説明

物理量検出装置、物理量検出システム及び物理量検出装置の0点電圧調整方法

【課題】0点電圧の調整値を外部から簡単に設定可能な物理量検出装置、物理量検出システム及び物理量検出装置の0点電圧調整方法を提供すること。
【解決手段】本発明の角速度検出装置2(物理量検出装置の一例)は、振動子100と角速度検出用IC10を含む。角速度検出用IC10は、振動子100の出力信号に基づいて角速度(物理量の一例)に応じた検出信号62を生成する。角速度検出用IC10は0点電圧調整値設定回路50と0点電圧調整回路60を含み、0点電圧調整値設定回路50は、外部入力端子15から入力された0点電圧調整信号18に基づいて0点電圧調整値52を設定し、0点電圧調整回路60は、0点電圧調整値52に基づいて、検出信号62の0点電圧を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0点電圧調整機能を有する物理量検出装置、物理量検出システム及び物理量検出装置の0点電圧調整方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な物理量を検出する物理量検出装置が知られている。例えば、物理量として角速度を検出する角速度センサーが知られており、角速度センサーにより検出された角速度に基づいてマイクロコンピューター等の制御装置が所定の制御を行う様々なシステムや電子機器が広く利用されている。例えば、カーナビゲーションシステムでは角速度センサーにより検出された角速度に基づいて現在位置が特定され、デジタルカメラでは角速度センサーにより検出された角速度に基づいて手ぶれ補正が行われる。
【0003】
角速度が0の時のセンサーの出力電圧は「0点電圧」と呼ばれ、角速度センサーは、0点電圧を基準電圧として角速度に応じた電圧の検出信号を出力する。従って、0点電圧が基準電圧と一致していなければ、制御装置は検出信号に基づいて正確な角速度を計算することができない。そのため、角速度センサーには、検出信号のオフセット電圧をキャンセルして0点電圧を基準電圧と一致させるように調整する回路が組み込まれている。このオフセット電圧はセンサー内部の温度により異なり、また、製造ばらつきによりセンサー毎にオフセット電圧が異なるため、出荷前の検査工程において、センサー毎に例えば25℃における0点電圧が基準電圧と一致するように調整し、角速度センサーに内蔵された不揮発性メモリーに調整値が書き込まれる。さらに、センサー内部の温度変化によるオフセット電圧の変動分をキャンセルするために、不揮発性メモリーに各温度に対する調整値を書き込んでおき、温度センサーの出力値に応じて調整値を変更する角速度センサーも存在する。そして、従来の角速度センサーでは、出荷後は電源を立ち上げる毎に不揮発性メモリーに書き込まれた調整値が読み出されて検出信号の0点電圧が自動的に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−101974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のセンサーは、0点電圧の調整値が不揮発性メモリーに記憶されているため、センサーの出荷後、簡単に調整値を変更することができない。そのため、例えば、センサーの経年変化によるオフセット電圧の変動分がキャンセルされず、0点電圧が基準電圧からずれて検出精度が劣化するという問題がある。また、従来のセンサーは、不揮発性メモリーが必要であるためその分だけチップサイズが大きくなる。前記の通り、温度変化によるオフセット電圧の変動分をキャンセルするためには、不揮発性メモリーに多数の調整値を書き込んでおく必要があり、チップサイズがさらに大きくなる。逆に、記憶させる調整値の数を減らして不揮発性メモリーのサイズを小さくすると、温度変化によるオフセット電圧の変動分が精度良くキャンセルされず、検出精度が低くなってしまう。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、0点電圧の調整値を外部から簡単に設定可能な物理量検出装置、物理量検出システム及び物理量検出装置の0点電圧調整方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、
所定の物理量を検出する物理量検出装置であって、
前記物理量を検出するセンサー素子と、
前記センサー素子の出力信号に基づいて前記物理量に応じた検出信号を生成する検出部と、を含み、
前記検出部は、
外部から入力された0点電圧調整信号に基づいて0点電圧調整値を設定する0点電圧調整値設定部と、
前記0点電圧調整値に基づいて、前記検出信号の0点電圧を調整する0点電圧調整部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
所定の物理量は、例えば、角速度、加速度、地磁気、圧力等である。
【0009】
0点電圧は、所定の大きさ(0の場合が多い)の物理量が物理量検出装置に加わった時に物理量検出装置から出力される電圧である。
【0010】
本発明の物理量検出装置は、外部から入力された0点電圧調整信号に基づいて検出信号の0点電圧を調整する。従って、本発明の物理量検出装置によれば、設定すべき調整値を0点電圧調整信号に組み込むことにより、0点電圧の調整値を外部から簡単に設定することができる。
【0011】
(2)本発明の物理量検出装置において、
前記0点電圧調整値設定部は、
前記0点電圧調整信号のパルス幅を判定し、判定結果に基づいて前記0点電圧調整値を設定するか否かを決定するようにしてもよい。
【0012】
(3)本発明の物理量検出装置において、
前記0点電圧調整値設定部は、
前記0点電圧調整信号のパルス幅を判定し、判定結果に基づいて前記0点電圧調整値の設定処理を終了して前記0点電圧調整値を確定するか否かを決定するようにしてもよい。
【0013】
(4)本発明の物理量検出装置において、
前記0点電圧調整値設定部は、
前記0点電圧調整信号のパルス幅を判定し、前記0点電圧調整信号のパルス幅が第1のパルス幅である場合は前記0点電圧を粗調整するための前記0点電圧調整値を設定し、前記0点電圧調整信号のパルス幅が第2のパルス幅である場合は前記0点電圧を微調整するための前記0点電圧調整値を設定するようにしてもよい。
【0014】
(5)本発明の物理量検出装置において、
前記第1のパルス幅は、前記第2のパルス幅よりも広くなるようにしてもよい。
【0015】
(6)本発明の物理量検出装置において、
前記粗調整により設定可能な連続する2つの前記0点電圧調整値の各々に対して前記微調整により調整可能な2つの電圧範囲が互いの境界付近で重複するようにしてもよい。
【0016】
(7)本発明の物理量検出装置において、
前記0点電圧調整値設定部は、
前記0点電圧調整信号のパルス幅が前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅と異なる第3のパルス幅である場合は、前記0点電圧調整値の設定処理を終了して前記0点電圧調整値を確定するようにしてもよい。
【0017】
(8)本発明の物理量検出装置において、
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、前記第3のパルス幅よりも広くなるようにしてもよい。
【0018】
(9)本発明の物理量検出装置において、
前記0点電圧調整部は、
外部から前記0点電圧調整信号が入力されるまでは、あらかじめ決められた調整値に基づいて、前記検出信号の0点電圧を調整するようにしてもよい。
【0019】
(10)本発明の物理量検出装置において、
前記物理量検出装置は、前記0点電圧調整信号を外部より入力する一つの外部入力端子を有することができる。
【0020】
(11)本発明の物理量検出装置において、
前記物理量は、角速度であってもよい。
【0021】
(12)本発明は、
上記のいずれかに記載の物理量検出装置と、
前記0点電圧調整信号を生成し、前記物理量検出装置に供給する制御装置と、を含むことを特徴とする物理量検出システムである。
【0022】
(13)本発明は、
所定の物理量を検出するセンサー素子と、前記センサー素子の出力信号に基づいて、前記物理量に応じた検出信号を生成する検出部と、を含み、前記検出部は、外部から入力された0点電圧調整信号に基づいて0点電圧調整値を設定する0点電圧調整値設定部と、前記0点電圧調整値に基づいて、前記検出信号の0点電圧を調整する0点電圧調整部と、を含む物理量検出装置の0点電圧調整方法であって、
前記物理量検出装置の電源投入時に、前記角速度検出装置の外部に記憶されている前記0点電圧調整値の情報に基づいて前記0点電圧調整信号を生成し、当該0点電圧調整信号を前記物理量検出装置に供給することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の物理量検出装置及び物理量検出システムの構成について説明するための図。
【図2】振動子の平面図。
【図3】振動子の動作について説明するための図。
【図4】振動子の動作について説明するための図。
【図5】角速度検出装置が静止している時の信号波形の一例を示す図。
【図6】角速度検出装置に角速度が加わっている時の信号波形の一例を示す図。
【図7】0点電圧調整信号のパルスについて説明するための図。
【図8】参照信号によるカウント数と対応するパルス幅の関係を示す図。
【図9】0点電圧調整信号の例を示す図。
【図10】0点電圧調整値設定回路の構成の一例を示す図。
【図11】0点電圧調整回路の構成の一例を示す図。
【図12】0点電圧調整のタイミングチャートの一例を示す図。
【図13】0点電圧調整方法の第1実施例について説明するためのフローチャート図。
【図14】0点電圧調整方法の第2実施例について説明するためのフローチャート図。
【図15】粗調整と微調整によりそれぞれ選択可能な調整電圧範囲について説明するための図。
【図16】0点電圧調整方法の第3実施例について説明するためのフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0025】
1.物理量検出装置及び物理量検出システム
図1は、本実施形態の物理量検出装置及び物理量検出システムの構成について説明するための図である。以下では、物理量として角速度を検出する物理量検出装置(角速度検出装置)及び物理量検出システム(角速度検出システム)を例にとり説明するが、本発明は、角速度、加速度、地磁気、圧力等の様々な物理量のいずれかを検出することができる装置及びシステムに適用可能である。
【0026】
本実施形態の角速度検出システム1(本発明の物理量検出システムの一例)は、角速度検出装置2(本発明の物理量検出装置の一例)と制御装置5を含んで構成されている。
【0027】
本実施形態の角速度検出装置2は、振動子100と角速度検出用IC10を含む。まず、振動子100及び角速度検出用IC10について順に説明する。
【0028】
[振動子]
振動子100(本発明におけるセンサー素子の一例)は、角速度を検出し、検出した角速度の大きさに応じた信号を出力する。
【0029】
図2は、振動子100の平面図である。図2におけるX軸、Y軸、Z軸は水晶の軸を示す。
【0030】
図2に示すように、振動子100は、水晶などの圧電材料の薄板から形成され、2つの駆動用基部104a、104bからそれぞれ駆動振動腕101a、101b(広義には、駆動用振動片)が水晶のY軸方向に延出している。駆動振動腕101aの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極112及び113が形成されており、駆動振動腕101bの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極113及び112が形成されている。図1に示すように、駆動電極112、113は、それぞれ、角速度検出用IC10の外部出力端子11、外部入力端子12を介して駆動回路20に接続される。
【0031】
駆動用基部104a、104bは、それぞれ水晶のX軸方向に延びる連結腕105a、105bを介して検出用基部107に接続されている。検出振動腕102(広義には、検出振動片)は、検出用基部107から水晶のY軸方向に延出されている。検出振動腕102の上面には検出電極114及び115が形成されており、検出振動腕102の側面には共通電極116が形成されている。図1に示すように、検出電極114、115は、それぞれ、角速度検出用IC10の外部入力端子13、14を介して検出回路30に接続される。また、共通電極116は接地される。
【0032】
駆動振動腕101a、101bの駆動電極112と駆動電極113との間に交流電圧/交流電流からなる駆動信号が与えられると、図3に示すように、駆動振動腕101a、101bは圧電効果によって矢印Bのように屈曲振動する。
【0033】
ここで、振動子100が水晶のZ軸を回転軸とした回転運動をすると、駆動振動腕101a、101bは、矢印Bの屈曲振動の方向と水晶のZ軸の両方に垂直な方向にコリオリの力を得る。その結果、図4に示すように、連結腕105a、105bは矢印Cで示すような振動をする。そして、検出振動腕102は、連結腕105a、105bの振動(矢印C)に連動して矢印Dのように屈曲振動をする。
【0034】
そして、これらの屈曲振動に基づいて発生する逆圧電効果によって、検出振動腕102の検出電極114、115と共通電極116との間には、それぞれ逆方向の交流電圧/交流電流が発生する。以上のようにして、振動子100は、水晶のZ軸を検出軸としてコリオリの力に基づく角速度成分を検出し、検出電極114、115を介して検出信号を出力する。
【0035】
なお、図2の構成では、振動子100のバランスを良くするために、検出用基部107を中央に配置し、検出用基部107から+Y軸と−Y軸の両方向に検出振動腕102を延出させている。さらに、検出用基部107から+X軸と−X軸の両方向に連結腕105a、105bを延出させ、連結腕105a、105bのそれぞれから、+Y軸と−Y軸の両方向に駆動振動腕101a、101bを延出させている。
【0036】
また、駆動振動腕101a、101bの先端を幅広の幅広部103にし、さらに、錘を付けることでコリオリの力を大きくしている。また、錘効果によって、所望の共振周波数を、短い振動腕で得ることができる。同様の理由で、検出振動腕102の先端を幅広の幅広部106にし、さらに、錘を付けている。
【0037】
なお、振動子100は、上述のWT型の構成に限らず、例えば、駆動振動腕と検出振動腕とを兼ねる構成であってもよく、また、駆動振動腕や検出振動腕に圧電膜を形成した構成であってもよい。
【0038】
[角速度検出用IC]
図1に示すように、角速度検出用IC10は、本発明における検出部として機能し、駆動回路20、検出回路30、0点電圧調整回路60、0点電圧調整値設定回路50を含んで構成されている。
【0039】
駆動回路20は、I/V変換回路(電流電圧変換回路)21、AC増幅回路22、振幅調整回路23、2値化回路24を含んで構成されている。
【0040】
振動子100が振動すると、圧電効果に基づく交流電流が駆動電極113から出力され、I/V変換回路21に入力される。I/V変換回路21は、入力された交流電流を振動子100の振動周波数と同一の周波数の交流電圧信号に変換して出力する。
【0041】
I/V変換回路21から出力された交流電圧信号は、AC増幅回路22に入力される。AC増幅回路22は、入力された交流電圧信号を増幅して出力する。
【0042】
AC増幅回路22から出力された交流電圧信号は振幅調整回路23に入力される。振幅調整回路23は、入力された交流電圧信号の振幅を一定値に保持するように利得を制御し、利得制御後の交流電圧信号を振動子100の駆動電極112に出力する。この駆動電極112に入力される交流電圧信号(駆動信号)により振動子100が振動する。
【0043】
AC増幅回路22が増幅した交流電圧信号は2値化回路24にも入力され、交流電圧信号の振幅中心を基準電圧Vrefとして交流電圧信号と比較し、比較結果に応じて基準電圧Vrefよりも高い電圧レベルと基準電圧Vrefよりも低い電圧レベルを切り替えて方形波電圧信号を生成し、検出回路30の同期検波回路35に出力する。
【0044】
検出回路30は、チャージアンプ回路31、32、差動増幅回路33、AC増幅回路34、同期検波回路35、平滑回路36、可変増幅回路37、フィルター回路38を含んで構成されている。
【0045】
チャージアンプ回路31、32には、振動子100により検出された互いに逆位相の検出信号(交流電流)が外部入力端子13、14を介して入力される。そして、チャージアンプ回路31、32は、入力された検出信号(交流電流)を基準電圧Vrefを中心とする交流電圧信号に変換する。
【0046】
差動増幅回路33はチャージアンプ回路31の出力信号とチャージアンプ回路32の出力信号を差動増幅する。差動増幅回路33の出力信号は、さらにAC増幅回路34で増幅される。
【0047】
同期検波回路35は、2値化回路24が出力する参照信号54を基に、AC増幅回路34の出力信号を同期検波することにより角速度成分を抽出する。同期検波回路35は、例えば、方形波電圧信号の電圧レベルが基準電圧Vrefよりも高い時はAC増幅回路34の出力信号をそのまま出力し、方形波電圧信号の電圧レベルが基準電圧Vrefよりも低い時はAC増幅回路34の出力信号を基準電圧Vrefに対して反転して出力するスイッチ回路として構成することができる。
【0048】
同期検波回路35で抽出された角速度成分の信号は、平滑回路36で直流電圧信号に平滑化され、可変増幅回路37に入力される。
【0049】
可変増幅回路37は、平滑回路36の出力信号(直流電圧信号)を、設定された増幅率(又は減衰率)で増幅(又は減衰)して角速度感度を変化させる。可変増幅回路37で増幅(又は減衰)された信号は、フィルター回路38に入力される。
【0050】
フィルター回路38は、可変増幅回路37の出力信号から高周波のノイズ成分を除去し(正確には所定レベル以下に減衰させ)、角速度の方向及び大きさに応じた極性及び電圧レベルの信号64を生成する。
【0051】
発振検出回路40は、振動子100及び駆動回路20における発振状態をモニターし、発振検出信号42を生成する。例えば、発振検出回路40は、AC増幅回路22の出力信号が入力され、AC増幅回路22の出力信号の振幅や周波数に基づいて、振動子100及び駆動回路20が定常発振状態であればハイレベル、そうでなければローレベルとなる発振検出信号42を生成する。
【0052】
0点電圧調整値設定回路50は、本発明における0点電圧調整値設定部として機能し、外部から入力された0点電圧調整信号18に基づいて0点電圧調整値52を設定する。マイクロコンピューター5のCPU6は、0点電圧調整信号18を生成し、外部入力端子15を介して0点電圧調整値設定回路50に供給する。
【0053】
0点電圧調整値設定回路50は、2値化回路24が出力する参照信号54を基準として0点電圧調整信号18のパルス幅(ハイパルスの幅であってもよいし、ローパルスの幅であってもよい)を判定し、判定結果に基づいて0点電圧調整値52を設定するか否かを決定する。また、0点電圧調整値設定回路50は、パルス幅の判定結果に基づいて0点電圧調整値の設定処理を終了して0点電圧調整値52を確定するか否かを決定する。なお、0点電圧調整値設定回路50は、発振検出信号42がハイレベル(振動子100及び駆動回路20が定常発振状態の場合)でなければ0点電圧調整値52の設定処理を行わない。0点電圧調整値設定回路50の具体的な構成例については後述する。
【0054】
0点電圧調整回路60は、本発明における0点電圧調整部として機能し、検出回路30の出力信号64が入力され、0点電圧調整値52に基づいて、検出信号62の0点電圧を調整する。
【0055】
0点電圧調整値設定回路50は、マイクロコンピューター5から0点電圧調整信号18が供給されるまでは、0点電圧調整信号18に基づいて0点電圧調整値52を設定することができない。そこで、0点電圧調整回路60は、0点電圧調整信号18が入力されるまでは、あらかじめ決められたデフォルトの調整値に基づいて、検出信号62の0点電圧を調整する。デフォルトの調整値は、例えば、設計時のシミュレーション結果等の情報により最適な調整値が選択される。なお、本実施形態では、0点電圧調整信号18が供給される信号線にはプルダウン抵抗70が付加されており、0点電圧調整信号18に基づく0点調整をまったく行わない場合は、外部入力端子15をオープンにしておいてもよい。
【0056】
検出信号62は外部出力端子16から外部へ出力され、ローパスフィルター3によりノイズ成分が除去され、増幅回路4を介してマイクロコンピューター5のAD変換回路7に入力される。そして、CPU6は、A/D変換回路7の出力信号に基づいて検出結果を解析し、解析結果に応じた種々の制御を行う。
【0057】
前述したように、CPU6は0点電圧調整信号18を生成する処理も行う。CPU6は、角速度検出装置2の静止時におけるA/D変換回路7の出力信号に基づいて、検出信号62の0点電圧を計算し、計算結果に基づいて、検出信号62の0点電圧が目標電圧値(例えば、基準電圧Vref)になるような0点電圧調整値52の情報を含む0点電圧調整信号18を生成するようにしてもよい。また、例えば、角速度検出装置2の検査時に検出信号62の0点電圧が目標電圧値になるような0点電圧調整値を計算し、計算した0点電圧調整値をマイクロコンピューター5の記憶部(図示しない)にあらかじめ記憶させておき、CPU6は、角速度検出装置2の電源投入後の所定タイミングで、記憶部に記憶されている0点電圧調整値を読み出して0点電圧調整信号18を生成するようにしてもよい。
【0058】
図5は、角速度検出装置2が静止している時の図1のA点〜I点における信号波形の一例を示す図である。図5において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。
【0059】
振幅調整回路23の出力(A点)には基準電圧Vrefを中心とする交流電圧信号(駆動信号)が発生し、この駆動信号が振動子100の駆動電極112に供給されて振動子100が振動し、AC増幅回路22の出力(B点)には振動子100の駆動電極113からフィードバックされた信号が増幅された交流電圧信号が発生し、2値化回路24の出力(C点)には駆動信号と同じ周波数の参照信号54が発生する。
【0060】
振動子100は静止しているので、検出電極114、115にはコリオリ力に基づく交流電流は発生しないが、駆動信号の漏れ成分による交流電流が発生する。
【0061】
振動子100の検出電極114に発生した交流電流はチャージアンプ回路31により交流電圧信号に変換され、チャージアンプ回路31の出力(D点)には2値化回路24の出力信号(C点の信号)と同じ周波数の正弦波電圧信号が発生する。この正弦波電圧信号の位相は2値化回路24の出力信号(C点の信号)に対して位相が90°ずれている。
【0062】
振動子100の検出電極115に発生する交流電流は検出電極114に発生する交流電流に対して逆位相であるので、チャージアンプ回路32の出力(E点)にはチャージアンプ回路31の出力信号(D点の信号)に対して逆位相の正弦波電圧信号が発生する。
【0063】
チャージアンプ回路31の出力信号(D点の信号)及びチャージアンプ回路32の出力信号(E点の信号)は差動増幅され、AC増幅回路34の出力(F点)には、チャージアンプ回路31の出力(D点)に発生する正弦波電圧信号と同位相の正弦波電圧信号が発生する。
【0064】
AC増幅回路34の出力信号(F点の信号)は、同期検波回路35により2値化回路24の出力信号(C点の信号)に基づいて同期検波され、同期検波回路35の出力(G点)には、AC増幅回路34の出力信号(F点の信号)が全波整流された信号が発生する。
【0065】
同期検波回路35の出力(G点)は平滑回路36により平滑化され、さらに、可変増幅回路37、フィルター回路38により処理される。角速度検出装置2が静止しているので、理想的にはフィルター回路38の出力(H点)には基準電圧Vrefの直流電圧信号が発生すべきだが、実際には、各回路のオフセット等の影響により、基準電圧Vrefに対してオフセット電圧分だけ高い(又は低い)信号が発生する。
【0066】
0点電圧調整回路60によりこのオフセット電圧がキャンセルされ、0点電圧調整回路60の出力(I点)には基準電圧Vrefの検出信号62が発生する。すなわち、0点電圧調整回路60により、検出信号62の0点電圧が基準電圧Vrefに調整される。
【0067】
一方、図6は、角速度検出装置2に角速度が加わっている時の図1のA点〜I点における信号波形の一例を示す図である。図6において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。
【0068】
A点、B点、C点の信号波形は、図5と同じであるので、その説明を省略する。
【0069】
振動子100にZ軸を中心とする角速度が加わると、振動子100の検出電極114、115にはコリオリ力に基づく交流電流が発生する。
【0070】
振動子100の検出電極114に発生した交流電流はチャージアンプ回路31により交流電圧信号に変換され、チャージアンプ回路31の出力(D点)には2値化回路24の出力信号(C点の信号)と同じ位相の正弦波電圧信号が発生する。そして、チャージアンプ回路32の出力(E点)にはチャージアンプ回路31の出力信号(D点の信号)に対して逆位相の正弦波電圧信号が発生する。
【0071】
チャージアンプ回路31の出力信号(D点の信号)及びチャージアンプ回路32の出力信号(E点の信号)は差動増幅され、AC増幅回路34の出力(F点)には、チャージアンプ回路31の出力(D点)に発生する正弦波電圧信号と同位相の正弦波電圧信号が発生する。
【0072】
AC増幅回路34の出力信号(F点の信号)は、同期検波回路35により2値化回路24の出力信号(C点の信号)に基づいて同期検波され、同期検波回路35の出力(G点)には、AC増幅回路34の出力信号(F点の信号)が全波整流された信号が発生する。なお、振動子100の検出電極114、115には、駆動信号の漏れ成分による交流電流も発生するが、図示を省略している。
【0073】
同期検波回路35の出力信号(G点の信号)は平滑回路36により平滑化され、さらに、可変増幅回路37、フィルター回路38により処理される。その結果、フィルター回路38の出力(H点)にも基準電圧Vrefよりも高い電圧の信号が発生する。
【0074】
前述の通り、フィルター回路38の出力信号64(H点の信号)はオフセット電圧分の誤差を含むが、0点電圧調整回路60によりオフセット電圧がキャンセルされ、0点電圧調整回路60の出力(I点)には角速度に応じた電圧の検出信号62が発生する。
【0075】
なお、角速度検出装置2に図6と逆方向の角速度が加わった場合には、チャージアンプ回路31の出力信号(D点の信号)及びチャージアンプ回路32の出力信号(E点の信号)がともに180°反転した波形になる。そのため、検出信号62は基準電圧Vrefよりも低い電圧の信号になる。
【0076】
このようにして角速度検出装置2は角速度を検出することができる。そして、検出信号62は、その電圧レベルがコリオリの力の大きさ(角速度の大きさ)に比例し、その極性が回転方向により決まるので、マイクロコンピューター5は、検出信号62に基づいて角速度検出装置2に加えられた角速度を計算することができる。
【0077】
[0点電圧調整信号]
本実施形態における0点電圧調整信号18は、4種類のパルス幅(パルス幅1、パルス幅2、パルス幅3、パルス幅4)のパルスが時系列に組み合わされて構成される。
【0078】
パルス幅4のパルス(以下、「パルス4」という)は、0点電圧調整値の上位ビット(後述するように検出信号62の0点電圧の粗調整に使用される)の設定処理を開始することを示す。なお、パルス幅4は、本発明における「第1のパルス幅」に相当する。
【0079】
パルス幅3のパルス(以下、「パルス3」という)は、0点電圧調整値の下位ビット(後述するように検出信号62の0点電圧の微調整に使用される)の設定処理を開始することを示す。なお、パルス幅3は、本発明における「第2のパルス幅」に相当する。
【0080】
パルス幅2のパルス(以下、「パルス2」という)は0点電圧調整値の上位ビット又は下位ビットの設定処理を終了し、0点電圧調整値52の上位ビット又は下位ビットを確定することを示す。なお、パルス幅2は、本発明における「第3のパルス幅」に相当する。
【0081】
パルス幅1のパルス(以下、「パルス1」という)は、0点電圧調整値の上位ビット又は下位ビットの設定処理が開始されてから終了するまでの間に使用され、パルス1の数が0点電圧調整値に対応する。
【0082】
図7に示すように、本実施形態では、後述する0点電圧調整値設定回路50の構成を簡単にするために、パルス幅1〜パルス幅4を、パルス幅1が最も狭く、パルス幅2、パルス幅3、パルス幅4の順に広くなるように定義している。
【0083】
さらに、2つの角速度検出装置2を近接して使用する場合、仮に2つの振動子100を同じ発振周波数で振動すると干渉が起こるため、2つの振動子100を異なる発振周波数(例えば、46.5kHzと54.1kHz)で振動させるのが望ましい。そうすると、0点電圧調整18のパルス幅をカウントする基準となる参照信号54の周波数も2通り存在するので、どちらの周波数の参照信号54を基準にしてカウントしてもパルス1〜パルス4を区別できるようにするために、本実施形態では、パルス幅1〜パルス幅4を固定幅とせずに範囲を規定している。
【0084】
具体的には、本実施形態では、図7に示すように、パルス幅1とパルス幅2の間に閾値1を設け、パルス幅2とパルス幅3の間に閾値2を設け、パルス幅3とパルス幅4の間に閾値3を設け、閾値1〜3にかからないように、パルス幅1、パルス幅2、パルス幅3、パルス幅4の範囲を規定している。このパルス幅の範囲は、参照信号54の周波数に基づいて、以下のように決定することができる。
【0085】
例えば、46.5kHz〜54.1kHzのいずれかの発振周波数を有する振動子100を使用することを想定し、発振周波数の偏差を±1kHzとすると、参照信号54の最高周波数は55.1kHz(=54.1kHz+1kHz)、最低周波数は45.5kHz(=46.5kHz−1kHz)である。従って、参照信号54の最短周期は約18.1μs(≒1/55.1kHz)、最長周期は22.0μs(≒1/45.5kHz)である。
【0086】
ここで、0点電圧調整信号18と参照信号54は非同期であることを考慮すると、参照信号54によるカウント数と対応するパルス幅の関係は図8に示すようになる。例えば、参照信号54によるカウント数が1であれば、0点電圧調整信号18のパルス幅は0より広く44.0μsより狭い。また、参照信号54によるカウント数が2であれば、0点電圧調整信号18のパルス幅は18.1μsより広く65.9μsより狭い。すなわち、18.1μs以下のパルス幅のカウント数は必ず1以下であり、44.0μs以上のパルス幅のカウント数は必ず2以上である。従って、図7に示すように、18.1μsより広く44.0μsより狭いパルス幅を閾値1とし、パルス幅1、パルス幅2が閾値1にかからないように、例えば、パルス幅1の上限を17μs、パルス幅1の下限を50μsに規定することができる。
【0087】
同様に、参照信号54によるカウント数が6であれば、0点電圧調整信号18のパルス幅は90.7μsより広く153.8μsより狭い。また、参照信号54によるカウント数が7であれば、0点電圧調整信号18のパルス幅は108.9μsより広く175.8μsより狭い。すなわち、108.9μs以下のパルス幅のカウント数は必ず6以下であり、153.8μs以上のパルス幅のカウント数は必ず7以上である。従って、図7に示すように、108.9μsより広く153.8μsより狭いパルス幅を閾値2とし、パルス幅2、パルス幅3が閾値2にかからないように、例えば、パルス幅2の上限を100μs、パルス幅3の下限を160μsに規定することができる。
【0088】
同様に、参照信号54によるカウント数が14であれば、0点電圧調整信号18のパルス幅は235.9μsより広く329.7μsより狭い。また、参照信号54によるカウント数が15であれば、0点電圧調整信号18のパルス幅は254.1μsより広く351.6μsより狭い。すなわち、254.1μs以下のパルス幅のカウント数は必ず14以下であり、329.7μs以上のパルス幅のカウント数は必ず15以上である。従って、図7に示すように、254.1μsより広く329.7μsより狭いパルス幅を閾値3とし、パルス幅3、パルス幅4が閾値3にかからないように、例えば、パルス幅3の上限を240μs、パルス幅4の下限を340μsに規定することができる。なお、本実施形態では、参照信号によるカウンターの回路規模が無駄に大きくならないように、図7に示すように、パルス幅4の上限を420μsに規定している。
【0089】
逆に、図8によると、パルス幅1の範囲を0〜17μsとするとカウント数は0又は1であり、パルス幅2の範囲を50μs〜100μsとするとカウント数は2〜6のいずれかであり、パルス幅3の範囲を160μs〜240μsとするとカウント数は7〜14のいずれかであり、パルス幅4の範囲を340μs〜420μsとするとカウント数は15〜24のいずれかであるので、パルス幅のカウント数によりパルス1〜パルス4を区別することができる。
【0090】
なお、マイクロコンピューター5が、例えば、内蔵の8MHz(偏差を±5%と仮定)の発振クロック(図示しない)の8クロックで1コマンドを発行する場合、この8クロックコマンドの16周期分でパルス幅1が15.24μs〜16.84μsのパルス1を生成することができる。
【0091】
図9(A)〜図9(C)は、0点電圧調整信号の例を示す図である。
【0092】
図9(A)に示す0点電圧調整信号18は、パルス4の後にパルス1が8回連続し、さらにパルス2により構成されている。この0点電圧調整信号18は、パルス4により0点電圧調整値52の上位ビットの設定処理(すなわち、検出信号62の0点電圧の粗調整)を開始し、0点電圧調整値52の上位ビットに8(パルス1の数)を設定し、パルス2により0点電圧調整値52の上位ビットの設定処理を終了するとともに0点電圧調整値52の上位ビットの設定値を8に確定することを示している。
【0093】
図9(B)に示す0点電圧調整信号18は、パルス3の後にパルス1が9回連続し、さらにパルス2により構成されている。この0点電圧調整信号18は、パルス3により0点電圧調整値52の下位ビットの設定処理(すなわち、検出信号62の0点電圧の微調整)を開始し、0点電圧調整値52の下位ビットに9(パルス1の数)を設定し、パルス2により0点電圧調整値52の下位ビットの設定処理を終了するとともに0点電圧調整値52の下位ビットの設定値を9に確定することを示している。
【0094】
図9(C)に示す0点電圧調整信号18は、パルス4の後にパルス1が8回連続し、パルス3の後にパルス1が9回連続し、さらにパルス2により構成されている。この0点電圧調整信号18は、パルス4により0点電圧調整値52の上位ビットの設定処理(すなわち、検出信号62の0点電圧の粗調整)を開始し、0点電圧調整値52の上位ビットに8(パルス1の数)を設定し、パルス3により0点電圧調整値52の上位ビットの設定処理を終了するとともに0点電圧調整値52の上位ビットの設定値を8に確定することを示している。さらに、この0点電圧調整信号18は、パルス3により0点電圧調整値52の下位ビットの設定処理(すなわち、検出信号62の0点電圧の微調整)を開始し、0点電圧調整値52の下位ビットに9(パルス1の数)を設定し、パルス2により0点電圧調整値52の下位ビットの設定処理を終了するとともに0点電圧調整値52の下位ビットの設定値を9に確定することを示している。
【0095】
このように、本実施形態ではパルス幅の異なる4種類のパルス1〜パルス4を組み合わせて0点電圧調整信号18を構成するので、マイクロコンピューター5は、1つの外部入力端子15のみを介して角速度検出用IC10に0点電圧調整値52の情報を送信することができる。
【0096】
[0点電圧調整値設定回路の構成]
図10は、0点電圧調整値設定回路の構成の一例を示す図である。
【0097】
0点電圧調整値設定回路50は、パルス幅判定回路200、リセット制御回路210、220及び230、調整許可制御回路240、AND回路250、セレクター260、上位カウンター270、下位カウンター280、マスク制御回路290、上位マスク回路300、下位マスク回路310を含んで構成されている。
【0098】
パルス幅判定回路200は、0点電圧調整信号18のパルス幅を参照信号54でカウントし、パルスの幅がパルス幅2の時にハイレベルとなるパルス検出信号202、パルスの幅がパルス幅3の時にハイレベルとなるパルス検出信号204、パルスの幅がパルス幅4の時にハイレベルとなるパルス検出信号206を生成する。
【0099】
リセット制御回路210は、発振検出信号42がローレベル(振動子100及び駆動回路20が定常発振状態でない場合)、又は、パルス検出信号202がハイレベルの時にハイレベルとなるリセット信号212を生成する。
【0100】
同様に、リセット制御回路220は、発振検出信号42がローレベル、又は、パルス検出信号206がハイレベルの時にハイレベルとなるリセット信号222を生成する。
【0101】
同様に、リセット制御回路230は、発振検出信号42がローレベル、又は、パルス検出信号204がハイレベルの時にハイレベルとなるリセット信号232を生成する。
【0102】
調整許可制御回路240は、リセット信号212がローレベル、かつ、パルス検出信号204がハイレベルの時にハイレベルとなる調整許可信号242を生成する。
【0103】
AND回路250は、調整許可信号242がハイレベルの時は0点電圧調整信号18を通過させて出力し、調整許可信号242がローレベルの時はローレベルを出力する。
【0104】
セレクター260は、パルス検出信号206がハイレベルの時はAND回路250の出力信号を伝搬させてクロック信号262を出力し、パルス検出信号206がローレベル、かつ、パルス検出信号204がハイレベルの時はAND回路250の出力信号を伝搬させてクロック信号264を出力する。
【0105】
上位カウンター270は、例えば4ビットのバイナリーカウンターとして構成され、リセット信号222がハイレベルの時は上位カウント値272をリセットし、クロック信号262の立ち下がりエッジ(立ち上がりエッジでもよい)で上位カウント値272を1ずつカウントアップする。
【0106】
下位カウンター280は、例えば6ビットのバイナリーカウンターとして構成され、リセット信号232がハイレベルの時は下位カウント値282をリセットし、クロック信号264の立ち下がりエッジ(立ち上がりエッジでもよい)で下位カウント値282を1ずつカウントアップする。
【0107】
マスク制御回路290は、電源投入直後の初期状態ではハイレベルであり、発振検出信号42がハイレベル、かつ、パルス検出信号204がハイレベルになると以降はローレベルを保持するマスク信号292を生成する。
【0108】
上位マスク回路300は、マスク信号292がローレベルの時は上位カウント値272を選択し、マスク信号292がハイレベルの時はデフォルトの調整値を選択し、上位ビット調整値302を生成する。
【0109】
下位マスク回路310は、マスク信号292がローレベルの時は下位カウント値282を選択し、マスク信号292がハイレベルの時はデフォルトの調整値を選択し、下位ビット調整値312を生成する。
【0110】
なお、上位ビット調整値302及び下位ビット調整値312は、それぞれ、0点電圧調整値52の上位ビット及び下位ビットに対応する。
【0111】
[0点電圧調整回路の構成]
図11は、0点電圧調整回路の構成の一例を示す図である。
【0112】
0点電圧調整回路60は、D/A変換回路320及び330、抵抗回路340、加算回路350を含んで構成されている。
【0113】
D/A変換回路320は、0点電圧調整値設定回路50が出力する上位ビット調整値302をD/A変換し、上位ビット調整値302に対応する電圧322を生成する。
【0114】
D/A変換回路330は、0点電圧調整値設定回路50が出力する下位ビット調整値312をD/A変換し、下位ビット調整値312に対応する電圧332を生成する。
【0115】
抵抗回路340は、D/A変換回路320の出力電圧322とD/A変換回路330の出力電圧332から、0点電圧調整値52に対応する調整電圧342を生成する。
【0116】
加算回路350は、検出回路30の出力信号64に調整電圧342を加算し、検出信号62を出力する。
【0117】
このように、検出回路30の出力信号64に調整電圧342を加算することにより、検出回路30の出力信号64におけるオフセット電圧がキャンセルされ、検出信号62の0点電圧が目標電圧値(例えば、基準電圧Vref)になるように調整される。
【0118】
[0点電圧調整タイミングチャート]
図12は、角速度検出装置2の0点電圧調整のタイミングチャートの一例を示す図である。図12は、マイクロコンピューター5から図9(C)の形式の0点電圧調整信号18が供給される場合のタイミングチャート図である。なお、角速度検出装置2が静止しているので検出回路30の出力信号64は一定電圧になっている。以下、図12のタイミングチャートについて説明する。
【0119】
角速度検出装置2の電源が投入されると、時刻Tにおいて電源電圧が立ち上がり、上位カウンター270及び下位カウンター280にリセットがかかり、上位カウント値272及び下位カウント値282は0にリセットされる。
【0120】
また、発振検出信号42がローレベルなので、マスク信号292はハイレベルであり、上位ビット調整値302及び下位ビット調整値312は、それぞれデフォルトの調整値M及びNになる。そのため、調整電圧342は調整値M及びNにより構成される0点電圧調整値52に対応する電圧値になり、検出信号62の0点電圧が初期調整される。
【0121】
電源電圧が立ち上がると振動子100及び駆動回路20が発振動作を開始し、時刻Tにおいて発振検出信号42がローレベルからハイレベルに遷移する。
【0122】
時刻Tにおいて、マイクロコンピューター5が0点電圧調整信号18の送信を開始し、まず、時刻T〜Tにおいてパルス4を送信する。
【0123】
パルス幅判定回路200は、パルス幅のカウントを開始し、時刻Tにおいてパルス幅2を検出し、パルス検出信号202がローレベルからハイレベルに遷移する。
【0124】
さらに、パルス幅判定回路200は、時刻Tにおいてパルス幅3を検出し、パルス検出信号204がローレベルからハイレベルに遷移するとともにパルス検出信号202がハイレベルからローレベルに遷移する。
【0125】
時刻Tにおいて、パルス検出信号204がハイレベルになるので、調整許可信号242がローレベルからハイレベルに遷移するとともにマスク信号292がハイレベルからローレベルに遷移する。そして、マスク信号292がローレベルになるので、以降は、上位ビット調整値302及び下位ビット調整値312としてそれぞれ上位カウント値272及び下位カウント値282が選択されるようになる。
【0126】
時刻Tにおいて、パルス幅判定回路200がパルス幅4を検出し、パルス検出信号206がローレベルからハイレベルに遷移する。そして、時刻T〜Tにおいて、検出信号62の0点電圧の粗調整が行われる。
【0127】
時刻T〜Tにおいて、マイクロコンピューター5がパルス1をM回連続して送信すると、調整許可信号242がハイレベルなので、M個のパルス1がAND回路250の出力に伝搬する。そして、パルス検出信号206がハイレベルなので、クロック信号262にM個のクロックパルスが発生する。そのため、時刻T〜Tにおいて、上位カウンター270はクロック信号262の立ち下がりエッジ毎に上位カウント値272を1ずつカウントアップし、時刻Tにおいて上位カウント値272がMになる。上位カウント値272とともに上位ビット調整値302も1ずつカウントアップするので、調整電圧342は粗いステップで階段状に変化する。そして、時刻Tにおいて、調整電圧342は、上位ビット調整値302がMであり、かつ、下位ビット調整値312が0の時の電圧値に粗調整される。
【0128】
時刻T〜Tにおいて、マイクロコンピューター5がパルス3を送信すると、パルス幅判定回路200は、時刻Tにおいてパルス幅2を検出し、パルス検出信号202がローレベルからハイレベルに遷移するとともに。パルス検出信号204、206及び調整許可信号242がハイレベルからローレベルに遷移する。これにより、検出信号62の0点電圧の粗調整が終了する。
【0129】
さらに、パルス幅判定回路200は、時刻Tにおいてパルス幅3を検出し、パルス検出信号204がローレベルからハイレベルに遷移するとともにパルス検出信号202がハイレベルからローレベルに遷移する。また、時刻Tにおいて、パルス検出信号204がハイレベルになるので、調整許可信号242がローレベルからハイレベルに遷移する。そして、時刻T〜T10において、検出信号62の0点電圧の微調整が行われる。
【0130】
時刻T〜T10において、マイクロコンピューター5がパルス1をN回連続して送信すると、調整許可信号242がハイレベルなので、N個のパルス1がAND回路250の出力に伝搬する。そして、パルス検出信号206がローレベル、かつ、パルス検出信号204がハイレベルなので、クロック信号264にN個のクロックパルスが発生する。そのため、時刻T〜T10において、下位カウンター280はクロック信号264の立ち下がりエッジ毎に下位カウント値282を1ずつカウントアップし、時刻T10において下位カウント値282がNになる。下位カウント値282とともに下位ビット調整値312も1ずつカウントアップするので、調整電圧342が細かいステップで階段状に変化する。そして、時刻T10において、調整電圧342は、上位ビット調整値302がMであり、下位ビット調整値312がNの時の電圧値に微調整される。
【0131】
時刻T10〜T11において、マイクロコンピューター5がパルス2を送信すると、パルス幅判定回路200は、時刻T11においてパルス幅2を検出し、パルス検出信号202がローレベルからハイレベルに遷移するとともに。パルス検出信号204及び調整許可信号242がハイレベルからローレベルに遷移する。これにより、検出信号62の0点電圧の微調整が終了し、上位ビット調整値302及び下位ビット調整値312がそれぞれM及びNに確定する(すなわち、0点電圧調整値52が確定する)。
【0132】
なお、本実施形態では、0点電圧の粗調整を行った後に微調整を行うのが一般的であることに着目し、粗調整の開始を示すパルス4の幅(パルス幅4)を微調整の開始を示すパルス3の幅(パルス幅3)よりも広くしている。こうすることにより、パルス幅判定回路200がパルス幅3を検出して微調整を開始してもリセット信号222がハイレベルにならないので、粗調整によりすでに確定している上位カウント値272がリセットされないようにしている。
【0133】
また、パルス幅3とパルス幅4は、0点電圧調整の終了を示すパルス2の幅(パルス幅2)よりも広くしている。こうすることにより、パルス3やパルス4に対して調整許可信号242が一旦ローレベルになってからハイレベルになるので、パルス3やパルス4により前回の調整を終了した後に今回の調整を開始するようにしている。従って、0点電圧の粗調整や微調整を連続して行う場合には、各調整の間にパルス2が不要であり、0点電圧調整信号18の送信時間を短縮することができる。
【0134】
そして、このようにパルス幅2<パルス幅3<パルス幅4と定義することにより、パルス幅判定回路200は、単純にパルス幅を判定するだけでよくなり、簡単な構成の回路で実現することができる。
【0135】
[効果]
本実施形態では、外部入力端子15を介して外部から入力された0点電圧調整信号18により検出信号62の0点電圧を調整する。従って、本実施形態によれば、設定すべき調整値に対応する数のパルス1を0点電圧調整信号18に組み込むことにより、0点電圧調整値52を外部から簡単に設定することができる。
【0136】
また、本実施形態では、0点電圧調整信号18により0点電圧調整値52を設定するので内蔵の不揮発性メモリーが不要であり、角速度検出用IC10のチップサイズを小さくすることができる。
【0137】
また、本実施形態によれば、フィールドにおいて、マイクロコンピューター5が検出信号62をモニターして0点電圧の調整値を計算することができるので、振動子100や角速度検出用IC10の経年変化や温度変化に対しても検出信号62の0点電圧を適切なタイミングで調整することができる。
【0138】
また、本実施形態では、粗調整と微調整により0点電圧調整値52の上位4ビットと下位6ビットを別々に設定する。従って、粗調整と微調整に分けずに1回で調整するとパルス1の数が最大1023(210−1)個必要であるのに対して、本実施形態では、パルス1の数が最大でも78(=(2−1)+(2−1))であり、0点電圧調整信号18の送信時間を大幅に短縮することができる。
【0139】
また、本実施形態では、0点電圧調整信号18が入力されるまではデフォルトの調整値により0点電圧が調整されるので、アプリケーションによっては外部から0点電圧を調整しなくても本実施形態の角速度検出装置を使用することができる場合もある。
【0140】
2.物理量検出装置の0点電圧調整方法
以下では、図1に示した角速度検出装置の0点電圧調整方法を例にとり説明するが、本発明は、角速度、加速度、地磁気、圧力等の様々な物理量のいずれかを検出することができる装置に適用可能である。
【0141】
[第1実施例]
図13は、0点電圧調整方法の第1実施例について説明するためのフローチャート図である。以下、図13のフローチャートについて説明する。
【0142】
角速度検出装置2の電源が投入されると(ステップS10でYesの場合)、マイクロコンピューター5は、内蔵ROM等の記憶部から0点電圧調整値粗調整用の調整値と微調整用の調整値を読み出す(ステップS20)。ここで、振動子100や角速度検出用IC10の製造ばらつきにより、0点電圧調整値は角速度検出装置毎に異なるため、角速度検出装置2に対して最適な0点電圧調整値があらかじめ計算され、マイクロコンピューター5の記憶部に記憶されている。
【0143】
マイクロコンピューター5は、1つのパルス4、読み出した粗調整用の調整値に対応する数のパルス1、1つのパルス3、読み出した微調整用の調整値に対応する数のパルス1、1つのパルス2を含む0点電圧調整信号18(図9(C)の形式の信号)を作成し、角速度検出装置2の外部入力端子15に供給する(ステップS30)。この0点電圧調整信号18により、角速度検出装置2は検出信号62の0点電圧を調整する。
【0144】
[第2実施例]
図14は、0点電圧調整方法の第2実施例について説明するためのフローチャート図である。以下、図14のフローチャートについて説明する。
【0145】
角速度検出装置2の電源が投入されると(ステップS110でYesの場合)、マイクロコンピューター5は、角速度検出装置2の外部出力端子16を介して検出信号62の電圧値を取り込み(ステップS120)、取り込んだ電圧値が粗調整の目標電圧値と一致するか否かを判断する(ステップS130)。
【0146】
取り込んだ電圧値が粗調整の目標電圧値と一致しなければ(ステップS130でNoの場合)、マイクロコンピューター5は、1つのパルス4と1つのパルス1を含む0点電圧調整信号18を作成し、角速度検出装置2の外部入力端子15に供給する(ステップS140)。この0点電圧調整信号18により、角速度検出装置2は検出信号62の0点電圧の粗調整を行う。
【0147】
そして、取り込んだ電圧値が粗調整の目標電圧値と一致するまでステップS140及びS120の処理を繰り返し、取り込んだ電圧値が粗調整の目標電圧値と一致すれば(ステップS130でYesの場合)、マイクロコンピューター5は、角速度検出装置2の外部出力端子16を介して検出信号62の電圧値を取り込み(ステップS150)、取り込んだ電圧値が最終的な目標電圧値と一致するか否かを判断する(ステップS160)。
【0148】
取り込んだ電圧値が最終的な目標電圧値と一致しなければ(ステップS160でNoの場合)、マイクロコンピューター5は、1つのパルス3と1つのパルス1を含む0点電圧調整信号18を作成し、角速度検出装置2の外部入力端子15に供給する(ステップS170)。この0点電圧調整信号18により、角速度検出装置2は0点電圧調整値52の上位ビット(上位ビット調整値302)を確定し、検出信号62の0点電圧の微調整を行う。
【0149】
そして、取り込んだ電圧値が最終目標電圧値と一致するまでステップS170及びS150の処理を繰り返し、取り込んだ電圧値が最終的な目標電圧値と一致すれば(ステップS160でYesの場合)、マイクロコンピューター5は、1つのパルス2を含む0点電圧調整信号18を作成し、角速度検出装置2の外部入力端子15に供給する(ステップS180)。0点電圧調整信号18により、角速度検出装置2は0点電圧の調整を終了するとともに0点電圧調整値52の下位ビット(下位ビット調整値312)を確定する。
【0150】
図14のフローチャートによると、粗調整により上位ビット調整値302を確定した後、微調整により下位ビット調整値312を確定している。従って、検出信号62の電圧値を最終的な目標電圧値と一致させるための調整電圧342が上位ビット調整値302の設定境界付近の電圧値である場合、ノイズの影響により上位ビット調整値302が本来の設定値に対して1だけずれて確定され、その後に微調整を行っても検出信号62の電圧値を最終的な目標電圧値と一致させることができない可能性がある。
【0151】
そこで、以下に説明するように、粗調整により設定可能な連続する2つの0点電圧調整値52の各々に対して微調整により設定可能な調整電圧342の範囲が互いの境界付近で重複するように定義することにより、この問題を解決することができる。
【0152】
図15(A)は、粗調整により選択可能な調整電圧の範囲と微調整により選択可能な調整電圧の範囲の関係の一例を示す図である。また、図15(B)は、図15(A)と対応しており、0点電圧調整値52と調整電圧342の関係を示す図である。図15(A)及び図15(B)において、0点電圧調整値52は10ビットであり、0点電圧調整値52の上位4ビット及び下位6ビットがそれぞれ上位ビット調整値302及び下位ビット調整値312に対応するものとする。
【0153】
図15(A)及び図15(B)に示すように、本実施形態では、例えば、約−1600mV〜約+1600mVの範囲で検出信号62の0点電圧が調整可能(すなわち、約−1600mV〜約+1600mVの範囲の調整電圧342が選択可能)である。
【0154】
具体的には、検出信号62の0点電圧は、粗調整により約−1600mV〜約+1600mVの範囲で200mVのステップで調整が可能であり、調整電圧342は、上位ビット調整値302が(0000)の時は約−1600mV〜約−1400mVの範囲、上位ビット調整値302が(0001)の時は約−1400mV〜約−1200mVの範囲、・・・、上位ビット調整値302が(1110)の時は約+1200mV〜約+1400mVの範囲、上位ビット調整値302が(1111)の時は約+1400mV〜約+1600mVの範囲に設定される。
【0155】
また、検出信号62の0点電圧は、粗調整により選択された約200mVの範囲を、微調によりさらに1/2のステップで調整が可能である。
【0156】
本実施形態では、図15(A)及び図15(B)に示すように、粗調整により設定可能な連続する2つの0点電圧調整値52の各々に対して微調整により設定可能な調整電圧342の範囲が互いの境界付近で重複するように定義している。すなわち、微調整により設定可能な調整電圧342の範囲を、粗調整による調整電圧342の設定境界付近で24mV分だけオーバーラップさせている。例えば、上位ビット調整値302が(0000)に設定された時と(0001)に設定された時の境界である−1400mVの付近で微調整により設定可能な調整電圧342の範囲がオーバーラップされている。すなわち、0点電圧調整値52が(0000,111111)に設定された時の調整電圧342(−1388mV)は、0点電圧調整値52が(0001,000000)に設定された時の調整電圧342(−1412mV)よりも高い。従って、例えば、粗調整により上位ビット調整値302が(0000)又は(0001)のいずれに設定された場合でも、微調整により調整電圧342を−1400mV付近の24mVの範囲に設定することができる。
【0157】
従って、このオーバーラップさせる範囲をノイズよりも大きくしておけば、ノイズの影響により上位ビット調整値302が本来の設定値に対して1だけずれて確定されたとしても、その後の微調整により検出信号62の電圧値を最終的な目標電圧値と一致させることができる。
【0158】
[第3実施例]
図16は、0点電圧調整方法の第3実施例について説明するためのフローチャート図である。以下、図13のフローチャートについて説明する。
【0159】
角速度検出装置2の電源が投入されると(ステップS210でYesの場合)、マイクロコンピューター5は、角速度検出装置2の外部出力端子16を介して検出信号62の電圧値を取り込み(ステップS220)、取り込んだ電圧値に対する粗調整用の調整値を記憶部から読み出す(ステップS230)。ここで、検出信号62の電圧値と、その電圧値に対して、0点電圧を目標電圧値と一致させるために最適な粗調整用の調整値との対応表があらかじめ作成され、マイクロコンピューター5の記憶部に記憶されている。
【0160】
そして、マイクロコンピューター5は、1つのパルス4と読み出した粗調整用の調整値に対応する数のパルス1を含む0点電圧調整信号18(図9(A)の形式からパルス2を除いた信号)を作成し、角速度検出装置2の外部入力端子15に供給する(ステップS240)。この0点電圧調整信号18により、角速度検出装置2は検出信号62の0点電圧の粗調整を行う。
【0161】
次に、マイクロコンピューター5は、角速度検出装置2の外部出力端子16を介して検出信号62の電圧値を取り込み(ステップS250)、取り込んだ電圧値に対する微調整用の調整値を記憶部から読み出す(ステップS260)。ここで、検出信号62の電圧値と、その電圧値に対して、0点電圧を目標電圧値と一致させるために最適な微調整用の調整値との対応表があらかじめ作成され、マイクロコンピューター5の記憶部に記憶されている。
【0162】
そして、マイクロコンピューター5は、1つのパルス3と読み出した微調整用の調整値に対応する数のパルス1を含む0点電圧調整信号18(図9(B)の形式からパルス2を除いた信号)を作成し、角速度検出装置2の外部入力端子15に供給する(ステップS270)。この0点電圧調整信号18により、角速度検出装置2は検出信号62の0点電圧の微調整を行う。
【0163】
次に、マイクロコンピューター5は、角速度検出装置2の外部出力端子16を介して検出信号62の電圧値を取り込み(ステップS280)、取り込んだ電圧値が最終目標電圧値と一致するか否かを判断する(ステップS290)。
【0164】
取り込んだ電圧値が最終目標電圧値と一致しなければ(ステップS290でNoの場合)、取り込んだ電圧値が最終目標電圧値と一致するまでステップS220〜S280の処理を繰り返す。
【0165】
取り込んだ電圧値が最終目標電圧値と一致すれば(ステップS290でYesの場合)、マイクロコンピューター5は、1つのパルス2を含む0点電圧調整信号18を作成し、角速度検出装置2の外部入力端子15に供給する(ステップS300)。この0点電圧調整信号18により、角速度検出装置2は0点電圧の調整を終了するとともに0点電圧調整値52(上位ビット調整値302及び下位ビット調整値312)を確定する。
【0166】
以上、説明したように、本実施形態の0点電圧調整方法によれば、設定すべき調整値に対応する数のパルス1を含む0点電圧調整信号18を角速度検出装置2の外部入力端子15に供給することにより、0点電圧調整値52を外部から簡単に設定することができる。
【0167】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0168】
例えば、図1では0点電圧調整回路60は、検出回路30の後段に接続されているが、これに限られず、例えば、同期検波回路35の前段や後段に接続されていてもよい。
【0169】
また、例えば、図10ではパルス幅判定回路200はパルス幅1を検出せず、パルス1を上位カウンター270及び下位カウンター280のクロック信号として使用しているが、他の構成にすることもできる。例えば、パルス幅1を参照信号54の1周期に対して十分広い幅に定義してパルス幅判定回路200がパルス2〜パルス4と同様にパルス1も検出し、パルス1を上位カウンター270及び下位カウンター280のクロック信号として使用しないようにしてもよい。こうすることにより、0点電圧調整信号18にノイズによるスパイクが乗っても、上位カウンター270及び下位カウンター280の誤動作を防止することができる。
【0170】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0171】
1 角速度検出システム、2 角速度検出装置、3 ローパスフィルター、4 増幅回路、5 マイクロコンピューター、6 CPU、7 A/D変換回路、10 角速度検出用IC、15 外部入力端子、16 外部出力端子、18 0点電圧調整信号、20 駆動回路、21 I/V変換回路(電流電圧変換回路)、22 AC増幅回路、23 振幅調整回路、24 2値化回路、30 検出回路、31 チャージアンプ回路、32 チャージアンプ回路、33 差動増幅回路、34 AC増幅回路、35 同期検波回路、36 平滑回路、37 可変増幅器、38 フィルター回路、40 発振検出回路、42 発振検出信号、50 0点電圧調整値設定回路、52 0点電圧調整値、54 参照信号、60 0点電圧調整回路、62 検出信号、70 プルダウン抵抗、100振動子、 101a 駆動振動腕、101b 駆動振動腕、102 検出振動腕、103 幅広部、104a 駆動用基部、104b 駆動用基部、105a 連結腕、105b 連結腕、106 幅広部、107 検出用基部、112 駆動電極、113 駆動電極、114 検出電極、115 検出電極、116 共通電極、200 パルス幅判定回路、202 パルス検出信号、204 パルス検出信号、206 パルス検出信号、210 リセット制御回路、212 リセット信号、220 リセット制御回路、222 リセット信号、230 リセット制御回路、232 リセット信号、240 調整許可制御回路、242 調整許可信号、250 AND回路、260 セレクター、262 クロック信号、264 クロック信号、270 上位カウンター、272 上位カウント値、280 下位カウンター、282 下位カウント値、290 マスク制御回路、292 マスク信号、300 上位マスク回路、302 上位ビット調整値、310 下位マスク回路、312 下位ビット調整値、320 D/A変換回路、330 D/A変換回路、340 抵抗回路、342 調整電圧、350 加算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理量を検出する物理量検出装置であって、
前記物理量を検出するセンサー素子と、
前記センサー素子の出力信号に基づいて前記物理量に応じた検出信号を生成する検出部と、を含み、
前記検出部は、
外部から入力された0点電圧調整信号に基づいて0点電圧調整値を設定する0点電圧調整値設定部と、
前記0点電圧調整値に基づいて、前記検出信号の0点電圧を調整する0点電圧調整部と、を含むことを特徴とする物理量検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記0点電圧調整値設定部は、
前記0点電圧調整信号のパルス幅を判定し、判定結果に基づいて前記0点電圧調整値を設定するか否かを決定することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記0点電圧調整値設定部は、
前記0点電圧調整信号のパルス幅を判定し、判定結果に基づいて前記0点電圧調整値の設定処理を終了して前記0点電圧調整値を確定するか否かを決定することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記0点電圧調整値設定部は、
前記0点電圧調整信号のパルス幅を判定し、前記0点電圧調整信号のパルス幅が第1のパルス幅である場合は前記0点電圧を粗調整するための前記0点電圧調整値を設定し、前記0点電圧調整信号のパルス幅が第2のパルス幅である場合は前記0点電圧を微調整するための前記0点電圧調整値を設定することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1のパルス幅は、前記第2のパルス幅よりも広いことを特徴とする物理量検出装置。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記粗調整により設定可能な連続する2つの前記0点電圧調整値の各々に対して前記微調整により調整可能な2つの電圧範囲が互いの境界付近で重複することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかにおいて、
前記0点電圧調整値設定部は、
前記0点電圧調整信号のパルス幅が前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅と異なる第3のパルス幅である場合は、前記0点電圧調整値の設定処理を終了して前記0点電圧調整値を確定することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、前記第3のパルス幅よりも広いことを特徴とする物理量検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記0点電圧調整部は、
外部から前記0点電圧調整信号が入力されるまでは、あらかじめ決められた調整値に基づいて、前記検出信号の0点電圧を調整することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、
前記物理量検出装置は、前記0点電圧調整信号を外部より入力する一つの外部入力端子を有することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかにおいて、
前記物理量は、角速度であることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の物理量検出装置と、
前記0点電圧調整信号を生成し、前記物理量検出装置に供給する制御装置と、を含むことを特徴とする物理量検出システム。
【請求項13】
所定の物理量を検出するセンサー素子と、前記センサー素子の出力信号に基づいて、前記物理量に応じた検出信号を生成する検出部と、を含み、前記検出部は、外部から入力された0点電圧調整信号に基づいて0点電圧調整値を設定する0点電圧調整値設定部と、前記0点電圧調整値に基づいて、前記検出信号の0点電圧を調整する0点電圧調整部と、を含む物理量検出装置の0点電圧調整方法であって、
前記物理量検出装置の電源投入時に、前記角速度検出装置の外部に記憶されている前記0点電圧調整値の情報に基づいて前記0点電圧調整信号を生成し、当該0点電圧調整信号を前記物理量検出装置に供給することを特徴とする物理量検出装置の0点電圧調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−175286(P2010−175286A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15534(P2009−15534)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】