説明

物品展示ケース

【課題】1枚の透明な湾曲ガラスを、機械室が右側配置または左側配置の物品展示ケースに共通することが出来ないため組付性が悪く、また部品代およびこれに伴う管理費等の点でコストが増大する欠点があった。
【解決手段】横長の物品展示室と、この物品展示室の一方の側に配設した機械室との前面を共通に覆う透明板を上下対称に湾曲させることによって、前記機械室が物品展示室の右配置または左配置の何れであっても、前記透明板を共用し得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば冷蔵ショーケースのように、横長の物品展示室と、その一方の側に機械室が配置され、両室の前面を覆う横長で縦に湾曲した透明板が設けられている物品展示ケースに関して、前記機械室が物品展示室の左右何れに配置される仕様であっても、前記湾曲した透明板を上下に反転させるだけで、左右共通に使用し得る物品展示ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、寿司屋のネタケースのように、海鮮食品を冷蔵状態で展示する物品展示ケースが広く知られている。この物品展示ケースは、図7に示すように、横長の食品収納室10と、該食品収納室10の右側(または左側)に配置され、内部に冷凍系12を有する機械室14とからなる。食品収納室10の前方(客に面する側)に開放した開口部は、横長で縦方向に湾曲した透明ガラス16で覆われている。また食品収納室10の底部にはスノコ18が敷かれ、該スノコ18上に海鮮品等の食材が展示される。食品収納室10の内部上方には、横長の冷却パイプとして機能する蒸発管20が設けられ、この蒸発管20は前記機械室14中の冷凍系12に接続している。
【0003】
前記冷凍系12は、圧縮機22と、蒸発器24と、該蒸発器24を空冷するファンモータ26とからなり、前記圧縮機22で圧縮された冷媒をキャピラリーチューブ(図示せず)で一挙に断熱膨張させて前記蒸発管20を冷却することで、物品展示室10の内部を冷却し室内の食材を冷蔵し得るようになっている。
【0004】
ところで、従来の物品展示ケースは、図7のように、横長の食品収納室10の右側に機械室14が配置され、前記横長の透明な湾曲ガラス16は該食品収納室10の前面にだけ設けられていた。そして機械室14には、その前面に保護パネル28が設けられ、内部の冷凍系12を隠すようになっている。なお機械室14は、食品収納室10の左側に設けられる仕様もあり、ユーザー側の据付け事情によって、右側設置または左側設置の何れかを選択し得るようになっている。このように機械室14は、物品展示室10の左右何れかの側に設けられるが、該物品展示室10に配設される透明ガラス16は機械室14までは延びていなかった。
【0005】
しかし近年では、食品収納室10と機械室14とが一体化している感じを与えるような洗練された意匠面の配慮と、食品収納室10のフロント部分(透明ガラス部分)と機械室14のフロント部分(保護カバー部分)の清掃性向上の観点とから、透明な湾曲ガラスを機械室14の側まで延ばした機種が多くなっている。このように湾曲した透明ガラス16が機械室14の前面まで延長されたタイプでは、図8に示すように、機械室14の前面に相当する部分には化粧印刷や化粧ツールのような化粧部30を施して、機械室内部が見えないような配慮がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−233471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
横長で透明な湾曲ガラスが、物品展示ケースにおける物品展示室10の全面および機械室14の全面を共通に覆う形式では、全体として一体感が得られて意匠的にもスマートで洗練された好感をユーザーに与える利点がある。しかし、ここで使用される透明ガラス16は、図9に示すように、ガラス断面形状の湾曲が上下に対称ではなく、客側に面することになる部位aが、物品展示ケースの上面側に近接する部位bよりも長かった。これは、透明ガラス16の湾曲面に関し、前記客側に面する部位aを大きくすることで、物品展示室10内部の食材に対する客の視認性を高めるための配慮に基づくものである。
【0008】
しかし、このように透明ガラス16の上下の湾曲が中心軸線を挟んで対称でないと、前述した物品展示ケースの機械室14が右配置または左配置の仕様に対して、同一規格の透明ガラス16では共通に使用できない、という難題がある。すなわち先に述べた如く、食品収納室10と機械室14との前面を、1枚の横長の透明な湾曲ガラス16で共通に覆う仕様の物品展示ケースでは、透明ガラスの左右何れかの側に機械室14の内部を視認し得ないよう化粧印刷(またはシール)の如き化粧部30を施すようになっている。従って、右側に前記化粧部30を施した透明ガラス16は、右側に機械室14を配置した物品展示ケースにしか使えず、左側に機械室14を配置する仕様の物品展示ケースには使えなかった。
【0009】
すなわち1枚の透明な湾曲ガラス16を、機械室14が右側配置または左側配置の物品展示ケースに共通することが出来ないため組付性が悪く、また右側配置用と左側配置用とに特化した透明ガラス16を個別に準備する必要があるので、部品代および管理費等の点でコストが増大する欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記した従来の物品展示ケースに内在していた課題を解決するべく提案されたものであって、横長の物品展示室と、この物品展示室の一方の側に配設した機械室との前面を共通に覆う透明板を上下対称に湾曲させることによって、前記機械室が物品展示室の右配置または左配置の何れであっても、前記透明板を共用し得るようにすることで前記課題を解決したものである。
【0011】
すなわち本発明は、横長の物品展示室を有し、この物品展示室の一方の側に機械室が配置され、前記物品展示室および機械室の開放された前面を覆うよう横長で縦方向に湾曲した透明板が設けられる物品展示ケースにおいて、前記横長の透明板は、横方向の中心軸線を挟んで縦方向に対称に湾曲していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
横長で縦方向に湾曲した透明板を、機械室が物品展示室の右配置または左配置の何れにも共用し得るため、左右各配置に特定した仕様の透明板を個別に準備する必要がなく、コストを低減し得ると共に、組付けの際の間違いや部品管理の手間がなくなり、作業の効率化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る冷蔵ショーケースの縦断面図である。
【図2】図1の冷蔵ショーケースに使用する透明ガラスの前面を斜視状態で示す概略図である。
【図3】図2のガラス板の平面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】トップフレームとトッププレートの拡大断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る冷蔵ショーケースの背面を分解状態で示す斜視図である。
【図7】食品収納室にのみ透明ガラスが設けてある従来の冷蔵ショーケースの分解斜視図である。
【図8】食品収納室と機械室の両方に、1枚ものの透明ガラスが共通に設けられている従来の冷蔵ショーケースの外観斜視図である。
【図9】図8に示す冷蔵ショーケースのIX-IX線縦断面図である。
【実施例】
【0014】
次に、本発明の実施例を、添付図面を参照しながら説明する。実施例としては、前述したネタケースの如き冷蔵ショーケースにつき説明するが、横長の物品展示室と、その左右何れかに機械室が設けられて、両室の前面を上下に湾曲した横長の透明板で共通的に覆う構成のものであれば、他の物品展示ケースであってもよい。なお、物品展示ケースの基本構成については、図7および図8を参照して先に説明したので、その説明は省略する。
【0015】
図8は、前述した従来の冷蔵ショーケースの全体構成を示す概略斜視図であって、食品収納室10の右側に機械室14が配設されている。そして食品収納室10および機械室14の前面における開放部は、横長で上下に湾曲した一枚の透明ガラス16で共通に覆われている。この透明ガラス16の右側には、機械室14の内部を外部から視認し得ないようにスモークのかかった化粧印刷30が施されている。また透明ガラス16の左側には、左側面板32との境界部分に縦に細いストライプ状の化粧印刷34が施されている。
【0016】
この物品展示ケースに使用される透明ガラス16は、図1〜図4に示すように、横方向に中心軸線Lを仮想した場合に、この中心軸線Lを挟んで縦方向に対称となるよう湾曲している。すなわち透明ガラス16は、図4に示すように、長方形であって横に充分長いガラス板からなり、これを冷蔵ショーケースに取付けた際に、食品収納室10および機械室14の開放された前面を共通して覆い得る寸法に設定されている。そして長方形の透明ガラス16に横長の中心軸線Lを仮想した場合に、この透明ガラス16の上下(縦方向)への湾曲は、図2および図3に示すように、前記中心軸線Lを挟んで対称になっている。
【0017】
これを更に、図4を参照して説明すると、透明ガラス16における横方向の中心軸線Lは、仮想した二等辺三角形の頂角に内接し、また上下の両端縁16a,16bは、該二等辺三角形の2つの底角と対応的に内接し得るようになっている。また、透明ガラス16の中心軸線Lから上方の端縁16aまでの湾曲度と、同じく中心軸線Lから下方の端縁16bまでの湾曲度とは等しくなっている。
【0018】
このように、横方向の中心軸線Lを挟んで上下に対称に湾曲されている透明ガラス16を、冷蔵ショーケースに取り付ける際の構成につき、図1,図5および図6を参照して説明する。これに関して、寿司屋のネタケースのような冷蔵ショーケースでは、カウンター席に座る客は該冷蔵ショーケースと向き合うことになる。従って、冷蔵ショーケースの食品収納室10の食品を客が目で選定し易いように、前記透明ガラス16における縦方向の辺を長くしたいという要請がある。
【0019】
また、カウンター内の調理人と客とは、冷蔵ショーケースの上で皿のやり取りをする場合が多くあるため、該冷蔵ショーケースの上面にトップカバーを水平に設ける必要がある。このような場合に、透明ガラス16の湾曲面が客側に片寄って占位すると、湾曲の大きい部分が客側に指向することになる。すると、この透明ガラス16を通じて見る食品収納室10の食品が客には歪んで見えて視認性が悪くなる難点がある。
【0020】
そこで本発明では、図1に示すように、透明ガラス16の前述した横方向の中心軸線Lが客の視線よりなるべく上に来るように、該透明ガラス16の取り付けに工夫を施してある。すなわち図1において、透明な湾曲ガラス16の横方向の下端縁16bは、食品収納室10および機械室14に共通する基部フレーム36に設けた長手溝に嵌合される。また透明ガラス16の上端縁16aから該ガラス16の内側へ所定寸法だけ臨む部位は、図5に示す頂部フレーム38とトップパネル40とにより挟み込むようになっている。
【0021】
すなわち、食品収納室10および機械室14の双方に共通して横方向に延在する頂部フレーム38と、同じく両室10,14に共通に横方向に延在して前記頂部フレーム38の上に被着されるトップパネル40とにより、前記透明ガラス16の上端縁16aから所定寸法だけ内側へ臨む部位を挟み込む。なお、図6に示すように、頂部フレーム38は、食品収納室10用の頂部フレーム38aと、機械室14用の頂部フレーム38bとに分離しているが、一体物であってもよい。図5に示すように、トップパネル40の左側の端縁部40aは僅かに下側へ屈曲させてある。またトップパネル40の下面中央寄りに形成した係合片40bと、頂部フレーム38の上面中央寄りに形成した係合片38cとを係合させることで、トップパネル40と頂部フレーム38とは定位置で係着される。
【0022】
更に、図1に示すように、透明ガラス16の上端縁16aを所定寸法だけ両部材38,40で挟み込んだ際に、透明ガラス16と頂部フレーム38との接触面には、適宜の接着剤が塗布される。また、トップパネル40の端縁部40aが下側に屈曲しているため、この端縁部40aで透明ガラス16を上方から押圧して係止することができる。このように透明ガラス16を取り付けることで、最も湾曲度の大きい部分である前記中心軸線Lの部分は比較的上方に占位するため、客から見た食品収納室10内の食品は歪むことがなく、良好な視界が確保される。
【0023】
なお、透明ガラス16の上下の両端縁16a,16bに沿って印刷やシール等の化粧部を施す場合は、これらは中心軸線Lを挟んで対称にすれば、機械室14が右設置または左設置の何れであっても、問題なく対応できる。また、透明板であれば、その材質はガラスに限られず、透明の硬質樹脂であってもよい。更に、透明板16は、二重構造で中間に不活性ガスを封入した断熱板体であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 物品展示室(食品収納室)
12 冷凍系
14 機械室
16 透明板(透明ガラス)
16a 一方の端縁(上端縁)
16b 他方の端縁(下端縁)
18 スノコ
20 蒸発管
22 圧縮機
24 蒸発器
26 ファンモータ
28 保護パネル
30 化粧部(化粧印刷・シール)
32 左側面板
34 化粧部(化粧印刷)
36 基部フレーム
38 頂部フレーム
38a 物品展示室用頂部フレーム
38b 機械室用頂部フレーム
38c 係合片
40 トップパネル
40a 端縁部(トップパネルの)
40b 係合片
42 接着剤
L 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長の物品展示室(10)を有し、この物品展示室(10)の一方の側に機械室(14)が配置され、前記物品展示室(10)および機械室(14)の開放された前面を覆うよう横長で縦方向に湾曲した透明板(16)が設けられる物品展示ケースにおいて、
前記横長の透明板(16)は、横方向の中心軸線(L)を挟んで縦方向に対称に湾曲している
ことを特徴とする物品展示ケース。
【請求項2】
前記透明板(16)における横方向の中心軸線(L)および該透明板(16)の両端縁(16a,16b)は、二等辺三角形の頂角および2つの底角と対応的に内接し得るようになっている請求項1記載の物品展示ケース。
【請求項3】
前記透明板(16)における横方向の下端縁(16b)は、前記物品展示室(10)および機械室(14)に共通する基部フレーム(36)に嵌合し、また上端縁(16a)から内側に臨む部位は、同じく物品展示室(10)および機械室(14)に共通する頂部フレーム(38)とその上部に配設されるトップパネル(40)とにより挟み込むことで、前記中心軸線(L)を上方へ占位させるようにした請求項1または2に記載の物品展示ケース。
【請求項4】
前記透明板(16)の横方向の両端縁に付される印刷やシール等の化粧部(30)は、中心軸線(L)を挟んで対称に設けられる請求項1〜3の何れか一項に記載の物品展示ケース。
【請求項5】
前記透明板(16)は、ガラス板である請求項1〜4の何れか一項に記載の物品展示ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−83488(P2011−83488A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239668(P2009−239668)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】