説明

産業用車両における油圧機器の取付構造

【課題】構成が簡単で且つ安価な産業用車両における油圧機器の取付構造を提供する。
【解決手段】油圧式のリフト装置5および操舵装置8を具備し、本体フレーム11の中央にエンジン6が配置されるとともに前輪用車軸16側にトランスミッション7が配置されてなるフォークリフト1において、操舵装置8に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧バルブ類43,44と、リフト装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧バルブ類35,36とを、それぞれ操舵側ブラケット56およびリフト側ブラケット52に搭載するとともに、これらブラケットを本体フレームにそれぞれゴム部材57,53を介して取り付け、さらにリフト側ブラケット52をリフト装置5の昇降用マスト21の後方に配置するとともに、操舵側ブラケット56を前輪用車軸16とトランスミッションとの間に配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用車両における油圧機器の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばフォークリフトなどの産業用車両においては、リフト装置などの荷役装置が具備されるとともに、その能力が大きいものについては、当然に、油圧式の操舵装置が具備されている。
【0003】
したがって、この車両本体には、荷役装置および操舵装置に油圧を供給するためのエンジンにより駆動される油圧ポンプ、油圧配管、油圧配管途中に設けられた電磁切換弁、流量制御弁などの油圧バルブが設けられている。勿論、この油圧配管には、荷役装置および操舵装置側の油圧シリンダなどの油圧駆動機器が接続されている。
【0004】
そして、上記油圧配管、その途中に設けられる油圧バルブは、当然に、車両本体に搭載されるが、油圧の脈動や油圧バルブの作動による振動が発生し、車両本体およびオペレータに悪影響を及ぼすことになる。
【0005】
これを回避するためには制振機構を設ける必要があるが、この種の装置としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
この特許文献1に開示された制振装置は、油圧ポンプやオイルタンクなどの重さをマスとして有効利用したもので、例えば構造物に付加マスを支持させるとともに、この付加マスを、油圧シリンダにて積極的に構造物の振動が減衰する方向に移動させるようにしたものである。
【特許文献1】特開平10−110773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の構成によると、構造物の振動が減衰するように付加マスを油圧シリンダにて制御する必要があり、したがって装置の構成が複雑になるとともにその製造コストが高くつくという問題がある。
【0007】
そこで、上記課題を解決するため、本発明は、構成が簡単で且つ安価な産業用車両における油圧機器の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る産業用車両における油圧機器の取付構造は、油圧式の荷役装置および操舵装置を具備する産業用車両において、
上記荷役装置および操舵装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置される油圧機器を複数纏めて1個のブラケットに搭載するとともに、当該ブラケットを車両本体にゴム部材を介して取り付けたものである。
【0009】
また、請求項2に係る産業用車両における油圧機器の取付構造は、油圧式の荷役装置および操舵装置を具備する産業用車両において、
上記操舵装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器と、上記荷役装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器とを、それぞれ異なるブラケットに搭載するとともに、これらブラケットを車両本体にゴム部材を介して取り付けたものである。
【0010】
また、請求項3に係る産業用車両における油圧機器の取付構造は、油圧式のリフト装置および操舵装置を具備し、車両本体の中央にエンジンが配置されるとともに前輪用車軸側にトランスミッションが配置されてなる産業用車両において、
上記操舵装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器と、上記リフト装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器とを、それぞれ異なるブラケットに搭載するとともに、これらブラケットを車両本体にゴム部材を介して取り付け、
さらに上記リフト装置用の油圧機器を搭載したブラケットを当該リフト装置の昇降用マストの後方に配置するとともに、上記操舵装置用の油圧機器を搭載したブラケットを前輪用車軸とトランスミッションとの間に配置したものである。
【0011】
さらに、請求項4に係る産業用車両における油圧機器の取付構造は、油圧式のリフト装置および操舵装置を具備し、車両本体の前部に運転室が配置され、車両本体の中央にエンジンが配置され、且つ前輪用車軸側にトランスミッションが配置されてなる産業用車両において、
上記操舵装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器と、上記リフト装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器とを、それぞれ異なるブラケットに搭載するとともに、これらブラケットを車両本体にゴム部材を介して取り付け、
さらに上記操舵装置用の油圧機器を搭載したブラケットをトランスミッションの後方に配置したものである。
【発明の効果】
【0012】
上記の各取付構造によると、荷役装置または操舵装置の油圧を制御する油圧バルブなどの油圧機器については、車両本体に纏めて1個のブラケットに搭載するとともに、このブラケットをゴム部材を介して車両本体に取り付けるようにしたので、簡単且つ安価な構成にて、油圧機器にて発生する振動が車両本体に伝わるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る産業用車両における油圧機器の取付構造について説明する。
【0014】
なお、本実施の形態においては、産業用車両として、例えば大型のフォークリフトである場合について説明する。
図1に示すように、このフォークリフト1は、大きく分けて、走行輪を有する車両本体2と、この車両本体2の前部に台枠3を介して搭載(配置)された運転台(運転席)4と、同じく車両本体2の前方に配置されたリフト装置(荷役装置の一例である)5とから構成されている。
【0015】
上記車両本体2の主要構成部材である本体フレーム11は、例えば前後方向に配置された左右の側板材12と、これら前後の所定位置に配置されて左右の側板材12同士を連結する連結材(図面上では、前方下部だけを示す)13とから構成されており、またこの本体フレーム11の前部および後部には、走行輪である前輪14および後輪15がそれぞれ前輪用車軸(フロントアクスルともいう)16および後輪用車軸(リアアクスルともいう)17を介して取り付けられている。
【0016】
そして、上記本体フレーム11の後部には、エンジン6が搭載されるとともに、そのエンジン6の前方には、トランスミッション7、リフト装置5および操舵装置8を作動させるための油圧ポンプ、油圧配管、油圧機器などからなる油圧駆動系統が配置されている。
【0017】
以下、この油圧駆動系統について図2の油圧回路図に基づき説明するが、まず、リフト装置5および操舵装置8について簡単に説明しておく。
上記リフト装置5は、図1および図2に示すように、本体フレーム11の前部に設けられた前輪用車軸(フロントアクスルともいう)16側に鉛直面内で揺動自在に設けられたマスト21と、このマスト21を鉛直面内で傾動させる傾動用シリンダ装置(チルトシリンダともいう)22と、上記マスト21に昇降自在に設けられたフォーク部23と、このフォーク部23を例えばチェーンを介して昇降させる昇降用シリンダ装置(リフトシリンダともいう)24とから構成されている。
【0018】
上記操舵装置8は、図2に示すように、左右の後輪15にそれぞれ連結された操舵用シリンダ装置(ステアリングシリンダともいう)26と、操作ハンドルにより駆動されて両操舵用シリンダ装置26を制御するオービットロール(登録商標)(所謂、パワーステアリング装置である)27とから構成されている。
【0019】
次に、上記リフト装置5および操舵装置8における油圧回路について、簡単に説明する。
リフト装置5の油圧回路においては、リフト用油圧ポンプ31と各シリンダ装置22,24との間に配置された油圧配管32の途中には傾動用シリンダ装置22および昇降用シリンダ装置24を制御するための油圧切換弁33,34が配置されるとともに、例えば制御に際して必要な流量制御弁35、リリーフ弁36などが配置されている。
【0020】
また、操舵装置8用の油圧回路においては、操舵用油圧ポンプ41とオービットロール27との間の油圧配管42の途中には、プライオリティバルブ43および複数のチェック弁44が配置されている。
【0021】
なお、以下の説明においては、油圧切換弁33,34、流量制御弁35、リリーフ弁36、プライオリティバルブ43、チェック弁44などを油圧バルブ類(油圧機器の一例)と称する。
【0022】
そして、本実施の形態においては、上記リフト装置5用の油圧回路に配置された油圧バルブ類が、ブラケットを介して本体フレーム11の前部すなわちマスト21の後方位置で取り付けられており、また操舵装置8用の油圧回路に配置された油圧バルブ類が、ブラケットを介して本体フレーム11の前部すなわち前輪14とトランスミッション7との間に取り付けられている。
【0023】
上記各ブラケットによる各油圧バルブ類の本体フレーム11への取付構造について説明する。
図3および図4に示すように、リフト装置5側については、本体フレーム11の左右側板材12,12の前部で且つ上部内面に固定された左右一対の支持片51,51に、複数の油圧バルブ類(35,36)が搭載された鉛直取付板からなるリフト側ブラケット52が複数の筒状ゴム部材(スペーサともいう)53を介してボルト54・ナット55により取り付けられている。
【0024】
また、操舵装置8側については、本体フレーム11の左右側板材12,12の前部で且つ下部内側に、すなわちマスト21の後方に設けられた断面がL字形状の前部の下側連結材13(13A)の上面に、複数の油圧バルブ類(43,44)が搭載された水平支持板からなる操舵側ブラケット56が複数の筒状ゴム部材57を介してボルト58・ナット59により取り付けられている。
【0025】
上述したように、リフト装置5の油圧を制御するための油圧バルブ類については、本体フレーム11の側板材12,12間の前部の上部に、すなわちマスト21の後方位置にて、纏めて1個のリフト側ブラケット52に搭載(支持)するとともに、このリフト側ブラケット52をゴム部材53を介して本体フレーム11に取り付け、さらに操舵装置8の油圧を制御する油圧バルブ類については、本体フレーム11の側板材12,12間の前部で且つ下部位置に、すなわち前輪用車軸16とトランスミッション6との間で纏めて1個の操舵側ブラケット56に搭載(支持)するとともに、この操舵側ブラケット56をゴム部材57を介して本体フレーム11に取り付けたので、簡単で且つ安価な構成で、油圧バルブ類に起因して発生する振動が車両本体およびオペレータに伝わるのを防止することができる。
【0026】
なお、上記実施の形態においては、各ブラケットに搭載される油圧バルブ類として、流量制御弁、リリーフ弁、チェック弁であるとして説明したが、勿論、油圧切換弁であってもよい。
【0027】
また、上記実施の形態においては、操舵装置8の油圧バルブ類43,44を搭載した操舵用ブラケット56を、前輪用車軸16とトランスミッション7との間に配置したが、例えば図1の仮想線AまたはBにて示すように、トランスミッション7と後輪用車軸17との間で且つトランスミッション7寄りまたはエンジン6寄りに配置してもよい。
【0028】
なお、この場合に係るフォークリフトの概略構成を説明すると、以下のようになる。
すなわち、油圧式のリフト装置および操舵装置を具備し、車両本体の前部に運転台が配置され、車両本体の中央にエンジンが配置され、且つ前輪用車軸寄りにトランスミッションが配置されてなるフォークリフトにおいて、上記操舵装置に対する油圧回路の途中に配置された複数の油圧バルブ類(油圧機器)と、上記リフト装置に対する油圧回路の途中に配置された複数の油圧バルブ類(油圧機器)とを、それぞれ異なるブラケットに搭載するとともに、これらブラケットを車両本体にゴム部材を介して取り付け、さらに上記操舵装置用の油圧バルブ類を搭載した操舵用ブラケットをトランスミッションの後方に、すなわちトランスミッションと後輪用車軸との間に配置したものである。
【0029】
また、上記実施の形態においては、産業用車両としてフォークリフトの場合について説明したが、これ以外の車両にも適用することができ、例えばホイールローダにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係るフォークリフトの概略構成を示す一部切欠側面図である。
【図2】同フォークリフトにおける油圧回路図を示す。
【図3】同フォークリフトにおける油圧バルブ類の取付構造を示す斜視図である。
【図4】同油圧バルブ類の取付構造を示す要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 フォークリフト
2 車両本体
3 台枠
4 運転台
5 リフト装置
6 エンジン
7 トランスミッション
8 操舵装置
11 本体フレーム
12 側板材
13 連結材
16 前輪用車軸
17 後輪用車軸
21 マスト
33 油圧切換弁
34 油圧切換弁
35 流量制御弁
36 リリーフ弁
43 プライオリティバルブ
44 チェック弁
52 リフト側ブラケット
53 ゴム部材
56 操舵側ブラケット
57 ゴム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧式の荷役装置および操舵装置を具備する産業用車両において、
上記荷役装置および操舵装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置される油圧機器を複数纏めて1個のブラケットに搭載するとともに、当該ブラケットを車両本体にゴム部材を介して取り付けたことを特徴とする産業用車両における油圧機器の取付構造。
【請求項2】
油圧式の荷役装置および操舵装置を具備する産業用車両において、
上記操舵装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器と、上記荷役装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器とを、それぞれ異なるブラケットに搭載するとともに、これらブラケットを車両本体にゴム部材を介して取り付けたことを特徴とする産業用車両における油圧機器の取付構造。
【請求項3】
油圧式のリフト装置および操舵装置を具備し、車両本体の中央にエンジンが配置されるとともに前輪用車軸側にトランスミッションが配置されてなる産業用車両において、
上記操舵装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器と、上記リフト装置に油圧を供給する油圧配管途中に配置された複数の油圧機器とを、それぞれ異なるブラケットに搭載するとともに、これらブラケットを車両本体にゴム部材を介して取り付け、
さらに上記リフト装置用の油圧機器を搭載したブラケットを当該リフト装置の昇降用マストの後方に配置するとともに、上記操舵装置用の油圧機器を搭載したブラケットを前輪用車軸とトランスミッションとの間に配置したことを特徴とする産業用車両における油圧機器の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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