説明

画像形成装置,制御方法,プログラム,および記録媒体

【課題】 印刷ジョブ終了直後に次の印刷ジョブが断続的に投入されるような投入頻度が高い状況での消費電力を低減できるようにする。
【解決手段】 画像形成装置が、印刷ジョブの投入によって印刷プロセスを立上げ、印刷ジョブの終了後に次の印刷ジョブが投入されるまでの時間である次印刷ジョブ投入時間Tを予測し、印刷ジョブを実行する。そして、印刷ジョブの終了後に印刷プロセスを立下げずに次印刷ジョブ投入時間Tまで印刷状態を維持する場合の消費電力W1と、印刷ジョブの終了後に印刷プロセスを立下げて次印刷ジョブ投入時間Tの経過後に印刷プロセスを再度立上げる場合の消費電力W2とを算出して両消費電力W1,W2を比較し、W1<W2の場合に、印刷ジョブが終了した後も印刷プロセスを立下げずに印刷状態を次印刷ジョブ投入時間Tの範囲内で維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリンタ装置、デジタル複写機、ファクシミリ装置、デジタル複合機(マルチファンクションプリンタ:MFP)等の画像形成装置、その画像形成装置における制御方法、上記画像形成装置を制御するコンピュータに実行させるプログラム、およびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関し、特に消費電力低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プリンタ装置等の画像形成装置では、待機時や画像形成(以下「印刷」ともいう)時の無駄な消費電力が問題視されており、消費電力を低減するため、一定時間印刷ジョブがない場合に、通常の待機状態よりも消費電力の低いスリープ状態に移行するスリープ機能を搭載したものが既に知られている。
【0003】
このようなスリープ機能を搭載した画像形成装置においては、待機状態からスリープ状態に入るまでの時間(スリープ移行時間)が設定されており、待機中にスリープ移行時間が経過すると、待機状態からスリープ状態に移行し、新たな印刷ジョブが投入されると、スリープ状態から印刷状態に移行して印刷を行うものであったため、印刷ジョブの投入頻度が低い状況では、スリープ移行時間が経過し易く、消費電力低減に効果がある。
しかし、印刷ジョブ終了直後に次の印刷ジョブが断続的に投入されるような投入頻度が高い状況では、スリープ移行時間が経過せず、消費電力低減の効果が小さいという問題があった。
【0004】
そこで、その問題を解消するため、特許文献1に開示されている技術を利用することが考えられる。
特許文献1には、印刷時の消費電力を低減させるため、印刷ジョブ内でモノクロ印刷やカラー印刷等の印刷条件の切り替えが少なくなるように、画像データの属性に応じて印刷順序を並び替える構成について開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、印刷条件の切り替えを少なくすることで消費電力の低減させることはできるが、印刷ジョブ終了直後に次の印刷ジョブが断続的に投入されるような投入頻度が高い状況においては、やはり消費電力低減の効果が小さいという問題は解消できていない。
この発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、画像形成装置において、印刷ジョブ終了直後に次の印刷ジョブが断続的に投入されるような投入頻度が高い状況での消費電力を低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するため、以下に示す画像形成装置、その画像形成装置における制御方法、上記画像形成装置を制御するコンピュータに実行させるプログラム、およびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体をそれぞれ提供する。
【0007】
この発明による画像形成装置は、印刷ジョブの投入時に、印刷プロセスを立上げて待機状態から印刷状態にする印刷プロセス立上げ手段と、上記印刷状態にて上記印刷ジョブを実行する印刷手段と、該印刷手段による上記印刷ジョブの終了後、上記印刷プロセスを立下げて上記印刷状態から上記待機状態にする印刷プロセス立下げ手段とを有する画像形成装置であって、上記印刷ジョブの終了後に次の印刷ジョブが投入されるまでの時間である次印刷ジョブ投入時間を予測する次印刷ジョブ投入時間予測手段と、上記印刷ジョブの終了後に上記印刷プロセスを立下げずに上記次印刷ジョブ投入時間まで印刷状態を維持する場合の消費電力を算出する印刷状態消費電力算出手段と、上記印刷ジョブの終了後に上記印刷プロセスを立下げて上記次印刷ジョブ投入時間の経過後に上記印刷プロセスを再度立上げる場合の消費電力を算出する印刷プロセス再起動消費電力算出手段と、上記印刷状態消費電力算出手段による算出値と上記印刷プロセス再起動消費電力算出手段による算出値とを比較する比較手段と、その比較手段による比較の結果、上記印刷状態消費電力算出手段による算出値が上記印刷プロセス再起動消費電力算出手段による算出値より小さい場合に、上記印刷ジョブが終了した後も上記印刷プロセスを立下げずに上記印刷状態を上記次印刷ジョブ投入時間予測手段によって予測された次印刷ジョブ投入時間の範囲内で維持する印刷状態維持手段とを設けたものである。
【0008】
さらに、上記印刷プロセス立下げ手段が、上記印刷状態維持手段によって上記印刷状態が維持された状態で、次の印刷ジョブが投入される前に上記次印刷ジョブ投入時間を経過した場合に、上記印刷プロセスを立下げて上記印刷状態から上記待機状態にすると良い。
また、上記次印刷ジョブ投入時間予測手段が、以下の(1)〜(4)のいずれかに示すようにすると良い。
【0009】
(1)過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ平均投入時間で算出する。
(2)過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を時間帯毎に記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の時間帯に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出する。
(3)過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を曜日毎に記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の曜日に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出する。
(4)過去に上記印刷ジョブが投入された時刻を記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を規定期間内の印刷ジョブ平均投入時間で算出する。
【0010】
さらにまた、利用者の会議予定を検知する会議スケジュール検知手段を設け、上記次印刷ジョブ投入時間予測手段が、上記会議スケジュール検知手段による検知結果に基づいて上記印刷ジョブが投入された時刻から規定時間以内に利用者の会議予定があると判断した場合に、上記次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定すると良い。
あるいは、当該画像形成装置の周辺環境の照度を検知する照度検知手段を設け、上記次印刷ジョブ投入時間予測手段が、上記印刷ジョブの投入時に上記照度検知手段によって検知された上記周辺環境の照度が所定値以下の場合に、上記次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定しても良い。
【0011】
この発明による制御方法は、印刷ジョブの投入時に、印刷プロセスを立上げて待機状態から印刷状態にする印刷プロセス立上げ工程と、上記印刷状態にて上記印刷ジョブを実行する印刷工程と、該印刷工程による上記印刷ジョブの終了後、上記印刷プロセスを立下げて上記印刷状態から上記待機状態にする印刷プロセス立下げ工程とを有する画像形成装置における制御方法であって、上記印刷ジョブの終了後に次の印刷ジョブが投入されるまでの時間である次印刷ジョブ投入時間を予測する次印刷ジョブ投入時間予測工程と、上記印刷ジョブの終了後に上記印刷プロセスを立下げずに上記次印刷ジョブ投入時間まで印刷状態を維持する場合の消費電力を算出する印刷状態消費電力算出工程と、上記印刷ジョブの終了後に上記印刷プロセスを立下げて上記次印刷ジョブ投入時間の経過後に上記印刷プロセスを再度立上げる場合の消費電力を算出する印刷プロセス再起動消費電力算出工程と、上記印刷状態消費電力算出工程による算出値と上記印刷プロセス再起動消費電力算出工程による算出値とを比較する比較工程と、その比較工程による比較の結果、上記印刷状態消費電力算出工程による算出値が上記印刷プロセス再起動消費電力算出工程による算出値より小さい場合に、上記印刷ジョブが終了した後も上記印刷プロセスを立下げずに上記印刷状態を上記次印刷ジョブ投入時間予測工程によって予測された次印刷ジョブ投入時間の範囲内で維持する印刷状態維持工程とを有するものである。
【0012】
さらに、上記印刷プロセス立下げ工程が、上記印刷状態維持工程によって上記印刷状態が維持された状態で、上記次の印刷ジョブが投入される前に上記次印刷ジョブ投入時間を経過した場合に、上記印刷プロセスを立下げて上記印刷状態から上記待機状態にすると良い。
また、上記次印刷ジョブ投入時間予測工程が、以下の(5)〜(8)のいずれかに示すようにすると良い。
【0013】
(5)過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ平均投入時間で算出することを特徴とする。
(6)過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を時間帯毎に記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の時間帯に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出する。
(7)過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を曜日毎に記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の曜日に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出する。
(8)過去に上記印刷ジョブが投入された時刻を記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を規定期間内の印刷ジョブ平均投入時間で算出する。
【0014】
さらにまた、利用者の会議予定を検知する会議スケジュール検知工程を有し、上記次印刷ジョブ投入時間予測工程が、上記会議スケジュール検知工程による検知結果に基づいて上記印刷ジョブが投入された時刻から規定時間以内に利用者の会議予定があると判断した場合に、上記次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定すると良い。
あるいは、当該画像形成装置の周辺環境の照度を検知する照度検知工程を有し、上記次印刷ジョブ投入時間予測工程が、上記印刷ジョブの投入時に上記照度検知工程によって検知された上記周辺環境の照度が所定値以下の場合に、上記次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定しても良い。
【0015】
この発明によるプログラムは、上記の制御方法を、上記画像形成装置を制御するコンピュータに実行させるプログラムである。
この発明による記録媒体は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0016】
この発明によれば、画像形成装置(又はそれを制御するコンピュータ)が、印刷ジョブの終了後に次の印刷ジョブが投入されるまでの時間である次印刷ジョブ投入時間の予測、印刷ジョブの終了後に印刷プロセスを立下げずに次印刷ジョブ投入時間まで印刷状態を維持する場合の消費電力(印刷状態消費電力)の算出、および印刷ジョブの終了後に印刷プロセスを立下げて次印刷ジョブ投入時間の経過後に印刷プロセスを再度立上げる場合の消費電力(印刷プロセス再起動消費電力)の算出をそれぞれ行った後、印刷状態消費電力の算出値と印刷プロセス再起動消費電力の算出値とを比較し、その比較の結果、印刷状態消費電力の算出値が印刷プロセス再起動消費電力の算出値より小さい場合に、印刷ジョブが終了した後も印刷プロセスを立下げずに印刷状態を予測した次印刷ジョブ投入時間の範囲内で維持する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、画像形成装置において、印刷ジョブ終了直後に次の印刷ジョブが断続的に投入されるような投入頻度が高い状況での消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態である画像形成装置の機構部の構成例を示す全体構成図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の基本的な電気的構成例を示すブロック図である。
【図3】図2に示した画像形成装置の制御部によるこの発明に関わる処理の一例を示すフロー図である。
【図4】図3のステップS6における印刷プロセスを立下げて次印刷ジョブ投入時間Tの経過後に印刷プロセスを再度立上げる場合の消費電力W2を算出する処理のサブルーチンの一例を示すフロー図である。
【図5】図1に示した画像形成装置における経過時間と定着ローラ201の温度との関係の一例を示す線図である。
【図6】図3のステップS3における次印刷ジョブ投入時間Tの予測処理の第1例を示すフロー図である。
【図7】同じく次印刷ジョブ投入時間Tの予測処理の第2例を示すフロー図である。
【図8】同じく次印刷ジョブ投入時間Tの予測処理の第3例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
以下の実施形態では、印刷ジョブ終了時に印刷プロセスを立下げて(感光体へのバイアス印加・回転駆動を停止したり、定着温度を待機温度に下げるなどして)印刷状態から待機状態に移行するタイミングを決定する処理に際して、以下の特徴を有する。
すなわち、印刷ジョブ終了時に次の印刷ジョブが投入されるまでの時間Tを予測し、印刷ジョブ終了時に印刷プロセスを立下げずに印刷状態をT時間維持する場合の消費電力と、印刷ジョブ終了時に印刷プロセスを立下げてT時間待機状態とした後に再度印刷プロセスを立上げる場合の消費電力とを比較し、印刷ジョブ終了時に印刷状態をT時間維持する方が消費電力が小さいと判断できる場合に、印刷ジョブ終了時に印刷プロセスを立下げずに印刷状態をT時間維持することが特徴になっている。
そこで、その特徴について、以下で詳細に説明する。
【0020】
〔画像形成装置の機構部の構成〕
まず、この発明の実施形態である画像形成装置の機構部の構成について説明する。
図1は、その画像形成装置の機構部の構成例を示す全体構成図である。
この画像形成装置(以下単に「装置」ともいう)は、図1に示すように、転写手段を構成する転写ベルト5に沿って複数色の電子写真プロセス部(画像形成部)であるプロセスカートリッジ6(6Bk,6M,6C,6Y)が並べられた構成を備えるものであり、所謂、タンデムタイプといわれるものである。
【0021】
転写ベルト5は、矢示方向(反時計回り)に回動し、その回動方向の上流側から順に、複数のプロセスカートリッジ6が配列されている。これら複数のプロセスカートリッジ6は、形成するトナー画像の色が異なるだけで内部構成は共通である。プロセスカートリッジ6Bkはブラックのトナー画像を、プロセスカートリッジ6Mはマゼンタのトナー画像を、プロセスカートリッジ6Cはシアンのトナー画像を、プロセスカートリッジ6Yはイエローのトナー画像をそれぞれ形成する。
【0022】
以下の説明では、プロセスカートリッジ6Bkについて具体的に説明するが、他のプロセスカートリッジ6M,6C,6Yはプロセスカートリッジ6Bkと同様であるので、そのプロセスカートリッジ6M,6C,6Yの各構成要素については、プロセスカートリッジ6Bkの各構成要素に付したBkに替えて、M,C,Yによって区別した符号を図に表示するにとどめ、説明を省略する。
【0023】
転写ベルト5は、回転駆動される2次転写駆動ローラ7と転写ベルトテンションローラ8とに巻回されたエンドレスのベルトである。2次転写駆動ローラ7は、図示しない駆動手段である駆動モータにより回転駆動させられ、この駆動モータと、2次転写駆動ローラ7と、転写ベルトテンションローラ8とが、転写ベルト5を移動させる駆動手段として機能する。
【0024】
プロセスカートリッジ6Bkは、像担持体としての感光体9Bk、この感光体9Bkの周囲に配置された帯電手段である帯電器10Bk、露光手段である露光器11、現像手段である現像器12Bk、クリーニング手段であるクリーナーブレード13Bk等から構成されている。
露光器11は、各プロセスカートリッジ6(6Bk,6M,6C,6Y)が形成する画像色に対応する露光光であるレーザ光14(14Bk,14M,14C,14Y)を照射するように構成されている。
【0025】
画像形成に際し、まず印刷プロセスの立上げを行い、待機状態から印刷状態にする。
具体的には、電子写真プロセス部であるプロセスカートリッジ6Bk内の感光体9Bkと各ローラを駆動し、帯電器10Bkおよび現像器12Bkから感光体9Bkに一様のバイアスを印加する。また、転写ベルト5を駆動し、転写ベルト5の表面を中転ベルトクリーナ17によってクリーニングすることで不要な残トナーをかきとっておく。更に、定着器20内の定着ローラ201も駆動し、その定着ローラ201の温度(表面温度)である定着温度を印刷可能温度(定着時の目標温度)まで昇温しておく。
【0026】
画像形成では、感光体9Bkの外周面は、暗中にて帯電器10Bkにより一様に帯電された後、露光器11からのブラック画像に対応するレーザ光14Bkにより露光され、静電潜像を形成される。
現像器12Bkは、この静電潜像をブラックトナーにより可視像化し、このことにより感光体9Bk上にブラックのトナー画像が形成される。
【0027】
このトナー画像は、感光体9Bkと転写ベルト5とが接する位置(一次転写位置)で、一次転写ローラ15Bkの働きにより転写ベルト5上に転写される。この転写により、転写ベルト5上にブラックのトナーによる画像が形成される。
トナー画像の転写が終了した感光体9Bkは、外周面に残留した不要なトナーをクリーナーブレード13Bkにより除去された後、次の画像形成のために待機する。
以上のように、プロセスカートリッジ6Bkでブラックのトナー画像を転写された転写ベルト5は、転写ベルト5によって次のプロセスカートリッジ6Mに搬送される。
【0028】
プロセスカートリッジ6Mでは、プロセスカートリッジ6Bkでの画像形成プロセスと同様のプロセスにより感光体9M上にマゼンタのトナー画像が形成され、そのトナー画像が転写ベルト5上に形成されたブラックのトナー画像に重畳されて転写される。
転写ベルト5は、さらに次のプロセスカートリッジ6C,6Yに搬送され、同様の動作により、感光体9C上に形成されたシアンのトナー画像と、感光体9Y上に形成されたイエローのトナー画像とが、転写ベルト5上に重畳されて転写される。
【0029】
こうして、転写ベルト5上にフルカラーのトナー画像が形成される。
なお、画像形成に際して、ブラックのみの印刷の場合には、一次転写ローラ15M,15C,15Yがそれぞれ感光体9M,9C,9Yから離間された位置に退避し、前述の画像形成プロセスをブラックの場合のみ行う。
【0030】
転写ベルト5の下方には、給紙トレイ1、給紙ローラ2、レジストローラ3等を有する給紙手段が設けられている。また、2次転写駆動ローラ7に対向するように2次転写ローラ16を備えている。ここで、2次転写駆動ローラ7は、2次転写ローラ16との間に転写ベルト5を挟み込んで2次転写ニップを形成している。さらに、2次転写ニップの上方には、定着器20および排紙ローラ18等を備えている。
【0031】
給紙トレイ1は、印刷媒体としての用紙Sを複数枚重ねて収納しており、一番上の用紙Sには給紙ローラ2が当接している。その給紙ローラ2は、図示しない駆動手段である駆動モータにより矢示方向(反時計回り)に回転駆動して一番上の用紙Sを給紙し、その先端をレジストローラ3に突き当てた状態で回転を一旦停止させる。その停止タイミングは、用紙Sの先端がレジストセンサ4で検知されてから所定時間経過した時点となる。
【0032】
そして、適切なタイミング、つまり転写ベルト5により搬送されたトナー画像と用紙Sの位置が二次転写ニップで重なり合うようなタイミングで、レジストローラ3が矢示方向(反時計方向)に回転駆動を開始し、用紙Sを転写バイアスが印加された2次転写ニップに向けて送り出す。
転写ベルト5上のトナー画像は、その2次転写ニップで用紙Sに転写される。2次転写ニップを通過した後の転写ベルト5には、用紙Sに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間ベルトクリーナ17によってクリーニングされる。
【0033】
2次転写ニップを通過した用紙Sは、定着器20の定着ローラ201(定着手段)と加圧ローラ202との間を通過する際の熱と圧力により、表面に転写されたトナー画像が定着される。
その後、その用紙Sは、矢示方向(反時計回り)に回転駆動された排紙ローラ18によって当該画像形成装置の外部(機外)へと排出される。
画像形成後は、印刷プロセスを立下げて印刷状態から待機状態にする。
【0034】
具体的には、各感光体9(9Bk,9M,9C,9Y)表面の帯電器10(10Bk,10M,10C,10Y)および現像器12(12Bk,12M,12C,12Y)で印加された電位履歴をリセットするために、露光器11で各感光体9の表面を露光して各感光体9および転写ベルト5の駆動を停止する。
また、定着器20においても、定着ローラ201の駆動を停止し、定着温度を待機状態時の温度に降温する。
照度センサ32は、周辺環境の明暗を計測(検知)するためのセンサである。なお、図示は省略しているが、定着器20に定着ローラ201の温度である定着温度を計測するための温度センサを備えている。
【0035】
〔画像形成装置の基本的な電気的構成〕
次に、図1に示した画像形成装置の基本的な電気的構成について、図2を参照して説明する。
図2は、その画像形成装置の基本的な電気的構成例を示すブロック図である。
この画像形成装置は、CPU101、画像メモリ102、I/O(入出力部)103、I/F(インタフェース部)104、ROM105、RAM106、不揮発性メモリ107を含む制御部と、操作パネル108とを備えている。この画像形成装置は、レーザプリンタ又はインクジェットプリンタ等のプリント機能のみを有する画像形成装置に限らず、プリント機能の他にコピー機能等の他の機能も有するデジタル複写機又はデジタル複合機等であっても良い。
【0036】
CPU101は、ROM105に記憶されたプログラムに従い、装置を構成する各部を制御する中央処理装置である。
画像メモリ102は、印刷ジョブの印刷データに含まれる画像データを一時的に記憶するRAM等の記憶手段である。なお、印刷データに画像データではなく文字コードや描画データが含まれている場合には、それらはCPU101によって画像データに変換されるため、その変換後の画像データを記憶することになる。
【0037】
I/O103は、図1によって説明した画像形成部や、照度センサ32を含む各種センサ等の電装品に対する信号の入出力を制御する入出力手段である。
I/F104は、装置とケーブル等で接続されたパーソナルコンピュータやサーバ等の外部機器から印刷データやユーザへの問い合せ応答等のデータを受信したり、外部機器へデータを送信したりする通信手段である。
ROM105は、装置全体を制御するためのプログラムを記憶する読み出し専用の記憶手段である。
【0038】
RAM106は、装置に関する各種情報を一時的に記憶する記憶手段である。
不揮発性メモリ107は、装置に関する各種情報を保存するフラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性記憶手段である。なお、不揮発性メモリ107以外の不揮発性記憶手段、例えばHDD(ハードディスク装置)を備え、そこに各種情報を記憶することもできる。
操作パネル108は、ユーザが装置の状態把握や、装置の動作変更を設定するための手段である。
【0039】
したがって、上述した制御部、画像形成部、および照度センサ32が、この発明に関わる印刷プロセス立上げ手段、印刷手段、次印刷ジョブ投入時間予測手段、印刷状態消費電力算出手段、印刷プロセス再起動消費電力算出手段、印刷状態維持手段、印刷プロセス立下げ手段、会議スケジュール検知手段、および照度検知手段としての機能を果たすことができる。また、CPU101が、ROM105内のプログラムを実行することにより、この発明に関わる印刷プロセス立上げ工程、印刷工程、次印刷ジョブ投入時間予測工程、印刷状態消費電力算出工程、印刷プロセス再起動消費電力算出工程、印刷状態維持工程、印刷プロセス立下げ工程、会議スケジュール検知工程、および照度検知工程を有する制御方法を実行させることができる。
【0040】
〔この発明に関わる処理〕
次に、図2に示した画像形成装置の制御部によるこの発明に関わる処理について説明する。
図3は、その画像形成装置の制御部によるこの発明に関わる処理の一例を示すフローチャートである。
【0041】
この画像形成装置の制御部は、定期的に図3に示す処理ルーチンを開始し、まずステップS1で印刷ジョブが投入されたか否か(印刷ジョブを受信したか否か)を判断し、印刷ジョブが投入された場合に、ステップS2へ進んで印刷プロセスを立上げる。
印刷プロセスの立上げでは、各感光体9と転写ベルト5を駆動して各感光体9への帯電バイアス、現像バイアス、転写バイアスの印加および転写ベルト5のクリーニングを含む作像プロセスの立上げと、定着ローラ201を駆動して定着温度を印刷(定着)時の目標温度である印刷可能温度まで昇温する定着プロセスの立上げを行う。印刷プロセスを立上げると、装置は待機状態から印刷状態となる。
【0042】
なお、この画像形成装置が、プリント機能の他に、コピー機能等の他の機能を備えたデジタル複写機又はデジタル複合機のような画像形成装置であった場合、印刷ジョブの受信以外に、操作パネル108上での操作によるコピー開始指示や外部機器からのファクシミリ(FAX)データの受信を、制御部が印刷ジョブの投入と判断し、印刷プロセスを立上げることもできる。
【0043】
この画像形成装置の制御部は、ステップS2の処理を行った後、ステップS3へ進み、投入された印刷ジョブの終了後に次の印刷ジョブが投入されるまでの時間である次印刷ジョブ投入時間Tを予測(算出)する。この予測処理の詳細フローは、図6〜図8によって説明する。
次に、ステップS4へ進み、投入された印刷ジョブを実行する。つまり、投入された印刷ジョブに含まれている画像データ(又はその印刷ジョブ内の文字コードによって作成した画像データ)を可視画像として印刷媒体に印刷する処理を実行する。
【0044】
投入された印刷ジョブが終了した後、ステップS5へ進み、印刷状態が次印刷ジョブ投入時間Tを継続する場合(印刷プロセスを立下げずに次印刷ジョブ投入時間Tまで印刷状態を維持する場合)の消費電力W1を算出する。つまり、印刷状態が1秒間継続する場合の消費電力をR1とすると、W1=R1×Tとなる。R1は、同じ状態をキープしたときの単位時間当たりの消費電力なので固定値とみなす。よって、R1は予め実験で計測し、ROM105に保持しておく。
【0045】
次に、ステップS6へ進み、印刷プロセスを立下げて次印刷ジョブ投入時間Tの経過後に印刷プロセスを再度立上げる場合の(再度立上げるのに要する)消費電力W2を算出する。その処理の詳細は、図4で説明する。
次に、ステップS7へ進み、W1とW2を比較する。
そして、W1<W2の場合に、ステップS8へ進み、印刷状態維持の経過時間の測定(計測)を開始する時間を測定開始する。
【0046】
次に、ステップS9において次の印刷ジョブが投入されたか否かを、ステップS10においてステップS8で測定を開始した印刷状態維持の経過時間が次印刷ジョブ投入時間Tを経過したか否かをそれぞれ判断する。
そして、上記印刷状態維持の経過時間が次印刷ジョブ投入時間Tを経過する前に次の印刷ジョブが投入された場合には、ステップS3へ戻って上述と同様の処理を行う。
また、次の印刷ジョブが投入される前に上記印刷状態維持の経過時間が次印刷ジョブ投入時間Tを経過した場合、あるいはW1≧W2の場合には、ステップS11へ進む。
【0047】
ステップS11では、印刷プロセスの立下げを行う。具体的には、帯電バイアス、現像バイアス、転写バイアスの印加による電位履歴を露光器11で各感光体9の表面を露光してリセットした後、各感光体9の駆動と転写ベルト5の駆動を停止する作像プロセスの立下げと、定着ローラ201の駆動を停止して定着温度を待機時温度(待機温度)に降温する定着プロセスの立下げを行う。印刷プロセスを立下げると、装置はそれまでの印刷状態から待機状態となる。
【0048】
次に、図3のステップS6における印刷プロセスを立下げて次印刷ジョブ投入時間Tの経過後に印刷プロセスを再度立上げる場合の消費電力W2を算出する処理について説明する。
図4は、その処理のサブルーチンの一例を示すフローチャートである。
図5は、図1に示した画像形成装置における経過時間と定着ローラ201の温度(定着温度)との関係の一例を示す線図である。
【0049】
表1は、図2のROM105に記憶保持されている上記消費電力Wの算出に使用するテーブル(定着プロセス立上げ消費電力テーブル)の内容の一例を示している。この定着プロセス立上げ消費電力テーブルは、図1に示した画像形成装置における定着プロセスの立下げ時間と定着温度と消費電力との対応関係を示したものである。
【0050】
【表1】

【0051】
ここで、作像プロセスの立下げの消費電力(作像プロセスを立下げる場合の消費電力)をWie、作像プロセスの立上げの消費電力(作像プロセスを立上げる場合の消費電力)をWisとする。その各消費電力Wie,Wisは、決められたシーケンス処理を実施するので、固定値とみなす。よって、Wie,Wisは予め実験で計測し、ROM105に保持しておく。
【0052】
また、図5に示すように、定着プロセスの立下げの消費電力をWfe、定着プロセスの立上げの消費電力をWfs、待機状態にて定着温度を待機時の温度に維持する際の消費電力をWfwとする。
Wfeは、定着ローラ201の駆動と定着ローラ201に内蔵されているヒータの点灯を停止するだけなので、十分小さいとし、無視する。
Wfwは、定着温度を待機温度に維持する時間によって変動する。
Wfsは、定着プロセスの立下げ時の定着温度の降温具合で変動する。
よって、W2を算出するには変動するWfwとWfsを予測する必要がある。
【0053】
図2に示した画像形成装置の制御部は、まず図4のステップS21において、定着プロセスの立上げ時の消費電力Wfsを予測する。
ここで、表1に示した定着プロセス立上げ消費電力テーブルを予め実験で計測し、ROM105に保持しておく。
定着プロセス立上げ消費電力テーブルは、定着プロセスの立下げ時間が経過したときに、定着ローラ201は何度まで降温されているか、また、降温された定着ローラ201を印刷可能温度まで昇温する際の消費電力を示している。
【0054】
例えば、次印刷ジョブ投入時間(印刷ジョブ平均投入時間)Tが120[秒]であるとき、定着プロセスの立上げ時は定着ローラ201の温度を定着待機温度である150度から180度まで昇温とし、WfsはWfs_150(W)と予測する。また、次印刷ジョブ投入時間Tが30(秒)のとき、定着プロセスの立上げ時は定着ローラ201の温度を171度から180度まで昇温するとし、WfsはWfs_30(W)と予測する。
【0055】
次のステップS22では、定着待機時の消費電力Wfwを予測する。定着待機時は、定着ローラ201を待機時温度に維持する際の消費電力なので、1秒間当たりの消費電力をR2とすると、R2は固定値とみなす。R2は予め実験で計測してROM105に保持しておくことで、Wfwは次式で算出する。
Wfw=R2×(印刷ジョブ投入時間T−定着ローラが待機温度に降温する時間)
ただし、印刷ジョブ投入時間T<定着ローラ201が待機温度に降温する時間のときは、Wfw=0とする。
【0056】
例えば、印刷ジョブ投入時間Tが120(秒)であるとき、
Wfw=R2×(120−100)=R2×20
となる。
また、次印刷ジョブ投入時間Tが30[秒]であるとき、Wfw=0となる。
次のステップS23では、W2を次式で算出する。
W2=Wie+Wis+Wfs+Wfw
【0057】
次に、図3のステップS3における次印刷ジョブ投入時間Tの予測処理の第1例について説明する。
図6は、その予測処理のサブルーチンの第1例を示すフローチャートである。
表2〜表5は、図2の不揮発性メモリ107に記憶保持されている図6に示す次印刷ジョブ投入時間Tの予測処理で使用するテーブル(次印刷ジョブ投入時間予測テーブル)の内容の異なる例を示している。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
図2に示した画像形成装置の制御部は、まず図6のステップS31において、現在の日時を検知(取得)する。この日時の情報は、時計手段としての図示しない時計回路で生成出力される。
次のステップS32では、印刷ジョブ投入総待ち受け時間を算出し、更新する。ここで、例えば表2に示すような次印刷ジョブ投入時間予測テーブルを不揮発性メモリ107に予め記憶しておき、その次印刷ジョブ投入時間予測テーブル中の最後に印刷ジョブが投入された最新日時である「印刷ジョブ投入LATEST日時」からステップS31で検知した日時までの経過時間を算出し、次印刷ジョブ投入時間予測テーブル中の「印刷ジョブ投入総待ち受け時間(秒)」を更新する。このとき、次印刷ジョブ投入時間予測テーブル中の「印刷ジョブLATEST投入日時」をステップS31で検知した日時に更新する。
【0063】
次のステップS33では、印刷ジョブ総投入件数を算出し、更新する。つまり、次印刷ジョブ投入時間予測テーブル中の「印刷ジョブ総投入件数」に「1」を加算し、その次印刷ジョブ投入時間予測テーブルを更新する。
次のステップS34では、次印刷ジョブ投入時間Tを次式より算出する。
次印刷ジョブ投入時間(印刷ジョブ平均投入時間)T
=印刷ジョブ投入総待ち受け時間(秒)/印刷ジョブ総投入件数
【0064】
なお、ステップS31〜S34で使用する次印刷ジョブ投入時間予測テーブルは、例えば表3に示すように時間帯毎に記憶し、ステップS31で日時の代わりに検知した時間帯に該当する印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入総待ち受け時間から次印刷ジョブ投入時間Tを算出しても良い。
あるいは、ステップS31〜ステップS34で使用する次印刷ジョブ投入時間予測テーブルは、例えば表4に示すように曜日毎に記憶し、ステップS31で日時の代わりに検知した曜日に該当する印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入総待ち受け時間から次印刷ジョブ投入時間Tを算出しても良い。
【0065】
あるいはまた、ステップS31〜ステップS34で使用する次印刷ジョブ投入時間予測テーブルは、例えば表5に示すように印刷ジョブ毎に投入日時を記憶し、ステップS31で検知した日時から過去の有効期間内に投入された印刷ジョブ総投入件数と有効期間内の待ち受け時間から次印刷ジョブ投入時間Tを算出しても良い。
ここで、ステップS31で検知した日時を2010年06月11日(金)14時10分00秒、過去の有効期間を600秒(2010年06月11日(金)14時00分00秒まで有効)と仮定すると、過去の有効期間内に投入された印刷ジョブ総投入件数は、以下の(a)(b)に示す2件となり、次印刷ジョブ投入時間T=600/2=300秒と算出できる。
(a)2010年06月11日(金)14時03分24秒
(b)2010年06月11日(金)14時00分15秒
【0066】
次に、図3のステップS3における次印刷ジョブ投入時間Tの予測処理の第2例について説明する。なお、この例の処理フローは図6に示した処理フローと同じ処理があるため、ここでは異なる処理を中心に説明する。
図7は、その予測処理のサブルーチンの第2例を示すフローチャートである。
図2に示した画像形成装置の制御部は、図7のステップS41〜S43において図6のステップS31〜S33と同様の処理を実行した後、ステップS44で会議スケジュール(会議予定)の情報を検知(取得)する。
【0067】
ここで、利用者の会議スケジュールの情報を事前に登録しておくことにより、その登録した会議スケジュールの情報を検知できる。会議スケジュール情報の事前登録は、図2のI/F104を介して当該画像形成装置に接続可能な端末(外部機器)から利用者の操作によって会議スケジュールを入力し、不揮発性メモリ107に記憶させることによって行う。なお、操作パネル108上での利用者の操作によって会議スケジュールの情報を入力し、不揮発性メモリ107に記憶させて登録するようにしても良い。ステップS44で検知する会議スケジュールの情報の一例を表6に示す。
【0068】
【表6】

【0069】
次のステップ45では、ステップS41で検知した日時から予め設定された規定時間以内に会議の開始があるか否かを判断する。なお、会議スケジュール情報として予め会議名や参加者名も登録しておき、ステップS41で検知した日時から規定時間以内に特定の会議名、参加者名を含む会議の開始があるか否かを判断しても良い。
【0070】
そして、ステップS41で検知した日時から規定時間以内に会議の開始があると判断した場合には、ステップS46で図6のステップS34と同様に次印刷ジョブ投入時間Tを算出する。
ステップS41で検知した日時から規定時間以内に会議の開始がないと判断した場合には、ステップS47で次印刷ジョブ投入時間Tを予め設定された規定値である比較的小さい数値(固定値)に設定する。これにより、会議資料を印刷する利用者が多い場合に、消費電力の低減が期待できる。
【0071】
次に、図3のステップS3における次印刷ジョブ投入時間Tの予測処理の第3例について説明する。なお、この例の処理フローも図6に示した処理フローと同じ処理があるため、ここでは異なる処理を中心に説明する。
図8は、その予測処理のサブルーチンの第3例を示すフローチャートである。
図2に示した画像形成装置の制御部は、図8のステップS51〜S53において図6のステップS31〜S33と同様の処理を実行した後、ステップS54へ進み、図1の照度センサ32で当該画像形成装置が設置されてある場所である周辺環境の照度を検知する。
【0072】
次のステップ45では、ステップS54での検知結果から周辺環境が暗いか否か(明るいか)を判断する。その判断は、照度センサ32で検知した周辺環境の照度を予め設定された所定値と比較し、その照度が所定値以下であるか否かによって行える。
そして、ステップS54での検知結果から周辺環境が暗くない(明るい)と判断した場合(照度センサ32で検知した周辺環境の照度が所定値を超える場合)には、ステップS56で図6のステップS34と同様に次印刷ジョブ投入時間Tを算出する。
【0073】
ステップS54での検知結果から周辺環境が暗いと判断した場合(照度センサ32で検知した周辺環境の照度が所定値以下である場合)には、ステップS57で次印刷ジョブ投入時間Tを予め設定された規定値である十分大きい数値(固定値)に設定する。これにより、印刷ジョブ終了後は直ぐに印刷プロセスを立下げるため、周辺環境が暗く利用頻度が少ない場合に、消費電力の低減が期待できる。
【0074】
このように、この実施形態の画像形成装置が、印刷ジョブの終了後に次の印刷ジョブが投入されるまでの時間である次印刷ジョブ投入時間の予測、印刷ジョブの終了後に印刷プロセスを立下げずに次印刷ジョブ投入時間まで印刷状態を維持する場合の消費電力(印刷状態消費電力)の算出、および印刷ジョブの終了後に印刷プロセスを立下げて次印刷ジョブ投入時間の経過後に印刷プロセスを再度立上げる場合の消費電力(印刷プロセス再起動消費電力)の算出をそれぞれ行った後、印刷状態消費電力の算出値と印刷プロセス再起動消費電力の算出値とを比較し、その比較の結果、印刷状態消費電力の算出値が印刷プロセス再起動消費電力の算出値より小さい場合に、印刷ジョブが終了した後も印刷プロセスを立下げずに印刷状態を予測した次印刷ジョブ投入時間の範囲内で維持することにより、印刷ジョブ終了直後に次の印刷ジョブが断続的に投入されるような投入頻度が高い状況での消費電力を低減することができる。
【0075】
さらに、印刷状態を維持した状態で、次の印刷ジョブが投入される前に次印刷ジョブ投入時間を経過した場合に、印刷プロセスを立下げて印刷状態から待機状態にすることにより、次の印刷ジョブが投入されないまま印刷状態を無駄に維持することがないため、消費電力を確実に低減することができる。
また、以下の(1)〜(4)のいずれかに示す作用効果を得ることもできる。
【0076】
(1)過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を記憶し、次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ平均投入時間で算出することにより、次印刷ジョブ投入時間を効率良く予測することができる。
(2)過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を時間帯毎に記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の時間帯に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出することにより、次印刷ジョブ投入時間を時間帯毎に効率良く予測することができる。
【0077】
(3)過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を曜日毎に記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の曜日に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出することにより、次印刷ジョブ投入時間を曜日毎に効率良く予測することができる。
(4)過去に上記印刷ジョブが投入された時刻を記憶し、上記次印刷ジョブ投入時間を規定期間内の印刷ジョブ平均投入時間で算出することにより、次印刷ジョブ投入時間を規定期間内で効率良く予測することができる。
【0078】
さらにまた、印刷ジョブが投入された時刻から規定時間以内に利用者の会議予定がある場合に、次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定することにより、会議資料を印刷する利用者が多い場合に、消費電力の低減を期待することができる。
あるいは、印刷ジョブの投入時に当該画像形成装置の周辺環境の照度が所定値以下の場合に、次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定することにより、印刷ジョブ終了後は直ぐに印刷プロセスを立下げることが可能になるため、周辺環境が暗く利用頻度が少ない場合に、消費電力の低減を期待することができる。
【0079】
〔この発明に関わるプログラム〕
このプログラムは、複写機等の画像形成装置を制御するコンピュータ(CPU)に、この発明に関わる印刷プロセス立上げ工程、印刷工程、次印刷ジョブ投入時間予測工程、印刷状態消費電力算出工程、印刷プロセス再起動消費電力算出工程、印刷状態維持工程、印刷プロセス立下げ工程、会議スケジュール検知工程、および照度検知工程を有する制御方法を実行させるためのプログラムであり、このようなプログラムをコンピュータに実行させることにより、上述したような作用効果を得ることができる。
【0080】
このようなプログラムは、はじめから画像形成装置に備えるROM、あるいは不揮発性メモリ(フラッシュROM,EEPROM等)、あるいはHDD(ハードディスク装置)などの記憶手段に格納しておいてもよいが、記録媒体であるCD−ROM、あるいはメモリカード,フレキシブルディスク,MO,CD−R,CD−RW,DVD+R,DVD+RW,DVD−R,DVD−RW,又はDVD−RAM等の不揮発性記録媒体(メモリ)に記録して提供することもできる。それらの記録媒体に記録されたプログラムを画像形成装置にインストールしてCPUに実行させるか、CPUにそれらの記録媒体からこのプログラムを読み出して実行させることにより、上述した各手順を実行させることができる。
さらに、ネットワークに接続され、プログラムを記録した記録媒体を備える外部機器あるいはプログラムを記憶手段に記憶した外部機器からダウンロードして実行させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上の説明から明らかなように、この発明によれば、画像形成装置において、印刷ジョブ終了直後に次の印刷ジョブが断続的に投入されるような投入頻度が高い状況での消費電力を低減することができる。したがって、印刷ジョブ終了直後に次の印刷ジョブが断続的に投入されるような投入頻度が高い状況での消費電力を低減できる画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0082】
20:定着器 32:照度センサ 101:CPU 102:画像メモリ
103:I/O 104:I/F 105:ROM 106:RAM
107:不揮発性メモリ 108:操作パネル 201:定着ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開2008−273141号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブの投入時に、印刷プロセスを立上げて待機状態から印刷状態にする印刷プロセス立上げ手段と、前記印刷状態にて前記印刷ジョブを実行する印刷手段と、該印刷手段による前記印刷ジョブの終了後、前記印刷プロセスを立下げて前記印刷状態から前記待機状態にする印刷プロセス立下げ手段とを有する画像形成装置であって、
前記印刷ジョブの終了後に次の印刷ジョブが投入されるまでの時間である次印刷ジョブ投入時間を予測する次印刷ジョブ投入時間予測手段と、
前記印刷ジョブの終了後に前記印刷プロセスを立下げずに前記次印刷ジョブ投入時間まで印刷状態を維持する場合の消費電力を算出する印刷状態消費電力算出手段と、
前記印刷ジョブの終了後に前記印刷プロセスを立下げて前記次印刷ジョブ投入時間の経過後に前記印刷プロセスを再度立上げる場合の消費電力を算出する印刷プロセス再起動消費電力算出手段と、
前記印刷状態消費電力算出手段による算出値と前記印刷プロセス再起動消費電力算出手段による算出値とを比較する比較手段と、
該比較手段による比較の結果、前記印刷状態消費電力算出手段による算出値が前記印刷プロセス再起動消費電力算出手段による算出値より小さい場合に、前記印刷ジョブが終了した後も前記印刷プロセスを立下げずに前記印刷状態を前記次印刷ジョブ投入時間予測手段によって予測された次印刷ジョブ投入時間の範囲内で維持する印刷状態維持手段とを設けたことを特徴とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷プロセス立下げ手段は、前記印刷状態維持手段によって前記印刷状態が維持された状態で、前記次の印刷ジョブが投入される前に前記次印刷ジョブ投入時間を経過した場合に、前記印刷プロセスを立下げて前記印刷状態から前記待機状態にすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記次印刷ジョブ投入時間予測手段は、過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を記憶し、前記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ平均投入時間で算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記次印刷ジョブ投入時間予測手段は、過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を時間帯毎に記憶し、前記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の時間帯に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記次印刷ジョブ投入時間予測手段は、過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を曜日毎に記憶し、前記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の曜日に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記次印刷ジョブ投入時間予測手段は、過去に前記印刷ジョブが投入された時刻を記憶し、前記次印刷ジョブ投入時間を規定期間内の印刷ジョブ平均投入時間で算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
利用者の会議予定を検知する会議スケジュール検知手段を設け、
前記次印刷ジョブ投入時間予測手段は、前記会議スケジュール検知手段による検知結果に基づいて前記印刷ジョブが投入された時刻から規定時間以内に利用者の会議予定があると判断した場合に、前記次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
当該画像形成装置の周辺環境の照度を検知する照度検知手段を設け、
前記次印刷ジョブ投入時間予測手段は、前記印刷ジョブの投入時に前記照度検知手段によって検知された前記周辺環境の照度が所定値以下の場合に、前記次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
印刷ジョブの投入時に、印刷プロセスを立上げて待機状態から印刷状態にする印刷プロセス立上げ工程と、前記印刷状態にて前記印刷ジョブを実行する印刷工程と、該印刷工程による前記印刷ジョブの終了後、前記印刷プロセスを立下げて前記印刷状態から前記待機状態にする印刷プロセス立下げ工程とを有する画像形成装置における制御方法であって、
前記印刷ジョブの終了後に次の印刷ジョブが投入されるまでの時間である次印刷ジョブ投入時間を予測する次印刷ジョブ投入時間予測工程と、
前記印刷ジョブの終了後に前記印刷プロセスを立下げずに前記次印刷ジョブ投入時間まで印刷状態を維持する場合の消費電力を算出する印刷状態消費電力算出工程と、
前記印刷ジョブの終了後に前記印刷プロセスを立下げて前記次印刷ジョブ投入時間の経過後に前記印刷プロセスを再度立上げる場合の消費電力を算出する印刷プロセス再起動消費電力算出工程と、
前記印刷状態消費電力算出工程による算出値と前記印刷プロセス再起動消費電力算出工程による算出値とを比較する比較工程と、
該比較工程による比較の結果、前記印刷状態消費電力算出工程による算出値が前記印刷プロセス再起動消費電力算出工程による算出値より小さい場合に、前記印刷ジョブが終了した後も前記印刷プロセスを立下げずに前記印刷状態を前記次印刷ジョブ投入時間予測工程によって予測された次印刷ジョブ投入時間の範囲内で維持する印刷状態維持工程とを有することを特徴とすることを特徴とする制御方法。
【請求項10】
前記印刷プロセス立下げ工程は、前記印刷状態維持工程によって前記印刷状態が維持された状態で、前記次の印刷ジョブが投入される前に前記次印刷ジョブ投入時間を経過した場合に、前記印刷プロセスを立下げて前記印刷状態から前記待機状態にすることを特徴とする請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記次印刷ジョブ投入時間予測工程は、過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を記憶し、前記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ平均投入時間で算出することを特徴とする請求項9又は10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記次印刷ジョブ投入時間予測工程は、過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を時間帯毎に記憶し、前記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の時間帯に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出することを特徴とする請求項9又は10に記載の制御方法。
【請求項13】
前記次印刷ジョブ投入時間予測工程は、過去の印刷ジョブ総投入件数と印刷ジョブ投入待ち受け総時間を曜日毎に記憶し、前記次印刷ジョブ投入時間を印刷ジョブ投入時の曜日に対応する印刷ジョブ平均投入時間で算出することを特徴とする請求項9又は10に記載の制御方法。
【請求項14】
前記次印刷ジョブ投入時間予測工程は、過去に前記印刷ジョブが投入された時刻を記憶し、前記次印刷ジョブ投入時間を規定期間内の印刷ジョブ平均投入時間で算出することを特徴とする請求項9又は10に記載の制御方法。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれか一項に記載の制御方法において、
利用者の会議予定を検知する会議スケジュール検知工程を有し、
前記次印刷ジョブ投入時間予測工程は、前記会議スケジュール検知工程による検知結果に基づいて前記印刷ジョブが投入された時刻から規定時間以内に利用者の会議予定があると判断した場合に、前記次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定することを特徴とする制御方法。
【請求項16】
請求項9乃至14のいずれか一項に記載の制御方法において、
当該画像形成装置の周辺環境の照度を検知する照度検知工程を有し、
前記次印刷ジョブ投入時間予測工程は、前記印刷ジョブの投入時に前記照度検知工程によって検知された前記周辺環境の照度が所定値以下の場合に、前記次印刷ジョブ投入時間を規定値に設定することを特徴とする制御方法。
【請求項17】
コンピュータに、請求項9乃至16のいずれか一項に記載の制御方法を実行させるためのプログラム。
【請求項18】
請求項17記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−116155(P2012−116155A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270188(P2010−270188)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】