説明

牧草拾い上げユニット用規制機構、牧草拾い上げユニット及び牧草処理装置

【課題】タインの回転を阻害せずに、ピックアップ装置の牧草拾い上げ量を規制する。
【解決手段】所定間隔で配列された複数の規制部材14を構成する棒状部材46の下端部が、ピックアップ装置10に最も近接し、かつ回転軸Oaよりも下方に位置しているので、牧草の量が大量だとしても、牧草のうちの一部(上層部)を規制部材14の棒状部材46に接触させて規制することができる。また、棒状部材の下端部近傍の、進行方向(矢印A方向)に関する傾斜が略水平であるため、棒状部材とタインとの間で牧草の引っ張り合いが発生しても、所定の引張力が生じた時点で棒状部材から牧草を外すことができる。また、棒状部材の上端部は、牧草50の高さ方向の位置よりも上方に位置しているので、牧草が棒状部材の上側を越えてピックアップ装置に取り込まれるのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牧草拾い上げユニット用規制機構、牧草拾い上げユニット及び牧草処理装置に関し、特に、牧草拾い上げ装置によって拾い上げられる牧草の量を規制する牧草拾い上げユニット用規制機構、牧草拾い上げユニット用規制機構を備える牧草拾い上げユニット及び牧草拾い上げユニットを備える牧草処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飼料価格の高騰を受けて、粗飼料を低コストで自給生産することが課題となっている。粗飼料の一つである予乾牧草の収穫は、フォーレージハーベスタやロールベーラが有する牧草拾い上げ装置(ピックアップ装置とも言う)を用いて行われている。このピックアップ装置は、回転軸に対して放射状に設けられた多数のタインを有しており、回転軸を中心としてタインを回転させることにより牧草の拾い上げを行うものである。
【0003】
従来、ピックアップ装置に、拾い上げた牧草を一定の厚さに圧縮するプレスバーやローラなどが装着された技術が提案されている(非特許文献1の図3.45において、ピックアップ装置とオーガとの間にプレスバーが設けられた状態が図示されている)。
【0004】
【非特許文献1】「生物生産機械ハンドブック」農業機械学会編、コロナ社、1996年、p.685、図3.45
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピックアップ装置を用いる場合には、モーアで刈り取られ、圃場で予乾された牧草の拾い上げ効率を高めるために、レーキを用いて、予め牧草をウィンドロー状(うね状)に収集・堆積させるのが一般的である。しかるに、ウィンドロー状に堆積させた予乾牧草の草量(積層された高さ)は均一でないことが多いため、ピックアップ装置(タイン)が一度に拾い上げる草量にムラが生じることがある。また、牧草の水分が高く、収量が多い場合には、牧草が絡まってダマ(固まり)になりやすいため、ピックアップ装置が、必要以上に多くの牧草を拾い上げてしまうこともある。
【0006】
このように、ピックアップ装置によって拾い上げられる牧草の量が多い場合、フォーレージハーベスタを構成する供給ローラ、カッターヘッド、放出シュートなどへの牧草の詰まりや、ロールベーラを構成する成形室の入り口や切断装置などへの牧草の詰まりが頻繁に生じてしまうことが懸念される。また、これらの装置において、上記のような牧草の詰まりが生じた場合、操作者(オペレータ)は、装置に詰まった牧草を取り除くために収穫作業を中断しなければならず、多くの労力と時間を費やし、結果的に飼料の高コスト化を招くおそれがある。
【0007】
特に、わが国で用いられるような機関出力が比較的低い装置の場合、欧米などで用いられるような機関出力の高い装置に比べて牧草の詰まりの問題が顕著となることが予想される。
【0008】
なお、上記非特許文献1に記載されているプレスバーは、拾い上げた牧草の厚さを調整するためのものであり、また、上下動が可能となるようにバネなどの弾性部材を介して装置に固定されるものである。したがって、このプレスバーにはピックアップ装置による牧草の拾い上げ量の規制効果は、ほとんどないものと考えられる。
【0009】
そこで、本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、牧草拾い上げ装置によって拾い上げられる牧草の量を規制することが可能な牧草拾い上げユニット用規制機構を提供することを目的とする。また、本発明は、効率的に牧草の拾い上げを行うことができる牧草拾い上げユニットを提供することを目的とする。また、本発明は、効率的な牧草の処理を行うことが可能な牧草処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の牧草拾い上げユニット用規制機構は、所定の進行方向に移動しながら回転軸を中心に回転して、前記回転軸に対して放射状に設けられた複数のタインにより前記進行方向前方にウィンドロー状に堆積された牧草を拾い上げる牧草拾い上げ装置の近傍に設けられ、前記牧草拾い上げ装置により拾い上げられる牧草の量を規制するものであり、前記牧草拾い上げ装置から前記進行方向前方に所定距離離れた位置で、前記回転軸に平行な方向に所定間隔で配列された複数の規制部材と、前記複数の規制部材相互間の位置関係、及び前記牧草拾い上げ装置との位置関係を固定する固定部と、を備え、前記各規制部材は、前記牧草と接触する接触部を有し、前記接触部の下端部は、前記牧草拾い上げ装置に最も近接し、かつ前記回転軸よりも下方に位置するとともに、当該下端部近傍の前記進行方向に関する傾斜が略水平とされ、前記接触部の上端部は、前記牧草拾い上げ装置から最も離れ、かつ前記ウィンドロー状に堆積された牧草の高さ方向の位置よりも上方に位置することを特徴とする。
【0011】
これによれば、所定間隔で配列された(櫛状に配列された)複数の規制部材の接触部の下端部が、牧草拾い上げ装置に最も近接し、かつ牧草拾い上げ装置の回転軸よりも下方に位置していることから、牧草の量が大量だったとしても、牧草のうちの一部(上層部)が規制部材の接触部に接触するので、タインによる牧草の拾い上げ量を規制することができる。また、接触部の下端部近傍の進行方向に関する傾斜が略水平とされていることで、接触部の下端部とタインとの間の牧草の引っ張り合いを抑制することができるので、タインの回転が阻害されるのを抑制することができる。更に、規制部材の接触部の上端部は、ウィンドロー状に堆積された牧草の高さ方向の位置よりも上方に位置しているので、牧草が規制部材の接触部の上側を越えて牧草拾い上げ装置に取り込まれるのを抑制することが可能である。
【0012】
この場合において、前記規制部材は、略板状部材から成り、その一部を前記接触部とすることができるし、また、前記規制部材は、棒状部材から成ることとすることもできる。この場合の棒状部材は、回転軸に平行な方向から見て、所定回数折り曲げられた形状や、曲線状の形状を有するように加工されていても良い。
【0013】
規制部材が棒状部材の場合には、前記棒状部材を断面略円形とすることができる。かかる場合には、牧草の規制部材への絡みを抑制できるので、棒状部材とタインとの間の牧草の引っ張り合いによる牧草拾い上げ装置の回転動作への影響を抑制することができる。
【0014】
本発明の牧草拾い上げユニット用規制機構では、前記規制部材と前記固定部材との位置関係を変更自在にする位置変更機構を更に備えることとすることができる。かかる場合には、牧草の堆積状態などに応じて、規制部材の位置を変更することが可能となる。
【0015】
また、本発明の牧草拾い上げユニット用規制機構では、前記規制部材は、前記牧草拾い上げ装置によって拾い上げられる牧草の量を規制する際に変形が生じない程度の剛性を有するとともに、前記牧草の量を規制する際に位置変化が生じないように前記固定部に固定されていることとすることができる。かかる場合には、牧草の量の規制を効果的に行うことが可能となる。
【0016】
本発明の牧草拾い上げユニットは、回転軸に対して放射状に設けられた複数のタインを有する牧草拾い上げ装置と、前記牧草拾い上げ装置近傍に設けられた、本発明の牧草拾い上げユニット用規制機構と、を備えることを特徴とする。
【0017】
これによれば、牧草拾い上げ装置の回転を阻害することなく、牧草拾い上げ装置によって拾い上げられる牧草の量を規制することができるので、効率的な牧草の拾い上げを実現することが可能となる。
【0018】
本発明の牧草処理装置は、本発明の牧草拾い上げユニットと、前記牧草拾い上げユニットにより拾い上げられた牧草を処理する処理装置本体と、を備えることを特徴とする。
【0019】
これによれば、効率的に牧草を拾い上げることが可能な牧草拾い上げユニットにより拾い上げられた牧草を処理装置本体が処理するので、処理装置本体内に過剰に牧草が供給されることによる牧草の詰まりの発生が抑制され、牧草の効率的な処理を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、牧草拾い上げ装置によって拾い上げられる牧草の量を規制することが可能な牧草拾い上げユニット用規制機構を提供することができる。また、本発明は、効率的に牧草の拾い上げを行うことが可能な牧草拾い上げユニットを提供することができる。また、本発明は、効率的な牧草の処理を行うことが可能な牧草処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図8に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の牧草拾い上げユニット用規制機構及び牧草拾い上げユニットの実施に好適なフォーレージハーベスタ100の概略構成を示す。このフォーレージハーベスタ100は、トラクターなどの動力部に装着されて、図1の矢印A方向(以下、「進行方向」とも呼ぶ)に移動しながら、進行方向前方にウィンドロー状(うね状)に堆積された予乾牧草(以下、単に「牧草」と呼ぶ)50を拾い上げて細断するとともに、その細断した牧草をフォーレージハーベスタ100(及びこれが装着された動力部)とともに伴走するダンプトラック等の荷台に投入する装置である。
【0023】
図1に示すように、フォーレージハーベスタ100は、本体90、本体90にそれぞれ搭載された、牧草拾い上げ装置としてのピックアップ装置10、規制機構としての規制装置16、オーガ(集草スクリュ)18、一対の供給ローラ20A,20B、固定刃22、複数の切断刃24を有するカッターヘッド26、不図示のブロワ、放出シュート28等を備える。これらのうちピックアップ装置10と規制装置16とにより本発明の牧草拾い上げユニットが構成されている。
【0024】
ピックアップ装置10は、図2に模式的に示すように、筺体52と、この筺体52の内部に設けられ、水平面内で進行方向(矢印A方向)に直交する方向を回転軸(Oa)として図2における時計回り(右回り)に回転する円柱状の回転体54と、を有している。
【0025】
筺体52には、図3(b)に示すように、所定幅の複数のスリット34、34、…が回転軸Oaに平行な方向に沿って所定間隔で形成されている。
【0026】
回転体54の周壁には、図2等から分かるように、複数のタイン32、32、…が突設されている。これらタイン32は、回転軸Oaに対して放射状(例えば90°間隔)、かつ、回転軸Oaに平行な方向に沿って所定間隔(筺体52に形成された複数のスリット34の間隔と同一の間隔)で配置されている。タイン32は、スリット34を介して、筺体52の外部に突出した状態となっているため、回転体54が回転軸Oaを中心に回転することにより、タイン32がスリット34に沿って移動する。
【0027】
このように構成されるピックアップ装置10では、回転する複数のタイン32によって、ウィンドロー状に堆積された牧草50を拾い上げ、拾い上げた牧草を図1に示すオーガ18に向けて搬送する。
【0028】
オーガ18は、図1に示すように、円柱状の本体部18aと、当該本体部18aの外周面に形成された螺旋帯状の凸部18bとを有しており、回転軸Obを中心に図1における時計回り(右回り)に回転することで、ピックアップ装置10で拾い上げられた牧草を中央(回転軸Ob方向に関する中央部分)近傍に寄せ集め、後方に配置された供給ローラ20A,20Bに供給する。
【0029】
供給ローラ20A,20Bは、それぞれ円柱状の部材から成り、供給ローラ20Aが図1における時計回り(右回り)に回転し、供給ローラ20Bが図1における反時計回り(左回り)に回転することで、牧草を進行方向前方から後方に供給する。
【0030】
カッターヘッド26は、図1に示す複数(図1では4つのみ図示)の切断刃24と、これら切断刃24を図1における時計回り(右回り)に回転する回転機構(不図示)と、を有するシリンダ式の細断刃である。各切断刃24は、回転機構により回転駆動されることで、その先端(刃部)が、固定刃22の近傍を順次移動する。このため、回転する切断刃24と固定刃22との間に、供給ローラ20A,20Bから供給された牧草が浸入することにより、牧草が細断されるようになっている。なお、カッターヘッド26としては、シリンダ式に限らず、フライホイール式の細断刃を採用しても良い。
【0031】
不図示のブロワは、カッターヘッド26(及び固定刃22)により細断された牧草を上方に吹き上げ、放出シュート28を介して、フォーレージハーベスタ100に伴走するダンプトラック等の荷台に投入する。
【0032】
次に、前述したピックアップ装置10の近傍(進行方向前方)に設けられた規制装置16について、図2〜図5等に基づいて詳細に説明する。
【0033】
規制装置16は、当該規制装置16及びピックアップ装置10を取り出して斜視図にて示す図3(a)からわかるように、上方から見て略U字状(コ字状)の固定部材12と、回転軸Oa方向に所定間隔(例えば、タイン32が配列されている間隔の2倍)で略櫛状に配列された複数の規制部材14,14、…と、固定部材12に対して各規制部材14を接続する複数の接続部材48,48,…とを有している。このうち、固定部材12は、規制装置16に牧草が接触しても位置変化が生じないように、本体90の一部に強固に固定されている。
【0034】
固定部材12は、当該固定部材12の斜視図である図4に示すように、進行方向に延びる一対の第1部分36と、回転軸Oa方向に延び、一対の第1部分36の進行方向前方の端部それぞれを接続する第2部分38とを有する固定部材本体64と、固定部材本体64の一対の第1部分36間に架設された、回転軸Oa方向に延びる架設部材40と、この架設部材40と第2部分38との間に設けられた複数の取付部材42と、を有している。各取付部材42には、図5に示すように、一対の丸穴42aが貫通形成されている。
【0035】
規制部材14は、図2に示すように、下端部近傍が略1/4円弧状に加工された板状部材44と、板状部材44の略1/4円弧状部分に沿った形状に加工された、牧草50と直接接触する接触部としての棒状部材46と、を有している。
【0036】
板状部材44は、図5に示すように、強度補強のために断面U字状に折り曲げ加工されており、その上端部近傍には、一対の丸穴44aが貫通形成されている。なお、板状部材44の強度が十分に確保できている場合には、板状部材44を断面U字状に折り曲げ加工しなくても良い。
【0037】
図2に戻り、棒状部材46は断面形状が円形であり、その下端部近傍が進行方向に対して、略水平(例えば、0°〜約15°)となるように設定されている。また、タイン32の先端の軌道(円形軌道)のうち最も進行方向前方側の点から、棒状部材46の下端部までの水平方向に関する距離が、所定距離b(bは、例えば15mmなど)となるように設定されている。この棒状部材46は、棒状部材46とタイン32との間で牧草を引っ張り合った場合にも、変形が生じない程度の剛性を有している。
【0038】
接続部材48には、図5に示すように、一対の第1丸穴48aと三対の第2丸穴48bとが貫通形成されている。このうち、一対の第1丸穴48aの間隔及び大きさは、取付部材42に形成された一対の丸穴42aの間隔及び大きさと一致しており、対をなす第2の丸穴48b同士の間隔及び大きさは、板状部材44に形成された一対の丸穴44a間の間隔及び大きさと一致している。
【0039】
したがって、接続部材48と固定部材12(取付部材42)との間は、一対の丸穴42aと一対の第1丸穴48aとを介してネジ止め固定され、接続部材48と板状部材44との間は、三対の丸穴48bのうちのいずれか一対と丸穴44aとを介してネジ止め固定される。なお、三対の丸穴48bのうちのいずれを選択するかにより、規制部材14の高さ方向の位置を調整することが可能である。
【0040】
本実施形態では、上記三対の丸穴48bのうちのいずれか一対を選択することにより、図2に示すように、棒状部材46の下端部が、ピックアップ装置10の回転軸Oaよりも所定距離a(aは、例えば20mmなどである)だけ下方に位置するとともに、棒状部材46の上端部が、ウィンドロー状に堆積された牧草50の上端よりも上方に位置するように設定されている。
【0041】
このように構成される規制装置16では、図6(a)に示すように、牧草50の量が所定量以上であった場合には、牧草の上層部分50’が棒状部材46に接触するため、ピックアップ装置10のタイン32は、牧草50の下層部分のみを拾い上げることになり、タイン32による牧草の拾い上げ量が規制される(図6(a)に示す処理可能な草量(α)に規制される)。そして、タイン32が届く範囲に存在していた牧草50の下層部分が全て拾い上げられると、図6(b)に示す牧草の上層部分50’は、棒状部材46の下方に落下する。この棒状部材46の下方に落下した上層部分50’は、その後、ピックアップ装置10のタイン32によって拾い上げられるようになっている。
【0042】
これに対し、図7(a)に示すように、タイン32が拾い上げた牧草の上層部分50’が、棒状部材46の下端部に引っ掛かった場合には、棒状部材46とタイン32との間で牧草の引っ張り合いとなるが、棒状部材46が前述のように略水平、かつ断面円形であるため、牧草の引っ張り合いによってタイン32の回転が妨げられる前の段階(牧草に対して所定の引張力がかかった時点)で、図7(b)に示すように、棒状部材46の下端部側から牧草の上層部分50’が外れ、棒状部材46の下方に落下し、その後、ピックアップ装置10のタイン32によって拾い上げられるようになっている。
【0043】
なお、図8は、規制装置16を設けない場合にピックアップ装置10(タイン32)によって拾い上げられる牧草の量を、簡略化して示す比較例である。図8と図6(a),(b)及び図7(b)とを比較すると分かるように、図8の場合にはタイン32によって大量の牧草(処理可能な草量(α)を超える草量(β))が拾い上げられていることが分かる。
【0044】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の規制装置16によると、回転軸Oaの方向に所定間隔で配列された(櫛状に配列された)複数の規制部材14における接触部(棒状部材46)の下端部が、ピックアップ装置10に最も近接し、かつピックアップ装置10の回転軸Oaよりも下方に位置しているため、牧草の量が大量だったとしても、牧草のうちの一部(上層部)が規制部材の接触部に接触するので、これによりタイン32による牧草の拾い上げ量を規制することができる。また、棒状部材46の下端部近傍の、進行方向(矢印A方向)に関する傾斜が略水平となっているので、棒状部材46の下端部とタイン32との間で牧草の引っ張り合いが発生しても、所定の引張力が生じた時点で、棒状部材46から牧草を取り外すことができる。したがって、規制装置16とタイン32との間の牧草の引っ張り合いによって、タイン32の回転動作が阻害されるのを抑制することができる。更に、規制部材14の棒状部材46の上端部は、ウィンドロー状に堆積された牧草50の高さ方向の位置よりも上方に位置しているので、牧草が棒状部材46の上側を越えてピックアップ装置10に取り込まれるのを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態のフォーレージハーベスタ100によると、規制装置16によって牧草の拾い上げ量が規制されることから、内部に対して一定量の牧草が円滑に供給される。したがって、フォーレージハーベスタ100を構成するオーガ18、供給ローラ20A,20B、カッターヘッド26、放出シュート28などの各部に対する牧草の詰まりを抑制することができるので、牧草の詰まりを解消するために、作業者(オペレータ)が収穫作業を中断して、牧草を取り除く作業などを行う必要がない。このため、牧草の収穫作業の効率化を図ることができ、結果的に飼料の低コスト化を実現することが可能である。
【0046】
なお、上記実施形態では、板状部材44や棒状部材46が略1/4円弧状に成形されている場合について説明したが、これに限らず、下端部がピックアップ装置10に最も近接し、かつ回転軸Oaよりも下方に位置するとともに、下端部近傍の進行方向に関する傾斜が略水平とされ、上端部が、ピックアップ装置10から最も離れ、かつ牧草50の高さ位置よりも上方に位置するのであれば、例えば、図9(a)に示すような形状の板状部材44’や棒状部材46’を採用することも可能である。
【0047】
また、棒状部材46は、例えば、図9(b)に示すような形状(棒状)の取付部材144などにより固定部材12に固定されても良い。この場合、取付部材144を伸縮自在な構成とし、これを用いて、上記実施形態と同様、棒状部材46の高さ位置を適宜変更できるようにしても良い。
【0048】
また、上記実施形態の棒状部材46の下端部や上端部を、伸縮自在な構成(スライド自在な2重パイプ構成)とし、これを用いて、所定距離b(図2参照)の調整や、棒状部材46の上端部の位置調整を行うこととしても良い。
【0049】
なお、上記実施形態では、棒状部材46が断面円形である場合について説明したが、これに限らず、その他の断面形状を有していても良い。
【0050】
なお、上記実施形態では、規制部材14として、板状部材44と棒状部材46とを有する構成を採用することとしたが、これに限らず、例えば、図10に示すように、板状部材44のみから構成されても良い。この場合、板状部材44の略1/4円弧状部分が牧草に直接接触する接触部(上記実施形態における棒状部材46と同一の機能を有する部分)となるため、略1/4円弧状部分の下端部や上端部が、上記実施形態の棒状部材46の下端部や上端部と同様の配置となるように設定すれば良い。
【0051】
また、上記実施形態では、固定部材12(取付部材42)にネジ止めされた接続部材48に規制部材14をネジ止めすることにより、規制部材14を間接的に固定部材12(取付部材42)に固定することとしたが、これに限られるものではなく、規制部材14を固定部材12(取付部材42)に直接固定することとしても良い。この場合、取付部材42に、丸穴を複数対設けるなどして、接続部材48と同一の機能を持たせることとしても良い。
【0052】
なお、上記実施形態では、規制装置16がフォーレージハーベスタに搭載された場合について説明したが、これに限られるものではなく、牧草を拾い上げるピックアップ装置が搭載された装置(例えば、ロールベーラやタイトベーラなど)に搭載することも可能である。
【0053】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】一実施形態に係るフォーレージハーベスタを概略的に示す図である。
【図2】ピックアップ装置及び規制装置を示す概略図である。
【図3】図3(a)は、ピックアップ装置及び規制装置を取り出して示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)の分解斜視図である。
【図4】固定部材を示す斜視図である。
【図5】固定部材、接続部材、板状部材の分解斜視図である。
【図6】規制装置の作用を説明するための図(その1)である。
【図7】規制装置の作用を説明するための図(その2)である。
【図8】規制装置を設けない場合の牧草の拾い上げ量を示す図である。
【図9】規制装置の変形例を示す図(その1)である。
【図10】規制装置の変形例を示す図(その2)である。
【符号の説明】
【0055】
10 ピックアップ装置(牧草拾い上げ装置)
12 固定部(固定部材)
14 規制部材
16 規制装置(牧草拾い上げユニット用規制機構)
32 タイン
46 棒状部材(接触部)
48 接続部材(位置変更機構の一部)
50 牧草
100 フォーレージハーベスタ(牧草処理装置)
Oa 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の進行方向に移動しながら回転軸を中心に回転して、前記回転軸に対して放射状に設けられた複数のタインにより前記進行方向前方にウィンドロー状に堆積された牧草を拾い上げる牧草拾い上げ装置の近傍に設けられ、前記牧草拾い上げ装置により拾い上げられる牧草の量を規制する牧草拾い上げユニット用規制機構であって、
前記牧草拾い上げ装置から前記進行方向前方に所定距離離れた位置で、前記回転軸に平行な方向に所定間隔で配列された複数の規制部材と、
前記複数の規制部材相互間の位置関係、及び前記牧草拾い上げ装置との位置関係を固定する固定部と、を備え、
前記各規制部材は、前記牧草と接触する接触部を有し、
前記接触部の下端部は、前記牧草拾い上げ装置に最も近接し、かつ前記回転軸よりも下方に位置するとともに、当該下端部近傍の前記進行方向に関する傾斜が略水平とされ、
前記接触部の上端部は、前記牧草拾い上げ装置から最も離れ、かつ前記ウィンドロー状に堆積された牧草の高さ方向の位置よりも上方に位置することを特徴とする牧草拾い上げユニット用規制機構。
【請求項2】
前記規制部材は、略板状部材から成り、その一部が前記接触部であることを特徴とする請求項1に記載の牧草拾い上げユニット用規制機構。
【請求項3】
前記規制部材は、棒状部材から成ることを特徴とする請求項1に記載の牧草拾い上げユニット用規制機構。
【請求項4】
前記棒状部材は、断面略円形であることを特徴とする請求項3に記載の牧草拾い上げユニット用規制機構。
【請求項5】
前記規制部材と前記固定部材との位置関係を変更自在にする位置変更機構を更に備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の牧草拾い上げユニット用規制機構。
【請求項6】
前記規制部材は、前記牧草拾い上げ装置によって拾い上げられる牧草の量を規制する際に変形が生じない程度の剛性を有するとともに、前記牧草の量を規制する際に位置変化が生じないように前記固定部に固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の牧草拾い上げユニット用規制機構。
【請求項7】
回転軸に対して放射状に設けられた複数のタインを有する牧草拾い上げ装置と、
前記牧草拾い上げ装置近傍に設けられた、請求項1〜6のいずれか一項に記載の牧草拾い上げユニット用規制機構と、を備える牧草拾い上げユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の牧草拾い上げユニットと、
前記牧草拾い上げユニットにより拾い上げられた牧草を処理する処理装置本体と、を備える牧草処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−153415(P2009−153415A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333178(P2007−333178)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000132909)株式会社タカキタ (34)
【Fターム(参考)】