増加させることができる。そのため、構造体による水素の吸着・解離の促進効果と反応場の増大効果とが相まって、反応過電圧を低減しやすくなり、出力電圧の向上にいっそう寄与することが可能な燃料極が得られる。
【0043】
構造体から構成される粉末は、触媒活性や製造性などの観点から、平均粒径が好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜3μmの範囲内にあるとよい。同様に、電子導電体から構成される粉末は、平均粒径が好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜3μmの範囲内にあるとよい。酸素イオン導電体から構成される粉末は、平均粒径が好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜3μmの範囲内にあるとよい。なお、上記平均粒径は、JIS R1629に準拠して測定される、体積基準の積算分率における50%径のことである。
【0044】
上記燃料極の製造方法において、各粉末の混合手段は特に限定されるものではなく、例えば、ボールミル、遊星型ボールミルなどの各種の混合手段を用いることができる。また、混合物としては、具体的には、例えば、各粉末とエタノールなどの適当な溶媒とを混合してスラリーを調製した後、当該スラリーを各種の塗工法を用いて塗工し、シート状、膜状等に形成した未焼成物や、各粉末を混合し、この混合粉末をプレス成形等することにより形成した未焼成の成形体などを例示することができる。
【0045】
また、混合物を形成するための粉末の種類が3種類以上ある場合、各粉末を一度に混合する手順を経ることにより混合物を形成することができる。また、2種類以上の粉末を先に混合し、この混合粉末に1種類以上の粉末をさらに加えて混合する手順を経ることにより、混合物を得ることも可能である。
【0046】
具体的には例えば、構造体から構成される粉末と、電子導電体から構成される粉末と、酸素イオン導電体から構成される粉末とを混合する場合、電子導電体から構成される粉末と酸素イオン導電体から構成される粉末とを混合して得た混合粉末と、構造体から構成される粉末とを混合する手順を経て、混合物を形成することができる。このようにした場合には、電子導電体と酸素イオン導電体とから構成される骨格中に比較的均一に構造体が分散された燃料極を得やすくなる。
【0047】
上記燃料極の製造方法において、構造体から構成される粉末は、コア部の原料となる酸素イオン導電体から構成される粉末の粒子表面に、熱処理によって上記酸素イオン導電体と反応してプロトン導電体を生成可能な反応原料を付着させる付着工程と、上記反応原料を付着させてなる酸素イオン導電体から構成される粉末を熱処理する熱処理工程とを経ることにより好適に準備することができる(請求項9)。
【0048】
この場合には、熱処理工程における熱処理時に、コア部の原料である酸素イオン導電体から構成される粉末の粒子表面と、この粒子表面に付着した反応原料とが反応し、酸素イオン導電体の表層にプロトン導電体が生成する。また、表層よりも内側の酸素イオン導電体は、反応原料と実質的に反応せずにそのまま残り、コア部が形成される。これにより、コア部と該コア部の外周を覆う表層とを備え、かつコア部の主成分が酸素イオン導電体であり、表層の主成分がプロトン導電体である構造体から構成される粉末を、比較的簡単に準備することができる。
【0049】
つまり、上記準備工程を有する燃料極の製造方法によれば、比較的簡単に、上記構造体から構成される粉末を準備することができる。それ故、上記準備工程を有する製造方法によれば、熱応力に対する構造信頼性に優れた上記燃料極を比較的簡単に得ることができる。
【0050】
コア部の原料となる酸素イオン導電体としては、例えば、燃料極の説明で例示した安定化ジルコニアやセリア系固溶体などを例示することができる。そして、熱処理によって酸素イオン導電体と反応してプロトン導電体を生成可能な反応原料としては、例えば、Ba、Sr等の酸化物、上記元素の硝酸塩、炭酸塩、水酸化物等といった上記元素を含有する化合物などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0051】
また、酸素イオン導電体から構成される粉末を構成する粒子表面に上記反応原料を付着させる方法は、特に限定されるものではない。例えば、反応原料と水等の溶媒とを含む溶液や、反応原料と適当なバインダーや溶媒等を含むスラリーなどと、コア部の原料となる酸素イオン導電体の粉末とを混合する方法などを採用することができる。これらの場合には、酸素イオン導電体の粉末を構成する粒子表面を、比較的均一に反応原料により被覆しやすいなどの利点がある。なお、上記溶液、スラリーを用いる場合、溶液、スラリー中の反応原料の濃度は、コア部の原料との反応性などの観点から、好ましくは、0.1mol/L以上、より好ましくは、0.3mol/L以上に調製されているとよい。
【0052】
反応原料を付着させた酸素イオン導電体から構成される粉末を熱処理する際の熱処理温度は、反応性、コア部の量と表層の量とのバランス、反応元素の蒸発などの観点から、好ましくは、900℃〜1600℃、より好ましくは、1200℃〜1500℃の範囲内とすることができる。また、上記熱処理時間は、反応性、コア部の量と表層の量とのバランス、反応元素の蒸発などの観点から、好ましくは、1〜6時間、より好ましくは、1〜3時間の範囲内とすることができる。
【0053】
上記燃料極の製造方法において、焼成工程における焼成温度は、熱処理工程における熱処理温度以下とすることができる(請求項10)。この場合には、混合物中に含まれうる電子導電体や酸素イオン導電体等と、構造体の表層との反応を効果的に抑制することができる。そのため、組成ズレ等の少ない燃料極を得やすくなる。焼成工程における焼成温度は、上記効果を確実なものにするなどの観点から、より好ましくは、熱処理工程における熱処理温度よりも低い温度とすることができる。さらに好ましくは、熱処理工程における熱処理温度−500℃〜熱処理工程における熱処理温度−50℃の範囲内とすることができる。
【0054】
上記燃料極の製造方法において、コア部の主成分である酸素イオン導電体は、安定化ジルコニアおよびセリア系固溶体から選択される1種または2種以上であり、表層の主成分であるプロトン導電体は、プロトン導電性を示すペロブスカイト型酸化物とすることができる(請求項11)。
【0055】
この場合には、SOFCに好適な、熱応力に対する構造信頼性に優れた燃料極が得られる。なお、この場合における具体的な安定化ジルコニア、セリア系固溶体、ペロブスカイト型酸化物は、燃料極の説明で例示した安定化ジルコニア、セリア系固溶体、ペロブスカイト型酸化物を適用することができる。
【実施例】
【0056】
先ず、実施例に係る燃料電池単セル、燃料電池用燃料極およびその製造方法、構造体から構成される粉末につき、適宜図面を用いて概略を説明する。
【0057】
実施例に係る燃料電池単セル1は、図1に示すように、固体電解質層2の一方面に、実施例に係る燃料電池用燃料極3を有している。具体的には、実施例に係る燃料電池単セル1は、固体電解質層2と、固体電解質層2の一方面に設けられた実施例に係る燃料電池用燃料極3と、固体電解質層2の他方面に設けられた空気極4とを有している。
【0058】
実施例に係る燃料電池用燃料極3は、図2に模式的に拡大して示すように、構造体31と電子導電体32とを含有している。なお、本例では、実施例に係る燃料電池用燃料極3は、構造体31、電子導電体32以外にも、さらに、酸素イオン導電体33を含有している。構造体31は、コア部311とコア部311の外周を覆う表層312とを備えている。コア部311は、主成分が酸素イオン導電体である。表層312は、主成分がプロトン導電体である。
【0059】
実施例に係る燃料電池用燃料極の製造方法は、実施例に係る粉末と、電子導電体から構成される粉末とを少なくとも含む混合物を得る混合物形成工程と、得られた混合物を焼成する焼成工程とを有している。実施例に係る粉末は、コア部とコア部の外周を覆う表層とを備え、かつコア部の主成分が酸素イオン導電体であり、表層の主成分がプロトン導電体である構造体から構成されている(以下、この粉末を単に「構造体粉末」という。)。以下、実験例を用いて、さらに詳細に説明する。
【0060】
(実験例)
<構造体粉末の作製>
8mol%のイットリアを固溶したイットリア安定化ジルコニア粉末(平均粒径=0.7μm)5gとBa(NO水溶液(濃度0.3mol/L)0.1Lとを、ボールミルに入れ、3時間混合した。次いで、このイットリア安定化ジルコニア粉末を1500℃で2時間熱処理し、試料P1の粉末(平均粒径=0.7μm)を得た。得られた試料P1の粉末について、SEM−EDS(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置)を用いて元素マッピングを確認したところ、粒子の表層からはBa、Zr、Yが検出されるとともに、粒子の表層よりも内側からはZr、Yが検出された。また、XRD(X線回折装置)を用いて粒子の表層の結晶構造を確認したところ、その結晶構造はペロブスカイト型プロトン導電体であるバリウムジルコネートであることが確認された。これらの結果から、試料P1の粉末は、コア部とコア部の外周を覆う表層とを備え、かつコア部の主成分はイットリア安定化ジルコニアであり、表層の主成分はイットリアドープバリウムジルコネートであるコアシェル構造を有する粒子の群から構成されていることが分かった。また、EPMAの元素マッピングにより測定した、コア部の中心から表層の表面までの距離に対する表層の厚みの割合は、55%であった。
【0061】
試料P1の構造体粉末の作製において、熱処理条件を1600℃×2時間とした点以外は同様にして、試料P2の構造体粉末を得た。
【0062】
試料P1の構造体粉末の作製において、熱処理条件を1400℃×2時間とした点以外は同様にして、試料P3の構造体粉末を得た。
【0063】
試料P1の構造体粉末の作製において、イットリア安定化ジルコニア粉末に代えて、6mol%のスカンジアを固溶したスカンジア安定化ジルコニア粉末(平均粒径=0.8μm)を用いた点以外は同様にして、試料P4の構造体粉末を得た。
【0064】
試料P1の構造体粉末の作製において、イットリア安定化ジルコニア粉末に代えて、5mol%のガドリアがドープされたガドリアドープセリア粉末(平均粒径=0.5μm)を用いた点以外は同様にして、試料P5の構造体粉末を得た。
【0065】
試料P1の構造体粉末の作製において、イットリア安定化ジルコニア粉末に代えて、10mol%のサマリアがドープされたサマリアドープセリア粉末(平均粒径=0.5μm)を用いた点以外は同様にして、試料P6の構造体粉末を得た。
【0066】
試料P1の構造体粉末の作製において、イットリア安定化ジルコニア粉末に代えて、10mol%のイットリアがドープされたイットリアドープセリア粉末(平均粒径=0.5μm)を用いた点以外は同様にして、試料P7の構造体粉末を得た。以下に、作製した各構造体粉末の詳細な構成等をまとめて表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
<燃料電池単セルの作製>
上記にて作製した試料P1の構造体粉末(熱処理温度1500℃)と、NiO粉末(平均粒径:0.8μm)と、8mol%のイットリアを固溶したイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)粉末(平均粒径:0.7μm)との質量比が10:50:40となるように各粉末を秤量した。秤量したNiO粉末および8YSZ粉末と、これら粉末に対して質量で1.7倍量のテルピネオールとをボールミルに入れ、回転数180rpmにて1時間混合した。次いで、このボールミル内にさらに秤量した試料P1の構造体粉末を添加し、回転数180rpmにて2時間混合した。これにより燃料極形成スラリーを調製した。
【0069】
また、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8(LSCF)粉末(平均粒径:1.0μm)と、5mol%のガドリアがドープされたガドリアドープセリア(GDC粉末)(平均粒径=0.6μm)との質量比が80:20となるように各粉末を秤量した。秤量したLSCF粉末およびGDC粉末と、これら粉末に対して質量で1.5倍量のテルピネオールとをボールミルに入れ、回転数180rpmにて2時間混合した。これにより空気極形成スラリーを調製した。
【0070】
また、5mol%のガドリアがドープされたガドリアドープセリア(平均粒径=0.6μm)と、これら粉末に対して質量で2倍量のテルピネオールとをボールミルに入れ、回転数180rpmにて2時間混合した。これにより空気極側の中間層形成スラリーを調製した。
【0071】
なお、比較を行うため、上記作製した構造体粉末が全く含まれていない燃料極形成スラリーC1、上記作製した構造体粉末の代わりに、プロトン導電体粉末であるバリウムジルコネート粉末そのものを含有させた燃料極形成スラリーC2も調製した。
【0072】
上記燃料極形成スラリーC1は、次のように調製した。NiO粉末(平均粒径:0.8μm)と、8mol%のイットリアを固溶したイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)粉末(平均粒径:0.7μm)との質量比が55:45となるように各粉末を秤量した。秤量したNiO粉末および8YSZ粉末と、これら粉末に対して質量で1.5倍量のテルピネオールとをボールミルに入れ、回転数180rpmにて2時間混合した。これにより燃料極形成スラリーC1を調製した。
【0073】
また、上記燃料極形成スラリーC2は、次のように調製した。バリウムジルコネート粉末(平均粒径:0.7μm)と、NiO粉末(平均粒径:0.8μm)と、8mol%のイットリアを固溶したイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)粉末(平均粒径:0.7μm)との質量比が10:50:40となるように各粉末を秤量した。秤量したNiO粉末および8YSZ粉末と、これら粉末に対して質量で1.7倍量のテルピネオールとをボールミルに入れ、回転数180rpmにて1時間混合した。次いで、このボールミル内にさらに秤量したバリウムジルコネート粉末を添加し、回転数180rpmにて2時間混合した。これにより燃料極形成スラリーC2を調製した。
【0074】
次に、8mol%のイットリアを固溶したイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)からなり、厚み0.3mm、直径20mmの固体電解質板の一方面に、上記試料P1の構造体粉末を含む燃料極形成スラリーをスクリーン印刷した後、これを1400℃で焼成した。なお、この焼成温度は、燃料極形成スラリーに含まれる構造体粉末を作製した際の熱処理温度以下の温度である。これにより、固体電解質板の一方面に燃料極(厚み50μm、直径8mm)を形成した。
【0075】
次いで、上記固体電解質板の他方面に、上記中間層形成スラリーをスクリーン印刷した後、これを1300℃で焼成した。次に、上記空気極形成スラリーをスクリーン印刷した後、これを1050℃で焼成した。これにより、固体電解質板の他方面に中間層(厚み8μm、直径16mm)を介して空気極(厚み50μm、直径8mm)を形成した。以上により、試料F1の燃料電池単セルを作製した。
【0076】
試料F1の燃料電池単セルの作製において、試料P2の構造体粉末(熱処理温度1600℃)を用いた点以外は同様にして、試料F2の燃料電池単セルを得た。
【0077】
試料F1の燃料電池単セルの作製において、試料P3の構造体粉末(熱処理温度1400℃)を用いた点以外は同様にして、試料F3の燃料電池単セルを得た。
【0078】
試料F1の燃料電池単セルの作製において、試料P2の構造体粉末を用い、試料P2の構造体粉末とNiO粉末と8YSZ粉末との質量比が5:53:42となるように各粉末を秤量した点以外は同様にして、試料F4の燃料電池単セルを得た。
【0079】
試料F1の燃料電池単セルの作製において、試料P2の構造体粉末を用い、試料P2の構造体粉末とNiO粉末と8YSZ粉末との質量比が20:44:36となるように各粉末を秤量した点以外は同様にして、試料F5の燃料電池単セルを得た。
【0080】
試料F1の燃料電池単セルの作製において、上記調製した燃料極形成スラリーC1を用いた点以外は同様にして、試料F6の燃料電池単セルを得た。
【0081】
試料F1の燃料電池単セルの作製において、上記調製した燃料極形成スラリーC2を用いた点以外は同様にして、試料F7の燃料電池単セルを得た。以下に、作製した各燃料電池単セル、各燃料極の詳細な構成等をまとめて表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
<燃料極の評価>
1.反応過電圧の評価
作製した燃料電池単セルを800℃で作動させ、四端子法にて交流インピーダンス測定を行い、その波形により燃料極側の電極反応抵抗を算出した。この際、燃料極には、97vol%H−3vol%HOの燃料ガスを0.1L/分の流量で供給した。また、空気極には、酸化剤ガスとして空気を0.1L/分の流量で供給した。図3および図4にその結果を示す。
【0084】
2.熱膨張評価
上記作製した試料P1〜P7の構造体の粉末をペレット状に成型し、1400℃で焼成することにより評価のための各ペレットを作製した。次いで、熱機械分析装置(TMA)を用いて、一定速度で昇温したときの各ペレットと標準試料(アルミナ)の熱膨張量の差から、各ペレットの熱膨張量を測定し、その結果から、各ペレットの熱膨張係数を算出した。この際、比較のため、上述のイットリアドープバリウムジルコネート(BZY)粉末、8YSZ粉末についても同様にペレットを作製し、熱膨張係数を算出した。図5にその結果を示す。
【0085】
<考察>
図3〜図5の結果を相対比較すると以下のことが分かる。試料F6の燃料電池単セルは、特定の構造体を含有していない燃料極を有している。そのため、燃料極の電極反応抵抗が極めて高く、出力電圧の向上を図る上で極めて不利である。また、試料F7の燃料電池単セルは、プロトン導電性を示すペロブスカイト型酸化物であるバリウムジルコネートそのものを添加した燃料極を有している。そのため、燃料極の一部を構成する酸素イオン導電体であるイットリア安定化ジルコニア、バリウムジルコネートとは、熱膨張係数が大きく異なるため、熱応力に対する構造信頼性に欠ける。
【0086】
これらに対し、試料F1〜F5の燃料電池単セルは、特定の構造体を含有する燃料極を有している。上記燃料極において、上記特定の構造体の熱膨張係数は、コア部の酸素イオン導電体の熱膨張係数に近く、表層のプロトン導電体の熱膨張係数の影響を受け難い。そのため、上記燃料極は、燃料極を構成する他材料と構造体との熱膨張係数の差を小さくすることができる。なお、図5中には示していないが、Niの熱膨張係数は、13×10−6−1程度である。それ故、上記燃料極、燃料電池単セルは、熱膨張係数の差に起因する熱応力を緩和することが可能となり、熱応力に対する構造信頼性に優れているといえる。
【0087】
また、燃料に含まれる水素(気相)の燃料極への吸着・解離は、主成分がプロトン導電体である構造体の表層でおこる。そのため、プロトン導電体自体を含有する試料F7の燃料極に比較して、少ないプロトン導電体の量でも吸着・解離の促進効果を得ることができる。それ故、上記燃料極は、反応に伴う過電圧を低減することができ、出力電圧の向上に寄与することができるといえる。また、プロトン導電体の量を低減することができるので、低コスト化の観点からも有利であるといえる。
【0088】
また、燃料極中の構造体の含有量が、3〜20質量%の範囲内にある場合には、熱応力に対する構造信頼性の向上効果と、反応過電圧の低減による出力電圧の向上効果とのバランスに優れたものになることが分かる。
【0089】
以上、実施例について説明したが、本発明は、上記実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 燃料電池単セル
2 固体電解質層
3 燃料電池用燃料極
31 構造体
311 コア部
312 表層
32 電子導電体
33 酸素イオン導電体
4 空気極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と該コア部の外周を覆う表層とを備えた構造体と、電子導電体とを少なくとも含有し、
上記コア部の主成分が酸素イオン導電体であり、上記表層の主成分がプロトン導電体であることを特徴とする燃料電池用燃料極。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池用燃料極は、
さらに、酸素イオン導電体を含有することを特徴とする燃料電池用燃料極。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池用燃料極において、
上記コア部の主成分である酸素イオン導電体は、安定化ジルコニアおよびセリア系固溶体から選択される1種または2種以上であり、
上記表層の主成分であるプロトン導電体は、プロトン導電性を示すペロブスカイト型酸化物であることを特徴とする燃料電池用燃料極。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用燃料極において、
上記構造体は、上記コア部の中心から表層の表面までの距離に対する表層の厚みの割合が、5〜50%の範囲内にあることを特徴とする燃料電池用燃料極。
【請求項5】
固体電解質層の少なくとも一方面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用燃料極を有することを特徴とする燃料電池単セル。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池単セルを有することを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
コア部と該コア部の外周を覆う表層とを備えた構造体から構成される粉末と、電子導電体から構成される粉末とを少なくとも含む混合物を得る混合物形成工程と、
得られた混合物を焼成する焼成工程とを有し、
上記コア部の主成分が酸素イオン導電体であり、上記表層の主成分がプロトン導電体であることを特徴とする燃料電池用燃料極の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池用燃料極の製造方法において、
上記混合物は、さらに、酸素イオン導電体から構成される粉末を含むことを特徴とする燃料電池用燃料極の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の燃料電池用燃料極の製造方法において、
上記構造体から構成される粉末は、
コア部の原料となる酸素イオン導電体から構成される粉末の粒子表面に、熱処理によって上記酸素イオン導電体と反応してプロトン導電体を生成可能な反応原料を付着させる付着工程と、
上記反応原料を付着させた酸素イオン導電体から構成される粉末を熱処理する熱処理工程とを経ることにより準備されることを特徴とする燃料電池用燃料極の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料電池用燃料極の製造方法において、
上記焼成工程における焼成温度は、上記熱処理工程における熱処理温度以下であることを特徴とする燃料電池用燃料極の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の燃料電池用燃料極の製造方法において、
上記コア部の主成分である酸素イオン導電体は、安定化ジルコニアおよびセリア系固溶体から選択される1種または2種以上であり、
上記表層の主成分であるプロトン導電体は、プロトン導電性を示すペロブスカイト型酸化物であることを特徴とする燃料電池用燃料極の製造方法。
【請求項12】
コア部と該コア部の外周を覆う表層とを備え、かつ上記コア部の主成分が酸素イオン導電体であり、上記表層の主成分がプロトン導電体である構造体から構成されることを特徴とする粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51043(P2013−51043A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186886(P2011−186886)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】