説明

現像装置および画像形成装置

【課題】 トナーの劣化を抑制しつつ,現像ローラと現像残トナーとの付着力を弱めて,現像ローラから現像残トナーを確実に回収することのできる現像装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 現像ローラ140からみて,シール部材143の下流であって供給ローラ141の上流の位置に,現像ローラ140と隙間をあけて飛翔対象部材101を配置する。現像ローラ140と飛翔対象部材101との間隔は,現像ローラ140と感光体110との間隔と同程度である。そして,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に形成される電界の電界強度を,現像ローラ140と感光体110との間の画像部における電界の電界強度と,背景部における電界の電界強度の間となるように,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,非磁性一成分のトナーを用いた非接触式現像方式の現像装置及び画像形成装置に関する。さらに詳細には,現像ローラからの現像残トナーの回収性を向上させることのできる現像装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には,現像ローラ上の非磁性一成分のトナーを感光体上に飛翔させて現像する非接触式現像方式のものがある。このような画像形成装置において,現像後に現像ローラに付着している現像残トナーは回収部材により回収される。そして,現像残トナーの回収は,画像の品質を確保する上で重要である。次回の現像のため再び現像ローラにトナーを供給する際のトナーの供給量に影響を及ぼすためである。そして,トナーの供給量のばらつきはノイズとなって画像に表れるので,画像の品質を悪化させることとなる。
【0003】
また,現像残トナーは,現像ローラにフィルミングを引き起こすおそれがある。ここでいうフィルミングとは,溶融したトナーが現像ローラに付着することをいう。このフィルミングを起こした現像ローラは,その溶融したトナーが付着している箇所において適正な現像を行うことができず,結果として画像品質を悪化させる。
【0004】
このため,現像残トナーを回収する機能を高めるための方策が講じられている。そのための方策として,現像残トナーと現像ローラとの付着力を弱めることや,回収部材を強く押し当てるなどして回収する力を高めることなどが挙げられる。例えば,特許文献1では,現像残トナーから電荷を奪うために一定電圧を印加された現像部掬いシートを有する現像装置及び画像形成装置が開示されている。特許文献1によれば,各色のトナー毎にそれらの帯電量に応じた一定電圧を現像部掬いシートに印加することにより,現像ローラに接する導電性の現像部掬いシートが現像残トナーの帯電量を減少させて付着力を弱めるとしている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−143220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし,特許文献1の現像装置及び画像形成装置では,現像部掬いシートにバイアス電圧を印加して使用し続けると,トナーの帯電量が低下する傾向がある(特許文献1の段落[0074]参照)。このように現像残トナーの回収を繰り返し行うと,トナーに過剰なストレスを与え,トナーの劣化を早めるおそれがある。一方,回収部材を現像ローラに強く押し当てるなど,回収する力を強くすることで現像残トナーを確実に回収することも考えられる。しかし,それでも同様の問題が生じる。このため,現像残トナーになるべくストレスを与えることなく,現像残トナーと現像ローラとの付着力を弱めるようにすることが好ましい。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,トナーの劣化を抑制しつつ,現像ローラと現像残トナーとの付着力を弱めて,現像ローラから現像残トナーを確実に回収することのできる現像装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,像担持体と,現像容器と,前記現像容器の外部に部分的に露出するように前記現像容器の内部に配置され,前記像担持体に非磁性一成分のトナーを付与する現像ローラと,前記現像容器の内部に配置され,前記現像ローラにトナーを供給するトナー供給部材と,前記現像ローラから現像残トナーを回収する現像残トナー回収部材と,前記現像ローラからみて前記像担持体の下流に配置され,前記現像容器からのトナーの漏れを防ぐシール部材とを有する画像形成装置であって,前記現像ローラからみて前記シール部材の下流であって前記現像残トナー回収部材の上流の位置に,前記現像ローラと間隔をおいて配置された飛翔対象部材と,前記飛翔対象部材と前記現像ローラとの間に,現像残トナーを前記現像ローラから前記飛翔対象部材に飛翔させる電界と,現像残トナーを前記飛翔対象部材から前記現像ローラに飛翔させる電界とを交互に繰り返す交番電界を形成する交番電圧を印加する電圧印加部とを有することを特徴とするものである。
【0009】
かかる画像形成装置は,現像ローラと飛翔対象部材との間に交番電界を形成し,現像残トナーを飛翔させることができる。これにより,現像残トナーと現像ローラとの付着力が弱められる。そのため,現像残トナーを現像ローラから確実に回収することができる。
【0010】
上記に記載の画像形成装置において,前記現像容器には,バッファ室と,トナー飛翔室とが形成されており,前記飛翔対象部材が,前記トナー飛翔室の内部に配置され,前記現像残トナー回収部材が,前記バッファ室の内部に配置されているとよい。バッファ室の内部のトナーが飛翔対象部材の箇所における現像残トナーの飛翔を妨げないからである。
【0011】
上記に記載の画像形成装置において,前記バッファ室と前記トナー飛翔室との間に,前記バッファ室と前記トナー飛翔室とを仕切る弁を有するとなおよい。バッファ室の内部のトナーがトナー飛翔室に逆流することがないからである。
【0012】
上記に記載の画像形成装置において,前記飛翔対象部材と前記シール部材とが一体となっていてもよい。シール部材の厚みにより,現像ローラと飛翔対象部材との間隔を一定に保つことができるからである。
【0013】
また,本発明の現像装置は,非磁性一成分のトナーを蓄える現像容器と,前記現像容器の外部に部分的に露出するように前記現像容器の内部に配置された現像ローラと,前記現像容器の内部に配置され,前記現像ローラにトナーを供給するトナー供給部材と,前記現像ローラから現像残トナーを回収する現像残トナー回収部材と,前記現像ローラからみて前記現像残トナー回収部材の上流の位置に配置され,前記現像容器からのトナーの漏れを防ぐシール部材とを有する現像装置であって,前記現像ローラからみて前記シール部材の下流であって前記現像残トナー回収部材の上流の位置に,前記現像ローラと間隔をおいて配置された飛翔対象部材と,前記飛翔対象部材と前記現像ローラとの間に,現像残トナーを前記現像ローラから前記飛翔対象部材に飛翔させる電界と,現像残トナーを前記飛翔対象部材から前記現像ローラに飛翔させる電界とを交互に繰り返す交番電界を形成する交番電圧を印加する電圧印加部とを有することを特徴とするものである。
【0014】
かかる現像装置は,現像ローラと飛翔対象部材との間に交番電界を形成し,現像残トナーを飛翔させることができる。これにより,現像残トナーと現像ローラとの付着力が弱められる。そのため,現像残トナーを現像ローラから確実に回収することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,トナーの劣化を抑制しつつ,現像ローラと現像残トナーとの付着力を弱めて,現像ローラから現像残トナーを確実に回収することのできる現像装置及び画像形成装置が提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,非磁性一成分の非接触式現像方式の現像装置及び画像形成装置について,本発明を具体化したものである。
【0017】
[第1の形態]
[構成]
以下に,第1の形態について説明する。本形態の画像形成装置100は,図1に示すように感光体110と,現像装置180と,制御部191とを有している。現像装置180は,現像ローラ140と,供給ローラ141と,規制ブレード142と,シール部材143と,電圧印加部190と,飛翔対象部材101とを有している。また,現像装置180は,現像容器181を有している。現像容器181には,バッファ室183と,トナー飛翔室184とが形成されている。
【0018】
感光体110は,円筒形状をしており,表面に静電潜像が書き込まれる像担持体である。現像ローラ140は,感光体110の静電潜像にトナーを付与するためのものである。現像ローラ140は,現像容器181の内部に配置されている。そして,現像ローラ140は,現像容器181の外側に部分的に露出している。供給ローラ141は,バッファ室183の内部に収容されたトナーを現像ローラ140に供給するためのものである。そのため,供給ローラ141は,バッファ室183の内部にある。また,同時に現像ローラ140の表面から現像残トナーを回収する現像残トナー回収部材でもある。このため,供給ローラ141は,現像ローラ140とカウンター方向に回転する。また,供給ローラ141は,発泡性弾性部材でできている。
【0019】
規制ブレード142は,現像ローラ140に供給されたトナーをさらに帯電させる一方,トナーの搬送量を規制するためのものである。バッファ室183は,トナーを内部に収容するための容器である。また,シール部材143は,トナーの現像装置180の外部への漏れを防ぐためのものである。そして,シール部材143は,現像ローラ140からみて感光体110との対面箇所より下流の位置にある。
【0020】
本形態の画像形成装置100は,感光体110と現像ローラ140とが接触していない非接触式現像方式で現像を行うものである。このため,現像ローラ140は感光体110に接触しないようにわずかにオフセットして設置されている。この隙間はほぼ130[μm]程度のものである。また,感光体110と現像ローラ140との間には,現像バイアスを印加できるようになっている。なお,本形態では負帯電性のトナーを用いる。
【0021】
飛翔対象部材101は,現像ローラ140からみてシール部材143の下流であって,供給ローラ141の上流の位置にある。また,飛翔対象部材101は,現像ローラ140と対向するように,間隔をおいて配置されている。現像ローラ140と飛翔対象部材101との隙間はほぼ130[μm]程度であり,現像ローラ140と感光体110との隙間とほぼ同程度である。飛翔対象部材101は,現像ローラ140との間に交番電界を形成し,現像残トナーを現像ローラ140と,飛翔対象部材101との間で往復運動させるためのものである。飛翔対象部材101の材質は,ステンレス鋼(SUS)である。トナー飛翔室184は,現像残トナーを前述の往復運動させるための容器である。そのため,飛翔対象部材101は,トナー飛翔室184の内部にある。また,トナー飛翔室184は,バッファ室183と空間的につながっている。
【0022】
電圧印加部190は,現像ローラ140と感光体110との間に現像バイアスを印加するものである。また,電圧印加部190は,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間にも交番電圧を印加する。制御部191は,電圧印加部190により印加される現像バイアスと,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に印加される交番電圧とを制御する他,その他の制御を行うものである。
【0023】
[動作]
ここで,画像形成装置100の動作について説明する。まず,帯電装置により,感光体110の表面を一様に帯電させる。次に,露光装置により,感光体110の表面に静電潜像を形成する。次に,現像ローラ140により,感光体110の静電潜像を現像する。このとき,感光体110と現像ローラ140との間に,現像バイアスとしてゼロ電位を跨ぐ交番電圧が印加される。このため,負に帯電したトナーは現像ローラ140と感光体110との間を飛翔し,感光体110の表面の静電潜像の画像部に付着するのである。
【0024】
一方,現像に供されずに現像ローラ140に付着している現像残トナーは,現像ローラ140からみてシール部材143の下流であって供給ローラ141の上流にある飛翔対象部材101の箇所を通過する。そして,飛翔対象部材101は一定の電圧Vxとなっている。このとき,現像ローラ140には交番電圧が印加されているため,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間にも交番電界が形成された状態となる。よって,現像残トナーは,当該交番電界により現像ローラ140と飛翔対象部材101との間を飛翔して往復する。
【0025】
このように,現像残トナーは飛翔対象部材101の箇所でトナークラウドの状態となる。そして,その状態を経ることにより現像ローラ140と現像残トナーとの間の付着力が弱まる。すなわち,飛翔対象部材101の箇所を通過した現像残トナーは,飛翔対象部材101の箇所を通過する前の現像残トナーよりも現像ローラ140との付着力が弱い。なお,後述するように,現像残トナーが飛翔対象部材101に付着したままとなることはない。また,トナークラウドの状態のトナーが,現像装置180の外部に飛散することがない。飛翔対象部材101が,トナー飛翔室184の内部にあるためである。また,シール部材143があるためである。
【0026】
この後,付着力の弱まった現像残トナーは,供給ローラ141により擦り取られる。こうして,現像残トナーは,現像ローラ140から取り除かれる。一方,現像に供されたトナー像は,転写器により感光体110の表面から紙に転写される。次に,トナーを転写された紙上のトナー像は定着器により定着される。以上により,紙への印刷がなされる。
【0027】
[現像バイアス]
ここで,飛翔対象部材101の箇所において交番電圧を印加されているときのトナーの振舞いの説明に先立ち,現像バイアスを印加されているときのトナーの振舞いについて説明する。
【0028】
図2に,現像バイアスと,感光体110の表面の電位とを示す。現像バイアスは,AC矩形波(実線)である。また,各記号の意味は次のとおりである。
Vmin: 現像バイアスの現像電圧(マイナス側ピーク)
Vmax: 現像バイアスの回収電圧(プラス側ピーク)
Vi : 感光体の表面の画像部電位
Vb : 感光体の表面の背景部電位
Vave: 現像バイアスの時間平均電圧
−Duty: 現像電圧Vminが印加されている時間の割合
【0029】
そして,図2に示した各記号の具体的な値は次のとおりである。なお,現像バイアスの周波数は2[kHz]である。
Vmin = −1000[V]
Vmax = +300[V]
Vi = −50[V]
Vb = −600[V]
Vave = −90[V]
−Duty : 30%
【0030】
感光体110の画像部におけるトナーの振舞いについて説明する。画像部において,印加される有効現像電圧|Vmin−Vi|と,有効回収電圧|Vmax−Vi|と,これらの電圧により画像部の箇所に形成される電界強度は,次式のように
|Vmin−Vi|=950[V] …………(1)
|Vmax−Vi|=350[V] …………(2)
Ei1=7.3[MV/m] …………(3)
Ei2=2.7[MV/m] …………(4)
Ei1:画像部における現像電界強度
Ei2:画像部における回収電界強度
表される。なお,現像ローラ140と感光体110との間隔は130[μm]である。
【0031】
トナーは,現像ローラ140と感光体110との間に形成される交番電界を受けて,現像ローラ140と感光体110との間を飛翔し,往復する。つまり,現像電界強度Ei1の下で,トナーは現像ローラ140から感光体110へ向かって飛翔し,回収電界強度Ei2の下で,トナーは感光体110から現像ローラ140へ向かって飛翔するのである。
【0032】
上記より,画像部においては,現像電界強度Ei1の値7.3[MV/m]は,回収電界強度Ei2の値2.7[MV/m]よりも大きい。つまり,画像部では現像側が優勢となっている。また,画像部電位Viが,時間平均電圧Vaveよりもゼロ電位に近いことからも,画像部では現像側が優勢ということが分かる。このように非対称な交番電界を受けて,トナーは現像ローラ140と感光体110との間を飛翔し,感光体110の表面の画像部に付着する。
【0033】
次に,感光体110の背景部におけるトナーの振舞いについて説明する。背景部において,印加される有効現像電圧|Vmin−Vb|と,有効回収電圧|Vmax−Vb|と,これらの電圧により背景部の箇所に形成される電界強度は,次式のように
|Vmin−Vb|=400[V] …………(5)
|Vmax−Vb|=900[V] …………(6)
Eb1=3.1[MV/m] …………(7)
Eb2=6.9[MV/m] …………(8)
Eb1:背景部における現像電界強度
Eb2:背景部における回収電界強度
表される。なお,現像ローラ140と感光体110との間隔は130[μm]である。
【0034】
トナーは,現像ローラ140と感光体110との間に形成される交番電界を受けて,現像ローラ140と感光体110との間を飛翔し,往復する。つまり,現像電界強度Eb1の下で,トナーは現像ローラ140から感光体110へ向かって飛翔し,回収電界強度Eb2の下で,トナーは感光体110から現像ローラ140へ向かって飛翔するのである。
【0035】
上記より,背景部においては,現像電界強度Eb1の値3.1[MV/m]は,回収電界強度Eb2の値6.9[MV/m]よりも小さい。つまり,画像部とは異なり,背景部では回収側が優勢となっている。また,背景部電位Vbが,時間平均電圧Vaveよりも大きな絶対値であることからも,背景部では回収側が優勢ということが分かる。このように非対称な交番電界を受けて,トナーは現像ローラ140と感光体110との間を飛翔した後,現像ローラ140に回収される。
【0036】
[飛翔対象部材]
ここで,飛翔対象部材101の箇所における現像残トナーの振舞いについて説明する。図3に,本形態の画像形成装置100における感光体110と現像ローラ140と飛翔対象部材101との位置関係を示す。ここで,前述したように,現像ローラ140と感光体110との隙間は130[μm]であり,現像ローラ140と飛翔対象部材101との隙間も130[μm]である。
【0037】
図4に,現像バイアスと,感光体110の表面の電位と,飛翔対象部材101の電位Vxとを示す。ここで,現像バイアス及び感光体110の表面の電位は,図2に示したものと同じ値である。飛翔対象部材101の電位Vxは定電圧であり,感光体110の画像部電位Viと背景部電位Vbとの間の値となっている。図4中の矢印Aは,有効飛翔電圧|Vmin−Vx|である。矢印Bは,有効回収電圧|Vmax−Vx|である。
【0038】
飛翔対象部材101の箇所において,印加される有効飛翔電圧|Vmin−Vx|と,有効回収電圧|Vmax−Vx|と,これらの電圧により飛翔対象部材101の箇所に形成される電界強度は,次式のように
|Vmin−Vx|=600[V] …………(9)
|Vmax−Vx|=700[V] …………(10)
Vx=−400[V]
Ex1=4.6[MV/m] …………(11)
Ex2=5.4[MV/m] …………(12)
Ex1:飛翔対象部材の箇所における飛翔電界強度
Ex2:飛翔対象部材の箇所における回収電界強度
表される。なお,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間隔は前述のように130[μm]である。
【0039】
現像残トナーは,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に形成される交番電界を受けて,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間を飛翔し,往復する。つまり,飛翔電界強度Ex1の下で,現像残トナーは現像ローラ140から飛翔対象部材101へ向かって飛翔し,回収電界強度Ex2の下で,現像残トナーは飛翔対象部材101から現像ローラ140へ向かって飛翔するのである。このとき,負帯電性であるトナーは飛翔対象部材101に付着しないで,現像ローラ140に回収される。飛翔対象部材101の電位Vxは,大きな負の値(−400[V])であるためである。
【0040】
上記より,飛翔対象部材101との間の箇所においては,飛翔電界強度Ex1の値4.6[MV/m]は,回収電界強度Ex2の値5.4[MV/m]よりやや小さい。つまり,飛翔対象部材101ではやや回収側が優勢となっている。このため,現像残トナーは現像ローラ140と飛翔対象部材101との間を往復運動し,トナークラウドの状態となる。そして,現像残トナーは飛翔対象部材101に付着したままとならない。
【0041】
このように画像形成装置100は,現像残トナーを現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に繰り返し飛翔させることにより,現像残トナーと現像ローラ140との間の付着力を弱めるのである。そして,前述のとおり,現像残トナーが飛翔対象部材101に付着したままとなることはない。それは,前述した飛翔電界強度Ex1と回収電界強度Ex2の比較の他に,飛翔対象部材101の電位Vxが時間平均電圧Vaveよりも回収側にきていることからもわかる。なお,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に形成される電界は,現像電界には影響しない。十分に離れているからである。
【0042】
本形態の画像形成装置100における現像ローラ140と感光体110との間に形成される電界と,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に形成される電界との比較について述べる。(3)式,(7)式,(11)式より,
Eb1 < Ex1 < Ei1 …………(13)
である。つまり,飛翔電界強度Ex1は,背景部の現像電界強度Eb1より大きく,画像部の現像電界強度Ei1よりも小さい。
【0043】
また,(4)式,(8)式,(12)式より,
Ei2 < Ex2 < Eb2 …………(14)
である。つまり,回収電界強度Ex2は,画像部の回収電界強度Ei2より大きく,背景部の回収電界強度Eb2よりも小さい。
【0044】
次に,本形態の画像形成装置100における現像ローラ140と感光体110との間に印加される電圧と,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に印加される電圧との比較について述べる。(1)式,(5)式,(9)式より,
|Vmin−Vb| < |Vmin−Vx| < |Vmin−Vi|
である。有効飛翔電圧|Vmin−Vx|(図4の矢印A)は,背景部の有効現像電圧|Vmin−Vb|より大きく,画像部の有効現像電圧|Vmin−Vi|より小さい。
【0045】
また,(2)式,(6)式,(10)式より,
|Vmax−Vi| < |Vmax−Vx| < |Vmax−Vb|
である。つまり,有効回収電圧|Vmax−Vx|(図4の矢印B)は,画像部の有効回収電圧|Vmax−Vi|より大きく,背景部の有効回収電圧|Vmax−Vb|より小さい。なお,これらの大小関係は,現像ローラ140と感光体110との間隔が,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間隔と同じことから,前述の電界強度の関係式と対応している。
【0046】
ここで,本実施の形態の飛翔対象部材を用いた現像残トナーの付着力を弱める実験結果について示す。本実験では,飛翔電界強度Ex1の値を振って現像ローラのフィルミングの度合いを調べた。また,実験にあたり,現像装置を100分間連続運転した後,現像ローラの表面を観察した。現像装置として,コニカミノルタ製カラーレーザプリンタmagicolor5570の現像装置を使用した。飛翔対象部材としては,ステンレス鋼(SUS)を用いた。
【0047】
表1に,現像残トナーを現像ローラから飛翔対象部材に向かわせる飛翔電界強度Ex1と,現像ローラのフィルミングの具合との関係を示す。当該実験の結果,飛翔電界強度Ex1を4[MV/m]以上に設定した場合に,現像ローラのフィルミングを回避することができた。当該電界強度は,現像ローラと飛翔対象部材との間隔を130[μm]として,飛翔対象部材の電位を−450[V]とした場合に現像ローラと飛翔対象部材との間に形成される電界の電界強度に相当する。
【0048】
[表1]
電界強度Ex1 現像ローラのフィルミング
2 ×
3 △
4 ○
5 ○
電界強度Ex1の単位: [MV/m]
フィルミングの度合い: ○=良好,△=多少難あり,×=NG
【0049】
なお,Vx=−450[V]のとき,有効飛翔電圧|Vmin−Vx|と有効回収電圧|Vmax−Vx|の値は,
|Vmin−Vx|=550[V]
|Vmax−Vx|=750[V]
である。
【0050】
ここで,本形態の画像形成装置100の変形例について説明する。本形態では,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間隔を,現像ローラ140と感光体110との間隔と同じとした。しかし,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間隔は変更することができる。ただし,つまり,飛翔電界強度Ex1が(13)式を満たすようにするとともに,回収電界強度Ex2が(14)式を満たすようにすることが好ましい。
【0051】
例えば,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間隔は,図5に示すように100[μm]とすることもできる。そして,飛翔対象部材101の電位Vxは,感光体110の背景部電位Vbと同じ−600[V]である。このときの現像バイアスと,飛翔対象部材101の電位とを図6に示す。このときの現像バイアスと感光体110の表面の電位は,図2と同じ値である。矢印Cは,有効飛翔電圧|Vmin−Vx|を表している。矢印Dは,有効回収電圧|Vmax−Vx|を表している。
【0052】
この場合に,有効飛翔電圧|Vmin−Vx|と,有効回収電圧|Vmax−Vx|と,これらの電圧が形成する電界強度は,次式のように
|Vmin−Vx|=400[V]
|Vmax−Vx|=900[V]
Ex1=4.0[MV/m]
Ex2=9.0[MV/m]
Ex1:飛翔対象部材の箇所における飛翔電界強度
Ex2:飛翔対象部材の箇所における回収電界強度
表される。
【0053】
飛翔電界強度Ex1は,表1からも明らかなように現像ローラ140にフィルミングを生じさせないような電界強度である。このため,現像残トナーは,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間を飛翔し,当該交番電界に応じて往復する。また,飛翔対象部材101に付着したままにならない。
【0054】
本形態の別の変形例について説明する。本形態においては,飛翔対象部材101の電位Vxを一定電圧とした。しかし,飛翔対象部材101の電位Vxを交番電位とすることもできる。この場合の現像バイアスと,飛翔対象部材101の電位Vxとを図7に示す。図7中における現像バイアスと感光体110の表面の電位は図2に示したものと同じ値である。飛翔対象部材101の電位Vx(破線部)は一定時間毎に2つの電位を繰り返すものである。また,その位相は現像バイアスと同期している。つまり,現像ローラ140の電位の変化に対応して,飛翔対象部材101の電位Vxも変化するのである。そして,飛翔対象部材101の電位Vxは,現像バイアスと逆位相である。ここで,現像ローラ140の電圧が現像電圧Vminである期間に,飛翔対象部材101の電圧は−400[V]である。そして,現像ローラ140の電圧が回収電圧Vmaxである期間に,飛翔対象部材101の電圧は−600[V]である。
【0055】
そして,飛翔対象部材101の電位Vxは,現像電圧Vminの期間に回収電圧Vmaxよりの値となり,回収電圧Vmaxの期間に現像電圧Vminよりの値となる。このため,図7に矢印Eで示した有効飛翔電圧|Vmin−Vx|は,図4に矢印Aで示した有効飛翔電圧|Vmin−Vx|に等しく,図6に矢印Cで示した有効飛翔電圧|Vmin−Vx|よりも大きい。また,図7に矢印Fで示した有効回収電圧|Vmax−Vx|の値は,図4に矢印Bで示した有効回収電圧|Vmax−Vx|より大きく,図6に矢印Dで示した有効回収電圧|Vmax−Vx|に等しい。すなわち,有効飛翔電圧|Vmin−Vx|と有効回収電圧|Vmax−Vx|とがともに,第1の形態における有効飛翔電圧|Vmin−Vx|と有効回収電圧|Vmax−Vx|の値以上の値となっている。
【0056】
このため,有効飛翔電圧|Vmin−Vx|と,有効回収電圧|Vmax−Vx|と,これらの電圧により飛翔対象部材101の箇所に生じる電界は,次式のように
|Vmin−Vx|=600[V]
|Vmax−Vx|=900[V]
Ex1=4.6[MV/m]
Ex2=6.9[MV/m]
Ex1:飛翔対象部材の箇所における飛翔電界強度
Ex2:飛翔対象部材の箇所における回収電界強度
表される。
【0057】
よって,現像残トナーは,飛翔電界強度Ex1を受けて飛翔対象部材101に向けて飛翔し,回収電界強度Ex2を受けて現像ローラ140に向けて飛翔する。また,表1に示したように,飛翔電界強度Ex1は現像ローラ140にフィルミングを起こさない十分な電界強度である。また,現像電圧Vminと回収電圧Vmaxの値,すなわち現像バイアスを変化させることなく,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に印加される電圧を大きくすることができる。これにより,より多くの現像残トナーを飛翔させ,それらの付着力を弱めることができる。さらに,飛翔対象部材101の電位Vxが2準位であるため,有効飛翔電圧|Vmin−Vx|と,有効回収電圧|Vmax−Vx|の値を別個に設定することができる。
【0058】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る画像形成装置100は,現像装置180の内部に飛翔対象部材101を設けたものである。飛翔対象部材101との間に交番電界が形成されているため,現像残トナーは,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間を往復し,トナークラウドの状態となる。ゆえに,現像残トナーの現像ローラ140への付着力が弱められる。そして,その付着力が弱まった状態で,供給ローラ141が現像残トナーを回収するようにした。また,トナークラウドの状態となったトナーが現像装置180の外部に飛散することはない。飛翔対象部材101がトナー飛翔室184の内部にあるためである。また,シール部材143があるためである。これにより,トナーの劣化を抑制しつつ,現像残トナーと現像ローラとの付着力を弱めて,現像残トナーを確実に回収することのできる現像装置及び画像形成装置が実現されている。
【0059】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。本形態における飛翔対象部材101の電位Vxは例示である。このため,画像部電位Viと背景部電位Vbとの間であれば,その他の値を用いることができる。ただし,現像残トナーが飛翔対象部材101に付着したままにならないよう,現像バイアスの時間平均電圧Vaveよりも回収側の値であるほうがよい。また,飛翔対象部材の材質は,電圧を印加できるようなものであればステンレス鋼(SUS)に限られない。また,バッファ室183の内部にトナーを攪拌するスクリューがあってもよい。また,本形態では,バッファ室183とトナー飛翔室184とを区別したが,一体となっていてもよい。また,本実施の形態では,トナー供給部材と現像残トナー回収部材とを一体として供給ローラ141としたが,別体であってもよい。
【0060】
[第2の形態]
以下に,第2の形態について説明する。第1の形態の画像形成装置100では,バッファ室183と空間的につながっているトナー飛翔室184の内部に飛翔対象部材101を配置した。本形態の画像形成装置が第1の形態の画像形成装置100と異なる点は,バッファ室183と,トナー飛翔室184とが弁により仕切られていることである。
【0061】
本形態の画像形成装置200は,図8に示すように感光体110と,現像装置280と,制御部191とを有している。現像装置280は,現像ローラ140と,供給ローラ141と,規制ブレード142と,シール部材143と,電圧印加部190と,飛翔対象部材101とを有している。また,現像装置280は,現像容器181を有している。現像容器181には,バッファ室183と,トナー飛翔室184とが形成されている。バッファ室183とトナー飛翔室184とは区画されている。そして,バッファ室183とトナー飛翔室184との間には,弁201が配置されている。
【0062】
また,弁201は,バッファ室183の内部のトナーがトナー飛翔室184に逆流しないようにするためのものである。つまり,弁201は,バッファ室183の上流で保持され,現像ローラ140の回転により,その下流にならうように配置されている。このため,トナー飛翔室184のトナーはバッファ室183の内部に入るが,バッファ室183の内部のトナーがトナー飛翔室184に入ることはない。その他の各部の働きは第1の形態と同様である。
【0063】
ここで,本形態の画像形成装置200の動作について説明する。電圧印加部190が印加する現像バイアス及び飛翔対象部材101の電位Vx,感光体110の表面の電位は,第1の形態と同様である。まず,帯電装置により,感光体110の表面を一様に帯電させる。次に,露光装置により,感光体110の表面に静電潜像を形成する。次に,現像ローラ140により,感光体110の静電潜像を現像する。
【0064】
一方,現像に供されずに現像ローラ140上に残った現像残トナーは,飛翔対象部材101の箇所を通過する。そして,現像残トナーは,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間に形成された交番電界により現像ローラ140と飛翔対象部材101との間を飛翔して往復する。また,トナークラウドの状態のトナーが,現像装置280の外部に飛散することがない。飛翔対象部材101が,トナー飛翔室184の内部にあるためである。また,シール部材143があるためである。そして,トナー飛翔室184の内部のトナーは,やがてバッファ室183に入る。しかし,バッファ室183の内部のトナーが,トナー飛翔室184に逆流することはない。弁201があるためである。
【0065】
この後,付着力の弱まった現像残トナーは,供給ローラ141により擦り取られる。こうして,現像残トナーは,現像ローラ140から取り除かれる。一方,現像に供されたトナー像は,転写器により感光体110の表面から紙に転写される。次に,トナーを転写された紙上のトナー像は定着器により定着される。以上により,紙への印刷がなされる。
【0066】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る画像形成装置200は,現像装置280の内部に飛翔対象部材101を設けたものである。飛翔対象部材101との間に交番電界が形成されているため,現像残トナーは,現像ローラ140と飛翔対象部材101との間を往復し,トナークラウドの状態となる。ゆえに,現像残トナーの現像ローラ140への付着力が弱められる。そして,その付着力が弱まった状態で,供給ローラ141が現像残トナーを回収するようにした。また,トナークラウドの状態となったトナーが現像装置280の外部に飛散することはない。飛翔対象部材101がトナー飛翔室184の内部にあるためである。また,シール部材143があるためである。さらに,バッファ室183の内部に蓄えられたトナーがトナー飛翔室184に逆流することがない。弁201があるためである。これにより,トナーの劣化を抑制しつつ,現像残トナーと現像ローラとの付着力を弱めて,現像残トナーを確実に回収することのできる現像装置及び画像形成装置が実現されている。
【0067】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。本形態における飛翔対象部材101の電位Vxは例示である。このため,画像部電位Viと背景部電位Vbとの間であれば,その他の値を用いることができる。ただし,現像残トナーが飛翔対象部材101に付着したままにならないよう,現像バイアスの時間平均電圧Vaveよりも回収側の値であるほうがよい。また,飛翔対象部材の材質は,電圧を印加できるようなものであればステンレス鋼(SUS)に限られない。また,バッファ室183の内部にトナーを攪拌するスクリューがあってもよい。また,弁201として,トナーから電荷を奪う除電部材を用いてもよい。また,弁201の代わりにトナーの逆流を防ぐようなものであれば他のものを用いてもよい。また,本実施の形態では,トナー供給部材と現像残トナー回収部材とを一体として供給ローラ141としたが,別体であってもよい。
【0068】
[第3の形態]
以下に,第3の形態について説明する。本形態の画像形成装置が,第1の形態の画像形成装置100と異なる点は,シール部材と飛翔対象部材とが一体となっている点である。
【0069】
本形態の画像形成装置300は,図9に示すように感光体110と,現像装置380と,制御部191とを有している。現像装置380は,現像ローラ140と,供給ローラ141と,規制ブレード142と,シール部材343と,電圧印加部190と,飛翔対象部材301とを有している。また,現像装置380は,現像容器181を有している。現像容器181には,バッファ室183と,トナー飛翔室184とが形成されている。
【0070】
飛翔対象部材301は,図9に示したようにシール部材343と貼り合わされて一体となっているものである。このため,現像ローラ140と飛翔対象部材301との間隔は,シール部材343の厚みにより決まるものである。また,シール部材343を,バネ等で現像ローラ140に押し当てるようにしてもよい。現像ローラ140と飛翔対象部材301との間隔が一定となるためである。
【0071】
シール部材343と一体となった飛翔対象部材301の一例を,図10に示す。図10には,現像ローラ140側からみたシール部材343と飛翔対象部材301とが示されている。つまり,手前側にシール部材343があり,奥側に飛翔対象部材301がある。また,現像残トナーはシール部材343の手前側を上方から下方に移動することとなる。そして,飛翔対象部材301及びシール部材343は,実際には図9に示したように全体として湾曲した形状となっている。飛翔対象部材301及びシール部材343のその他の形状を,図11と図12に例示する。これらのようにしても,奏する効果は同様である。その他の各部の働きは第1の形態と同様である。
【0072】
ここで,本形態の画像形成装置300の動作について説明する。電圧印加部190が印加する現像バイアス及び飛翔対象部材301の電位Vx,感光体110の表面の電位は,第1の形態と同様である。まず,帯電装置により,感光体110の表面を一様に帯電させる。次に,露光装置により,感光体110の表面に静電潜像を形成する。次に,現像ローラ140により,感光体110の静電潜像を現像する。
【0073】
一方,現像に供されずに現像ローラ140上に残った現像残トナーは,飛翔対象部材301の箇所を通過する。そして,現像残トナーは,現像ローラ140と飛翔対象部材301との間に形成された交番電界により現像ローラ140と飛翔対象部材301との間を飛翔して往復する。また,トナークラウドの状態のトナーが,現像装置380の外部に飛散することがない。飛翔対象部材301が,トナー飛翔室184の内部にあるためである。また,シール部材343があるためである。そして,トナー飛翔室184の内部のトナーは,やがてバッファ室183に入る。
【0074】
この後,付着力の弱まった現像残トナーは,供給ローラ141により擦り取られる。こうして,現像残トナーは,現像ローラ140から取り除かれる。一方,現像に供されたトナー像は,転写器により感光体110の表面から紙に転写される。次に,トナーを転写された紙上のトナー像は定着器により定着される。以上により,紙への印刷がなされる。
【0075】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る画像形成装置300は,現像装置380の内部にシール部材343と一体となった飛翔対象部材301を設けたものである。飛翔対象部材301との間に交番電界が形成されているため,現像残トナーは,現像ローラ140と飛翔対象部材301との間を往復し,トナークラウドの状態となる。ゆえに,現像残トナーの現像ローラ140への付着力が弱められる。そして,その付着力が弱まった状態で,供給ローラ141が現像残トナーを回収するようにした。また,トナークラウドの状態となったトナーが現像装置380の外部に飛散することはない。飛翔対象部材301がトナー飛翔室184の内部にあるためである。また,シール部材343があるためである。そして,現像ローラ140と飛翔対象部材301との間隔は,シール部材343の厚みによって決まる。これにより,トナーの劣化を抑制しつつ,現像残トナーと現像ローラとの付着力を弱めて,現像残トナーを確実に回収することのできる現像装置及び画像形成装置が実現されている。
【0076】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。本形態における飛翔対象部材101の電位Vxは例示である。このため,画像部電位Viと背景部電位Vbとの間であれば,その他の値を用いることができる。ただし,現像残トナーが飛翔対象部材301に付着したままにならないよう,現像バイアスの時間平均電圧Vaveよりも回収側の値であるほうがよい。また,飛翔対象部材の材質は,電圧を印加できるようなものであればステンレス鋼(SUS)に限られない。また,バッファ室183の内部にトナーを攪拌するスクリューがあってもよい。また,第2の形態の弁201を設けてもよい。そして,弁201として,トナーから電荷を奪う除電部材を用いてもよい。また,本実施の形態では,トナー供給部材と現像残トナー回収部材とを一体として供給ローラ141としたが,別体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】第1の形態の画像形成装置を説明するための図である。
【図2】第1の形態の画像形成装置の現像バイアスを説明するためのグラフである。
【図3】第1の形態の画像形成装置の感光体と現像ローラと飛翔対象部材との関係を説明するための図(その1)である。
【図4】第1の形態の画像形成装置の現像バイアスと飛翔対象部材の電位を説明するためのグラフ(その1)である。
【図5】第1の形態の画像形成装置の感光体と現像ローラと飛翔対象部材との関係を説明するための図(その2)である。
【図6】第1の形態の画像形成装置の現像バイアスと飛翔対象部材の電位を説明するためのグラフ(その2)である。
【図7】第1の形態の画像形成装置の現像バイアスと飛翔対象部材の電位を説明するためのグラフ(その3)である。
【図8】第2の形態の画像形成装置を説明するための図である。
【図9】第3の形態の画像形成装置を説明するための図である。
【図10】第3の形態の画像形成装置における一体となったシール部材と飛翔対象部材を説明するための図(その1)である。
【図11】第3の形態の画像形成装置における一体となったシール部材と飛翔対象部材を説明するための図(その2)である。
【図12】第3の形態の画像形成装置における一体となったシール部材と飛翔対象部材を説明するための図(その3)である。
【符号の説明】
【0078】
100,200,300…画像形成装置
101,301…飛翔対象部材
110…感光体
140…現像ローラ
141…供給ローラ
142…規制ブレード
143,343…シール部材
180…現像装置
181…現像容器
183…バッファ室
184…トナー飛翔室
190…電圧印加部
191…制御部
201…弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と,
現像容器と,
前記現像容器の外部に部分的に露出するように前記現像容器の内部に配置され,前記像担持体に非磁性一成分のトナーを付与する現像ローラと,
前記現像容器の内部に配置され,前記現像ローラにトナーを供給するトナー供給部材と,
前記現像ローラから現像残トナーを回収する現像残トナー回収部材と,
前記現像ローラからみて前記像担持体の下流に配置され,前記現像容器からのトナーの漏れを防ぐシール部材とを有する画像形成装置であって,
前記現像ローラからみて前記シール部材の下流であって前記現像残トナー回収部材の上流の位置に,前記現像ローラと間隔をおいて配置された飛翔対象部材と,
前記飛翔対象部材と前記現像ローラとの間に,
現像残トナーを前記現像ローラから前記飛翔対象部材に飛翔させる電界と,
現像残トナーを前記飛翔対象部材から前記現像ローラに飛翔させる電界とを交互に繰り返す交番電界を形成する交番電圧を印加する電圧印加部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって,
前記現像容器には,
バッファ室と,トナー飛翔室とが形成されており,
前記飛翔対象部材が,前記トナー飛翔室の内部に配置され,
前記現像残トナー回収部材が,前記バッファ室の内部に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって,
前記バッファ室と前記トナー飛翔室との間に,前記バッファ室と前記トナー飛翔室とを仕切る弁を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の画像形成装置であって,
前記飛翔対象部材と前記シール部材とが一体となっていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
非磁性一成分のトナーを蓄える現像容器と,
前記現像容器の外部に部分的に露出するように前記現像容器の内部に配置された現像ローラと,
前記現像容器の内部に配置され,前記現像ローラにトナーを供給するトナー供給部材と,
前記現像ローラから現像残トナーを回収する現像残トナー回収部材と,
前記現像ローラからみて前記現像残トナー回収部材の上流の位置に配置され,前記現像容器からのトナーの漏れを防ぐシール部材とを有する現像装置であって,
前記現像ローラからみて前記シール部材の下流であって前記現像残トナー回収部材の上流の位置に,前記現像ローラと間隔をおいて配置された飛翔対象部材と,
前記飛翔対象部材と前記現像ローラとの間に,
現像残トナーを前記現像ローラから前記飛翔対象部材に飛翔させる電界と,
現像残トナーを前記飛翔対象部材から前記現像ローラに飛翔させる電界とを交互に繰り返す交番電界を形成する交番電圧を印加する電圧印加部とを有することを特徴とする現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−72268(P2010−72268A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238912(P2008−238912)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】