物品担持布帛の製造装置及び製造方法
【課題】本発明は、布帛に形成される中空部に当該中空部を形成するタイミングで物品を挿入して封止することで物品担持布帛を製造する製造装置及び製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】物品担持布帛の製造装置は、布帛を織成するとともに当該布帛の一部に袋状の中空部を織成する織機1と、中空部の形成位置に物品を配置する物品配置機構100とを備えている。物品配置機構100は、織機1が中空部を形成するタイミングで経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を拡張し、物品収容部から物品を1つずつ取出して物品保持部で保持し、保持した物品を移動させて経糸の拡張された間隔の間を通過して中空部内に物品を挿入する。物品を中空部内に挿入後織機1により中空部を封止するように織成して物品担持布帛を製造する。
【解決手段】物品担持布帛の製造装置は、布帛を織成するとともに当該布帛の一部に袋状の中空部を織成する織機1と、中空部の形成位置に物品を配置する物品配置機構100とを備えている。物品配置機構100は、織機1が中空部を形成するタイミングで経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を拡張し、物品収容部から物品を1つずつ取出して物品保持部で保持し、保持した物品を移動させて経糸の拡張された間隔の間を通過して中空部内に物品を挿入する。物品を中空部内に挿入後織機1により中空部を封止するように織成して物品担持布帛を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の物品を多数担持する布帛を織成又は編成により製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線IDタグ等の電子部品の小型化及び低価格化が進み、こうした電子部品を衣服や敷物に取り付けて、ウェアラブルコンピューティング、セキュリティチェックや移動体の位置検知に活用することが提案されている。例えば、衣服、身の回り品、所持品といった既存の身に付ける物に無線IDタグを取り付けて人間の識別や位置認識を行うことができる。
【0003】
電子部品等の物品を衣服に取り付ける場合、衣服に対して接着剤により物品を固定したり、縫製により取り付けることが行われている。例えば、特許文献1では、所定長さごとに中央部が2重で、幅方向両側の耳部及び長手方向両側の耳部を1重となるように織成した布製の容器に、2重部分の布の一部を切ってスリットを形成し、電子部品を有するデータキャリヤーをスリットから出し入れできるようにした識別装置が記載されている。また、特許文献2では、織物内部に風通組織により形成した空隙にICタグを挿入した織物が記載されている。
【0004】
また、物品を外付けで取り付けた場合剥がれるおそれがあることから、衣服を構成する糸に物品を組み込むことが提案されている。例えば、特許文献3では、複数の経糸をビームから送り出して開口させ、緯糸をボビンより給糸して開口された経糸の間にレピアヘッドにより緯入れし緯糸を経糸の間に筬打ちして織成し、所定本数の緯糸を織成した後、複数の物品を糸長方向に所定間隔で担持した複合糸をリールから給糸して開口された経糸の間にレピアヘッドにより緯入れして織成する織機が記載されている。また、特許文献4では、緯糸を環状に順次織り込むことにより筒状の中空部が形成された織物体とし、その織り込み途中で中空部を平たく押しつぶした際の表面と裏面とが合わさり一体となるように緯糸を平面状に適宜織り込むことにより封止部を形成させ、封止部を中空部の底部とした縫い目のない袋体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−180545号公報
【特許文献2】特開2005−226165号公報
【特許文献3】特開2011−042897号公報
【特許文献4】登録実用新案第3025059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、織成した袋部分にデータキャリヤーを挿入して保持するようにしているが、織成した布地に対してスリットを形成する後処理工程及びスリットにデータキャリヤーを挿入する工程が必要となり、工程が複雑になるため量産化していくことが困難である。
【0007】
特許文献2では、風通組織により形成した空隙にICタグを挿入するようにしているが、挿入方法については具体的に記載されておらず、特許文献1に記載されているように後処理工程で挿入している場合には量産化の点で難点がある。
【0008】
特許文献3では、電子部品等の物品を担持した複合糸を用いて織成時に物品が取り付けられていくことから量産化に適しているが、複合糸を経糸として使用することは困難であり、複合糸に担持可能な物品のみに限られるため、織成可能な物品担持織物が制約される課題がある。
【0009】
特許文献4では、縫い目のない袋体を織成する点が記載されているが、袋体の周囲を完全に閉鎖した状態で物品を保持するように織成することは技術的に困難である。
【0010】
そこで、本発明は、布帛に形成される中空部に当該中空部を形成するタイミングで物品を挿入して封止することで物品担持布帛を製造する製造装置及び製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る物品担持布帛の製造装置は、布帛を織成又は編成するとともに当該布帛の一部に袋状の中空部を織成又は編成する布帛形成手段と、前記中空部の形成位置に物品を配置する物品配置手段と、前記中空部を形成するタイミングで前記物品配置手段を動作させて前記中空部内に前記物品を挿入する動作制御手段とを備えている。さらに、前記物品配置手段は、前記物品を保持して前記中空部の形成位置に移動させる移動手段と、前記布帛を形成するために経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を前記移動手段が通過可能な間隔に拡張する拡張手段とを備えている。
【0012】
本発明に係る物品担持布帛の製造方法は、布帛を織成又は編成しながら当該布帛の一部に袋状の中空部を形成し、前記中空部を形成するタイミングで前記中空部の形成位置に物品を配置して前記中空部内に当該物品を挿入し、前記中空部を封止するように織成又は編成する。さらに、前記布帛を形成するために経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を拡張し、前記物品を保持して前記経糸の拡張された間隔の間を通過して前記中空部内に前記物品を挿入する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記のような構成を有することで、布帛に形成される中空部に当該中空部を形成するタイミングで物品を挿入して物品担持布帛を製造するので、布帛の織成又は編成時に物品を供給して担持させることができる。そのため、物品を取り付けるための後処理工程等が不要となって容易に量産化を図ることが可能となる。また、中空部のサイズを物品のサイズに合わせて形成することで様々な物品を担持させることが可能となり、中空部の形成位置を適宜設定することで物品の担持位置を自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る物品担持布帛の製造装置の実施形態に関する概略構成図である。
【図2】物品挿入部に関する概略正面図及び概略側面図である。
【図3】袋状に中空部を形成する織組織の一例を示す織組織図である。
【図4】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図5】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図6】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図7】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図8】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図9】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図10】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図11】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図12】押出し部材及び物品保持部の動作に関する説明図である。
【図13】押出し部材及び物品保持部の動作に関する説明図である。
【図14】押出し部材及び物品保持部の動作に関する説明図である。
【図15】押出し部材及び物品保持部の動作に関する説明図である。
【図16】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図17】製造された織物の一例を示す平面図である。
【図18】図17のY−Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明に係る物品担持布帛の製造装置の実施形態に関する概略構成図である。この例では、製造装置は、物品を所定の位置に配置する物品配置機構100及び織機1から構成されている。
【0017】
織機は、布帛を織成するとともに布帛の一部に袋状の中空部を織成する布帛形成手段として機能し、経糸織成手段として、経糸Aが巻き付けられたビーム10、ビーム10に取り付けられた経糸Aの送り出し制御用モータ11、経糸Aに張力を付与するテンションローラ12、経糸Aをガイドするガイドローラ13、所定の方向に配列された多数の経糸Aをヘルドにより上下に開口する開口機構14を備えている。こうした経糸織成手段は、公知のものを用いることができる。
【0018】
また、緯糸織成手段として、緯糸Bが巻き付けられているボビン20、緯糸Bの先端を把持するグリッパ21、緯糸Bの先端を把持して開口機構14により形成された開口に引き入れるためのレピアヘッド22、レピアヘッド22を開口内で往復移動させるバンドレピア23、バンドレピア23の移動制御を行うスプロケット駆動機構24、開口内に導入された緯糸Bを織前に筬打ちする筬25を備えている。こうした緯糸織成手段は、公知のものを用いることができる。
【0019】
本発明では、公知の織機に物品配置機構を組み合せることで構成することができ、特に細幅織機に物品配置機構を組み合せたものが構成上好ましい。
【0020】
経糸A及び緯糸Bとしては、公知の繊維素材を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル系繊維、ナイロン(ポリアミド繊維)、アラミド(芳香族ポリアミド繊維)、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフイン系繊維、アクリル等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の化学繊維、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維が挙げられ、これらの繊維を複数種類混合したものを用いることもできる。経糸A及び緯糸Bは、用途に応じて撚糸又は無撚糸の形態で使用すればよい。
【0021】
物品配置機構100は、筬25に対して経糸Aの搬送方向下流側で織成位置よりも手前側に緯方向に横設されており、緯方向に配列された複数の経糸Aの上方に設けられた支持レール部101、支持レール部101に移動可能に支持されたキャリッジ部102、及び、物品を保持して後述する布帛の中空部の形成位置に移動させ物品を挿入する物品挿入部103を備えている。
【0022】
支持レール部101に支持されたキャリッジ部102には、リニアモータ等の公知の駆動機構を備えており、図示せぬ制御部からの駆動制御によりキャリッジ部102を支持レール部101に沿って移動させて緯方向の任意の位置に位置決めすることができる。そして、キャリッジ部102及び物品挿入部103は、物品を挿入する緯方向の位置に合わせて複数配列する。
【0023】
物品挿入部103は、キャリッジ部102の下側に取り付けられており、キャリッジ部102とともに移動して緯方向の任意の位置に位置決めされる。図2は、物品挿入部103に関する概略正面図(図2(a))及び概略側面図(図2(b))である。なお、概略側面図は、概略正面図におけるX−X方向からみた側面図である。
【0024】
物品挿入部103は、キャリッジ部102の下側に固定された1対の支持板104を備えており、一方の支持板104の外側には、物品Mを積載して収容する物品収容部105が取付固定されている。この例では、物品Mとして、矩形状の薄板に形成されたICタグを1枚ずつ上下方向に積み重ねて収容している。物品収容部105の下側には、物品取出し部106が設けられている。物品取出し部106は、物品Mの厚みによりわずかに大きい隙間で緯方向に貫通するように取出し口が形成されており、物品取出し部106の取出し口と物品収容部105とは連通し、最も下方に位置する物品Mが取出し口内に配置されるようになっている。
【0025】
一方の支持板104の外側には、物品収容部105に並列してエアシリンダ107が取付固定されている。エアシリンダ107の駆動ロッド108は、緯方向に進退動作するように設定されており、その先端部には連結部材109が固定されている。連結部材109は、経方向に延設されており、先端部に押出し部材110が取り付けられている。押出し部材110は、短冊状の薄板からなり、物品取出し部106の取出し口の隙間よりも薄く形成されている。そして、押出し部材110の長手方向が緯方向となるように設定され、その先端部分が物品取出し部106の取出し口内に挿入されている。
【0026】
エアシリンダ107を駆動して駆動ロッド108が緯方向に進退動作することで、押出し部材110が取出し口内を緯方向に進退動作するようになる。そして、押出し部材110が取出し口内を進入する方向に移動することで、物品収容部105内の最も下方に位置する物品Mが押出し部材110により取出し口に沿って押し出されるようになる。また、押出し部材110が物品Mを押し出した後、押出し部材110が取出し口から引き抜かれるように後退する方向に移動することで、物品Mが自重により下方に移動し、次の物品Mが取出し口内にセットされるようになる。こうして物品Mを1枚ずつ取出し口から押出して供給することができる。
【0027】
他方の支持板104の内側には、取付台111が固定されており、取付台111の内側にはエアシリンダ112が取付固定されている。エアシリンダ112の駆動ロッドは上下方向に進退動作するように設定されており、駆動ロッドの下端には取付部材113が固定されている。取付部材113には、その内側に取付台114が固定されており、エアシリンダ112の駆動により取付台114が上下動するようになっている。
【0028】
取付台114の内側にはエアシリンダ115が取付固定されており、エアシリンダ115の駆動ロッドは上下方向に進退動作するように設定されている。エアシリンダ115の駆動ロッドの下端には取付部材116が固定されており、取付部材116には、その内側に取付台117が固定されている。
【0029】
取付台114の下端部の内側には、L字形の取付金具118を介してエアチャック119が取付固定されている。エアチャック119は、1対の作動部材が緯方向に互いに平行移動して開閉動作するようになっており、1対の作動部材にはそれぞれ連結バー120が経方向に沿って延設するように固定されている。一方の連結バー120の先端部には、幅広の作動板121が垂設されており、他方の連結バー120の先端部には、1対の細幅の作動板122が作動板121を挟むように垂設されている。エアチャック119の作動部材が閉じた状態では、連結バー120が重なり合うように接触した状態となって、作動板121及び122が経方向に沿ってほぼ面一となるように設定されている。
【0030】
取付台117の上端部には、L字形の取付金具を介してエアスライダ123が取付固定されており、エアスライダ123の上面に配設された作動部材は経方向に沿って往復動するように設定されている。エアスライダ123の作動部材にはテープ状の押出し部材124の一端部が固定されており、押出し部材124は、経方向に延設されて、U字状に下方に湾曲形成されたガイドレール125内に挿入されている。押出し部材124は、可撓性材料からなり、ガイドレール125内を摺動する場合に湾曲変形することが可能で、ガイドレール125内に押出し部材124が進入した際にその他端部がガイドレール125の下方の開口部から突出可能な長さに設定されている。そのため、エアスライダ123が駆動されて押出し部材124の一端部が経方向に往復動すると、押出し部材124の他端部は、ガイドレール125の下方の開口から一端部とは反対方向に往復動して開口から突出又は引き込み動作を行うようになる。
【0031】
取付台117の下端部には、L字形の取付金具を介してエアスライダ126が取付固定されており、エアスライダ126の側面に配設されて作動部材は経方向に沿って往復動するように設定されている。エアスライダ126の作動部材には、棒状の連結部材127が垂設されており、連結部材127の下端には物品保持部128が取り付けられている。物品保持部128は、断面コ字状で物品取出し部106に対向する側面及び経方向の両側面が開口しており、内部に隙間が形成されている。そのため、物品保持部128が物品取出し部106と対向配置するように位置決めされた状態では、物品保持部128の側面開口と物品取出し部106の開口とがほぼ合致するように設定され、物品取出し部106から押出し部材110により押し出された物品Mが物品保持部128に移動して物品保持部128内に保持されるようになる。
【0032】
物品配置機構100におけるエアシリンダ107、112及び115、エアチャック119並びにエアスライダ123及び126は、図示せぬ動作制御部により駆動制御されるようになっている。また、動作制御部は、織機の動作制御も行うようになっており、後述するように、布帛に中空部を形成するタイミングで物品配置機構を駆動制御して中空部に物品Mを挿入するように動作させる。
【0033】
織機では、上下に開口された経糸Aの間に緯糸Bを適宜織り込むことで、袋状の中空部を形成することができる。図3は、袋状に中空部を形成する織組織の一例を示す織組織図である。この例では、太枠で示す部分が平織の二重組織に構成されて中空部を形成しており、その周囲が斜文織(2/2)の一重組織に構成されて完全に封止される。そのため、中空部に挿入された物品は周囲を封止された状態で担持されるようになり、物品が布帛から不用意に抜け落ちることなく安定して保持される。
【0034】
また、物品を布帛の中空部に挿入する場合には、中空部を形成するタイミングで物品を挿入すればよい。図3に示す例では、平織の二重組織から斜文織の一重組織に変化する直前のタイミングでは、二重組織の部分が封止されずに開口した状態となっているので、開口部分から物品を挿入すれば中空部に容易に物品を挿入することができる。また、物品を挿入した後斜文織の一重組織の織成を続行することで、中空部を完全に封止することができる。
【0035】
図4から図16は、物品Mを中空部に挿入する動作に関する説明図である。この例では、上述したように織機により中空部を形成するタイミングで挿入動作が行われる。まず、図4では、物品配置機構100は、中空部が形成される位置に対応して位置決めされている。エアシリンダ107の駆動ロッド108が前進して物品Mを押し出す押出し部材110が物品取出し部106から引き出された状態に設定され、エアシリンダ112及び115は、それぞれ取付台114及び117を上昇させた状態に設定している。そのため、エアチャック119、押出し部材124、ガイドレール125及び物品保持部128は上昇した位置に設定される。この状態では、最も下方に位置する作動板122は、経糸Aよりも上方に位置するようになっている。また、エアスライダ123は、押出し部材124をガイドレール125から引き出された状態に設定し、エアスライダ126は、物品保持部128を物品取出し部106に対向した位置に設定している。
【0036】
図5では、エアシリンダ107が駆動されて押出し部材110が物品取出し部106に挿入されていき、物品収容部105の最も下方に位置する物品Mに押出し部材110の先端が突き当てられて物品Mが物品押出し部106から物品保持部128に移動する。そして、物品保持部128内に1枚の物品Mが保持された状態となる。
【0037】
図6では、エアシリンダ112が駆動制御されて取付台114が下方に移動する。そのため、エアチャック119、押出し部材124、ガイドレール125及び物品保持部128は下降した位置に設定される。この状態では、図7に示すように、最も下方に位置する作動板121及び122は、中空部Cが形成される手前側で上側の経糸Aの間に挿入されるようになる。作動板121及び122は、経方向に沿ってほぼ面一となるように設定されているので、経糸Aの間にスムーズに挿入することができる。
【0038】
図8では、エアチャック119が駆動制御されて、作動板121及び122が互いに離れるように緯方向に平行移動する。図9は、作動板121及び122の動作状態を示す平面図である。作動板121及び122が平行移動することで、経糸Aが両側に寄せられて作動板121及び122の間が開いた状態に設定される。
【0039】
図10では、エアシリンダ115が駆動制御されて、取付台117が下降した状態となり、押出し部材124、ガイドレール125及び物品保持部128が下降した位置に設定される。そのため、物品保持部128及びガイドレール125の下側部分が作動板121及び122の間に挿入される。この状態では、図11に示すように、物品保持部128及びガイドレール125の下側部分が上側の経糸Aと下側の経糸Aとの間の位置に位置決めされる。
【0040】
図12から図15は、押出し部材124及び物品保持部128の動作に関する説明図である。理解を容易にするため作動板121及び122は省略している。図12では、物品Mを保持した物品保持部128は、上側と下側の経糸Aの間に保持されて中空部Cの手前側に配置されている。中空部Cは、物品保持部128に対向する側が開口した状態となっている。図13では、エアスライダ123及び126が同時に駆動制御されて、押出し部材124がガイドレール125内に進入して先端部がガイドレール125の下方の開口から突出するとともに物品保持部128が中空部C内に挿入されるようになる。その際に、押出し部材124の先端部は物品保持部128と同じ速度で移動するため、物品保持部128から物品Mが押出し部材124により押し出されることはない。
【0041】
図14では、エアスライダ126が駆動制御されて、物品保持部128を元の位置に戻すように動作する。物品保持部128が移動する際に、物品保持部128内を押出し部材124が突き抜けるようになり、物品保持部128内に保持されていた物品Mは、押出し部材124の先端に押し止められて中空部C内に残留するようになる。図15では、物品Mを中空部C内に配置した後、エアスライダ123が駆動制御されて、押出し部材124がガイドレール125から引き出され、先端部が物品保持部128から引き抜かれる。
【0042】
図16では、エアチャック119が駆動制御されて作動板121及び122が元の閉じた状態に設定された後、エアシリンダ112及び115が駆動制御されて取付台114及び117が上昇した状態となる。また、エアシリンダ107が駆動制御されて押出し部材110が物品取出し部106から引き出されて次の物品Mが物品取出し部106内に配置され、図4と同様の状態に設定される。
【0043】
そして、織機を動作させて中空部Cを封止する織成工程を行うことで、中空部C内に物品Mを完全に封止した状態とする。
【0044】
以上説明した工程を繰り返すことで、布帛の任意の位置に中空部を形成するとともに中空部内に物品を挿入して封止していくことができる。図17は、製造された織物Dの一例を示す平面図であり、図18は、図17のY−Y断面図である。この例では、経方向及び緯方向に所定間隔を空けて多数の物品Mが織物Dに担持されており、周囲を完全に封止された中空部Cに物品Mが収容されているため、物品Mが不用意に脱落することなく安定した状態で担持される。
【0045】
以上説明した例では、織機に物品を所定の位置に配置する物品配置機構を組み合せて製造装置を構成しているが、編機に物品配置機構を組み合せて製造装置を構成することもできる。例えば、ダブルラッシェル編機に組み合せる場合には、表地を編成する機構と裏地を編成する機構との間に物品配置機構を設け、表地及び裏地の編成糸を互いに編み込むことで形成された袋状の中空部に物品配置機構から物品を挿入した後中空部を封止するように編み込むことで、中空部に物品を担持した編物を製造することができる。
【0046】
また、物品配置機構では、経糸の上方から物品を移動させて挿入するようにしているが、経糸の下方から物品を移動させるように構成することも可能である。さらに、開口された経糸の側方から物品を移動させて挿入するようにしてもよい。
【0047】
また、経糸の緯方向の間隔を拡張する拡張手段として、エアチャック119、作動板121及び122を用いているが、経糸の間隔を拡張することが可能であれば、こうした構成以外の構成としてもよく特に限定されない。例えば、2つの作動体を経方向に配列しておき、作動体を回転させることで経糸の間を拡張することもできる。また、物品を保持して中空部の形成位置に移動させる手段として、エアシリンダ115、エアスライダ123及び126、押出し部材124及び物品保持部128を用いているが、物品に合わせて構成を適宜変更すればよく特に限定されない。例えば、ロボットアーム機構を用いて物品を把持して中空部に挿入することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上述した実施形態では、挿入する物品としてICタグを扱っているが、ICタグ以外の電子部品を挿入することもできる。電子部品としては、医療用の心電センサをアンダウェア等に取り付けてバイタルセンシング用として利用することができる。また、温度センサ、圧力センサ等をカーテンや壁紙等のインテリア用の布帛に使用して、センシングやセキュリティ用として利用することができる。また、GPSに基づく位置認識機能を有する電子部品を布帛に挿入して子供用、介護用の衣服を作成すれば、セキュリティ用として利用できる。
【0049】
電子部品以外にも、板状、粒状、ブロック状といった様々な形状の物品を挿入することが可能で、製造された物品担持布帛は、衣服以外にも農業用資材、産業用資材、医療用資材等の幅広い用途に対応することができる。例えば、芳香剤や消臭剤を適当な物品形状に形成して布帛に挿入すれば、建築用、インテリア用、介護用、ペット用といった用途に利用できる。また、農薬、肥料、種等を物品形状に形成して布帛に挿入すれば農業用に利用することができ、同様に薬剤を布帛に挿入して水質浄化用、養殖用に使用することも可能である。
【0050】
また、金属板、強化プラスチック板、放射線遮蔽板等の部材を布帛に挿入して防護服用に利用することができる。この場合、布帛を3層構造として、上層及び中層並びに中層及び下層の間にそれぞれ部材を挿入して、挿入部材が重複するように配置すれば、隙間なく部材を配列することが可能となる。また、デザイン用ワッペン等の装飾用物品を布帛に挿入してファッション用に利用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
A・・・経糸、B・・・緯糸、C・・・中空部、D・・・織物、M・・・物品、1・・・織機、100・・・物品配置機構、101・・・支持レール部、102・・・キャリッジ部、103・・・物品挿入部、104・・・支持板、105・・・物品収容部、106・・・物品取出し部、107・・・エアシリンダ、108・・・駆動ロッド、109・・・連結部材、110・・・押出し部材、111・・・取付台、112・・・エアシリンダ、113・・・取付部材、114・・・取付台、115・・・エアシリンダ、116・・・取付部材、117・・・取付台、118・・・取付金具、119・・・エアチャック、120・・・連結バー、121・・・作動板、122・・・作動板、123・・・エアスライダ、124・・・押出し部材、125・・・ガイドレール、126・・・エアスライダ、127・・・連結部材、128・・・物品保持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の物品を多数担持する布帛を織成又は編成により製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線IDタグ等の電子部品の小型化及び低価格化が進み、こうした電子部品を衣服や敷物に取り付けて、ウェアラブルコンピューティング、セキュリティチェックや移動体の位置検知に活用することが提案されている。例えば、衣服、身の回り品、所持品といった既存の身に付ける物に無線IDタグを取り付けて人間の識別や位置認識を行うことができる。
【0003】
電子部品等の物品を衣服に取り付ける場合、衣服に対して接着剤により物品を固定したり、縫製により取り付けることが行われている。例えば、特許文献1では、所定長さごとに中央部が2重で、幅方向両側の耳部及び長手方向両側の耳部を1重となるように織成した布製の容器に、2重部分の布の一部を切ってスリットを形成し、電子部品を有するデータキャリヤーをスリットから出し入れできるようにした識別装置が記載されている。また、特許文献2では、織物内部に風通組織により形成した空隙にICタグを挿入した織物が記載されている。
【0004】
また、物品を外付けで取り付けた場合剥がれるおそれがあることから、衣服を構成する糸に物品を組み込むことが提案されている。例えば、特許文献3では、複数の経糸をビームから送り出して開口させ、緯糸をボビンより給糸して開口された経糸の間にレピアヘッドにより緯入れし緯糸を経糸の間に筬打ちして織成し、所定本数の緯糸を織成した後、複数の物品を糸長方向に所定間隔で担持した複合糸をリールから給糸して開口された経糸の間にレピアヘッドにより緯入れして織成する織機が記載されている。また、特許文献4では、緯糸を環状に順次織り込むことにより筒状の中空部が形成された織物体とし、その織り込み途中で中空部を平たく押しつぶした際の表面と裏面とが合わさり一体となるように緯糸を平面状に適宜織り込むことにより封止部を形成させ、封止部を中空部の底部とした縫い目のない袋体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−180545号公報
【特許文献2】特開2005−226165号公報
【特許文献3】特開2011−042897号公報
【特許文献4】登録実用新案第3025059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、織成した袋部分にデータキャリヤーを挿入して保持するようにしているが、織成した布地に対してスリットを形成する後処理工程及びスリットにデータキャリヤーを挿入する工程が必要となり、工程が複雑になるため量産化していくことが困難である。
【0007】
特許文献2では、風通組織により形成した空隙にICタグを挿入するようにしているが、挿入方法については具体的に記載されておらず、特許文献1に記載されているように後処理工程で挿入している場合には量産化の点で難点がある。
【0008】
特許文献3では、電子部品等の物品を担持した複合糸を用いて織成時に物品が取り付けられていくことから量産化に適しているが、複合糸を経糸として使用することは困難であり、複合糸に担持可能な物品のみに限られるため、織成可能な物品担持織物が制約される課題がある。
【0009】
特許文献4では、縫い目のない袋体を織成する点が記載されているが、袋体の周囲を完全に閉鎖した状態で物品を保持するように織成することは技術的に困難である。
【0010】
そこで、本発明は、布帛に形成される中空部に当該中空部を形成するタイミングで物品を挿入して封止することで物品担持布帛を製造する製造装置及び製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る物品担持布帛の製造装置は、布帛を織成又は編成するとともに当該布帛の一部に袋状の中空部を織成又は編成する布帛形成手段と、前記中空部の形成位置に物品を配置する物品配置手段と、前記中空部を形成するタイミングで前記物品配置手段を動作させて前記中空部内に前記物品を挿入する動作制御手段とを備えている。さらに、前記物品配置手段は、前記物品を保持して前記中空部の形成位置に移動させる移動手段と、前記布帛を形成するために経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を前記移動手段が通過可能な間隔に拡張する拡張手段とを備えている。
【0012】
本発明に係る物品担持布帛の製造方法は、布帛を織成又は編成しながら当該布帛の一部に袋状の中空部を形成し、前記中空部を形成するタイミングで前記中空部の形成位置に物品を配置して前記中空部内に当該物品を挿入し、前記中空部を封止するように織成又は編成する。さらに、前記布帛を形成するために経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を拡張し、前記物品を保持して前記経糸の拡張された間隔の間を通過して前記中空部内に前記物品を挿入する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記のような構成を有することで、布帛に形成される中空部に当該中空部を形成するタイミングで物品を挿入して物品担持布帛を製造するので、布帛の織成又は編成時に物品を供給して担持させることができる。そのため、物品を取り付けるための後処理工程等が不要となって容易に量産化を図ることが可能となる。また、中空部のサイズを物品のサイズに合わせて形成することで様々な物品を担持させることが可能となり、中空部の形成位置を適宜設定することで物品の担持位置を自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る物品担持布帛の製造装置の実施形態に関する概略構成図である。
【図2】物品挿入部に関する概略正面図及び概略側面図である。
【図3】袋状に中空部を形成する織組織の一例を示す織組織図である。
【図4】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図5】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図6】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図7】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図8】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図9】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図10】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図11】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図12】押出し部材及び物品保持部の動作に関する説明図である。
【図13】押出し部材及び物品保持部の動作に関する説明図である。
【図14】押出し部材及び物品保持部の動作に関する説明図である。
【図15】押出し部材及び物品保持部の動作に関する説明図である。
【図16】物品を中空部に挿入する動作に関する説明図である。
【図17】製造された織物の一例を示す平面図である。
【図18】図17のY−Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明に係る物品担持布帛の製造装置の実施形態に関する概略構成図である。この例では、製造装置は、物品を所定の位置に配置する物品配置機構100及び織機1から構成されている。
【0017】
織機は、布帛を織成するとともに布帛の一部に袋状の中空部を織成する布帛形成手段として機能し、経糸織成手段として、経糸Aが巻き付けられたビーム10、ビーム10に取り付けられた経糸Aの送り出し制御用モータ11、経糸Aに張力を付与するテンションローラ12、経糸Aをガイドするガイドローラ13、所定の方向に配列された多数の経糸Aをヘルドにより上下に開口する開口機構14を備えている。こうした経糸織成手段は、公知のものを用いることができる。
【0018】
また、緯糸織成手段として、緯糸Bが巻き付けられているボビン20、緯糸Bの先端を把持するグリッパ21、緯糸Bの先端を把持して開口機構14により形成された開口に引き入れるためのレピアヘッド22、レピアヘッド22を開口内で往復移動させるバンドレピア23、バンドレピア23の移動制御を行うスプロケット駆動機構24、開口内に導入された緯糸Bを織前に筬打ちする筬25を備えている。こうした緯糸織成手段は、公知のものを用いることができる。
【0019】
本発明では、公知の織機に物品配置機構を組み合せることで構成することができ、特に細幅織機に物品配置機構を組み合せたものが構成上好ましい。
【0020】
経糸A及び緯糸Bとしては、公知の繊維素材を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル系繊維、ナイロン(ポリアミド繊維)、アラミド(芳香族ポリアミド繊維)、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフイン系繊維、アクリル等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の化学繊維、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維が挙げられ、これらの繊維を複数種類混合したものを用いることもできる。経糸A及び緯糸Bは、用途に応じて撚糸又は無撚糸の形態で使用すればよい。
【0021】
物品配置機構100は、筬25に対して経糸Aの搬送方向下流側で織成位置よりも手前側に緯方向に横設されており、緯方向に配列された複数の経糸Aの上方に設けられた支持レール部101、支持レール部101に移動可能に支持されたキャリッジ部102、及び、物品を保持して後述する布帛の中空部の形成位置に移動させ物品を挿入する物品挿入部103を備えている。
【0022】
支持レール部101に支持されたキャリッジ部102には、リニアモータ等の公知の駆動機構を備えており、図示せぬ制御部からの駆動制御によりキャリッジ部102を支持レール部101に沿って移動させて緯方向の任意の位置に位置決めすることができる。そして、キャリッジ部102及び物品挿入部103は、物品を挿入する緯方向の位置に合わせて複数配列する。
【0023】
物品挿入部103は、キャリッジ部102の下側に取り付けられており、キャリッジ部102とともに移動して緯方向の任意の位置に位置決めされる。図2は、物品挿入部103に関する概略正面図(図2(a))及び概略側面図(図2(b))である。なお、概略側面図は、概略正面図におけるX−X方向からみた側面図である。
【0024】
物品挿入部103は、キャリッジ部102の下側に固定された1対の支持板104を備えており、一方の支持板104の外側には、物品Mを積載して収容する物品収容部105が取付固定されている。この例では、物品Mとして、矩形状の薄板に形成されたICタグを1枚ずつ上下方向に積み重ねて収容している。物品収容部105の下側には、物品取出し部106が設けられている。物品取出し部106は、物品Mの厚みによりわずかに大きい隙間で緯方向に貫通するように取出し口が形成されており、物品取出し部106の取出し口と物品収容部105とは連通し、最も下方に位置する物品Mが取出し口内に配置されるようになっている。
【0025】
一方の支持板104の外側には、物品収容部105に並列してエアシリンダ107が取付固定されている。エアシリンダ107の駆動ロッド108は、緯方向に進退動作するように設定されており、その先端部には連結部材109が固定されている。連結部材109は、経方向に延設されており、先端部に押出し部材110が取り付けられている。押出し部材110は、短冊状の薄板からなり、物品取出し部106の取出し口の隙間よりも薄く形成されている。そして、押出し部材110の長手方向が緯方向となるように設定され、その先端部分が物品取出し部106の取出し口内に挿入されている。
【0026】
エアシリンダ107を駆動して駆動ロッド108が緯方向に進退動作することで、押出し部材110が取出し口内を緯方向に進退動作するようになる。そして、押出し部材110が取出し口内を進入する方向に移動することで、物品収容部105内の最も下方に位置する物品Mが押出し部材110により取出し口に沿って押し出されるようになる。また、押出し部材110が物品Mを押し出した後、押出し部材110が取出し口から引き抜かれるように後退する方向に移動することで、物品Mが自重により下方に移動し、次の物品Mが取出し口内にセットされるようになる。こうして物品Mを1枚ずつ取出し口から押出して供給することができる。
【0027】
他方の支持板104の内側には、取付台111が固定されており、取付台111の内側にはエアシリンダ112が取付固定されている。エアシリンダ112の駆動ロッドは上下方向に進退動作するように設定されており、駆動ロッドの下端には取付部材113が固定されている。取付部材113には、その内側に取付台114が固定されており、エアシリンダ112の駆動により取付台114が上下動するようになっている。
【0028】
取付台114の内側にはエアシリンダ115が取付固定されており、エアシリンダ115の駆動ロッドは上下方向に進退動作するように設定されている。エアシリンダ115の駆動ロッドの下端には取付部材116が固定されており、取付部材116には、その内側に取付台117が固定されている。
【0029】
取付台114の下端部の内側には、L字形の取付金具118を介してエアチャック119が取付固定されている。エアチャック119は、1対の作動部材が緯方向に互いに平行移動して開閉動作するようになっており、1対の作動部材にはそれぞれ連結バー120が経方向に沿って延設するように固定されている。一方の連結バー120の先端部には、幅広の作動板121が垂設されており、他方の連結バー120の先端部には、1対の細幅の作動板122が作動板121を挟むように垂設されている。エアチャック119の作動部材が閉じた状態では、連結バー120が重なり合うように接触した状態となって、作動板121及び122が経方向に沿ってほぼ面一となるように設定されている。
【0030】
取付台117の上端部には、L字形の取付金具を介してエアスライダ123が取付固定されており、エアスライダ123の上面に配設された作動部材は経方向に沿って往復動するように設定されている。エアスライダ123の作動部材にはテープ状の押出し部材124の一端部が固定されており、押出し部材124は、経方向に延設されて、U字状に下方に湾曲形成されたガイドレール125内に挿入されている。押出し部材124は、可撓性材料からなり、ガイドレール125内を摺動する場合に湾曲変形することが可能で、ガイドレール125内に押出し部材124が進入した際にその他端部がガイドレール125の下方の開口部から突出可能な長さに設定されている。そのため、エアスライダ123が駆動されて押出し部材124の一端部が経方向に往復動すると、押出し部材124の他端部は、ガイドレール125の下方の開口から一端部とは反対方向に往復動して開口から突出又は引き込み動作を行うようになる。
【0031】
取付台117の下端部には、L字形の取付金具を介してエアスライダ126が取付固定されており、エアスライダ126の側面に配設されて作動部材は経方向に沿って往復動するように設定されている。エアスライダ126の作動部材には、棒状の連結部材127が垂設されており、連結部材127の下端には物品保持部128が取り付けられている。物品保持部128は、断面コ字状で物品取出し部106に対向する側面及び経方向の両側面が開口しており、内部に隙間が形成されている。そのため、物品保持部128が物品取出し部106と対向配置するように位置決めされた状態では、物品保持部128の側面開口と物品取出し部106の開口とがほぼ合致するように設定され、物品取出し部106から押出し部材110により押し出された物品Mが物品保持部128に移動して物品保持部128内に保持されるようになる。
【0032】
物品配置機構100におけるエアシリンダ107、112及び115、エアチャック119並びにエアスライダ123及び126は、図示せぬ動作制御部により駆動制御されるようになっている。また、動作制御部は、織機の動作制御も行うようになっており、後述するように、布帛に中空部を形成するタイミングで物品配置機構を駆動制御して中空部に物品Mを挿入するように動作させる。
【0033】
織機では、上下に開口された経糸Aの間に緯糸Bを適宜織り込むことで、袋状の中空部を形成することができる。図3は、袋状に中空部を形成する織組織の一例を示す織組織図である。この例では、太枠で示す部分が平織の二重組織に構成されて中空部を形成しており、その周囲が斜文織(2/2)の一重組織に構成されて完全に封止される。そのため、中空部に挿入された物品は周囲を封止された状態で担持されるようになり、物品が布帛から不用意に抜け落ちることなく安定して保持される。
【0034】
また、物品を布帛の中空部に挿入する場合には、中空部を形成するタイミングで物品を挿入すればよい。図3に示す例では、平織の二重組織から斜文織の一重組織に変化する直前のタイミングでは、二重組織の部分が封止されずに開口した状態となっているので、開口部分から物品を挿入すれば中空部に容易に物品を挿入することができる。また、物品を挿入した後斜文織の一重組織の織成を続行することで、中空部を完全に封止することができる。
【0035】
図4から図16は、物品Mを中空部に挿入する動作に関する説明図である。この例では、上述したように織機により中空部を形成するタイミングで挿入動作が行われる。まず、図4では、物品配置機構100は、中空部が形成される位置に対応して位置決めされている。エアシリンダ107の駆動ロッド108が前進して物品Mを押し出す押出し部材110が物品取出し部106から引き出された状態に設定され、エアシリンダ112及び115は、それぞれ取付台114及び117を上昇させた状態に設定している。そのため、エアチャック119、押出し部材124、ガイドレール125及び物品保持部128は上昇した位置に設定される。この状態では、最も下方に位置する作動板122は、経糸Aよりも上方に位置するようになっている。また、エアスライダ123は、押出し部材124をガイドレール125から引き出された状態に設定し、エアスライダ126は、物品保持部128を物品取出し部106に対向した位置に設定している。
【0036】
図5では、エアシリンダ107が駆動されて押出し部材110が物品取出し部106に挿入されていき、物品収容部105の最も下方に位置する物品Mに押出し部材110の先端が突き当てられて物品Mが物品押出し部106から物品保持部128に移動する。そして、物品保持部128内に1枚の物品Mが保持された状態となる。
【0037】
図6では、エアシリンダ112が駆動制御されて取付台114が下方に移動する。そのため、エアチャック119、押出し部材124、ガイドレール125及び物品保持部128は下降した位置に設定される。この状態では、図7に示すように、最も下方に位置する作動板121及び122は、中空部Cが形成される手前側で上側の経糸Aの間に挿入されるようになる。作動板121及び122は、経方向に沿ってほぼ面一となるように設定されているので、経糸Aの間にスムーズに挿入することができる。
【0038】
図8では、エアチャック119が駆動制御されて、作動板121及び122が互いに離れるように緯方向に平行移動する。図9は、作動板121及び122の動作状態を示す平面図である。作動板121及び122が平行移動することで、経糸Aが両側に寄せられて作動板121及び122の間が開いた状態に設定される。
【0039】
図10では、エアシリンダ115が駆動制御されて、取付台117が下降した状態となり、押出し部材124、ガイドレール125及び物品保持部128が下降した位置に設定される。そのため、物品保持部128及びガイドレール125の下側部分が作動板121及び122の間に挿入される。この状態では、図11に示すように、物品保持部128及びガイドレール125の下側部分が上側の経糸Aと下側の経糸Aとの間の位置に位置決めされる。
【0040】
図12から図15は、押出し部材124及び物品保持部128の動作に関する説明図である。理解を容易にするため作動板121及び122は省略している。図12では、物品Mを保持した物品保持部128は、上側と下側の経糸Aの間に保持されて中空部Cの手前側に配置されている。中空部Cは、物品保持部128に対向する側が開口した状態となっている。図13では、エアスライダ123及び126が同時に駆動制御されて、押出し部材124がガイドレール125内に進入して先端部がガイドレール125の下方の開口から突出するとともに物品保持部128が中空部C内に挿入されるようになる。その際に、押出し部材124の先端部は物品保持部128と同じ速度で移動するため、物品保持部128から物品Mが押出し部材124により押し出されることはない。
【0041】
図14では、エアスライダ126が駆動制御されて、物品保持部128を元の位置に戻すように動作する。物品保持部128が移動する際に、物品保持部128内を押出し部材124が突き抜けるようになり、物品保持部128内に保持されていた物品Mは、押出し部材124の先端に押し止められて中空部C内に残留するようになる。図15では、物品Mを中空部C内に配置した後、エアスライダ123が駆動制御されて、押出し部材124がガイドレール125から引き出され、先端部が物品保持部128から引き抜かれる。
【0042】
図16では、エアチャック119が駆動制御されて作動板121及び122が元の閉じた状態に設定された後、エアシリンダ112及び115が駆動制御されて取付台114及び117が上昇した状態となる。また、エアシリンダ107が駆動制御されて押出し部材110が物品取出し部106から引き出されて次の物品Mが物品取出し部106内に配置され、図4と同様の状態に設定される。
【0043】
そして、織機を動作させて中空部Cを封止する織成工程を行うことで、中空部C内に物品Mを完全に封止した状態とする。
【0044】
以上説明した工程を繰り返すことで、布帛の任意の位置に中空部を形成するとともに中空部内に物品を挿入して封止していくことができる。図17は、製造された織物Dの一例を示す平面図であり、図18は、図17のY−Y断面図である。この例では、経方向及び緯方向に所定間隔を空けて多数の物品Mが織物Dに担持されており、周囲を完全に封止された中空部Cに物品Mが収容されているため、物品Mが不用意に脱落することなく安定した状態で担持される。
【0045】
以上説明した例では、織機に物品を所定の位置に配置する物品配置機構を組み合せて製造装置を構成しているが、編機に物品配置機構を組み合せて製造装置を構成することもできる。例えば、ダブルラッシェル編機に組み合せる場合には、表地を編成する機構と裏地を編成する機構との間に物品配置機構を設け、表地及び裏地の編成糸を互いに編み込むことで形成された袋状の中空部に物品配置機構から物品を挿入した後中空部を封止するように編み込むことで、中空部に物品を担持した編物を製造することができる。
【0046】
また、物品配置機構では、経糸の上方から物品を移動させて挿入するようにしているが、経糸の下方から物品を移動させるように構成することも可能である。さらに、開口された経糸の側方から物品を移動させて挿入するようにしてもよい。
【0047】
また、経糸の緯方向の間隔を拡張する拡張手段として、エアチャック119、作動板121及び122を用いているが、経糸の間隔を拡張することが可能であれば、こうした構成以外の構成としてもよく特に限定されない。例えば、2つの作動体を経方向に配列しておき、作動体を回転させることで経糸の間を拡張することもできる。また、物品を保持して中空部の形成位置に移動させる手段として、エアシリンダ115、エアスライダ123及び126、押出し部材124及び物品保持部128を用いているが、物品に合わせて構成を適宜変更すればよく特に限定されない。例えば、ロボットアーム機構を用いて物品を把持して中空部に挿入することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上述した実施形態では、挿入する物品としてICタグを扱っているが、ICタグ以外の電子部品を挿入することもできる。電子部品としては、医療用の心電センサをアンダウェア等に取り付けてバイタルセンシング用として利用することができる。また、温度センサ、圧力センサ等をカーテンや壁紙等のインテリア用の布帛に使用して、センシングやセキュリティ用として利用することができる。また、GPSに基づく位置認識機能を有する電子部品を布帛に挿入して子供用、介護用の衣服を作成すれば、セキュリティ用として利用できる。
【0049】
電子部品以外にも、板状、粒状、ブロック状といった様々な形状の物品を挿入することが可能で、製造された物品担持布帛は、衣服以外にも農業用資材、産業用資材、医療用資材等の幅広い用途に対応することができる。例えば、芳香剤や消臭剤を適当な物品形状に形成して布帛に挿入すれば、建築用、インテリア用、介護用、ペット用といった用途に利用できる。また、農薬、肥料、種等を物品形状に形成して布帛に挿入すれば農業用に利用することができ、同様に薬剤を布帛に挿入して水質浄化用、養殖用に使用することも可能である。
【0050】
また、金属板、強化プラスチック板、放射線遮蔽板等の部材を布帛に挿入して防護服用に利用することができる。この場合、布帛を3層構造として、上層及び中層並びに中層及び下層の間にそれぞれ部材を挿入して、挿入部材が重複するように配置すれば、隙間なく部材を配列することが可能となる。また、デザイン用ワッペン等の装飾用物品を布帛に挿入してファッション用に利用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
A・・・経糸、B・・・緯糸、C・・・中空部、D・・・織物、M・・・物品、1・・・織機、100・・・物品配置機構、101・・・支持レール部、102・・・キャリッジ部、103・・・物品挿入部、104・・・支持板、105・・・物品収容部、106・・・物品取出し部、107・・・エアシリンダ、108・・・駆動ロッド、109・・・連結部材、110・・・押出し部材、111・・・取付台、112・・・エアシリンダ、113・・・取付部材、114・・・取付台、115・・・エアシリンダ、116・・・取付部材、117・・・取付台、118・・・取付金具、119・・・エアチャック、120・・・連結バー、121・・・作動板、122・・・作動板、123・・・エアスライダ、124・・・押出し部材、125・・・ガイドレール、126・・・エアスライダ、127・・・連結部材、128・・・物品保持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛を織成又は編成するとともに当該布帛の一部に袋状の中空部を織成又は編成する布帛形成手段と、前記中空部の形成位置に物品を配置する物品配置手段と、前記中空部を形成するタイミングで前記物品配置手段を動作させて前記中空部内に前記物品を挿入する動作制御手段とを備えている物品担持布帛の製造装置。
【請求項2】
前記物品配置手段は、前記物品を保持して前記中空部の形成位置に移動させる移動手段と、前記布帛を形成するために経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を前記移動手段が通過可能な間隔に拡張する拡張手段とを備えている請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
布帛を織成又は編成しながら当該布帛の一部に袋状の中空部を形成し、前記中空部を形成するタイミングで前記中空部の形成位置に物品を配置して前記中空部内に当該物品を挿入し、前記中空部を封止するように織成又は編成する物品担持布帛の製造方法。
【請求項4】
前記布帛を形成するために経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を拡張し、前記物品を保持して前記経糸の拡張された間隔の間を通過して前記中空部内に前記物品を挿入する請求項3に記載の製造方法。
【請求項1】
布帛を織成又は編成するとともに当該布帛の一部に袋状の中空部を織成又は編成する布帛形成手段と、前記中空部の形成位置に物品を配置する物品配置手段と、前記中空部を形成するタイミングで前記物品配置手段を動作させて前記中空部内に前記物品を挿入する動作制御手段とを備えている物品担持布帛の製造装置。
【請求項2】
前記物品配置手段は、前記物品を保持して前記中空部の形成位置に移動させる移動手段と、前記布帛を形成するために経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を前記移動手段が通過可能な間隔に拡張する拡張手段とを備えている請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
布帛を織成又は編成しながら当該布帛の一部に袋状の中空部を形成し、前記中空部を形成するタイミングで前記中空部の形成位置に物品を配置して前記中空部内に当該物品を挿入し、前記中空部を封止するように織成又は編成する物品担持布帛の製造方法。
【請求項4】
前記布帛を形成するために経方向に配列された複数の経糸の緯方向の間隔を拡張し、前記物品を保持して前記経糸の拡張された間隔の間を通過して前記中空部内に前記物品を挿入する請求項3に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−100612(P2013−100612A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244086(P2011−244086)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(395016936)株式会社橋詰研究所 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(395016936)株式会社橋詰研究所 (4)
【Fターム(参考)】
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