生存率予測アッセイ
【課題】対象の生存可能性を決定するためのアッセイキット及びアッセイ並びにサンプル中の遊離軽鎖(FLC)の総量を決定するためのアッセイキットを提供する。
【解決手段】対象由来サンプル中の遊離軽鎖(FLC)の量を検出することを含み、FLCの量が少ないことが対象の生存率上昇及び/又はより良い全体的健康に関係し、より高レベルのFLCが未検出の医学的問題が存在する可能性を示す、全体的健康のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】対象由来サンプル中の遊離軽鎖(FLC)の量を検出することを含み、FLCの量が少ないことが対象の生存率上昇及び/又はより良い全体的健康に関係し、より高レベルのFLCが未検出の医学的問題が存在する可能性を示す、全体的健康のスクリーニング方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象又は個体の生存可能性を決定するための予測アッセイ及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト個体等の対象で測定した時にその個体の長期生存可能性の指標となるファクターが過去に複数同定されており、例えば、コレステロール、C反応性タンパク質(CRP)、及びシスタチンCが含まれる。高レベルのこれらの化合物は、糖尿病、高血圧、心血管系疾患、及び腎機能障害に関連する。
【0003】
本出願人らは、患者の広範囲の単クローン性免疫グロブリン血症をアッセイする方法として遊離軽鎖を長年研究してきた。診断におけるそのような遊離軽鎖の使用は非特許文献1に詳細に概説されている。
【0004】
抗体は重鎖及び軽鎖を含む。これらは通常、2つの部分からなる対称性(two−fold symmetry)を有し、それぞれが可変領域及び定常領域を含む2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖から構成される。各軽鎖/重鎖対の可変領域が結合して抗原結合部位を形成し、両方の鎖が抗体分子の抗原結合特異性に寄与する。軽鎖にはκ及びλの2種類があり、全ての抗体分子はいずれかの軽鎖をもって産生されるが、両方の軽鎖をもって産生されることはない。ヒトではκ分子の約2倍のλ分子が産生されるが、これは一部の哺乳類では異なる。通常、軽鎖は重鎖に結合している。しかし、個体の血清又は尿中にはいくらかの非結合「遊離軽鎖」が検出可能である。遊離軽鎖は、軽鎖の重鎖への結合によって普段は隠れている遊離軽鎖表面に対して抗体を産生させることにより、特異的に同定することができる。遊離軽鎖(FLC)では、この表面が露出しており、免疫学的に検出することが可能である。κ又はλ遊離軽鎖を検出するための市販のキットとしては、例えば、英国バーミンガムのザ・バインディング・サイト・リミテッド社(The Binding Site Limited)製の「Freelite(商標)」が含まれる。本出願人らは以前に、遊離κの量、遊離λの量、及び/又は遊離κ/遊離λ比を測定することで患者において単クローン性免疫グロブリン血症を検出できることを見出した。これは例えば、完全型(intact)免疫グロブリン多発性骨髄腫(MM)、軽鎖MM、非分泌型MM、ALアミロイドーシス、軽鎖沈着症、くすぶり型MM、形質細胞腫、及びMGUS(意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症)の診断を補助するものとして用いられてきた。FLCの検出は、例えば他のB細胞障害(B−cell dyscrasia)の診断支援としても用いられており、更に、単クローン性免疫グロブリン血症一般を診断するための尿のベンス・ジョーンズタンパク質分析の代替法としても用いられてきた。
【0005】
従来は、λ又はκ軽鎖の一方の増加を観察している。例えば、多発性骨髄腫は、悪性形質細胞の単クローン性増殖により生じ、1種類の免疫グロブリンを産生する1種類の細胞が増加する。その結果、遊離軽鎖λ又はκのいずれかの量の増加が個体内で観察される。この濃度上昇は測定することができ、通常、遊離κ/遊離λ比が測定され、正常範囲と比較される。これは単クローン性疾患の診断の助けとなる。更に、遊離軽鎖アッセイは患者の疾患の処置後の追跡にも用いられ得る。例えばALアミロイドーシスの処置後の患者の予後診断に行われ得る。
【0006】
非特許文献2は、単クローン性免疫グロブリン血症の診断における遊離κ及び遊離λ免疫グロブリンの血清基準範囲及び診断範囲について記載している。21〜90歳の個体を
イムノアッセイで研究し、免疫固定で得られた結果と比較し、B細胞障害を有する個体においてモノクローナル遊離軽鎖(FLC)が検出されるようにイムノアッセイが最適化された。κ及びλFLCの量並びにκ/λ比を記録し、B細胞障害を検出するための基準範囲が決定された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Serum Free Light Chain Analysis, Fifth Edition (2008) A.R. Bradwell et al, ISBN 0704427028
【非特許文献2】Katzman et al (Clin. Chem. (2002); 48(9): 1437-1944)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人らは、FLC、特にトータルFLC用のアッセイを、個体が見かけ上健康な対象である場合でも、個体の長期生存を予測するために用いることができることを見出した。FLC濃度が統計的に有意に長期生存に関連することを見出した。更に、この関連は、コレステロール、クレアチニン、シスタチンC、C反応性タンパク質等の既存の長期生存予測マーカーと同様であるか、それよりも優れていると考えられる。
【0009】
添付の図面を参照して以下に本発明を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】トータルFLC濃度に基づいて三分位群に分類した研究集団の生存確率を示す図である。プロットは、上から順に、ライン1:トータルFLCの中央値濃度が約20mg/lの個体群;ライン2:中央値濃度が28.2mg/lの個体群;ライン3(最も下のライン):中央値濃度が約42mg/lの個体群を示す。16554名の生存プロットである。
【図2】図1の生存プロットに示されている三分位群のトータルFLC濃度の範囲(mg/デシリットルで表す)を示す図である。
【図3】十分位群で表したデータの更なる解析を示す図であり、150ヶ月の時点における十分位群の順でのプロットであり、一番上のラインが第1十分位群であり、一番下のラインが第10十分位群である。
【図4】MGUS及び/又は異常FLC患者を除いたデータを示す図であり、150ヶ月の時点における十分位群の順でのプロットであり、一番上のラインが第1十分位群であり、一番下のラインが第10十分位群である。
【図5】市販されている個別の抗遊離κ及び抗遊離λアッセイキットを用いて得られたトータルFLC濃度を、抗λ及び抗κ遊離軽鎖抗体を併用したトータルFLCアッセイキットを用いて得られたトータルFLC濃度と比較した図である。
【図6a】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6b】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6c】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6d】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6e】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6f】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6g】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6h】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
見かけ上健康な個体に由来する血清中のFLC濃度は、個体の腎臓がFLCをろ過及び排泄する能力にある程度影響される。FLCクリアランスが制限された個体では、血清中に見られるFLCのレベルが上昇する。したがって、FLCは腎機能の良いマーカーであると考えられる。単量体FLCκ分子(25kDa)は二量体λ分子(50kDa)とはサイズが異なるので、合わせて、これらは、例えばシスタチンC(10kDa)よりも優れた糸球体ろ過のマーカーである。しかし、シスタチンCと異なり、B細胞増殖中のFLC産生は多くの疾患で生じ、血清FLCは通常、それだけでは腎機能マーカーとして使用されない。データは、慢性腎疾患(CKD)の患者であっても、FLCが腎機能に関係なく生存確率を与えることを示している。
【0012】
しかし、B細胞増殖/活性のマーカーは重要であり、B細胞はFLCの産生に関与するので、FLC産生は臨床的に有用である。FLCの産生は、B細胞のアップレギュレーションの早期指標となる。これに関して、T細胞を介した炎症反応マーカーであるCRPの使用を補完する。
【0013】
高FLC濃度は、慢性的な腎障害、B細胞活性化、又はB細胞増殖を示すと考えられる。したがって、異常なFLCアッセイの結果は、現在複数の試験を併用する必要がある種々の疾患のマーカーとなり得る。この反対(FLCアッセイの結果が正常である場合)は、良好な腎機能及びB細胞の活性化又は増殖がないことを示す。したがってここで、FLC濃度は個体の全体的健康の良い指標と見なされる。
【0014】
本発明は、全体的健康をスクリーニングする方法であって、当該方法は、対象に由来するサンプル中の遊離軽鎖の量を検出することを含み、量が少ないことが生存率の上昇(increased survival)及び/又はより良い全体的健康に関連し、より高レベルのFLCは未検出の医学的問題が存在する可能性を示す。このアッセイは、例えば、対象の全体的健康チェックの一部としての全体的健康スクリーニングの一部として使用され得る。あるいは、具体的でない「全身倦怠感」、「具合が悪い(under the weather)」、又は「全体的に気分が優れない(generally unwell)」といった種類の症状を持続的に訴える患者において使用され得る。あるいはアッセイは、心理的原因によって気分が優れない患者と、症状の特定困難な生理学的原因によって気分が優れない患者とを区別するために、患者において使用され得る。
【0015】
FLCの量を予め決められたFLCの正常範囲と比較して、FLCの量が正常範囲より多いか少ないかを示してもよい。
【0016】
FLCはκFLC又はλFLCであり得る。しかし、κFLC又はλFLCだけを検出すると、例えば患者において単クローン性に産生された一方又は他方のFLCの異常に高いレベルを見逃すことがあるので、トータルFLC濃度を測定することが好ましい。
【0017】
トータル遊離軽鎖とは、サンプル中の遊離κ軽鎖及び遊離λ軽鎖を足した総量を意味する。
【0018】
好ましくは、対象は見かけ上健康な対象である。
【0019】
本発明において、「見かけ上健康な対象(apparently healty subject)」とは、(例えば後述するような)生命に関わる疾患又は状態の明らかな症状を有さない対象を指すと理解される。
【0020】
好ましくは、方法は、対象において全生存率を予測する方法を提供する。これは、例えば、B細胞関連の疾患又は障害の診断又は具体的症状を有さない対象におけるものであり得る。
【0021】
好ましくは、見かけ上健康な対象は、必ずしもB細胞関連疾患の症状を有しない。症状としては、反復感染、骨痛、及び疲労が含まれ得る。そのようなB細胞関連疾患は、好ましくは、骨髄腫、(例えば完全型免疫グロブリン骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌型骨髄腫)、MGUS、ALアミロイドーシス、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、濾胞中心細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、プレB細胞白血病、又は急性リンパ芽球性白血病ではない。更に、個体は通常、骨髄機能が低下していない。個体は典型的には、多くのそのような疾患で通常見られる異常なλ:κFLC比を有さない。
【0022】
「トータル遊離軽鎖」という用語は、対象に由来するサンプル中のκ遊離軽鎖とλ遊離軽鎖を足した量を意味する。
【0023】
サンプルは通常、対象に由来する血清サンプルである。しかし、全血、血漿、尿、又は組織若しくは体液等のその他のサンプルも使用され得る。
【0024】
典型的には、トータルFLC等のFLCは、ELISAアッセイ等のイムノアッセイにより、又はLuminex(商標)ビーズ等の蛍光標識ビーズを用いて決定される。
【0025】
ELISAは、例えば抗体を用いて特異的抗原を検出する。アッセイで使用される抗体の1又は複数が、基質を検出可能な分析物に変換することができる酵素で標識されていてよい。そのような酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及び当該技術分野で公知のその他の酵素が含まれる。あるいは、酵素の代わりに、又は酵素と一緒に、その他の検出可能なタグ又は標識を用いてもよい。そのようなものとしては、ラジオアイソトープ、当該技術分野で公知の様々な着色標識及び蛍光標識、例えばフルオレセイン、Alexa fluor、オレゴングリーン、BODIPY、ローダミンレッド、Cascade Blue、Marina Blue、Pacific Blue、Cascade Yellow、金;及びビオチン等のコンジュゲート(例えば、英国のインビトロジェン社から入手可能)が含まれる。色素ゾル、金属ゾル、化学発光標識、又は着色ラテックスも使用され得る。これらの標識の1又は複数を本明細書に記載の種々の態様に従ってELISAアッセイに使用してよく、あるいは、他のアッセイにおいて、本明細書に記載の標識抗体又はキットを使用してもよい。
【0026】
ELISAタイプのアッセイの構築自体は当該技術分野で周知である。例えば、FLCに特異的な「結合抗体」を支持体上に固定する。「結合抗体」は当該技術分野で周知の方法により支持体上に固定することができる。サンプル中のFLCは、FLCに結合する「結合抗体」を介して、支持体上に結合する。
【0027】
結合しなかった免疫グロブリンは洗い流される。
【0028】
ELISAアッセイでは、結合した免疫グロブリンの存在は、関心のあるFLCの結合抗体とは異なる部分に特異的な標識された「検出抗体」を用いて決定することができる。
【0029】
関心のあるFLCの結合を検出するためにフローサイトメトリーを用いてもよい。この技術は例えば細胞選別に関する分野で周知である。しかし、ビーズ等の標識粒子の検出及びそのサイズの測定にも利用することができる。Practical Flow Cytometry, 3rd Ed. (1994), H. Shapiro, Alan R. Liss, New York, and Flow Cytometry, First Principles (2nd Ed.) 2001, A. L. Given, Wiley Liss.等の多くの教科書にフローサイトメトリーは記載されている。
【0030】
FLC特異的抗体等の結合抗体の1つは、ポリスチレン又はラテックスビーズ等のビーズに結合している。ビーズをサンプル及び2次検出抗体と混合する。検出抗体は、好ましくは、検出可能なラベルで標識されており、これはサンプル中で検出されるべきFLCに結合する。その結果、アッセイされるFLCが存在すると、ビーズが標識される。
【0031】
本明細書に記載されている他の分析物を検出できるように、それらの分析物に特異的なその他の抗体を用いてもよい。
【0032】
その後、標識ビーズはフローサイトメトリーで検出され得る。異なる標識、例えば異なる蛍光標識を、例えば抗遊離λ抗体及び抗遊離κ抗体に使用してもよい。本明細書に記載されている他の分析物が検出できるように、それらの分析物に特異的なその他の抗体をこのアッセイ又は本明細書に記載されている他のアッセイで使用してもよい。これにより、結合した各型のFLCの量を同時に測定することができ、又はその他の分析物の存在を決定することができる。
【0033】
あるいは、又はそれに加えて、サイズの異なるビーズを、異なる抗体、例えば異なるマーカー特異的抗体に使用してもよい。フローサイトメトリーは異なるサイズのビーズを識別することができるので、サンプル中の各FLC又は他の分析物の量を迅速に決定することができる。
【0034】
別の方法では、例えば、市販のLuminex(登録商標)ビーズ等の蛍光標識ビーズに結合した抗体を使用する。異なる抗体に異なるビーズを使用する。異なるビーズが異なる蛍光団混合物で標識されていることで、蛍光波長により異なる分析物を測定することが可能になる。Luminexビーズは、米国テキサス州オースティンのルミネックス社(Luminex Corporation)から入手可能である。
【0035】
好ましくは、用いられるアッセイは比濁法である。λFLC又はκFLCを検出するための比濁アッセイは当該技術分野で一般的に公知であるが、トータルFLCのアッセイは公知ではない。これらはアッセイの感度が最高レベルである。λFLC及びκFLCの濃度は別々に決定してもよく、トータルFLC用の単一のアッセイで決定してもよい。そのようなアッセイは、典型的には50:50の比率で抗κFLC抗体及び抗λFLC抗体を含む。
【0036】
抗体を遊離λ軽鎖及び遊離κ軽鎖の混合物に対して産生させてもよい。
【0037】
トータルFLCの量が正常値より多いか少ないかを決定するために、標準的な所定の値と比較してもよい。
【0038】
以下に詳細に記載するように、本出願人らは、正常よりも高い濃度の血清FLCが生存率低下の可能性の有意な上昇に関連することを見出した。例えば血清FLCレベルがより低い人々よりもそうである。本明細書に記載のデータから、血清FLCの正常レベルは通常、約15〜35mg/L又は20〜35mg/L、26〜35mg/l、又は好ましくは25〜32、又は24〜33mg/lのトータルFLCである。33超、例えば34超
、36超、40超、42超、48超、50超、52超、55超、70mg/l超のトータル血清FLCは、早期死亡の可能性の高まりを示す。個体の血清中において33mg/ml又は30未満、28未満、26未満、又は25mg/l未満であることは、対象の生存率の有意な上昇に関連する。生存確率の上昇は、2年、4年、6年、8年、10年、12年、14年、16年、又はそれ以上の期間に及び得る。本出願人らは、より低いFLC濃度と生存率上昇の確率との関連が160ヶ月を超える期間にわたり有意であることを見出した(例えば図1参照)。
【0039】
これまで製造されてきたアッセイキットは、κ及びλFLCを別々に測定して比率を計算することができるというものであった。これらは疾患症状を既に示している個体において従来使用されてきた。
【0040】
アッセイは、サンプル中のFLC(例えばトータルFLC)を例えば約1〜100mg/L又は1〜80mg/Lで測定できることが好ましい。これにより、異なる希釈率でサンプルを再度アッセイせずとも、大多数の個体において血清FLC濃度が検出されると予想される。
【0041】
より低い濃度を観察することを新たに強調しているが、これは、好ましくは、診断アッセイが30mg/L未満、より好ましくは20mg/L未満又は10mg/L未満、4mg/L又は1mg/Lの血清FLCを検出できることを意味する。
【0042】
好ましくは、方法は、イムノアッセイを用いて、例えば抗遊離κ軽鎖抗体及び抗遊離λ軽鎖抗体又はそれらの断片の混合物を用いて、サンプル中のトータル遊離軽鎖の量を検出することを含む。そのような抗体は、抗κ抗体:抗λ抗体=50:50であり得る。FLCに結合した抗体又は断片は、標識された抗体又は断片を用いて直接検出されてもよく、抗遊離λ抗体又は抗遊離κ抗体に対する標識抗体を用いて間接的に検出されてもよい。
【0043】
抗体はポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体は、同じ鎖の異なる部分に対して産生されるので、検出すべき同じ種類の軽鎖間でのいくらかの可変性に対応するため、ポリクローナル抗体が使用され得る。ポリクローナル抗体の産生は例えば国際公開第97/17372号に記載されている。
【0044】
好ましくは、特定され、全生存率が高い可能性を有意に示すとされる血清FLC(例えばトータルFLC)の量は、33未満、32未満、31未満、30未満、28未満、26未満、25未満、24mg/ml未満、20mg/L未満、又は15mg/L未満である。
【0045】
逆に、33mg/L超、特に34、36、38、40、50、55、60超、又は70mg/ml超のレベルは、対象における全体的死亡率(overall death)が高い可能性を示すと見なされる。この方法を用いて、見かけ上健康な対象において、より悪い予後を示してもよく、あるいは、未検出の医学的問題が存在する可能性を強調し、更なる検査を正当化してもよい。
【0046】
サンプル中の1又は複数の更なるマーカーを試験してもよい。そのようなマーカーとしては、コレステロール、クレアチニン(腎機能のマーカー)、シスタチンC、又はCRPが含まれる。そのようなアッセイの使用は当該技術分野で一般的に公知である。更なるマーカーの使用は、更なるデータを提供し、予測の精度を向上させるか、潜在的な疾患/医学的問題の診断の助けとなることが予想される。
【0047】
更に、例えば本発明の方法で用いるための、トータルFLC用のアッセイキットが提供
される。キットはサンプル中のトータルFLC量を検出し得る。そのようなアッセイキットは、25mg/L未満、最も好ましくは、サンプル中の約20mg/L未満、10mg/L、5mg/L未満、又は4mg/L未満のトータル遊離軽鎖(FLC)の量を検出するように適合されていてよい。アッセイキットは、例えば比濁アッセイキットであり得る。好ましくは、キットは、FLCに対する1又は複数の抗体を含むイムノアッセイキットである。典型的には、キットは、抗κFLC抗体及び抗λFLC抗体の混合物を含む。典型的には、抗遊離κ抗体及び抗遊離λ抗体の50:50混合物が使用される。キットは、サンプル中の1〜100mg/L又は好ましくは1〜80mg/Lのトータル遊離軽鎖を検出するように適合されていてよい。
【0048】
FLCに結合できる(Fab)2又はFab抗体等の抗体断片を使用してもよい。
【0049】
抗体又は断片は、例えば前述した標識を用いて標識化されていてもよい。FLCに結合した抗遊離λ又は抗遊離κを検出するために、標識された抗免疫グロブリン結合抗体又はその断片が提供されてもよい。
【0050】
キットは、前述したコレステロール、クレアチニン等のその他のマーカーを試験するための構成要素を含むより大きな試験アッセイキットの一部であってもよい。そのようなマーカー用の抗体が提供されてもよい。
【0051】
キットは、指定の範囲にアッセイを較正するための較正液(calibrator fluid)を含み得る。較正液は、好ましくは、例えば25mg/ml未満、20mg/ml未満、10mg/ml未満、5mg/L未満、又は1mg/Lまでの所定の濃度のFLCを含む。また、キットは、ラテックス粒子上にコーティングされた「ブロッキング」タンパク質及び抗体の量を最適化することにより及び例えばポリエチレングリコール(PEG)濃度等の補助的試薬の濃度を最適化することにより適合され得る。
【0052】
キットは、例えばFLC用又はアッセイされ得るコレステロール、クレアチニン、シスタチンC、CRP(C反応性タンパク質)等のその他の化合物用の複数の標準対照を含み得る。標準対照は、FLC又はその他の要素の濃度について作成される標準曲線の検証に使用され得る。そのような標準対照により、以前に較正された標準曲線が現在使用されている試薬及び条件に妥当であることが確認される。これらは通常、対照由来サンプルのアッセイとほぼ同時に使用される。標準は、アッセイがより低い濃度の遊離軽鎖を検出できるように、FLC用に20mg/L未満、より好ましくは15mg/L未満、約10mg/L未満、又は5mg/L未満の1又は複数の標準を含み得る。
【0053】
アッセイキットは、比濁法キットであり得る。これは、ELISA、フローサイトメトリー、蛍光、化学発光、ビーズタイプのアッセイ、又はディップスティックであり得る。そのようなアッセイは当該技術分野で一般的に公知である。
【0054】
アッセイキットは更に、本発明に係る方法で使用するための説明書を含んでもよい。説明書は、正常値と見なされるトータル遊離軽鎖の濃度の指標を含んでもよく、それより低い又は高いことは、固体の生存確率の上昇又は低下を示す。そのような濃度は上記で定義した通りであり得る。
【実施例】
【0055】
米国のメイヨークリニックは、ミネソタ州オルムステッド郡で、50歳以上(1995年1月1日時点)の20,000名を超える居住者をモニタリングした。英国バーミンガムのザ・バインディング・サイト・グループ・リミテッド社製の遊離κ軽鎖及び遊離λ軽鎖用「Freelite(商標)アッセイを用いて、保存された凍結血清中のFLC濃度
を遡及的に測定した。Freeliteアッセイは、多発性骨髄腫、ALアミロイドーシス等の形質細胞疾患(plasma cell disorder)の診断及びモニタリングの補助としてFDAに承認されている市販の比濁アッセイである。これらの疾患では通常、λ又はκFLCのいずれかの濃度の上昇及び異常なFLC比が生じる。
【0056】
保存血清中のFLC測定におけるメイヨークリニックの研究者らの調査目的は、異常なFLC比及びFLCの一方又は両方の濃度の上昇を有する対象がいるかどうかを決定することであった。次いで、そのようなFLC異常を有するが、インタクトな単クローン性免疫グロブリン産生の証拠がない対象を検査し、対象の悪性の形質細胞疾患のリスクが高いかどうかを決定した。
【0057】
しかし、本出願人らは、モノクローナル免疫グロブリン又はモノクローナルFLCの産生の証拠がない対象の分析が、トータルFLCレベルがより低い対象の生存率上昇を示すと推測した。上記のデータはこのことが正しかったことを実証している。
【0058】
図1は、トータル血清FLC濃度に基づいて三分位群に分けた集団の生存プロットを示す図である。第1、第2、及び第3三分位群(上から順に)の特徴を以下の表に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
データの分布を図2に示す。
【0061】
データを更に解析し、全対象並びにMGUS及び/又は異常FLC比の徴候を示さない対象について十分位群に分けたデータを得た。十分位群のレベルを以下の表に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
図3及び4は、全患者についてのデータ並びにMGUS及び/又は異常FLC比患者を除いたデータを示す図であり、生存率はMGUS及び/又は異常FLC比を有することに有意に起因しないことを示している。FLCのレベルが高い程、生存率は低い。ラインは、150ヶ月の位置において上から順に、それぞれ第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、及び第10十分位群を表し、生存率とFLC濃度の間の良好な相関を示している。
【0064】
アッセイキット
本発明に係る方法では以下のアッセイキットが使用され得る。このアッセイキットは、血清等の患者サンプル中に存在する遊離κ及び遊離λ軽鎖の合計を定量する。これは、100nmのカルボキシル修飾ラテックス粒子を、抗遊離κ及び抗遊離λ軽鎖ヒツジ抗体の50:50ブレンドでコーティングすることにより実現され得る。以下に例示するアッセイでは、トータル遊離軽鎖の測定範囲は1〜80mg/Lである。しかし、別の測定範囲も同様に考慮することができる。
【0065】
当該技術分野で一般的に公知の技術を用いて、今回の特定のケースではヒツジを用いて、抗遊離κ及び抗遊離λ抗血清を作製する。一般的な免疫化プロセスは国際公開第97/17372号に記載されている。
【0066】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて抗κ及び抗λ抗血清を等濃度に希釈した。それらの抗体を合わせて、50%抗κ抗体及び50%抗λ抗体を含む抗血清を調製した。
【0067】
カルボキシル修飾ラテックス上にコーティング量10mg/ロットで抗体をコーティングした。これは標準的な手法を用いてなされた(例えば"Microparticle Reagent Optimization: A laboratory reference manual from the authority on microparticles" Eds: Caryl Griffin, Jim Sutor, Bruce Shull. Copyright Seradyn Inc, 1994 (P/N 0347835(1294)参照)。
【0068】
この文献は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いたアッセイキットの最適化についても詳細に記載している。
【0069】
合わせた抗体を、市販のκ及びλのFreelite(商標)キット(英国バーミンガムのザ・バインディング・サイト・グループ・リミテッド社から入手)を用いて得られた結果と比較した。これらのFreelite(商標)キットは別個のアッセイでκ遊離軽鎖の量及びλ遊離軽鎖の量を特定する。トータルFLCキットを用いて曲線を作成し、調整された濃度を用いて検証した。較正曲線は1〜80mg/lのトータル遊離軽鎖について得ることができた。以下の結果の表中、結果は、κFreelite(商標)、λFreelite(商標)、及びトータル遊離軽鎖アッセイを用いてκ遊離軽鎖(KFLC)、λ遊離軽鎖(LFLC)、及びトータルFLCについて得たものである。これらの結果を15の異なる正常血清サンプルについて示す。比濁法により測定した結果を以下の表及び図5に示す。
【0070】
結果は、抗κ及び抗λ遊離軽鎖抗体に基づいてトータル遊離軽鎖アッセイを用いる原理が有効であることを示している。
【0071】
【表3】
【0072】
C反応性タンパク質(CRP)及びFLCの濃度は種々のファクターの影響を受ける
導入
C反応性タンパク質(CRP)は、陽性の急性期タンパク質であり、特定の腫瘍に反応して、及び、炎症反応中に、血清中で濃度が高まる。免疫グロブリン遊離軽鎖(FLC)は免疫グロブリン合成の「副産物」として生成すると考えられるため、これら2つのタンパク質の血清濃度間にある程度の相関がある可能性があった。以下の研究の目的は、集中治療室の患者から得た連続血清サンプル中における2つのタンパク質の濃度を決定するこ
とであり、これらの患者は、典型的には、集中治療中にCRP濃度の有意な変化を示すと予想される。
【0073】
患者及び方法
患者は全員、種々の理由により(集中治療室内で)検査及び治療介入を受けていた。患者が治療室内にいる時間中、連続血液サンプルを採取し、CRP及びFLCの濃度を免疫比濁法により測定した。FLCは前述した通りに測定した。CRPはロシュ社(Roche)から市販されているキット(CRPL3 Tima−quant C−Reactive Protein)を用いて測定した。
【0074】
結果
結果を添付のグラフに示す(図6参照)。一部の患者は、FLC及びCRPの両方の濃度の変化についてかなり良好な一致を示した。別の患者は、モニタリング期間の全期間ではないが一部において同様な傾向を示した。複数の患者では、FLC濃度の変化がCRP濃度の変化と逆であった。
【0075】
結論
一部の患者はCRP濃度とFLC濃度の変化にある程度の類似性を示したが、別の患者は、変化パターンが大きく異なっていた。このことは、種々のファクターが両タンパク質の濃度を制御しており、それらに互換性があるとは見なせないことを示している。
【0076】
更なるデータ
生存率のデータ解析を世界の別の場所の患者に由来する種々のサンプルを用いて繰り返した。ドイツのエッセンの4000名を超える患者のコホートから、上記と同様な結果が得られた。血清タンパク質の電気泳動の要求と一緒に血清遊離軽鎖を測定された、英国ウルバーハンプトンのニュークロス病院(New Cross Hospital)の約500名の患者を、生存率について追跡検査した。生存率において同様な差が観察され、60ヶ月後において、第1五分位群では生存率が約98%であり、第5五分位群では生存率が50%であった(データ示さず)。
【0077】
更に、英国バーミンガムのクイーン・エリザベス病院(Queen Elizabeth Hospital)で慢性腎疾患(CKD)を有する1328名の患者を研究した。これらのうち、897名が種々の原因によるCKDを有し、384名は腎移植を受けており、47名は通常の血液透析を受けていた。年齢、性別、及び民族性で補正した血清クレアチニン濃度に基づいて種々のCKDステージにグループ化した患者の生存について研究した(データ示さず)。研究の結果、ここでも遊離κ及び遊離λを合わせた濃度がCKDのステージに関係なく生存に関するリスクを示すことが示された。したがって、FLC濃度及び生存は、単純に腎機能に依存するのではなく、他のファクターにも依存する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象又は個体の生存可能性を決定するための予測アッセイ及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト個体等の対象で測定した時にその個体の長期生存可能性の指標となるファクターが過去に複数同定されており、例えば、コレステロール、C反応性タンパク質(CRP)、及びシスタチンCが含まれる。高レベルのこれらの化合物は、糖尿病、高血圧、心血管系疾患、及び腎機能障害に関連する。
【0003】
本出願人らは、患者の広範囲の単クローン性免疫グロブリン血症をアッセイする方法として遊離軽鎖を長年研究してきた。診断におけるそのような遊離軽鎖の使用は非特許文献1に詳細に概説されている。
【0004】
抗体は重鎖及び軽鎖を含む。これらは通常、2つの部分からなる対称性(two−fold symmetry)を有し、それぞれが可変領域及び定常領域を含む2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖から構成される。各軽鎖/重鎖対の可変領域が結合して抗原結合部位を形成し、両方の鎖が抗体分子の抗原結合特異性に寄与する。軽鎖にはκ及びλの2種類があり、全ての抗体分子はいずれかの軽鎖をもって産生されるが、両方の軽鎖をもって産生されることはない。ヒトではκ分子の約2倍のλ分子が産生されるが、これは一部の哺乳類では異なる。通常、軽鎖は重鎖に結合している。しかし、個体の血清又は尿中にはいくらかの非結合「遊離軽鎖」が検出可能である。遊離軽鎖は、軽鎖の重鎖への結合によって普段は隠れている遊離軽鎖表面に対して抗体を産生させることにより、特異的に同定することができる。遊離軽鎖(FLC)では、この表面が露出しており、免疫学的に検出することが可能である。κ又はλ遊離軽鎖を検出するための市販のキットとしては、例えば、英国バーミンガムのザ・バインディング・サイト・リミテッド社(The Binding Site Limited)製の「Freelite(商標)」が含まれる。本出願人らは以前に、遊離κの量、遊離λの量、及び/又は遊離κ/遊離λ比を測定することで患者において単クローン性免疫グロブリン血症を検出できることを見出した。これは例えば、完全型(intact)免疫グロブリン多発性骨髄腫(MM)、軽鎖MM、非分泌型MM、ALアミロイドーシス、軽鎖沈着症、くすぶり型MM、形質細胞腫、及びMGUS(意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症)の診断を補助するものとして用いられてきた。FLCの検出は、例えば他のB細胞障害(B−cell dyscrasia)の診断支援としても用いられており、更に、単クローン性免疫グロブリン血症一般を診断するための尿のベンス・ジョーンズタンパク質分析の代替法としても用いられてきた。
【0005】
従来は、λ又はκ軽鎖の一方の増加を観察している。例えば、多発性骨髄腫は、悪性形質細胞の単クローン性増殖により生じ、1種類の免疫グロブリンを産生する1種類の細胞が増加する。その結果、遊離軽鎖λ又はκのいずれかの量の増加が個体内で観察される。この濃度上昇は測定することができ、通常、遊離κ/遊離λ比が測定され、正常範囲と比較される。これは単クローン性疾患の診断の助けとなる。更に、遊離軽鎖アッセイは患者の疾患の処置後の追跡にも用いられ得る。例えばALアミロイドーシスの処置後の患者の予後診断に行われ得る。
【0006】
非特許文献2は、単クローン性免疫グロブリン血症の診断における遊離κ及び遊離λ免疫グロブリンの血清基準範囲及び診断範囲について記載している。21〜90歳の個体を
イムノアッセイで研究し、免疫固定で得られた結果と比較し、B細胞障害を有する個体においてモノクローナル遊離軽鎖(FLC)が検出されるようにイムノアッセイが最適化された。κ及びλFLCの量並びにκ/λ比を記録し、B細胞障害を検出するための基準範囲が決定された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Serum Free Light Chain Analysis, Fifth Edition (2008) A.R. Bradwell et al, ISBN 0704427028
【非特許文献2】Katzman et al (Clin. Chem. (2002); 48(9): 1437-1944)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人らは、FLC、特にトータルFLC用のアッセイを、個体が見かけ上健康な対象である場合でも、個体の長期生存を予測するために用いることができることを見出した。FLC濃度が統計的に有意に長期生存に関連することを見出した。更に、この関連は、コレステロール、クレアチニン、シスタチンC、C反応性タンパク質等の既存の長期生存予測マーカーと同様であるか、それよりも優れていると考えられる。
【0009】
添付の図面を参照して以下に本発明を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】トータルFLC濃度に基づいて三分位群に分類した研究集団の生存確率を示す図である。プロットは、上から順に、ライン1:トータルFLCの中央値濃度が約20mg/lの個体群;ライン2:中央値濃度が28.2mg/lの個体群;ライン3(最も下のライン):中央値濃度が約42mg/lの個体群を示す。16554名の生存プロットである。
【図2】図1の生存プロットに示されている三分位群のトータルFLC濃度の範囲(mg/デシリットルで表す)を示す図である。
【図3】十分位群で表したデータの更なる解析を示す図であり、150ヶ月の時点における十分位群の順でのプロットであり、一番上のラインが第1十分位群であり、一番下のラインが第10十分位群である。
【図4】MGUS及び/又は異常FLC患者を除いたデータを示す図であり、150ヶ月の時点における十分位群の順でのプロットであり、一番上のラインが第1十分位群であり、一番下のラインが第10十分位群である。
【図5】市販されている個別の抗遊離κ及び抗遊離λアッセイキットを用いて得られたトータルFLC濃度を、抗λ及び抗κ遊離軽鎖抗体を併用したトータルFLCアッセイキットを用いて得られたトータルFLC濃度と比較した図である。
【図6a】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6b】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6c】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6d】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6e】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6f】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6g】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【図6h】患者由来血清中でのC反応性タンパク質(CRP)レベル及びFLCレベルを比較した図であり、これらが互いに関連しないことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
見かけ上健康な個体に由来する血清中のFLC濃度は、個体の腎臓がFLCをろ過及び排泄する能力にある程度影響される。FLCクリアランスが制限された個体では、血清中に見られるFLCのレベルが上昇する。したがって、FLCは腎機能の良いマーカーであると考えられる。単量体FLCκ分子(25kDa)は二量体λ分子(50kDa)とはサイズが異なるので、合わせて、これらは、例えばシスタチンC(10kDa)よりも優れた糸球体ろ過のマーカーである。しかし、シスタチンCと異なり、B細胞増殖中のFLC産生は多くの疾患で生じ、血清FLCは通常、それだけでは腎機能マーカーとして使用されない。データは、慢性腎疾患(CKD)の患者であっても、FLCが腎機能に関係なく生存確率を与えることを示している。
【0012】
しかし、B細胞増殖/活性のマーカーは重要であり、B細胞はFLCの産生に関与するので、FLC産生は臨床的に有用である。FLCの産生は、B細胞のアップレギュレーションの早期指標となる。これに関して、T細胞を介した炎症反応マーカーであるCRPの使用を補完する。
【0013】
高FLC濃度は、慢性的な腎障害、B細胞活性化、又はB細胞増殖を示すと考えられる。したがって、異常なFLCアッセイの結果は、現在複数の試験を併用する必要がある種々の疾患のマーカーとなり得る。この反対(FLCアッセイの結果が正常である場合)は、良好な腎機能及びB細胞の活性化又は増殖がないことを示す。したがってここで、FLC濃度は個体の全体的健康の良い指標と見なされる。
【0014】
本発明は、全体的健康をスクリーニングする方法であって、当該方法は、対象に由来するサンプル中の遊離軽鎖の量を検出することを含み、量が少ないことが生存率の上昇(increased survival)及び/又はより良い全体的健康に関連し、より高レベルのFLCは未検出の医学的問題が存在する可能性を示す。このアッセイは、例えば、対象の全体的健康チェックの一部としての全体的健康スクリーニングの一部として使用され得る。あるいは、具体的でない「全身倦怠感」、「具合が悪い(under the weather)」、又は「全体的に気分が優れない(generally unwell)」といった種類の症状を持続的に訴える患者において使用され得る。あるいはアッセイは、心理的原因によって気分が優れない患者と、症状の特定困難な生理学的原因によって気分が優れない患者とを区別するために、患者において使用され得る。
【0015】
FLCの量を予め決められたFLCの正常範囲と比較して、FLCの量が正常範囲より多いか少ないかを示してもよい。
【0016】
FLCはκFLC又はλFLCであり得る。しかし、κFLC又はλFLCだけを検出すると、例えば患者において単クローン性に産生された一方又は他方のFLCの異常に高いレベルを見逃すことがあるので、トータルFLC濃度を測定することが好ましい。
【0017】
トータル遊離軽鎖とは、サンプル中の遊離κ軽鎖及び遊離λ軽鎖を足した総量を意味する。
【0018】
好ましくは、対象は見かけ上健康な対象である。
【0019】
本発明において、「見かけ上健康な対象(apparently healty subject)」とは、(例えば後述するような)生命に関わる疾患又は状態の明らかな症状を有さない対象を指すと理解される。
【0020】
好ましくは、方法は、対象において全生存率を予測する方法を提供する。これは、例えば、B細胞関連の疾患又は障害の診断又は具体的症状を有さない対象におけるものであり得る。
【0021】
好ましくは、見かけ上健康な対象は、必ずしもB細胞関連疾患の症状を有しない。症状としては、反復感染、骨痛、及び疲労が含まれ得る。そのようなB細胞関連疾患は、好ましくは、骨髄腫、(例えば完全型免疫グロブリン骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌型骨髄腫)、MGUS、ALアミロイドーシス、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、濾胞中心細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、プレB細胞白血病、又は急性リンパ芽球性白血病ではない。更に、個体は通常、骨髄機能が低下していない。個体は典型的には、多くのそのような疾患で通常見られる異常なλ:κFLC比を有さない。
【0022】
「トータル遊離軽鎖」という用語は、対象に由来するサンプル中のκ遊離軽鎖とλ遊離軽鎖を足した量を意味する。
【0023】
サンプルは通常、対象に由来する血清サンプルである。しかし、全血、血漿、尿、又は組織若しくは体液等のその他のサンプルも使用され得る。
【0024】
典型的には、トータルFLC等のFLCは、ELISAアッセイ等のイムノアッセイにより、又はLuminex(商標)ビーズ等の蛍光標識ビーズを用いて決定される。
【0025】
ELISAは、例えば抗体を用いて特異的抗原を検出する。アッセイで使用される抗体の1又は複数が、基質を検出可能な分析物に変換することができる酵素で標識されていてよい。そのような酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及び当該技術分野で公知のその他の酵素が含まれる。あるいは、酵素の代わりに、又は酵素と一緒に、その他の検出可能なタグ又は標識を用いてもよい。そのようなものとしては、ラジオアイソトープ、当該技術分野で公知の様々な着色標識及び蛍光標識、例えばフルオレセイン、Alexa fluor、オレゴングリーン、BODIPY、ローダミンレッド、Cascade Blue、Marina Blue、Pacific Blue、Cascade Yellow、金;及びビオチン等のコンジュゲート(例えば、英国のインビトロジェン社から入手可能)が含まれる。色素ゾル、金属ゾル、化学発光標識、又は着色ラテックスも使用され得る。これらの標識の1又は複数を本明細書に記載の種々の態様に従ってELISAアッセイに使用してよく、あるいは、他のアッセイにおいて、本明細書に記載の標識抗体又はキットを使用してもよい。
【0026】
ELISAタイプのアッセイの構築自体は当該技術分野で周知である。例えば、FLCに特異的な「結合抗体」を支持体上に固定する。「結合抗体」は当該技術分野で周知の方法により支持体上に固定することができる。サンプル中のFLCは、FLCに結合する「結合抗体」を介して、支持体上に結合する。
【0027】
結合しなかった免疫グロブリンは洗い流される。
【0028】
ELISAアッセイでは、結合した免疫グロブリンの存在は、関心のあるFLCの結合抗体とは異なる部分に特異的な標識された「検出抗体」を用いて決定することができる。
【0029】
関心のあるFLCの結合を検出するためにフローサイトメトリーを用いてもよい。この技術は例えば細胞選別に関する分野で周知である。しかし、ビーズ等の標識粒子の検出及びそのサイズの測定にも利用することができる。Practical Flow Cytometry, 3rd Ed. (1994), H. Shapiro, Alan R. Liss, New York, and Flow Cytometry, First Principles (2nd Ed.) 2001, A. L. Given, Wiley Liss.等の多くの教科書にフローサイトメトリーは記載されている。
【0030】
FLC特異的抗体等の結合抗体の1つは、ポリスチレン又はラテックスビーズ等のビーズに結合している。ビーズをサンプル及び2次検出抗体と混合する。検出抗体は、好ましくは、検出可能なラベルで標識されており、これはサンプル中で検出されるべきFLCに結合する。その結果、アッセイされるFLCが存在すると、ビーズが標識される。
【0031】
本明細書に記載されている他の分析物を検出できるように、それらの分析物に特異的なその他の抗体を用いてもよい。
【0032】
その後、標識ビーズはフローサイトメトリーで検出され得る。異なる標識、例えば異なる蛍光標識を、例えば抗遊離λ抗体及び抗遊離κ抗体に使用してもよい。本明細書に記載されている他の分析物が検出できるように、それらの分析物に特異的なその他の抗体をこのアッセイ又は本明細書に記載されている他のアッセイで使用してもよい。これにより、結合した各型のFLCの量を同時に測定することができ、又はその他の分析物の存在を決定することができる。
【0033】
あるいは、又はそれに加えて、サイズの異なるビーズを、異なる抗体、例えば異なるマーカー特異的抗体に使用してもよい。フローサイトメトリーは異なるサイズのビーズを識別することができるので、サンプル中の各FLC又は他の分析物の量を迅速に決定することができる。
【0034】
別の方法では、例えば、市販のLuminex(登録商標)ビーズ等の蛍光標識ビーズに結合した抗体を使用する。異なる抗体に異なるビーズを使用する。異なるビーズが異なる蛍光団混合物で標識されていることで、蛍光波長により異なる分析物を測定することが可能になる。Luminexビーズは、米国テキサス州オースティンのルミネックス社(Luminex Corporation)から入手可能である。
【0035】
好ましくは、用いられるアッセイは比濁法である。λFLC又はκFLCを検出するための比濁アッセイは当該技術分野で一般的に公知であるが、トータルFLCのアッセイは公知ではない。これらはアッセイの感度が最高レベルである。λFLC及びκFLCの濃度は別々に決定してもよく、トータルFLC用の単一のアッセイで決定してもよい。そのようなアッセイは、典型的には50:50の比率で抗κFLC抗体及び抗λFLC抗体を含む。
【0036】
抗体を遊離λ軽鎖及び遊離κ軽鎖の混合物に対して産生させてもよい。
【0037】
トータルFLCの量が正常値より多いか少ないかを決定するために、標準的な所定の値と比較してもよい。
【0038】
以下に詳細に記載するように、本出願人らは、正常よりも高い濃度の血清FLCが生存率低下の可能性の有意な上昇に関連することを見出した。例えば血清FLCレベルがより低い人々よりもそうである。本明細書に記載のデータから、血清FLCの正常レベルは通常、約15〜35mg/L又は20〜35mg/L、26〜35mg/l、又は好ましくは25〜32、又は24〜33mg/lのトータルFLCである。33超、例えば34超
、36超、40超、42超、48超、50超、52超、55超、70mg/l超のトータル血清FLCは、早期死亡の可能性の高まりを示す。個体の血清中において33mg/ml又は30未満、28未満、26未満、又は25mg/l未満であることは、対象の生存率の有意な上昇に関連する。生存確率の上昇は、2年、4年、6年、8年、10年、12年、14年、16年、又はそれ以上の期間に及び得る。本出願人らは、より低いFLC濃度と生存率上昇の確率との関連が160ヶ月を超える期間にわたり有意であることを見出した(例えば図1参照)。
【0039】
これまで製造されてきたアッセイキットは、κ及びλFLCを別々に測定して比率を計算することができるというものであった。これらは疾患症状を既に示している個体において従来使用されてきた。
【0040】
アッセイは、サンプル中のFLC(例えばトータルFLC)を例えば約1〜100mg/L又は1〜80mg/Lで測定できることが好ましい。これにより、異なる希釈率でサンプルを再度アッセイせずとも、大多数の個体において血清FLC濃度が検出されると予想される。
【0041】
より低い濃度を観察することを新たに強調しているが、これは、好ましくは、診断アッセイが30mg/L未満、より好ましくは20mg/L未満又は10mg/L未満、4mg/L又は1mg/Lの血清FLCを検出できることを意味する。
【0042】
好ましくは、方法は、イムノアッセイを用いて、例えば抗遊離κ軽鎖抗体及び抗遊離λ軽鎖抗体又はそれらの断片の混合物を用いて、サンプル中のトータル遊離軽鎖の量を検出することを含む。そのような抗体は、抗κ抗体:抗λ抗体=50:50であり得る。FLCに結合した抗体又は断片は、標識された抗体又は断片を用いて直接検出されてもよく、抗遊離λ抗体又は抗遊離κ抗体に対する標識抗体を用いて間接的に検出されてもよい。
【0043】
抗体はポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体は、同じ鎖の異なる部分に対して産生されるので、検出すべき同じ種類の軽鎖間でのいくらかの可変性に対応するため、ポリクローナル抗体が使用され得る。ポリクローナル抗体の産生は例えば国際公開第97/17372号に記載されている。
【0044】
好ましくは、特定され、全生存率が高い可能性を有意に示すとされる血清FLC(例えばトータルFLC)の量は、33未満、32未満、31未満、30未満、28未満、26未満、25未満、24mg/ml未満、20mg/L未満、又は15mg/L未満である。
【0045】
逆に、33mg/L超、特に34、36、38、40、50、55、60超、又は70mg/ml超のレベルは、対象における全体的死亡率(overall death)が高い可能性を示すと見なされる。この方法を用いて、見かけ上健康な対象において、より悪い予後を示してもよく、あるいは、未検出の医学的問題が存在する可能性を強調し、更なる検査を正当化してもよい。
【0046】
サンプル中の1又は複数の更なるマーカーを試験してもよい。そのようなマーカーとしては、コレステロール、クレアチニン(腎機能のマーカー)、シスタチンC、又はCRPが含まれる。そのようなアッセイの使用は当該技術分野で一般的に公知である。更なるマーカーの使用は、更なるデータを提供し、予測の精度を向上させるか、潜在的な疾患/医学的問題の診断の助けとなることが予想される。
【0047】
更に、例えば本発明の方法で用いるための、トータルFLC用のアッセイキットが提供
される。キットはサンプル中のトータルFLC量を検出し得る。そのようなアッセイキットは、25mg/L未満、最も好ましくは、サンプル中の約20mg/L未満、10mg/L、5mg/L未満、又は4mg/L未満のトータル遊離軽鎖(FLC)の量を検出するように適合されていてよい。アッセイキットは、例えば比濁アッセイキットであり得る。好ましくは、キットは、FLCに対する1又は複数の抗体を含むイムノアッセイキットである。典型的には、キットは、抗κFLC抗体及び抗λFLC抗体の混合物を含む。典型的には、抗遊離κ抗体及び抗遊離λ抗体の50:50混合物が使用される。キットは、サンプル中の1〜100mg/L又は好ましくは1〜80mg/Lのトータル遊離軽鎖を検出するように適合されていてよい。
【0048】
FLCに結合できる(Fab)2又はFab抗体等の抗体断片を使用してもよい。
【0049】
抗体又は断片は、例えば前述した標識を用いて標識化されていてもよい。FLCに結合した抗遊離λ又は抗遊離κを検出するために、標識された抗免疫グロブリン結合抗体又はその断片が提供されてもよい。
【0050】
キットは、前述したコレステロール、クレアチニン等のその他のマーカーを試験するための構成要素を含むより大きな試験アッセイキットの一部であってもよい。そのようなマーカー用の抗体が提供されてもよい。
【0051】
キットは、指定の範囲にアッセイを較正するための較正液(calibrator fluid)を含み得る。較正液は、好ましくは、例えば25mg/ml未満、20mg/ml未満、10mg/ml未満、5mg/L未満、又は1mg/Lまでの所定の濃度のFLCを含む。また、キットは、ラテックス粒子上にコーティングされた「ブロッキング」タンパク質及び抗体の量を最適化することにより及び例えばポリエチレングリコール(PEG)濃度等の補助的試薬の濃度を最適化することにより適合され得る。
【0052】
キットは、例えばFLC用又はアッセイされ得るコレステロール、クレアチニン、シスタチンC、CRP(C反応性タンパク質)等のその他の化合物用の複数の標準対照を含み得る。標準対照は、FLC又はその他の要素の濃度について作成される標準曲線の検証に使用され得る。そのような標準対照により、以前に較正された標準曲線が現在使用されている試薬及び条件に妥当であることが確認される。これらは通常、対照由来サンプルのアッセイとほぼ同時に使用される。標準は、アッセイがより低い濃度の遊離軽鎖を検出できるように、FLC用に20mg/L未満、より好ましくは15mg/L未満、約10mg/L未満、又は5mg/L未満の1又は複数の標準を含み得る。
【0053】
アッセイキットは、比濁法キットであり得る。これは、ELISA、フローサイトメトリー、蛍光、化学発光、ビーズタイプのアッセイ、又はディップスティックであり得る。そのようなアッセイは当該技術分野で一般的に公知である。
【0054】
アッセイキットは更に、本発明に係る方法で使用するための説明書を含んでもよい。説明書は、正常値と見なされるトータル遊離軽鎖の濃度の指標を含んでもよく、それより低い又は高いことは、固体の生存確率の上昇又は低下を示す。そのような濃度は上記で定義した通りであり得る。
【実施例】
【0055】
米国のメイヨークリニックは、ミネソタ州オルムステッド郡で、50歳以上(1995年1月1日時点)の20,000名を超える居住者をモニタリングした。英国バーミンガムのザ・バインディング・サイト・グループ・リミテッド社製の遊離κ軽鎖及び遊離λ軽鎖用「Freelite(商標)アッセイを用いて、保存された凍結血清中のFLC濃度
を遡及的に測定した。Freeliteアッセイは、多発性骨髄腫、ALアミロイドーシス等の形質細胞疾患(plasma cell disorder)の診断及びモニタリングの補助としてFDAに承認されている市販の比濁アッセイである。これらの疾患では通常、λ又はκFLCのいずれかの濃度の上昇及び異常なFLC比が生じる。
【0056】
保存血清中のFLC測定におけるメイヨークリニックの研究者らの調査目的は、異常なFLC比及びFLCの一方又は両方の濃度の上昇を有する対象がいるかどうかを決定することであった。次いで、そのようなFLC異常を有するが、インタクトな単クローン性免疫グロブリン産生の証拠がない対象を検査し、対象の悪性の形質細胞疾患のリスクが高いかどうかを決定した。
【0057】
しかし、本出願人らは、モノクローナル免疫グロブリン又はモノクローナルFLCの産生の証拠がない対象の分析が、トータルFLCレベルがより低い対象の生存率上昇を示すと推測した。上記のデータはこのことが正しかったことを実証している。
【0058】
図1は、トータル血清FLC濃度に基づいて三分位群に分けた集団の生存プロットを示す図である。第1、第2、及び第3三分位群(上から順に)の特徴を以下の表に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
データの分布を図2に示す。
【0061】
データを更に解析し、全対象並びにMGUS及び/又は異常FLC比の徴候を示さない対象について十分位群に分けたデータを得た。十分位群のレベルを以下の表に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
図3及び4は、全患者についてのデータ並びにMGUS及び/又は異常FLC比患者を除いたデータを示す図であり、生存率はMGUS及び/又は異常FLC比を有することに有意に起因しないことを示している。FLCのレベルが高い程、生存率は低い。ラインは、150ヶ月の位置において上から順に、それぞれ第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、及び第10十分位群を表し、生存率とFLC濃度の間の良好な相関を示している。
【0064】
アッセイキット
本発明に係る方法では以下のアッセイキットが使用され得る。このアッセイキットは、血清等の患者サンプル中に存在する遊離κ及び遊離λ軽鎖の合計を定量する。これは、100nmのカルボキシル修飾ラテックス粒子を、抗遊離κ及び抗遊離λ軽鎖ヒツジ抗体の50:50ブレンドでコーティングすることにより実現され得る。以下に例示するアッセイでは、トータル遊離軽鎖の測定範囲は1〜80mg/Lである。しかし、別の測定範囲も同様に考慮することができる。
【0065】
当該技術分野で一般的に公知の技術を用いて、今回の特定のケースではヒツジを用いて、抗遊離κ及び抗遊離λ抗血清を作製する。一般的な免疫化プロセスは国際公開第97/17372号に記載されている。
【0066】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて抗κ及び抗λ抗血清を等濃度に希釈した。それらの抗体を合わせて、50%抗κ抗体及び50%抗λ抗体を含む抗血清を調製した。
【0067】
カルボキシル修飾ラテックス上にコーティング量10mg/ロットで抗体をコーティングした。これは標準的な手法を用いてなされた(例えば"Microparticle Reagent Optimization: A laboratory reference manual from the authority on microparticles" Eds: Caryl Griffin, Jim Sutor, Bruce Shull. Copyright Seradyn Inc, 1994 (P/N 0347835(1294)参照)。
【0068】
この文献は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いたアッセイキットの最適化についても詳細に記載している。
【0069】
合わせた抗体を、市販のκ及びλのFreelite(商標)キット(英国バーミンガムのザ・バインディング・サイト・グループ・リミテッド社から入手)を用いて得られた結果と比較した。これらのFreelite(商標)キットは別個のアッセイでκ遊離軽鎖の量及びλ遊離軽鎖の量を特定する。トータルFLCキットを用いて曲線を作成し、調整された濃度を用いて検証した。較正曲線は1〜80mg/lのトータル遊離軽鎖について得ることができた。以下の結果の表中、結果は、κFreelite(商標)、λFreelite(商標)、及びトータル遊離軽鎖アッセイを用いてκ遊離軽鎖(KFLC)、λ遊離軽鎖(LFLC)、及びトータルFLCについて得たものである。これらの結果を15の異なる正常血清サンプルについて示す。比濁法により測定した結果を以下の表及び図5に示す。
【0070】
結果は、抗κ及び抗λ遊離軽鎖抗体に基づいてトータル遊離軽鎖アッセイを用いる原理が有効であることを示している。
【0071】
【表3】
【0072】
C反応性タンパク質(CRP)及びFLCの濃度は種々のファクターの影響を受ける
導入
C反応性タンパク質(CRP)は、陽性の急性期タンパク質であり、特定の腫瘍に反応して、及び、炎症反応中に、血清中で濃度が高まる。免疫グロブリン遊離軽鎖(FLC)は免疫グロブリン合成の「副産物」として生成すると考えられるため、これら2つのタンパク質の血清濃度間にある程度の相関がある可能性があった。以下の研究の目的は、集中治療室の患者から得た連続血清サンプル中における2つのタンパク質の濃度を決定するこ
とであり、これらの患者は、典型的には、集中治療中にCRP濃度の有意な変化を示すと予想される。
【0073】
患者及び方法
患者は全員、種々の理由により(集中治療室内で)検査及び治療介入を受けていた。患者が治療室内にいる時間中、連続血液サンプルを採取し、CRP及びFLCの濃度を免疫比濁法により測定した。FLCは前述した通りに測定した。CRPはロシュ社(Roche)から市販されているキット(CRPL3 Tima−quant C−Reactive Protein)を用いて測定した。
【0074】
結果
結果を添付のグラフに示す(図6参照)。一部の患者は、FLC及びCRPの両方の濃度の変化についてかなり良好な一致を示した。別の患者は、モニタリング期間の全期間ではないが一部において同様な傾向を示した。複数の患者では、FLC濃度の変化がCRP濃度の変化と逆であった。
【0075】
結論
一部の患者はCRP濃度とFLC濃度の変化にある程度の類似性を示したが、別の患者は、変化パターンが大きく異なっていた。このことは、種々のファクターが両タンパク質の濃度を制御しており、それらに互換性があるとは見なせないことを示している。
【0076】
更なるデータ
生存率のデータ解析を世界の別の場所の患者に由来する種々のサンプルを用いて繰り返した。ドイツのエッセンの4000名を超える患者のコホートから、上記と同様な結果が得られた。血清タンパク質の電気泳動の要求と一緒に血清遊離軽鎖を測定された、英国ウルバーハンプトンのニュークロス病院(New Cross Hospital)の約500名の患者を、生存率について追跡検査した。生存率において同様な差が観察され、60ヶ月後において、第1五分位群では生存率が約98%であり、第5五分位群では生存率が50%であった(データ示さず)。
【0077】
更に、英国バーミンガムのクイーン・エリザベス病院(Queen Elizabeth Hospital)で慢性腎疾患(CKD)を有する1328名の患者を研究した。これらのうち、897名が種々の原因によるCKDを有し、384名は腎移植を受けており、47名は通常の血液透析を受けていた。年齢、性別、及び民族性で補正した血清クレアチニン濃度に基づいて種々のCKDステージにグループ化した患者の生存について研究した(データ示さず)。研究の結果、ここでも遊離κ及び遊離λを合わせた濃度がCKDのステージに関係なく生存に関するリスクを示すことが示された。したがって、FLC濃度及び生存は、単純に腎機能に依存するのではなく、他のファクターにも依存する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の遊離軽鎖(FLC)の総量を検出するための1又は複数の検出剤を含む、サンプル中のFLCの総量を決定するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、抗遊離λ抗体及び抗遊離κ抗体又はそれらの断片を含む比濁法キットである、アッセイキット。
【請求項2】
前記抗体又はその断片が、ラテックス粒子等の粒子に結合している、請求項1に記載のアッセイキット。
【請求項3】
対象由来サンプル中のトータルFLCを検出する全体的健康のスクリーニング方法において使用するための、請求項1又は2に記載のアッセイキット。
【請求項4】
サンプル中の25mg/L未満のトータル遊離軽鎖(FLC)の量が検出されるように適合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項5】
約1mg/LのトータルFLCの量が検出されるように適合されている、請求項4に記載のアッセイキット。
【請求項6】
1〜80mg/LのトータルFLCの量が検出されるように適合されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項7】
サンプル中のコレステロール、クレアチニン、シスタチンC、及びCRPの1又は複数の濃度を測定するための1又は複数の構成要素を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項8】
前記FLC又は前記構成要素の濃度の標準曲線の作成を可能にする前記FLC又は前記構成要素用の複数の標準を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項9】
前記標準が、25mg/L未満のFLC濃度を決定するための1又は複数の標準を含む、請求項8に記載のアッセイキット。
【請求項10】
対象に由来するサンプル中の遊離軽鎖(FLC)の量を決定することを含み、FLCの量が少ないことが前記対象の生存率の上昇及び/又はより良い全体的健康に関連し、より高レベルのFLCが未検出の医学的問題が存在する可能性を示す、全体的健康のスクリーニング方法において使用するための説明書を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項11】
前記アッセイキットを用いて得られたFLC濃度を比較して対象の生存率上昇を示すための正常値を更に含む、請求項10に記載のアッセイキット。
【請求項1】
サンプル中の遊離軽鎖(FLC)の総量を検出するための1又は複数の検出剤を含む、サンプル中のFLCの総量を決定するためのアッセイキットであって、前記アッセイキットは、抗遊離λ抗体及び抗遊離κ抗体又はそれらの断片を含む比濁法キットである、アッセイキット。
【請求項2】
前記抗体又はその断片が、ラテックス粒子等の粒子に結合している、請求項1に記載のアッセイキット。
【請求項3】
対象由来サンプル中のトータルFLCを検出する全体的健康のスクリーニング方法において使用するための、請求項1又は2に記載のアッセイキット。
【請求項4】
サンプル中の25mg/L未満のトータル遊離軽鎖(FLC)の量が検出されるように適合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項5】
約1mg/LのトータルFLCの量が検出されるように適合されている、請求項4に記載のアッセイキット。
【請求項6】
1〜80mg/LのトータルFLCの量が検出されるように適合されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項7】
サンプル中のコレステロール、クレアチニン、シスタチンC、及びCRPの1又は複数の濃度を測定するための1又は複数の構成要素を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項8】
前記FLC又は前記構成要素の濃度の標準曲線の作成を可能にする前記FLC又は前記構成要素用の複数の標準を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項9】
前記標準が、25mg/L未満のFLC濃度を決定するための1又は複数の標準を含む、請求項8に記載のアッセイキット。
【請求項10】
対象に由来するサンプル中の遊離軽鎖(FLC)の量を決定することを含み、FLCの量が少ないことが前記対象の生存率の上昇及び/又はより良い全体的健康に関連し、より高レベルのFLCが未検出の医学的問題が存在する可能性を示す、全体的健康のスクリーニング方法において使用するための説明書を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項11】
前記アッセイキットを用いて得られたFLC濃度を比較して対象の生存率上昇を示すための正常値を更に含む、請求項10に記載のアッセイキット。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図6f】
【図6g】
【図6h】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図6e】
【図6f】
【図6g】
【図6h】
【図2】
【公開番号】特開2012−198248(P2012−198248A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165085(P2012−165085)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【分割の表示】特願2012−525213(P2012−525213)の分割
【原出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(510184449)ザ バインディング サイト グループ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【分割の表示】特願2012−525213(P2012−525213)の分割
【原出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(510184449)ザ バインディング サイト グループ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
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