説明

生分解性エポキシ樹脂組成物及びその硬化物

【課題】 生分解性に優れる硬化物を提供し、住宅や自動車部品に使用される接着剤用途や、半導体分野における液状封止材(アンダーフィル材)等に好適に用いることができるエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される官能基を有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有する生分解性エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性に優れる硬化物を提供することができるエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック成形物の焼却や埋め立てによる廃棄処理が、環境汚染を引き起こすとして大きな社会問題となっている。そこで近年、生分解性プラスチックの開発が進められているが、一般的に熱硬化性樹脂は熱可塑性樹脂(2次元ポリマー)と比較して圧倒的に生分解性が低いことが知られており、実用化されている生分解性プラスチックはポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂である。
【0003】
熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂は、塗料や接着剤、エレクトロニクス材料等に広く使用されており、熱可塑性樹脂分野と同様に、それを用いた製品の廃棄方法に関しても、大きな社会問題となっている。特に住宅、自動車の部品や、エレクトロニクスに使用されるエポキシ樹脂組成物については、生分解性を有する硬化物を提供するエポキシ樹脂への開発要求が高い。該性能を有するエポキシ樹脂としては、例えば、アミノ酸構造を有するジエポキシ化合物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、前記特許文献1に記載されているジエポキシ化合物はアミノ酸構造を有するものの、剛直なウレタン結合を有していることから生分解性に不足し、実用的ではない。また、ウレタン結合を1分子中に複数有する点から融点の高い固形エポキシ樹脂のみしか得ることができず、前述の用途、即ち住宅や自動車部品に使用される接着剤用途や、半導体分野における液状封止材(アンダーフィル材)等の粘度が低いエポキシ樹脂が求められる用途には用いることができない。
【0004】
【特許文献1】特開平5−59031号公報(第4〜6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実状に鑑み、本発明は、生分解性に優れる硬化物を与えることができるエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために生分解性に優れる構造を求めて鋭意検討したところ、下記特定の構造を有するエポキシ樹脂と硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物が、これらの課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0008】
【化1】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される官能基を有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有することを特徴とする生分解性エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、その硬化物が容易に生分解するエポキシ樹脂組成物を提供することができ、さらには、生分解性と低粘度性を兼備する取り扱い性に優れたエポキシ樹脂組成物を容易に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)は、上記一般式(1)で表される構造を有するものである。エポキシ樹脂(A)及びこれを用いて得られる硬化物は、該構造部分より生分解が進行する物と考えられる。
【0011】
エポキシ樹脂(A)としては、より生分解性に優れることから、下記一般式(2)
【0012】
【化2】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは2価の有機基を表す。)
で表されるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0013】
これらのエポキシ樹脂の中でも、生分解性に優れるエポキシ樹脂が得られる点から、前記一般式(2)中の2価の有機基Xが、エチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、ブチレンオキシブチル基、ジ(ブチレンオキシ)ブチル基、トリ(ブチレンオキシ)ブチル基等のポリオキシアルキレン骨格を有するもの、炭素原子数2〜15のアルキレン基、又はシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基であるものが好ましい。
【0014】
これらの中でも、得られるエポキシ樹脂が低粘度であり、硬化物の柔軟性に優れる点、或いはエポキシ樹脂の水溶性に優れることから、前記一般式(2)中のXがポリオキシアルキレン骨格を有するものであることが好ましい。また、得られる硬化物の低吸湿性、誘電特性に優れることから、Xがシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。さらに、得られるエポキシ樹脂の低粘度性、硬化物の柔軟性、低吸湿性、誘電特性にバランス良く優れることから、Xが炭素原子数2〜15のアルキレン基であることが好ましい。
【0015】
また、前記エポキシ樹脂(A)としては、25℃における粘度が200mPa・s以下であることが流動性・作業性や、組成物配合の自由度等の点で好ましい。さらに好ましくは、同条件の粘度が100mPa・s以下である。
【0016】
また、前記エポキシ樹脂(A)としては、水溶性であることが好ましく、具体的には25℃において、後述する希釈価が20以上であることが好ましい。さらに好ましくは、同条件での希釈価が1000以上である。
【0017】
更に該エポキシ樹脂(A)としては、全塩素(ブタノール溶液中で金属ナトリウム処理後に、硝酸銀滴定法にて得られる塩素含有量)が50ppm以下であることが、得られる硬化物の耐湿信頼性に優れることから好ましい。さらに好ましくは10ppm以下である。
【0018】
前記エポキシ樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)とのアセタール化反応による製造方法を挙げることができる。
【0019】
前記アセタール化反応は、ビニルエーテル類(a1)中のビニルエーテル基とグリシドール類(a2)中の水酸基との付加反応であり下記化学反応式
【0020】
【化3】

で表されるものである。
【0021】
前記ビニルエーテル類(a1)としては、特に限定されないが、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、モノビニルエーテル類;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレンレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレンレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレンレングリコールジビニルエーテル、ジブチレングリコールジビニルエーテル、トリブチレングリコールジビニルエーテル、テトラブチレングリコールジビニルエーテル等のポリオキシアルキレン基を含有するジビニルエーテル類;1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,10−デカンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジビニルエーテル等のアルキレン基を有するジビニルエーテル類;1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジオールジビニルエーテル等のシクロアルカン構造を含有するジビニルエーテル類;ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテルのようなジビニルエーテル類;トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテルのような3価ビニルエーテル類、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ペンタエリスリトールエトキシテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテルのような4価ビニルエーテル類;ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)ビニルエーテル多価ビニルエーテル類などが挙げられる。これらのビニルエーテル類を用いることにより、得られるエポキシ樹脂(A)の低粘度性を容易に発現することが可能となる。
【0022】
これらの中でも、得られるエポキシ樹脂が低粘度で流動性が高く、その硬化物の特性バランスが良い点から、ジビニルエーテル類が好ましい。ジビニルエーテル類を用いた場合には、前記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂を得ることができる。前記ジビニルエーテル類としては、得られるエポキシ樹脂の所望の特性を考慮して、適当なものを選択すればよいが、例えば、エポキシ樹脂の低粘度性と硬化物の柔軟性に加えて、優れた水溶性も所望するならば、ポリオキシアルキレン骨格を含有するジビニルエーテル類を用いることが好ましい。又、得られる硬化物の優れた低吸湿性、誘電特性を所望するならば、シクロアルカン骨格を含有するジビニルエーテル類を用いることが好ましい。
【0023】
前記グリシドール類(a2)としては、エポキシ基と水酸基とを有するグリシドールやβ位メチル基置換グリシドールなどが挙げられるが、工業的な入手のし易さや経済性、及び硬化性を考慮するとグリシドールを用いることが好ましい。
【0024】
前記ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)との反応について述べる。反応方法としては、ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)とを仕込み、撹拌混合しながら加熱することによってエポキシ樹脂を得ることができる。この場合、必要に応じて、有機溶媒や触媒を使用することができる。使用できる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族性有機溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒等を挙げることができ、用いる原料や生成物の溶解度などの性状や反応条件や経済性等を考慮して適宜選択すればよい。有機溶媒の量としては、原料重量に対して、5〜500重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0025】
また前記触媒としては、通常、無触媒系においても反応は進行するが、反応速度を高めたり、グリシドールの自己重合を防ぐ低温条件で反応を進めたりするためには、触媒を用いた方が好ましい。その触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酸性燐酸エステル類、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など有機酸、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ、塩化ガリウム、塩化チタン、臭化アルミニウム、臭化ガリウム、三弗化ホウ素エーテル錯体、三弗化ホウ素フェノール錯体などのルイス酸等が挙げられ、添加量としては、原料全重量に対して、10ppm〜5重量%の範囲で用いることができる。これらの中でも、酸性燐酸エステル類が反応速度が良好であり、副反応が少ない点等から特に好ましい。
【0026】
ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)との反応操作条件としては、通常、室温から150℃、好ましくは20〜100℃の温度で、0.5〜30時間程度、加熱撹拌すればよい。反応の進行程度は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー、GPC等を用いて、原料の残存量を測定することによって追跡できる。また有機溶媒を使用した場合は、反応終了後、蒸留等でそれを除去し、触媒を使用した場合は、必要によって失活剤等で失活させて、水洗や濾過操作によって除去することが好ましい。
【0027】
上記反応におけるビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)との反応比率としては、特に限定されず、所望の特性に応じて調製すればよい。例えば、硬化物物性を犠牲にしてでも低粘度を優先するならば、ビニルエーテル基に対して当量以下のグリシドール基の仕込量にして、ビニルエーテル基を残存させてエポキシ化率を下げればよい。それで得られたエポキシ樹脂は、残存ビニルエーテル基を利用した光及び熱カチオン重合システムが応用できる。逆に、硬化物物性を優先するならば、グリシドール基をビニルエーテル基に対して当量以上に仕込んで、ビニルエーテル基からのエポキシ基への添加率を可能な限り高めればよい。反応終了後に残存する過剰のグリシドール類は、アルカリ水洗等に操作でグリセリンまで変化させて、水抽出等で除去すればよい。従って、所望の特性が鑑みながら、ビニルエーテル類とグリシドール類の反応比率が、ビニルエーテル基/グリシドール基=100/25〜100/300(モル比)になるような仕込み条件で反応させればよい。
【0028】
本発明で用いる硬化剤(B)としては、種々のものが使用でき、特に限定されないが、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などの硬化剤を用いることができる。これらの例としては、アミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類や、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類や、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環族ポリアミン類等や、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂が挙げられる。
【0029】
また、酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0030】
また、フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。また潜在性触媒として、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体なども挙げられる。
【0031】
また、これらのアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物等の硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。これらの中でも、特に生分解性が優れる硬化物が得られる点から、フェノールノボラック樹脂が特に好ましいものである。
【0032】
前記硬化剤(B)の使用量としては、硬化が円滑に進行し、良好な硬化物性が得られることから、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤中の活性水素基が0.7〜1.5当量になる量が好ましい。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において前記エポキシ樹脂(A)以外のその他のエポキシ樹脂を併用して使用することができる。併用する場合には、得られる硬化物の生分解性を維持するために前記エポキシ樹脂(A)の全エポキシ樹脂に占める割合が50重量%以上であることが好ましく、特に80重量%以上であることが好ましい。前記その他のエポキシ樹脂としては、特に限定されず種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、アリル基置換型ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルキル基置換型ジヒドロキベンゼン型エポキシ樹脂等のビスフェノール型液状エポキシ樹脂や、1,6−ヘキサンジオール型、ネオペンチルグリコール型、水添ビスフェノールA型、ブチルグリシジルエーテルなどのアルコールエーテル型エポキシ樹脂、アルキルフェノールグリシジルエーテルなどの1官能反応性希釈剤型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのその他のエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0034】
これらの中でも、特に低粘度性が必要となる用途においては、液状エポキシ樹脂と組み合わせることが好ましく、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂等との組み合わせが好適である。またそれらを分子蒸留して高純度化したタイプとの組み合わせはより好ましい。
【0035】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、硬化促進剤を適宜使用することもできる。硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩、等が挙げられ、これらは単独のみならず2種以上の併用も可能であり、リン系ではトリフェニルホスフィン、アミン系では1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン(DBU)などが、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性などが優れるために好ましい。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられ、より環境対応型の硬化物が得られる点から、天然由来の充填材を用いることが好ましい。
【0037】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤、難燃付与剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。例えば、接着剤やアンダーフィル材用に調製されたエポキシ樹脂組成物を作製するためには、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、必要に応じて配合されるその他の配合物を均一になるまで分散器を用いて混合する方法が挙げられる。また、プリント配線基板材料用やCFRP用に調製されたエポキシ樹脂組成物を作製するためには、前記エポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させてワニス状組成物として用いることができる。このエポキシ樹脂組成物溶液(ワニス状組成物)をガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙等の基材、好ましくは、天然由来若しくは生分解性の基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して積層板を得ることができる。
【0039】
本発明の硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を成形硬化させて得ることができ、成型物、積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルムなどの形態を持ち、エポキシ樹脂組成物の粘度、硬化剤種、用途等に応じた硬化方法を選択して行うことが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0041】
合成例1 下記構造式(I)で表されるエポキシ樹脂の合成
【0042】
【化4】

【0043】
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにトリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製:商品名Rapi−Cure DVE−3)202gとグリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)148gを仕込み、室温でメチルアシッドフォスフェート(大八社製:商品名AP−1)1gを添加し、70℃まで昇温して8時間撹拌を続けた。GPCで原料の実質的な消失を確認後、内容物を取り出し、無色透明の液体を351g得た。その樹脂はNMRスペクトル(13C)から、またマススペクトルで理論構造に相当するM=350のピークが得られたことから前記構造式(I)で表されるエポキシ樹脂(A−1)であることを確認した。この樹脂(A−1)のエポキシ当量は188g/eqであり、GPCによって測定された理論構造体〔構造式(I)の構造〕の含有量は71面積%であった。また25℃における粘度(E型粘度計)は34mPa・sであり、全塩素(ブタノール溶液中で金属ナトリウム処理後に、硝酸銀滴定法で求めた値)は定量限界以下(定量限界=10ppm)であった。さらに水溶性評価(希釈価;100mlの三角フラスコにエポキシ樹脂5gを入れて、25℃でマグネットスターラーで撹拌しながら蒸留水を滴下し、白濁に要する蒸留水の容量を求め、下式により算出)において希釈価は1000以上であった。
【0044】
【数1】

【0045】
実施例及び比較例
上記で得られたエポキシ樹脂(A−1)とフェノールノボラック樹脂硬化剤(軟化点80℃、水酸基当量104g/eq)をエポキシ基と水酸基が当量になるような割合で均一混合し、さらに促進剤としてベンジルジメチルアミン0.8部を加え、均一混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。これを鉄シャーレ(直径65mm、高さ12mm)に注ぎ、120℃で1時間さらに175℃で5時間の加熱を行い、厚さ2mmの円盤状硬化物を得た(図1の左写真)。さらに同じ組成物を用いて、離型フィルムで処理したガラス板上に塗布して、厚さ100μmの100mm×30mmのフィルム状硬化物を作製した。
【0046】
また比較例としてビスフェノールA型液状エポキシ樹脂の高純度分子蒸留品〔(A’−1)と略す。エポキシ当量:173g/eq、25℃における粘度:4300mPa・s、全塩素:620ppm〕、1,6−ヘキサンジオール型エポキシ樹脂〔(A’−2)と略す。エポキシ当量:156g/eq、25℃における粘度:25mPa・s、全塩素:63000ppm〕、ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂〔(A’−3)と略す。エポキシ当量:189g/eq、25℃における粘度:41mPa・s、全塩素:43000ppm〕を用いて同様にして円盤状及びフィルム状の硬化物を作製した。これらの硬化物を用いて、下記の生分解性試験(土壌埋没法)を行った。
【0047】
生分解性試験方法
縦内寸15cmのプランターに園芸用培養土を高さが15cmになるように入れ、上記で得られた円盤状及びフィルム状硬化物を表面および底部より10cmの深さに埋没させ、大日本インキ化学工業株式会社(千葉工場)の活性汚泥水を培養土1mあたり20リットル散布した。1週間に1度活性汚泥水を同量散布しながら、25℃暗所の条件下、3週間放置した。
【0048】
その結果、エポキシ樹脂(A’−1)、エポキシ樹脂(A’−2)、エポキシ樹脂(A’−3)を用いて得られたフィルム状、及び円盤状の硬化物には何れも外見上の変化は見られなかったのに対して、エポキシ樹脂(A−1)を用いて得られた円盤状の硬化物は、培養土の表面及び埋没させた何れの硬化物においても硬化物内部まで腐食(変色、液化、カビ発生等)が確認され、明らかに生分解を受けていることが確認できた(図1の右写真参照)。またエポキシ樹脂(A−1)を用いて得られたフィルム状の硬化物では、培養土の表面及び埋没させた何れの硬化物においても完全に消失した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例で得られた円盤状硬化物(左写真)、及び生分解性試験(土中に埋めたもの)3週間後の円盤状硬化物(右写真)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される官能基を有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有する生分解性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは2価の有機基を表す。)
で表されるエポキシ樹脂である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂(A)が、ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)とを反応させて得られるエポキシ樹脂である請求項2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
ビニルエーテル類(a1)が、ジビニルエーテル類である請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
ビニルエーテル類(a1)が、ポリオキシアルキレン骨格、シクロアルカン骨格及びアルキレン骨格からなる群から選ばれる1種以上の骨格を含有するものである請求項4記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ樹脂(A)の25℃における粘度が200mPa・s以下である請求項1〜5の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂(A)の25℃における水に対する希釈価が20以上である請求項6記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
エポキシ樹脂(A)の全塩素が10ppm以下である請求項6記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
硬化剤(B)が、多価ヒドロキシ化合物、酸無水物化合物、アミン系化合物及びイミダゾール系化合物からなる群から選ばれる1種類以上の化合物である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる事を特徴とする生分解性エポキシ樹脂硬化物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−111654(P2006−111654A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297498(P2004−297498)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】