説明

牡蠣用しそ科植物成分内包マイクロカプセル及び牡蠣のノロウイルス低減法

【課題】牡蠣が取り込み易い粒径を有するしそ科植物内包マイクロカプセルを用いて簡単に行い得る牡蠣のノロウイルス低減法の提供。
【解決手段】本発明の牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセルは、オレガノ又はしそ葉成分を内蔵し、粒径が2μmより大きく、かつ80μm以下であって、このうち2μmより大きい粒径のものが90%以上である。また牡蠣のノロウイルス低減法は、水槽に海水を投入した後、該海水に洗浄した牡蠣を投入して浸し、一晩そのままにして止水、通気条件で絶食させ、ついで、海水から絶食させた牡蠣を取り出し、干出した後、別途、オレガノ成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水に、前記干出後の牡蠣を投入して浸すか又は海水に干出後の牡蠣を投入して浸した後、前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルを投入し、分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牡蠣が取り込み易い、牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセル及び該マイクロカプセルを用いた牡蠣のノロウイルス低減法に関し、更に詳しくは、牡蠣が取り込み易い粒径を有する、牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセル及び該マイクロカプセルを用いて簡単に行い得る牡蠣のノロウイルス低減法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
牡蠣を生食用に供給することは、益々盛んになる中、牡蠣による食中毒(すなわち牡蠣による冬季嘔吐症)も多発している。この食中毒の原因は、牡蠣に取り込まれたノロウイルスによるものが圧倒的に多く、生食により数個から100個程度の摂取でノロウイルス胃腸炎に感染するといわれている。また牡蠣は濾過食性の水生生物であり、環境水中の縣濁粒子を濃縮することが知られている。
【0003】
一方、牡蠣は、えらにおいて濾しとる粒子の大きさは2μmより大きい粒子であり、1μm〜2μm以下の微粒子は通過してしまうとされている。ノロウイルスで汚染された牡蠣からノロウイルスを低減する方法は、従来、種々行なわれており、通常、浄化処理と転地処理が知られている。一般に、浄化処理は、漁獲した貝類を水槽などに収容し、清浄な海水を1〜2日程度掛け流すことにより貝に含まれる病原微生物を除去あるいは減少させることを意味する。また転地処理は、漁獲した貝を一定期間(通常1ないし2週間程度)清浄な水域に留め置き、微生物汚染を軽減した後、出荷する方法である。
【0004】
生食時におけるノロウイルスによる食中毒を防止するために、牡蠣に穴を開け、この穴から強制的に無菌塩水又は該無菌塩水にオゾンを含むマイクロバブルを加えて送り込む貝類の除菌浄化方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、ハーブ等の機能性植物やプロバイオテックス(有用な微生物)で、牡蠣が保有する腸炎ビブリオやノロウイルスなどの食中毒病原体を浄化しようという研究が行なわれていることが新聞報道されている(例えば、非特許文献1参照)。ニンニクとクローブ、シナモンの3種類が特に腸炎ビブリオ菌に対して効果があることが新聞報道されている(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−199946(特許請求の範囲)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日刊みなと新聞、2006年(平成18年)11月30日
【非特許文献2】日刊毎日新聞、2007年(平成19年)10月31日
【非特許文献3】岡山日日新聞、2008年(平成20年)2月21日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述のごとき特許文献1に記載の貝類の除菌浄化方法は、一つひとつ貝殼部分に穴を開け、この穴から強制的に無菌塩水又は該無菌塩水にオゾンを含むマイクロバブルを加えて送り込み、出荷時には前記穴に封止栓で封止する方法であるので、高価な装置を必要とするばかりでなく、操作が繁雑となると共に、その除菌効果も今一つ十分ではないという問題がある。
【0009】
非特許文献2、3に記載されているニンニクとクローブ、シナモン等は細菌類に対して選択性があり、腸炎ビブリオ菌に対して効果があるものの、ノロウイルスには効果がないという欠点がある。
【0010】
そこで、本発明者等は、ニンニク、クローブ、シナモン等は、腸炎ビブリオ菌に対しては有効であるものの、ノロウイルスに対しては効果がないことを確かめた。しかしながら、これらの機能性植物には、菌やウイルスに対する選択性があるということが判り、この知見の基に、ノロウイルスに対して選択的に死滅等の効果を呈する機能性植物が存在するのではないかと推定し、試行錯誤の中で数多くの植物のノロウイルスに対する効果を試験した。その結果、しそ科の多年草であるオレガノやしそ葉に牡蠣のノロウイルスに対する低減効果があることを見出し、更にこの知見に基づいて牡蠣が取り込む大きさを考慮して80μm以下の、しそ科植物成分内包マイクロカプセルを製造し、牡蠣に与えたところ、牡蠣のノロウイルスに対して優れた低減効果を示すことがわかり、ここに本発明をなすに至った。
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、牡蠣が取り込み易い粒径を有する、牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセルを用いて簡単に行い得る牡蠣のノロウイルス低減法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、下記の各発明によって達成される。
(1)しそ科植物成分を内蔵し、粒径が2μmより大きく、かつ80μm以下であることを特徴とする牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセル。
(2)前記ノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセルは、2μmより大きい粒径のものが90%以上であることを特徴とする前記第1項に記載の牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセル。
(3)前記しそ科植物成分の1つであるオレガノは、オレガノオイルからなることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセル。
(4)水槽に海水を投入した後、該海水に洗浄した牡蠣を投入して浸し、一晩そのままにして止水、通気条件で絶食させ、ついで、海水から絶食させた牡蠣を取り出し、干出した後、別途、しそ科植物成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水に、前記干出後の牡蠣を投入して浸すことを特徴とする牡蠣のノロウイルス低減法。
(5)前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水に、前記干出後の牡蠣を投入して浸すことに代えて海水に前記干出後の牡蠣を投入して浸した後、前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルを投入し、分散させることを特徴とする前記第4項に記載の牡蠣のノロウイルス低減法。
(6)前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水の温度を、15℃〜25℃に温めることを特徴とする前記第4項又は第5項に記載の牡蠣のノロウイルス低減法。
(7)前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルは、2μmより大きい粒径のものが90%以上であることを特徴とする前記第4項又は第5項に記載の牡蠣のノロウイルス低減法。
(8)前記干出時間は、5時間〜24時間であることを特徴とする前記第4項乃至第6項のいずれかに記載の牡蠣のノロウイルス低減法。
(9)海水に懸濁させるしそ科植物成分内包マイクロカプセルの量は、牡蠣1個に対して0.15mLの割合であることを特徴とする前記第4項乃至第7項のいずれかに記載の牡蠣のノロウイルス低減法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセルは、しそ科植物成分を内蔵し、粒径が2μmより大きく、かつ80μm以下であることにより、牡蠣が短時間に多くのマイクロカプセルを取り込むことができ、ノロウイルスの低減性能を向上させることができるという優れた効果を奏するものである。また前記ノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセルは、2μmより大きい粒径のものが90%以上であることにより、牡蠣が短時間に効率的に多くのマイクロカプセルを取り込むことができ、ノロウイルスの低減性能をいっそう向上させることができるという優れた効果を奏するものである。前記しそ科植物成分が、オレガノオイルであることにより、マイクロカプセルの作製が容易であるばかりでなくノロウイルスに対する低減性能も優れている。
【0014】
本発明の牡蠣のノロウイルス低減法は、水槽に海水を投入した後、該海水に洗浄した牡蠣を投入して浸し、一晩そのままにして止水、通気条件で絶食させ、ついで、海水から絶食させた牡蠣を取り出し、干出した後、別途、しそ科植物成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水に、前記干出後の牡蠣を投入して浸すことを特徴とする。ここで、水槽に投入される海水は、清浄な海水であることは言うまでもない。またあらかじめ牡蠣を絶食状態にしておくことは、牡蠣の消化管に餌などの消化物がない状態にし、しそ科植物成分内包マイクロカプセルを十分取り込むようにするためである。また前記牡蠣のノロウイルス低減法は、前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水の温度を、15℃〜25℃に温める。真冬の海水の温度を15℃〜25℃に温める理由は、即ち、このように温めることによって牡蠣の濾水活動を活発にさせるという効果を促進させることにある。その結果、牡蠣のろ過能力(プランクトンなどを取り込む能力)が大きくなる。前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルは、2μmより大きい粒径のものが90%以上であることにより、牡蠣が短時間に効率的に多くのマイクロカプセルを消化管に取り込むことができ、ノロウイルスの低減性能をいっそう向上させることができるという優れた効果を奏するものである。前記干出時間は、5時間〜24時間であることにより、海水中に投入したとき、一斉に牡蠣が活動を開始することができ、したがってすべての牡蠣が均等にオレガノ成分内包マイクロカプセルを取り込むことができるという優れた効果を奏するものである。更に海水に懸濁させるしそ科植物成分内包マイクロカプセルの量は、牡蠣1個に対して少なくとも0.15mLの割合であることにより、極めて効果的に牡蠣のノロウイルスを低減できるという効果を奏するものである。更に本発明では、水槽に海水を投入した後、該海水に洗浄した牡蠣を投入して浸し、一晩そのままにして止水、通気条件で絶食させ、ついで、海水から絶食させた牡蠣を取り出し、干出した後、別途、設けられた水槽などに満たされた海水に前記干出後の牡蠣を投入して浸した後、前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルを投入し、分散させることを特徴とするものである。このように、牡蠣を浸した海水中にしそ科植物成分内包マイクロカプセルを投入しても前述の如き本発明の効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を説明するが、これは一例であってこれに限定されるものではない。ここで、本発明においては、本願明細書及び特許請求の範囲に記載のしそ科植物成分内包マイクロカプセルは、牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセルの意味に使用しており、更に、しそ科植物成分内包マイクロカプセル(以下、単に、カプセルともいう。)とは、しそ科植物成分内包マイクロカプセルスラリーをいう意味にも用いている。
【0016】
本発明は、数多くの機能性植物が牡蠣のノロウイルスに対する低減作用を有するか否かを試験したところ、香辛料又はハーブとして知られているガーリック、クローブ、シナモン、ジンジャー、ローリエ、ユーカリ、ラベンダー等、及び生薬である黄柏(おうばく)、金銀花(きんぎんか)などの多くのものには、ノロウイルスに対して低減効果はなく、しそ科植物成分であるオレガノやしそ葉が牡蠣のノロウイルスに対する低減作用を有することがわかった。これはオレガノやしそ葉が牡蠣のノロウイルスに対する低減作用を有すること発見したことに基づく新規な発明である。本発明に用いられるオレガノは、シソ科の多年草で、日本名ではハナハッカ(花薄荷)と命名されている。オレガノ葉は、ほろ苦い清涼感があり、しかも生又は乾燥させて香辛料として使用される。主にイタリア料理やメキシコ料理などでスパイスとして使用される。また、しそ葉は、しその葉から抽出したオイルが使用される。
【0017】
本発明では、オレガノ葉から抽出したオレガノオイルを使用するのが好ましい。また、しそ葉オイルもしそ科植物成分の一種であるから、オレガノオイルのマイクロカプセルと同様にマイクロカプセル化により製造することができる。したがって、ここでは、オレガノオイルのマイクロカプセルについて、例示的に述べる。前記のオレガノオイルのマイクロカプセル化は、通常知られているマイクロカプセル化技術が用いられ、例えば、コアセルベーション法が一般的である。本発明の牡蠣が取り込み易い粒径を有するオレガノ成分内包マイクロカプセルの粒径は、80μm以下であり、好ましくは粒径が2μmより大きく、かつ80μm以下であり、更に好ましくは3μm〜80μmである。ここで、3μm〜80μmとは、3μmの粒径から80μmの粒径の範囲にある粒子の混合物であり、平均粒径で言えば、例えば、平均粒径40μmの粒子は、最大粒径80μmの粒子を上限に含み、かつ下限が3μmまでの粒子を含むということができる。しかしながら、実質的には4μm〜60μmの粒子からなるものが最も好ましい。牡蠣は餌をえらで濾し取り、えらの表面にある繊毛で口へと運び込むが、大きすぎる餌(カプセル)や餌が多過ぎる場合には殻の外へ吐き出している。本発明において、オレガノ成分内包マイクロカプセルの粒径を80μm以下に限定したのは、このような牡蠣の生態に合わせたものである。また2μm以下の小さいマイクロカプセルは、えらを通過して海水と共に吐き出してしまい取り込むことができない。もちろん本発明のオレガノ成分内包マイクロカプセルの粒径が2μmより大きく、かつ80μmが好ましいが、3μm以下の小さいマイクロカプセルは、えらを海水と共に通過する場合が多いが、取り込まれなくても問題はない。更に本発明においては、マイクロカプセルの粒径は、比較的4μm〜60μmの範囲に揃っていることが好ましいが、粒径が2μmより大きく、かつ80μm以下の粒子を含むものであれば、特に問題はない。なお、オレガノ成分内包マイクロカプセルは、水にカプセルが分散した状態で保持される(これを一般に「カプセルスラリー」と呼んでいる。)。オレガノ成分内包マイクロカプセルスラリーの水の割合は、特に限定されるものではないが、カプセルが30質量%〜80質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明の牡蠣のノロウイルス低減法は、水槽に海水を投入した後、該海水に洗浄した牡蠣を投入して浸し、一晩そのままにして止水状態とし、通気条件で絶食させ、ついで、海水から絶食させた牡蠣を取り出し、干出した後、オレガノ成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水に、前記干出後の牡蠣を投入して浸すことを特徴とするものである。ここで、水槽としては、特に限定されるものではなく、好ましくは、通常、貝類の浄化処理を行うときに用いられるような容器状海水保持体であればよく、水槽などの容器状海水保持体の大きさは必要に応じて適宜選択される。水槽には、十分な海水が充満しており、牡蠣を投入して浸した後、止水状態(水槽中の海水の出し入れ又は交換をしないでそのままに保持すること。)とし、通気(空気を通すこと。)するか、または牡蠣を投入する前に止水状態とし、通気する。もちろん、止水状態によって牡蠣は海水中に浮遊している植物プランクトンなどを食べているが、そのうち止水状態の中に置かれているので、やがて水槽中の浮遊植物プランクトンなどを食べ尽くし絶食状態となる。これにより牡蠣の消化管の中は何も入っていない、いわゆる空の状態となる。この絶食状態を十分維持した後、海水から絶食させた牡蠣を取り出し、干出する。干出とは、海水から取り出した牡蠣をそのまま放置しておくことであり、この状態にしておくと牡蠣は、海水に戻したとき、一斉に呼吸を始め、餌をたべるようになる。干出時間は、5時間〜24時間であり、好ましくは5時間〜20時間がよく、更に好ましくは、5時間〜10時間である。
【0019】
本発明では、干出した後、餌の代わりにオレガノ成分内包マイクロカプセルを海水に投入する。牡蠣の漁獲は厳冬期に行なわれるので、漁獲時の海水の温度は10℃程度である。したがって、海水の温度を15℃〜25℃に温める。好ましくは17℃〜23℃が好ましく、更に好ましくは、20℃前後が好ましい。これにより牡蠣のろ過能力が大きくなり、またマイクロカプセルの壁膜が分解されやすくなる。前記海水に投入した牡蠣は一斉に呼吸を始めると共に、オレガノ成分内包マイクロカプセルを取り込む。牡蠣の消化管に取り込まれたオレガノ成分内包マイクロカプセルは、消化管から分泌される消化液によりマイクロカプセルのゼラチン壁膜は分解され、中からオレガノオイルが消化管内に流出し、ノロウイルス菌を死滅させるか又はノロウイルスの低減をはかることができる。更に海水中に懸濁するオレガノ成分内包マイクロカプセルの量は、牡蠣の数に応じて適宜決定されるが、牡蠣1個に対して少なくとも0.15mLの割合で添加するのが好ましい。具体的には、10Lの水槽に牡蠣を、50個を上限として浸した場合、オレガノ成分内包マイクロカプセル0.1mL〜10mLを牡蠣の個数に応じて適宜添加することができる。好ましくは、1.5mL〜10mLであり、更に好ましくは2.0mL〜8.0mLであり、更に1.95mL〜7.5mLがもっとも好ましい。10Lの水槽に牡蠣を、50個を上限として浸した場合、オレガノ成分内包マイクロカプセル0.1mLより少ない場合には、オレガノ成分の量が少ないので、ノロウイルスの低減効果が期待できない。また10mLを超えてもそれ以上の低減効果を得ることができないばかりか経済性を考慮した場合採算が合わない点で好ましくない。本発明において、しそ科植物成分内包マイクロカプセルは、オレガノ成分を内包するものとしそ葉成分を内包するもののそれぞれ内包するマイクロカプセルをいう意味に用いられると共に、これらの2成分を内包するものであってもよい意味に使用している。また牡蠣のノロウイルス低減法は、マガキに限定されるものではなく、その適用は牡蠣の種類には限定されない。

【実施例1】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は一例を説明するためのものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
〔製造例〕本発明のオレガノ成分内包マイクロカプセルは、次のようにして製造した。
ゼラチン(ゼライス社製)の11質量%水溶液90gにオレガノオイル(永廣堂本店製)60gを添加し、平均粒子径50μmになるようにホモミキサー(特殊機化工業社製)を使い混合し、O/W型エマルジョンを作製した。8質量%食添用ヘキサメタリン酸ソーダ(日本化学工業社製)水を加えた。ついで40℃の水500gを加えた後、pHを5.3に調整した。得られた分散液を20℃までゆっくり冷却して、オレガノオイルの周囲にゼラチン壁膜を形成した。さらに10℃まで冷却した後、トランスグルタミナーゼを含有するアクティバTG−K(味の素社製)を2.6g加え、一昼夜攪拌した。次の日、得られたカプセルスラリーをゆっくり昇温し、50℃で1時間攪拌した後、30℃まで冷却した。出来上がったスラリーを120メッシュのスクリーンで50μm以下の粒子を篩い分けし、水で洗浄し、静置後、水を抜き取り、70質量%の水含有のオレガノ成分内包マイクロカプセルスラリー(以下、実施例では、カプセル液ともいう。)を得た。同様にして、本発明に用いられるしそ葉と比較に用いられる黄柏、金銀花、枇杷葉、ガーリック、クローブ、シナモン、ジンジャー、ローリエ及びラベンダーを内包するマイクロカプセルを製造した。
【0022】
〔牡蠣のノロウイルス浄化試験〕
(1)汚染牡蠣の作出と前処理
下水処理場排水口直近で牡蠣を飼育した。生育後の牡蠣を回収し、直ちに1昼夜止水通気条件(水温約10℃)で絶食させ、ついで、野外飼育棟で外気温条件(朝の最低気温約3℃、日中最高気温約13℃)で6時間干出させた。
【0023】
(2)浄化試験
対照区(比較)と本発明に係るオレガノ区(オレガノ)の2つの清浄な海水を満たした水槽をそれぞれ用意した。オレガノ区には、海水10Lに対してカプセル液2mLを添加し、干出させた牡蠣13個を収容した。対照区には、カプセル液を添加しないで牡蠣を13個収容して比較とした。これら2つの水槽を8℃に設定した恒温室に収納した。なお、収容時の海水は、あらかじめ約20℃に温めたものを使用したが、取り込み試験は、8℃に設定した恒温室で実施したので、4時間後には8℃近くまで水温は低下していた。同様にして、機能性植物区には、本発明のしそ葉、表1に示される比較用の機能性植物を用いて浄化試験を行なった。
【0024】
浄化試験開始から19時間経過後、牡蠣を取あげ、むき身にして−84℃で冷凍した。翌週、牡蠣から消化管を摘出し、この消化管をノロウイルス検査に供した。なお、検査は、リアルタイムPCR法で行い、オレガノ区は牡蠣12個、対照区は10個を無作為に抽出したが、ガーリック、クローブ、シナモン、ジンジャー、ローリエ及びラベンダーについては、12個抽出した。
【0025】
(3)リアルタイムPCR(Polymerase Chain Reaction)法
ノロウイルスのDNAに対して、増やしたい部分に応じて必要な試薬を加えた後、(a)加熱すると2本鎖がほどけてひとえ鎖2本になる。(b)冷却すると、前記試薬によってDNAの特定部位だけ合成され、一部が二重の2本の鎖になる。(c)再び加熱すると鎖はほどけて、長さの違うひとえの鎖4本になる。(d)再び冷却すると、特定部位だけ合成され、一部が二重になっている4本の鎖になる。(e)前記(c)、(d)を30〜40回繰り返すことで、微量に含まれている遺伝子の特定部位のDNAを増やし、検出されやすくする。
【0026】
(4)浄化試験結果





















【0027】
【表1】

【0028】
表1から明らかなように、牡蠣のノロウイルス汚染に対して、オレガノオイル内包マイクロカプセルを牡蠣に取り込むことにより、効果的にノロウイルス陽性率を低減することができ、危険率0.5%で有意差のあることは、実験結果の高い信頼性を表わしている。なお、本発明では、しそ科植物内包マイクロカプセルの粒径が3μm、30μm、40μm、60μm、70μm及び80μmのものについても、効果において差こそあれ本発明の範囲の効果が得られることは、オレガノやしそ葉を内包していることからみて明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の牡蠣のノロウイルス低減法は、しそ科植物成分内包マイクロカプセルを用いて浄化処理をするものであり、従来の方法に比べて極めて簡単にしかも経済的にノロウイルスを低減することができるので、産業上の有用性は極めて大きいといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
しそ科植物成分を内蔵し、粒径が2μmより大きく、かつ80μm以下であることを特徴とする牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセル。
【請求項2】
前記ノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセルは、2μmより大きい粒径のものが90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセル。
【請求項3】
前記しそ科植物成分の1つであるオレガノは、オレガノオイルからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の牡蠣のノロウイルス低減用しそ科植物成分内包マイクロカプセル。
【請求項4】
水槽に海水を投入した後、該海水に洗浄した牡蠣を投入して浸し、一晩そのままにして止水、通気条件で絶食させ、ついで、海水から絶食させた牡蠣を取り出し、干出した後、別途、しそ科植物成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水に、前記干出後の牡蠣を投入して浸すことを特徴とする牡蠣のノロウイルス低減法。
【請求項5】
前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水に、前記干出後の牡蠣を投入して浸すことに代えて海水に前記干出後の牡蠣を投入して浸した後、前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルを投入し、分散させることを特徴とする請求項4に記載の牡蠣のノロウイルス低減法。
【請求項6】
前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルを懸濁させた海水の温度を、15℃〜25℃に温めることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の牡蠣のノロウイルス低減法。
【請求項7】
前記しそ科植物成分内包マイクロカプセルは、2μmより大きい粒径のものが90%以上であることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の牡蠣のノロウイルス低減法。
【請求項8】
前記干出時間は、5時間〜24時間であることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれかに記載の牡蠣のノロウイルス低減法。
【請求項9】
海水に懸濁させるしそ科植物成分内包マイクロカプセルの量は、牡蠣1個に対して少なくとも0.15mLの割合であることを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれかに記載の牡蠣のノロウイルス低減法。

【公開番号】特開2011−62135(P2011−62135A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215641(P2009−215641)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(591060980)岡山県 (96)
【出願人】(000105305)ケミテック株式会社 (13)
【Fターム(参考)】