説明

現像処理装置

【課題】
発色現像処理にかかる時間を短縮化し、迅速な現像処理を図ることができる現像処理装置を提供する。
【解決手段】
露光処理済の感光材料Pを発色現像する発色現像液を貯えた発色現像槽51と、感光材料Pを発色現像槽51に送り込むとともに発色現像液に浸漬させながら搬送する搬送部10a,10bとを備えた現像処理装置において、この搬送部近傍に赤外線照射手段9を配置するとともに、赤外線照射手段9により感光材料Pに向けて感光材料を加熱するように赤外線を照射するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光処理済の感光材料を発色現像する発色現像液を貯えた発色現像槽と、前記感光材料を前記発色現像槽に送り込むとともに前記発色現像液に浸漬させながら搬送する搬送部とを備えた現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のほとんどの現像処理装置の現像処理部は上記のように構成されており、より詳しくは、発色現像槽のほかに漂白定着槽と安定処理槽を備え、発色現像槽と漂白定着槽と安定処理槽をこの順に隣接して配置し、各槽からの感光材料を隣接する槽に反転させながら送るターン搬送ユニットを夫々の槽の上部位置同士の間に配置している。
【0003】
現在、写真プリント業界では、プリントソースとして写真フィルムだけではなく直接撮影画像データを生成するデジタルカメラに搭載されているメモリカードも取り扱う比率が高くなってきている。メモリカードから写真プリントを作製する場合は、写真フィルムとは異なり写真フィルムの現像処理がないこと、及び、家庭に普及してきているカラープリンタと競合することなどから、顧客を待たせずに迅速にプリント出力が可能なことが強く要望されている。このような迅速なプリント出力を可能にするためには、撮影画像を露光した感光材料を迅速に現像処理する必要がある。
【0004】
高速な現像処理を行うため、標準処理用の標準現像液が収容されている第1発色現像槽と、標準現像液よりも補充量が少なく処理時間の短い低補充迅速現像液が収容されている第2発色現像槽と、漂白液が収容されている漂白槽と、定着液が収容されている定着槽と、水洗水が収容されている第1及び第2水洗槽と、安定液が収容されている安定化槽とから構成される現像処理装置が知られている。この現像処理装置には、さらに、第1発色現像槽に感光材料を導く導入路と第2発色現像槽に感光材料を導く導入路とが個別に設けられるとともに、第1発色現像槽又は第2発色現像槽から漂白槽に感光材料を導く案内路も個別に設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6‐51480号公報(段落番号〔0075〕〜〔0077〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のように、標準的な現像処理と迅速な現像処理の2つの処理モードを実現するため、第1発色現像槽と第2発色現像槽とを設けるとともに、これらの発色現像槽への導入路や漂白槽への案内路を夫々個別に設けることは、装置の大型化や制御の複雑化をもたらし、容認できないコスト高を導く。
【0007】
一方で、現像処理のうち発色現像処理において、発色現像液の温度が上昇するとその処理が促進されることが知られている。そこで、発色現像液の温度を上昇させるために発色現像槽を加熱することが考えられるが、この場合蒸発する発色現像液の量が多くなり、また、発色現像槽の耐熱性の問題もあり、ある一定の温度以上には処理液を上昇させることができないという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に着目してなされたものであり、その目的は、発色現像処理にかかる時間を短縮化し、迅速な現像処理を図ることができる現像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る現像処理装置の第一特徴構成は、露光処理済の感光材料を発色現像する発色現像液を貯えた発色現像槽と、前記感光材料を前記発色現像槽に送り込むとともに前記発色現像液に浸漬させながら搬送する搬送部とを備えた現像処理装置において、
前記搬送部近傍に赤外線照射手段を配置するとともに、前記赤外線照射手段により前記感光材料に向けて前記感光材料を加熱するように赤外線を照射する点にある。
【0010】
本構成のごとく、感光材料に向けて赤外線を照射して感光材料及び感光材料近傍の発色現像液の温度を上昇させることにより、発色現像処理を促進させることができる。その結果、発色現像処理に要する時間は従来よりも短くて済み、発色現像液中の搬送速度を上げることや搬送経路を短くすることができる。しかも、感光材料に照準を合わせた加熱を行うので、発色現像液の蒸発を抑制することができ、また発色現像槽の耐熱性の問題も回避することができる。このように、従来の装置に対して赤外線照射手段を配置する簡単な構成により、迅速な現像処理を図ることができる。
【0011】
本発明に係る現像処理装置の第二特徴構成は、前記搬送部近傍の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段により検出された温度に基づいて前記赤外線照射手段を制御する照射制御手段とを備えている点である。
【0012】
特に赤外線照射手段が発色現像液に浸漬されている場合、本構成により、感光材料が搬送される搬送部近傍の発色現像液の温度を所定の温度、例えば発色現像処理のための最適温度に保持することができる。具体的には、温度検出手段により検出された温度が前記最適温度より低い温度であれば赤外線照射を行い、逆に最適温度より高ければ赤外線照射は停止しておく。これにより、搬送部近傍の発色現像液の温度を、つまり、感光材料の表面とこの表面に接している発色現像液の部分だけを最適温度に保持することができ、発色現像液を過度に加熱させることがなくなり、発色現像液の蒸発が抑制される。
【0013】
本発明に係る現像処理装置の第三特徴構成は、前記赤外線照射手段が前記発色現像液に送り込まれる直前に配置されている点にある。
【0014】
本構成によれば、赤外線照射手段は発色現像液に送り込まれる直前に配置されているのであるから、発色現像液が加熱されることはなく、したがって赤外線照射により発色現像液を蒸発させることはない。また、感光材料に向けて赤外線を直接照射して加熱し、発色現像液へ浸漬させることにより、発色現像処理を促進させることができ、処理に要する時間を短縮化することができる。
本発明によるその他の特徴及び利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、現像処理装置1は、感光材料としてのロール状の印画紙Pを収納する印画紙マガジン2と、印画紙マガジン2から引き出され、カッタ3で切断された矩形の印画紙Pにレーザエンジン4aなどで画像を露光処理する露光部4と、露光処理された印画紙Pを現像処理するための複数の処理槽を備えた現像処理部5と、現像処理済みの印画紙Pを乾燥させる乾燥処理部とを備えている。
【0016】
現像処理部5は、印画紙Pを発色現像液(CD)で処理する発色現像槽51と、印画紙Pを漂白定着液(BF)で処理する漂白定着槽52と、印画紙Pを安定処理液(STB)で処理する安定処理槽53とからなり、各槽には印画紙Pを各処理液内で搬送ローラによって搬送する搬送ラック10が設置されている。また、乾燥処理部は、印画紙Pを上方の出口に向けて搬送するための複数の搬送ローラ7を備えた乾燥ラック6、乾燥ラック6に温風を送り込むブロワ8などを備えている。
【0017】
現像処理部5の詳細な構成を述べると、印画紙Pの搬送方向の上流側から下流側に向けて、発色現像液を貯えた1つの発色現像槽51、漂白定着液を貯えた1つの漂白定着槽52、及び、安定処理液を貯えた4つの安定処理槽53をこの順で備えている。そして、搬送ラック10の下方部位を構成する液中ラック10Aは、その略全体が処理液中に浸漬され、他方、搬送ラック10の上方部位を構成するオーバーヘッドラック10Bは各処理液の水平な液面より上方に位置して、印画紙Pを下流側の液中ラック10Aに手渡す構成となっている。
【0018】
図2に発色現像槽51と、発色現像槽51内に配置された液中ラック10Aの一部10a(以下、液中搬送部と称する)、発色現像槽に感光材料を送り込むオーバーヘッドラック10Bの一部であるフィードラック10bの拡大図が示されている。この液中搬送部10aとフィードラック10bから搬送部が構成される。図2に示すように、液中搬送部10aの近傍に感光材料の搬送方向に沿って、赤外線照射手段としての遠赤外線ヒータ9が左右両側に夫々3個ずつ配置されている。これらの遠赤外線ヒータ9の照射方向は液中搬送部10aに向けられている。また、遠赤外線ヒータ9夫々に温度検出手段としての温度センサSが隣接して配置されており、これにより液中搬送部10a近傍の発色現像液の温度を検出することができる。遠赤外線ヒータ9にはその表面をガラスで被覆するなどの防水加工が施されており、液体中においても遠赤外線照射を行うことができる。なお、赤外線照射手段が感光材料に照射する波長は、感光材料が反応しない波長、例えば750nm以上の波長が用いられる。
【0019】
遠赤外線ヒータ9による照射は、夫々隣接する温度センサSにより検出される温度に基づいて、照射制御手段としての制御装置11により制御される。例えば、発色現像処理が最も促進される温度T(以下、最適温度と称する)を基準として、隣接する温度センサSにより検出される温度が、この最適温度Tより低い温度であれば遠赤外線照射をして加熱し、逆に最適温度より高ければ遠赤外線照射を停止するように制御される。これにより、液中搬送部10a近傍の発色現像液の温度は最適温度Tに保持されるので、発色現像処理が促進され、処理に要する時間を短縮化することができ、搬送速度を上げるなどして迅速な現像処理を図ることができる。また、発色現像液全体を過度に加熱させることがなくなり、発色現像液の蒸発が抑制される。なお、上述したように温度検出手段を赤外線照射手段に隣接して夫々配置するのではなく、例えば、液中搬送部近傍かつ赤外線照射手段の間に配置しても良い。また、温度検出手段に基づく赤外線照射手段の照射制御は、上述したように赤外線照射手段夫々で行うのではなく、いくつかの赤外線照射手段を単位として行っても良い。
【0020】
上述の実施の形態においては、遠赤外線ヒータ9を発色現像槽51の発色現像液中に配置したが、図3に示すように、印画紙Pが発色現像液に送り込まれる直前の位置に遠赤外線ヒータ9’を配置しても良い。この場合、遠赤外線照射により発色現像液が加熱されることはなく、したがって遠赤外線照射により発色現像液を蒸発させることはない。また、感光材料に向けて遠赤外線を直接照射して加熱することにより、発色現像処理が促進され、処理に要する時間を短縮化することができる。
勿論、赤外線照射手段を発色現像液に送り込まれる直前及び発色現像液中の両方に配置してもよい。
【0021】
なお、上記のように赤外線照射手段を感光材料が発色現像液に送り込まれる直前に配置した場合、赤外線照射手段により常時赤外線を照射していると、一定の間隔を開けて搬送される感光材料の間から赤外線が漏れてしまい、その結果、照射先にある部材が加熱され、損傷を受ける可能性がある。このため、赤外線照射手段の照射範囲に対して感光材料の搬送方向の直前及び直後に光センサ対を夫々設置し、照射範囲における感光材料の存否に基づき、赤外線を照射するように制御しても良い。また、赤外線照射手段から見て感光材料より遠方に保護部材を置くことにより、これを保護することもできる。
【0022】
本発明による現像処理装置の適用例としては、メモリカードから写真プリントを作製する顧客が強く望む迅速写真プリント出力に対処するため、特に撮影画像を露光された印画紙Pを現像処理する現像処理装置が最適であるが、もちろん印画紙P以外の感光材料、例えば写真フィルムを現像処理する現像処理装置にも本発明の特徴を適用してもよい。
【0023】
本発明は、発色現像槽に対して適用したが、発色現像槽以外の処理槽、すなわち漂白定着槽や安定処理槽に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る現像処理装置の断面模式図
【図2】発色現像槽の拡大断面模式図
【図3】別実施形態における発色現像槽の拡大断面模式図
【符号の説明】
【0025】
P:印画紙(感光材料)
S:温度センサ(温度検出手段)
51:発色現像槽
10a:液中搬送部(搬送部)
10b:フィードラック(搬送部)
9,9’:遠赤外線ヒータ(赤外線照射手段)
11:制御装置(照射制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光処理済の感光材料を発色現像する発色現像液を貯えた発色現像槽と、前記感光材料を前記発色現像槽に送り込むとともに前記発色現像液に浸漬させながら搬送する搬送部とを備えた現像処理装置において、
前記搬送部近傍に赤外線照射手段を配置するとともに、
前記赤外線照射手段により前記感光材料に向けて前記感光材料を加熱するように赤外線を照射する現像処理装置。
【請求項2】
前記搬送部近傍の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出された温度に基づいて前記赤外線照射手段を制御する照射制御手段とを備えた請求項1に記載の現像処理装置。
【請求項3】
前記赤外線照射手段が前記発色現像液に送り込まれる直前に配置されている請求項1に記載の現像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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