画像処理装置及び画像処理方法
【課題】 マルチパスの回数に適した画像処理モードを実行することにより、ドット重複率の変動に伴う濃度変動の抑制、粒状性の抑制並びに量子化処理の負荷軽減を実現する。
【解決手段】 マルチパスの回数(M)が閾値未満の場合には、多値画像データを各パスにのみ対応した多値データおよび複数パスに共通の多値データに分割した後に、これら多値データをそれぞれ2値化して各パスにのみ対応した2値データおよび複数パスに共通の2値データを生成するための第1の処理モードを選択する。一方、マルチパスの回数(M)が閾値以上の場合には、多値画像データを2値化した後に、この2値データをマスクによって各パスに対応した2値データに分割するための第2の処理モードを選択する。
【解決手段】 マルチパスの回数(M)が閾値未満の場合には、多値画像データを各パスにのみ対応した多値データおよび複数パスに共通の多値データに分割した後に、これら多値データをそれぞれ2値化して各パスにのみ対応した2値データおよび複数パスに共通の2値データを生成するための第1の処理モードを選択する。一方、マルチパスの回数(M)が閾値以上の場合には、多値画像データを2値化した後に、この2値データをマスクによって各パスに対応した2値データに分割するための第2の処理モードを選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体と記録ヘッドとの複数回の相対移動によって記録媒体の同一領域(例えば、画素領域)に画像を記録するために、同一領域に対応する多値画像データを処理する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において記録される画像の濃度むらやスジを軽減するための技術として、記録媒体の同一領域に対する記録ヘッドの複数回の記録走査によって上記同一領域に記録すべき画像を完成させるマルチパス記録方式が知られている。しかしながら、マルチパス記録方式を採用したとしても、記録媒体の搬送量の変動などによって、先行する記録走査でのドット記録位置と後続の記録走査でのドット記録位置にズレが生じる場合がある。このようなズレはドット被覆率の変動を招き、これが原因で濃度変動や濃度むら等の画像弊害が生じる。
【0003】
このような画像弊害を軽減するための技術として、2値化前の多値の画像データの段階で画像データを異なる記録走査に対応するように分割し、分割後の多値画像データを夫々独立(無相関)に2値化する方法が知られている(特許文献1)。図16(A)は、この特許文献1の方法によって処理された画像データに基づいて記録されるドットの配置状態を示した図である。図16(A)において、黒丸551は第1の記録走査で記録されるドット、白丸552は第2の記録走査で記録されるドット、グレーの丸553は第1の記録走査と第2の記録走査によって重ねて記録されるドットである。
【0004】
このようなドット配置によれば、第1の記録走査で記録されるドット群と第2の記録走査で記録されるドット群が、主走査方向または副走査方向にずれたとしても、記録媒体に対するドットの被覆率は然程変動しない。その理由は、第1の記録走査で記録されるドットと第2の記録走査で記録されるドットが重なる部分も新たに現れるが、本来重ねて記録されるべき2つのドットが重ならなくなる部分も存在するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−103088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、異なる記録走査に対応した多値データを無相関に量子化しているため、異なる記録走査で記録されるドット同士の重なり量を制御することができない。従って、重なりドットの数が過剰となって画像の粒状性が悪化したり、反対に、重なりドットの数が少な過ぎて上記の濃度変動を十分に抑制することができない場合がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の方法は、マルチパスの回数に応じて多値データの分割数が増加し、その分だけ量子化処理の対象となる多値データの数が増加する。従って、この方法をマルチパスの回数が多い記録モードで実施しようとすると、量子化処理の負荷がかなり大きくなってしまう。
【0008】
ところで、マルチパスの回数が多い場合、パス間で行われる記録媒体の搬送の量が比較的小さいため、記録媒体の搬送誤差等に起因するドット被覆率の変動は比較的少ない。従って、ドット被覆率の変動を抑制するために、積極的にドット重複部分を発生させるような処理を行う必要性は少ない。マルチパスの回数が多い場合は、ドット被覆率の変動を抑制するよりも、むしろ、粒状性の低減と量子処理の負荷低減を優先するような処理を行う方が好ましい。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、マルチパスの回数に適したデータ処理を行うことで、上述した濃度変動の抑制、粒状性の抑制並びにデータ処理負荷の軽減を可能とする画像処理装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査によって前記記録媒体の画素領域に画像を記録するために、当該画素領域に記録すべき画像に対応した多値画像データを処理するための画像処理装置であって、前記画素領域に対する前記相対走査の回数に関する情報を取得するための取得手段と、前記取得手段により取得された情報が示す回数が閾値未満の場合には第1の処理モードを選択し、前記情報が示す回数が閾値以上の場合には第2の処理モードを選択するための選択手段と、前記選択手段により選択された処理モードを実行するための処理部とを備え、前記第1の処理モードは、(A)前記多値画像データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する多値データおよび前記複数回の相対走査のうちの少なくとも2回の相対走査に共通に対応する多値データに分割するための第1の分割処理と、(B)前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれを量子化して、前記複数回の相対走査の各々に対応する量子化データおよび前記少なくとも2回の相対走査に共通に対応する量子化データを生成するための第1の量子化処理と、(C)前記第1の量子化処理によって生成された量子化データを対応する相対走査毎に合成して、前記複数回の相対走査の各々に対応した合成量子化データを生成するための合成処理と、を含む画像処理を行うためのモードであり、前記第2の処理モードは、(D)前記多値画像データを量子化して量子化データを生成するための第2の量子化処理と、(E)前記第2の量子化処理によって生成された量子化データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割するための第2の分割処理と、を含む画像処理を行うためのモードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画素領域に対する記録ヘッドの走査回数(つまり、マルチパスの回数)に適したデータ処理を行う。これにより、ドット重複率の変動に伴う濃度変動の抑制、粒状性の抑制、並びに、データ処理負荷の軽減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像処理装置として機能するプリンタの概略構成図である。
【図2】2パスのマルチパス記録の説明図である。
【図3】図1のプリンタの制御に係る主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態におけるデータ処理の概略を示すフローチャートである。
【図5】第1の処理モードにおけるデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示した処理(画像データ分割処理→量子化処理→量子化データ合成処理)を模式的に表した図である。
【図7】誤差拡散処理を行う際の周囲画素に対する誤差分配係数を示す誤差分配マトリクスを表す図である。
【図8】第1の処理モードにおける量子化処理としての2値排他的誤差拡散処理を示すフローチャートである。
【図9】第2の処理モードにおけるデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。
【図10】第2の処理モードにおける分割処理で使用可能な4パス用のマスクを示す図である。
【図11】図10に示した処理(量子化処理→(画像データ分割処理)を模式的に表した図である。
【図12】3値の排他的誤差拡散処理を示すフローチャートである。
【図13】(a)および(b)は、それぞれ、第1および第4の実施形態において使用される、記録媒体の種類と印刷品位と記録パス数の対応関係を示すテーブルである。
【図14】第2の処理モードにおける分割処理で使用可能な8パス用のマスクを示す図である。
【図15】第1の処理モードにおける3パス用データの生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。
【図16】2回の走査で記録されるドットの配置状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で説明する実施形態は、インクジェット記録装置を例にしているが、本発明は、インクジェット記録装置に限られるものではない。ドットを記録するための記録ヘッドと記録媒体の相対走査中に、記録ヘッドによって記録媒体に画像を記録する方式の装置であれば、インクジェット記録装置以外の装置でも適用可能である。
【0014】
本明細書において、「マルチパス記録」とは、記録ヘッドと記録媒体との相対走査(相対移動)によって記録媒体の同一領域に記録すべき画像を完成させる記録方式をいう。「記録ヘッドと記録媒体との相対走査(相対移動)」とは、記録媒体に対して記録ヘッドが相対的に移動(走査)する動作、あるいは、記録ヘッドに対して記録媒体が相対的に移動(搬送)する動作を指す。「同一領域」とは、ミクロ的には「1つの画素領域」を指し、マクロ的には「1回の相対走査で記録可能な領域」を指す。「画素領域(単に「画素」と呼ぶ場合もある)」とは、多値画像データによって階調表現可能な最小単位の領域を指す。一方、「1回の相対走査で記録可能な領域」とは、1回の相対走査中に記録ヘッドが通過する記録媒体上の領域、あるいは、この領域よりも小なる領域(例えば、1ラスター領域)を指す。例えば、シリアル型の記録装置において、図2に示されるようなM(Mは2以上の整数)パスのマルチパスモードを実行する場合、マクロ的には図中の1つの記録領域(ノズル配列幅の1/Mの幅の領域)を同一領域と定義することも可能である。
【0015】
なお、以下では、「相対走査」のことを単に「走査」と称する。例えば、3パスのマルチパス記録の場合、1つの画素領域に対して3回の相対走査(第1相対走査、第2相対走査、第3相対走査)を行うが、これら第1〜第3の相対走査のことを夫々「第1走査」、「第2走査」、「第3走査」のように称する。
【0016】
<記録装置の概略構成>
図1(A)は、本発明の画像処理装置として適用可能なフォトダイレクトプリンタ装置(以下、PDプリンタ)1000の概観斜視図である。PDプリンタ1000は、ホストコンピュータ(PC)からデータを受信して印刷する機能、メモリカード等の記憶媒体に記憶されている画像を直接読取って印刷する機能、またデジタルカメラやPDA等からの画像を受信して印刷する機能を有している。
【0017】
図1(A)において、1004は記録済みの用紙を積載可能な排出トレイであり、1003は、本体内部に収納されている記録ヘッドカートリッジ或いはインクタンク等の交換を行う際に、ユーザが開閉することが可能なアクセスカバーである。上ケース1002に設けられた操作パネル1010には、印刷に関する条件(例えば、記録媒体の種類、印刷品位等)を各種設定するためのメニュー項目が表示され、ユーザは出力する画像の種類や用途に応じてこれら項目を設定することが出来る。本実施形態では、記録媒体の種類と印刷品位の組み合わせによって、記録モードのパス数(画素領域に対する記録ヘッドの走査回数)が決定される。また、操作パネル1010に表示されるメニュー項目には、ユーザが画像出力指示を行うための項目も含まれている。1007は記録媒体を装置本体内へと自動的に給送する自動給送部、1009はメモリカードを装着可能なアダプタが挿入されるカードスロット、1012はデジタルカメラを接続するためのUSB端子である。PDプリンタ1000の後面には、PCを接続するためのUSBコネクタが設けられている。
【0018】
図1(B)は、PDプリンタの内部構成の概要を示す斜視図である。記録媒体Pは、自動給送部1007によって搬送経路上に配置された搬送ローラ5001とこれに従動するピンチローラ5002とのニップ部に給送される。その後、記録媒体Pは、搬送ローラ5001の回転によって、プラテン5003上に案内支持されながら図中矢印A方向(副走査方向)に搬送される。ピンチローラ5002は、不図示のバネ等の押圧手段により、搬送ローラ5001に対して弾性的に付勢されている。これら搬送ローラ5001及びピンチローラ5002が記録媒体搬送方向の上流側にある第1搬送手段の構成要素をなす。
【0019】
プラテン5003は、インクジェット形態の記録ヘッド5004の吐出口が形成された面(吐出面)と対向する記録位置に設けられ、記録媒体Pの裏面を支持することで、記録媒体Pの表面と吐出面との距離を一定の距離に維持する。プラテン5003上に搬送されて記録が行われた記録媒体Pは、回転する排出ローラ5005とこれに従動する回転体である拍車5006との間に挟まれてA方向に搬送され、プラテン5003から排紙トレイ1004に排出される。排出ローラ5005及び拍車5006が記録媒体搬送方向の下流側にある第2搬送手段の構成要素をなす。
【0020】
記録ヘッド5004は、その吐出口面をプラテン5003ないし記録媒体Pに対向させた姿勢で、キャリッジ5008に着脱可能に搭載されている。キャリッジ5008は、キャリッジモータE0001の駆動力により2本のガイドレール5009及び5010に沿って往復移動され、その移動の過程で記録ヘッド5004は記録信号に応じたインク吐出動作を実行する。キャリッジ5008が移動する方向は、記録媒体が搬送される方向(矢印A方向)と交差する方向(主走査方向)である。キャリッジ5008及び記録ヘッド5004の主走査(記録を伴う移動)と、記録媒体の搬送(副走査)とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Pに対する記録が行われる。
【0021】
図1(C)は、記録ヘッド5004を吐出口形成面から観察した場合の概略図である。図中、51はシアンノズル列、52はマゼンタノズル列、53はイエローノズル列、54はブラックノズル列である。各ノズル列の副走査方向における幅はdであり、1回の走査によってdの幅の記録が可能となっている。
【0022】
ノズル列51〜54のそれぞれは、600dpi(ドット/インチ)すなわち約42μmの間隔で副走査方向に配列されてなる1200個のノズルで構成されている。個々のノズルには、吐出口と、インクを吐出口まで導くためのインク路と、吐出口近傍のインク内に膜沸騰を生じさせる電気熱変換素子とが備えられている。このような構成の下、吐出信号に応じて個々の電気熱変換素子に電圧パルスを印加することにより、電気熱変換素子近傍のインクに膜沸騰が生じ、発生した泡の成長に応じた量のインクが吐出口から液滴として吐出される。
【0023】
<マルチパス記録>
本実施形態の記録装置はマルチパス記録を実行することが出来るので、記録ヘッド5004が1回の記録走査で記録可能な領域は、複数回の記録走査によって段階的に画像が形成される。各記録走査の間に記録ヘッド5004の幅dよりも小さな量の搬送動作を行うことにより、個々のノズルのばらつきに起因する濃度むらやすじを低減することが出来る。マルチパス記録を行うか否か、あるいはマルチパス数(同一領域に対し記録走査を行う回数)は、操作パネル1010からユーザが入力した情報や、ホスト装置から受信される画像情報によって、適宜定められるようになっている。
【0024】
次に、上記記録装置にて実行可能なマルチパス記録の一例について図2を用いて説明する。ここでは、マルチパス記録の一例として2パス記録を例に挙げて説明するが、本発明は2パス記録に限定されるものではなく、3パス、4パス、8パス、16パス等の(Mは2以上の整数)パス記録であればよい。なお、本発明において好適に適用される「M(Mは2以上の整数)パスモード」とは、記録素子の配列範囲の幅よりも小なる量の記録媒体の搬送を介在させた記録素子群のM回の走査によって記録媒体上の同一領域に記録を行うモードである。このようなMパスモードでは、記録媒体の1回の搬送量を、記録素子の配列範囲の幅の1/Mの幅に対応した量に等しく設定するのが好ましく、このような設定を行うことで、上記同一領域の搬送方向における幅が記録媒体の1回の搬送量に対応する幅に等しくなる。
【0025】
図2は、2パス記録の様子を模式的に示した図であり、4つの同一領域に相当する第1記録領域から第4記録領域に対して記録する場合の記録ヘッド5004と記録領域との相対的な位置関係を示している。この図2では、図1(C)に示される記録ヘッド5004のうちのある色の1つのノズル列(1つの記録素子群)51だけを示している。そして、以下では、ノズル列(記録素子群)51を構成する複数のノズル(記録素子)のうち、搬送方向上流側に位置するノズル群を上流側ノズル群51Aと称し、搬送方向下流側に位置するノズル群を下流側ノズル群51Bと称する。また、各同一領域(各記録領域)の副走査方向(搬送方向)における幅は、記録ヘッドの複数の記録素子の配列範囲の幅(1280ノズル幅)の約半分に相当する幅(640ノズル幅)に等しい。
【0026】
第1走査では、上流側ノズル群51Aを用いて第1記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録する。この上流側ノズル群51Aによって記録される画像データは、個々の画素について、オリジナル画像データ(第1記録領域に最終的に記録すべき画像に対応した多値の画像データ)の階調値が約1/2に低減されたものとなっている。このような第1走査での記録終了後、Y方向に沿って640ノズル分の距離だけ記録媒体を搬送する。
【0027】
次いで、第2走査では、上流側ノズル群51Aを用いて第2記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録すると共に、下流側ノズル群51Bを用いて第1記録領域に記録されるべき画像を完成させる。この下流側ノズル群51Bによって記録される画像データついても、オリジナル画像データ(第1記録領域に最終的に記録すべき画像に対応した多値の画像データ)の階調値が約1/2に低減されたものとなっている。これにより、第1記録領域には、階調値が約1/2に低減された画像データが2回記録されることになるので、オリジナル画像データの階調値が保存される。このような第2走査での記録終了後、記録媒体をY方向に640ノズル分の距離だけ搬送する。
【0028】
次いで、第3走査では、上流側ノズル群51Aを用いて第3記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録すると共に、下流側ノズル群51Bを用いて第2記録領域に記録されるべき画像を完成させる。この後、記録媒体をY方向に640ノズル分の距離だけ搬送する。最後に、第4走査では、上流側ノズル群51Aを用いて第4記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録すると共に、下流側ノズル群51Bを用いて第3記録領域に記録されるべき画像を完成させる。この後、記録媒体をY方向に640ノズル分の距離だけ搬送する。他の記録領域に対しても同様な記録動作を行っていく。以上のような記録主走査と搬送動作とを繰り返すことにより、各記録領域に対して2パス記録が行われる。
【0029】
<制御部電気仕様概要>
図3は、図1のPDプリンタ1000の制御に係る主要部の構成を示すブロック図である。図3において、前述の図面と共通する部分は同じ記号を付与して、それらの説明は省略する。以下の説明から明らかとなるように、PDプリンタ1000は画像処理装置として機能する。
【0030】
図3において、3000は制御部(制御基板)を示し、3001は画像処理ASIC(専用カスタムLSI)を示している。3002はDSP(デジタル信号処理プロセッサ)で、内部にCPUを有し、後述する各種制御処理及び図5に示されるような各種画像処理等を担当している。3003はメモリで、DSP3002のCPUの制御プログラムを記憶するプログラムメモリ3003a、及び実行時のプログラムを記憶するRAMエリア、画像データなどを記憶するワークメモリとして機能するメモリエリアを有している。3004はプリンタエンジンで、ここでは、複数色のカラーインクを用いてカラー画像を印刷するインクジェットプリンタのプリンタエンジンが搭載されている。3005はデジタルカメラ(DSC)3012を接続するためのポートとしてのUSBコネクタである。3006はビューワ1011を接続するためのコネクタである。3008はUSBハブ(USB HUB)で、PDプリンタ1000がPC3010からの画像データに基づいて印刷を行う際には、PC3010からのデータをそのままスルーし、USB3021を介してプリンタエンジン3004に出力する。これにより、接続されているPC3010は、プリンタエンジン3004と直接、データや信号のやり取りを行って印刷を実行することができる(一般的なPCプリンタとして機能する)。3009は電源コネクタで、電源3019により、商用ACから変換された直流電圧を入力している。PC3010は一般的なパーソナルコンピュータ、3011は前述したメモリカード(PCカード)、3012はデジタルカメラ(DSC)である。なお、この制御部3000とプリンタエンジン3004との間の信号のやり取りは、前述したUSB3021又はIEEE1284バス3022を介して行われる。
【0031】
(第1の実施形態)
図4は、図1のPDプリンタ1000におけるデータ処理の概略を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、操作パネル1010を介してユーザからの画像出力の指示を受け付けたことをトリガとして開始される。まず、ステップS1において、操作パネル1010を介してユーザにより設定された印刷に関する条件(ここでは、記録媒体の種類と印刷品位)を示す情報を取得する。次いで、ステップS2において、ステップS1において取得した記録媒体の種類を示す情報と印刷品位を示す情報に基づいて、記録モードのパス数(M)を判定する。詳しくは、図13(a)のルックアップテーブルを参照してパス数を判定する。例えば、記録媒体の種類が「普通紙」で且つ印刷品位が「はやい」であれば、2パスモードと判定される。また、記録媒体の種類が「普通紙」で且つ印刷品位が「きれい」であれば、4パスモードと判定される。
【0032】
次に、ステップS3において、ステップS2において判定されたパス数(M)が閾値(L)以上か否かを判定する。ステップS3においてパス数(M)が閾値(L)以上であると判定されたらステップS5へ進み、一方、ステップS3においてパス数(M)が閾値(L)未満であると判定されたらステップS4へ進む。本実施形態では、Lは4に設定されている。従って、2パスモードの場合にはステップS4へ進み、4パスモードおよび8パスモードの場合にはステップS5へ進む。
【0033】
ステップS4では第1の処理モードを行う。第1の処理モードの詳細については図5〜図8を用いて後述するが、簡単に言えば、多値画像データをマルチパスの回数に関連付けられた複数の多値データに分割する処理(第1の分割処理)と、これら複数の多値データをそれぞれ量子化する処理(第1の量子化処理)と、を含む画像処理を行うためのモードである。一方、ステップS5では第2の処理モードを行う。第2の処理モードの詳細については図9〜図11を用いて後述するが、簡単に言えば、多値画像データを量子化して量子化データを生成する処理(第2の量子化処理)と、この量子化データをマスクによってマルチパスの回数に対応する量子化データに分割する処理(第2の分割処理)と、を含む画像処理を行うためのモードである。このようにして、記録モードのパス数に応じた画像処理モード(第1の処理モードあるいは第2の処理モード)が実行される。
【0034】
ここで、記録パス数が少ない記録モードでは第1の処理モードを採用し、記録パス数が多い記録モードでは第2の処理モードを採用した理由について説明する。
【0035】
後述から明らかなように、この第1の処理モードによれば、記録媒体の搬送誤差の有無に関わらず、異なるパスで記録されるドット同士がある程度重なるような処理がされる。このため、搬送誤差によって異なるパスで記録されるドット同士にずれが生じたとしても、このズレに伴うドット被覆率の変動を小さく抑えることができる。特に、記録パス数が少ない場合は、記録パス数が多い場合に比べて、走査間に介在する1回あたりの記録媒体の搬送の量が大きくなる傾向にあり、それだけ搬送誤差が大きいため、ドットずれに伴うドット被覆率の変動は大きい傾向にある。従って、記録パス数が少ない場合には、ドット被覆率の変動を小さく抑えることが可能な第1の処理モードを採用するのが有効である。但し、この第1の処理モードは、量子化処理の前に、多値画像データをマルチパスに関連付けられた複数の多値データに分割するため、複数の多値データに対して量子化処理を行う必要があり、量子化処理の負荷が結構高くなる。しかし、記録パス数(M)が比較的少ない場合には、その量子化処理の負荷も許容できる範囲におさまる。このような理由で、記録パス数が少ない記録モードでは第1の処理モードを採用しているのである。
【0036】
一方、この第2の処理モードは、量子化処理後の量子化データをマスクによってMパスに対応するM個の量子化データに分割するため、第1の処理モードよりも、量子化処理の負荷は小さい。従って、上述した通り、記録パス数(M)が多い場合に第1の処理モードを採用すると処理負荷の観点から好適ではないので、記録パス数(M)が多い場合には、処理負荷の小さい第2の処理モードを採用している。更に、記録パス数(M)が多い場合に第2の処理モードを採用するもう1つの理由がある。記録パス数が多い場合は、記録パス数が少ない場合に比べて、走査間に介在する1回あたりの記録媒体の搬送の量が小さく傾向にあり、それだけ搬送誤差が小さいため、ドットずれに伴うドット被覆率の変動は小さい傾向にある。従って、記録パス数が多い場合は、記録パス数が少ない場合に比べて、ドット被覆率の変動を小さく抑える必要性は少ない。むしろ、記録パス数が多い場合は、異なるパスで記録されるドット同士の重なりを少なくして、ドット重なりによって生じる粒状性を低下させる方が好ましい。第2の処理モードでは、分割処理に使用するマスクもよるが、基本的には、記録許容画素の位置が互いに補完の関係となっているマスクを用いるので、デジタルデータ上ではドット重なりが生じないし、紙面上でもドット重複部分は少ない。従って、第2の処理モードは、第1の処理モードよりも、粒状性を低く抑えることができる。このような理由からも、記録パス数(M)が多い場合に第2の処理モードを採用するようにしている。
【0037】
以上のように本実施形態では、記録モードの記録パス数(M)に起因して変わるドット被覆率の変動度および量子化処理の負荷、更には粒状性の観点から、パス数に応じた画像処理モード(第1の処理モード、第2の処理モード)を対応付けている。
【0038】
図5は、図4のステップS4で実行される第1の処理モードにおけるデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。ここでは、2パスモードのデータ処理を行う場合を例に挙げて説明する。図5の多値画像データ入力部401、色変換処理部402、色分解処理部403、階調補正処理部404、画像データ分割部405、量子化部406、量子化データ合成部407は、およびプリントバッファ408は、図3の制御部3000に備えられている。以下では、図5を用いて、RGBの入力画像データから2パス分の2値データを生成するまでの処理の流れについて説明する。
【0039】
多値画像データ入力部401は、デジタルカメラ3012やPC3010などの外部機器によって得られたRGB画像データを入力する。このRGB画像データは、色変換処理部402によって、プリンタの色再現域に依存するデバイスRGB画像データに変換される。デバイスRGB画像データは、色分解処理部403によって、プリンタで使用されるインク色に対応した多値(本例では256値)の画像データに変換される。本実施形態のプリンタはC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色インクを用いる構成である。従って、デバイスRGB画像データ(R’G’B’)は、CMYKインクに対応する多値データ(C1、M1、Y1、K1)に変換されることになる。なお、色分解処理部403では、デバイスRGB画像データの各入力値(R’G’B入力値)とインク色に対応した多値画像データの各出力値(C1、M1、Y1、K1出力値)との対応関係を示した三次元ルックアップテーブル(LUT)が使用される。この際、テーブル格子点値から外れる入力値については、その周囲のテーブル格子点の出力値から補間によって出力値を算出する。なお、色分解処理部403で利用可能な三次元LUTは予め複数種類用意されており、記録媒体の種類と記録モードのパス数に応じて選択された1つの三次元LUTが利用されることになる。
【0040】
次に、階調補正処理部404によって階調補正処理が行われるが、この階調補正処理以降の処理はCMYKについて同様に行われるので、以下では代表してブラック(K)のデータ処理について説明する。階調補正処理部404には、色分解処理部403によって生成された多値データK1が入力される。階調補正処理部404は、この多値データK1に対して階調補正を施すことで階調補正済みの多値データK2を生成する。この階調補正済みの多値データK2は画像データ分割部405に入力される。
【0041】
画像データ分割部405は、階調補正済みの多値データK2を、第1走査のみに対応する第1走査多値データ502、第2走査にのみに対応する第2走査多値データ504および第1走査と第2走査に共通する第1・第2走査共通多値データ503に分割する。そして、これら第1走査多値データ502、第1・第2走査共通多値データ503および第2走査多値データ504は、量子化部406に入力される。
【0042】
量子化部406は、第1走査多値データ502、第1・第2走査共通多値データ503および第2走査多値データ504に対して量子化処理(本実施形態では2値化処理)を行う。これにより、第1走査多値データ502が量子化された第1走査量子化データ505、第1・第2走査共通多値データ503が量子化された第1・第2走査共通量子化データ506、および、第2走査多値データ504が量子化された第2走査量子化データ507が生成される。
【0043】
本実施形態では、量子化処理として、排他的誤差拡散法による2値化処理を実行する。この排他的誤差拡散法の詳細については後述するが、概略、次のような処理である。すなわち、3つのプレ−ンに対応する第1〜第3の量子化データ(第1の量子化データとしての第1走査量子化データ、第2の量子化データとしての第2走査量子化データ、および第3の量子化データとしての第1・第2走査共通量子化データ)のそれぞれに基づき決定される記録画素(ドットが記録されることになる画素)が互いに排他的となるように、第1走査多値データ、第1・第2走査共通多値データおよび第2走査多値データに対して誤差拡散を行う処理である。要するに、第1走査量子化データ505に基づき決定される記録画素の位置と、第1・第2走査共通量子化データ506に基づき決定される記録画素の位置と、第2走査量子化データ507に基づき決定される記録画素の位置とが、記録媒体上で互い重ならないように、量子化結果を制御するのである。これにより、第1・第2走査共通量子化データに基づき決定される記録画素の量、言い換えれば、第1走査と第2走査で共にドットが記録されることになる画素の量を制御することができる。
【0044】
量子化部406によって生成された第1走査量子化データ505、第1・第2走査共通量子化データ506、第2査量子化データ507は、量子化データ合成部407に入力される。具合的には、第1走査量子化データ505および第1・第2走査共通量子化データ506が第1量子化データ合成部407−1に入力され、第2走査量子化データ507および第1・第2走査共通量子化データ506が第2量子化データ合成部407−2に入力される。第1量子化データ合成部407−1は、第1走査量子化データ505と第1・第2走査共通量子化データ506との合成処理(本例では、論理和)によって、第1走査合成量子化データ508を生成する。一方、第2量子化データ合成部407−2は、第2走査量子化データ507と第1・第2走査共通量子化データ506との合成処理(本例では、論理和)によって、第2走査合成量子化データ509を生成する。
【0045】
量子化データ合成部407によって生成された第1走査合成量子化データ508および第2走査合成量子化データ509はプリントバッファ408に転送される。そして、第1走査合成量子化データ508は第1走査用バッファ408−1に格納され、第2走査合成量子化データ509は第2走査用バッファ409−1に格納される。
【0046】
そして、第1走査用バッファに格納された第1走査合成量子化データは第1走査の際に読み出されて記録ヘッド5004に転送され、第1走査合成量子化データに基づくドット記録が第1走査において実行される。同様に、第2走査用バッファに格納された第2走査合成量子化データは第2走査の際に読み出されて記録ヘッド5004に転送され、第2走査合成量子化データに基づくドット記録が第2走査において実行される。これにより、同一領域に対して記録すべき画像を2回の走査で完成させる。
【0047】
次に、以上のような画像データ分割処理(405)、量子化処理(406)、量子化データ合成処理(407)について、図6を参照しながら説明する。図6は、図5に示した画像処理(画像データ分割処理→量子化処理→量子化データ合成処理)を模式的に表した図である。ここでは、4画素(副走査方向)×6画素(主走査方向)の計24画素に対応した多値画像データ501を処理する場合について説明する。この多値画像データ501は、図5の画像データ分割部405に入力された階調補正済みの多値データK2に相当するものである。
【0048】
まず、画像データ分割部405は、多値画像データ501を画素毎に3分割して、第1走査多値データ502、第2走査多値データ504および第1・第2走査共通多値データ503を生成する。この際、多値画像データ501の値をA、第1走査多値データ502の値をX、第2走査多値データ504の値をY、第1・第2走査共通多値データ503の値をZとした場合に、X+Y+2Z=Aを満たし且つXとYとZがほぼ同じ値となるように分割処理を行う。そのために本実施形態では、XYZの値が多値画像データの値「A」の約1/4(25%)となるように、上記分割処理を行う。より具体的には、「A」を4で除算したときの商αと余りβ(0〜3)を求め、この商αと余りβから下記のようにXYZを決定する。
・β=0の場合 → X=Y=Z=α
・β=1の場合 → X−1=Y=Z=α
・β=2の場合 → X−1=Y−1=Z=α
・β=3の場合 → X−1=Y=Z−1=α
このようにして決定されたX、Y、Zが、それぞれ、図6に示される第1走査多値データ502の値、第2走査多値データ504の値、第1・第2走査共通多値データ503の値となる。例えば、多値画像データの値Aが「160」の場合にはα=40、β=0となるので、X=Y=Z=α=40となる。なお、多値画像データ501は256値のデータであり、Aの値は0〜255のいずれかとなっている。
【0049】
次いで、量子化部406は、第1走査多値データ502、第1・第2走査共通多値データ503および第2走査多値データ504に対して排他的誤差拡散処理を行う。この誤差拡散処理で使用される閾値は「128」である。また、誤差拡散処理を行う際の周囲画素に対する誤差分配係数を示す誤差分配マトリクスとしては、図7(A)に示すフロイドの誤差分配マトリックスを用いる。第1走査量子化データ505は、第1走査多値データ502を量子化して得られた2値データであり、「1」はドットが記録される画素、「0」はドットが記録されない画素を示している。同様に、第1・第2走査共通量子化データ506は第1・第2走査共通多値データ503を量子化して得られた2値データであり、第2走査量子化データ507は第2走査多値データ504を量子化して得られた2値データである。図6から明らかなように、これら2値の量子化データ505〜507の夫々によって定められる記録画素の位置は互いに重ならないようになっている。このように本実施形態では、2値の量子化データ505〜507によって定められる記録画素の位置が互いに排他的となるように、3つのプレーンの多値データ502〜504に対して誤差拡散処理を行う。以下、図8を参照して、排他的誤差拡散処理について説明する。
【0050】
図8は、排他的誤差拡散処理を説明するためのフローチャートである。まず、図中の記号について説明する。XYZは、上述した通り、量子化部406に入力される3つのプレーンの多値データ(502、504、503)の値であり、0〜255の値を有している。Xerr、YerrおよびZerrは、既に量子化処理(2値化処理)が終了した周辺の画素から発生した累積誤差値である。なお、本例では、量子化処理によって発生した誤差がプレーン毎に保存されるようにするべく、各プレーンにて発生した量子化処理誤差を自プレーン内の周辺画素に分配するようにしている。Xt、YtおよびZtは、多値データの値(X、Y、Z)と累積誤差値(Xerr、Yerr、Zerr)との合計値である。X´、Y´およびZ´は、量子化処理(2値化処理)の結果である量子化データ(505、507、506)の値である。X´err、Y´errおよびZ´errは、着目画素における量子化処理によって生じた誤差値である。
【0051】
本処理が開始されると、まず、ステップS1にて、着目画素についてXt、YtおよびZtを算出する。次いで、ステップS2にて、Xt、YtおよびZtを加算して得られる加算値(Xt+Yt+Zt)が閾値(128)以上であるか否かを判定する。加算値が閾値未満と判定された場合にはステップS3へ進み、着目画素がいずれの走査でも記録されないようにするべく、2値化結果をX´=Y´=Z´=0に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、ステップS10へ進む。
【0052】
一方、ステップS2にて、加算値が閾値以上であると判定された場合にはステップS4に進み、着目画素を記録画素に設定するためのプレーンを決定するべく、Xt、Yt、Ztの中から最大値のパラメータを1つ特定する。ただし、最大値のパラメータが2つ以上ある場合には、優先順位をZt、Xt、Ytの順として1つのパラメータを特定する。なお、優先順位はこれに限られるものではなく、XtやYtを第1優先としてもよい。
【0053】
次いで、ステップ5では、ステップS4にて特定されたパラメータがXtであるか否かを判定する。Xtであると判定された場合にはステップS6へ進み、着目画素が第1走査でのみ記録されるようにするべく、2値化結果をX´=1、Y´=0、Z´=0に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt−255、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS10へ進む。一方、ステップ5においてXtではないと判定された場合にはステップS7へ進み、ステップS4にて特定されたパラメータがYtであるか否かを判定する。Ytであると判定された場合にはステップS8へ進み、着目画素が第2走査でのみ記録されるようにするべく、2値化結果をX´=0、Y´=1、Z´=0に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt−255、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS10へ進む。ステップS7においてYtではないと判定された場合にはステップS9へ進み、着目画素が第1走査と第2走査の両方で記録されるようにするべく、2値化結果をX´=0、Y´=0、Z´=1に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Zt−255として保存し、その後、ステップS10へ進む。
【0054】
ステップS10では、ステップS3、S6,S8あるいはS9にて保存されたX´err、Y´err、Z´errを、それぞれ、図7(A)の誤差分配マトリクスに従って、自プレーンの周辺画素に分配する。こうして、着目画素に対する量子化処理を終了しステップS11へ進む。ステップS11では、全画素について量子化処理が終了したか否かを判定し、全画素について終了していなければステップS1へ戻り、次の着目画素について上記と同様に処理し、全画素について終了していれば排他的誤差拡散処理を終了する。ステップS1において使用される累積誤差値(例えば、Xerr)は、ステップS10において1つあるいは複数の画素から分配される量子化誤差(例えば、X´err)の累積値である。
【0055】
以上の排他的誤差拡散処理によって、図6に示されるように記録画素の位置が互いに重ならない3プレーンの量子化データ(第1走査量子化データ505(X´)、第1・第2走査共通量子化データ506(Y´)、第2走査量子化データ507(Z´))が生成される。
【0056】
再び、図6に戻る。第1走査量子化データ505と第1・第2走査共通量子化データ506は、第1量子化データ合成部407−1によって合成処理(本例では、論理和)され、2値の第1走査合成量子化データ508が生成される。この第1走査合成量子化データ508において、「1」が付されている画素が第1走査において記録対象となる画素であり、「0」が付されている画素が第1走査において記録対象とならない画素である。また、斜線が施されている画素が第1走査と第2走査で共通して記録対象となる画素である。同様に、第2走査量子化データ507と第1・第2走査共通量子化データ506は、第2量子化データ合成部407−2によって合成処理(本例では、論理和)され、2値の第2走査合成量子化データ509が生成される。この第1走査合成量子化データ509において、「1」が付されている画素が第2走査において記録対象となる画素であり、「0」が付されている画素が第2走査において記録対象とならない画素である。また、斜線が施されている画素が第1走査と第2走査で共通して記録対象となる画素である。
【0057】
なお、上記では、X+Y+2Z=Aを満たし且つXとYとZがほぼ同じ値となるように分割処理を行っているが、これに限られるものではない。X+Y+2Z=Aを満たせば、分割処理前後での多値データの値を変えずに済むため、画像の濃度保存性は極めて優れたものになるが、X+Y+2Z=Aを満さずとも、X+Y+2Zの値が概ねAの値になれば画像濃度の保存性を十分に確保することができる。また、上記の処理を実行すると、多値画像データ501の値が最高濃度値を示す値(255)であっても、図16(A)に示されるようにドットが記録されない画素が生じる。図16(A)のようなドット配置の場合、図16(B)のような100%ベタ画像のドット配置に比べて、画像濃度が低くなる。図16(A)のようなドット配置でも画像濃度は十分だが、より高濃度を実現したい場合には、X+Y+2Zの合計値がAの値以上となるように、X、YおよびZの値を設定することも可能である。
【0058】
以上のように第1の処理モードによれば、複数回の走査で共にドットが記録される画素を発生させることができるため、記録媒体の搬送誤差やキャリッジの移動誤差等により生じるドット被覆率の変動(画像濃度変動)を抑制することができる。また、複数回の走査に共通に対応する多値データを量子化することで、複数回の走査で共にドットが記録される画素(重なりドット)の量を制御しているため、重なりドットの量の多過ぎによる粒状性の悪化を抑制することができる。これにより、画像の濃度変動を抑制しつつも粒状性を低く抑えることができる。
【0059】
また、この第1の処理モードは、量子化処理の前に、多値画像データをマルチパス数に関連付けられた複数の多値データに分割するため、複数の多値データに対して量子化処理を行う必要があり、量子化処理の負荷が結構高くなる。しかし、本実施形態では、記録パス数(M)が少ない場合に第1の処理モードの採用しているので、その量子化処理の負荷も許容できる範囲内である。
【0060】
次に、第2の処理モードについて説明する。図9は、図4のステップS5で実行される第2の処理モードにおけるデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。ここでは、4パスモードのデータ処理を行う場合を例に挙げて説明する。
【0061】
図9に示される処理ブロックのうち、多値画像データ入力部401、色変換処理部402、色分解処理部403、階調補正処理部404およびプリントバッファ408は、図5と同じ構成である。一方、図9における画像データ分割部415および量子化部416は、図5における量子化部406および画像データ分割部405および量子化部406とは異なる構成となっている。なお、画像データ分割部415および量子化部416は、図3の制御部3000に備えられている。以下では、図9を用いて、RGBの入力画像データから4パス分の2値データを生成するまでの処理の流れについて説明する。
【0062】
多値画像データ入力部401、色変換処理部402、色分解処理部403および階調補正処理部404の処理は図5と同じである。従って、階調補正処理部404から出力された階調補正済みの多値データK2が量子化部416に入力されることになる。なお、図5と同様、図9の処理についてもCMYKで同じ処理がなされるので、ここでは、代表してKデータの処理について説明し、その他の色については説明を省略する。
【0063】
量子化部416は、入力された多値データに対して誤差拡散法による量子化処理(2値化処理)を行う。この誤差拡散処理で使用される閾値は「128」である。また、誤差拡散処理を行う際の周囲画素に対する誤差分配係数を示す誤差分配マトリクスとしては、図7(A)に示すフロイドの誤差分配マトリックスを用いる。量子化部416によって生成された2値の量子化データは画像データ分割部415に入力される。
【0064】
画像データ分割部415は、2値の量子化データを図10に示される4パス用のマスクデータによって間引くことにより、上記2値の量子化データを4回の走査夫々に対応する2値の分割量子化データに分割する。図10は、4パスのマルチパス記録で使用可能なマスクデータの一例を示した模式図である。ここで、黒で示した領域は記録許容画素(1)、白で示した領域は非記録許容画素(0)を示している。631は1パス目の走査で使用するマスク、632は2パス目の走査で使用するマスク、633は3パス目の走査で使用するマスク、634は4パス目の走査で使用するマスクをそれぞれ示している。また、4枚のマスク631〜634は記録許容画素の位置が互いに補完の関係となっている。このような4枚のマスクデータと2値の量子化データとの間で論理積演算を行うことにより、上記2値の量子化データが第1走査、第2走査、第3走査および第4走査のそれぞれに対応した2値の分割量子化データに分割される。
【0065】
その後、これら第1〜第4の走査に対応する4つのプレーンの2値の分割量子化データはプリントバッファ408に転送されて格納される。そして、プリントバッファ408に格納された2値の分割量子化データは記録ヘッドの走査の際に読み出され、この読み出されたデータに従って記録ヘッドが駆動され記録が行われる。
【0066】
次に、以上のような量子化処理(416)および画像データ分割処理(415)について、図11を参照しながら説明する。図11は、図10に示した画像処理(量子化処理→画像データ分割処理)を模式的に表した図である。ここでは、4画素(副走査方向)×4画素(主走査方向)の計16画素に対応した多値画像データ711を処理する場合について説明する。この多値画像データ711は、図9の量子化部416に入力された階調補正済みの多値データK2に相当するものである。
【0067】
量子化部416では、多値データ711に対して、図7(A)の誤差分配マトリックスと量子化閾値(128)を用いた誤差拡散方法によって2値化処理を行う。これにより、4画素×4画素の領域に対応する2値の量子化データ712が生成される。
【0068】
次いで、画像データ分割部415は、2値の量子化データ721を、図10のマスク631〜634を用いて、1パス〜4パス目用の2値の分割量子化データ713〜716に分割する。詳しくは、2値データ712とマスク631との論理積によって、1パス目用の2値データ713が生成される。また、2値データ712とマスク632との論理積によって、2パス目用の2値データ714が生成される。同様に、2値データ712とマスク633との論理積によって3パス目用の2値データ715が生成され、2値データ712とマスク634との論理積によって4パス目用の2値データ716が生成される。そして、これら各走査の2値データ713〜716をみれば明らかなように、異なる走査で記録されるドット同士は同じ画素で重ならないようになっている。従って、ドット同士の重なりによる粒状感の増加は生じず、粒状感の少ない高品位な画像を得ることができる。
【0069】
なお、図4のステップS2において、記録媒体の種類が「光沢紙」で且つ印刷品位が「きれい」であれば、図13(a)に示されるように8パスモードと判定される。8パスモードの場合には、画像データ分割部415において、図14に示されるような8パス用のマスクを用いてデータ分割を行う。それ以外は4パスモードと同じである。
【0070】
以上のように第2の処理モードによれば、複数回の走査で共にドットが記録される画素が発生しないので、異なる走査で記録されるドット同士が重なる割合が低い。そのため、粒状性を低く抑えることができる。また、ドット重なり率が低いということはドット被覆率が高いということを意味しているので、高ドット被覆率に起因した高い濃度を実現できる。また、この第2の処理モードは、量子化処理の後に、多値画像データをMパスに対応するM個の多値データに分割するため、量子化処理の負荷は比較的低い。
【0071】
以上の説明したように本実施形態によれば、記録モードの記録パス数(M)に起因して変わるドット被覆率の変動度および量子化処理の負荷、更には粒状性を考慮して、パス数に適した画像処理を行うことができる。
【0072】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、上記第1の処理モードにおいて実行される量子化処理として、上記第1の実施形態で採用した排他的誤差拡散処理に代えて、図7(A)〜(C)に示した誤差分配マトリックスを用いた誤差拡散処理を行う点を特徴としている。これ以外の点(パス数の判定基準や第2の処理モード等)については第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0073】
図5の量子化部406には、画像データ分割部405に生成された第1走査多値データ502、第1・第2走査共通多値データ503および第2走査多値データ504が入力される。量子化部406は、第1走査多値データ502に対して2値の誤差拡散処理を行うことで、第1走査量子化データ505を生成する。この際、閾値として「128」を用い、誤差分配マトリクスとして図7(B)に示される誤差分配マトリクスを用いる。また、量子化部406は、第1・第2走査共通多値データ503に対して2値の誤差拡散処理を行うことで、第1・第2走査共通量子化データ506を生成する。この際、閾値として「128」を用い、誤差分配マトリクスとして図7(A)に示される誤差分配マトリクスを用いる。さらに、第2走査多値データ504に対して2値の誤差拡散処理を行うことで、第2走査量子化データ507を生成する。この際、閾値として「128」を用い、誤差分配マトリクスとして図7(C)に示される誤差分配マトリクスを用いる。
【0074】
このように3つのプレーン間で異なる誤差分配マトリクスを用いることで、3つのプレーンの量子化結果(量子化データ505〜507によって定められる記録画素の位置)が異なせることができる。これにより、第1走査と第2走査で共に記録される画素(重なりドット)を発生させつつも、第1走査のみで記録される画素および第2走査のみで記録される画素も発生させることができる。仮に、3つのプレーン間で同じ誤差分配マトリクスを用いたとすると、3つのプレーンの量子化結果がかなり類似してしまう。すると、第1走査で記録される画素と第2走査で記録される画素とがほぼ同じになり、最高濃度の画像を記録する場合であっても、その記録画素の殆ど全てでドットが重なる半面、半分の画素にはドットが記録されず白地が多くなる。このような場合、入力値に対する出力画像濃度が保存されにくい。しかし、本実施形態では、上述の通り、3つのプレーンの量子化結果が異なり、第1走査と第2走査で共に記録される画素のみならず、第1走査のみで記録される画素も第2走査のみで記録される画素も発生するため、出力画像濃度の保存性もある程度確保できる。
【0075】
ところで、本実施形態の処理によって生成された2値の量子化データ505〜507にそれぞれによって定められる記録画素(「1」が割り当てられる画素)の位置は完全排他の関係にないため、記録画素の位置が重なる可能性もある。例えば、ある画素についての2値化結果が、量子化データ505および量子化データ506で共に「1」となる場合がある。従って、その後の合成処理として、上記第1の実施形態と同じように論理和処理を適用すると、量子化データ505〜507によって定められる記録画素の数よりも、合成処理後の記録画素の数が少なくなってしまう。すると、入力値に対する出力画像の濃度保存性が低下してしまう。この濃度低下が許容できる場合には、合成処理として論理和処理を適用可能である。一方、上記のような濃度低下が許容できない場合には、量子化データの値(「1」か「0」)を画素毎に加算し、その加算値が合成量子化データの値となるように、上記合成処理を実行すればよい。例えば、ある画素Aについて、量子化データ505および量子化データ506の値が共に「1」の場合には、第1走査合成量子化データ508の値を2(=1+1)とする。そして、このような加算値(0、1、2)に従った数のドットを各走査で記録する。こうすることで、入力値に対する出力画像の濃度保存性を低下させずに済む。
【0076】
以上説明したような本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、第1走査と第2走査で共に記録される画素(重なりドット)の量を制御することができるので、上述したような画像濃度変動と粒状性悪化を共に抑制することができる。これに加えて、本実施形態では、3つのプレーンの誤差拡散処理を独立に行っているので、第1の実施形態のような排他的誤差拡散処理を行う場合に比べて、処理速度を向上させることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、3プレーンの量子化結果を異ならせるために、プレーン間で用いる誤差分配マトリックスを異ならせる場合について説明した。しかし、本実施形態はこれに限られるものではなく、例えば、プレーン間で用いる誤差分配マトリックスは同一とし、その代りに、プレーン間で用いる閾値を異ならせるようにしてもよい。また、誤差分配マトリックスと閾値の組合せをプレーン間で異ならせるようにしてもよい。
【0078】
(第3の実施形態)
上記第1〜第2の実施形態では、量子化処理として2値化処理を行っていたが、この第3の実施形態では、量子化処理として3値化処理を行う点を特徴とする。これ以外の点については上記実施形態と同様であるため説明を省略する。ここでは、第1の実施形態の2値化処理を3値化処理に置き換えた場合について説明するが、第2の実施形態の2値化処理を3値化処理に置き換えてもよい。
【0079】
まず、第2の処理モードについて説明する。図9の量子化部416では、誤差拡散法による3値化処理を行うために、2つの閾値(85、170)と図7(A)の誤差分配マトリクスを用いる。こうして量子化部416において3値化処理が行われ、3値の量子化データが生成される。その後、この3値の量子化データは、不図示のドットパターン変換処理部に入力される。ドットパターン変換処理部では、特開2001−054956号公報に記載されるように、周知の方法に従って、3値の量子化データがドットパターンに変換されて2値データが生成される。こうして生成された2値データが画像データ分割部415に入力され、以降、第1の実施形態と同じ処理がなされる。
【0080】
次に、第1の処理モード似ついて説明する。ここでは、3値に量子化された量子化データ505〜507の夫々によって定められる記録画素の位置が互いに重ならないように、多値データ502〜504に対して3値の排他的誤差拡散処理を行う。
【0081】
図12は、3値の排他的誤差拡散処理を説明するためのフローチャートである。図12の記号(Xt、Xerr、X´等)の意味は、図8の記号の意味と同じである。本実施形態では、閾値として、第1の閾値(170)と第2の閾値(85)を用いる。また、3値化処理の結果であるX´、Y´、およびZ´の値は「0」、「1」、「2」のいずれかとなる。ここで、「0」はドットを記録しないことを示し、「1」は1つのドットを記録することを示し、「2」は2つのドットを記録することを示す。
【0082】
本処理が開始されると、まず、ステップS1にて、着目画素についてXt、YtおよびZtを算出する。次いで、ステップS2にて、Xt、YtおよびZtを加算して得られる加算値At(=Xt+Yt+Zt)を取得する。次いで、ステップS3において、加算値Atが第1の閾値(170)以上であるか、加算値Atが第1の閾値未満且つ第2の閾値(85)以上であるか、加算値Atが第2の閾値未満であるかを判定する。
【0083】
ステップS3において加算値Atが第2閾値(85)未満と判定された場合にはステップS16へ進み、着目画素がいずれの走査でも記録されないようにするべく、3値化結果をX´=Y´=Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、ステップS17へ進む。
【0084】
一方、ステップS3において加算値Atが第1閾値(170)以上であると判定された場合にはステップS4に進み、着目画素を記録画素(「1」)に設定するためのプレーンを決定するべく、Xt、Yt、Ztの中から最大値のパラメータを1つ特定する。ただし、最大値のパラメータが2つ以上ある場合には、優先順位をZt、Xt、Ytの順として1つのパラメータを特定する。なお、優先順位はこれに限られるものではなく、XtやYtを第1優先としてもよい。次いで、ステップ5では、ステップS4にて特定された最大のパラメータがXtであるか否かを判定する。Xtであると判定された場合にはステップS6へ進み、着目画素に第1走査で2つのドットが記録されるようにするべく、3値化結果をX´=2、Y´=0、Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt−255、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS17へ進む。一方、ステップ5においてXtではないと判定された場合にはステップS7へ進み、ステップS4にて特定された最大のパラメータがYtであるか否かを判定する。Ytであると判定された場合にはステップS8へ進み、着目画素に第2走査で2つのドットが記録されるようにするべく、3値化結果をX´=0、Y´=2、Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt−255、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS17へ進む。ステップS7においてYtではないと判定された場合にはステップS9へ進み、着目画素に第1走査と第2走査の両方で2ドットづつ記録されるようにするべく、2値化結果をX´=0、Y´=0、Z´=2に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Zt−255として保存し、その後、ステップS17へ進む。
【0085】
一方、ステップS3において加算値Atが第1の閾値(170)未満且つ第2の閾値(85)以上であると判定された場合にはステップS10に進む。そして、ステップS10において、着目画素を記録画素(「2」)に設定するためのプレーンを決定するべく、ステップS4と同様のルールに従って、Xt、Yt、Ztの中から最大値のパラメータを1つ特定する。次いで、ステップ11では、ステップS10にて特定された最大のパラメータがXtであるか否かを判定する。Xtであると判定された場合にはステップS12へ進み、着目画素に第1走査で1つのドットが記録されるようにするべく、3値化結果をX´=1、Y´=0、Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt−128、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS17へ進む。一方、ステップ11においてXtではないと判定された場合にはステップS13へ進み、ステップS10にて特定された最大のパラメータがYtであるか否かを判定する。Ytであると判定された場合にはステップS14へ進み、着目画素に第2走査で1つのドットが記録されるようにするべく、3値化結果をX´=0、Y´=1、Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt−128、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS17へ進む。ステップS13においてYtではないと判定された場合にはステップS15へ進み、着目画素に第1走査と第2走査の両方で1ドットづつ記録されるようにするべく、2値化結果をX´=0、Y´=0、Z´=1に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Zt−128として保存し、その後、ステップS17へ進む。
【0086】
ステップS17では、ステップS6、S8、S9、S12、S14、S15あるいはS16にて保存されたX´err、Y´err、Z´errを、それぞれ、図7(A)の誤差分配マトリクスに従って、自プレーンの周辺画素に分配する。こうして、着目画素に対する量子化処理を終了しステップS18へ進む。ステップS18では、全画素について量子化処理が終了したか否かを判定し、全画素について終了していなければステップS1へ戻り、次の着目画素について上記と同様に処理し、全画素について終了していれば排他的誤差拡散処理を終了する。以上のような排他的誤差拡散処理によって、記録画素の位置が互いに重ならない3プレーンの量子化データ(第1走査量子化データ505(X´)、第1・第2走査共通量子化データ506(Y´)、第2走査量子化データ507(Z´))が生成される。
【0087】
以上のように本実施形態の第1の処理モードによれば、上述した実施形態で得られる効果に加え、階調表現にすぐれた画像を得ることができる。なお、画素領域に複数のドットを形成する場合、画素領域内の同じ位置に向けてインクを複数回吐出するようにしてもよいし、画素領域内の異なる位置に向けてインクを複数回吐出するようにしてもよい。
【0088】
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態では、第1の処理モードとして2パス記録を行う場合のデータ処理について説明したが、この第4の実施形態では、第1の処理モードとして3パス記録を行う場合のデータ処理について説明する。また、本実施形態では、図4のステップS2の判定処理で用いるテーブルとして、第1〜第3の実施形態で使用している図13(a)のテーブルに代えて、図13(b)のテーブルを用いる。これら以外の点については第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0089】
本実施形態では、図4のステップS2において、図13(b)のルックアップテーブルと、ステップS1において取得した記録媒体の種類を示す情報と印刷品位を示す情報に基づいて、記録モードのパス数(M)を判定する。図13(b)のテーブルから明らかなように、本実施形態では、2パスモードと3パスモードで第1の処理モードが実行され、4モードと8パスモードで第2の処理モードが実行されることになる。
【0090】
図15は、第1の処理モードとしての3パスモードを実行するためのデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。この図15では、図5と異なる構成(画像データ分割部405、量子化部406、量子化データ合成部407)だけを示しており、図5と同じ構成(401〜404)については省略している。なお、第1の実施形態と同様、画像データ分割部405には、階調補正済みの多値データK2(多値画像データ501)が入力される。
【0091】
画像データ分割部405は、入力された多値画像データを、第1走査のみに対応する第1走査多値データ901、第2走査にのみに対応する第2走査多値データ902、第3走査にのみに対応する第3走査多値データ903、第1走査と第2走査に共通して対応する第1・第2走査共通多値データ904、第1走査と第3走査に共通して対応する第1・第3走査共通多値データ905、第2走査と第3走査に共通して対応する第2・第3走査共通多値データ906、および、第1走査と第2走査と第3走査の全てに共通して対応する第1・第2・第3走査共通多値データ907に分割する。
【0092】
次いで、量子化部406は、これら7つのプレーンの多値データ901〜907に、第1の実施形態で説明したような2値の排他的誤差拡散を行う。これにより、第1走査量子化データ911、第2走査量子化データ912、第3走査量子化データ913、第1・第2走査共通量子化データ914、第1・第3走査共通量子化データ915、第2・第3走査共通量子化データ916および第1・第2・第3走査共通量子化データ917が生成される。
【0093】
次いで、これら7つのプレーンの量子化データ911〜917が量子化データ合成部407に入力され、量子化データ911〜917は対応する相対走査毎に合成される。具合的には、第1走査量子化データ911、第1・第2走査共通量子化データ914、第1・第3走査共通量子化データ915および第1・第2・第3走査共通量子化データ917が第1量子化データ合成部407−1に入力される。そして、第1量子化データ合成部407−1は、量子化データ911、914、915、917を合成(本例では、論理和)して、第1走査合成量子化データ921を生成する。また、第2走査量子化データ912、第1・第2走査共通量子化データ914、第2・第3走査共通量子化データ916および第1・第2・第3走査共通量子化データ917が第2量子化データ合成部407−2に入力される。そして、第2量子化データ合成部407−2は、量子化データ912、914、916、917を合成して、第2走査合成量子化データ922を生成する。さらに、第3走査量子化データ913、第1・第3走査共通量子化データ915、第2・第3走査共通量子化データ916および第1・第2・第3走査共通量子化データ917が第3量子化データ合成部407−3に入力される。第3量子化データ合成部407−3は、量子化データ913、915、916、917を合成して、第3走査合成量子化データ923を生成する。以上の処理によって、3パス分の記録データを生成することが可能となる。
【0094】
なお、本実施形態の第1の処理モードでは、量子化処理として、第1の実施形態で説明したような排他的誤差拡散を適用したが、本実施形態で適用可能な量子化処理はこれに限られるものではい。例えば、第2の実施形態で説明したような独立誤差拡散処理を適用することもできる。また、本実施形態で適用可能な量子化処理は2値化処理に限られるものではなく、第4の実施形態で説明したような3値化処理あるいは4値以上の量子化処理であってもよい。
【0095】
また、本実施形態の第1の処理モードでは、第1、第2および第3の走査の全ての組み合わせについての共通多値データが生成されるように分割処理を行ったが、分割処理の方法はこれに限られるものではない。例えば、特定の走査(第1走査と第2走査)間でのみ重なりドットが発生するように共通多値データを生成してもよい。この場合、第1走査多値データ901、第2走査多値データ902、第3走査多値データ903に加え、共通多値データとして第1・第2走査共通多値データ904のみを生成し、第1・第3走査共通多値データ905、第2・第3走査共通多値データ906および第1・第2・第3走査共通多値データ907は生成しない。
【0096】
(その他の実施形態)
上記第1〜第4の実施形態では、パス数判定処理に用いる閾値(L)を4とし、4パス以上のマルチパス記録の場合には第2の処理モードを適用し、4パス未満(2パス、3パス)のマルチパス記録の場合には第1の処理モードを適用している。しかし、本発明で適用可能な閾値(L)は4に限られるものではない。例えば、Lを8に設定し、8パス以上の場合には第2の処理モードを適用し、8パス未満(2〜7パス)の場合には第1の処理モードを適用するようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、記録媒体に対する記録ヘッドの移動(相対走査)中に記録ヘッドからインクを吐出してマルチパス記録を行うシリアル方式の記録装置を用いる場合について説明したが、本発明で適用可能な記録装置はこれに限られるものではない。記録ヘッドに対する記録媒体の搬送(相対走査)中にインクを吐出してマルチパス記録を行うライン方式の記録装置も本発明において適用可能である。要するに、記録ヘッドと記録媒体との相対走査中にマルチパス記録を行う形態であれば本発明において適用可能である。
【0098】
また、上記実施形態では2値化処理あるいは3値化処理を例に挙げて説明したが、本発明で適用可能な量子化処理はこれに限られるものではなく、4値以上の量子化処理にも適用可能である。要するに、本発明では、N(Nは2以上の整数)値の量子化処理であれば適用可能である。
【0099】
上記実施形態では、CMYKの4色のインクを用いる形態について説明したが、使用可能なインク色の種類数はこれに限られるものではない。上記4色のインクに、淡シアン(Lc)や淡マゼンタインク(Lm)を加えたり、レッドインク(R)やブルーインク(B)等の特色インクを加えてもよい。また、上記実施形態では、複数色のインクが使用されるカラー記録モードを実行する場合について説明したが、本発明は単色インクが使用されるモノカラーモードにも適用可能である。更には、本発明は、カラープリンタのみならず、モノクロプリンタにも適用可能である。
【0100】
上記実施形態では、画像処理機能を有する制御部3000を備えた記録装置(画像形成装置)を例に、本発明の特徴的な画像処理を実行する画像処理装置を説明してきたが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。本発明の特徴的な画像処理が、プリンタドライバがインストールされたホスト装置(例えば、図3のPC3010)で実行される構成であっても構わない。このような場合、記録装置と接続されるホスト装置が、本発明の画像処理装置に該当する。
【0101】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0102】
405 画像データ分割部
406 量子化部
407 量子化データ合成部
408 プリントバッファ501
501 多値画像データ
502 第1走査多値データ
503 第1・第2走査共通多値データ
504 第2走査多値データ
505 第1走査量子化データ
506 第1・第2走査共通量子化データ
507 第2走査量子化データ
508 第1走査合成量子化データ
509 第2走査合成量子化データ
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体と記録ヘッドとの複数回の相対移動によって記録媒体の同一領域(例えば、画素領域)に画像を記録するために、同一領域に対応する多値画像データを処理する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において記録される画像の濃度むらやスジを軽減するための技術として、記録媒体の同一領域に対する記録ヘッドの複数回の記録走査によって上記同一領域に記録すべき画像を完成させるマルチパス記録方式が知られている。しかしながら、マルチパス記録方式を採用したとしても、記録媒体の搬送量の変動などによって、先行する記録走査でのドット記録位置と後続の記録走査でのドット記録位置にズレが生じる場合がある。このようなズレはドット被覆率の変動を招き、これが原因で濃度変動や濃度むら等の画像弊害が生じる。
【0003】
このような画像弊害を軽減するための技術として、2値化前の多値の画像データの段階で画像データを異なる記録走査に対応するように分割し、分割後の多値画像データを夫々独立(無相関)に2値化する方法が知られている(特許文献1)。図16(A)は、この特許文献1の方法によって処理された画像データに基づいて記録されるドットの配置状態を示した図である。図16(A)において、黒丸551は第1の記録走査で記録されるドット、白丸552は第2の記録走査で記録されるドット、グレーの丸553は第1の記録走査と第2の記録走査によって重ねて記録されるドットである。
【0004】
このようなドット配置によれば、第1の記録走査で記録されるドット群と第2の記録走査で記録されるドット群が、主走査方向または副走査方向にずれたとしても、記録媒体に対するドットの被覆率は然程変動しない。その理由は、第1の記録走査で記録されるドットと第2の記録走査で記録されるドットが重なる部分も新たに現れるが、本来重ねて記録されるべき2つのドットが重ならなくなる部分も存在するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−103088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、異なる記録走査に対応した多値データを無相関に量子化しているため、異なる記録走査で記録されるドット同士の重なり量を制御することができない。従って、重なりドットの数が過剰となって画像の粒状性が悪化したり、反対に、重なりドットの数が少な過ぎて上記の濃度変動を十分に抑制することができない場合がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の方法は、マルチパスの回数に応じて多値データの分割数が増加し、その分だけ量子化処理の対象となる多値データの数が増加する。従って、この方法をマルチパスの回数が多い記録モードで実施しようとすると、量子化処理の負荷がかなり大きくなってしまう。
【0008】
ところで、マルチパスの回数が多い場合、パス間で行われる記録媒体の搬送の量が比較的小さいため、記録媒体の搬送誤差等に起因するドット被覆率の変動は比較的少ない。従って、ドット被覆率の変動を抑制するために、積極的にドット重複部分を発生させるような処理を行う必要性は少ない。マルチパスの回数が多い場合は、ドット被覆率の変動を抑制するよりも、むしろ、粒状性の低減と量子処理の負荷低減を優先するような処理を行う方が好ましい。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、マルチパスの回数に適したデータ処理を行うことで、上述した濃度変動の抑制、粒状性の抑制並びにデータ処理負荷の軽減を可能とする画像処理装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査によって前記記録媒体の画素領域に画像を記録するために、当該画素領域に記録すべき画像に対応した多値画像データを処理するための画像処理装置であって、前記画素領域に対する前記相対走査の回数に関する情報を取得するための取得手段と、前記取得手段により取得された情報が示す回数が閾値未満の場合には第1の処理モードを選択し、前記情報が示す回数が閾値以上の場合には第2の処理モードを選択するための選択手段と、前記選択手段により選択された処理モードを実行するための処理部とを備え、前記第1の処理モードは、(A)前記多値画像データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する多値データおよび前記複数回の相対走査のうちの少なくとも2回の相対走査に共通に対応する多値データに分割するための第1の分割処理と、(B)前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれを量子化して、前記複数回の相対走査の各々に対応する量子化データおよび前記少なくとも2回の相対走査に共通に対応する量子化データを生成するための第1の量子化処理と、(C)前記第1の量子化処理によって生成された量子化データを対応する相対走査毎に合成して、前記複数回の相対走査の各々に対応した合成量子化データを生成するための合成処理と、を含む画像処理を行うためのモードであり、前記第2の処理モードは、(D)前記多値画像データを量子化して量子化データを生成するための第2の量子化処理と、(E)前記第2の量子化処理によって生成された量子化データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割するための第2の分割処理と、を含む画像処理を行うためのモードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画素領域に対する記録ヘッドの走査回数(つまり、マルチパスの回数)に適したデータ処理を行う。これにより、ドット重複率の変動に伴う濃度変動の抑制、粒状性の抑制、並びに、データ処理負荷の軽減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像処理装置として機能するプリンタの概略構成図である。
【図2】2パスのマルチパス記録の説明図である。
【図3】図1のプリンタの制御に係る主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態におけるデータ処理の概略を示すフローチャートである。
【図5】第1の処理モードにおけるデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示した処理(画像データ分割処理→量子化処理→量子化データ合成処理)を模式的に表した図である。
【図7】誤差拡散処理を行う際の周囲画素に対する誤差分配係数を示す誤差分配マトリクスを表す図である。
【図8】第1の処理モードにおける量子化処理としての2値排他的誤差拡散処理を示すフローチャートである。
【図9】第2の処理モードにおけるデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。
【図10】第2の処理モードにおける分割処理で使用可能な4パス用のマスクを示す図である。
【図11】図10に示した処理(量子化処理→(画像データ分割処理)を模式的に表した図である。
【図12】3値の排他的誤差拡散処理を示すフローチャートである。
【図13】(a)および(b)は、それぞれ、第1および第4の実施形態において使用される、記録媒体の種類と印刷品位と記録パス数の対応関係を示すテーブルである。
【図14】第2の処理モードにおける分割処理で使用可能な8パス用のマスクを示す図である。
【図15】第1の処理モードにおける3パス用データの生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。
【図16】2回の走査で記録されるドットの配置状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で説明する実施形態は、インクジェット記録装置を例にしているが、本発明は、インクジェット記録装置に限られるものではない。ドットを記録するための記録ヘッドと記録媒体の相対走査中に、記録ヘッドによって記録媒体に画像を記録する方式の装置であれば、インクジェット記録装置以外の装置でも適用可能である。
【0014】
本明細書において、「マルチパス記録」とは、記録ヘッドと記録媒体との相対走査(相対移動)によって記録媒体の同一領域に記録すべき画像を完成させる記録方式をいう。「記録ヘッドと記録媒体との相対走査(相対移動)」とは、記録媒体に対して記録ヘッドが相対的に移動(走査)する動作、あるいは、記録ヘッドに対して記録媒体が相対的に移動(搬送)する動作を指す。「同一領域」とは、ミクロ的には「1つの画素領域」を指し、マクロ的には「1回の相対走査で記録可能な領域」を指す。「画素領域(単に「画素」と呼ぶ場合もある)」とは、多値画像データによって階調表現可能な最小単位の領域を指す。一方、「1回の相対走査で記録可能な領域」とは、1回の相対走査中に記録ヘッドが通過する記録媒体上の領域、あるいは、この領域よりも小なる領域(例えば、1ラスター領域)を指す。例えば、シリアル型の記録装置において、図2に示されるようなM(Mは2以上の整数)パスのマルチパスモードを実行する場合、マクロ的には図中の1つの記録領域(ノズル配列幅の1/Mの幅の領域)を同一領域と定義することも可能である。
【0015】
なお、以下では、「相対走査」のことを単に「走査」と称する。例えば、3パスのマルチパス記録の場合、1つの画素領域に対して3回の相対走査(第1相対走査、第2相対走査、第3相対走査)を行うが、これら第1〜第3の相対走査のことを夫々「第1走査」、「第2走査」、「第3走査」のように称する。
【0016】
<記録装置の概略構成>
図1(A)は、本発明の画像処理装置として適用可能なフォトダイレクトプリンタ装置(以下、PDプリンタ)1000の概観斜視図である。PDプリンタ1000は、ホストコンピュータ(PC)からデータを受信して印刷する機能、メモリカード等の記憶媒体に記憶されている画像を直接読取って印刷する機能、またデジタルカメラやPDA等からの画像を受信して印刷する機能を有している。
【0017】
図1(A)において、1004は記録済みの用紙を積載可能な排出トレイであり、1003は、本体内部に収納されている記録ヘッドカートリッジ或いはインクタンク等の交換を行う際に、ユーザが開閉することが可能なアクセスカバーである。上ケース1002に設けられた操作パネル1010には、印刷に関する条件(例えば、記録媒体の種類、印刷品位等)を各種設定するためのメニュー項目が表示され、ユーザは出力する画像の種類や用途に応じてこれら項目を設定することが出来る。本実施形態では、記録媒体の種類と印刷品位の組み合わせによって、記録モードのパス数(画素領域に対する記録ヘッドの走査回数)が決定される。また、操作パネル1010に表示されるメニュー項目には、ユーザが画像出力指示を行うための項目も含まれている。1007は記録媒体を装置本体内へと自動的に給送する自動給送部、1009はメモリカードを装着可能なアダプタが挿入されるカードスロット、1012はデジタルカメラを接続するためのUSB端子である。PDプリンタ1000の後面には、PCを接続するためのUSBコネクタが設けられている。
【0018】
図1(B)は、PDプリンタの内部構成の概要を示す斜視図である。記録媒体Pは、自動給送部1007によって搬送経路上に配置された搬送ローラ5001とこれに従動するピンチローラ5002とのニップ部に給送される。その後、記録媒体Pは、搬送ローラ5001の回転によって、プラテン5003上に案内支持されながら図中矢印A方向(副走査方向)に搬送される。ピンチローラ5002は、不図示のバネ等の押圧手段により、搬送ローラ5001に対して弾性的に付勢されている。これら搬送ローラ5001及びピンチローラ5002が記録媒体搬送方向の上流側にある第1搬送手段の構成要素をなす。
【0019】
プラテン5003は、インクジェット形態の記録ヘッド5004の吐出口が形成された面(吐出面)と対向する記録位置に設けられ、記録媒体Pの裏面を支持することで、記録媒体Pの表面と吐出面との距離を一定の距離に維持する。プラテン5003上に搬送されて記録が行われた記録媒体Pは、回転する排出ローラ5005とこれに従動する回転体である拍車5006との間に挟まれてA方向に搬送され、プラテン5003から排紙トレイ1004に排出される。排出ローラ5005及び拍車5006が記録媒体搬送方向の下流側にある第2搬送手段の構成要素をなす。
【0020】
記録ヘッド5004は、その吐出口面をプラテン5003ないし記録媒体Pに対向させた姿勢で、キャリッジ5008に着脱可能に搭載されている。キャリッジ5008は、キャリッジモータE0001の駆動力により2本のガイドレール5009及び5010に沿って往復移動され、その移動の過程で記録ヘッド5004は記録信号に応じたインク吐出動作を実行する。キャリッジ5008が移動する方向は、記録媒体が搬送される方向(矢印A方向)と交差する方向(主走査方向)である。キャリッジ5008及び記録ヘッド5004の主走査(記録を伴う移動)と、記録媒体の搬送(副走査)とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Pに対する記録が行われる。
【0021】
図1(C)は、記録ヘッド5004を吐出口形成面から観察した場合の概略図である。図中、51はシアンノズル列、52はマゼンタノズル列、53はイエローノズル列、54はブラックノズル列である。各ノズル列の副走査方向における幅はdであり、1回の走査によってdの幅の記録が可能となっている。
【0022】
ノズル列51〜54のそれぞれは、600dpi(ドット/インチ)すなわち約42μmの間隔で副走査方向に配列されてなる1200個のノズルで構成されている。個々のノズルには、吐出口と、インクを吐出口まで導くためのインク路と、吐出口近傍のインク内に膜沸騰を生じさせる電気熱変換素子とが備えられている。このような構成の下、吐出信号に応じて個々の電気熱変換素子に電圧パルスを印加することにより、電気熱変換素子近傍のインクに膜沸騰が生じ、発生した泡の成長に応じた量のインクが吐出口から液滴として吐出される。
【0023】
<マルチパス記録>
本実施形態の記録装置はマルチパス記録を実行することが出来るので、記録ヘッド5004が1回の記録走査で記録可能な領域は、複数回の記録走査によって段階的に画像が形成される。各記録走査の間に記録ヘッド5004の幅dよりも小さな量の搬送動作を行うことにより、個々のノズルのばらつきに起因する濃度むらやすじを低減することが出来る。マルチパス記録を行うか否か、あるいはマルチパス数(同一領域に対し記録走査を行う回数)は、操作パネル1010からユーザが入力した情報や、ホスト装置から受信される画像情報によって、適宜定められるようになっている。
【0024】
次に、上記記録装置にて実行可能なマルチパス記録の一例について図2を用いて説明する。ここでは、マルチパス記録の一例として2パス記録を例に挙げて説明するが、本発明は2パス記録に限定されるものではなく、3パス、4パス、8パス、16パス等の(Mは2以上の整数)パス記録であればよい。なお、本発明において好適に適用される「M(Mは2以上の整数)パスモード」とは、記録素子の配列範囲の幅よりも小なる量の記録媒体の搬送を介在させた記録素子群のM回の走査によって記録媒体上の同一領域に記録を行うモードである。このようなMパスモードでは、記録媒体の1回の搬送量を、記録素子の配列範囲の幅の1/Mの幅に対応した量に等しく設定するのが好ましく、このような設定を行うことで、上記同一領域の搬送方向における幅が記録媒体の1回の搬送量に対応する幅に等しくなる。
【0025】
図2は、2パス記録の様子を模式的に示した図であり、4つの同一領域に相当する第1記録領域から第4記録領域に対して記録する場合の記録ヘッド5004と記録領域との相対的な位置関係を示している。この図2では、図1(C)に示される記録ヘッド5004のうちのある色の1つのノズル列(1つの記録素子群)51だけを示している。そして、以下では、ノズル列(記録素子群)51を構成する複数のノズル(記録素子)のうち、搬送方向上流側に位置するノズル群を上流側ノズル群51Aと称し、搬送方向下流側に位置するノズル群を下流側ノズル群51Bと称する。また、各同一領域(各記録領域)の副走査方向(搬送方向)における幅は、記録ヘッドの複数の記録素子の配列範囲の幅(1280ノズル幅)の約半分に相当する幅(640ノズル幅)に等しい。
【0026】
第1走査では、上流側ノズル群51Aを用いて第1記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録する。この上流側ノズル群51Aによって記録される画像データは、個々の画素について、オリジナル画像データ(第1記録領域に最終的に記録すべき画像に対応した多値の画像データ)の階調値が約1/2に低減されたものとなっている。このような第1走査での記録終了後、Y方向に沿って640ノズル分の距離だけ記録媒体を搬送する。
【0027】
次いで、第2走査では、上流側ノズル群51Aを用いて第2記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録すると共に、下流側ノズル群51Bを用いて第1記録領域に記録されるべき画像を完成させる。この下流側ノズル群51Bによって記録される画像データついても、オリジナル画像データ(第1記録領域に最終的に記録すべき画像に対応した多値の画像データ)の階調値が約1/2に低減されたものとなっている。これにより、第1記録領域には、階調値が約1/2に低減された画像データが2回記録されることになるので、オリジナル画像データの階調値が保存される。このような第2走査での記録終了後、記録媒体をY方向に640ノズル分の距離だけ搬送する。
【0028】
次いで、第3走査では、上流側ノズル群51Aを用いて第3記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録すると共に、下流側ノズル群51Bを用いて第2記録領域に記録されるべき画像を完成させる。この後、記録媒体をY方向に640ノズル分の距離だけ搬送する。最後に、第4走査では、上流側ノズル群51Aを用いて第4記録領域に記録されるべき画像の一部だけを記録すると共に、下流側ノズル群51Bを用いて第3記録領域に記録されるべき画像を完成させる。この後、記録媒体をY方向に640ノズル分の距離だけ搬送する。他の記録領域に対しても同様な記録動作を行っていく。以上のような記録主走査と搬送動作とを繰り返すことにより、各記録領域に対して2パス記録が行われる。
【0029】
<制御部電気仕様概要>
図3は、図1のPDプリンタ1000の制御に係る主要部の構成を示すブロック図である。図3において、前述の図面と共通する部分は同じ記号を付与して、それらの説明は省略する。以下の説明から明らかとなるように、PDプリンタ1000は画像処理装置として機能する。
【0030】
図3において、3000は制御部(制御基板)を示し、3001は画像処理ASIC(専用カスタムLSI)を示している。3002はDSP(デジタル信号処理プロセッサ)で、内部にCPUを有し、後述する各種制御処理及び図5に示されるような各種画像処理等を担当している。3003はメモリで、DSP3002のCPUの制御プログラムを記憶するプログラムメモリ3003a、及び実行時のプログラムを記憶するRAMエリア、画像データなどを記憶するワークメモリとして機能するメモリエリアを有している。3004はプリンタエンジンで、ここでは、複数色のカラーインクを用いてカラー画像を印刷するインクジェットプリンタのプリンタエンジンが搭載されている。3005はデジタルカメラ(DSC)3012を接続するためのポートとしてのUSBコネクタである。3006はビューワ1011を接続するためのコネクタである。3008はUSBハブ(USB HUB)で、PDプリンタ1000がPC3010からの画像データに基づいて印刷を行う際には、PC3010からのデータをそのままスルーし、USB3021を介してプリンタエンジン3004に出力する。これにより、接続されているPC3010は、プリンタエンジン3004と直接、データや信号のやり取りを行って印刷を実行することができる(一般的なPCプリンタとして機能する)。3009は電源コネクタで、電源3019により、商用ACから変換された直流電圧を入力している。PC3010は一般的なパーソナルコンピュータ、3011は前述したメモリカード(PCカード)、3012はデジタルカメラ(DSC)である。なお、この制御部3000とプリンタエンジン3004との間の信号のやり取りは、前述したUSB3021又はIEEE1284バス3022を介して行われる。
【0031】
(第1の実施形態)
図4は、図1のPDプリンタ1000におけるデータ処理の概略を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、操作パネル1010を介してユーザからの画像出力の指示を受け付けたことをトリガとして開始される。まず、ステップS1において、操作パネル1010を介してユーザにより設定された印刷に関する条件(ここでは、記録媒体の種類と印刷品位)を示す情報を取得する。次いで、ステップS2において、ステップS1において取得した記録媒体の種類を示す情報と印刷品位を示す情報に基づいて、記録モードのパス数(M)を判定する。詳しくは、図13(a)のルックアップテーブルを参照してパス数を判定する。例えば、記録媒体の種類が「普通紙」で且つ印刷品位が「はやい」であれば、2パスモードと判定される。また、記録媒体の種類が「普通紙」で且つ印刷品位が「きれい」であれば、4パスモードと判定される。
【0032】
次に、ステップS3において、ステップS2において判定されたパス数(M)が閾値(L)以上か否かを判定する。ステップS3においてパス数(M)が閾値(L)以上であると判定されたらステップS5へ進み、一方、ステップS3においてパス数(M)が閾値(L)未満であると判定されたらステップS4へ進む。本実施形態では、Lは4に設定されている。従って、2パスモードの場合にはステップS4へ進み、4パスモードおよび8パスモードの場合にはステップS5へ進む。
【0033】
ステップS4では第1の処理モードを行う。第1の処理モードの詳細については図5〜図8を用いて後述するが、簡単に言えば、多値画像データをマルチパスの回数に関連付けられた複数の多値データに分割する処理(第1の分割処理)と、これら複数の多値データをそれぞれ量子化する処理(第1の量子化処理)と、を含む画像処理を行うためのモードである。一方、ステップS5では第2の処理モードを行う。第2の処理モードの詳細については図9〜図11を用いて後述するが、簡単に言えば、多値画像データを量子化して量子化データを生成する処理(第2の量子化処理)と、この量子化データをマスクによってマルチパスの回数に対応する量子化データに分割する処理(第2の分割処理)と、を含む画像処理を行うためのモードである。このようにして、記録モードのパス数に応じた画像処理モード(第1の処理モードあるいは第2の処理モード)が実行される。
【0034】
ここで、記録パス数が少ない記録モードでは第1の処理モードを採用し、記録パス数が多い記録モードでは第2の処理モードを採用した理由について説明する。
【0035】
後述から明らかなように、この第1の処理モードによれば、記録媒体の搬送誤差の有無に関わらず、異なるパスで記録されるドット同士がある程度重なるような処理がされる。このため、搬送誤差によって異なるパスで記録されるドット同士にずれが生じたとしても、このズレに伴うドット被覆率の変動を小さく抑えることができる。特に、記録パス数が少ない場合は、記録パス数が多い場合に比べて、走査間に介在する1回あたりの記録媒体の搬送の量が大きくなる傾向にあり、それだけ搬送誤差が大きいため、ドットずれに伴うドット被覆率の変動は大きい傾向にある。従って、記録パス数が少ない場合には、ドット被覆率の変動を小さく抑えることが可能な第1の処理モードを採用するのが有効である。但し、この第1の処理モードは、量子化処理の前に、多値画像データをマルチパスに関連付けられた複数の多値データに分割するため、複数の多値データに対して量子化処理を行う必要があり、量子化処理の負荷が結構高くなる。しかし、記録パス数(M)が比較的少ない場合には、その量子化処理の負荷も許容できる範囲におさまる。このような理由で、記録パス数が少ない記録モードでは第1の処理モードを採用しているのである。
【0036】
一方、この第2の処理モードは、量子化処理後の量子化データをマスクによってMパスに対応するM個の量子化データに分割するため、第1の処理モードよりも、量子化処理の負荷は小さい。従って、上述した通り、記録パス数(M)が多い場合に第1の処理モードを採用すると処理負荷の観点から好適ではないので、記録パス数(M)が多い場合には、処理負荷の小さい第2の処理モードを採用している。更に、記録パス数(M)が多い場合に第2の処理モードを採用するもう1つの理由がある。記録パス数が多い場合は、記録パス数が少ない場合に比べて、走査間に介在する1回あたりの記録媒体の搬送の量が小さく傾向にあり、それだけ搬送誤差が小さいため、ドットずれに伴うドット被覆率の変動は小さい傾向にある。従って、記録パス数が多い場合は、記録パス数が少ない場合に比べて、ドット被覆率の変動を小さく抑える必要性は少ない。むしろ、記録パス数が多い場合は、異なるパスで記録されるドット同士の重なりを少なくして、ドット重なりによって生じる粒状性を低下させる方が好ましい。第2の処理モードでは、分割処理に使用するマスクもよるが、基本的には、記録許容画素の位置が互いに補完の関係となっているマスクを用いるので、デジタルデータ上ではドット重なりが生じないし、紙面上でもドット重複部分は少ない。従って、第2の処理モードは、第1の処理モードよりも、粒状性を低く抑えることができる。このような理由からも、記録パス数(M)が多い場合に第2の処理モードを採用するようにしている。
【0037】
以上のように本実施形態では、記録モードの記録パス数(M)に起因して変わるドット被覆率の変動度および量子化処理の負荷、更には粒状性の観点から、パス数に応じた画像処理モード(第1の処理モード、第2の処理モード)を対応付けている。
【0038】
図5は、図4のステップS4で実行される第1の処理モードにおけるデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。ここでは、2パスモードのデータ処理を行う場合を例に挙げて説明する。図5の多値画像データ入力部401、色変換処理部402、色分解処理部403、階調補正処理部404、画像データ分割部405、量子化部406、量子化データ合成部407は、およびプリントバッファ408は、図3の制御部3000に備えられている。以下では、図5を用いて、RGBの入力画像データから2パス分の2値データを生成するまでの処理の流れについて説明する。
【0039】
多値画像データ入力部401は、デジタルカメラ3012やPC3010などの外部機器によって得られたRGB画像データを入力する。このRGB画像データは、色変換処理部402によって、プリンタの色再現域に依存するデバイスRGB画像データに変換される。デバイスRGB画像データは、色分解処理部403によって、プリンタで使用されるインク色に対応した多値(本例では256値)の画像データに変換される。本実施形態のプリンタはC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色インクを用いる構成である。従って、デバイスRGB画像データ(R’G’B’)は、CMYKインクに対応する多値データ(C1、M1、Y1、K1)に変換されることになる。なお、色分解処理部403では、デバイスRGB画像データの各入力値(R’G’B入力値)とインク色に対応した多値画像データの各出力値(C1、M1、Y1、K1出力値)との対応関係を示した三次元ルックアップテーブル(LUT)が使用される。この際、テーブル格子点値から外れる入力値については、その周囲のテーブル格子点の出力値から補間によって出力値を算出する。なお、色分解処理部403で利用可能な三次元LUTは予め複数種類用意されており、記録媒体の種類と記録モードのパス数に応じて選択された1つの三次元LUTが利用されることになる。
【0040】
次に、階調補正処理部404によって階調補正処理が行われるが、この階調補正処理以降の処理はCMYKについて同様に行われるので、以下では代表してブラック(K)のデータ処理について説明する。階調補正処理部404には、色分解処理部403によって生成された多値データK1が入力される。階調補正処理部404は、この多値データK1に対して階調補正を施すことで階調補正済みの多値データK2を生成する。この階調補正済みの多値データK2は画像データ分割部405に入力される。
【0041】
画像データ分割部405は、階調補正済みの多値データK2を、第1走査のみに対応する第1走査多値データ502、第2走査にのみに対応する第2走査多値データ504および第1走査と第2走査に共通する第1・第2走査共通多値データ503に分割する。そして、これら第1走査多値データ502、第1・第2走査共通多値データ503および第2走査多値データ504は、量子化部406に入力される。
【0042】
量子化部406は、第1走査多値データ502、第1・第2走査共通多値データ503および第2走査多値データ504に対して量子化処理(本実施形態では2値化処理)を行う。これにより、第1走査多値データ502が量子化された第1走査量子化データ505、第1・第2走査共通多値データ503が量子化された第1・第2走査共通量子化データ506、および、第2走査多値データ504が量子化された第2走査量子化データ507が生成される。
【0043】
本実施形態では、量子化処理として、排他的誤差拡散法による2値化処理を実行する。この排他的誤差拡散法の詳細については後述するが、概略、次のような処理である。すなわち、3つのプレ−ンに対応する第1〜第3の量子化データ(第1の量子化データとしての第1走査量子化データ、第2の量子化データとしての第2走査量子化データ、および第3の量子化データとしての第1・第2走査共通量子化データ)のそれぞれに基づき決定される記録画素(ドットが記録されることになる画素)が互いに排他的となるように、第1走査多値データ、第1・第2走査共通多値データおよび第2走査多値データに対して誤差拡散を行う処理である。要するに、第1走査量子化データ505に基づき決定される記録画素の位置と、第1・第2走査共通量子化データ506に基づき決定される記録画素の位置と、第2走査量子化データ507に基づき決定される記録画素の位置とが、記録媒体上で互い重ならないように、量子化結果を制御するのである。これにより、第1・第2走査共通量子化データに基づき決定される記録画素の量、言い換えれば、第1走査と第2走査で共にドットが記録されることになる画素の量を制御することができる。
【0044】
量子化部406によって生成された第1走査量子化データ505、第1・第2走査共通量子化データ506、第2査量子化データ507は、量子化データ合成部407に入力される。具合的には、第1走査量子化データ505および第1・第2走査共通量子化データ506が第1量子化データ合成部407−1に入力され、第2走査量子化データ507および第1・第2走査共通量子化データ506が第2量子化データ合成部407−2に入力される。第1量子化データ合成部407−1は、第1走査量子化データ505と第1・第2走査共通量子化データ506との合成処理(本例では、論理和)によって、第1走査合成量子化データ508を生成する。一方、第2量子化データ合成部407−2は、第2走査量子化データ507と第1・第2走査共通量子化データ506との合成処理(本例では、論理和)によって、第2走査合成量子化データ509を生成する。
【0045】
量子化データ合成部407によって生成された第1走査合成量子化データ508および第2走査合成量子化データ509はプリントバッファ408に転送される。そして、第1走査合成量子化データ508は第1走査用バッファ408−1に格納され、第2走査合成量子化データ509は第2走査用バッファ409−1に格納される。
【0046】
そして、第1走査用バッファに格納された第1走査合成量子化データは第1走査の際に読み出されて記録ヘッド5004に転送され、第1走査合成量子化データに基づくドット記録が第1走査において実行される。同様に、第2走査用バッファに格納された第2走査合成量子化データは第2走査の際に読み出されて記録ヘッド5004に転送され、第2走査合成量子化データに基づくドット記録が第2走査において実行される。これにより、同一領域に対して記録すべき画像を2回の走査で完成させる。
【0047】
次に、以上のような画像データ分割処理(405)、量子化処理(406)、量子化データ合成処理(407)について、図6を参照しながら説明する。図6は、図5に示した画像処理(画像データ分割処理→量子化処理→量子化データ合成処理)を模式的に表した図である。ここでは、4画素(副走査方向)×6画素(主走査方向)の計24画素に対応した多値画像データ501を処理する場合について説明する。この多値画像データ501は、図5の画像データ分割部405に入力された階調補正済みの多値データK2に相当するものである。
【0048】
まず、画像データ分割部405は、多値画像データ501を画素毎に3分割して、第1走査多値データ502、第2走査多値データ504および第1・第2走査共通多値データ503を生成する。この際、多値画像データ501の値をA、第1走査多値データ502の値をX、第2走査多値データ504の値をY、第1・第2走査共通多値データ503の値をZとした場合に、X+Y+2Z=Aを満たし且つXとYとZがほぼ同じ値となるように分割処理を行う。そのために本実施形態では、XYZの値が多値画像データの値「A」の約1/4(25%)となるように、上記分割処理を行う。より具体的には、「A」を4で除算したときの商αと余りβ(0〜3)を求め、この商αと余りβから下記のようにXYZを決定する。
・β=0の場合 → X=Y=Z=α
・β=1の場合 → X−1=Y=Z=α
・β=2の場合 → X−1=Y−1=Z=α
・β=3の場合 → X−1=Y=Z−1=α
このようにして決定されたX、Y、Zが、それぞれ、図6に示される第1走査多値データ502の値、第2走査多値データ504の値、第1・第2走査共通多値データ503の値となる。例えば、多値画像データの値Aが「160」の場合にはα=40、β=0となるので、X=Y=Z=α=40となる。なお、多値画像データ501は256値のデータであり、Aの値は0〜255のいずれかとなっている。
【0049】
次いで、量子化部406は、第1走査多値データ502、第1・第2走査共通多値データ503および第2走査多値データ504に対して排他的誤差拡散処理を行う。この誤差拡散処理で使用される閾値は「128」である。また、誤差拡散処理を行う際の周囲画素に対する誤差分配係数を示す誤差分配マトリクスとしては、図7(A)に示すフロイドの誤差分配マトリックスを用いる。第1走査量子化データ505は、第1走査多値データ502を量子化して得られた2値データであり、「1」はドットが記録される画素、「0」はドットが記録されない画素を示している。同様に、第1・第2走査共通量子化データ506は第1・第2走査共通多値データ503を量子化して得られた2値データであり、第2走査量子化データ507は第2走査多値データ504を量子化して得られた2値データである。図6から明らかなように、これら2値の量子化データ505〜507の夫々によって定められる記録画素の位置は互いに重ならないようになっている。このように本実施形態では、2値の量子化データ505〜507によって定められる記録画素の位置が互いに排他的となるように、3つのプレーンの多値データ502〜504に対して誤差拡散処理を行う。以下、図8を参照して、排他的誤差拡散処理について説明する。
【0050】
図8は、排他的誤差拡散処理を説明するためのフローチャートである。まず、図中の記号について説明する。XYZは、上述した通り、量子化部406に入力される3つのプレーンの多値データ(502、504、503)の値であり、0〜255の値を有している。Xerr、YerrおよびZerrは、既に量子化処理(2値化処理)が終了した周辺の画素から発生した累積誤差値である。なお、本例では、量子化処理によって発生した誤差がプレーン毎に保存されるようにするべく、各プレーンにて発生した量子化処理誤差を自プレーン内の周辺画素に分配するようにしている。Xt、YtおよびZtは、多値データの値(X、Y、Z)と累積誤差値(Xerr、Yerr、Zerr)との合計値である。X´、Y´およびZ´は、量子化処理(2値化処理)の結果である量子化データ(505、507、506)の値である。X´err、Y´errおよびZ´errは、着目画素における量子化処理によって生じた誤差値である。
【0051】
本処理が開始されると、まず、ステップS1にて、着目画素についてXt、YtおよびZtを算出する。次いで、ステップS2にて、Xt、YtおよびZtを加算して得られる加算値(Xt+Yt+Zt)が閾値(128)以上であるか否かを判定する。加算値が閾値未満と判定された場合にはステップS3へ進み、着目画素がいずれの走査でも記録されないようにするべく、2値化結果をX´=Y´=Z´=0に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、ステップS10へ進む。
【0052】
一方、ステップS2にて、加算値が閾値以上であると判定された場合にはステップS4に進み、着目画素を記録画素に設定するためのプレーンを決定するべく、Xt、Yt、Ztの中から最大値のパラメータを1つ特定する。ただし、最大値のパラメータが2つ以上ある場合には、優先順位をZt、Xt、Ytの順として1つのパラメータを特定する。なお、優先順位はこれに限られるものではなく、XtやYtを第1優先としてもよい。
【0053】
次いで、ステップ5では、ステップS4にて特定されたパラメータがXtであるか否かを判定する。Xtであると判定された場合にはステップS6へ進み、着目画素が第1走査でのみ記録されるようにするべく、2値化結果をX´=1、Y´=0、Z´=0に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt−255、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS10へ進む。一方、ステップ5においてXtではないと判定された場合にはステップS7へ進み、ステップS4にて特定されたパラメータがYtであるか否かを判定する。Ytであると判定された場合にはステップS8へ進み、着目画素が第2走査でのみ記録されるようにするべく、2値化結果をX´=0、Y´=1、Z´=0に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt−255、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS10へ進む。ステップS7においてYtではないと判定された場合にはステップS9へ進み、着目画素が第1走査と第2走査の両方で記録されるようにするべく、2値化結果をX´=0、Y´=0、Z´=1に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Zt−255として保存し、その後、ステップS10へ進む。
【0054】
ステップS10では、ステップS3、S6,S8あるいはS9にて保存されたX´err、Y´err、Z´errを、それぞれ、図7(A)の誤差分配マトリクスに従って、自プレーンの周辺画素に分配する。こうして、着目画素に対する量子化処理を終了しステップS11へ進む。ステップS11では、全画素について量子化処理が終了したか否かを判定し、全画素について終了していなければステップS1へ戻り、次の着目画素について上記と同様に処理し、全画素について終了していれば排他的誤差拡散処理を終了する。ステップS1において使用される累積誤差値(例えば、Xerr)は、ステップS10において1つあるいは複数の画素から分配される量子化誤差(例えば、X´err)の累積値である。
【0055】
以上の排他的誤差拡散処理によって、図6に示されるように記録画素の位置が互いに重ならない3プレーンの量子化データ(第1走査量子化データ505(X´)、第1・第2走査共通量子化データ506(Y´)、第2走査量子化データ507(Z´))が生成される。
【0056】
再び、図6に戻る。第1走査量子化データ505と第1・第2走査共通量子化データ506は、第1量子化データ合成部407−1によって合成処理(本例では、論理和)され、2値の第1走査合成量子化データ508が生成される。この第1走査合成量子化データ508において、「1」が付されている画素が第1走査において記録対象となる画素であり、「0」が付されている画素が第1走査において記録対象とならない画素である。また、斜線が施されている画素が第1走査と第2走査で共通して記録対象となる画素である。同様に、第2走査量子化データ507と第1・第2走査共通量子化データ506は、第2量子化データ合成部407−2によって合成処理(本例では、論理和)され、2値の第2走査合成量子化データ509が生成される。この第1走査合成量子化データ509において、「1」が付されている画素が第2走査において記録対象となる画素であり、「0」が付されている画素が第2走査において記録対象とならない画素である。また、斜線が施されている画素が第1走査と第2走査で共通して記録対象となる画素である。
【0057】
なお、上記では、X+Y+2Z=Aを満たし且つXとYとZがほぼ同じ値となるように分割処理を行っているが、これに限られるものではない。X+Y+2Z=Aを満たせば、分割処理前後での多値データの値を変えずに済むため、画像の濃度保存性は極めて優れたものになるが、X+Y+2Z=Aを満さずとも、X+Y+2Zの値が概ねAの値になれば画像濃度の保存性を十分に確保することができる。また、上記の処理を実行すると、多値画像データ501の値が最高濃度値を示す値(255)であっても、図16(A)に示されるようにドットが記録されない画素が生じる。図16(A)のようなドット配置の場合、図16(B)のような100%ベタ画像のドット配置に比べて、画像濃度が低くなる。図16(A)のようなドット配置でも画像濃度は十分だが、より高濃度を実現したい場合には、X+Y+2Zの合計値がAの値以上となるように、X、YおよびZの値を設定することも可能である。
【0058】
以上のように第1の処理モードによれば、複数回の走査で共にドットが記録される画素を発生させることができるため、記録媒体の搬送誤差やキャリッジの移動誤差等により生じるドット被覆率の変動(画像濃度変動)を抑制することができる。また、複数回の走査に共通に対応する多値データを量子化することで、複数回の走査で共にドットが記録される画素(重なりドット)の量を制御しているため、重なりドットの量の多過ぎによる粒状性の悪化を抑制することができる。これにより、画像の濃度変動を抑制しつつも粒状性を低く抑えることができる。
【0059】
また、この第1の処理モードは、量子化処理の前に、多値画像データをマルチパス数に関連付けられた複数の多値データに分割するため、複数の多値データに対して量子化処理を行う必要があり、量子化処理の負荷が結構高くなる。しかし、本実施形態では、記録パス数(M)が少ない場合に第1の処理モードの採用しているので、その量子化処理の負荷も許容できる範囲内である。
【0060】
次に、第2の処理モードについて説明する。図9は、図4のステップS5で実行される第2の処理モードにおけるデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。ここでは、4パスモードのデータ処理を行う場合を例に挙げて説明する。
【0061】
図9に示される処理ブロックのうち、多値画像データ入力部401、色変換処理部402、色分解処理部403、階調補正処理部404およびプリントバッファ408は、図5と同じ構成である。一方、図9における画像データ分割部415および量子化部416は、図5における量子化部406および画像データ分割部405および量子化部406とは異なる構成となっている。なお、画像データ分割部415および量子化部416は、図3の制御部3000に備えられている。以下では、図9を用いて、RGBの入力画像データから4パス分の2値データを生成するまでの処理の流れについて説明する。
【0062】
多値画像データ入力部401、色変換処理部402、色分解処理部403および階調補正処理部404の処理は図5と同じである。従って、階調補正処理部404から出力された階調補正済みの多値データK2が量子化部416に入力されることになる。なお、図5と同様、図9の処理についてもCMYKで同じ処理がなされるので、ここでは、代表してKデータの処理について説明し、その他の色については説明を省略する。
【0063】
量子化部416は、入力された多値データに対して誤差拡散法による量子化処理(2値化処理)を行う。この誤差拡散処理で使用される閾値は「128」である。また、誤差拡散処理を行う際の周囲画素に対する誤差分配係数を示す誤差分配マトリクスとしては、図7(A)に示すフロイドの誤差分配マトリックスを用いる。量子化部416によって生成された2値の量子化データは画像データ分割部415に入力される。
【0064】
画像データ分割部415は、2値の量子化データを図10に示される4パス用のマスクデータによって間引くことにより、上記2値の量子化データを4回の走査夫々に対応する2値の分割量子化データに分割する。図10は、4パスのマルチパス記録で使用可能なマスクデータの一例を示した模式図である。ここで、黒で示した領域は記録許容画素(1)、白で示した領域は非記録許容画素(0)を示している。631は1パス目の走査で使用するマスク、632は2パス目の走査で使用するマスク、633は3パス目の走査で使用するマスク、634は4パス目の走査で使用するマスクをそれぞれ示している。また、4枚のマスク631〜634は記録許容画素の位置が互いに補完の関係となっている。このような4枚のマスクデータと2値の量子化データとの間で論理積演算を行うことにより、上記2値の量子化データが第1走査、第2走査、第3走査および第4走査のそれぞれに対応した2値の分割量子化データに分割される。
【0065】
その後、これら第1〜第4の走査に対応する4つのプレーンの2値の分割量子化データはプリントバッファ408に転送されて格納される。そして、プリントバッファ408に格納された2値の分割量子化データは記録ヘッドの走査の際に読み出され、この読み出されたデータに従って記録ヘッドが駆動され記録が行われる。
【0066】
次に、以上のような量子化処理(416)および画像データ分割処理(415)について、図11を参照しながら説明する。図11は、図10に示した画像処理(量子化処理→画像データ分割処理)を模式的に表した図である。ここでは、4画素(副走査方向)×4画素(主走査方向)の計16画素に対応した多値画像データ711を処理する場合について説明する。この多値画像データ711は、図9の量子化部416に入力された階調補正済みの多値データK2に相当するものである。
【0067】
量子化部416では、多値データ711に対して、図7(A)の誤差分配マトリックスと量子化閾値(128)を用いた誤差拡散方法によって2値化処理を行う。これにより、4画素×4画素の領域に対応する2値の量子化データ712が生成される。
【0068】
次いで、画像データ分割部415は、2値の量子化データ721を、図10のマスク631〜634を用いて、1パス〜4パス目用の2値の分割量子化データ713〜716に分割する。詳しくは、2値データ712とマスク631との論理積によって、1パス目用の2値データ713が生成される。また、2値データ712とマスク632との論理積によって、2パス目用の2値データ714が生成される。同様に、2値データ712とマスク633との論理積によって3パス目用の2値データ715が生成され、2値データ712とマスク634との論理積によって4パス目用の2値データ716が生成される。そして、これら各走査の2値データ713〜716をみれば明らかなように、異なる走査で記録されるドット同士は同じ画素で重ならないようになっている。従って、ドット同士の重なりによる粒状感の増加は生じず、粒状感の少ない高品位な画像を得ることができる。
【0069】
なお、図4のステップS2において、記録媒体の種類が「光沢紙」で且つ印刷品位が「きれい」であれば、図13(a)に示されるように8パスモードと判定される。8パスモードの場合には、画像データ分割部415において、図14に示されるような8パス用のマスクを用いてデータ分割を行う。それ以外は4パスモードと同じである。
【0070】
以上のように第2の処理モードによれば、複数回の走査で共にドットが記録される画素が発生しないので、異なる走査で記録されるドット同士が重なる割合が低い。そのため、粒状性を低く抑えることができる。また、ドット重なり率が低いということはドット被覆率が高いということを意味しているので、高ドット被覆率に起因した高い濃度を実現できる。また、この第2の処理モードは、量子化処理の後に、多値画像データをMパスに対応するM個の多値データに分割するため、量子化処理の負荷は比較的低い。
【0071】
以上の説明したように本実施形態によれば、記録モードの記録パス数(M)に起因して変わるドット被覆率の変動度および量子化処理の負荷、更には粒状性を考慮して、パス数に適した画像処理を行うことができる。
【0072】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、上記第1の処理モードにおいて実行される量子化処理として、上記第1の実施形態で採用した排他的誤差拡散処理に代えて、図7(A)〜(C)に示した誤差分配マトリックスを用いた誤差拡散処理を行う点を特徴としている。これ以外の点(パス数の判定基準や第2の処理モード等)については第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0073】
図5の量子化部406には、画像データ分割部405に生成された第1走査多値データ502、第1・第2走査共通多値データ503および第2走査多値データ504が入力される。量子化部406は、第1走査多値データ502に対して2値の誤差拡散処理を行うことで、第1走査量子化データ505を生成する。この際、閾値として「128」を用い、誤差分配マトリクスとして図7(B)に示される誤差分配マトリクスを用いる。また、量子化部406は、第1・第2走査共通多値データ503に対して2値の誤差拡散処理を行うことで、第1・第2走査共通量子化データ506を生成する。この際、閾値として「128」を用い、誤差分配マトリクスとして図7(A)に示される誤差分配マトリクスを用いる。さらに、第2走査多値データ504に対して2値の誤差拡散処理を行うことで、第2走査量子化データ507を生成する。この際、閾値として「128」を用い、誤差分配マトリクスとして図7(C)に示される誤差分配マトリクスを用いる。
【0074】
このように3つのプレーン間で異なる誤差分配マトリクスを用いることで、3つのプレーンの量子化結果(量子化データ505〜507によって定められる記録画素の位置)が異なせることができる。これにより、第1走査と第2走査で共に記録される画素(重なりドット)を発生させつつも、第1走査のみで記録される画素および第2走査のみで記録される画素も発生させることができる。仮に、3つのプレーン間で同じ誤差分配マトリクスを用いたとすると、3つのプレーンの量子化結果がかなり類似してしまう。すると、第1走査で記録される画素と第2走査で記録される画素とがほぼ同じになり、最高濃度の画像を記録する場合であっても、その記録画素の殆ど全てでドットが重なる半面、半分の画素にはドットが記録されず白地が多くなる。このような場合、入力値に対する出力画像濃度が保存されにくい。しかし、本実施形態では、上述の通り、3つのプレーンの量子化結果が異なり、第1走査と第2走査で共に記録される画素のみならず、第1走査のみで記録される画素も第2走査のみで記録される画素も発生するため、出力画像濃度の保存性もある程度確保できる。
【0075】
ところで、本実施形態の処理によって生成された2値の量子化データ505〜507にそれぞれによって定められる記録画素(「1」が割り当てられる画素)の位置は完全排他の関係にないため、記録画素の位置が重なる可能性もある。例えば、ある画素についての2値化結果が、量子化データ505および量子化データ506で共に「1」となる場合がある。従って、その後の合成処理として、上記第1の実施形態と同じように論理和処理を適用すると、量子化データ505〜507によって定められる記録画素の数よりも、合成処理後の記録画素の数が少なくなってしまう。すると、入力値に対する出力画像の濃度保存性が低下してしまう。この濃度低下が許容できる場合には、合成処理として論理和処理を適用可能である。一方、上記のような濃度低下が許容できない場合には、量子化データの値(「1」か「0」)を画素毎に加算し、その加算値が合成量子化データの値となるように、上記合成処理を実行すればよい。例えば、ある画素Aについて、量子化データ505および量子化データ506の値が共に「1」の場合には、第1走査合成量子化データ508の値を2(=1+1)とする。そして、このような加算値(0、1、2)に従った数のドットを各走査で記録する。こうすることで、入力値に対する出力画像の濃度保存性を低下させずに済む。
【0076】
以上説明したような本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、第1走査と第2走査で共に記録される画素(重なりドット)の量を制御することができるので、上述したような画像濃度変動と粒状性悪化を共に抑制することができる。これに加えて、本実施形態では、3つのプレーンの誤差拡散処理を独立に行っているので、第1の実施形態のような排他的誤差拡散処理を行う場合に比べて、処理速度を向上させることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、3プレーンの量子化結果を異ならせるために、プレーン間で用いる誤差分配マトリックスを異ならせる場合について説明した。しかし、本実施形態はこれに限られるものではなく、例えば、プレーン間で用いる誤差分配マトリックスは同一とし、その代りに、プレーン間で用いる閾値を異ならせるようにしてもよい。また、誤差分配マトリックスと閾値の組合せをプレーン間で異ならせるようにしてもよい。
【0078】
(第3の実施形態)
上記第1〜第2の実施形態では、量子化処理として2値化処理を行っていたが、この第3の実施形態では、量子化処理として3値化処理を行う点を特徴とする。これ以外の点については上記実施形態と同様であるため説明を省略する。ここでは、第1の実施形態の2値化処理を3値化処理に置き換えた場合について説明するが、第2の実施形態の2値化処理を3値化処理に置き換えてもよい。
【0079】
まず、第2の処理モードについて説明する。図9の量子化部416では、誤差拡散法による3値化処理を行うために、2つの閾値(85、170)と図7(A)の誤差分配マトリクスを用いる。こうして量子化部416において3値化処理が行われ、3値の量子化データが生成される。その後、この3値の量子化データは、不図示のドットパターン変換処理部に入力される。ドットパターン変換処理部では、特開2001−054956号公報に記載されるように、周知の方法に従って、3値の量子化データがドットパターンに変換されて2値データが生成される。こうして生成された2値データが画像データ分割部415に入力され、以降、第1の実施形態と同じ処理がなされる。
【0080】
次に、第1の処理モード似ついて説明する。ここでは、3値に量子化された量子化データ505〜507の夫々によって定められる記録画素の位置が互いに重ならないように、多値データ502〜504に対して3値の排他的誤差拡散処理を行う。
【0081】
図12は、3値の排他的誤差拡散処理を説明するためのフローチャートである。図12の記号(Xt、Xerr、X´等)の意味は、図8の記号の意味と同じである。本実施形態では、閾値として、第1の閾値(170)と第2の閾値(85)を用いる。また、3値化処理の結果であるX´、Y´、およびZ´の値は「0」、「1」、「2」のいずれかとなる。ここで、「0」はドットを記録しないことを示し、「1」は1つのドットを記録することを示し、「2」は2つのドットを記録することを示す。
【0082】
本処理が開始されると、まず、ステップS1にて、着目画素についてXt、YtおよびZtを算出する。次いで、ステップS2にて、Xt、YtおよびZtを加算して得られる加算値At(=Xt+Yt+Zt)を取得する。次いで、ステップS3において、加算値Atが第1の閾値(170)以上であるか、加算値Atが第1の閾値未満且つ第2の閾値(85)以上であるか、加算値Atが第2の閾値未満であるかを判定する。
【0083】
ステップS3において加算値Atが第2閾値(85)未満と判定された場合にはステップS16へ進み、着目画素がいずれの走査でも記録されないようにするべく、3値化結果をX´=Y´=Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、ステップS17へ進む。
【0084】
一方、ステップS3において加算値Atが第1閾値(170)以上であると判定された場合にはステップS4に進み、着目画素を記録画素(「1」)に設定するためのプレーンを決定するべく、Xt、Yt、Ztの中から最大値のパラメータを1つ特定する。ただし、最大値のパラメータが2つ以上ある場合には、優先順位をZt、Xt、Ytの順として1つのパラメータを特定する。なお、優先順位はこれに限られるものではなく、XtやYtを第1優先としてもよい。次いで、ステップ5では、ステップS4にて特定された最大のパラメータがXtであるか否かを判定する。Xtであると判定された場合にはステップS6へ進み、着目画素に第1走査で2つのドットが記録されるようにするべく、3値化結果をX´=2、Y´=0、Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt−255、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS17へ進む。一方、ステップ5においてXtではないと判定された場合にはステップS7へ進み、ステップS4にて特定された最大のパラメータがYtであるか否かを判定する。Ytであると判定された場合にはステップS8へ進み、着目画素に第2走査で2つのドットが記録されるようにするべく、3値化結果をX´=0、Y´=2、Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt−255、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS17へ進む。ステップS7においてYtではないと判定された場合にはステップS9へ進み、着目画素に第1走査と第2走査の両方で2ドットづつ記録されるようにするべく、2値化結果をX´=0、Y´=0、Z´=2に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Zt−255として保存し、その後、ステップS17へ進む。
【0085】
一方、ステップS3において加算値Atが第1の閾値(170)未満且つ第2の閾値(85)以上であると判定された場合にはステップS10に進む。そして、ステップS10において、着目画素を記録画素(「2」)に設定するためのプレーンを決定するべく、ステップS4と同様のルールに従って、Xt、Yt、Ztの中から最大値のパラメータを1つ特定する。次いで、ステップ11では、ステップS10にて特定された最大のパラメータがXtであるか否かを判定する。Xtであると判定された場合にはステップS12へ進み、着目画素に第1走査で1つのドットが記録されるようにするべく、3値化結果をX´=1、Y´=0、Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt−128、Y´err=Yt、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS17へ進む。一方、ステップ11においてXtではないと判定された場合にはステップS13へ進み、ステップS10にて特定された最大のパラメータがYtであるか否かを判定する。Ytであると判定された場合にはステップS14へ進み、着目画素に第2走査で1つのドットが記録されるようにするべく、3値化結果をX´=0、Y´=1、Z´=0に決定する。また、この3値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt−128、Z´err=Ztとして保存し、その後、ステップS17へ進む。ステップS13においてYtではないと判定された場合にはステップS15へ進み、着目画素に第1走査と第2走査の両方で1ドットづつ記録されるようにするべく、2値化結果をX´=0、Y´=0、Z´=1に決定する。また、この2値化処理によって発生した誤差を、X´err=Xt、Y´err=Yt、Z´err=Zt−128として保存し、その後、ステップS17へ進む。
【0086】
ステップS17では、ステップS6、S8、S9、S12、S14、S15あるいはS16にて保存されたX´err、Y´err、Z´errを、それぞれ、図7(A)の誤差分配マトリクスに従って、自プレーンの周辺画素に分配する。こうして、着目画素に対する量子化処理を終了しステップS18へ進む。ステップS18では、全画素について量子化処理が終了したか否かを判定し、全画素について終了していなければステップS1へ戻り、次の着目画素について上記と同様に処理し、全画素について終了していれば排他的誤差拡散処理を終了する。以上のような排他的誤差拡散処理によって、記録画素の位置が互いに重ならない3プレーンの量子化データ(第1走査量子化データ505(X´)、第1・第2走査共通量子化データ506(Y´)、第2走査量子化データ507(Z´))が生成される。
【0087】
以上のように本実施形態の第1の処理モードによれば、上述した実施形態で得られる効果に加え、階調表現にすぐれた画像を得ることができる。なお、画素領域に複数のドットを形成する場合、画素領域内の同じ位置に向けてインクを複数回吐出するようにしてもよいし、画素領域内の異なる位置に向けてインクを複数回吐出するようにしてもよい。
【0088】
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態では、第1の処理モードとして2パス記録を行う場合のデータ処理について説明したが、この第4の実施形態では、第1の処理モードとして3パス記録を行う場合のデータ処理について説明する。また、本実施形態では、図4のステップS2の判定処理で用いるテーブルとして、第1〜第3の実施形態で使用している図13(a)のテーブルに代えて、図13(b)のテーブルを用いる。これら以外の点については第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0089】
本実施形態では、図4のステップS2において、図13(b)のルックアップテーブルと、ステップS1において取得した記録媒体の種類を示す情報と印刷品位を示す情報に基づいて、記録モードのパス数(M)を判定する。図13(b)のテーブルから明らかなように、本実施形態では、2パスモードと3パスモードで第1の処理モードが実行され、4モードと8パスモードで第2の処理モードが実行されることになる。
【0090】
図15は、第1の処理モードとしての3パスモードを実行するためのデータ生成処理を行うための概略構成を示すブロック図である。この図15では、図5と異なる構成(画像データ分割部405、量子化部406、量子化データ合成部407)だけを示しており、図5と同じ構成(401〜404)については省略している。なお、第1の実施形態と同様、画像データ分割部405には、階調補正済みの多値データK2(多値画像データ501)が入力される。
【0091】
画像データ分割部405は、入力された多値画像データを、第1走査のみに対応する第1走査多値データ901、第2走査にのみに対応する第2走査多値データ902、第3走査にのみに対応する第3走査多値データ903、第1走査と第2走査に共通して対応する第1・第2走査共通多値データ904、第1走査と第3走査に共通して対応する第1・第3走査共通多値データ905、第2走査と第3走査に共通して対応する第2・第3走査共通多値データ906、および、第1走査と第2走査と第3走査の全てに共通して対応する第1・第2・第3走査共通多値データ907に分割する。
【0092】
次いで、量子化部406は、これら7つのプレーンの多値データ901〜907に、第1の実施形態で説明したような2値の排他的誤差拡散を行う。これにより、第1走査量子化データ911、第2走査量子化データ912、第3走査量子化データ913、第1・第2走査共通量子化データ914、第1・第3走査共通量子化データ915、第2・第3走査共通量子化データ916および第1・第2・第3走査共通量子化データ917が生成される。
【0093】
次いで、これら7つのプレーンの量子化データ911〜917が量子化データ合成部407に入力され、量子化データ911〜917は対応する相対走査毎に合成される。具合的には、第1走査量子化データ911、第1・第2走査共通量子化データ914、第1・第3走査共通量子化データ915および第1・第2・第3走査共通量子化データ917が第1量子化データ合成部407−1に入力される。そして、第1量子化データ合成部407−1は、量子化データ911、914、915、917を合成(本例では、論理和)して、第1走査合成量子化データ921を生成する。また、第2走査量子化データ912、第1・第2走査共通量子化データ914、第2・第3走査共通量子化データ916および第1・第2・第3走査共通量子化データ917が第2量子化データ合成部407−2に入力される。そして、第2量子化データ合成部407−2は、量子化データ912、914、916、917を合成して、第2走査合成量子化データ922を生成する。さらに、第3走査量子化データ913、第1・第3走査共通量子化データ915、第2・第3走査共通量子化データ916および第1・第2・第3走査共通量子化データ917が第3量子化データ合成部407−3に入力される。第3量子化データ合成部407−3は、量子化データ913、915、916、917を合成して、第3走査合成量子化データ923を生成する。以上の処理によって、3パス分の記録データを生成することが可能となる。
【0094】
なお、本実施形態の第1の処理モードでは、量子化処理として、第1の実施形態で説明したような排他的誤差拡散を適用したが、本実施形態で適用可能な量子化処理はこれに限られるものではい。例えば、第2の実施形態で説明したような独立誤差拡散処理を適用することもできる。また、本実施形態で適用可能な量子化処理は2値化処理に限られるものではなく、第4の実施形態で説明したような3値化処理あるいは4値以上の量子化処理であってもよい。
【0095】
また、本実施形態の第1の処理モードでは、第1、第2および第3の走査の全ての組み合わせについての共通多値データが生成されるように分割処理を行ったが、分割処理の方法はこれに限られるものではない。例えば、特定の走査(第1走査と第2走査)間でのみ重なりドットが発生するように共通多値データを生成してもよい。この場合、第1走査多値データ901、第2走査多値データ902、第3走査多値データ903に加え、共通多値データとして第1・第2走査共通多値データ904のみを生成し、第1・第3走査共通多値データ905、第2・第3走査共通多値データ906および第1・第2・第3走査共通多値データ907は生成しない。
【0096】
(その他の実施形態)
上記第1〜第4の実施形態では、パス数判定処理に用いる閾値(L)を4とし、4パス以上のマルチパス記録の場合には第2の処理モードを適用し、4パス未満(2パス、3パス)のマルチパス記録の場合には第1の処理モードを適用している。しかし、本発明で適用可能な閾値(L)は4に限られるものではない。例えば、Lを8に設定し、8パス以上の場合には第2の処理モードを適用し、8パス未満(2〜7パス)の場合には第1の処理モードを適用するようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、記録媒体に対する記録ヘッドの移動(相対走査)中に記録ヘッドからインクを吐出してマルチパス記録を行うシリアル方式の記録装置を用いる場合について説明したが、本発明で適用可能な記録装置はこれに限られるものではない。記録ヘッドに対する記録媒体の搬送(相対走査)中にインクを吐出してマルチパス記録を行うライン方式の記録装置も本発明において適用可能である。要するに、記録ヘッドと記録媒体との相対走査中にマルチパス記録を行う形態であれば本発明において適用可能である。
【0098】
また、上記実施形態では2値化処理あるいは3値化処理を例に挙げて説明したが、本発明で適用可能な量子化処理はこれに限られるものではなく、4値以上の量子化処理にも適用可能である。要するに、本発明では、N(Nは2以上の整数)値の量子化処理であれば適用可能である。
【0099】
上記実施形態では、CMYKの4色のインクを用いる形態について説明したが、使用可能なインク色の種類数はこれに限られるものではない。上記4色のインクに、淡シアン(Lc)や淡マゼンタインク(Lm)を加えたり、レッドインク(R)やブルーインク(B)等の特色インクを加えてもよい。また、上記実施形態では、複数色のインクが使用されるカラー記録モードを実行する場合について説明したが、本発明は単色インクが使用されるモノカラーモードにも適用可能である。更には、本発明は、カラープリンタのみならず、モノクロプリンタにも適用可能である。
【0100】
上記実施形態では、画像処理機能を有する制御部3000を備えた記録装置(画像形成装置)を例に、本発明の特徴的な画像処理を実行する画像処理装置を説明してきたが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。本発明の特徴的な画像処理が、プリンタドライバがインストールされたホスト装置(例えば、図3のPC3010)で実行される構成であっても構わない。このような場合、記録装置と接続されるホスト装置が、本発明の画像処理装置に該当する。
【0101】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0102】
405 画像データ分割部
406 量子化部
407 量子化データ合成部
408 プリントバッファ501
501 多値画像データ
502 第1走査多値データ
503 第1・第2走査共通多値データ
504 第2走査多値データ
505 第1走査量子化データ
506 第1・第2走査共通量子化データ
507 第2走査量子化データ
508 第1走査合成量子化データ
509 第2走査合成量子化データ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査によって前記記録媒体の画素領域に画像を記録するために、当該画素領域に記録すべき画像に対応した多値画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記画素領域に対する前記相対走査の回数に関する情報を取得するための取得手段と、
前記取得手段により取得された情報が示す回数が閾値未満の場合には第1の処理モードを選択し、前記情報が示す回数が閾値以上の場合には第2の処理モードを選択するための選択手段と、
前記選択手段により選択された処理モードを実行するための処理部とを備え、
前記第1の処理モードは、(A)前記多値画像データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する多値データおよび前記複数回の相対走査のうちの少なくとも2回の相対走査に共通に対応する多値データに分割するための第1の分割処理と、(B)前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれを量子化して、前記複数回の相対走査の各々に対応する量子化データおよび前記少なくとも2回の相対走査に共通に対応する量子化データを生成するための第1の量子化処理と、(C)前記第1の量子化処理によって生成された量子化データを対応する相対走査毎に合成して、前記複数回の相対走査の各々に対応した合成量子化データを生成するための合成処理と、を含む画像処理を行うためのモードであり、
前記第2の処理モードは、(D)前記多値画像データを量子化して量子化データを生成するための第2の量子化処理と、(E)前記第2の量子化処理によって生成された量子化データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割するための第2の分割処理と、を含む画像処理を行うためのモードである
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の量子化処理では、前記第1の量子化処理によって生成される量子化データのそれぞれに基づき定められる記録画素の位置が排他的となるように、前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれが誤差拡散法により量子化されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の量子化処理では、前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれが、異なる誤差分配マトリクスを用いた誤差拡散法により量子化されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2の分割処理では、前記第2の量子化処理によって生成された量子化データが、前記複数回の走査に対応した複数のマスクデータによって、前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査によって前記記録媒体の画素領域に画像を記録するために、当該画素領域に記録すべき画像に対応した多値画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記画素領域に対する前記相対走査の回数に関する情報を取得するための取得手段と、
前記取得手段により取得された情報が示す回数が閾値未満の場合には、前記多値画像データを前記相対走査に関連付けられた多値データに分割した後に、当該多値データを量子化するための第1の処理モードを選択し、前記情報が示す回数が閾値以上の場合には、前記多値画像データを量子化して量子化データを生成した後に、前記量子化データを前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割するための第2の処理モードを選択するための選択手段と、
前記選択手段により選択された処理モードを実行するための処理部とを備え、
前記第1の処理モードは、少なくとも、(A)前記多値画像データを、第1相対走査に対応する多値データ、第2相対走査に対応する多値データおよび前記第1相対走査と前記第2相対走査に共通に対応する多値データに分割するための分割処理と、(B)前記分割処理により得られた多値データのそれぞれを量子化して、第1、第2および第3の量子化データを生成するための量子化処理と、(C)前記第1の量子化データと前記第3の量子化データを合成して前記第1相対走査に対応した合成量子化データを生成すると共に、前記第2の量子化データと前記第3の量子化データを合成して前記第2相対走査に対応した合成量子化データを生成するための合成処理と、を含む画像処理を行うためのモードを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
前記量子化処理では、前記第1、第2、および第3の量子化データのそれぞれに基づき定められる記録画素の位置が排他的となるように、前記分割処理によって得られる多値データのそれぞれが誤差拡散法により量子化されることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査によって前記記録媒体の画素領域に画像を記録するために、当該画素領域に記録すべき画像に対応した多値画像データを処理するための画像処理方法であって、
前記画素領域に対する前記相対走査の回数に関する情報を取得するための取得工程と、
前記取得工程により取得された情報が示す回数が閾値未満の場合には第1の処理モードを選択し、前記情報が示す回数が閾値以上の場合には第2の処理モードを選択するための選択工程と、
前記選択工程により選択された処理モードを実行するための実行工程とを有し、
前記第1の処理モードは、(A)前記多値画像データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する多値データおよび前記複数回の相対走査のうちの少なくとも2回の相対走査に共通に対応する多値データに分割するための第1の分割処理と、(B)前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれを量子化して、前記複数回の相対走査の各々に対応する量子化データおよび前記少なくとも2回の相対走査に共通に対応する量子化データを生成するための第1の量子化処理と、(C)前記第1の量子化処理によって生成された量子化データを対応する相対走査毎に合成して、前記複数回の相対走査の各々に対応した合成量子化データを生成するための合成処理と、を含む画像処理を行うためのモードであり、
前記第2の処理モードは、(D)前記多値画像データを量子化して量子化データを生成するための第2の量子化処理と、(E)前記第2の量子化処理によって生成された量子化データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割するための第2の分割処理と、を含む画像処理を行うためのモードであることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査によって前記記録媒体の画素領域に画像を記録するために、当該画素領域に記録すべき画像に対応した多値画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記画素領域に対する前記相対走査の回数に関する情報を取得するための取得手段と、
前記取得手段により取得された情報が示す回数が閾値未満の場合には第1の処理モードを選択し、前記情報が示す回数が閾値以上の場合には第2の処理モードを選択するための選択手段と、
前記選択手段により選択された処理モードを実行するための処理部とを備え、
前記第1の処理モードは、(A)前記多値画像データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する多値データおよび前記複数回の相対走査のうちの少なくとも2回の相対走査に共通に対応する多値データに分割するための第1の分割処理と、(B)前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれを量子化して、前記複数回の相対走査の各々に対応する量子化データおよび前記少なくとも2回の相対走査に共通に対応する量子化データを生成するための第1の量子化処理と、(C)前記第1の量子化処理によって生成された量子化データを対応する相対走査毎に合成して、前記複数回の相対走査の各々に対応した合成量子化データを生成するための合成処理と、を含む画像処理を行うためのモードであり、
前記第2の処理モードは、(D)前記多値画像データを量子化して量子化データを生成するための第2の量子化処理と、(E)前記第2の量子化処理によって生成された量子化データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割するための第2の分割処理と、を含む画像処理を行うためのモードである
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の量子化処理では、前記第1の量子化処理によって生成される量子化データのそれぞれに基づき定められる記録画素の位置が排他的となるように、前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれが誤差拡散法により量子化されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の量子化処理では、前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれが、異なる誤差分配マトリクスを用いた誤差拡散法により量子化されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2の分割処理では、前記第2の量子化処理によって生成された量子化データが、前記複数回の走査に対応した複数のマスクデータによって、前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査によって前記記録媒体の画素領域に画像を記録するために、当該画素領域に記録すべき画像に対応した多値画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記画素領域に対する前記相対走査の回数に関する情報を取得するための取得手段と、
前記取得手段により取得された情報が示す回数が閾値未満の場合には、前記多値画像データを前記相対走査に関連付けられた多値データに分割した後に、当該多値データを量子化するための第1の処理モードを選択し、前記情報が示す回数が閾値以上の場合には、前記多値画像データを量子化して量子化データを生成した後に、前記量子化データを前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割するための第2の処理モードを選択するための選択手段と、
前記選択手段により選択された処理モードを実行するための処理部とを備え、
前記第1の処理モードは、少なくとも、(A)前記多値画像データを、第1相対走査に対応する多値データ、第2相対走査に対応する多値データおよび前記第1相対走査と前記第2相対走査に共通に対応する多値データに分割するための分割処理と、(B)前記分割処理により得られた多値データのそれぞれを量子化して、第1、第2および第3の量子化データを生成するための量子化処理と、(C)前記第1の量子化データと前記第3の量子化データを合成して前記第1相対走査に対応した合成量子化データを生成すると共に、前記第2の量子化データと前記第3の量子化データを合成して前記第2相対走査に対応した合成量子化データを生成するための合成処理と、を含む画像処理を行うためのモードを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
前記量子化処理では、前記第1、第2、および第3の量子化データのそれぞれに基づき定められる記録画素の位置が排他的となるように、前記分割処理によって得られる多値データのそれぞれが誤差拡散法により量子化されることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
記録ヘッドと記録媒体との複数回の相対走査によって前記記録媒体の画素領域に画像を記録するために、当該画素領域に記録すべき画像に対応した多値画像データを処理するための画像処理方法であって、
前記画素領域に対する前記相対走査の回数に関する情報を取得するための取得工程と、
前記取得工程により取得された情報が示す回数が閾値未満の場合には第1の処理モードを選択し、前記情報が示す回数が閾値以上の場合には第2の処理モードを選択するための選択工程と、
前記選択工程により選択された処理モードを実行するための実行工程とを有し、
前記第1の処理モードは、(A)前記多値画像データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する多値データおよび前記複数回の相対走査のうちの少なくとも2回の相対走査に共通に対応する多値データに分割するための第1の分割処理と、(B)前記第1の分割処理によって得られた多値データのそれぞれを量子化して、前記複数回の相対走査の各々に対応する量子化データおよび前記少なくとも2回の相対走査に共通に対応する量子化データを生成するための第1の量子化処理と、(C)前記第1の量子化処理によって生成された量子化データを対応する相対走査毎に合成して、前記複数回の相対走査の各々に対応した合成量子化データを生成するための合成処理と、を含む画像処理を行うためのモードであり、
前記第2の処理モードは、(D)前記多値画像データを量子化して量子化データを生成するための第2の量子化処理と、(E)前記第2の量子化処理によって生成された量子化データを、前記複数回の相対走査の各々に対応する分割量子化データに分割するための第2の分割処理と、を含む画像処理を行うためのモードであることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−116016(P2011−116016A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274958(P2009−274958)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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