説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】露出制御のための測光時と撮影時との色温度の変動に伴う輝度成分の補正をより正確に行う。
【解決手段】WB制御回路は、第1のWB補正値に基づいて、ストロボ発光時の画像データから第1の画像データを現像するとともに、第2のWB補正値に基づいて、ストロボ非発光時の画像データから第2の画像データを現像する(S700、S701)。WB制御回路は、ストロボ非発光時の画像データの輝度値とストロボ発光時の画像データの輝度値とから外光の輝度成分とストロボ光の輝度成分とを算出する(S703、S704)。WB制御回路は、外光の輝度成分とストロボ光の輝度成分とから合成比率を算出し、第1のWB補正値と第2のWB補正値とを混合する(S706)。WB制御回路は、撮影環境の光源色を補正するためのWB補正値とS706で生成したWB補正値とから色温度補正係数を算出し、合成画像データの輝度成分を補正する(S709)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに対するホワイトバランス制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の、撮像素子を用いる撮像装置においては、撮影によって得られた画像データの色調を調整するホワイトバランス制御機能を備えている。ホワイトバランス制御には、マニュアルホワイトバランス制御とオートホワイトバランス制御とがある。マニュアルホワイトバランス制御は、予め白色被写体を撮像してホワイトバランス係数を算出しておき、算出したホワイトバランス係数を画面全体に適用する制御である。オートホワイトバランス制御は、撮影した画像データから白色と思われる部分を自動検出し、画面全体の各色成分の平均値からホワイトバランス係数を算出し、算出したホワイトバランス係数を画面全体に適用する制御である。
【0003】
従来のオートホワイトバランス制御においては、ストロボ発光シーンにおいて画像データ内にストロボ光とは異なる光源が存在する場合、上記のように算出されたホワイトバランス係数を画面全体に適用してホワイトバランス制御を行う。そのため、各光源をともに適正な色味とするホワイトバランス制御を行うことが困難であった。例えば、ストロボ発光シーンで環境光に電球色光源のような低色温度光源が存在する場合、ストロボ光が高色温度光源であるため、ストロボ光にホワイトバランスを合わせると低色温度光源にホワイトバランスが合わなくなってしまう。一方、低色温度光源にホワイトバランスを合わせた場合には、ストロボ光にホワイトバランスが合わなくなってしまう。また、両方の光源の中間にホワイトバランスを合わせてホワイトバランス制御を行ったとしても、両方の光源にホワイトバランスが合わず、ストロボ光で照射されている領域は青みを帯び、低色温度光源で照射されている領域は赤味を帯びるような色味となってしまう。
【0004】
これに対し、特許文献1には次のような技術が開示されている。即ち、特許文献1に開示される技術は、ストロボ発光時に撮影された画像データとストロボ非発光時に撮影された画像データとを、任意の被写体領域毎に比較してデータの比を求め、その比の値によりストロボ光の寄与度を判定する。そして、判定した寄与度に応じて被写体領域毎にホワイトバランス制御値を選択して、ホワイトバランス制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3540485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の自動露出制御(AE)では、被写体輝度を測光して適正露出となるように露出制御を行っている。被写体輝度を正しく測光するためには光源の色味を補正する必要がある。しかし、露出の決定は撮影前であり、光源の色温度の決定は撮影後に実行することから、AEによって測光する時点では撮影された画像データの色温度を取得することができない。従って、測光では仮に太陽光の色温度のホワイトバランス係数を用いて輝度を算出して露出制御を行う。その後、静止画撮影後に光源の色温度を正確に求め、測光時に仮に用いた太陽光のホワイトバランス係数との差分を、輝度補正係数として算出している。
【0007】
このような色温度の変動による輝度補正を特に色温度補正と呼んでいる。従来は、撮影された画像データに対して画面全体に1つのホワイトバランス係数を適用していたが、領域毎に異なるホワイトバランス係数を適用する場合は色温度補正係数を一意に求めることができないという問題があった。
【0008】
図9は、色温度と輝度との関係を示す図であり、測光時に用いられる太陽光の色温度が5200Kであるとき、光源の色温度が変わることで輝度が変動する様子を示している。映像信号RGBから輝度Yを算出する際には、輝度構成比としてR:G:B=3:6:1という比率をもって算出しており、光源の色温度を正しく補正しなければ正確な輝度を求めることができない。電球等の低色温度光源下とストロボ光等の高色温度光源下とでは、正しく光源色を補正しないと輝度が大きく異なるわけであるが、室内等において低色温度光源下でストロボ撮影を行うのは一般的な撮影シーンである。そのため、複数光源下における最適な輝度補正が必要とされていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、露出制御のための測光時と撮影時との色温度の変動に伴う輝度成分の補正をより正確に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像処理装置は、ストロボ発光時に撮影された画像データに基づいて第1のホワイトバランス補正値を算出するとともに、ストロボ非発光時に撮影された画像データに基づいて第2のホワイトバランス補正値を算出する補正値算出手段と、前記第1のホワイトバランス補正値に基づいて、前記ストロボ発光時に撮影された画像データから第1の画像データを現像するとともに、前記第2のホワイトバランス補正値に基づいて、前記ストロボ非発光時に撮影された画像データから第2の画像データを現像する現像手段と、前記ストロボ非発光時に撮影された画像データの輝度値と前記ストロボ発光時に撮影された画像データの輝度値とに基づいて、外光の輝度成分とストロボ光の輝度成分とを算出する成分算出手段と、前記外光の輝度成分と前記ストロボ光の輝度成分とに基づいて、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの合成比率を算出する合成比率算出手段と、前記合成比率算出手段により算出された前記合成比率に基づいて、前記第1のホワイトバランス補正値と前記第2のホワイトバランス補正値とを混合する混合手段と、露出制御のための測光手段による測光時に撮影環境の光源色を補正するために使用されるホワイトバランス補正値と、前記混合手段により生成されたホワイトバランス補正値とに基づいて、色温度補正係数を算出する補正係数算出手段と、前記合成比率算出手段により算出された前記合成比率に従って、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成して第3の画像データを生成する合成手段と、前記補正係数算出手段により算出された前記色温度補正係数を用いて、前記合成手段により生成された前記第3の画像データの輝度成分を補正する補正手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、露出制御のための測光時と撮影時との色温度の変動に伴う輝度成分の補正をより正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。
【図2】ストロボ発光時の第1のWB補正値の算出処理を示すフローチャートである。
【図3】白検出の際に使用されるグラフを示す図である。
【図4】撮影制御を時系列に並べて示した図である。
【図5】静止画撮影駆動モードにおけるWB補正値とEVF撮影駆動モードにおけるWB補正値とを示す図である。
【図6】シーンの雰囲気を考慮して色味を残すように第2のWB補正値を算出する方法を説明するための図である。
【図7】画像データの合成処理を示すフローチャートである。
【図8】照射比率を算出するための被写体領域の切り出しについて説明するための図である。
【図9】色温度と輝度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。なお、本実施形態に係る撮像装置は、画像処理装置の適用例となる構成である。図1において、101は、CCDやCMOS等で構成される固体撮像素子であり、その表面は例えばベイヤー配列のようなRGBカラーフィルタにより覆われ、カラー撮影が可能な構成となっている。
【0015】
CPU114は、画像データ全体が明るくなるようなシャッタ速度、絞り値を計算するとともに、合焦領域内にある被写体に合焦するようにフォーカスレンズの駆動量を計算する。CPU114によって計算された露出値(シャッタ速度、絞り値)及びフォーカスレンズの駆動量は制御回路113に出力され、各値に基づいてそれぞれ制御される。103はホワイトバランス(以下、WB)制御回路であり、メモリ102に記憶された画像データに基づいてWB補正値を算出し、算出したWB補正値を用いて、メモリ102に記憶された画像データに対してWB補正を行う。なお、このWB制御回路103によるWB補正値の算出方法の詳細については後述する。
【0016】
104は、WB制御回路103によりWB補正された画像データが最適な色で再現されるように色ゲインをかけて色差信号R−Y、B−Yに変換する色マトリックス回路である。105は、色差信号R−Y、B−Yの帯域を制限するローパスフィルタ(LPF)回路である。106は、LPF回路105で帯域制限された画像データのうち、飽和部分の偽色信号を抑圧するCSUP(Chroma Supress)回路である。一方、WB制御回路103によりWB補正された画像データは、輝度信号(Y)生成回路111にも出力されて輝度信号Yが生成され、エッジ強調回路112は、生成された輝度信号Yに対してエッジ強調処理を施す。
【0017】
CSUP回路106から出力される色差信号R−Y、B−Yと、エッジ強調回路112から出力される輝度信号Yとは、RGB変換回路107にてRGB信号に変換され、ガンマ(γ)補正回路108にて階調補正が施される。階調補正が施されたRGB信号は、色輝度変換回路109においてYUV信号に変換され、さらにJPEG圧縮回路110にて圧縮されて、外部記録媒体又は内部記録媒体に画像データとして記録される。
【0018】
次に、WB制御回路103におけるWB補正値の算出方法について詳細に説明する。先ず、図2のフローチャートを参照しながら、本露光時(ストロボ発光時)のWB補正値である第1のWB補正値(第1のホワイトバランス補正値)の算出処理について説明する。なお、第1のWB補正値は、ストロボ発光時に撮影された画像データ(以下、ストロボ発光時画像データ)に基づいて算出される補正値である。
【0019】
ステップS201において、WB制御回路103は、メモリ102に記憶されたストロボ発光時画像データを読み出し、当該ストロボ発光時画像データを任意のm個のブロックに分割する。ステップS202において、WB制御回路103は、ブロック(1〜m)毎に、画素値を色毎に加算平均して色平均値(R[i],G[i],B[i])を算出し、次の式を用いて色評価値(Cx[i],Cy[i])を算出する。
Cx[i]=(R[i]−B[i])/Y[i]×1024
Cy[i]=(R[i]+B[i]−2G[i])/Y[i]×1024
但し、Y[i]=(R[i]+2G[i]+B[i])/4
【0020】
WB制御回路103は、図3に示すような座標軸を持つグラフを用いて白検出を行う。x座標(Cx)の負方向が高色温度被写体の白を撮影したときの色評価値を表し、正方向が低色温度被写体の色を撮影したときの色評価値を表す。また、y座標(Cy)は光源の緑成分の度合いを意味しており、負方向になるにつれGreen成分が大きくなり、つまり蛍光灯であることを示している。
【0021】
ステップS203において、WB制御回路103は、ステップS202で算出したi番目のブロックの色評価値(Cx[i],Cy[i])が、図3に示す予め設定される白検出範囲301に含まれるか否かを判定する。白検出範囲301は、ストロボ光が既知の光源であるために検出範囲が限定されている。i番目のブロックの色評価値(Cx[i],Cy[i])が予め設定される白検出範囲301に含まれる場合、処理はステップS204に移行する。一方、i番目のブロックの色評価値(Cx[i],Cy[i])が予め設定される白検出範囲301に含まれない場合、処理はステップS204をスキップして、ステップS205に移行する。
【0022】
ステップS204において、WB制御回路103は、i番目のブロックが白色であると判定して、当該ブロックの色平均値(R[i],G[i],B[i])を積分する。なお、ステップS203及びS204の処理は、次の式によって表すことができる。
【0023】
【数1】

【0024】
ここで、上記式において、色評価値(Cx[i],Cy[i])が白検出範囲301に含まれる場合にはSw[i]を1とし、色評価値(Cx[i],Cy[i])が白検出範囲301に含まれない場合にはSw[i]を0とする。これにより、ステップS203、S204において、色平均値(R[i],G[i],B[i])を積分するか、積分しないかを実質的に行っている。
【0025】
ステップS205において、WB制御回路103は、全てのブロックについて上記処理を行ったか否かを判定する。未処理のブロックが存在する場合、処理はステップS202に戻って上記式を繰り返す。一方、全てのブロックについて処理を行った場合、処理はステップS206に移行する。
【0026】
ステップS206において、WB制御回路103は、得られた色平均値の積分値(SumR1、SumG1、SumB1)から、次の式を用いて、第1のWB補正値(WBCol_R1、WBCol_G1、WBCol_B1)を算出する。
WBCol_R1=SumY1×1024/SumR1
WBCol_G1=SumY1×1024/SumG1
WBCol_B1=SumY1×1024/SumB1
但し、SumY1=(SumR1+2×SumG1+SumB1)/4
なお、第1のWB補正値としてストロボ光のWB補正値を既知のものとして予め設定してもよい。
【0027】
次に、ストロボ非発光時のWB補正値である第2のWB補正値(第2のホワイトバランス補正値)の算出処理について説明する。なお、第2のWB補正値は、ストロボ非発光時に撮影された画像データ(以下、ストロボ非発光時画像データ)に基づいて算出される補正値である。図4は、撮影制御を時系列に並べて示した図である。図4に示すように、SW1の押下前には、ライブビュー画像データが定期的に撮影され、SW1の押下時には、AFロックとAEロックとが行われる。SW2の押下後には、テスト発光と本露光とが行われるが、テスト発光前の「外光」と表記されている時間に露光され、撮影された画像データを、ここではストロボ非発光時画像データとする。なお、ストロボ非発光時画像データとしては、本露光後に露光され、撮影された撮影画像データを用いてもよい。
【0028】
第2のWB補正値の算出処理は、上述した第1のWB補正値の算出処理と同様の方法によって行われる。但し、第1のWB補正値の算出処理とは、図3の302に示すような外光用の白検出範囲で処理する点で異なる。これはストロボ光が既知の光源であるのに対し、外光は既知の光源ではないため、ストロボ発光時の白検出範囲301のように限定できないからである。外光用の白検出範囲302は、予め異なる光源下で白を撮影し、算出した色評価値をプロットしたものである。この白検出範囲302は撮影駆動モードによって別設定できるものとする。第2のWB補正値は、撮像駆動モードが異なる場合にも適応でき、例えば、過去に算出されたEVF(Electronic View Finder)撮影駆動モードのWB補正値を使用することができる。但し、撮影駆動モードにより分光差分が生じる場合、WB補正回路103はWB補正値を補正する。図5は、静止画撮影駆動モードにおけるWB補正値とEVF撮影駆動モードにおけるWB補正値とを示す図である。過去に撮影されたEVF撮影駆動モードのWB補正値を用いて、静止画撮影駆動モードのWB補正値を算出する場合、図5に示すように、WB制御回路103は、EVF撮影駆動モードのWB補正値(EvfCx,EvfCy)501をΔCx、ΔCyだけ補正する。これにより、静止画撮影駆動モードのWB補正値(CapCx,CapCy)502が算出される。
【0029】
ここでは、背景が電球色光源のような低色温度光源の場合に、シーンの雰囲気を考慮して色味を残すように第2のWB補正値を算出してもよい。例えば図6に示すように、第2のWB補正値の色温度が低い場合(例えば、入力のT1)、色味を残すように制御することにより(例えば、出力のT´1)、電球色光源の赤味を残すような画像データを生成することができる。なお、上述した第1のWB補正値や第2のWB補正値の算出処理は、補正値算出手段の処理例である。
【0030】
次に、図7のフローチャートを参照しながら、画像データの合成処理について説明する。ステップS700において、WB制御回路103は、上記第1のWB補正値を用いてストロボ発光時画像データから画像データYuv1を現像する。ステップS701において、WB制御回路103は、上記第2のWB補正値を用いてストロボ非発光時画像データから画像データYuv2を現像する。ステップS702において、WB制御回路103は、ストロボ発光時画像データ、ストロボ非発光時画像データ、画像データYuv1、画像データYuv2をそれぞれn個のブロックに分割する。なお、画像データYuv1は第1の画像データの例であり、画像データYuv2は第2の画像データの例である。
【0031】
ステップS703において、WB制御回路103は、ストロボ非発光時画像データのブロック(1〜n)毎に、画素値を色毎に加算平均して色平均値(R2[i],G2[i],B2[i])を算出し、各ブロックの輝度値a[i]を算出する。各ブロックの輝度値a[i]の算出式は次の式に示す通りである。ここで、算出された各ブロックの輝度値a[i]を、各ブロックの外光の輝度成分(以下、外光成分)とする。
【0032】
【数2】

【0033】
ステップS704において、WB制御回路103は、ストロボ非発光時画像データから各ブロックの輝度値a[i]を算出する処理と同様に、ストロボ発光時画像データのブロック(1〜n)毎に、画素値を色毎に加算平均して色平均値(R1[i],G1[i],B1[i])を算出し、各ブロックの輝度値b[i]を算出する。WB制御回路103は、次の式に示すように、算出した各ブロックの輝度値b[i]から、対応するストロボ非発光時画像データの各ブロックの輝度値a[i]を引くことにより、ブロック毎のストロボ光の輝度成分(以下、ストロボ成分)c[i]を算出する。
c[i]=b[i]−a[i]
なお、ステップS703、S704は、成分算出手段の処理例である。
【0034】
ステップS705において、WB制御回路103は、次の式により、それぞれ対応するブロック毎のストロボ成分c[i]と外光成分a[i]との比率を基に、画像データYuv1と画像データYuv2とを合成する際のブロック毎のMix率α[i]を算出する。
α[i]=c[i]/(a[i]+c[i])
なお、ステップS705は、合成比率算出手段の処理例である。
【0035】
ステップS706において、WB制御回路103は、ステップS705で求めたブロック毎のMix率α[i]の和である画面全体のMix率Sumαを次の式によって求める。
【0036】
【数3】

【0037】
ステップS707において、WB制御回路103は、Sumαの値に応じて、上記第1のWB補正値と上記第2のWB補正値とを混合する。ここで、Sumαはブロック毎のMix率の和であり、Mix率α[i]はストロボ成分の割合を示すものであるため、Sumαを求めることで画面全体に占めるストロボ成分と外光成分との比率を取得することができる。WB制御回路103は、このストロボ成分と外光成分との比率を混合比率として用いて第1のWB補正値と第2のWB補正値とを混合することにより、画面全体のWB補正値を決定する。WB制御回路103は、ここで求めたWB補正値をMix後WB補正値として記憶しておく。
【0038】
なお、別の方法としてSumαを用いずにMix後WB補正値を求める方法についても説明しておく。WB制御回路103は、図3の白検出範囲302で示した白検出範囲を被写体領域に適用し、被写体領域の色温度を検出する。そしてWB制御回路103は、被写体領域の色温度をMix後WB補正値として用いる。
【0039】
ステップS708において、WB制御回路103は、色温度補正係数を算出する。AEでは被写体輝度を測光して適正露出となるように露出制御を行っている。被写体輝度を正しく測光するためには光源の色味を補正する必要がある。しかし、露出の決定は撮影前であり、光源の色温度の決定は撮影後に実行することから、AEによって測光する時点では撮影された画像データの色温度を取得することができない。従って、測光では仮に太陽光の色温度のWB係数を用いて輝度を算出して露出制御される。その後、WB制御回路103は、静止画撮影後に光源の色温度を正確に求め、測光時に仮に用いた、撮影環境の光源色を補正するための太陽光のWB係数との差分を、輝度補正係数として算出している。色温度補正とは色温度の変動による輝度補正のことを指し、色温度補正係数は色温度の変動による輝度補正係数のことである。WB制御回路103は、ステップS707で求めたMix後WB補正値と測光時に用いた太陽光のWB補正値とに基づいて色温度補正係数kを次の式によって算出する。
色温度補正係数k=Mix後WB補正値/太陽光のWB補正値
なお、ステップS708は、補正係数算出手段の処理例である。
【0040】
ステップS709において、WB制御回路103は、ブロック毎のMix率α[i]を用いて画像データYuv1と画像データYuv2とを合成し、合成画像データYuv3を生成する。合成画像データYuv3における色評価値(Y3[i],u3[i],v3[i])は、画像データYuv1における色評価値(Y1[i],u1[i],v1[i])と、画像データYuv2における色評価値(Y2[i],u2[i],v2[i])とを用いて、次の式のように算出される。
【0041】
【数4】

【0042】
ここで、ブロック境界部分の色味ずれを緩和するため、ステップS705で画素補間処理を行うことによりブロック毎のMix率α[i]から画素毎のMix率α´[j]を算出してもよい。例えば、WB制御回路103は、画素補間処理としてバイリニア補間を用い、ブロック毎のMix率α[i]から画素毎のMix率α´[j]を算出する。このとき、ステップS709において、WB制御回路103は、画素毎のMix率α´[j]を用いて、画像データYuv1と画像データYuv2とを合成し、合成画像データYuv3を生成する。なお、合成画像データYuv3は第3の画像データの例である。
【0043】
合成画像データYuv3における色評価値(Y3[j],u3[j],v3[j])は、画像データYuv1における色評価値(Y1[j],u1[j],v1[j])と、画像データYuv2における色評価値(Y2[j],u2[j],v2[j])とを用いて、次の式のように算出される。
【0044】
【数5】

【0045】
また、ステップS709においては、ストロボ発光時画像データにおける各ブロックの輝度に応じて、ブロック毎に画像合成処理を行うか行わないかを判定することにより、処理を可変にしてもよい。即ち、当該ブロックの輝度が低い場合や高い場合、当該ブロックに対して合成処理を行わず、後述する通常のホワイトバランス制御によって算出されるWB補正値を用いて画像データの現像処理が行われる。一方、当該ブロックの輝度がそれ以外の場合、上述した画像データの合成処理と同様の処理が行われる。
【0046】
さらにステップS709においては、WB制御回路103は、次の式に示すように、ステップS708で算出した色温度補正係数kを輝度成分Y3にのみ適用して輝度補正を行う。
【0047】
【数6】

【0048】
次に、通常のホワイトバランス制御方法について詳細に説明する。先ず、WB制御回路103は、上述したWB補正値の算出処理と同様に、第1、第2のWB補正値を算出する。次に、WB制御回路103は、第1、第2のWB補正値のMix(加重加算)処理を行う。Mix(加重加算)処理では、被写体に照射されている外光とストロボ光の照射比率によって加重加算が行われる。
【0049】
ここで、図8を参照しながら、照射比率を演算するための被写体領域の切り出しについて説明する。WB制御回路103は、テスト発光する前に撮影された画像データ801を取得し、このテスト発光前に撮影された画像データ801からm×nのマトリックスで構成される輝度ブロックa802を算出する。次に、テスト発光する前と同じ条件でストロボのテスト発光が行われることにより、WB制御回路103は、テスト発光時に撮影された画像データ803を取得し、同様にm×nのマトリックスで構成される輝度ブロックb804を取得する。これら、輝度ブロックa802及び輝度ブロックb804は、撮像装置に備えられるRAM等に一時的に格納される。なお、テスト発光前に撮影された画像データ801の背景画像とテスト発光時に撮影された画像データ803の背景画像とは略変化がないものとする。従って、この2つの輝度ブロックa802と輝度ブロックb804との差分データは、ストロボのテスト発光時における被写体領域の反射光となり、当該差分データより被写体位置情報c805を取得することができる。
【0050】
WB制御回路103は、このように算出された被写体位置情報c805から値が1の被写体位置ブロックを取得し、取得した被写体位置ブロックにおけるストロボ発光時の輝度値Y1とストロボ非発光時の輝度値Y2とを算出する。ここでストロボ発光時とストロボ非発光時との露光条件が異なる場合、WB制御回路103は、露光条件を揃えてY1、Y2を算出する。WB制御回路103は、このように算出したY1、Y2の比を被写体に照射された光量比として、第1のWB補正値、第2のWB補正値を用いて光量比によるMix処理(加重加算)を行う。そして、WB制御回路103は、Mix処理によって得られたWB補正値をWB処理に使用するWB補正値として決定し、画像データを現像し、最終画像データとする。
【0051】
なお、本実施形態では、ブロック毎に色味を補正し、輝度成分の補正は画面全体に適用しているがこれに限定されるものではない。例えば、ブロック毎にMix率α[i]を用いて第1のWB補正値と第2のWB補正値とを混合し、ブロック毎にMix後のWB補正値を求めることにより、ブロック毎に色温度補正係数kを求めることが可能である。
【0052】
本実施形態によれば、被写体と背景に異なった光源が照射されているような場合に被写体と背景をともに適正な色味とする場合において、露出制御のための測光時と撮影時との色温度の変動に伴う輝度信号の補正をより正確に行うことが可能となる。
【0053】
本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェース機器、カメラヘッド等)から構成されるシステムを適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等)に適用してもよい。
【0054】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0055】
101:個体撮像素子、102:メモリ、103:WB制御回路、104:色マトリックス回路、105:LPF回路、106:CSUP回路、107:RGB変換回路、108:γ補正回路、109:色輝度変換回路、110:JPEG圧縮回路、111:Y生成回路、112:エッジ強調回路、113:制御回路、114:CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロボ発光時に撮影された画像データに基づいて第1のホワイトバランス補正値を算出するとともに、ストロボ非発光時に撮影された画像データに基づいて第2のホワイトバランス補正値を算出する補正値算出手段と、
前記第1のホワイトバランス補正値に基づいて、前記ストロボ発光時に撮影された画像データから第1の画像データを現像するとともに、前記第2のホワイトバランス補正値に基づいて、前記ストロボ非発光時に撮影された画像データから第2の画像データを現像する現像手段と、
前記ストロボ非発光時に撮影された画像データの輝度値と前記ストロボ発光時に撮影された画像データの輝度値とに基づいて、外光の輝度成分とストロボ光の輝度成分とを算出する成分算出手段と、
前記外光の輝度成分と前記ストロボ光の輝度成分とに基づいて、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの合成比率を算出する合成比率算出手段と、
前記合成比率算出手段により算出された前記合成比率に基づいて、前記第1のホワイトバランス補正値と前記第2のホワイトバランス補正値とを混合する混合手段と、
露出制御のための測光手段による測光時に撮影環境の光源色を補正するために使用されるホワイトバランス補正値と、前記混合手段により生成されたホワイトバランス補正値とに基づいて、色温度補正係数を算出する補正係数算出手段と、
前記合成比率算出手段により算出された前記合成比率に従って、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成して第3の画像データを生成する合成手段と、
前記補正係数算出手段により算出された前記色温度補正係数を用いて、前記合成手段により生成された前記第3の画像データの輝度成分を補正する補正手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記合成比率算出手段は、ブロック毎の前記外光の輝度成分と前記ストロボ光の輝度成分とに基づいて、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの合成比率をブロック毎に算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記合成比率算出手段は、画素補間処理により、ブロック毎の合成比率から画素毎の合成比率を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記合成手段は、各ブロックの輝度値に応じて、該当するブロックの合成処理を実行するか否かを制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正値算出手段は、光源に対して任意の色味を残すように前記第2のホワイトバランス補正値を算出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記合成比率算出手段により算出された前記合成比率に基づいて、前記第1のホワイトバランス補正値と前記第2のホワイトバランス補正値との混合比率を算出する第1の混合比率算出手段を更に有し、
前記混合手段は、前記第1の混合比率算出手段により算出された前記混合比率に従って、前記第1のホワイトバランス補正値と前記第2のホワイトバランス補正値とを混合することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の混合比率算出手段は、ブロック毎の前記合成比率を画面全体について加算することにより前記混合比率を算出することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
被写体領域の色温度を検出することにより、前記第1のホワイトバランス補正値と前記第2のホワイトバランス補正値との混合比率を算出する第2の混合比率算出手段を更に有し、
前記混合手段は、前記第2の混合比率算出手段により算出された前記混合比率に従って、前記第1のホワイトバランス補正値と前記第2のホワイトバランス補正値とを混合することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
画像処理装置によって実行される画像処理方法であって、
ストロボ発光時に撮影された画像データに基づいて第1のホワイトバランス補正値を算出するとともに、ストロボ非発光時に撮影された画像データに基づいて第2のホワイトバランス補正値を算出する補正値算出ステップと、
前記第1のホワイトバランス補正値に基づいて、前記ストロボ発光時に撮影された画像データから第1の画像データを現像するとともに、前記第2のホワイトバランス補正値に基づいて、前記ストロボ非発光時に撮影された画像データから第2の画像データを現像する現像ステップと、
前記ストロボ非発光時に撮影された画像データの輝度値と前記ストロボ発光時に撮影された画像データの輝度値とに基づいて、外光の輝度成分とストロボ光の輝度成分とを算出する成分算出ステップと、
前記外光の輝度成分と前記ストロボ光の輝度成分とに基づいて、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの合成比率を算出する合成比率算出ステップと、
前記合成比率算出ステップにより算出された前記合成比率に基づいて、前記第1のホワイトバランス補正値と前記第2のホワイトバランス補正値とを混合する混合ステップと、
露出制御のための測光手段による測光時に撮影環境の光源色を補正するために使用されるホワイトバランス補正値と、前記混合ステップにより生成されたホワイトバランス補正値とに基づいて、色温度補正係数を算出する補正係数算出ステップと、
前記合成比率算出ステップにより算出された前記合成比率に従って、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成して第3の画像データを生成する合成ステップと、
前記補正係数算出ステップにより算出された前記色温度補正係数を用いて、前記合成ステップにより生成された前記第3の画像データの輝度成分を補正する補正ステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
ストロボ発光時に撮影された画像データに基づいて第1のホワイトバランス補正値を算出するとともに、ストロボ非発光時に撮影された画像データに基づいて第2のホワイトバランス補正値を算出する補正値算出ステップと、
前記第1のホワイトバランス補正値に基づいて、前記ストロボ発光時に撮影された画像データから第1の画像データを現像するとともに、前記第2のホワイトバランス補正値に基づいて、前記ストロボ非発光時に撮影された画像データから第2の画像データを現像する現像ステップと、
前記ストロボ非発光時に撮影された画像データの輝度値と前記ストロボ発光時に撮影された画像データの輝度値とに基づいて、外光の輝度成分とストロボ光の輝度成分とを算出する成分算出ステップと、
前記外光の輝度成分と前記ストロボ光の輝度成分とに基づいて、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの合成比率を算出する合成比率算出ステップと、
前記合成比率算出ステップにより算出された前記合成比率に基づいて、前記第1のホワイトバランス補正値と前記第2のホワイトバランス補正値とを混合する混合ステップと、
露出制御のための測光手段による測光時に撮影環境の光源色を補正するために使用されるホワイトバランス補正値と、前記混合ステップにより生成されたホワイトバランス補正値とに基づいて、色温度補正係数を算出する補正係数算出ステップと、
前記合成比率算出ステップにより算出された前記合成比率に従って、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成して第3の画像データを生成する合成ステップと、
前記補正係数算出ステップにより算出された前記色温度補正係数を用いて、前記合成ステップにより生成された前記第3の画像データの輝度成分を補正する補正ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−58869(P2013−58869A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195401(P2011−195401)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】