説明

画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジ

【課題】本発明は、クリーニング不良の発生、クリーニングブレードの磨耗及び感光体のフィルミングを抑制することが可能な画像形成装置、該画像形成装置を用いる画像形成方法及び該画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置は、少なくとも感光体6、現像装置13及びクリーニング装置を有し、クリーニング装置は、2種以上の形状が異なる無機粒子を含有する弾性体からなるクリーニングブレード16を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
カールソンプロセスや、このプロセスの種々の変形プロセスを用いた電子写真方法が、複写機、ファクシミリ、プリンター等の電子写真分野で広く使用されている。
【0003】
この電子写真方法に用いられる感光体としては、安価、大量生産性、無公害性等の利点から、近年、有機系の感光材料が汎用され、保護層の追加等、耐久性についても種々の対策が施されるようになっている。
【0004】
また、この電子写真方法に用いられるトナーは、高画質化の課題に対して、帯電安定化に加え、小粒径化や球形化への要求が大きくなっている。
【0005】
このような電子写真サプライの機能の向上に対して、それらに関わる構成部材についても高耐久、高画質を達成するための高機能化、最適化が必要とされるようになっている。中でも、クリーニングに関わる技術は、電子写真プロセスの各要素との関連が深く、出力画像への影響も非常に大きい。
【0006】
感光体の耐久性として、耐摩耗性を主とする機械的耐久性が強く要望されるようになっているが、従来の有機系感光体(OPC)及びこれを用いる電子写真プロセスでは、有機物の耐摩耗性の低さから、充分な耐久性が得られていないのが現状である。一方、出力画像を高精細化するために、感光層の薄膜化が必須であることが明らかとなり、摩耗に対する余裕度が厳しくなっている。
【0007】
ここで、これらの摩耗は、主としてクリーニングプロセスで生じているものであることから、感光体への当接部材としてのクリーニング装置及びクリーニングに関わるトナーが大きく影響するということであり、その高機能化、最適化が必須となる。
【0008】
さらに、トナーの小粒径化及び球形化は、クリーニングの余裕度を低下させるため、従来のクリーニング装置の設定条件の変更では対応が不可能であり、クリーニング方法及びクリーニング装置の開発が必要となっている。ここでいう粒径が小さい球形トナーとは、高画質化を目的とした平均粒径が5.5μm以下で平均円形度が0.97以上のトナーであり、クリーニングの余裕度を確保することが課題となっている。
【0009】
小粒径トナーの製造方法としては、製造コストの面から、従来の粉砕法に替えて重合法が有力であり、重合法により製造された小粒径トナーは、形状が球形に近く、粒径分布がシャープであることから、細線の再現性、デジタル画像のドット再現性等に優れ、高画質化を達成することができる。
【0010】
以上のようなクリーニングに関わる課題に対して、フィラーを添加したクリーニングブレードを用い、フィラーを概略立方体又は直方体であるペロブスカイト型結晶の無機微粉体とすることにより、良好に外添剤をクリーニングすることが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
また、転写残トナーのすり抜けを抑制し、クリーニングブレードに潤滑剤を塗布することなくビビリや捲れを防止するために、ウレタン基材の少なくとも感光体に当接する部分に無機粒子を内包させるものが開示されている。(例えば、特許文献2参照)
さらに、感光体の表面を効果的に清掃すると共に、感光体の寿命を延長することが可能となるように、研磨剤を含むクリーニングブレードにおいて、研磨剤の含有量あるいは粒子径をクリーニング部材の消耗する方向に変化させるものが開示されている。(例えば、特許文献3参照)
同じくフィラーを配合した弾性ゴム部材をクリーニングブレードに用いるものとして、フィラーを遠心成型により凝集させてフィラーのほとんど存在しない低硬度ゴム層側を感光体に当接させて傷の発生を抑え、逆側のフィラーの凝集したヤング率の高い部分により高い押圧力を確保して良好なクリーニング状態を得るものが開示されている。(例えば、特許文献4参照)
しかしながら、このようなクリーニングブレードを用いても、粒径が小さい球形トナーに対して、クリーニング不良、クリーニングブレードの磨耗及び感光体のフィルミングを抑制することができていない。
【特許文献1】特開2005−321431号公報
【特許文献2】特開2003−208070号公報
【特許文献3】特開2004−157256号公報
【特許文献4】特開2001−302906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、クリーニング不良の発生、クリーニングブレードの磨耗及び感光体のフィルミングを抑制することが可能な画像形成装置、該画像形成装置を用いる画像形成方法及び該画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、少なくとも感光体、現像装置及びクリーニング装置を有する画像形成装置において、該クリーニング装置は、2種以上の形状が異なる無機粒子を含有する弾性体からなるクリーニングブレードを有する。これにより、クリーニング不良の発生、クリーニングブレードの磨耗及び感光体のフィルミングを抑制することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記クリーニングブレードは、略球状の無機粒子及び薄片状の無機粒子を含有するウレタンゴムからなることを特徴とする。これにより、クリーニング不良、クリーニングブレードの磨耗及び感光体のフィルミングをさらに抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置において、前記略球状の無機粒子の体積平均粒径は、0.03μm以上0.4μm以下であり、前記薄片状の無機粒子の1片の長さは、0.1μm以上4μm以下であることを特徴とする。これにより、感光体の傷の発生及びクリーニングブレードのヤング率の低下を抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、前記クリーニングブレード中の2種以上の形状が異なる無機粒子の含有量は、1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする。これにより、クリーニングブレードのヤング率を良好に調整することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置において、前記クリーニングブレードは、硬度が67度以上75度以下であると共に、ヤング率が70kg/cm以上95kg/cm以下であることを特徴とする。これにより、クリーニングブレードの変形を抑制すると共に、追従性を確保することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置において、前記現像装置は、トナーを用いて現像し、該トナーは、体積平均粒径が5.5μm以下であると共に、平均円形度が0.97以上であることを特徴とする。これにより、高画質画像を形成することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、画像形成方法において、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置を用いて画像を形成することを特徴とする。これにより、クリーニング不良の発生、クリーニングブレードの磨耗及び感光体のフィルミングを抑制することが可能な画像形成方法を提供することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置の本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、少なくとも感光体及びクリーニング装置を有することを特徴とする。これにより、クリーニング不良の発生、クリーニングブレードの磨耗及び感光体のフィルミングを抑制することが可能なプロセスカートリッジを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、クリーニング不良の発生、クリーニングブレードの磨耗及び感光体のフィルミングを抑制することが可能な画像形成装置、該画像形成装置を用いる画像形成方法及び該画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0023】
本発明の画像形成装置は、少なくとも感光体、現像装置及びクリーニング装置を有し、クリーニング装置は、2種以上の形状が異なる無機粒子を含有する弾性体からなるクリーニングブレードを有する。これにより、クリーニング不良の発生を抑制することができ、特に、重合トナーに代表される、粒径が小さい球形トナーのクリーニングを安定して行うことができる。さらに、クリーニングブレードの磨耗及び感光体のフィルミングを抑制することができる。なお、本発明の画像形成装置は、帯電装置、像露光装置、転写装置、定着装置等をさらに有することができる。
【0024】
一般に、粒径が小さい球形トナーを用いる場合、クリーニング時にクリーニングブレードのエッジ部でせき止められるトナーのすり抜けが発生し、結果的にクリーニング不良が発生するという問題がある。ここで、トナーの粒径に関しては、分布を有するが、平均粒径でほぼ議論することが可能である。なお、トナーの形状に関しては、平均円形度が0.94以下である場合、体積平均粒径が5μm以下であっても、従来のクリーニング装置を用いてクリーニングすることが可能であるのに対して、平均円形度が0.97以上の球形である場合、クリーニング余裕度が急激に低下し、さらに、体積平均粒径が5μm以下になると、殆どクリーニングすることが不可能となり、トナーの特性によってクリーニング状態が大きく変化する。
【0025】
さらに、トナーの流動性を改善したり、帯電性を調節したりするために、外添剤が添加される場合、一般に、一部のトナーから外添剤が離脱する。ここで、外添剤の粒径は、トナーに比べて非常に小さいため、クリーニングブレードを容易にすり抜けることができる。したがって、クリーニング動作において、クリーニングブレードのエッジ部と感光体の間に外添剤が存在することになり、感光体とクリーニングブレードの双方が摩耗作用を受ける。また、摩耗とは別に、外添剤が感光体の表面に押し付けられる状態が継続されると、フィルミングが発生することもある。このとき、通常用いられる外添剤に加えて、粒径が大きい外添剤をさらに加えることもできる。粒径が大きい外添剤は、球形トナーをクリーニングする際に、その回転運動性を妨げる効果を有すると考えられ、クリーニング性の余裕度を向上させることができる。
【0026】
外添剤の使用割合は、通常、トナーの母体粒子の0.01〜5重量%であるが、0.01〜2.0重量%が好ましい。外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、クリーニング装置が2種以上の形状が異なる無機粒子を含有する弾性体からなるクリーニングブレードを有することにより、粒径が小さい球形トナーのすり抜けを抑制することができ、良好なクリーニング性を達成することができる。
【0028】
ここで、クリーニングブレードのエッジ部におけるクリーニング動作を考えると、本発明で用いられるクリーニングブレードは、トナーをせき止めるエッジ部の変形を抑制することができる。これにより、感光体の表面とクリーニングブレードのなす角度であるクリーニング角が設定時の角度で維持され、クリーニングブレードのエッジ部と感光体の間に、トナーが侵入しにくくなり、クリーニング性が良好になると考えられる。一方、弾性体のみで構成されるクリーニングブレードは、エッジ部で変形しやすく、クリーニング角が小さくなる。このような場合には、トナーは、クリーニングブレードのエッジ部と感光体の間に挟み込まれた後に、球形形状のために回転しながらクリーニングブレードのエッジ部を通過するため、クリーニング不良が発生する。
【0029】
本発明において、クリーニングブレードの変形の程度は、ヤング率と対応しており、クリーニングブレードのヤング率は、70〜95kg/cmであることが好ましい。ヤング率が70kg/cmより小さいと、クリーニングブレードの変形が起こりやすくなり、95kg/cmより大きいと、感光体の表面に対するクリーニングブレードの追従性が低下することがある。また、感光体の表面に対する追従性を確保するためには、クリーニングブレードの硬度(JIS A)が67〜75度であることが好ましい。
【0030】
本発明において、クリーニングブレードは、2種以上の形状が異なる無機粒子を含有することが必要であり、クリーニングブレードが無機粒子として、略球状の平均粒径が異なる無機粒子のみを含有する場合には、大粒径の無機粒子の影響が大きくなり、感光体へのダメージが発生する。また、クリーニングブレードが無機粒子として、薄片状の無機粒子のみを含有する場合には、クリーニングブレードの耐摩耗性が低くなる。
【0031】
本発明において、クリーニングブレードが含有する無機粒子としては、従来公知のものを使用することができ、略球状のものとして、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム、チタン酸カリウム等、薄片状のものとして、酸化チタン、カーボン、雲母、モンモリロナイト等を用いることができる。クリーニングブレード中の無機粒子の含有量は、1〜20重量%であることが好ましい。これにより、クリーニングブレードのヤング率が70〜95kg/cmになるように、無機粒子の種類によって良好に調整することができる。
【0032】
また、略球状の無機粒子の体積平均粒径は、0.03〜0.4μmであることが好ましく、薄片状の無機粒子の1片の長さは、0.1〜4μmであることが好ましい。略球状の無機粒子の体積平均粒径が0.4μmより大きい場合には、感光体に傷が発生することがあり、0.03μmより小さい場合には、ヤング率が低下することがある。同様に、薄片状の無機粒子の1片の長さが4μmより大きい場合には、感光体への傷が顕著になることがあり、0.1μmより小さい場合には、ヤング率が低くなることがある。
【0033】
なお、クリーニングブレードの変形は、ガラス製の擬似感光体を用いた内製の評価装置を用いて、クリーニング動作時のクリーニングブレードのエッジ部が感光体の進行方向に引き込まれるかどうかを高速度カメラで観察することにより、評価することができる。評価結果の一例を挙げると、弾性体のみで構成されるクリーニングブレードは、エッジ部が50〜100μm程度引き込まれるのに対して、本発明で用いられるクリーニングブレードが引き込まれる量は、10〜30μm程度に抑制される。
【0034】
次に、本発明で用いられる感光体について説明する。感光体は、感光層が単層構造であっても、積層構造であってもよいが、機能分離型の積層構造である場合を例に説明する。
【0035】
図1及び図2に、本発明で用いられる感光体の例を示す。感光体は、導電性支持体1上に感光層2が設けられており、感光層2は、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層3と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層4を積層することにより形成されている。さらに、感光体の表層として、保護層5が形成されている。
【0036】
導電性支持体としては、体積固有抵抗が1010Ω・cm以下であるものを用いることができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状又は円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板又はそれらを素管化後、切削、超仕上げ、研磨等で表面処理した管等が挙げられる。
【0037】
電荷発生層は、電荷発生材料を、適宜バインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、2−ブタノン、ジクロルエタン等の溶媒を用いて、ボールミル、アトライター、サンドミル等で分散させることにより得られる分散液を塗布、乾燥することにより形成することができる。塗布方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法等が挙げられる。
【0038】
電荷発生材料としては、無機材料又は有機材料を用いることができ、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、アモルファスシリコン等が挙げられる。なお、電荷発生材料は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0039】
電荷発生層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂の添加量は、通常、電荷発生材料1重量部に対して、0〜2重量部である。
【0040】
また、電荷発生層は、公知の真空薄膜作製法を用いて形成することができる。
【0041】
電荷発生層の膜厚は、通常、0.01〜5μmであり、0.1〜2μmが好ましい。
【0042】
電荷輸送層は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を溶媒に溶解又は分散させることにより得られる溶液又は分散液を塗布、乾燥することにより形成することができる。また、電荷輸送層には、必要に応じて、可塑剤、レベリング剤等を添加することもできる。
【0043】
電荷輸送材料のうち、高分子電荷輸送材料又は低分子電荷輸送材料を用いることができ、低分子電荷輸送材料としては、電子輸送材料と正孔輸送材料が挙げられる。
【0044】
電子輸送材料としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ[1,2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド等の電子受容性物質が挙げられる。なお、電子輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0045】
正孔輸送材料としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−p−ジエチルアミノスチリルアントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与性物質が挙げられる。なお、正孔輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0046】
また、電荷輸送材料として、高分子電荷輸送材料を用いる場合、溶媒に溶解又は分散させることにより得られる溶液又は分散液を塗布、乾燥して電荷輸送層を形成してもよい。さらに、高分子電荷輸送材料と共に、必要に応じて、バインダー樹脂、低分子電荷輸送材料、可塑剤、レベリング剤、潤滑剤等を適量添加することもできる。
【0047】
高分子電荷輸送材料は、低分子電荷輸送材料の電荷輸送性置換基を主鎖又は側鎖に有する高分子材料であればよい。高分子電荷輸送材料としては、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられ、中でも、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0048】
電荷輸送層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0049】
電荷輸送層に用いられる可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等が挙げられる。可塑剤の添加量は、通常、バインダー樹脂に対して、0〜30重量%である。
【0050】
電荷輸送層に用いられるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。レベリング剤の添加量は、通常、バインダー樹脂に対して、0〜1重量%である。
【0051】
溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、2−ブタノン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、塩化メチレン等が挙げられる。
【0052】
電荷輸送層の膜厚は、通常、5〜30μmであり、所望の感光体特性に応じて適宜選択すればよい。
【0053】
本発明において、電荷輸送材料の含有量は、電荷輸送層に対して、40重量%以上であることが好ましい。電荷輸送材料の含有量が40重量%未満では、感光体のレーザー書き込みにおけるパルス光露光において、高速電子写真プロセスでの充分な光減衰時間が得られず、好ましくない。
【0054】
電荷輸送層の移動度は、電界強度が2.5×10〜5.5×10V/cmである条件下で、3×10−5cm/V・秒以上であることが好ましく、7×10−5cm/V・秒以上がさらに好ましい。移動度は、従来公知のTime of Flight法により求めることができる。
【0055】
本発明で用いられる感光体は、導電性支持体と感光層の間に下引き層が形成されていることが好ましい。下引き層は、一般に、樹脂を主成分とするが、下引き層の上に、溶媒を用いて感光層を形成することを考慮すると、一般の有機溶媒に対する耐性が高い樹脂を用いることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の三次元網目構造を形成する硬化性樹脂等が挙げられる。
【0056】
また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末を添加してもよい。
【0057】
下引き層は、感光層と同様の溶媒、塗布方法を用いて形成することができる。
【0058】
さらに、下引き層は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を用いて、例えば、ゾル−ゲル法等により形成された金属酸化物膜であってもよい。この他に、下引き層は、陽極酸化により形成されたAl膜、真空薄膜作製法により形成されたポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物膜、SiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物膜であってもよい。
【0059】
下引き層の膜厚は、通常、0〜5μmである。
【0060】
保護層は、感光層の保護及び耐久性の向上を目的に、感光層の上に形成することができる。
【0061】
保護層に使用される材料としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、AS樹脂、AB樹脂、BS樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0062】
保護層には、耐摩耗性を向上させる目的でフィラーを添加することができる。フィラーとしては、アルミナ又は酸化チタンの微粒子を用いることができる。なお、これらのフィラーは、併用してもよいし、さらにシリカ等の無機微粒子を添加してもよい。
【0063】
フィラーの添加量は、通常、保護層に対して、10〜40重量%であり、20〜30重量%が好ましい。フィラーの添加量が10重量%未満では、摩耗量が大きくなって、耐久性が低下することがあり、40重量%を超えると、露光時における明部電位の上昇が著しくなって、感度が低下することがある。
【0064】
さらに、保護層には、フィラーの分散性を向上させるために分散助剤を添加することができる。分散助剤としては、塗料等に使用される変性エポキシ樹脂縮合物、不飽和ポリカルボン酸の低分子量ポリマー等を用いることができる。分散助剤の添加量は、通常、フィラーに対して、0.5〜4重量%であり、1〜2重量%が好ましい。
【0065】
また、保護層には、前述の電荷輸送材料を添加することが好ましく、露光に対する特性を向上させることができる。なお、電荷輸送材料の含有量も前述と同様に、保護層に対して、40重量%以上であることが好ましい。
【0066】
さらに、保護層には、必要に応じて、酸化防止剤も添加することができる。なお、酸化防止剤については後述する。
【0067】
保護層の形成方法としては、スプレー法等の通常の塗布方法を用いることができる。
【0068】
保護層の膜厚は、通常、0.5〜10μmであり、4〜6μmが好ましい。
【0069】
本発明においては、感光層と保護層の間に中間層を形成することも可能である。中間層は、通常、バインダー樹脂が主成分として用いられる。
【0070】
バインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0071】
中間層の形成方法としては、スプレー法等の通常の塗布方法を用いることができる。
【0072】
中間層の膜厚は、通常、0.05〜2μmである。
【0073】
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質及びレベリング剤を添加することができる。
【0074】
酸化防止剤としては、フェノール化合物類、パラフェニレンジアミン類、ヒドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機リン化合物類等を用いることができる。
【0075】
フェノール化合物類としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェロール類等が挙げられる。
【0076】
パラフェニレンジアミン類としては、N−フェニル−N−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−N,N−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0077】
ヒドロキノン類としては、2,5−ジ−t−オクチルヒドロキノン、2,6−ジドデシルヒドロキノン、2−ドデシルヒドロキノン、2−ドデシル−5−クロロヒドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルヒドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルヒドロキノン等が挙げられる。
【0078】
有機硫黄化合物類として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0079】
有機リン化合物類として、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン等が挙げられる。
【0080】
可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、芳香族カルボン酸エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル誘導体系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、含塩素系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、スルホン酸誘導体系可塑剤、クエン酸誘導体系可塑剤等を用いることができる。
【0081】
リン酸エステル系可塑剤としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリ(クロロエチル)、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)、リン酸トリフェニル等が挙げられる。
【0082】
フタル酸エステル系可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル等が挙げられる。
【0083】
芳香族カルボン酸エステル系可塑剤としては、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチル等が挙げられる。
【0084】
脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤としては、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジ(2−エトキシエチル)、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチル等が挙げられる。
【0085】
脂肪酸エステル誘導体系可塑剤としては、オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレエート、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリン等が挙げられる。
【0086】
オキシ酸エステル系可塑剤としては、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。
【0087】
エポキシ系可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシル等が挙げられる。
【0088】
二価アルコールエステル系可塑剤としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ(2−エチルブチラート)等が挙げられる。
【0089】
含塩素系可塑剤として、塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチル等が挙げられる。
【0090】
ポリエステル系可塑剤としては、ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステル等が挙げられる。
【0091】
スルホン酸誘導体系可塑剤としては、p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミド等が挙げられる。
【0092】
クエン酸誘導体系可塑剤としては、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ(2−エチルヘキシル)、アセチルクエン酸n−オクチルデシル等が挙げられる。
【0093】
その他の可塑剤としては、ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタレン、アビエチン酸メチル等が挙げられる。
【0094】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サルシレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、クエンチャー(金属錯塩系)紫外線吸収剤、HALS(ヒンダードアミン)系紫外線吸収剤等を用いることができる。
【0095】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0096】
サルシレート系紫外線吸収剤としては、フェニルサルシレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸2,4−ジ−t−ブチルフェニル等が挙げられる。
【0097】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0098】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル等が挙げられる。
【0099】
クエンチャー(金属錯塩系)紫外線吸収剤としては、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェート等が挙げられる。
【0100】
HALS(ヒンダードアミン)系紫外線吸収剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0101】
本発明において、感光体は、図1及び図2に示すように、導電性基体上に感光層及び保護層が形成されていることが好ましく、必要に応じて、下引き層、中間層を形成することができる。なお、保護層がフィラーを含有することによって、摩耗に対する耐性を向上させ、耐久性を良好にすることができる。
【0102】
次に、本発明の画像形成装置及び画像形成方法を説明する。
【0103】
本発明の画像形成装置は、クリーニング手段に搭載されるクリーニングブレードが少なくとも2種以上の形状が異なる無機粒子及び弾性体を含有することにより、感光体と当接するブレードエッジ部の変形を抑制することができ、粒径が小さい球形トナーのクリーニング性を良好に保つことができる。
【0104】
本発明において、弾性体は、ウレタンゴムであることが好ましい。このようなクリーニングブレードは、ポリオール又はプレポリマーを加熱して粘度を低下させた状態で、無機粒子を攪拌混合した後、硬化剤と反応させることにより、作製することができる。無機粒子を攪拌混合する際には、超音波ホモジナイザー等を使用することも可能であり、発泡を抑えながら混合することが好ましい。なお、ブレード用シートの形成には、遠心成型や金型注型による方法を利用することができる。
【0105】
図3に、本発明の画像形成装置の一例を示す。感光体6は、ドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。感光体6の周囲には、転写前チャージャー7、クリーニング前チャージャー8の他に、必要に応じて、転写チャージャー、分離チャージャーを配置することができ、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ等の公知の帯電手段を用いることができる。帯電装置9は、感光体6と当接していてもよいが、両者の間に10〜200μm程度の適当なギャップを設けた近接配置とすることが好ましい。これにより、両者の摩耗量を低減することができると共に、帯電装置9へのトナーフィルミングを抑制することができる。なお、帯電装置9には、帯電の安定化と帯電ムラの抑制のために、直流成分に交流成分を重畳させた電圧を印加することが好ましい。転写装置10としては、上記の帯電手段を使用することができるが、図3に示されるように、転写ベルトを使用することが好ましい。また、像露光11、除電装置12等の光源としては、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種のフィルターを用いることもできる。これらの光源は、図3に示される工程以外に、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、前露光工程等で、感光体6に光を照射するために用いることができる。
【0106】
現像装置13により感光体6上に現像されたトナーは、転写装置10を用いて、レジストローラ16を通過した転写紙14に転写されるが、感光体6上に残存したトナーは、クリーニング装置15内のクリーニングブレード15a及びファーブラシ15bにより感光体6から除去される。なお、トナーの除去は、クリーニングブレード15a単独で行うこともできる。また、トナー像が転写された転写紙14は、分離爪17により感光体6から剥離されるが、定着装置(不図示)を用いて、定着させることができる。
【0107】
感光体6に、正(又は負)帯電を施し、像露光11を行うと、感光体6上には、正(又は負)の静電潜像が形成される。これを負(又は正)極性のトナーで現像すると、ポジ画像が得られ、また、正(又は負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0108】
なお、除電装置12、現像装置13としては、公知の装置を適用することができる。
【0109】
本発明の画像形成装置としては、複写装置、ファクシミリ、プリンター等が挙げられるが、これらの画像形成装置は、プロセスカートリッジを有してもよい。ここで、プロセスカートリッジとは、帯電装置、像露光装置、現像装置、転写装置及びクリーニング装置の少なくとも一つ及び感光体を有し、画像形成装置の本体に着脱自在とした装置(部品)である。
【0110】
本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも感光体及びクリーニング装置を有し、本発明の画像形成装置の本体に着脱自在である。なお、プロセスカートリッジは、感光体及びクリーニング装置の他に、帯電装置、像露光装置、現像装置、転写装置を有することができる。
【0111】
図4に、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これら実施例によって、本発明は、何ら限定されるものではない。なお、部は、重量部を意味する。
(実施例1)
プレポリマーとしての、ポリエチレンアジペート系プレポリマー、硬化剤としての、1,4−ブタンジオール/トリメチロールプロパン及び無機粒子を用いて、ウレタンシートを作製した。無機粒子としては、体積平均粒径が0.4μmの略球状の酸化チタンであるタイペークCR−EL(石原産業社製)と、体積平均粒径が3.1μm、1片の長さが1.5〜4μmの薄片状のマイカパウダーであるA−11(山口雲母工業所社製)の重量比が4:1の混合物を用い、無機粒子の添加量は、ウレタンシートの総量に対して、5重量%とした。
【0113】
具体的には、プレポリマーを90℃で加熱溶融させておき、そこに無機粒子を加え、あわとり練太郎AR−500(シンキー社製)で1分間攪拌した。次に、超音波ホモジナイザーUH−300(エスエムテー社製)で5分間攪拌した。さらに、硬化剤を加えて、往復回転式攪拌機アジター(島崎製作所社製)で1分間攪拌した後、ろ過鐘で1分間脱泡し、金型に注型した。1次焼成は、150℃で1時間、2次焼成は、120℃で12時間とし、さらに、23℃、50%RHで7日間の養生を行った。なお、プレポリマーと、硬化剤(1,4−ブタンジオールとトリメチロールプロパンの割合)の配合量は、硬度が70度となるように調整した。
【0114】
作製したウレタンシートは、硬度が70度であり、ヤング率が93kg/cmであった。さらに、ウレタンシートのカッティングを行い、所定の板金ホルダに接着することにより、クリーニングブレードを作製した。
【0115】
クリーニング性の評価は、カラー複合機 imagio Neo C455(リコー社製)に、クリーニングブレードを搭載して行った。なお、クリーニングブレードの形状、寸法は、標準的に搭載されているクリーニングブレードと同様になるように作製した。
【0116】
このとき、トナーは、重合法により作製したものを用いた。トナーは、平均円形度が0.98であり、体積平均粒径が4.9μmであった。なお、外添剤は、トナーの母体粒子100部に対して、小粒径のシリカであるH2000(クラリアント社製)1.5部、小粒径の酸化チタンであるMT−150AI(テイカ社製)0.5部及び大粒径のシリカであるUFP−30H(電気化学工業社製)1.0部を用いた。
【0117】
クリーニングブレードの当接条件は、線圧を20g/cmとし、クリーニング角を80度とした。また、評価環境は、20℃、65%RHとし、通紙条件は、イールド5%チャートを、3プリント/ジョブで、10000枚(A4横)とした。
【0118】
10000枚通紙後において、クリーニング不良の発生は認められなかった。また、クリーニングブレードのカット面の摩耗幅は、2.1μmであり、感光体のフィルミングは認められなかった。
【0119】
なお、無機粒子及びトナーの体積平均粒径は、粒度分布測定装置MT3000(マイクロトラック社製)を用いて測定した。
【0120】
薄片状の無機粒子の1片の長さは、SEMにより撮影した画像から任意に10個の粒子を選択し、画像処理アプリケーションのイメージプロプラス(メディアサイバネティックス社製)を用いて測定し、10個の粒子の相当楕円の長軸に投影された長さの範囲とした。
【0121】
ヤング率は、精密万能試験機AG−IS(島津製作所社製)を用いて、引っ張り試験を実施することにより求めた。
【0122】
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置FPIA2100(シスメックス社製)を用いて測定した。
(実施例2)
無機粒子として、タイペークCR−ELと、1片の長さが0.1〜0.5μmのNanofil SE3010(Sud−Chemie社製)の重量比が5:1の混合物を用い、無機粒子の添加量を、ウレタンシートの総量に対して、7重量%とした以外は、実施例1と同様にして、クリーニングブレードを作製し、評価した。
【0123】
作製したクリーニングブレードは、硬度が67度であり、ヤング率が72kg/cmであった。
【0124】
10000枚通紙後において、クリーニング不良は発生せず、クリーニングブレードのカット面の摩耗幅は、2.5μmであり、感光体のフィルミングは認められなかった。
(比較例1)
無機粒子として、タイペークCR−ELと、体積平均粒径が0.04μmの酸化チタンであるTTO−55N(石原産業社製)の重量比が4:1の混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、クリーニングブレードを作製し、評価した。
【0125】
作製したクリーニングブレードは、硬度が72度であり、ヤング率が68kg/cmであった。
【0126】
5000枚通紙後程度から、スジ状のクリーニング不良が発生し、10000枚通紙後は、クリーニング不良の領域が拡大した。クリーニングブレードのカット面の摩耗幅は、9.2μmであった。
(実施例3)
プレポリマーとして、ポリカプロラクトン系プレポリマーを用い、無機粒子として、体積平均粒径が0.04μmのシリカであるOX−50(日本アエロジル社製)と、A−11の重量比が3:1の混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、クリーニングブレードを作製し、評価した。
【0127】
作製したクリーニングブレードは、硬度が75度であり、ヤング率が94kg/cmであった。
【0128】
10000枚通紙後において、クリーニング不良は発生せず、クリーニングブレードのカット面の摩耗幅は、1.7μmであり、感光体のフィルミングは認められなかった。
(比較例2)
無機粒子を用いなかった以外は、実施例3と同様にして、クリーニングブレードを作製し、評価した。
【0129】
作製したクリーニングブレードは、硬度が74度であり、ヤング率が65kg/cmであった。
【0130】
5000枚通紙後程度から、帯状のクリーニング不良が発生し、10000枚通紙後は、クリーニング不良の領域が拡大した。クリーニングブレードのカット面の摩耗幅は、11.5μmであり、感光体の表面には、クリーニング不良に対応するフィルミングが認められた。
(実施例4)
無機粒子の添加量を、ウレタンシートの総量に対して、3重量%とした以外は、実施例3と同様にして、クリーニングブレードを作製し、評価した。
【0131】
作製したクリーニングブレードは、硬度が73度であり、ヤング率が91kg/cmであった。
【0132】
10000枚通紙後において、クリーニング不良の発生は認められず、ブレードカット面の摩耗幅は、1.9μmであり、感光体のフィルミングは認められなかった。
(実施例5)
無機粒子の添加量を、ウレタンシートの総量に対して、20重量%とした以外は、実施例2と同様にして、クリーニングブレードを作製し、評価した。
【0133】
作製したクリーニングブレードは、硬度が72度であり、ヤング率が93kg/cmであった。
【0134】
10000枚通紙後において、カラー複合機内の奥側に相当する部分に、僅かにスジ状のクリーニング不良が認められた。ブレードカット面の摩耗幅は、4.5μmであり、感光体のフィルミングは認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明で用いられる感光体の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明で用いられる感光体の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0136】
1 導電性支持体
2 感光層
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 保護層
6 感光体
7 転写前チャージャー
8 クリーニング前チャージャー
9 帯電装置
10 転写装置
11 像露光
12 除電装置
13 現像装置
14 転写紙
15 ファーブラシ
16 クリーニングブレード
17 レジストローラ
18 分離爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも感光体、現像装置及びクリーニング装置を有する画像形成装置において、
該クリーニング装置は、2種以上の形状が異なる無機粒子を含有する弾性体からなるクリーニングブレードを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記クリーニングブレードは、略球状の無機粒子及び薄片状の無機粒子を含有するウレタンゴムからなることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記略球状の無機粒子の体積平均粒径は、0.03μm以上0.4μm以下であり、
前記薄片状の無機粒子の1片の長さは、0.1μm以上4μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニングブレード中の2種以上の形状が異なる無機粒子の含有量は、1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニングブレードは、硬度が67度以上75度以下であると共に、ヤング率が70kg/cm以上95kg/cm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像装置は、トナーを用いて現像し、
該トナーは、体積平均粒径が5.5μm以下であると共に、平均円形度が0.97以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置を用いて画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置の本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、
少なくとも感光体及びクリーニング装置を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−219101(P2007−219101A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38538(P2006−38538)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】