説明

現像剤搬送装置および画像形成装置

【課題】本発明は、感光体ドラム等の供給対象に対して十分に現像剤を供給することができる現像剤搬送装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】現像剤搬送装置(トナー供給装置7)は、現像剤(トナーT)を収容し、供給対象(感光体ドラム3)に向けて開口する供給口71Dを有した現像剤ケース(カートリッジケース71)と、複数の搬送電極で進行波状の電界を形成することで、前記現像剤ケース内に収容された現像剤を前記供給対象に向けて搬送する現像剤搬送体(トナー搬送体73)と、を備えている。そして、前記現像剤搬送体は、前記供給対象の移動方向において互いに異なる位置になるように、前記現像剤を前記供給対象に供給可能な位置において複数配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行波電界を利用して現像剤を搬送する現像剤搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、進行波電界を利用して現像剤を搬送する現像剤搬送装置は、多数本の線状の搬送電極が一列に配列された搬送体を有しており、この搬送体の各搬送電極に対して多相の交流電圧を順次印加することで進行波電界を形成し、帯電した現像剤を搬送する。具体的に、例えば負極性に帯電された現像剤は、複数の搬送電極のうち正の極となる搬送電極上に一塊となって保持され、複数の搬送電極の正負が交互に切り替わることによって、搬送体上を複数の現像剤の塊が互いに所定の間隔を空けながら搬送される。
【0003】
このような現像剤搬送装置としては、従来、液体トナー(液体中に現像剤の微粒子を分散させたもの)を搬送するものが知られている(特許文献1参照)。この現像剤搬送装置では、所定速度で回転する感光体ドラムに対して1つの搬送体を配置しており、搬送体で搬送される液体トナーの塊は、搬送体上における感光体ドラムと最も近接した供給位置において、感光体ドラムに引き付けられて感光体ドラムに供給されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−31427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来技術では、液体トナーを構成する液体の粘度が高いことから、搬送スピードが感光体ドラムの回転速度よりも極めて遅くなる場合があった。そして、この場合には、供給位置に液体トナーの塊が到達していないときに感光体ドラムの所定位置が供給位置を通過すると、感光体ドラム上に液体トナーが供給されない部分ができ、むらが発生するという問題があった。なお、このような問題は、粉状の現像剤であっても、感光体ドラムの回転スピードを上げると同じように発生する可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、感光体ドラム等の供給対象に対して十分に現像剤を供給することができる現像剤搬送装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、帯電した現像剤を、移動する供給対象に供給する現像剤搬送装置において、前記現像剤を収容し、前記供給対象に向けて開口する供給口を有した現像剤ケースと、複数の搬送電極を備え、これらの搬送電極で進行波状の電界を形成することで、前記現像剤ケース内に収容された現像剤を前記供給対象に向けて搬送する現像剤搬送体と、を備え、前記現像剤搬送体が、前記供給対象の移動方向において互いに異なる位置になるように、前記現像剤を前記供給対象に供給可能な位置において複数配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、現像剤搬送体が供給対象の移動方向において互いに異なる位置になるように複数配置されているので、例えば、1つ目の現像剤搬送体で現像剤を供給対象に対して供給できなかった場合であっても、2つ目以降の現像剤搬送体で現像剤を供給対象に供給することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現像剤搬送体を供給対象の移動方向において互いに異なる位置になるように複数配置することで、複数の現像剤搬送体の少なくとも1つで現像剤を供給対象に供給することができるので、供給対象に対して十分に現像剤を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を示す側面図であり、図2はトナー供給装置の構造を示す断面図である。また、図3はトナー搬送体を示す平面図(a)と、断面図(b)であり、図4は各給電部から出力される電圧の波形を示す図である。さらに、図5は、トナーの搬送状態を示す断面図であり、時刻t1のときの状態を示す断面図(a)と、時刻t2のときの状態を示す断面図(b)と、時刻t3のときの状態を示す断面図(c)である。
【0011】
<レーザプリンタ>
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1は、用紙搬送機構2と、供給対象の一例としての感光体ドラム3と、帯電器4と、スキャナユニット5と、現像剤搬送装置の一例としてのトナー供給装置7と、制御装置8とを備えている。なお、図示は省略するが、レーザプリンタ1には、給紙トレイや定着装置などの公知の構成が適宜設けられている。
【0012】
用紙搬送機構2は、前記給紙トレイから用紙Pを搬送する公知の機構であり、複数のローラ(例えばレジストローラ21)を介して感光体ドラム3の転写位置に用紙Pを搬送する。
【0013】
感光体ドラム3、帯電器4およびスキャナユニット5は、公知の構成である。簡単に説明すると、感光体ドラム3の表面3Aは、帯電器4により一様に負帯電された後、スキャナユニット5からのレーザビームLBの高速走査により露光される。これにより、露光された部分の電位が変化して、画像データに基づく静電潜像が形成される。次いで、トナー供給装置7から感光体ドラム3の静電潜像に対して現像剤の一例としてのトナーT(図2参照)が供給され、このトナーTが感光体ドラム3の表面3A上で選択的に担持されることによって、トナー像が形成される。その後、感光体ドラム3と転写ローラ22とは、用紙Pを両者間で挟持して搬送するように回転駆動され、この際に感光体ドラム3の表面3Aに担持されているトナー像が転写ローラ22に引き寄せられることで用紙P上に転写される。
【0014】
<トナー供給装置>
トナー供給装置7は、図2に示すように、現像剤ケースの一例としてのカートリッジケース71と、アジテータ72と、現像剤搬送体の一例としてのトナー搬送体73とを備えている。
【0015】
カートリッジケース71は、一枚の上壁71Aと、四枚の側壁71Bと、一枚の底壁71Cとを備えて構成されており、その内部に、ポリエステルを主成分とする負帯電性、非磁性1成分の黒色の液体状のトナーTを収容している。ここで、液体状のトナーTとしては、公知のものを採用でき、例えば、イソパラフィン系溶剤、高級脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の分散媒に、着色剤と樹脂、荷電制御剤を加えて分散したものを用いることができる。上壁71Aは、平面視にて長方形状の板状部材であって、水平に配置されている。そして、この上壁71Aの適所には、感光体ドラム3と対向する位置に配置される供給口71Dが形成されている。底壁71Cは、その一部がトナー搬送体73によるトナーTの搬送方向下流側に向かうにつれて上方に傾斜するように形成されており、これにより、カートリッジケース71内のトナーTが、トナー搬送体73の上流側の端部に集められる。
【0016】
アジテータ72は、カートリッジケース71内の最深部に回転可能に設けられており、カートリッジケース71内に溜まったトナーTを攪拌する。なお、トナーTは液中に電界が形成された時に、電気泳動により正極性側に移動するものとする。
【0017】
トナー搬送体73は、カートリッジケース71内に配設されており、図3(b)に示すように、合成樹脂製の板状部材である支持板731と、支持板731上に配設される複数の搬送電極732と、支持板731の搬送電極732が配設される側を被覆するコーティング膜733とを備えている。ここで、コーティング膜733としては、例えば合成樹脂であるナイロン製のコーティング膜を採用できる。そして、このコーティング膜733の表面が、トナーTを搬送する搬送面TSとなっている。
【0018】
搬送電極732は、図3(a)に示すように、金属薄膜からなる線状の配線パターンであって、トナーTの搬送方向において等間隔に配列されるとともに、トナーTの搬送方向と直交する方向(感光体ドラム3の軸方向)に沿うように延びて、互いに平行に配置されている。そして、図3(b)に示すように、各搬送電極732には、それぞれ異なる位相の電圧を出力する第1給電部VA、第2給電部VB、第3給電部VCおよび第4給電部VDが適宜接続されている。詳しくは、第1給電部VA、第2給電部VB、第3給電部VCおよび第4給電部VDは、各搬送電極732に対して、搬送方向上流側から順にこの順で繰り返し接続されている。言い換えると、各搬送電極732は、3本置きに、同一の給電部(例えば第1給電部VA)に接続されている。なお、以下の説明においては、便宜上、第1給電部VAが接続された搬送電極732を「搬送電極EA」、第2給電部VBが接続された搬送電極732を「搬送電極EB」、第3給電部VCが接続された搬送電極732を「搬送電極EC」、第4給電部VDが接続された搬送電極732を「搬送電極ED」とも呼ぶこととする。
【0019】
各給電部VA〜VDは、レーザプリンタ1内に配設される制御装置8によって適宜制御されることで、図4に示すような波形の電圧を出力する。すなわち、各給電部VA〜VDから出力される電圧は、それぞれ同一の波形であるが、それぞれ位相が90°ずつずれている。具体的には、第1給電部VA、第2給電部VB、第3給電部VC、第4給電部VDの順で、電圧の波形の位相が、90°ずつ遅れている。そして、このように制御装置8で制御された各給電部VA〜VDによって各搬送電極732に進行波状の電圧が印加され、これにより、搬送面TS上にて、進行波状の電界が形成される。
【0020】
具体的には、図4における時刻t1においては、中間電位「−500V」に対して「−550V」を負、「−450V」を正とすると、第1給電部VAおよび第4給電部VDから負の電圧が出力され、第2給電部VBおよび第3給電部VCから正の電圧が出力される。これにより、図5(a)に示すように、負の搬送電極EAと正の搬送電極EBとの間において搬送方向と逆向きとなる電界EF1が形成されるとともに、正の搬送電極ECと負の搬送電極EDとの間において搬送方向に向かう電界EF2が形成される。そのため、正の搬送電極EB,EC周りに負極性のトナーTが多く集められる。
【0021】
図4に示すように、時刻t2になると、第1給電部VAおよび第2給電部VBから負の電圧が出力され、第3給電部VCおよび第4給電部VDから正の電圧が出力される。これにより、図5(b)に示すように、負の搬送電極EBと正の搬送電極ECとの間に電界EF1が形成されることで、時刻t1において搬送電極EB,EC周りにあったトナーTが今回正となった搬送電極EC,ED周りに移動する。同様にして、時刻t3になると(図4参照)、図5(c)に示すように、負の搬送電極ECと正の搬送電極EDとの間に電界EF1が形成されることで、時刻t2において搬送電極EC,ED周りにあったトナーTが今回正となった搬送電極ED,EA周りに移動する。以上のような動作を繰り返すことで、トナーTが搬送面TS上で搬送される。すなわち、トナーTの搬送は、正の搬送電極周りで多量に保持されたトナーTの移動によって主に行われ、これにより、多量のトナーTは所定の間隔を空けて搬送されるようになっている(図5(a),(c)参照)。
【0022】
以上のように構成されるトナー搬送体73は、図2に示すように、複数の搬送体、すなわち第1トナー搬送体73Aおよび第2トナー搬送体73Bを備えて構成されており、各トナー搬送体73A,73Bは、感光体ドラム3の回転方向において互いに異なる位置になるように、感光体ドラム3に対してトナーTを供給可能な位置に配置されている。また、各トナー搬送体73A,73Bには、前述した4つの給電部VA〜VDからなる給電装置VMが1つずつ接続されており、各トナー搬送体73A,73Bに印加される電圧が制御装置8によって制御されるようになっている。
【0023】
第1トナー搬送体73Aは、略L字状に屈曲形成されており、カートリッジケース71の最深部側から上方に向かうにつれて供給口71D側に傾斜する傾斜部A1と、傾斜部A1の搬送方向下流側の端部から横方向に延びる水平部A2とを備えている。具体的に、水平部A2は、感光体ドラム3の径方向に直交するように配置されており、トナーTの搬送方向における略中央部が、感光体ドラム3の表面3Aに最接近する供給位置PPとなっている。
【0024】
ここで、「供給位置」とは、現像剤搬送体の搬送面のうち、現像剤が供給対象の表面に引き寄せられる(飛び移る)ことが可能な位置をいう。そのため、例えば、供給対象が平板状のものであり、その面方向に沿って移動する場合には、現像剤の搬送面のうち平板状の供給対象の表面と平行となる搬送面の任意の箇所を供給位置として設定できる。
【0025】
第2トナー搬送体73Bは、第1トナー搬送体73Aと略同様に形成されており、第1トナー搬送体73Aよりも感光体ドラム3の移動方向下流側に配置されている。すなわち、第1トナー搬送体73Aと略同様の傾斜部B1および水平部B2を有し、その水平部B2が感光体ドラム3の径方向に直交するように配置されている。そして、水平部B2のうち感光体ドラム3の表面3Aに最接近する略中央部が、供給位置PPとなっている。
【0026】
以上のように構成される第1トナー搬送体73Aおよび第2トナー搬送体73Bにおいては、図6(a)に示すように、それぞれの供給位置PPに対する各搬送電極732の位置関係が同じ関係となっている。すなわち、第1トナー搬送体73Aの水平部A2において、供給位置PPを基準にして2つの搬送電極732が対称に配設されているのに対して、第2トナー搬送体73Bの水平部B2においても、供給位置PPを基準にして2つの搬送電極732が対称に配設されている。
【0027】
また、隣接する第1トナー搬送体73Aと第2トナー搬送体73Bとの間には、感光体ドラム3の回転方向上流側に位置する第1トナー搬送体73Aから回転方向下流側に位置する第2トナー搬送体73BへのトナーTの落下を抑制するガード部材9が配設されている。具体的に、このガード部材9は、平板状の部材であり、各傾斜部A1,B1と平行となるように各傾斜部A1,B1の間に配置される。また、ガード部材9の上端は、第1トナー搬送体73Aの水平部A2の搬送方向下流側の端部よりも第2トナー搬送体73B側に位置するように配置される。さらに、ガード部材9の下端は、第2トナー搬送体73Bの下端よりも第1トナー搬送体73A側に位置するように配置される。
【0028】
<制御装置>
図2に示すように、制御装置8は、各トナー搬送体73A,73Bにそれぞれ接続される各給電装置VM(給電部VA〜VD)を適宜制御することで、トナーTをそれぞれの供給位置PPに搬送させるタイミングを適宜制御している。具体的に、制御装置8は、図6(a)および(b)に示すように、感光体ドラム3の表面3Aの移動方向における任意の部位31が、2つのトナー搬送体73A,73Bにおけるそれぞれの供給位置PPに到達したときに、前記部位31に対するトナーTの位置が各トナー搬送体73A,73Bにおいて異なるように、各給電装置VM内の各給電部VA〜VDを制御している。より具体的に、制御装置8は、前記部位31が第1トナー搬送体73Aの供給位置PPに到達したときにトナーT(供給位置PPに最も近いトナーT;以下、「近傍トナーT」ともいう)が前記部位31から最も離れた配置となっている場合には、前記部位31が第2トナー搬送体73Bの供給位置PPに到達したときに近傍トナーTが前記部位31に最も近づいた配置となるように、各給電装置VMを制御する。すなわち、制御装置8は、前記部位31が各トナー搬送体73A,73B上の供給位置PPに到達したときにおいて、各供給位置PPに周期的に供給されるトナーTが互いに半周期ずれるように(各トナーTの位相が180°ずれるように)、各給電装置VMを制御する。
【0029】
なお、前述のように、感光体ドラム3の任意の部位31が各供給位置PPに到達したときにおける部位31に対する近傍トナーTの位置は、感光体ドラム3の回転速度、トナーTの搬送速度、各供給位置PP間の距離などの影響を大きく受ける。そのため、このようなパラメータの違いにより、電圧の位相のずらし方などを適宜設定すればよい。
【0030】
次に、本実施形態に係るトナー供給装置7による作用について説明する。参照する図面において、図6は感光体ドラムの第1の部位が各供給位置に到達した状態を示す断面図(a),(b)であり、図7は感光体ドラムの第2の部位が各供給位置に到達した状態を示す断面図(a),(b)である。また、図8は感光体ドラムの第3の部位が各供給位置に到達した状態を示す断面図(a),(b)である。
【0031】
図6(a)に示すように、感光体ドラム3の表面3Aにおける任意の部位31(以下、「第1の部位31」ともいう)が第1トナー搬送体73Aの供給位置PPに到達した際には、第1トナー搬送体73A上の近傍トナーTは第1の部位31から最も離れた配置となっている。これにより、第1トナー搬送体73Aから第1の部位31に対してはトナーTがほとんど供給されずに、そのまま第1の部位31が供給位置PPを通過する。
【0032】
その後、図6(b)に示すように、第1の部位31が第2トナー搬送体73Bの供給位置PPに到達すると、第2トナー搬送体73B上の近傍トナーTは第1の部位31に最も近い位置、すなわち供給位置PPに位置している。これにより、第1の部位31に多くのトナーTが供給される。そのため、第1の部位31に供給されるべきトナーTの量を「10」とすると、第1トナー搬送体73Aから第1の部位31に供給されるトナー量と、第2トナー搬送体73Bから第1の部位31に供給されるトナー量との割合は、例えば「0:10」となる。
【0033】
次に、図7を参照して、第1の部位31から感光体ドラム3の表面3Aの移動方向後方に所定距離だけ離れた第2の部位32へのトナーTの供給について説明する。図7(a)に示すように、第2の部位32が第1トナー搬送体73Aの供給位置PPに到達した際には、第1トナー搬送体73A上の近傍トナーTは供給位置PPから最も離れた位置(図6(a)参照)よりも供給位置PP側に寄った位置に位置している。これにより、第1トナー搬送体73Aから第2の部位32に対しては少量のトナーTが供給される。
【0034】
その後、図7(b)に示すように、第2の部位32が第2トナー搬送体73Bの供給位置PPに到達すると、第2トナー搬送体73B上の近傍トナーTは供給位置PPよりも少しトナー搬送方向下流側に位置している。これにより、第2の部位32には、第1トナー搬送体73Aで供給された量よりも多量のトナーTが供給される。そのため、第1トナー搬送体73Aから第2の部位32に供給されるトナー量と、第2トナー搬送体73Bから第2の部位32に供給されるトナー量との割合は、例えば「2:8」となる。
【0035】
続いて、図8を参照して、第2の部位32から感光体ドラム3の表面3Aの移動方向後方に所定距離だけ離れた第3の部位33へのトナーTの供給について説明する。図8(a)に示すように、第3の部位33が第1トナー搬送体73Aの供給位置PPに到達した際には、第1トナー搬送体73A上の近傍トナーTは図7(a)の位置よりも供給位置PP側に寄った位置に位置している。これにより、第1トナー搬送体73Aから第3の部位33に対しては、図7(a)の状態において第2の部位32に供給されるトナーTの量よりも多量のトナーTが供給される。
【0036】
その後、図8(b)に示すように、第3の部位33が第2トナー搬送体73Bの供給位置PPに到達すると、第2トナー搬送体73B上の近傍トナーTは図7(b)の位置よりも少しトナー搬送方向下流側に位置している。これにより、第3の部位33には、図7(b)の状態において第2の部位32に供給されるトナーTの量よりも少量のトナーTが供給される。そのため、第1トナー搬送体73Aから第3の部位33に供給されるトナー量と、第2トナー搬送体73Bから第3の部位33に供給されるトナー量との割合は、例えば「5:5」となる。
【0037】
以後は、前述の動作が繰り返されることで、各トナー搬送体73A,73Bから感光体ドラム3の表面3Aに供給されるトナー量の割合は、例えば「8:2」→「10:0」→「8:2」→「5:5」→「2:8」→「0:10」→・・・というように推移する。これにより、感光体ドラム3の表面3Aに均一にトナーTが供給される。
【0038】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
2つのトナー搬送体73を感光体ドラム3の表面3Aの移動方向において互いに異なる位置になるように配置することで、2つのトナー搬送体73のいずれか1つでトナーTを感光体ドラム3に供給することができるので、感光体ドラム3に対して十分にトナーTを供給することができる。
【0039】
感光体ドラム3の表面3Aにおける任意の各部位31〜33が、各トナー搬送体73A,73Bにおけるそれぞれの供給位置PPに到達したときに、各部位31〜33に対するトナーTの位置が各トナー搬送体73A,73Bにおいて異なるように、制御装置8が各給電装置VMを制御するので、感光体ドラム3の表面3Aに均一にトナーTを供給することができる。
【0040】
各トナー搬送体73A,73Bの間にガード部材9を設けたので、第1トナー搬送体73Aの搬送方向下流側の端縁から落下したトナーTが第2トナー搬送体73B上に落ちることが抑制される。そのため、第2トナー搬送体73BによるトナーTの搬送を良好に維持することができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、各給電装置VMから出力される電圧の位相をずらすことで各供給位置PPにおける感光体ドラム3の部位31とトナーTとの位置をずらすようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、第1トナー搬送体73Aの供給位置PPに対する各搬送電極732の位置と、第2トナー搬送体73Bの供給位置PPに対する各搬送電極732の位置とを搬送方向においてずらすことで、各供給位置PPにおける感光体ドラム3の部位31とトナーTとの位置をずらしてもよい。
【0042】
前記実施形態では、各給電装置VMから出力する電圧の位相をずらしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、各供給位置PPにおける感光体ドラム3の部位31とトナーTとの位置がずれるのであれば、電圧の位相はずらさなくてもよい。
前記実施形態では、液体状のトナーTに対して本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、粉状のトナーに対して本発明を適用してもよい。
【0043】
前記実施形態では、トナー搬送体73を2つ設けたが、本発明はこれに限定されず、3つ以上設けてもよい。なお、各トナー搬送体における各トナーの位相のずれは同じにするのが望ましい。すなわち、例えばトナー搬送体を3つ設けた場合には各トナー搬送体における各トナーの位相を120°ずつずらし、例えばトナー搬送体を4つ設けた場合には各トナー搬送体における各トナーの位相を90°ずつずらすのが望ましい。
【0044】
前記実施形態では、レーザプリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
前記実施形態では、供給対象として感光体ドラム3を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば平板状またはベルト状の感光体を採用してもよい。
前記実施形態では、負極性に帯電するトナーTを採用したが、本発明はこれに限定されず、正極性に帯電するトナーを採用してもよい。なお、この場合は、感光体ドラム等の帯電状態を前記実施形態とは逆にすればよい。
【0045】
前記実施形態では、感光体ドラム3の表面3Aの移動方向とトナーTの搬送方向(詳しくは、水平部A2,B2上での搬送方向)を同じ方向に設定したが、本発明はこれに限定されず、逆方向であってもよい。なお、この場合、ガード部材は、感光体ドラムの表面の移動方向下流側に位置する現像剤搬送体から移動方向上流側に位置する現像剤搬送体へのトナーの落下を抑制するように配設すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】トナー供給装置の構造を示す断面図である。
【図3】トナー搬送体を示す平面図(a)と、断面図(b)である。
【図4】各給電部から出力される電圧の波形を示す図である。
【図5】トナーの搬送状態を示す断面図であり、時刻t1のときの状態を示す断面図(a)と、時刻t2のときの状態を示す断面図(b)と、時刻t3のときの状態を示す断面図(c)である。
【図6】感光体ドラムの第1の部位が各供給位置に到達した状態を示す断面図(a),(b)である。
【図7】感光体ドラムの第2の部位が各供給位置に到達した状態を示す断面図(a),(b)である。
【図8】感光体ドラムの第3の部位が各供給位置に到達した状態を示す断面図(a),(b)である。
【図9】トナー搬送体の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 レーザプリンタ
3 感光体ドラム
3A 表面
7 トナー供給装置
8 制御装置
9 ガード部材
31 第1の部位
32 第2の部位
33 第3の部位
71 カートリッジケース
71D 供給口
73 トナー搬送体
73A 第1トナー搬送体
73B 第2トナー搬送体
731 支持板
732 搬送電極
733 コーティング膜
A1 傾斜部
A2 水平部
B1 傾斜部
B2 水平部
PP 供給位置
T トナー
VA 第1給電部
VB 第2給電部
VC 第3給電部
VD 第4給電部
VM 給電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した現像剤を、移動する供給対象に供給する現像剤搬送装置において、
前記現像剤を収容し、前記供給対象に向けて開口する供給口を有した現像剤ケースと、
複数の搬送電極を備え、これらの搬送電極で進行波状の電界を形成することで、前記現像剤ケース内に収容された現像剤を前記供給対象に向けて搬送する現像剤搬送体と、を備え、
前記現像剤搬送体が、前記供給対象の移動方向において互いに異なる位置になるように、前記現像剤を前記供給対象に供給可能な位置において複数配置されていることを特徴とする現像剤搬送装置。
【請求項2】
前記供給対象の表面の移動方向における任意の部位が、前記複数の現像剤搬送体におけるそれぞれの供給位置に到達したときに、前記部位に対する現像剤の位置が各現像剤搬送体において異なるように、前記各現像剤搬送体の搬送電極が搬送方向にずらされていることを特徴とする請求項1に記載の現像剤搬送装置。
【請求項3】
前記供給対象の移動方向において隣接する各現像剤搬送体の間には、現像剤搬送体から隣接する現像剤搬送体への現像剤の落下を抑制するガード部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の現像剤搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の現像剤搬送装置と、
前記現像剤搬送体に電力を供給する給電部と、
前記供給対象の表面の移動方向における任意の部位が、前記複数の現像剤搬送体におけるそれぞれの供給位置に到達したときに、前記部位に対する現像剤の位置が各現像剤搬送体において異なるように、前記給電部を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−80290(P2009−80290A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249294(P2007−249294)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】