説明

画像処理装置及びプログラム

【課題】画像処理により画像の範囲が小さくなることを防ぐ。
【解決手段】ユーザによる画像読取設定の情報が含まれたスキャン要求を入力し(S100)、その画像読取設定の内容に基づき、実行する画像処理を特定する(S200)。そして、特定した画像処理による画素の欠落量を加味して処理対象の画像の範囲を拡張し(S300,S400)、拡張後の画像に対して画像処理を実行する(S500)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像端部に生じる画素の欠落量が異なる画像処理を実行するための画像処理装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、処理対象の画像に画像処理を実行する画像処理装置が知られている。ここで、処理対象の画像は、例えば特許文献1に記載のような画像読取装置によって取得することが可能である。なお、この画像読取装置は、原稿を通紙して画像を読み取るものであり、ギアのバックラッシュによる画像の読み取り欠損及び2度読みを防止するため、原稿の通紙停止時に画像の所定ライン数を余分に読み取り、原稿の通紙開始時に画像の所定ライン数を読み飛ばすようにしている。
【特許文献1】特開2001−61039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、画像処理の中には、その処理方法の性質上、入力画像データに比べ画像端部に画素の欠落が生じるものがある。例えば、画像の強調補正や平滑補正を行うフィルタ処理では、注目画素に対するその周辺の周辺画素を加味する割合を定めた画像補正フィルタを用いて画像を補正するため、フィルタに用いる周辺画素の存在しない画素については補正が行えず、その部分の画素が出力されない(欠落する)。
【0004】
このように画像の端部が欠落すると、画像処理後の画像の範囲が画像処理前の画像の範囲に比べて小さくなるという問題がある。
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、画像処理により画像の範囲が小さくなることを防ぐことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本発明の請求項1に記載の画像処理装置は、画像端部に生じる画素の欠落量が異なる複数の画像処理を処理対象の画像に対して実行可能な画像処理手段と、画像処理手段に実行させる画像処理を複数の画像処理の中から特定する特定手段と、特定手段により特定された画像処理による画素の欠落量に応じて処理対象の画像の範囲を拡張する対象画像拡張手段とを備え、画像処理手段は、対象画像拡張手段により範囲の拡張された画像に対して特定手段により特定された画像処理を実行する。
【0006】
このような画像処理装置によれば、画像処理による画素の欠落量を加味して処理対象の画像の範囲をあらかじめ拡張しておくことで、画像処理により画像の範囲が小さくなることを防ぐことができる。
【0007】
具体的には、例えば請求項2に記載の画像処理装置では、画像処理手段は、注目画素に対するその周辺の周辺画素を加味する割合を定めた画像補正フィルタを用いて画像を補正するフィルタ処理を画像処理として実行可能であり、対象画像拡張手段は、特定手段によりフィルタ処理が特定された場合には、処理対象の画像の範囲をそのフィルタ処理に用いられる画像補正フィルタのライン数から1を引いたライン数分拡張する。
【0008】
このような画像処理装置によれば、処理対象の画像をフィルタ処理により生じる画素の欠落量の分だけあらかじめ拡張しておくことで、フィルタ処理により画像の範囲が小さくなることを防ぐことができる。
【0009】
この場合、請求項3に記載のように、対象画像拡張手段は、画像補正フィルタにおける注目画素を挟んだ両側のライン数分をそれぞれ対応する方向へ拡張することが好ましい。このようにすれば、フィルタ処理の前後における画像の範囲が小さくなることを防ぐだけでなく、画像の内容のずれについても防ぐことができるからである。
【0010】
一方、例えば請求項4に記載の画像処理装置では、画像処理手段は、補間処理を伴う解像度変換処理を画像処理として実行可能であり、対象画像拡張手段は、特定手段により解像度変換処理が特定された場合には、処理対象の画像の範囲を解像度変換処理による画素の欠落を防止するのに必要な分拡張する。
【0011】
このような画像処理装置によれば、解像度変換処理により生じる画素の欠落量を加味して処理対象の画像をあらかじめ拡張しておくことで、解像度変換処理により画像の範囲が小さくなることを防ぐことができる。
【0012】
ところで、画像処理装置としては、例えば請求項5に記載のように、処理対象の画像を原稿から読み取る読取手段を備え、読取手段が、対象画像拡張手段により拡張された範囲の画像を処理対象の画像として原稿から読み取る構成のものを用いることができる。このような画像処理装置によれば、画像処理による画素の欠落量を加味して画像の読取範囲を拡張することで、余分な範囲を無駄に読み取る必要がなく、画像の読み取りを効率的に行うことができる。
【0013】
具体的には、例えば請求項6に記載の画像処理装置では、画像処理手段は、原稿の画像の一部から検出したその原稿の地色に基づき読取色を補正する地色補正処理を画像処理として実行可能であり、対象画像拡張手段は、特定手段により地色補正処理が特定された場合には、処理対象の画像の範囲を地色補正処理による地色検出用の領域の分拡張する。
【0014】
このような画像処理装置によれば、地色補正処理により生じる画素の欠落量を加味して画像の読取範囲を拡張することで、地色補正処理により画像の範囲が小さくなることを防ぐことができる。
【0015】
また、請求項7に記載の画像処理装置では、読取手段は、原稿の画像を主走査方向のライン単位で読み取るイメージセンサの原稿に対する相対位置を副走査方向に移動させつつ画像を読み取るものであり、対象画像拡張手段は、処理対象の画像の範囲を副走査方向にのみ拡張する。
【0016】
このような画像処理装置によれば、副走査方向の読み取りライン数を増やすだけでよいため、主走査方向の読み取り量を増やすことによる画像処理の複雑化を防ぐことが可能となる。
【0017】
一方、請求項8に記載の画像処理装置では、読取手段は、原稿の画像を主走査方向のライン単位で読み取るイメージセンサの原稿に対する相対位置を副走査方向に移動させつつ、原稿への照射光の色を切り替えてライン単位の画像を色ごとに読み取るCIS(Contact Image Senser)方式のものであり、画像処理手段は、読取手段による色ごとの読取位置のずれを補正する色ずれ補正処理を画像処理として実行可能であり、対象画像拡張手段は、特定手段により色ずれ補正処理が特定された場合には、処理対象の画像の範囲を色ずれ補正処理による画素の欠落を防止するのに必要な分拡張する。
【0018】
このような画像処理装置によれば、色ずれ補正処理により生じる画素の欠落量を加味して画像の読取範囲を拡張することで、色ずれ補正処理により画像の範囲が小さくなることを防ぐことができる。
【0019】
また、請求項9に記載の画像処理装置では、読取手段は、原稿の画像を主走査方向のライン単位で読み取るイメージセンサを、定位置にセットされた原稿に対して副走査方向に移動させつつ画像を読み取るものであり、対象画像拡張手段は、処理対象の画像の範囲を拡張することにより副走査方向における一方へのイメージセンサの移動量が所定の制限量を超える場合には、制限量を超える分のライン数を他方へ拡張する。
【0020】
このような画像処理装置によれば、イメージセンサの移動可能な範囲で画像の読取範囲を効率よく拡張することができる。
また、処理対象の画像として読み取る範囲は、例えば請求項10に記載のように設定することができる。すなわち、請求項10に記載の画像処理装置は、原稿から処理対象の画像として読み取る範囲を設定する範囲設定手段を備え、対象画像拡張手段は、特定手段により特定された画像処理による画素の欠落量に応じて範囲設定手段により設定された範囲を拡張し、読取手段は、対象画像拡張手段により拡張された範囲の画像を処理対象の画像として原稿から読み取る。
【0021】
また、請求項11に記載の画像処理装置では、特定手段は、画像処理手段に実行させる画像処理をユーザからの指示に従い特定する。このような画像処理装置によれば、処理対象の画像に対して実行する画像処理をユーザが決定することができる。
【0022】
次に、請求項12に記載のプログラムは、画像端部に生じる画素の欠落量が異なる複数の画像処理を処理対象の画像に対して実行可能な画像処理手段と、画像処理手段に実行させる画像処理を複数の画像処理の中から特定する特定手段と、特定手段により特定された画像処理による画素の欠落量に応じて処理対象の画像の範囲を拡張する対象画像拡張手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、画像処理手段は、対象画像拡張手段により範囲の拡張された画像に対して特定手段により特定された画像処理を実行する。
【0023】
このようなプログラムによれば、請求項1の画像処理装置としてコンピュータを機能させることができ、これにより前述した効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.全体構成]
図1は、イメージスキャナ/プリンタ/コピー/ファクシミリとしての機能を備えた複合機1の外観を示す斜視図である。図2は、複合機1に設けられた画像読取装置5の構成を表す断面図である。図3は、図2中の矢印A方向から見た読取ヘッド11とその周辺を表す断面図である。
【0025】
図1に示すように、複合機1は、下側本体1aに対して上側本体1bを開閉可能に取り付けてなるクラムシェル型の開閉構造を備えており、下側本体1aに画像形成装置3(本実施形態ではレーザープリンタ)が組み込まれ、上側本体1bに画像読取装置5が組み込まれた構造になっている。また、上側本体1bの正面側には、操作パネル7が設けられている。
【0026】
画像読取装置5は、原稿を載置した状態で画像を読み取るためのフラットベッド機構(以下「FB」ともいう。)と、原稿を画像読取位置に搬送しつつ画像を読み取るための自動給紙機構(Automatic Document Feeder:以下「ADF」ともいう。)との両方を備えるタイプのものである。この画像読取装置5自体も、図2に示すように、フラットベッド部5aに対してカバー部5bを開閉可能に取り付けてなるクラムシェル型の開閉構造を備えている。
【0027】
また、画像読取装置5は、画像を読取可能な原稿の最大サイズが「A3」に設定されており、FBは「A3」サイズの原稿を載置可能に構成され、ADFは、「A3」サイズの原稿を長手方向に搬送可能に構成されている。
【0028】
この画像読取装置5において、フラットベッド部5aには、図2に示すように、読取ヘッド11、第1プラテンガラス13、第2プラテンガラス15、白板17などが配設され、カバー部5bには、原稿供給トレイ21、原稿搬送装置23、原稿排出トレイ25などが設けられている。
【0029】
読取ヘッド11は、いわゆるCIS方式のものであり、受光手段としての複数のラインセンサからなるイメージセンサ31、レンズからなる光学素子33、及び、照射手段としての光源35を備える。
【0030】
つまり、読取ヘッド11は、読取対象位置に存在する原稿に対して光源35から光を照射し、原稿からの反射光をレンズからなる光学素子33を介して直接イメージセンサ31にて受光することで、イメージセンサ31にて主走査方向1ライン分の画像を読み取るように構成されている。
【0031】
また、読取ヘッド11は、図3に示すように、一端に軸受37を有し、他端にコロ39を有している。そして、フラットベッド部5a内において第1プラテンガラス13、第2プラテンガラス15、及び白板17に対して平行に配設されているガイドバー41を軸受37に通すとともに、コロ39をガイド面43の上に搭載することにより、ガイドバー41とガイド面43との間に架設され、ガイドバー41に沿って副走査方向に往復移動するように構成されている。
【0032】
コロ39は、図2に示したように、上端側の一部が読取ヘッド11の上方へ突出する状態になっていて、コロ39との間にごく僅かな隙間(本実施形態では約0.5mmの隙間)をなす位置にガイド部45が形成されている。このような構造とすることにより、複合機1の移送時に発生する振動等によってガイドバー41を中心に読取ヘッド11を回動させるような力が読取ヘッド11に作用した場合には、コロ39がまずガイド部45に当接する。これにより、読取ヘッド11の回動が規制されるので、読取ヘッド11本体と、第1プラテンガラス13、第2プラテンガラス15、及び白板17との衝突が防止される。
【0033】
第1プラテンガラス13は、FB側において原稿から画像を読み取る場合に利用されるものである。FBを利用して原稿から画像を読み取る際には、利用者が、第1プラテンガラス13の上に原稿を載置し、カバー部5bにて原稿を第1プラテンガラス13に押し当て、その状態で操作パネル7において所定の操作を行う(例えば読取開始ボタンを押す)。これにより、画像読取装置5は、読取ヘッド移送用のステップモータ27(図4参照)を駆動して、読取ヘッド11を、ガイドバー41、ひいては第1プラテンガラス13に沿って副走査方向に移動させながら、原稿から画像を読み取る。
【0034】
第2プラテンガラス15は、ADF側において原稿から画像を読み取る場合に利用されるものである。ADFを利用して原稿から画像を読み取る際には、利用者が、原稿供給トレイ21上に原稿をセットし、その状態で操作パネル7において所定の操作を行う(例えば読取開始ボタンを押す。)。これにより、画像読取装置5は、原稿搬送装置23を作動させて原稿を原稿供給トレイ21から原稿排出トレイ25へと搬送し、読取ヘッド11を第2プラテンガラス15の下方で静止させたまま、第2プラテンガラス15の上を副走査方向に通過する原稿から画像を読み取る。
【0035】
白板17は、白色の均一な濃度分布を持つ部材であり、この白板17から画像(白板17の輝度)が読み取られて、原稿が実際に読み取られ取得された実測データを理想データに変換する際に必要となる白レベル補正データが取得される。以後は、この白レベル補正データを利用して、白レベル補正処理(シェーディング補正処理)が行われる。
【0036】
なお、複合機1の下側本体1aに組み込まれた画像形成装置3は、図1に示すように、複合機1の背面側にある給紙トレイ51からシート状記録媒体(例えば紙)を取り込んで、その記録媒体の記録面上に画像を形成し、画像が記録された記録媒体を、複合機1の正面側にある排紙口53から排出する構造になっている。排紙口53の下方には、引き出し式の排紙トレイ55が格納されており、必要に応じて排紙トレイ55を引き出して、排紙口53から排出される記録紙を受けることができる。
【0037】
また、操作パネル7には、数値を入力するためのテンキー、十字方向に方向を選択するためのカーソルキー、各種指令を入力するためのボタンやスイッチ、メニュー画像やエラーメッセージを表示するための液晶パネル等が備えられている。このため、使用者は、これらのボタンやスイッチを用いて動作態様などを指定することができ、また液晶パネルに表示されるメニュー画面から各種メニュー項目を選択することで動作態様などを設定したり、他のメニュー画面を表示させたりすることができる。
【0038】
[2.制御系の構成]
図4に示すように、複合機1には、複合機1全体の動作を制御するために、CPU61、ROM62、RAM63等からなるマイクロコンピュータを中心に構成された制御装置60が設けられている。なお、ROM62には、後述する処理(図11〜図13)をCPU61に実行させるためのプログラムが記憶されている。
【0039】
また、制御装置60には、これら各部とバスを介して接続されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)64やモデム65が設けられている。
【0040】
ASIC64には、画像形成装置3、画像読取装置5(詳しくは前述した原稿搬送装置23、読取ヘッド11、ステップモータ27)、パネルインタフェース66、パラレルインタフェース67、USBインタフェース68、ネットワーク制御装置(NCU)69が接続されている。
【0041】
なお、パネルインタフェース66は操作パネル7との間で信号を入出力するためのものであり、パラレルインタフェース67は、外部のパーソナルコンピュータ(PC)等と画像情報の入出力を行なうためのものである。また、USBインタフェース68は、PCやデジタルカメラ等の外部装置と画像情報の入出力を行なうためのものであり、NCU69は、外部のファクシミリ装置と一般公衆回線を介して情報を伝達するためのものである。
【0042】
そして、ASIC64は、CPU61の動作によって内部のレジスタに設定される各種制御パラメータに従い、画像形成装置3、画像読取装置5、NCU69を制御することで、複合機1を、プリンタ、イメージスキャナ、コピー機(複写装置)、ファクシミリ装置として機能させる。
【0043】
また、ASIC64は、上記各インタフェース66〜68からの入力データをCPU61に出力し、CPU61からの入力データを上記各インタフェース66〜68を介して操作パネル7や外部装置に出力する中継装置としても機能する。
【0044】
なお、読取ヘッド11には、カラー画像を読み取るために、光源35として、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の光源(LED)が設けられている。そして、画像読取時には、ASIC64は、これら各光源を順次点灯させ、その点灯の度にイメージセンサ31から各画素データを取得することで、各色の反射光に基づく主走査方向1ライン分の画像データを生成し、その生成した3色の画像データを合成してカラー画像データを生成する。
【0045】
[3.画像読取動作における設定]
本実施形態の複合機1は、画像読取装置5で原稿から画像を読み取る画像読取動作について、ユーザによる各種設定を可能としている。具体的には、ユーザは、画像読取設定として、読取範囲、モード、画質及び出力解像度についての設定を、操作パネル7を介して行うことができる。
【0046】
ここで、読取範囲の設定は、原稿のサイズそのものや、原稿における任意の範囲を指定することにより行われる。なお、本実施形態の複合機1は、読取範囲として原稿サイズそのものが指定された場合には、原稿サイズの上下左右(又は上下のみ)に数ミリ(例えば3mm)分の余白を加味した一回り小さい範囲を読取範囲とする。
【0047】
また、モードの設定は、コピーモード、FAXモード、PCスキャンモードの中から1つのモードを選択することにより行われる。なお、コピーモードとは、原稿から読み取った画像を画像形成装置3に印刷させるための動作モードである。また、FAXモードとは、原稿から読み取った画像をFAX送信させるための動作モードである。一方、PCスキャンモードとは、原稿から読み取った画像をデータとしてパーソナルコンピュータに保存させるための動作モードである。
【0048】
また、画質の設定は、自動、写真、文字、1677万色カラー、白黒、256階調グレー等の選択肢の中から選択することにより行われる。
また、出力解像度の設定は、600×600dpi、Fax−Standard(203.2×97.79dpi)等の選択肢の中から選択することにより行われる。
【0049】
[4.画像処理の概要]
また、本実施形態の複合機1は、ユーザによる画像読取設定の内容(具体的には、モード、画質及び出力解像度の設定内容)に基づき、入力画像に対して実行する画像処理を決定する。ここで、画像処理としては、その処理方法の性質上、入力画像データに比べ画像処理を実行された出力画像データの画像端部に画素の欠落が生じるものが含まれている。このような画像処理として、本実施形態の複合機1は、フィルタ処理、補間処理を伴う解像度変換処理、地色補正処理、色ずれ補正処理を実行可能となっている。
【0050】
そこで、本実施形態の複合機1は、画像処理による画素の欠落量を加味して処理対象の入力画像をあらかじめ拡張しておくことで、画像処理によって出力画像の範囲が設定読取範囲より小さくなることを防止するようにしている。ここで、各画像処理について説明する。
【0051】
[4−1.フィルタ処理]
フィルタ処理は、注目画素に対するその周辺の周辺画素を加味する割合を定めた画像補正フィルタ(以下、単に「フィルタ」という。)を用いて入力画像を補正する(強調補正、平滑補正、これら両方を同時に行う補正等を行う)処理である。すなわち、図5(a)に示す入力画像データに対し、図5(b)に示すフィルタ係数のフィルタで補正を行うと、注目画素の画素値p22の出力画像データにおける画素値は、次の式(1)により算出される。
【0052】
【数1】

具体的には、例えば図5(c)に示す入力画像データに対し、図5(d)に示すフィルタ係数の3×3のフィルタで補正を行うと、注目画素の値は、
(1×255+2×255+1×255+2×180+4×180+2×180+1×100+2×100+1×100)÷(1+2+1+2+4+2+1+2+1)=178
となる。
【0053】
したがって、フィルタ係数に応じて入力画像の補正度合いが決定される。本実施形態では、所望の補正結果を得るための複数種類のフィルタを利用可能としており、フィルタのサイズとしては、例示した3×3(縦3ライン×横3画素)のフィルタの他、5×5、3×5、1×3、1×5のフィルタが用意されている。
【0054】
このようなフィルタ処理では、フィルタに用いる周辺画素の存在しない画素については補正が行えないため出力されない。例えば、3×3のフィルタを用いた場合、図6(a)に示すように、入力画像データの先頭ライン(1ライン目)の画素を注目画素とすると、周辺画素の一部(フィルタにおける1ライン目)が存在しないため、前述した計算を行うことができない。このため、入力画像データの1ライン目に対応する画素は出力されない。
【0055】
その後、図6(b)に示すように、入力画像データの2ライン目以降は、周辺画素が存在するため、画素が出力される。
ただし、図6(c)に示すように、入力画像データの末尾ライン(Nライン目)については、先頭ラインと同様、周辺画素の一部(フィルタにおける3ライン目)が存在しないため、前述した計算を行うことができない。このため、入力画像データのNライン目に対応する画素も出力されない。
【0056】
つまり、入力画像データに対して3×3のフィルタを用いたフィルタ処理を実行することにより、入力画像データの副走査方向における先頭の1ライン分の画素及び末尾の1ライン分の画素が欠落することになる。
【0057】
また、同様の現象が主走査方向においても生じる。すなわち、図6(d)に示すように、入力画像データの主走査方向における1画素目及び最終画素(M画素目)の画素を注目画素とすると、周辺画素の一部が存在しないため、1画素目及びM画素目の画素も出力されない。
【0058】
なお、5×5のフィルタを用いた場合には、副走査方向に各2ラインずつ、主走査方向に各2画素ずつ欠落する。また、3×5のフィルタを用いた場合には、副走査方向に各1ラインずつ、主走査方向に各2画素ずつ欠落する。また、1×3のフィルタを用いた場合には、副走査方向の欠落はなく、主走査方向に各1画素ずつ欠落する。また、1×5のフィルタを用いた場合には、副走査方向の欠落はなく、主走査方向に各2画素ずつ欠落する。
【0059】
そこで、本実施形態の複合機1では、フィルタのサイズに応じて画像(原稿)の読取範囲を拡張して入力画像データの範囲を拡張することにより、本来の入力画像データの範囲内において画素の欠落が生じないようにする。例えば、3×3のフィルタを用いる場合には、副走査方向に各1ラインずつ、主走査方向に各1画素ずつ画像の読取範囲を拡張し、3×5のフィルタを用いる場合には、副走査方向に各1ラインずつ、主走査方向に各2画素ずつ画像の読取範囲を拡張する。
【0060】
[4−2.補間処理を伴う解像度変換処理]
補間処理を伴う解像度変換処理は、入力画像の解像度を変換する際に補間処理(線形補間処理)を行う処理である。
【0061】
例えば、図7に示すように、主走査方向の画素数を300%多くする解像度変換処理では、入力画像データの1画素目、2画素目、…、M画素目の各画素値は、出力画像データの1画素目、4画素目、…、(M×3―2)画素目の各画素値としてそのまま用いられる。そして、出力画像データの残りの画素は、線形補間によって求められる。
【0062】
出力1画素目=入力1画素目
出力2画素目=(200×入力1画素目+100×入力2画素目)÷300
出力3画素目=(100×入力1画素目+200×入力2画素目)÷300
出力4画素目=入力2画素目
出力(M×3−2)画素目=入力M画素目
このような補間処理では、入力画素数M画素に対して、線形補間後の出力画素数は(M×3−2)画素となる。つまり、出力画像データの(M×3−1)画素目及び(M×3)画素目の画素値が算出できないため、主走査方向の最終画素が2画素分欠落する。
【0063】
そこで、本実施形態の複合機1では、このような処理を行う場合には画像の読取範囲を拡張して主走査方向の最終画素を1画素余分に(M+1画素目まで)読み取り、入力画像データの範囲を拡張する。このようにすることで、出力画像データの(M×3−1)画素目及び(M×3)画素目を算出することができ、画素の欠落が防止される。
【0064】
出力(M×3−1)画素目
=(200×入力M画素目+100×入力(M+1)画素目)÷300
出力(M×3)画素目
=(100×入力M画素目+200×入力(M+1)画素目)÷300
また例えば、図8に示すように、副走査方向の解像度を300dpiから195.58dpi(Fax Fine)に変換する解像度変換処理では、出力画像データの1ライン目、2ライン目の各画素値は、入力画像データの画素の画素値に基づき線形補間によって求められる。
【0065】
出力1ライン目
=(入力1ライン目×1
+入力2ライン目×(300÷195.58−1))÷(300÷195.58)
出力2ライン目
=(入力2ライン目×(1−(300÷195.58−1))
+入力3ライン目+入力4ライン目
×(300÷195.58−((1−(300÷195.58−1))+1)))
÷(300÷195.58)
このように、副走査方向の線形補間後に2ラインを出力するには、
2×(300÷195.58)=3.06…
の小数点以下を切り捨てた「3」に対応する入力ライン1〜3ライン目に加えて、入力4ライン目が必要となる。そこで、本実施形態の複合機1では、このような処理を行う場合には画像の読取範囲を拡張して副走査方向の末尾ラインを1ライン余分に読み取り、入力画像データの範囲を拡張する。このようにすることで、画素の欠落が防止される。
【0066】
[4−3.地色補正処理]
地色補正処理は、原稿の画像における一部の領域から検出したその原稿の地色に基づき読取色を補正する処理である。すなわち、例えば新聞紙のように原稿に地色がある場合に、それを白色として出力するように、入力画像全体に対して色補正を行う。例えば、図9(b)に示すように、原稿の地色が「200」の場合、地色「200」よりも輝度の高い入力範囲は白色(=255)として出力されるように(200分の255を乗じるように)地色補正を行う。
【0067】
ここで、本実施形態の複合機1では、図9(a)に示すように、入力画像データの副走査方向における先頭の1ラインを原稿の地色検出用の領域として使用し、その領域内における輝度の高い所定数(例えば16)の画素の輝度の平均値を地色に設定する。そして、それ以降(2ライン目以降)の領域に対して、設定した地色に基づく地色補正を行う。このような処理では、副走査方向における先頭の1ラインが出力されずに欠落することになる。
【0068】
そこで、本実施形態の複合機1では、地色補正処理を行う場合には、画像の読取範囲を拡張して副走査方向の先頭ラインを1ライン余分に読み取り、入力画像データの範囲を拡張する。このようにすることで、画素の欠落が防止される。
【0069】
[4−4.色ずれ補正処理]
色ずれ補正処理は、色ごとの読取位置のずれを補正する処理である。すなわち、本実施形態の複合機1において、画像読取装置5は、原稿に対する読取ヘッド11の相対位置を副走査方向に移動させつつ、原稿への照射光の色をRGB各色に順次切り替えてライン単位の画像をRGBの色ごとに読み取るCIS方式のものである。つまり、図10に示すように、Rの1ライン目、Gの1ライン目、Bの1ライン目では、同じ1ライン目でありながら副走査方向に読取位置のずれが生じる。このずれを補正するため、本実施形態の複合機1では、色ずれ補正処理(補間処理)を行う。
【0070】
出力R1ライン目=(入力R1ライン目×3+入力R2ライン目×13)÷16
出力G1ライン目=(入力G1ライン目×8+入力G2ライン目×8)÷16
出力B1ライン目=(入力B1ライン目×13+入力B2ライン目×3)÷16
出力R(N−1)ライン目
=(入力R(N−1)ライン目×3+入力RNライン目×13)÷16
出力G(N−1)ライン目
=(入力G(N−1)ライン目×8+入力GNライン目×8)÷16
出力B(N−1)ライン目
=(入力B(N−1)ライン目×13+入力BNライン目×3)÷16
このような色ずれ補正処理では、出力画像データのRGB各Nライン目が算出できないため、副走査方向の末尾ライン(Nライン目)が欠落する。
【0071】
そこで、本実施形態の複合機1では、色ずれ補正処理を行う場合には画像の読取範囲を拡張して副走査方向の末尾ラインを1ライン余分に(N+1画素目まで)読み取り、入力画像データの範囲を拡張する。このようにすることで、出力画像データのNライン目を算出することができ、画素の欠落が防止される。
【0072】
[5.CPUが実行する処理]
次に、前述した処理を実現するためにCPU61が実行する具体的な処理について、図11のフローチャートを用いて説明する。本処理は、パネルインタフェース66、パラレルインタフェース67、USBインタフェース68のいずれかを介して複合機1がスキャン要求を受け付けることにより、CPU61によって開始される。
【0073】
CPU61は、本処理を開始すると、まず、S100で、ユーザによる画像読取設定の情報が含まれたスキャン要求を入力する。なお、スキャン要求は、複合機1又は複合機1に接続された外部のパーソナルコンピュータにおいて画像読取動作の開始を要求する操作が行われることにより入力される。
【0074】
続いて、S200では、S100で入力したスキャン要求に含まれる画像読取設定の内容(モード、画質及び出力解像度の設定内容)に基づき、読取画像に対して実行する画像処理を決定する。具体的には、フィルタ処理を行うか否か(行う場合には更にフィルタ窓のサイズ)、主走査方向/副走査方向それぞれの解像度変換を行うか否か(行う場合には更に補間処理を行うか否か)、地色補正を行うか否か、色ずれ補正を行うか否か、入力解像度等を決定する。
【0075】
例えば、フィルタ処理に関しては、高画質で画像を読み取る場合ほど、ライン数や画素数の大きいフィルタ(画質をより忠実に表現できるフィルタ)を用いる。なお、カラー/モノクロ、写真/テキスト等といった設定についても加味するようにしてもよい。
【0076】
また例えば、PCスキャンモードに設定された場合のフィルタのライン数や画素数を、コピーモードやFAXモードに設定された場合に比べて大きくなるようにする。これは、PCスキャンモードが、コピーモードやFAXモードに比べて読取速度が要求されないからである。
【0077】
また例えば、モノクロコピーやモノクロFAXの場合に地色補正を行うようにする。
なお、実行する画像処理のすべてを画像読取設定の内容に基づき自動的に決定する構成に限定されるものではなく、実行する画像処理の一部(又は全部)をユーザからの指示に従い決定するようにしてもよい。
【0078】
続いて、S300では、S200で決定した画像処理による画素の減少分(欠落分)を判定するための減少領域判定を行う。なお、画像処理による減少領域判定の具体的な処理内容については後述する(図12)。
【0079】
続いて、S400では、S300で判定した画素の減少分に応じて読取範囲を拡張するように調整する読取範囲調整を行う。なお、読取範囲調整の具体的な処理内容については後述する(図13)。
【0080】
続いて、S500では、S400で調整された読取範囲に従い画像読取動作を行い、S200で決定した画像処理を実行して出力する。その後、本処理を終了する。
次に、前述したS300の処理で実行される画像処理による減少領域判定の処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0081】
CPU61は、まず、S301で、副走査先頭側減少ライン数、副走査末尾側減少ライン数、主走査左側減少画素数及び主走査右側減少画素数をそれぞれ0に初期化する。ここで、副走査先頭側減少ライン数とは、画像処理により副走査方向の先頭側で減少(欠落)するライン数をカウントするための変数である。また、副走査末尾側減少ライン数とは、画像処理により副走査方向の末尾側で減少するライン数をカウントするための変数である。同様に、主走査左側減少画素数とは、画像処理により主走査方向の左側で減少する画素数をカウントするための変数であり、主走査右側減少画素数とは、画像処理により主走査方向の右側で減少する画素数をカウントするための変数である。
【0082】
続いて、S302では、ライン数が5のフィルタ(本実施形態では5×5のフィルタ)を用いたフィルタ処理を実行するか否かを判定する。
そして、S302で、実行すると判定した場合には、S303へ移行し、副走査先頭側減少ライン数及び副走査末尾側減少ライン数にそれぞれ2を加算する。その後、S306へ移行する。
【0083】
一方、S302で、実行しないと判定した場合には、S304へ移行し、ライン数が3のフィルタ(本実施形態では3×3又は3×5のフィルタ)を用いたフィルタ処理を実行するか否かを判定する。
【0084】
そして、S304で、実行すると判定した場合には、S305へ移行し、副走査先頭側減少ライン数及び副走査末尾側減少ライン数にそれぞれ1を加算する。その後、S306へ移行する。
【0085】
一方、S304で、実行しないと判定した場合(本実施形態ではライン数が1のフィルタを用いる場合又はフィルタ処理自体を実行しない場合)には、そのままS306へ移行する。
【0086】
S306では、画素数が5のフィルタ(本実施形態では5×5、3×5又は1×5のフィルタ)を用いたフィルタ処理を実行するか否かを判定する。
そして、S306で、実行すると判定した場合には、S307へ移行し、主走査左側減少画素数及び主走査右側減少画素数にそれぞれ2を加算する。その後、S310へ移行する。
【0087】
一方、S306で、実行しないと判定した場合には、S308へ移行し、画素数が3のフィルタ(本実施形態では3×3又は1×3のフィルタ)を用いたフィルタ処理を実行するか否かを判定する。
【0088】
そして、S308で、実行すると判定した場合には、S309へ移行し、主走査左側減少画素数及び主走査右側減少画素数にそれぞれ1を加算する。その後、S310へ移行する。
【0089】
一方、S308で、実行しないと判定した場合(本実施形態ではフィルタ処理自体を実行しない場合)には、そのままS310へ移行する。
S310では、副走査方向の解像度変換処理を実行することにより1ライン余分に読み取る必要があるか否かを判定する。
【0090】
そして、S310で、必要があると判定した場合には、S311へ移行し、副走査末尾側減少ライン数に1を加算する。その後、S312へ移行する。
一方、S310で、必要がないと判定した場合には、そのままS312へ移行する。
【0091】
S312では、主走査方向の解像度変換処理を実行することにより1画素余分に読み取る必要があるか否かを判定する。
そして、S312で、必要があると判定した場合には、S313へ移行し、主走査右側減少画素数に1を加算する。その後、S314へ移行する。
【0092】
一方、S312で、必要がないと判定した場合には、そのままS314へ移行する。
S314では、地色補正を実行するか否かを判定する。
そして、S314で、実行すると判定した場合には、S315へ移行し、副走査先頭側減少ライン数に1を加算する。その後、S316へ移行する。
【0093】
一方、S314で、実行しないと判定した場合には、そのままS316へ移行する。
S316では、色ずれ補正を実行するか否かを判定する。
そして、S316で、実行すると判定した場合には、S317へ移行し、副走査末尾側減少ライン数に1を加算する。その後、本処理を終了する。
【0094】
一方、S316で、実行しないと判定した場合には、そのまま本処理を終了する。
次に、前述したS400の処理で実行される読取範囲調整の処理について、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0095】
CPU61は、まず、S401で、ユーザ所望の要求範囲(ユーザにより設定された読取範囲)に基づいて、副走査読取開始位置、副走査読取終了位置、主走査読取開始位置及び主走査読取終了位置を初期化する。つまり、各値を、ユーザにより設定された読取範囲に対応する値に設定する。
【0096】
続いて、S402では、副走査末尾側減少ライン数及び副走査方向の入力解像度に基づいて、副走査末尾側微調整値を算出する。
副走査末尾側微調整値
=(25.4mm÷副走査方向の入力解像度)×副走査末尾側減少ライン数
続いて、S403では、S402で算出した副走査末尾側微調整値に基づいて、副走査読取終了位置を調整する。
【0097】
副走査読取終了位置=副走査読取終了位置の初期値+副走査末尾側微調整値
続いて、S404では、FBでの読取であるか否かを判定する。
そして、S404で、FBでの読取であると判定した場合には、S405へ移行し、S403で調整後の副走査読取終了位置がFB副走査読取可能範囲を超えているか否かを判定する。ここで、FB副走査読取可能範囲とは、副走査方向に沿った読取ヘッド11の移動可能範囲のことである。
【0098】
このS405で、FB副走査読取可能範囲を超えていると判定した場合には、S406へ移行し、副走査末尾側減少ライン数から1を減算し、副走査先頭側減少ライン数に1を加算した後、S402へ戻る。つまり、副走査読取終了位置を拡張することにより副走査方向に沿った読取ヘッド11の移動量が移動可能範囲を超える場合には、副走査方向の末尾側のラインを副走査方向の先頭側へ移すことにより、副走査読取終了位置の拡張量を小さくする。この結果、FB副走査読取可能範囲を超えている分のライン数が末尾側から先頭側へ移されることになる。
【0099】
一方、S404でFBでの読取でないと判定した場合や、S405でFB副走査読取可能範囲を超えていないと判定した場合には、S407へ移行し、副走査先頭側減少ライン数及び副走査方向の入力解像度に基づいて、副走査先頭側微調整値を算出する。
【0100】
副走査先頭側微調整値
=(25.4mm÷副走査方向の入力解像度)×副走査先頭側減少ライン数
続いて、S408では、S407で算出した副走査先頭側微調整値に基づいて、副走査読取開始位置を調整する。
【0101】
副走査読取開始位置=副走査読取開始位置の初期値−副走査先頭側微調整値
続いて、S409では、主走査左側減少画素数及び主走査方向の入力解像度に基づいて、主走査左側微調整値を算出する。
【0102】
主走査左側微調整値
=(25.4mm÷主走査方向の入力解像度)×主走査左側減少画素数
続いて、S410では、S409で算出した主走査左側微調整値に基づいて、主走査読取開始位置を調整する。
【0103】
主走査読取開始位置=主走査読取開始位置の初期値−主走査左側微調整値
続いて、S411では、主走査右側減少画素数及び主走査方向の入力解像度に基づいて、主走査右側微調整値を算出する。
【0104】
主走査右側微調整値
=(25.4mm÷主走査方向の入力解像度)×主走査右側減少画素数
続いて、S412では、S411で算出した主走査右側微調整値に基づいて、主走査読取終了位置を調整する。その後、本処理を終了する。
【0105】
主走査読取終了位置=主走査読取終了位置の初期値+主走査右側微調整値
[6.効果]
以上説明したように、本実施形態の複合機1は、ユーザによる画像読取設定の情報が含まれたスキャン要求を入力し(S100)、その画像読取設定の内容に基づき、実行する画像処理を特定する(S200)。そして、特定した画像処理による画素の欠落量を加味して処理対象の画像の範囲を拡張し(S300,S400)、拡張後の画像に対して画像処理を実行する(S500)。このため、画像処理により画像の範囲が小さくなることを防ぐことができる。
【0106】
特に、本実施形態の複合機1では、画像処理の前後における読取画像の欠落を防止するために必要な分だけ必要な方向に処理対象の入力画像の範囲を拡張するようにしている。すなわち、例えばフィルタ処理において、図14に示すように、主走査方向の減少画素数分(フィルタの画素数−1)をすべて右側に拡張し、副走査方向の減少ライン数分(フィルタのライン数−1)をすべて末尾側に拡張することも考えられる。しかしながら、このようにすると、出力される画像の範囲を小さくすることは防止できるものの、出力される範囲にはずれが生じる。
【0107】
これに対し、本実施形態では、図15に示すように、主走査方向左側及び右側の各減少画素数分を左側及び右側にそれぞれ拡張し、副走査方向先頭側及び末尾側の各減少ライン数分を先頭側及び末尾側にそれぞれ拡張する。つまり、フィルタにおける注目画素を挟んだ副走査方向両側のライン数分及び主走査方向両側の画素数分をそれぞれ対応する方向へ拡張する。このため、フィルタ処理の前後における読取画像の範囲が小さくなることを防ぐだけでなく、画像の内容のずれについても防ぐことができる。
【0108】
また、本実施形態の複合機1では、処理対象の画像を原稿から読み取る画像読取装置5を備え、画像処理の内容に応じて拡張した必要最小限の範囲の画像を処理対象の画像として原稿から読み取るようにしている。このため、余分な範囲を無駄に読み取る必要がなく、画像の読み取りを効率的に行うことができる。
【0109】
ただし、本実施形態の複合機1では、処理対象の画像の範囲を拡張することにより読取ヘッド11の移動量が移動可能範囲を超える場合には、その分のライン数を末尾側に代えて先頭側で拡張するように調整する。このため、読取ヘッド11の移動可能な範囲で画像の読取範囲を効率よく拡張することができる。
【0110】
[7.特許請求の範囲との対応]
なお、本実施形態の複合機1では、画像読取装置5が、読取手段に相当する。また、図11におけるS100の処理を実行するCPU61が、範囲設定手段に相当し、S200の処理を実行するCPU61が、特定手段に相当し、S300,S400の処理を実行するCPU61が、対象画像拡張手段に相当し、S500の処理を実行するCPU61が、画像処理手段に相当する。
【0111】
[8.他の形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0112】
例えば、上記実施形態の複合機1では、色ずれ補正を実行する場合や副走査方向の解像度変換処理を実行することにより1ライン余分に読み取る必要がある場合には副走査末尾側減少ライン数に1を加算し、主走査方向の解像度変換処理を実行することにより1画素余分に読み取る必要がある場合には主走査右側減少画素数に1を加算するが、これに限定されるものではない。すなわち、いずれの入力画素(ライン)に基づいて出力するかによって、主走査方向においてどちら側(左/右)に減少画素数を加算するのか、また、副走査方向においてどちら側(先頭/末尾)に減少画素数を加算するのかを、適宜変更すればよい。
【0113】
具体的には、例えば色ずれ補正を行う場合、上記実施形態では、入力N−1ライン目と入力Nライン目からN−1ライン目が出力されるので、Nライン目が出力されず、副走査末尾側減少ライン数に1を加算していたが、入力N−1ライン目と入力Nライン目からNライン目が出力されるのであれば、1ライン目が出力されないので、副走査先頭側減少ライン数に1を加算すればよい。
【0114】
また、上記実施形態の複合機1では、解像度変換処理に加えフィルタ処理等を行う場合には、解像度変換処理の前にフィルタ処理等を実行することを前提としている。つまり、フィルタ処理等による画素やラインの欠落量を解像度変換処理前の画像を基準として判定し、入力画像の拡張量を調整するようにしている。このため、例えば解像度変換処理の後にフィルタ処理を行う場合、具体的には、例えば解像度を2分の1に変換した後にフィルタ処理を行った場合には、解像度変換前の画像にフィルタ処理を行うのに比べ画像の欠落範囲が大きくなってしまう。そこで、このような順番で処理を行う場合には、解像度変換処理の内容に応じて入力画像の拡張量を調整することが好ましい。
【0115】
さらに、上記実施形態の複合機1では、画像の読取範囲(処理対象の画像の範囲)を主走査方向及び副走査方向の両方に拡張するようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、副走査方向にのみ拡張するようにしてもよい。具体的には、画像処理による減少領域判定の処理(図12)において、主走査左側減少画素数及び主走査右側減少画素数のカウントを行わず、読取範囲調整の処理(図13)において、主走査読取開始位置及び主走査読取終了位置の調整を行わないようにする。このようにすれば、副走査方向の読み取りライン数を増やすだけでよいため、主走査方向の読み取り量を増やすことによる画像処理の複雑化を防ぐことが可能となる。
【0116】
一方、上記実施形態では、本発明の画像処理装置として複合機1を例示したが、これに限定されるものではなく、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施形態の複合機の外観を示す斜視図である。
【図2】複合機に設けられた画像読取装置の構成を表す断面図である。
【図3】図2中の矢印A方向から見た読取ヘッドとその周辺を表す断面図である。
【図4】複合機の制御系の構成を表すブロック図である。
【図5】フィルタ処理の説明図である。
【図6】フィルタ処理による画像の欠落の説明図である。
【図7】主走査方向の解像度変換処理の説明図である。
【図8】副走査方向の解像度変換処理の説明図である。
【図9】地色補正処理の説明図である。
【図10】色ずれ補正処理の説明図である。
【図11】CPUが実行する処理のフローチャートである。
【図12】減少領域判定の処理のフローチャートである。
【図13】読取範囲調整の処理のフローチャートである。
【図14】主走査方向及び副走査方向の一方にのみ拡張した場合の説明図である。
【図15】主走査方向及び副走査方向の両側に拡張した場合の説明図である。
【符号の説明】
【0118】
1…複合機、1a…下側本体、1b…上側本体、3…画像形成装置、5…画像読取装置、5a…フラットベッド部、5b…カバー部、7…操作パネル、11…読取ヘッド、13…第1プラテンガラス、15…第2プラテンガラス、17…白板、21…原稿供給トレイ、23…原稿搬送装置、25…原稿排出トレイ、27…ステップモータ、31…イメージセンサ、33…光学素子、35…光源、37…軸受、39…コロ、41…ガイドバー、43…ガイド面、45…ガイド部、51…給紙トレイ、53…排紙口、55…排紙トレイ、60…制御装置、61…CPU、62…ROM、63…RAM、64…ASIC、65…モデム、66…パネルインタフェース、67…パラレルインタフェース、68…USBインタフェース、69…NCU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像端部に生じる画素の欠落量が異なる複数の画像処理を処理対象の画像に対して実行可能な画像処理手段と、
前記画像処理手段に実行させる画像処理を前記複数の画像処理の中から特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された画像処理による画素の欠落量に応じて前記処理対象の画像の範囲を拡張する対象画像拡張手段と、
を備え、
前記画像処理手段は、前記対象画像拡張手段により範囲の拡張された画像に対して前記特定手段により特定された画像処理を実行すること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、注目画素に対するその周辺の周辺画素を加味する割合を定めた画像補正フィルタを用いて画像を補正するフィルタ処理を前記画像処理として実行可能であり、
前記対象画像拡張手段は、前記特定手段により前記フィルタ処理が特定された場合には、前記処理対象の画像の範囲をそのフィルタ処理に用いられる画像補正フィルタのライン数から1を引いたライン数分拡張すること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記対象画像拡張手段は、前記画像補正フィルタにおける前記注目画素を挟んだ両側のライン数分をそれぞれ対応する方向へ拡張すること
を特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、補間処理を伴う解像度変換処理を前記画像処理として実行可能であり、
前記対象画像拡張手段は、前記特定手段により前記解像度変換処理が特定された場合には、前記処理対象の画像の範囲を前記解像度変換処理による画素の欠落を防止するのに必要な分拡張すること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記処理対象の画像を原稿から読み取る読取手段を備え、
前記読取手段は、前記対象画像拡張手段により拡張された範囲の画像を前記処理対象の画像として原稿から読み取ること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、原稿の画像の一部から検出したその原稿の地色に基づき読取色を補正する地色補正処理を前記画像処理として実行可能であり、
前記対象画像拡張手段は、前記特定手段により前記地色補正処理が特定された場合には、前記処理対象の画像の範囲を前記地色補正処理による地色検出用の領域の分拡張すること
を特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記読取手段は、原稿の画像を主走査方向のライン単位で読み取るイメージセンサの原稿に対する相対位置を副走査方向に移動させつつ画像を読み取るものであり、
前記対象画像拡張手段は、前記処理対象の画像の範囲を副走査方向にのみ拡張すること
を特徴とする請求項5又は請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記読取手段は、原稿の画像を主走査方向のライン単位で読み取るイメージセンサの原稿に対する相対位置を副走査方向に移動させつつ、原稿への照射光の色を切り替えて前記ライン単位の画像を色ごとに読み取るCIS方式のものであり、
前記画像処理手段は、前記読取手段による色ごとの読取位置のずれを補正する色ずれ補正処理を前記画像処理として実行可能であり、
前記対象画像拡張手段は、前記特定手段により前記色ずれ補正処理が特定された場合には、前記処理対象の画像の範囲を前記色ずれ補正処理による画素の欠落を防止するのに必要な分拡張すること
を特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記読取手段は、原稿の画像を主走査方向のライン単位で読み取るイメージセンサを、定位置にセットされた原稿に対して副走査方向に移動させつつ画像を読み取るものであり、
前記対象画像拡張手段は、前記処理対象の画像の範囲を拡張することにより副走査方向における一方へのイメージセンサの移動量が所定の制限量を超える場合には、制限量を超える分のライン数を他方へ拡張すること
を特徴とする請求項5から請求項8までのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
原稿から前記処理対象の画像として読み取る範囲を設定する範囲設定手段を備え、
前記対象画像拡張手段は、前記特定手段により特定された画像処理による画素の欠落量に応じて前記範囲設定手段により設定された範囲を拡張し、
前記読取手段は、前記対象画像拡張手段により拡張された範囲の画像を前記処理対象の画像として原稿から読み取ること
を特徴とする請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記特定手段は、前記画像処理手段に実行させる画像処理をユーザからの指示に従い特定すること
を特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
画像端部に生じる画素の欠落量が異なる複数の画像処理を処理対象の画像に対して実行可能な画像処理手段と、
前記画像処理手段に実行させる画像処理を前記複数の画像処理の中から特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された画像処理による画素の欠落量に応じて前記処理対象の画像の範囲を拡張する対象画像拡張手段
としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記画像処理手段は、前記対象画像拡張手段により範囲の拡張された画像に対して前記特定手段により特定された画像処理を実行すること
を特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−130596(P2009−130596A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303032(P2007−303032)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】