説明

現像装置

【課題】現像装置内の現像剤への負荷を軽減した現像装置を提供する。
【解決手段】現像剤担持体33と離間して現像剤供給除去部材34を備え、現像剤供給除去部材34は、導電部材34Aと、現像剤供給除去部材の表面に設けられた絶縁部材34Bと、を備え、現像剤供給除去部材34から現像剤担持体33へ現像剤を供給する位置において、現像剤担持体33の移動方向は現像剤供給除去部材34の移動方向とは逆方向である。現像剤担持体33と現像剤供給除去部材34との間で電界を形成する電界形成装置39、40を備え、前記電界は、振動電界であって、導電部材34Aの直流電位は、現像剤担持体33の直流電位と同じか、又は、導電部材34Aの直流電位は、現像剤担持体33の直流電位に対して現像剤の正規の帯電極性とは逆側である、振動電界である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成された静電像を現像剤にて現像して可視像、即ち、トナー像とするための現像装置に関するものである。現像装置は、例えば、複写機、プリンタ、或いは、ファクシミリ装置などの電子写真方式の画像形成装置などに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来の現像装置には、像担持体上に形成された静電潜像を可視化するために現像剤を搬送する現像剤担持体に、現像剤を供給する現像剤供給部材を有しているものがある。
【0003】
また、静電潜像を可視化した後に、その履歴として現像剤が現像剤担持体上に残留しているが、従来の現像装置には、この残留現像剤を除去する現像剤除去部材を有しているものがある。
【0004】
上記現像剤供給部材が、或いは、現像剤除去部材が現像剤担持体と接触している場合、画像形成動作を多数回繰り返すと現像剤への負荷が多くなることで、現像剤の劣化が進んでしまい、画像不良が発生してしまう。
【0005】
そこで、別の従来技術によれば、現像剤への負荷軽減のために、現像剤供給部材と現像剤除去部材とを現像剤担持体と非接触に配置していることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図6に、斯かる構成の従来の現像装置の一例を示す。図6は、像担持体としてのドラム状の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)110と現像装置111の断面を示す。
【0007】
本例にて、現像装置111には感光ドラム110上の静電潜像を可視化するために磁性一成分トナー112を搬送する現像剤担持体としての現像ローラ113が設けられている。現像ローラ113上の可視化に寄与しなかった残留トナーを除去するために、回転する電極114が非接触に配置されており、この電極114には直流電圧を重畳した交流電圧が印加されている。そして、電極114表面のトナー112を除去するために電極114には、掻き取り部材115が接触している。
【0008】
更に、現像ローラ113にトナー112を供給する供給部材116が現像ローラ113近傍に配置してあり、供給部材116の攪拌による効果と、現像ローラ113を構成している磁性ゴム層113Aの磁力でトナー112の供給を行っている。
【特許文献1】特開昭63−106768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例では、現像剤の供給と除去を、供給部材116と現像剤除去部材(電極)114の2部品によって行っているために、現像装置が大型化している。
【0010】
また、一方では非磁性現像剤を使用した現像装置においては磁力を利用できないために、現像剤担持体への現像剤の供給が不十分である。
【0011】
また、現像ローラから現像剤の除去が良好に行えないと、前の画像の履歴が残ってしまうことがあった。このような履歴は現像ゴーストと呼ばれる。
【0012】
本発明の目的は、現像装置内の現像剤への負荷を軽減した現像装置を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、現像剤担持体へ現像剤を安定して供給することができる現像装置を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、現像剤担持体から現像剤の除去を良好に行える現像装置を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、現像剤担持体への現像剤の供給と現像剤担持体からの現像剤の除去を共通の部材で行える現像装置を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、小型化することができる現像装置を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的及び特徴とするところは添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むことにより一層明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は本発明に係る現像装置にて達成される。要約すれば、本発明は、現像剤を担持し、像担持体に形成された静電像を現像剤で現像する現像剤担持体を有する現像装置において、
前記現像剤担持体へ現像剤を供給すると共に、前記現像剤担持体から現像剤を除去するために、前記現像剤担持体と離間して設けられた現像剤供給除去部材を備え、
前記現像剤供給除去部材は、導電部材と、前記現像剤供給除去部材の表面に設けられた絶縁部材と、を備え、
前記現像剤供給除去部材から前記現像剤担持体へ現像剤を供給する位置において、前記現像剤担持体の移動方向は前記現像剤供給除去部材の移動方向とは逆方向であり、
前記現像剤担持体と前記現像剤供給除去部材との間で電界を形成する電界形成装置を備え、前記電界は、振動電界であって、前記導電部材の直流電位は、前記現像剤担持体の直流電位と同じか、又は、前記導電部材の直流電位は、前記現像剤担持体の直流電位に対して現像剤の正規の帯電極性とは逆側である、振動電界である、
ことを特徴とする現像装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
(1)現像剤供給除去部材1部品で現像剤担持体上の現像剤の除去と供給を行えるため、現像装置の小型化、回転駆動トルクの低減が可能で、さらには、現像剤への負荷が軽減される。
(2)現像剤の安定供給と現像剤の除去が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る現像装置を図面に則して更に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0021】
実施例1
図1は、本発明に係る現像装置を適用した画像形成装置の概略断面図であり、図2は現像装置の概略断面図である。
【0022】
先ず、本実施例の画像形成装置による画像形成動作について説明する。
【0023】
本実施例において、画像形成装置20は、像担持体としてのドラム状の電子写真感光体、即ち、感光ドラム21を備え、感光ドラム21は、矢印A方向に回転自在に担持されている。感光ドラム21の周辺には、帯電装置22、露光装置23、現像装置24が配置されている。
【0024】
先ず、感光ドラム21は、帯電装置22によって一様に帯電され、その後、本実施例にて、露光装置23であるレーザー光学装置からのレーザー光23Lにより露光され、感光ドラム21の表面に静電潜像が形成される。
【0025】
この静電潜像を、感光ドラム21に対向配置された現像装置24によって現像し、トナー像として可視化する。なお、本実施例で、現像装置24は、カートリッジとして、画像形成装置本体20Aに対し着脱可能とされる。
【0026】
可視化された感光ドラム21上のトナー像は、転写装置である転写ローラ25によって記録媒体である転写材26に転写される。
【0027】
転写されずに感光ドラム21上に残存した転写残トナーは、クリーニング装置27に設けたクリーニング部材であるクリーニングブレード27aにより掻き取られ、廃トナー容器28に収納される。クリーニングされた感光ドラム21は、上記動作を繰り返し、画像形成を行う。
【0028】
一方、トナー像が転写された転写材26は、定着装置29によってトナー像が永久定着された後、機外に排紙される。
【0029】
次に、図2を参照して、現像装置24について更に説明する。
【0030】
本実施例にて、現像装置24は、現像剤として負帯電性の非磁性一成分トナー32を収容する現像容器31を備えている。現像装置24は、現像容器31内の長手方向(図2の紙面に直交する方向)に延在する開口部に位置した現像剤担持体としての現像ローラ33であって、感光ドラム21と対向配置された現像ローラ33を備える。現像ローラ33は、感光ドラム21上の静電潜像を現像剤で現像し、可視化する。本実施例にて、現像ローラ33は、芯金33Aの上に弾性層33Bが形成されている。現像ローラ33の詳しい構成は後述する。
【0031】
感光ドラム21は、アルミシリンダーを基体とし、その周囲に所定厚みの感光層を塗工した剛体である。感光ドラム21は、画像形成時において、帯電装置22により帯電電位Vd=−500Vに均一帯電されており、画像信号に従いレーザー光23Lで露光された部分がVl=−100Vになる。現像ローラ33の芯金33Aには電源40から直流電圧Vdc=−300Vが、現像バイアスとして印加され、静電潜像のVl部は、負帯電性トナーで反転現像される。
【0032】
弾性を有する現像ローラ33は、上記開口部にて、図2に示す右略半周を現像容器31に突入し、左略半周面を現像容器31から露出して設けられる。この現像容器31から露出した面は、現像装置24の左方に位置する感光ドラム21に所定の侵入量となるように押圧、接触するように設けられる。本実施例においては、感光ドラム21に対して現像ローラ33は50μmの侵入量で、接触する。なお、侵入量とは、仮に感光ドラム21を取り外した場合の現像ローラ33の表面の位置と、感光ドラム21を設けた場合の現像ローラ33の表面の位置と、の距離である。
【0033】
現像ローラ33は、図2にて、矢印B方向に回転駆動される。その表面は、トナー32との摺擦確率を高め、かつ、トナー32の搬送を良好に行うため、適度な凹凸を有している。
【0034】
本実施例にて、現像ローラ33は、芯金33Aの上に、弾性層33Bとしてウレタンゴムを基層としアクリル・ウレタン系ゴムを表面にコートした、二層構成の弾性層33Bとされる。また、表面粗さは、Raで0.6〜1.3μmであり、抵抗は、104〜107Ωであった。
【0035】
ここで、抵抗の測定方法を説明する。
【0036】
現像ローラ33を、感光ドラム21と等しい直径のアルミニウムスリーブに、当接荷重500gfで当接させる。このアルミスリーブを、さらに感光ドラム21と等しい周速で回転させる。
【0037】
本実施例において、感光ドラム21は周速90mm/secで回転し、直径は30mmであり、現像ローラ33は、感光ドラム21よりも速い周速120mm/secで回転し、直径は20mmである。
【0038】
次に、現像ローラ33に、本実施例における現像バイアスと等しい−300Vの直流電圧を印加する。その際、アース側に10kΩの抵抗を設け、その両端の電圧を測定することで現像ローラ33に流れる電流を算出し、現像ローラ33の抵抗を算出する。
【0039】
本実施例において、一成分現像剤としての負帯電性の非磁性トナー32には、高画質化を図るために、小粒径化を達成し、かつ、転写効率を向上させるため、略球形トナーを用いている。具体的にはトナーの形状係数として、SF−1が100〜180であり、SF−2が100〜140であるものを用いた。
【0040】
このSF−1、SF−2は、日立製作所FE−SEM(S−800)を用いて、トナー像を無作為に100個サンプリングし、それら画像情報を、インターフェースを介してニレコ社製画像解析装置(Luzex3)に導入し解析を行い、下式より算出し得られた値を定義している。
SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(π/4)×100
SF−2={(PERI)2/AREA}×(1/4π)×100
(但し、MXLNG:絶対最大長、AREA:トナー投影面積、PERI:周長)
このトナーの形状係数SF−1は球形度合を示し、100から大きくなるにつれて球形から徐々に不定形になる。SF−2は凹凸度合を示し、100から大きくなるにつれてトナー表面の凸凹が顕著になる。
【0041】
トナーの製造方法としては、トナーが上記形状係数の範囲内になれば、任意の方法を採用し得る。例えば、従来の粉砕トナー表面を熱的・機械的ストレスにより塑性球形化処理することも可能である。また懸濁重合法により直接トナーを製造する方法や、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い、直接トナーを生成する分散重合方法も可能である。又は水溶性極性開始剤存在下で直接重合しトナーを生成するソープフリー重合方法に代表される乳化重合法等を用いることも可能である。
【0042】
本実施例においては、常圧下での、または、加圧下での懸濁重合方法を用いた。また、モノマーとしてスチレンとn−ブチルアクリレート、荷電制御剤としてサリチル酸金属化合物、極性レジンとして飽和ポリエステルを用い、さらに着色剤を加えて、重量平均粒径5〜7μmの負帯電性トナーを製造した。
【0043】
トナーの重量平均粒径の測定には、コールターカウンターTAII型或いはコールターマルチライザー(コールター社製)を用いた。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、1%NaCl水溶液を調製した。
【0044】
この電解水溶液100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を混濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理され、前記測定装置により、100μmのアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布とを算出し、体積分布から重量基準の重量平均粒径D4を求めた。
【0045】
その後、流動性付与剤として、疎水性シリカを1.5wt%外添した。外添量は、当然これに限るものではない。トナー表面を外添剤によって被膜することで、負性帯電性能の向上、かつ、トナー間に微小な間隙を設けることによる、流動性の向上を達成した。
【0046】
本実施例にて、現像装置24は、現像ローラ33の上方に位置して、弾性を有する現像剤規制部材としての現像ブレード35が配置される。現像ブレード35は、現像ローラ33上に担持された現像剤の層の厚さを規制する。現像ブレード35は、現像容器に固定される支持板金38に支持されている。現像ブレードの35の当接方向としては、現像ローラ33に対する現像ブレード35の当接部よりもブレード35の自由端が、現像ローラ33の回転方向において、上流に位置する、カウンター方向となっている。
【0047】
現像ブレード35の支持板金38への支持方法は、ビス等による締め付け、或いは、溶接等、任意の方法を採用し得る。また、本実施例で現像ブレード35及び支持板金38は、現像ローラ33と同電位であり、よって、感光ドラム31上の静電潜像が現像される際には、現像バイアスと同じ電圧が印加されることとなる。
【0048】
現像ブレード35の材質はSUSであるが、弾性を持つものであれば、りん青銅などの金属、或いは、シリコン、ウレタンなどのゴム材、或いは、PET等の樹脂であっても構わない。また、現像ブレード35に印加するバイアスは、現像バイアスと同電位でなくても良く、現像ローラ33上のトナー32を規制するために好適なバイアスを選択しても良い。
【0049】
現像ローラ33の、図2にて右斜め下方には、現像ローラ33へ現像剤を供給するともに現像ローラ33から現像剤を除去する現像剤供給除去部材としての絶縁コート電極ローラ34が配置されている。絶縁コート電極ローラ34の構成については、後述する。
【0050】
絶縁コート電極ローラ34は、現像ローラ33とは非接触にて配置されており、この電極絶縁コート電極ローラ34と現像ローラ33とが対向配置された位置(領域)が、後述する現像剤供給、除去位置(領域)TSを形成する。即ち、電極ローラ34は、現像剤供給、除去領域TSにおいて、現像ローラ33と離間して設けられる。現像剤供給、除去領域TSにおける現像ローラ33と絶縁コート電極ローラ34との最小ギャップSの大きさは、後述するように、現像ローラ33と絶縁コート電極ローラ34との間に印加する所要電圧により形成される最大電界強度によって決められる。ギャップSは、10〜400μmとするのが良く、本実施例(実験例1、3、4、9、10)では、150μmとした。
【0051】
更に説明すると、絶縁コート電極ローラ34は、回転可能に支持され、現像ローラ33の回転方向(B方向、即ち反時計方向)と同一方向(C方向、即ち反時計方向)に回転駆動される。即ち、現像剤供給、除去位置TSにおいて、現像ローラ34の移動方向(トナー搬送方向)は、絶縁コート電極ローラ34の移動方向(トナー搬送方向)と逆方向とされる。本実施例では、絶縁コート電極ローラ34は、回転方向Cに、周速80mm/secの速度で回転駆動される。
【0052】
絶縁コート電極ローラ34には、本実施例(実験例1、11、12)では、画像形成装置の本体に設けられた電源39から+2.0kVの直流電圧に、4kVpp、周波数400Hzのサイン波形の交流電圧を重畳したバイアスを印加した。これにより、現像剤供給、除去領域TSにて、現像ローラ33と絶縁コート電極ローラ34との間に振動電界が形成される。
【0053】
絶縁コート電極ローラ34は、導電部材である導電性材料34Aの表面に絶縁部材である絶縁性材料34Bを積層して構成される。本実施例では、絶縁コート電極ローラ34は、直径11.5mmのSUS製芯金34Aの表面に厚さ100μmのポリカーボネート樹脂34Bを積層したものである。
【0054】
後で、上記絶縁コート電極ローラ34の配置と構成と、印加電圧を決定するに至った根拠について説明する。
【0055】
以上のような構成の現像装置24において、現像動作時には、図2に示すように、絶縁コート電極ローラ34が矢印C方向に回転する。従って、現像容器31内のトナー32は、絶縁コート電極ローラ34に担持されて現像ローラ33近傍に、即ち、現像剤供給、除去領域TSに運ばれる。
【0056】
絶縁コート電極ローラ34上に担持されているトナー32は、現像ローラ33と絶縁コート電極ローラ34とのギャップSの位置、即ち、現像剤供給、除去領域TSにおいて、電源39から印加される交流電圧にて発生した振動電界により現像ローラ33へと搬送(供給)される。その際、トナー32は、現像ローラ33により摩擦帯電され、現像ローラ33上に付着する。
【0057】
その後、トナー32は、現像ローラの矢印B方向の回転に伴い、現像ブレード35の圧接下に送られ、ここで適正なトリボ(摩擦帯電量)を受けるとともに現像ローラ33上に薄層形成される。即ち、現像ローラ33上のトナーは、現像ブレード35によって厚さが規制されるとともに、適正な帯電量とされる。本実施例においては、現像ブレード35通過後のトナーは、良好な帯電電荷量として−100〜−20μC/g、良好なトナーコート量として0.25〜1.0mg/cm2、トナー層厚で7〜20μmが得られるように設定した。本実施例において、トナーの正規の帯電極性、即ち通常の現像に用いられるトナーの帯電極性は、負帯電極性である。
【0058】
現像ローラ33上に薄層形成されたトナー層は、一様に感光ドラム21との対向部である現像部TDへ搬送される。この現像部TDにおいて、現像ローラ33上に薄層形成されたトナー層は、現像ローラ33と感光ドラム21の両者間に電源40により印加された現像バイアスによって、感光ドラム21上の静電潜像にトナー像として現像される。本実施例において、現像ローラ33は、感光ドラム21に接触して設けられ、現像バイアスとしては、交流電圧なしの直流電圧が用いられる。結局、現像ローラ33と電極ローラ34との間に形成される振動電界は、電源39と電源40とによって形成される。即ち、電源39と電源40は、電界形成装置である。
【0059】
現像部TDにおいて消費されなかった現像ローラ33上の未現像トナーは、現像ローラ33の回転Bと共に現像ローラ33の下部より現像容器31内へと移送、回収される。
【0060】
この回収された現像ローラ33上の未現像トナーは、電極ローラ34と現像ローラ33とがギャップSにて対向された現像剤供給、除去領域TSにおいて、電極ローラ34に印加される振動電圧の作用により現像ローラ33表面から除去される。この振動電圧において、直流電圧と交流電圧の重畳電圧であり、電極ローラ34に印加される直流電圧(直流電位)は、現像ローラ33に印加される直流電圧(直流電位)と同じに設定される。または、振動電圧において、電極ローラ34に印加される直流電圧(直流電位)は、現像ローラ33に印加される直流電圧(直流電位)に対して、トナーの正規の帯電極性とは逆側に設定される。即ち、振動電圧の直流電位は、現像バイアスの直流電位に対してトナー32の正規の帯電極性とは逆極性側、即ち現像バイアス−300Vに対してプラス側である。なお、振動電圧、即ち重畳電圧は、交流電源を用いずに直流電源のみの出力値の切り替えを繰り返すことによって形成しても良いのはもちろんである。
【0061】
なお、本実施例にて、「現像ローラに印加される直流電位に対して、トナー(現像剤)の正規の帯電極性とは逆極性側の電圧」とは、現像剤の帯電極性と同じ極性で現像ローラに印加される直流電位よりも絶対値が小さい値の電位(同電位を含む)、及び現像剤の帯電極性と逆極性の電位を示す電圧を意味するものとする。
【0062】
従って、本実施例では、現像バイアス、即ち現像ローラ33に印加される直流電位が−300Vであるので、電極ローラ34に印加される電圧は、−300Vから0Vまで、及び、0Vよりも大きい電圧、に設定されるのが良い。
【0063】
現像ローラ33表面から除去されたトナーの大部分は、絶縁コート電極ローラ34の回転に伴い搬送されて再度現像ローラ33へ供給され前述の作用を繰り返す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の画像評価において、第1には、絶縁コート電極ローラ34の配置と構成と電源39による印加電圧を変化させたときのべた黒追従性(A4縦サイズ紙上に印字可能域全域を最大濃度で印字してトナー供給能力を評価)を評価した。また、画像評価において、第2には、現像ゴースト(20mm角の最大濃度パッチを印字した後ハーフトーン画像を印字してパッチの印字履歴の有無により、トナー除去能力を評価)を評価した。
【0066】
表1の画像評価において、◎は、画像として非常に良好レベル、○は、画像として良好レベル、△は、画像として許容レベル、×は、NGレベルである。
【0067】
表1において、印加電圧構成とは、電極ローラ34に印加される電圧を示している。実施例である実験例1は、画像評価は非常に良好である。
【0068】
比較例である実験例2と実施例である実験例3、4、は、実験例1に対して直流電圧が異なっている。即ち、実験例2、3、4は、電極ローラに印加する直流電圧を、現像ローラ33に印加している現像バイアスと同電位(−300V)にして、絶縁コート電極ローラ34に印加する交流電圧を変化させた。その結果、電極ローラ34の芯金34Aと現像ローラ33との間の最大電界を実験例3、4のように8.0×106V/m以上にすることで、べた黒追従性と現像ゴーストが良化した。また、実験例4のように最大電界をさらに大きくすると、べた黒追従性はさらに向上するが、現像ゴーストは変化しないことが分かった。実験例2では、絶縁コート電極ローラ34に印加する交流電圧は0であり、画像評価はNGレベルであった。
【0069】
上記絶縁コート電極ローラ34と現像ローラ33との間に振動電界を発生することにより、画像が良化する理由は、次の実験で判明した。
【0070】
現像装置24の長手方向端部を透明なアクリル板で構成することでトナー供給部付近の可視化を行った。
【0071】
その結果、上記振動電界を発生することで、図3に示すように、電極ローラ34によって搬送されたトナー32Aは、その動きDが現像剤供給、除去領域TSにて、即ち、トナー供給部Fに発生した電界により妨げられる。また振動電界により、トナー32Aが現像ローラ33に担時されていく動きEが観察された。これは、トナー供給部Fで一時滞留したトナー32Aは、現像ローラ33と摩擦帯電を起こして、鏡像力により現像ローラ33上に担持されていると考えられる。
【0072】
このような現象は、トナー供給部Fに交流電圧を印加することによって顕著に起こる現象であり、表1において比較例である実験例5、6のように交流電圧が0で直流電圧のみでは、絶縁コート電極ローラ芯金34Aと現像ローラ33との間の最大電界を8.0×106V/m以上にしても図3に示すようなトナーの動きEは起きず、画像評価においても改善が見られなかった。即ち、実験例5、6はNGレベルである。
【0073】
表1で比較例である実験例7においては、絶縁コート34Bを施していない電極ローラ34を用いている。その結果、電極ローラに絶縁コート処理を行っていないため、現像ローラ33に電流がリークしてしまい、現像ローラ33上のトナーコート不良が発生した。即ち、NGレベルである。
【0074】
以上から、より好適な最大電界を得るには、絶縁コート34Bによる耐圧性が必要であることが分かった。
【0075】
以上から、従来の現像装置においては、現像ローラと電極間のリークを避けるために低電圧構成をとっており、図3で示したトナーの動きは従来の現像装置において発生しないと考えられる。
【0076】
次に、トナー供給部Fに直流電圧を重畳させた交流電圧を印加することで画像の改善を試みた。
【0077】
実施例である実験例1、3、9、10と比較例である実験例8は、交流電圧は同じであり、交流電圧に対して重畳させる直流電圧が異なっている。直流電圧は、実験例8、9、10、1、の順に従って大きくなるように、−2300V、200V、1700V、2000Vとした。この結果、実験例8のように、絶縁コート電極ローラ34に印加される直流電位が、現像バイアスの直流電位に対してトナー32の正規の帯電極性と同極性側であると、画像改善はされなかった。即ち、実験例8はNGレベルである。
【0078】
一方で、実験例9、10、1のように絶縁コート電極ローラ34に印加される直流電位が、現像バイアスの直流電位に対してトナー32の正規の帯電極性と逆極性側であると、実験例3と比較して画像が改善されている。
【0079】
これは、実験例1、9、10、は、絶縁コート電極ローラ34に印加される直流電位が現像バイアスの直流電位に対して、トナーの正規の帯電極性と逆極性側であることで、図3のトナー32Bを除去する動きGが実験例3よりも顕著に行われるためである。従って、現像ゴーストの発生がなく、また絶縁コート電極ローラ34に回収されたトナーは再度、ある程度帯電されたトナーとしてトナー供給されるためにべた黒追従性も改善されている。
【0080】
一方、実施例である実験例11、12は、実験例1に対して絶縁コート電極ローラ34に印加される電圧は同じであるが、実験例1に対して絶縁コート電極ローラ34の芯金34Aの直径を変化させた。従って、実験例1、11、12は、現像ローラ33と電極ローラ34との距離が異なっている。その結果、実験例11、12は、印加電圧が実験例1と変わらないにもかかわらず、べた黒追従性、現像ゴーストの画像評価は、それぞれ良好レベル、許容レベルとなり、非常に良好レベルまでには到達しなかった。この結果から、べた黒追従性、現像ゴーストに影響を及ぼしているのは、絶縁コート電極ローラ34への印加電圧の値自体ではなく、現像ローラ33と絶縁コート電極ローラ芯金34Aとの間の最大電界であることが分かった。
【0081】
以上から、電極ローラ34の直流電位が現像ローラの直流電位に対してトナーの正規の帯電極性と逆極性側であり、電極ローラと現像ローラとの最大電界が1.0×107V/m以上であれば、べた黒追従性、現像ゴーストが良化する(実験例1、9、10、11)。また、最大電界が1.6×107V/m以上であれば、べた黒追従性、現像ゴーストが最適化する(実験例1、10)。
【0082】
また、実験例10、1のように、電極ローラに印加される振動電圧が、現像ローラに印加される直流電位に対して、常にトナーの正規の帯電極性と逆極性側の電位であると、非常に良好レベルとなり、最適な画像が得られた。即ち、実験例10、1において、電極ローラに交流電圧が印加されているものの、電極ローラと現像ローラとの間に交番する電界は形成されないような電圧に設定されている。
【0083】
また、電極ローラ34と現像ローラ33が接触すると、現像ローラ33上にトナー32が固着してしまうために、絶縁コート電極ローラ34と現像ローラ33は、10μm以上離すことが良い。
【0084】
さらに、絶縁コート電極ローラ34の回転方向についても実験を行った。
【0085】
比較例である実験例13は、実験例1と印加電圧構成は同じで、電極ローラ34の回転を停止させたものである。結果は、図3のトナー供給位置Fに絶縁コート電極ローラ34によるトナー搬送Dがなく、べた黒の追従性が悪い。即ち画像評価はNGレベルである。
【0086】
比較例である実験例14は、実験例1と印加電圧構成は同じで、図4に示すように、電極ローラと現像ローラの対向部において、絶縁コート電極ローラ34の回転を現像ローラ33と逆方向Hにしたものである。結果は、図4のように現像ローラ回転に対して、先ず、トナー供給Iが行われ、その後トナー供給位置下流で、現像バイアスに対してトナーと逆極性側の振動電圧によりトナー除去Jが行われるので、べた黒の追従性が悪い。即ちNGレベルである。
【0087】
次に、本実施例に用いている交流電圧の周波数を検討した。交流電圧の周波数には次の特徴があることがわかった。1つは、周波数が300Hz以下だと現像ローラ上に周波数に応じたトナーコートムラが発生し、もう1つは、周波数が3000Hz以上だと電界の変化に対してトナーが追従できずに、図3で示したトナーの動きが小さくなり、べた黒追従性が悪化することである。この現象は、現像ローラの周速に応じて変化して、次の関係にするとこの現象が改善することがわかった。
2.5<f/d<25 式1
ここで、式1中のdは現像ローラの周速(mm/sec)、fは交流電圧の周波数(Hz)を表す。f/dが2.5以下であると、上述したトナーコートムラが生じやすい。f/dが25以上であると、現像ローラ上へのトナーの供給が不安定となり、画像のべた黒がトナー不足となりやすい。従って、本実施例では、交流電圧の周波数を400Hzに設定した。
【0088】
以上から、絶縁コート電極ローラ34の回転方向は、現像ローラ33と同一方向であること、即ち、絶縁コート電極ローラ34と現像ローラ33とが対向した現像剤供給、除去領域TSにおいて現像ローラ33とは逆方向であることが最適であることが分かった。
【0089】
なお、絶縁コート電極ローラ34の芯金は、本実施例において、SUS製のものを使用しているが、導電剤を分散させた樹脂、若しくは、ゴムでも良く、導電性のもので電極として機能すればよい。絶縁コート材料も、絶縁性を有していればよく、かつ所望の最大電界に対して耐圧性があればよい。材料としては、本実施例では、ポリカーボネート樹脂を使用したが、他にもポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ウレタン、フェノール等の樹脂でも良い。又は、フッ素樹脂などの耐圧性の大きい樹脂、若しくは、シリコンゴム等のゴム材、若しくは、アルマイト等の絶縁性無機化合物でも良い。
【0090】
また、本実施例では、現像剤供給除去部材34としてローラ形状の絶縁コート電極ローラ34を使用したが、導電性無端ベルトの表面を絶縁コート処理したものでも良く、その際は、トナー供給位置付近で最大電界が本実施例に挙げた関係にあればよい。
【0091】
また、本実施例においては、本発明の現像装置を、画像形成装置本体20Aに着脱可能な現像カートリッジに適用した場合について説明したが、画像形成装置本体内に固定され、トナーのみを補給するような構成の現像装置に適用してもよい。また、図1にて、上記現像装置24と感光ドラム21、クリーニング装置27及び帯電装置22を一体で形成し画像形成装置本体20Aに対し着脱可能としたプロセスカートリッジに適用してもよい。
【0092】
以上から、本実施例によれば、絶縁コートした電極ローラを現像ローラ近傍に間隙を持って配置し、絶縁コート電極ローラと現像ローラを同一方向に回転させる。そして、絶縁コート電極ローラと現像ローラとの間に振動電界を形成することにより、また、特に、交流電圧を電極ローラに印加すると、現像ローラへのトナーの供給と除去が、トナーが磁性、非磁性に限らず、絶縁コート電極ローラ1部品で行える。従って、現像装置の小型化、回転駆動トルクの低減、トナーへの低負荷の効果が得られる。
【0093】
また、電極ローラに印加される直流電位と現像ローラに印加される直流電位を同じとするとともに、電極ローラ芯金と現像ローラの間の最大電界を8.0×106V/m以上にすると、画像評価を許容レベルとすることができる。
【0094】
また、電極ローラに印加される直流電位が、現像ローラに印加される直流電位に対してトナーの正規の帯電極性と逆極性側に設定されている。これにより、電極ローラ芯金と現像ローラの間の最大電界を1.0×107V/m以上にすると、べた黒追従性と現像ゴーストが良化して画像評価を良好レベルとすることができる。
【0095】
更には、電極ローラと現像ローラの間の最大電界を1.6×107V/m以上にすると、べた黒追従性と現像ゴーストが最適化して画像評価を非常に良好レベルとすることができる。
【0096】
実施例2
本実施例は、実施例1に対して絶縁コート電極ローラに印加される交流電圧仕様が変わったもので、その他の構成は実施例1と同じである。また、本実施例において、電極ローラに印加される直流電位は、現像ローラに印加される直流電位(−300V)に対して、トナーの正規の帯電極性と逆側であるように設定される。本実施例(実験例15、19、20)では、図2に示される絶縁コート電極ローラ34には、画像形成装置の電源39から+1.5kVの直流電圧に矩形波の交流電圧3kVpp、周波数400Hzを重畳したバイアスを印加した。実験例16、17、18の実施例においては、電極ローラに印加される直流電圧、交流電圧のピーク間電圧をそれぞれ変化させた。これにより、実施例1と同様に現像剤供給、除去領域TSにて、現像ローラ33と絶縁コート電極ローラ34との間に振動電界が形成され、現像ローラ上に好適なトナーコートが得られている。
【0097】
【表2】

【0098】
表2は、本実施例の特徴である交流電圧に矩形波形状の交流電圧を用いたときに、表1と同様に絶縁コート電極ローラ34の配置と構成と電源39による印加電圧を変化させたときのべた黒追従性と現像ゴーストを画像評価してまとめたものである。
【0099】
実験例15は、画像評価は非常に良好レベルである。実験例16、17、18は実験例15に対して、矩形波を用いた交流電圧と直流電圧を変化させ、電極ローラ芯金と現像ローラとの間の最大電界と画像評価ランクをまとめたものである。
【0100】
実験例19、20は、実験例15に対して、電極ローラに印加される直流電圧、交流電圧を変えることなく、電極ローラと現像ローラとのギャップを変えたものである。
【0101】
表2に示すように、実験例15〜20によれば、上記最大電界を6.0×106V/m以上にすることによって、画像評価を許容レベルにすることができる。また、実験例15、17、18、19によれば、上記最大電界を8.0×106V/m以上にすることによって、画像評価を良好レベルにすることができる。さらに、実験例15、18によれば、上記最大電界を1.0×107V/m以上にすることによって、画像評価を非常に良好レベルにすることができる。
【0102】
この結果から、実施例1に比べ、画像評価ランクを良化させるために必要な電極ローラ芯金・現像ローラ間最大電界が小さくなっていることがわかる。つまり、交流電圧の波形をサイン波から矩形波に変えることで、電極ローラ芯金34Aと現像ローラ33の間では、より急激な電界変化がえられるのでトナーの供給と除去が効果的に行われる。結果的に電極ローラに印加される交流電圧と直流電圧を小さくできる。
【0103】
なお、本実施例においては、本発明の現像装置を画像形成装置本体20Aに着脱可能な現像カートリッジに適用した場合について説明した。しかしながら、画像形成装置本体内に固定され、トナーのみを補給するような構成の現像装置に適用しても良い。また、図1にて、上記現像装置24と感光ドラム21、クリーニング装置27及び帯電装置22を一体で形成し画像形成装置本体20Aに対し着脱可能としたプロセスカートリッジに適用してもよい。
【0104】
以上から、本実施例では、実施例1で得られる効果に加えて、交流電圧に矩形波を用いることで、より低電圧でトナーの供給と除去を行える。
【0105】
実施例3
図5に、本発明に係る現像装置の他の実施例を示す。本実施例において、現像装置50は、実施例1で説明した画像形成装置に適用し得るものであり、実施例1で説明した画像形成装置の説明を援用する。本実施例の現像装置50も又、その全体構成及び機能は、実施例1及び実施例2の現像装置24と同様であるので、同じ構成及び機能をなす部材には同じ参照番号を付し、再度の説明は省略し、主として、本実施例の特徴部について以下に説明する。
【0106】
図5において、本実施例の現像装置50は、一成分現像剤として非磁性トナー32を収容した現像容器51と、現像容器51内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての現像スリーブ52とを備える。現像装置50は、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化する。
【0107】
現像スリーブ52は、上記開口部にて図に示す右略半周面を現像容器51内に突入し、左略半周面を現像容器51外に露出して横設されている。この現像容器51外へ露出した面は、現像装置50の図中左方に位置する現像部TDにて、感光ドラム21にわずかな微小間隔を有して対向している。即ち、現像時には現像スリーブ52に担持されたトナーは感光ドラムに飛翔することによって現像動作が行なわれる。
【0108】
現像スリーブ52は、矢印K方向に回転駆動され、またその表面は、トナー32との摺擦確率を高くし、かつ、トナー32の搬送を良好に行うための適度な凹凸を有している。
【0109】
本実施例にて、現像スリーブ52は、直径16mmのアルミニウム製スリーブ表面にガラスビーズ(#600)による定形ブラスト処理を施し、表面粗さRzが約3μmとしたものを用いる。現像スリーブ52は、感光ドラム21との間隙が300μmになるように対向し、感光ドラム21の周速50mm/sに対して若干早めた周速80mm/sで回転させた。
【0110】
現像スリーブ52の上方位置には、スリーブ52に担持されたトナーの層の厚さを規制するために、弾性ブレード53が接触している。弾性ブレード53は、ウレタン、シリコン等のゴム材料か、バネ弾性を有するSUS又はリン青銅の金属薄板を基体とし、現像スリーブ52への当接面側にゴム材料を接着したもの等からなる。弾性ブレード53は、ブレード支持板金54に支持され、自由端側の先端近傍を現像スリーブ52の外周面に面接触にて当接するように設けられている。現像スリーブ52に対する弾性ブレード53の当接方向としては、当接部に対して先端側が現像スリーブ52の回転方向上流側に位置する、所謂、カウンター方向になっている。
【0111】
本実施例の弾性ブレード53は、厚さ1.0mmの板状のウレタンゴムをブレード支持板金54に接着した構成になっている。
【0112】
トナー32は、非磁性一成分現像剤であり、前述した実施例1と同じトナーである。
【0113】
本実施例において、現像スリーブ52に印加される現像バイアスは直流電圧−300Vに矩形波の交流電圧Vpp2.2kV、周波数1.8kHzを重畳した。
【0114】
この現像部TDにおいて、現像スリーブ52上に薄層形成されたトナー層は、図5に示すように、電源60によって現像スリーブ52と感光ドラム21の両者間に直流を重畳した交流電圧によって、感光ドラム21上の静電潜像にトナー像として現像される。
【0115】
現像スリーブ52の下方には、現像スリーブ52とのギャップSが150μmとなるように絶縁コート電極ローラ34が配置されている。絶縁コート電極ローラ34は回転可能に支持され、現像スリーブ52と同一方向Lに周速60mm/secの速度で回転駆動する。
【0116】
絶縁コート電極ローラ34には画像形成装置の電源55から表3に示すような直流電圧を印加している。絶縁コート電極ローラ34の構成は、直径11.5mmのSUS製芯金(導電部材)34Aの表面に厚さ100μmのウレタン樹脂(絶縁部材)34Bを積層したものである。
【0117】
なお、本実施例においても実施例1と実施例2同様の現像スリーブ52上へのトナー供給方法、及び、現像スリーブ52上からのトナー除去方法を採用しており、重複する点を省略する。本実施例において、電源55と電源60とが、現像スリーブ52と電極ローラ34との間に形成される振動電界を形成する電界形成装置である。
【0118】
本実施例で、実施例1、実施例2とは異なる絶縁コート電極ローラ34に対する印加電圧構成について説明する。
【0119】
【表3】

【0120】
表3は、絶縁コート電極ローラ34の配置と構成と印加電圧を変化させたときのべた黒追従性と現像ゴーストを画像評価してまとめたものである。
【0121】
本実施例である実験例21、22、23、24において、電極ローラに印加される直流電位は、現像スリーブに印加される直流電位に対して、トナーの正規の帯電極性とは逆極性側となるように設定される。実験例21、22、23、24において、電極ローラに印加される直流電位はそれぞれ異なっている。なお、電極ローラには交流電圧は印加されていない。しかしながら、現像スリーブには交流電圧が印加されているので、現像スリーブと電極ローラとの間に振動電界が形成される。従って、実験例21〜24において、電極ローラの芯金と現像ローラとの間の最大電界もそれぞれ異なっている。
【0122】
上述したように、本実施例では、交流電圧を用いた現像方式であるために、既に現像スリーブ52と絶縁コート電極ローラ34の間に適度な交流電圧が得られている。従って、電極ローラ34に交流電圧を印加しなくても、直流電圧を印加するだけで、画像が良化する結果が得られる。ここで、電極ローラ34に印加される直流電位は、現像スリーブ52に印加される直流電位に対して、トナーの正規の帯電極性とは逆極性側である。
【0123】
本実施例では、現像スリーブ52に印加される直流電位は−300Vであることから、電極ローラ34に印加される直流電位は、−300VからOVまで、更には、0V以上である。電極ローラ34に印加される直流電位は、本実験例22、23、24、21では、それぞれプラス100、600、1100、1600Vである。
【0124】
また、本実施例とは異なり、現像方式で用いている振動電界が小さい場合は、絶縁コート電極ローラに交流電圧を印加して、上記の最大電界を満たすような現像スリーブ52と絶縁コート電極ローラ34の間の電界構成にすればよい。
【0125】
実験例21は、画像評価は非常に良好なレベルである。
【0126】
結果として、絶縁コート電極ローラ34と現像スリーブ52との間の最大電界を1.0×107V/m以上にすることで、べた黒追従性と現像ゴーストが最適になることが分かった。
【0127】
表3の結果をまとめると、実験例21〜24によれば、上記最大電界を6.0×106V/m以上にすることによって、画像評価を許容レベルにすることができる。また、実験例21、23、24よれば、上記最大電界を8.0×106V/m以上にすることによって、画像評価を良好レベルにすることができる。さらに、実験例21、24によれば、上記最大電界を1.0×107V/m以上にすることによって、画像評価を非常に良好レベルにすることができる。
【0128】
なお、実施例3(表3)において、画像評価の許容レベル、良好レベル、非常に良好レベルにおけるそれぞれの最大電界の閾値は、実施例2(表2)と同じであった。即ち、現像ローラに交流電圧を印加しても、電極ローラに交流電圧を印加しても、現像ローラと電極ローラとの間の最大電界が同じであれば、画像評価において同様の作用効果が得られる。
【0129】
また、本実施例においても実施例1、実施例2と同様に、本発明の現像装置を画像形成装置本体20Aに着脱可能な現像装置からなるカートリッジに適用した場合について説明した。しかしながら、画像形成装置本体内に固定され、トナーのみを補給するような構成の現像装置に適用しても良い。また、実施例1と同様に、図1にて、上記現像装置50と感光ドラム21、クリーニング装置27及び帯電装置22を一体で形成し画像形成装置本体20Aに対し着脱可能としたプロセスカートリッジに適用してもよい。
【0130】
以上から、本実施例では、実施例1で得られる効果に加えて、現像バイアスで交流電圧を使用しているため、絶縁コート電極ローラに新たに交流電圧を印加する必要がなく、非接触現像方式であるために更にトナーへの負荷低減となる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例を説明する概略構成図である。
【図2】本発明に係る現像装置の一実施例を説明する概略構成図である。
【図3】本発明に従った現像装置内の現像剤の動きを説明する図である。
【図4】実験例における現像装置内の現像剤の動きを説明する図である。
【図5】本発明に係る現像装置の他の実施例を説明する概略構成図である。
【図6】従来例を説明する図である。
【符号の説明】
【0132】
20 画像形成装置
20A 画像形成装置本体
21 感光ドラム(像担持体)
22 帯電装置
23 露光装置
24 現像装置
25 転写ローラ
27 クリーニング装置
29 定着装置
31 現像容器
32 トナー
33 現像ローラ(現像剤担持体)
34 絶縁コート電極ローラ(現像剤供給除去部材)
34A 導電部材
34B 絶縁部材
35 現像ブレード
39 電源(電界形成装置)
40 現像バイアス電源(電界形成装置)
50 現像装置
51 現像容器
52 現像スリーブ(現像剤担持体)
53 弾性ブレード
55 電源(電界形成装置)
60 現像バイアス電源(電界形成装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持し、像担持体に形成された静電像を現像剤で現像する現像剤担持体を有する現像装置において、
前記現像剤担持体へ現像剤を供給すると共に、前記現像剤担持体から現像剤を除去するために、前記現像剤担持体と離間して設けられた現像剤供給除去部材を備え、
前記現像剤供給除去部材は、導電部材と、前記現像剤供給除去部材の表面に設けられた絶縁部材と、を備え、
前記現像剤供給除去部材から前記現像剤担持体へ現像剤を供給する位置において、前記現像剤担持体の移動方向は前記現像剤供給除去部材の移動方向とは逆方向であり、
前記現像剤担持体と前記現像剤供給除去部材との間で電界を形成する電界形成装置を備え、前記電界は、振動電界であって、前記導電部材の直流電位は、前記現像剤担持体の直流電位と同じか、又は、前記導電部材の直流電位は、前記現像剤担持体の直流電位に対して現像剤の正規の帯電極性とは逆側である、振動電界である、
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤担持体に印加される電圧は、交流電圧なしの直流電圧であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記導電部材の直流電位は、前記現像剤担持体の直流電位と同じであり、前記導電部材に印加される電圧は、サイン波形の交流電圧を備え、前記現像剤担持体と前記導電部材との間に形成される最大電界は、8.0×106V/m以上であることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記導電部材の直流電位は、前記現像剤担持体の直流電位に対して現像剤の正規の帯電極性とは逆側であり、前記導電部材に印加される電圧は、サイン波形の交流電圧を備え、前記現像剤担持体と前記導電部材との間に形成される最大電界は、1.0×107V/m以上であることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項5】
前記最大電界は、1.6×107V/m以上であることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記導電部材の直流電位は、前記現像剤担持体の直流電位に対して現像剤の正規の帯電極性とは逆側であり、前記導電部材に印加される電圧は、矩形波の交流電圧を備え、前記現像剤担持体と前記導電部材との間に形成される最大電界は、6.0×106V/m以上であることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項7】
前記最大電界は、8.0×106V/m以上であることを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記最大電界は、1.0×107V/m以上であることを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
【請求項9】
前記現像剤担持体に印加される電圧は、交流電圧と直流電圧との重畳電圧であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項10】
前記導電部材の直流電位は、前記現像剤担持体の直流電位に対して現像剤の正規の帯電極性とは逆側であり、前記交流電圧は、矩形波形であり、前記現像剤担持体と前記導電部材との間に形成される最大電界は、1.0×107V/m以上であることを特徴とする請求項9に記載の現像装置。
【請求項11】
前記現像剤担持体の周速をd(mm/sec)、前記振動電界の周波数をf(Hz)とすると、2.5<f/d<25を満たすことを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−9412(P2008−9412A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142586(P2007−142586)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】