説明

産業車両のフォーク

【課題】 フォークシフトの駆動方式として少なくとも二種類の駆動方式に対応可能なフォークを提供する。
【解決手段】 左右一対のフォーク1、2の垂直部10、20の裏面に、シリンダ6、7により駆動されるピストンロッド6a、7aを取り付けるための第1の取付ブラケット41、51と、油圧モータ82、92により駆動される送りネジ8、9を取り付けるための第2の取付ブラケット42、52とをそれぞれ設ける。第1、第2の取付ブラケット41、42は、取付ベース4を介して一体のユニットとして製作され、第1、第2の取付ブラケット51、52は、取付ベース5を介して一体のユニットとして製作されている。双方のユニットは、各フォーク1、2の裏面に固定された固定ベースに対して、上下逆に取付可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト等の産業車両のフォークに関し、とくに、フォークシフトの駆動方式として少なくとも二種類の駆動方式に対応可能にするための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばフォークリフト等の産業車両は、左右一対のフォークを備えており、荷役作業時には、作業対象物の形態に応じてフォーク間隔を適宜調整する必要が生じるため、フォークを車両幅方向(左右方向)に移動(シフト)させる移動機構としてフォークシフトを有している。フォークシフトには、一般に、シリンダによる駆動方式(シリンダ式)と、油圧モータ等のモータによる駆動方式(モータ式)とがある。
【0003】
シリンダ式フォークシフトは、実開平2−120495号公報の第5図に示すように、シフトシリンダ(A)と、フォーク(B)の裏面に固着され、シフトシリンダ(A)のピストンロッド先端が連結される取付ブラケットと、フォーク(B)のボス部を挿通するスライドシャフト(C)とを備えている。この場合には、シフトシリンダ(A)を駆動してピストンロッドを進退させることにより、ピストンロッド先端が連結された取付ブラケットを介してフォーク(B)がスライドシャフト(C)に沿って左右方向に移動する。
【0004】
モータ式フォークシフトは、上記公報の第6図に示すように、油圧モータ(D)と、これに駆動連結された螺子棒(E)と、フォーク(B)の裏面に固着され、螺子棒(E)が螺合する螺子駒(G)とを備えている。この場合には、油圧モータ(D)の駆動により螺子棒(E)が回転し、これにより、螺子棒(E)に螺合する螺子駒(G)が螺子棒(E)に沿って移動することで、フォーク(B)が左右方向に移動する。
【0005】
従来のフォークは、シリンダ式フォークシフトまたはモータ式フォークシフトのいずれか一方にしか対応できないため、それぞれの駆動方式に対応する2種類のフォークを揃えておく必要があった。このため、フォークの種類が増えて、在庫管理が煩雑であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、少なくとも二種類のフォークシフト駆動方式に対応できるフォークを提供することにあり、別の言い方をすれば、産業車両においてフォークシフト駆動方式が異なるフォークを共通化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る産業車両用フォークは、フォークにより作業を行なう産業車両において、フォークを車両幅方向に移動させるフォークシフトの駆動方式として少なくとも二種類の駆動方式に対応可能なフォークであって、当該フォークが左右一対設けられている。各フォークの垂直部の裏面には、第1の駆動方式により駆動される第1の駆動部材を取り付けるための第1の取付ブラケット、および、第2の駆動方式により駆動される第2の駆動部材を取り付けるための第2の取付ブラケットの双方が設けられている。
【0008】
この場合には、左右のフォークの各垂直部のそれぞれの裏面に第1および第2の取付ブラケットが設けられるので、第1の駆動方式によりフォークを車両幅方向に移動させる際には、各フォークの垂直部の裏面の第1の取付ブラケットに第1の駆動部材を取り付ければよく、また、第2の駆動方式によりフォークを車両幅方向に移動させる際には、各フォークの垂直部の裏面の第2の取付ブラケットに第2の駆動部材を取り付ければよい。
【0009】
これにより、一種類のフォークで少なくとも二種類のフォークシフト駆動方式に容易に対応できるようになる。別の言い方をすれば、フォークシフト駆動方式が異なるフォークを共通化できるようになる。その結果、フォークの種類を削減でき、在庫管理が容易になる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1において、各フォークにおける第1および第2の取付ブラケットが、これらを上下に配置してなる一体のユニットとして製作されており、各フォークの垂直部の裏面には、当該ユニットを取り付けるためのベース部材がそれぞれ固定されている。
【0011】
この場合には、第1、第2の取付ブラケットが一体化されることで、第1、第2の取付ブラケットをフォーク垂直部の裏面に取り付ける際に、各取付ブラケットを個々にフォーク垂直部の裏面に取り付ける必要がなくなり、これにより、第1、第2の取付ブラケットのフォーク垂直部裏面への取付けが容易になる。また、部品点数が減少することで在庫管理が容易になる。
【0012】
請求項3の発明では、請求項2において、ユニットおよびベース部材が、当該ユニットを上下逆に取付可能に設けられている。
【0013】
請求項3の発明によれば、第1の駆動方式が例えばシリンダによる駆動方式の場合、左右のフォークの各垂直部においてそれぞれの第1の取付ブラケットが同じ高さ位置に配置されているとすると、一方のフォークを駆動するためのシリンダの本体部が、他方のフォークに取り付けられた第1の取付ブラケットに干渉するが、この場合に、第1、第2の取付ブラケットが一体化された各ユニットを左右のフォークにおいて互いに上下逆に取り付けることにより、第1の取付ブラケットの高さ位置を左右のフォーク間で異ならせることができ、これにより、上述したようなシリンダ本体部との干渉を簡単に防止できる。また、この場合には、第1、第2の取付ブラケットが一体化されたユニットとして、一種類のものを用意すれば足りるので、部品点数を削減でき、在庫管理が容易になる。
【0014】
請求項4の発明に係る産業車両用フォークは、フォークにより作業を行なう産業車両において、フォークを車両幅方向に移動させるフォークシフトの駆動方式として少なくとも二種類の駆動方式に対応可能なフォークであって、当該フォークが左右一対設けられている。各フォークの垂直部の裏面には、第1の駆動方式により駆動される第1の駆動部材を取り付けるための第1の取付ブラケット、および、第2の駆動方式により駆動される第2の駆動部材を取り付けるための第2の取付ブラケットをそれぞれ別個に取付可能なベース部材が固定されている。
【0015】
この場合には、第1の駆動方式によりフォークを車両幅方向に移動させる際には、各フォークの垂直部の裏面に固定されたベース部材に第1の取付ブラケットを取り付けるとともに、当該第1の取付ブラケットに第1の駆動部材を取り付ければよい。また、第2の駆動方式によりフォークを車両幅方向に移動させる際には、各フォークの垂直部の裏面に固定されたベース部材に第2の取付ブラケットを取り付けるとともに、当該第2の取付ブラケットに第2の駆動部材を取り付ければよい。
【0016】
これにより、一種類のフォークで少なくとも二種類のフォークシフト駆動方式に容易に対応できるようになる。別の言い方をすれば、フォークシフト駆動方式が異なるフォークを共通化できるようになる。その結果、フォークの種類を削減でき、在庫管理が容易になる。
【0017】
請求項5の発明では、請求項4において、第1または第2の取付ブラケットおよびベース部材が、当該第1または第2のブラケットを上下逆に取付可能に設けられている。
【0018】
請求項5の発明によれば、第1の駆動方式が例えばシリンダによる駆動方式の場合、左右のフォークの各垂直部においてそれぞれの第1の取付ブラケットが同じ高さ位置に配置されているとすると、一方のフォークを駆動するためのシリンダの本体部が、他方のフォークに取り付けられた第1の取付ブラケットに干渉するが、この場合に、第1の取付ブラケットを左右のフォークにおいて互いに上下逆に取り付けることにより、第1の取付ブラケットの高さ位置を左右のフォーク間で異ならせることができ、これにより、上述したようなシリンダ本体部との干渉を簡単に防止できる。
【0019】
請求項6の発明では、請求項1または4において、第1の駆動方式がシリンダによる駆動方式である。
【0020】
請求項7の発明では、請求項1または4において、第1の駆動方式がシリンダによる駆動方式であって、第1の駆動部材がシリンダのピストンロッドである。
【0021】
この場合には、シリンダを駆動すると、シリンダのピストンロッドが伸長または縮退し、このとき、ピストンロッドが取り付けられた第1の取付ブラケットを介してフォークが左右方向に移動する。
【0022】
請求項8の発明では、請求項1または4において、第2の駆動方式がモータによる駆動方式である。
【0023】
請求項9の発明では、請求項1または4において、第2の駆動方式がモータによる駆動方式であって、第2の駆動部材がモータにより駆動される送りネジであり、第2の取付ブラケットには、送りネジが螺合する雌ネジが形成されている。
【0024】
この場合には、モータを駆動すると、送りネジが回転し、このとき、送りネジが螺合する雌ネジが形成された第2の取付ブラケットを介して、フォークが左右方向に移動する。
【0025】
請求項10の発明では、請求項1または4において、当該産業車両がフォークリフトである。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の第1の発明に係る産業車両用フォークによれば、左右のフォークの各垂直部のそれぞれの裏面に第1および第2の取付ブラケットを設けるようにしたので、第1の駆動方式によりフォークを車両幅方向に移動させる際には、各フォークの垂直部の裏面の第1の取付ブラケットに第1の駆動部材を取り付ければよく、また、第2の駆動方式によりフォークを車両幅方向に移動させる際には、各フォークの垂直部の裏面の第2の取付ブラケットに第2の駆動部材を取り付ければよい。これにより、一種類のフォークで少なくとも二種類のフォークシフト駆動方式に容易に対応できるようになって、フォークシフト駆動方式が異なるフォークを共通化できるようになる。その結果、フォークの種類を削減でき、在庫管理が容易になる。
【0027】
また、本発明の第2の発明に係る産業車両用フォークによれば、第1の駆動方式によりフォークを車両幅方向に移動させる際には、各フォークの垂直部の裏面に固定されたベース部材に第1の取付ブラケットを取り付けるとともに、当該第1の取付ブラケットに第1の駆動部材を取り付ければよく、また、第2の駆動方式によりフォークを車両幅方向に移動させる際には、各フォークの垂直部の裏面に固定されたベース部材に第2の取付ブラケットを取り付けるとともに、当該第2の取付ブラケットに第2の駆動部材を取り付ければよい。これにより、一種類のフォークで少なくとも二種類のフォークシフト駆動方式に容易に対応できるようになって、フォークシフト駆動方式が異なるフォークを共通化できるようになる。その結果、フォークの種類を削減でき、在庫管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例によるフォークシフト装置の正面概略図であって、当該フォークシフト装置がシリンダ式フォークシフトとして用いられた例を示している。
【図2】本発明の第1の実施例によるフォークシフト装置の正面概略図であって、当該フォークシフト装置がモータ式フォークシフトとして用いられた例を示している。
【図3】本発明の第1の実施例によるフォークシフト装置の背面側の斜視概略部分図であって、当該フォークシフト装置がシリンダ式フォークシフトとして用いられた例を示している。
【図4】本発明の第2の実施例によるフォークシフト装置の正面概略図であって、当該フォークシフト装置がシリンダ式フォークシフトとして用いられた例を示している。
【図5】本発明の第2の実施例によるフォークシフト装置の背面側の斜視概略部分図であって、当該フォークシフト装置がシリンダ式フォークシフトとして用いられた例を示している。
【図6】本発明の第2の実施例によるフォークシフト装置の正面概略図であって、当該フォークシフト装置がモータ式フォークシフトとして用いられた例を示している。
【図7】本発明の第2の実施例によるフォークシフト装置の背面側の斜視概略部分図であって、当該フォークシフト装置がモータ式フォークシフトとして用いられた例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
なお、ここでは、産業車両としてフォークリフトを例にとって説明する。
<第1の実施例>
図1ないし図3は、本発明の第1の実施例によるフォークシフト装置を示している。図1は当該フォークシフト装置がシリンダ式フォークシフトとして用いられた例を示し、図2は当該フォークシフト装置がモータ式フォークシフトとして用いられた例を示している。なお、図3においては、一方のフォークのみが示され、他方のフォークが省略されるとともに、他方のフォークの側の駆動シリンダのみが示され、一方のフォークの側の駆動シリンダが省略されている。
【0030】
図1ないし図3に示すように、フォークシフト装置Sは、左右一対のフォーク1、2を備えており、これらのフォーク1、2を左右方向(車両幅方向)に移動(接近または離反)させるための装置である。各フォーク1、2は、上下方向に延びる垂直部10、20と、各垂直部10、20の下端から前方に延びる水平部11、21とからそれぞれ構成されている。各垂直部10、20の上端には、それぞれボス部12、22が設けられており、各ボス部12、22には貫通孔12a、22aがそれぞれ形成されている。
【0031】
また、フォークシフト装置Sは、各フォーク1、2の背面側において、左右に配設されたサイドプレート30、31と、これらのサイドプレート30、31の上部を連結するアッパープレート32と、各サイドプレート30、31の下部を連結するロアプレート33と、各サイドプレート30、31間において左右方向に延設されたガイドシャフト34とを備えている。ガイドシャフト34は、各フォーク1、2のボス部12、22の各貫通孔12a、22aをそれぞれ挿通しており、各フォーク1、2は、ガイドシャフト34に沿って左右方向にスライド自在に設けられている。
【0032】
フォーク1の垂直部10の裏面には、板状の固定ベース13が溶接等により固着されている(図3参照)。図示していないが、フォーク2の垂直部20の裏面にも同様の固定ベースが固着されている。各固定ベースの上には、板状の取付ベース4、5がそれぞれ取り付けられている。各取付ベース4、5には、取付用のボルト孔40、50がそれぞれ形成されており、各取付ベース4、5は、これらのボルト孔40、50に挿入される取付ボルト(図示せず)を介して、それぞれ対応する固定ベースに取り付けられている。
【0033】
取付ベース4、5の上下方向の一端には、第1の取付ブラケット41、51がそれぞれ設けられている。第1の取付ブラケット41、51は、いずれも所定間隔を隔てて上下方向に対向配置された一対の板状部材から構成されており、各板状部材には、上下方向の貫通孔41a、51aが形成されている。また、取付ベース4、5の上下方向中央部には、ブロック状の第2の取付ブラケット42、52が設けられている。第2の取付ブラケット42、52には、各取付ブラケット42、52を左右方向に貫通する雌ネジ42a、52aがそれぞれ形成されている。なお、第1の取付ブラケット41、51および第2の取付ブラケット42、52は、溶接等により取付ベース4、5上に固着されている。
【0034】
図3に明確に示されるように、第1、第2の取付ブラケット41、42は取付ベース4を介して一体にユニット化されており、同様に、第1、第2の取付ブラケット51、52は取付ベース5を介して一体にユニット化されている。また、第1、第2の取付ブラケット41、42および取付ベース4からなるユニットは、第1、第2の取付ブラケット51、52および取付ベース5からなるユニットと同一のものであり、一方のユニットは他方のユニットを上下逆に配置した関係にある。
【0035】
第1の取付ブラケット41、51は、フォークシフトの駆動方式として、シリンダによる駆動方式(第1の駆動方式)に対応しており、第2の取付ブラケット42、52は、モータによる駆動方式(第2の駆動方式)に対応している。
【0036】
図1に示すように、当該フォークリフトがシリンダ式フォークシフト装置を備えている場合、各サイドプレート30、31間には、それぞれ左右方向に配設された2つのシリンダ6、7が上下に設けられている。シリンダ6の本体部の後端は、ブラケット61を介してサイドプレート30にヒンジ連結されており、同様に、シリンダ7の本体部の後端は、ブラケット71を介してサイドプレート31にヒンジ連結されている。
【0037】
シリンダ6のピストンロッド(第1の駆動部材)6aの先端は、取付ベース5の側の第1の取付ブラケット51にヒンジ連結されている。より具体的には、ピストンロッド6a先端には、上下方向の貫通孔が形成されており(図3参照)、当該貫通孔および第1の取付ブラケット51の貫通孔51aを上下方向に挿通するピン(図示せず)を介して、ピストンロッド6a先端は第1の取付ブラケット51にピン連結されている。図示していないが、同様に、シリンダ7のピストンロッド(第1の駆動部材)7aの先端は、取付ベース4の側の第1の取付ブラケット41にピンを介してヒンジ連結されている。
【0038】
また、図2に示すように、当該フォークリフトがモータ式フォークシフト装置を備えている場合、各サイドプレート30、31間には、一直線上に配設された送りネジ(第2の駆動部材)8、9が設けられている。送りネジ8の一端は、サイドプレート30の内側面に取り付けられた軸受80に回転自在に支持されており、他端は、各サイドプレート30、31間の中央の仕切部材35に取り付けられた軸受81に回転自在に支持されている。また、送りネジ8は、取付ベース4の側の第2の取付ブラケット42の雌ネジ42aに螺合している。同様に、送りネジ9の一端は、サイドプレート31の内側面に取り付けられた軸受90に回転自在に支持されており、他端は、各サイドプレート30、31間の中央の仕切部材35に取り付けられた軸受91に回転自在に支持されている。また、送りネジ9は、取付ベース5の側の第2の取付ブラケット52の雌ネジ52aに螺合している。
【0039】
送りネジ8の上方において、アッパープレート32には、油圧モータ82が設けられている。油圧モータ82の出力軸端には、スプロケット83が取り付けられている。また、送りネジ8の一端側には、スプロケット84が取り付けられている。各スプロケット83、84間には、チェーン85が巻き掛けられている。同様に、送りネジ9の上方において、アッパープレート32には、油圧モータ92が設けられている。油圧モータ92の出力軸端には、スプロケッ93が取り付けられている。また、送りネジ9の一端側には、スプロケット94が取り付けられている。各スプロケット93、94間には、チェーン95が巻き掛けられている。
【0040】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
まず、本実施例によるフォークシフト装置をシリンダ式フォークシフトとして用いる場合には、図1および図3に示すように、シリンダ6のピストンロッド6a先端を取付ベース5の側の第1の取付ブラケット51にヒンジ連結するとともに、シリンダ7のピストンロッド7a先端を取付ベース4の側の第1の取付ブラケット41にヒンジ連結する。
【0041】
この状態から、各シリンダ6、7を駆動して、各ピストンロッド6a、7aを縮退させると、第1の取付ブラケット41、51および取付ベース4、5を介して、各フォーク1、2が互いに接近する側に移動する。これにより、各フォーク1、2の間隔が狭められる。また、これとは逆に、各シリンダ6、7を駆動して、各ピストンロッド6a、7aを伸長させると、第1の取付ブラケット41、51および取付ベース4、5を介して、各フォーク1、2が互いに離反する側に移動する。これにより、各フォーク1、2の間隔が拡げられる。
【0042】
次に、本実施例によるフォークシフト装置をモータ式フォークシフトとして用いる場合には、図2に示すように、送りネジ8を取付ベース4の側の第2の取付ブラケット42の雌ネジ42aに螺合させるとともに、送りネジ9を取付ベース5の側の第2の取付ブラケット52の雌ネジ52aに螺合させる。
【0043】
この状態から、各モータ82、92を駆動し、スプロケット83、84;93、94およびチェーン85、95を介して各送りネジ8、9を回転させると、その回転方向に応じて、各フォーク1、2が互いに接近する側または互いに離反する側に移動して、各フォーク1、2の間隔が狭められ、または拡げられる。
【0044】
この場合には、フォーク1、2の各垂直部10、20の裏面に第1および第2のブラケット41、42;51、52の双方が設けられるので、一種類のフォークをシリンダ式フォークシフト用としても、またモータ式フォークシフト用としても用いることができ、二種類のフォークシフト駆動方式に容易に対応できるようになる。なお、さらに駆動方式の異なるフォークシフトに対応し得る第3の取付ブラケットを設けることで、三種類のフォークシフト駆動方式に対応可能である。このようにして、少なくとも二種類のフォークシフト駆動方式に容易に対応できるようになる。別の言い方をすれば、フォークシフト駆動方式が異なるフォークを共通化できるようになる。その結果、フォークの種類を削減でき、在庫管理が容易になる。
【0045】
また、この場合には、各フォーク1、2において第1および第2の取付ブラケット41、42;51、52がそれぞれ一体のユニットとして製作されているので、第1、第2の取付ブラケット41、42;51、52をフォーク垂直部10、20の裏面に取り付ける際に、各取付ブラケットを個々にフォーク垂直部10、20の裏面に取り付ける必要がなくなり、これにより、第1、第2の取付ブラケット41、42;51、52のフォーク垂直部裏面への取付けが容易になる。また、部品点数が減少することで在庫管理が容易になる。
【0046】
さらに、この場合には、第1、第2の取付ブラケット41、42;51、52をユニット化した取付ベース4、5および固定ベース13が、各ユニットを上下逆に取付可能に設けられているので、各フォーク1、2において各ユニットを上下逆に取り付けることにより、第1の取付ブラケット41、51の高さ位置を左右のフォーク1、2間で異ならせることができ、これにより、シリンダ本体部との干渉を簡単に防止できる。また、この場合、第1、第2の取付ブラケット41、42;51、52が一体化されたユニットとして、一種類のものを用意すれば足りるので、部品点数を削減でき、在庫管理が容易になる。
【0047】
<第2の実施例>
図4ないし図7は、本発明の第2の実施例によるフォークシフト装置を示している。図4および図5は当該フォークシフト装置がシリンダ式フォークシフトとして用いられた例を示し、図6および図7は当該フォークシフト装置がモータ式フォークシフトとして用いられた例を示している。なお、図5においては、一方のフォークのみが示され、他方のフォークが省略されるとともに、他方のフォークの側の駆動シリンダのみが示され、一方のフォークの側の駆動シリンダが省略されている。また、これらの図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0048】
前記第1の実施例では、第1、第2の取付ブラケット41、42;51、52が取付ベース4、5を介して一体化された例を示したが、この第2の実施例では、第1、第2の取付ブラケット41、42;51、52が取付ベース4、5上にそれぞれ別個に設けられており、この点が前記第1の実施例と異なっている。
【0049】
図4および図5に示すように、取付ベース4、5の上下方向の一端には、第1の取付ブラケット41、51がそれぞれ設けられている。第1の取付ブラケット41、51は、いずれも所定間隔を隔てて上下方向に対向配置された一対の板状部材から構成されており、各板状部材には、上下方向の貫通孔41a、51aが形成されている。第1の取付ブラケット41、51は、溶接等により取付ベース4、5上に固着されている。第1の取付ブラケット41、51がそれぞれ固着された取付ベース4、5は、互いに同一の構造を有しており、両者は上下を逆に配置した関係にある。
【0050】
図6および図7に示すように、取付ベース4、5の上下方向中央部には、ブロック状の第2の取付ブラケット42、52がそれぞれ設けられている。第2の取付ブラケット42、52には、当該取付ブラケット42、52を左右方向に貫通する雌ネジ42a、52aがそれぞれ形成されている。第2の取付ブラケット42、52は、溶接等により取付ベース4、5上に固着されている。第2の取付ブラケット42、52がそれぞれ固着された取付ベース4、5は、互いに同一のものである。
【0051】
図4に示すように、当該フォークリフトがシリンダ式フォークシフト装置を備えている場合には、シリンダ6のピストンロッド(第1の駆動部材)6aの先端は、取付ベース5の側の第1の取付ブラケット51にピンを介してヒンジ連結されている(図5参照)。同様に、シリンダ7のピストンロッド(第1の駆動部材)7aの先端は、取付ベース4の側の第1の取付ブラケット41にピンを介してヒンジ連結されている。
【0052】
また、図6に示すように、当該フォークリフトがモータ式フォークシフト装置を備えている場合には、送りネジ8は、取付ベース4の側の第2の取付ブラケット42の雌ネジ42aに螺合している(図7参照)。同様に、送りネジ9は、取付ベース5の側の第2の取付ブラケット52の雌ネジ52aに螺合している(図7参照)。
【0053】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
まず、本実施例によるフォークシフト装置をシリンダ式フォークシフトとして用いる場合には、図4および図5に示すように、シリンダ6のピストンロッド6a先端を取付ベース5の側の第1の取付ブラケット51にヒンジ連結するとともに、シリンダ7のピストンロッド7a先端を取付ベース4の側の第1の取付ブラケット41にヒンジ連結する。
【0054】
この状態から、各シリンダ6、7の駆動により、各ピストンロッド6a、7aを縮退させると、第1の取付ブラケット41、51および取付ベース4、5を介して、各フォーク1、2が互いに接近する側に移動して、各フォーク1、2の間隔が狭められる。また、これとは逆に、各シリンダ6、7の駆動により、各ピストンロッド6a、7aを伸長させると、第1の取付ブラケット41、51および取付ベース4、5を介して、各フォーク1、2が互いに離反する側に移動して、各フォーク1、2の間隔が拡げられる。
【0055】
次に、本実施例によるフォークシフト装置をモータ式フォークシフトとして用いる場合には、図6および図7に示すように、送りネジ8を取付ベース4の側の第2の取付ブラケット42の雌ネジ42aに螺合させるとともに、送りネジ9を取付ベース5の側の第2の取付ブラケット52の雌ネジ52aに螺合させる。
【0056】
この状態から、各モータ82、92を駆動し、スプロケット83、84;93、94およびチェーン85、95を介して各送りネジ8、9を回転させると、その回転方向に応じて、各フォーク1、2が互いに接近する側または離反する側に移動して、各フォーク1、2の間隔が狭められ、または拡げられる。
【0057】
この場合においては、シリンダによりフォークシフトを行なう際には、各フォーク1、2の垂直部10、20の裏面に固定された固定ベース13に、第1の取付ブラケット41、51がそれぞれ固着された取付ベース4、5を取り付けるとともに、第1の取付ブラケット41、51にそれぞれピストンロッド6a、7aを取り付ければよい。また、油圧モータによりフォークシフトを行なう際には、各フォーク1、2の垂直部10、20の裏面に固定された固定ベース13に、第2の取付ブラケット42、52がそれぞれ固着された取付ベース4、5を取り付けるとともに、第2の取付ブラケット42、52にそれぞれ送りネジ8、9を螺合させればよい。なお、さらに駆動方式の異なるフォークシフトに対応し得る第3の取付ブラケットを取付ベースに固着するようにすれば、同一のフォークが三種類のフォークシフト駆動方式に対応可能である。
【0058】
このようにして、一種類のフォークで少なくとも二種類のフォークシフト駆動方式に容易に対応できるようになる。別の言い方をすれば、フォークシフト駆動方式が異なるフォークを共通化できるようになる。その結果、フォークの種類を削減でき、在庫管理が容易になる。
【0059】
また、この場合には、第1の取付ブラケット41、51を固着した取付ベース4、51および固定ベース13が、各取付ベース4、51を上下逆に取付可能に設けられているので、各フォーク1、2において各取付ベース4、51を上下逆に取り付けることにより、第1の取付ブラケット41、51の高さ位置を左右のフォーク1、2間で異ならせることができ、これにより、シリンダ本体部との干渉を簡単に防止できる。
【0060】
<他の実施例>
なお、前記各実施例では、モータとして油圧モータが用いられた場合を例にとって説明したが、電動モータ等の他の種類のモータを用いるようにしてもよい。また、前記各実施例では、モータによりチェーンを介して送りネジを回転させる例を示したが、本発明は、モータの出力軸自体が送りネジを構成しているものにも同様に適用できる。
【0061】
<他の適用例>
前記各実施例では、本発明によるフォークがフォークリフトに適用された例を示したが、本発明はその他の産業車両にも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明は、フォークリフト等の産業車両に有用であり、とくにフォークの共通化を要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0063】
1、2: フォーク
10、20: 垂直部

41、51: 第1の取付ブラケット
42、52: 第2の取付ブラケット
42a、52a: 雌ネジ

6、7: シリンダ
6a、7a: ピストンロッド(第1の駆動部材)

8、9: 送りネジ(第2の駆動部材)
82、92: 油圧モータ

13: 固定ベース(ベース部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】実開平2−120495号公報(第5図および第6図参照)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークにより作業を行なう産業車両において、フォークを車両幅方向に移動させるフォークシフトの駆動方式として少なくとも二種類の駆動方式に対応可能なフォークであって、
当該フォークが左右一対設けられており、
前記各フォークの垂直部の裏面には、第1の駆動方式により駆動される第1の駆動部材を取り付けるための第1の取付ブラケット、および、第2の駆動方式により駆動される第2の駆動部材を取り付けるための第2の取付ブラケットの双方が設けられている、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。
【請求項2】
請求項1において、
前記各フォークにおける前記第1および第2の取付ブラケットが、これらを上下に配置してなる一体のユニットとして製作されており、前記各フォークの前記垂直部の前記裏面には、前記ユニットを取り付けるためのベース部材がそれぞれ固定されている、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。
【請求項3】
請求項2において、
前記ユニットおよび前記ベース部材が、当該ユニットを上下逆に取付可能に設けられている、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。
【請求項4】
フォークにより作業を行なう産業車両において、フォークを車両幅方向に移動させるフォークシフトの駆動方式として少なくとも二種類の駆動方式に対応可能なフォークであって、
当該フォークが左右一対設けられており、
前記各フォークの垂直部の裏面には、第1の駆動方式により駆動される第1の駆動部材を取り付けるための第1の取付ブラケット、および、第2の駆動方式により駆動される第2の駆動部材を取り付けるための第2の取付ブラケットをそれぞれ別個に取付可能なベース部材が固定されている、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1または第2の取付ブラケットおよび前記ベース部材が、当該第1または第2のブラケットを上下逆に取付可能に設けられている、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。
【請求項6】
請求項1または4において、
前記第1の駆動方式がシリンダによる駆動方式である、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。
【請求項7】
請求項1または4において、
前記第1の駆動方式がシリンダによる駆動方式であって、前記第1の駆動部材が前記シリンダのピストンロッドである、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。
【請求項8】
請求項1または4において、
前記第2の駆動方式がモータによる駆動方式である、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。
【請求項9】
請求項1または4において、
前記第2の駆動方式がモータによる駆動方式であって、前記第2の駆動部材が前記モータにより駆動される送りネジであり、前記第2の取付ブラケットには、前記送りネジが螺合する雌ネジが形成されている、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。
【請求項10】
請求項1または4において、
当該産業車両がフォークリフトである、
ことを特徴とする産業車両のフォーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−269885(P2010−269885A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122138(P2009−122138)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】