説明

画像形成装置

【課題】 画像形成装置で発生する色ずれの補正を行うときに、ポリゴンミラーを駆動するモータに負担をかけることなく確実にポリゴンミラーの位相を制御し、副走査方向の色ずれを低減できる、故障が少なく製品寿命の長い画像形成装置を提供する。
【解決手段】 作像手段の副走査方向の書き出し位置を補正して、色ずれ量を、第1の作像手段の副走査方向の書き出し位置が、第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置よりも遅延している色ずれ量に置き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザービーム等の光ビームにより走査する光ビーム走査装置を複数備えて、カラー画像を形成する画像形成装置が知られている。このような画像形成装置では、各色(例えば、ブラック:K、シアン:C、マゼンタ:M、イエロー:Y)の画像形成ユニットをそれぞれ備えており、各色のトナーを用紙上に重ね合わせて転写し、多色プリントを行う。
【0003】
ところが、各色の書き出し位置がずれて、用紙に重ね合わせて転写したときに色ずれとして現れ、プリント品質を低下させてしまう場合がある。
【0004】
また、このような画像形成装置としてのデジタル複写機や、レーザプリンタ等は、近年、高速化が要求されており、高品質の画像を維持しつつ高速にプリントを行うために、連続プリント中にプリントジョブを中断することなく色ずれを補正する技術が必要となっている。
【0005】
レジストレーションずれを補正する技術として、中間転写体に各色の特定パターンのトナー像を形成し、光源とフォトディテクタ等からなるセンサによってその特定パターンを検出し、レジストレーションずれ量を算出して補正を行う方法や、中間転写体の画像形成領域外に予め特定のパターンを作成しておき、各色の画像形成の間にセンサによってそのパターンを検出し、パターンの検出タイミングと主走査方向の書き込み開始信号の検出タイミングによりレジストレーションずれ量を算出して補正を行う方法がある。
【0006】
上記のようなレジストレーションずれを補正する技術のうち、特に副走査方向の1ライン以下のレジストレーションずれに関しては、画像形成ユニット内に配置された回転多面鏡(以下、ポリゴンミラーともいう)の回転位相を制御して書き出し位置を制御することにより、レジストレーションずれを補正する技術が従来より提案されている。
【0007】
例えば、位置ずれ量検出手段によって各異なる色の画像の位置ずれ量を検出し、位置ずれ量を走査ピッチで割って、商N及び余りRに分離し、商Nに基づいて対応する露光手段の露光タイミングを変化させ、余りRに基づいて対応する露光手段の走査位相を変化させることにより、異なる色の画像の記録位置を走査ピッチ未満の位置ずれまで調整することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
一方、ポリゴンミラーは、駆動モータに取り付けられ、ポリゴンミラーが一定の回転数で精度よく回転するように、モータに供給される同期クロックとポリゴンミラーの回転に同期して発生する比較クロックとによりPLL(Phase Lock Loop)制御が行われるのが一般的である。比較クロックは例えば、駆動モータ内に設けられた周波数発生器(Frequency Generator)からの出力やホール素子出力、若しくは主走査方向の書き込みタイミング信号となる走査露光装置内の走査面外に配置されたセンサによる走査光位置検出器出力である。
【0009】
ポリゴンミラーの回転位相の制御は、ポリゴンミラーを回転させる駆動モータに供給される同期クロックの位相を制御することにより行うことができる。つまり、同期クロックの位相が変化することにより、同期クロックと比較クロックとの間に位相差が生じ、この位相差を解消するように駆動モータの回転速度が変化するとともに回転位相も変化し、それに伴って主走査方向の書き込みタイミング信号の出力タイミングも変化するので、副走査方向の書き込み開始が変化する。
【0010】
このような駆動モータへ供給する同期クロックを制御して、副走査方向への書き込み開始位置を制御する技術としては、画像形成装置において、各色の位置ずれ検出用にトナー像パターンを中間転写体に形成し、形成されたトナー像パターンに基づいて、各色成分の副走査方向の書き出し位置の位置ずれ量を検出し、位置ずれ量に基づいて駆動モータの位相のみを制御し、副走査方向の位置ずれを防ぐ技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
特許文献2においては、駆動モータの位相制御は、駆動モータへ供給する同期クロックと、ポリゴンミラーの回転速度に応じた比較クロックとの比較結果に基づいて位相を制御するPLL制御手段を用い、前記位置ずれ量に基づいて前記同期クロックのデューティを変更することで副走査方向の1ライン未満の位置ずれを補正するものである。
【0012】
また、回転位相制御を容易にするため、ポリゴンミラーの面数と駆動モータの磁極数とが対応するように構成し、ポリゴンミラーの面位相が駆動モータの磁極が発生するパルスの位相によって一意に決まるようにして、副走査方向の位置ずれを防ぐ技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0013】
また、駆動モータが1回転あたりに発生するパルス数でポリゴンミラーの1回転角で割った制御角を、前記ポリゴンミラーのミラー面数でポリゴンミラーの1回転角で割った分割角の整数倍に等しくして位相制御を行うことにより、駆動モータ選択の自由度を増し、トルク発生効率の良い磁極数の駆動モータを使って、副走査方向の位置ずれを防ぐ技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特許第3282353号公報
【特許文献2】特開平11−218696号公報
【特許文献3】特開2000−94747号公報
【特許文献4】特開2003−312056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
位相ずれには、目標とする位相に対して遅れている場合と、進んでいる場合の両方が考えられるが、ポリゴンミラーの位相ずれを制御する際に、位相を進み方向に制御すると、ポリゴン駆動モータの回転を加速することになり、軸受け部にストレスを発生し、故障の原因となる問題がある。
【0015】
特許文献1では、位置ずれ量を走査ピッチで割って、商N及び余りRに分離し、商Nに基づいて対応する露光手段の露光タイミングを変化させ、余りRに基づいて対応するポリゴンミラーの走査位相を変化させるので、位置ずれの方向によっては位相を進み方向に制御する場合があるという問題があった。
【0016】
同様に特許文献2、3,4でも、位置ずれの方向によっては進み方向に制御する場合があるという問題があった。
【0017】
さらに、特許文献2では、位置ずれをポリゴンミラーの走査位相制御のみで補正するので、1ライン以上の補正ができないという問題があった。
【0018】
特許文献3では、ポリゴンミラーの面数により駆動モータの磁極数が一意に決まるので、駆動モータのトルク発生効率の良い磁極数を選択できないのに加え、位相調整が段階的にしか行えないという問題があった。
【0019】
特許文献4では、駆動モータ選択の自由度は増したが、依然としてポリゴンミラーのミラー面数と駆動モータが1回転あたりに発生するパルス信号の数に制約があり、最も効率の良いポリゴンミラーと駆動モータとの組み合わせを選択する上で問題がある。
【0020】
そこで本発明は、画像形成装置で発生する色ずれの補正を行うときに、ポリゴンミラーを駆動するモータに負担をかけることなく確実にポリゴンミラーの位相を制御し、副走査方向の色ずれを低減できる、故障が少なく製品寿命の長い画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0022】
(請求項1)
回転駆動される像担持体と、画像データに応じて出力制御されるレーザ素子と、レーザ素子から発せられたレーザ光を反射し像担持体上で主走査方向に走査露光するポリゴンミラーとをそれぞれ有する作像手段を少なくとも2つ備え、それぞれの作像手段で作成されたそれぞれ異なる色の画像を主走査方向と直交する副走査方向へ回転駆動される転写ベルトもしくは転写ベルトにより搬送される転写材に多重転写することにより画像を形成する画像形成装置であって、
前記それぞれの作像手段を制御して、各色からなるレジストパターンの組を転写ベルト上に形成させる制御手段と、
前記レジストパターンの組を検出して色ずれ量に関する情報を取得する色ずれ情報取得手段と、
基準クロック信号を生成する基準クロック信号生成手段と、
前記ポリゴンミラーを回転駆動するミラー駆動手段と、
前記ポリゴンミラーの回転に同期した比較クロック信号を発生する比較クロック信号発生手段と、
前記色ずれ情報取得手段によって取得した色ずれ情報に含まれる色ずれ量が、第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置が第1の作像手段の副走査方向の書き出し位置よりも遅延していることを示す量である場合、前記第1の作像手段又は前記第2の作像手段の1ライン分を単位として、前記第1の作像手段又は前記第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置を補正して、該色ずれ量を、前記第1の作像手段の副走査方向の書き出し位置が、前記第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置よりも遅延している色ずれ量に置き換える書き出し位置補正手段と、
前記書き出し位置補正手段によって置き換えられた色ずれ量に基づいて、前記基準クロック信号生成手段で生成された基準クロック信号の位相を補正して同期クロック信号とするクロック補正手段と、
前記クロック補正手段で補正された同期クロック信号及び前記比較クロック信号発生手段で生成された比較クロック信号に基づいて、前記第2の作像手段のミラー駆動手段を制御する駆動制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【0023】
(請求項2)
前記クロック補正手段は、前記第2の作像手段のミラー駆動手段の回転速度を減速させることで前記基準クロック信号の位相を補正して同期クロック信号とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【0024】
(請求項3)
前記クロック補正手段は、前記基準クロック信号生成手段で生成された基準クロック信号の位相を、前記基準クロック信号の半周期よりも少ない量ずつ、複数回に亘って補正して同期クロック信号とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の発明によれば、作像手段の副走査方向の書き出し位置を補正して、色ずれ量を、第1の作像手段の副走査方向の書き出し位置が、第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置よりも遅延している色ずれ量に置き換えることにより、ポリゴンミラーの回転を必ず減速することで位相制御できるので、軸受け部のストレスが無く、故障が少なく製品寿命の長い、副走査方向の色ずれを低減した画像形成装置を提供できる。
【0026】
請求項2に記載の発明によれば、ポリゴンミラーの回転を加速する際に発生する軸受け部のストレスが無いので、故障が少なく製品寿命の長い画像形成装置を提供できる。
【0027】
請求項3に記載の発明によれば、ミラー面数とポリゴンミラーが1回転あたりに発生するパルス数やモータ極数の関係にかかわらず、ポリゴンミラーを確実に位相制御し、副走査方向の色ずれを低減した画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色構成のタンデム型のカラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にとって説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る画像形成装置の実施形態であるプリンタ1の概略構成を示す概念図である。
【0030】
プリンタ1は、転写ベルト23に沿って、各色の作像手段101C、101M、101Y、101Kが並べられて構成されている。各色の作像手段101C、101M、101Y、101Kはすべて同様の構成であり、例えば、シアン(C)作像手段101Cには、矢示A方向に回転駆動される像担持体17Cの周囲に、走査露光装置10C、現像器104C、帯電チャージャ102C、クリーナ103Cが配置されている。また、各色の作像手段101C、101M、101Y、101Kにはそれぞれ、転写ベルト23を挟んで対向して転写チャージャ105C、105M、105Y、105Kが備えられる。
【0031】
転写ベルト23は、2つの搬送ローラ231、232により張架されるとともに矢示B方向へ回転駆動される。なお、本実施の形態において、転写ベルト23が回転駆動される矢示B方向を副走査方向とする。
【0032】
また、プリンタ1は、転写材Sを矢示F方向に搬送する給紙ローラ22a、22bと、給紙ローラ22aにより搬送される転写材Sの通過を検知するTODセンサ24と、転写ベルト23に形成されるレジストパターンを検出するレジストセンサ25と、転写ベルト23上の画像を転写材Sに転写する二次転写ローラ26とを備えている。
【0033】
各色の作像手段101C、101M、101Y、101Kの画像形成プロセスについて、シアン作像手段101Cを例に説明する。像担持体17Cは、まず帯電チャージャ102Cによって帯電され、次に走査露光装置10Cによって発光されたレーザ光で露光されることにより、その表面に静電潜像が形成される。この静電潜像が現像器104Cによって現像され、像担持体17C上にはトナー画像が形成される。このトナー画像は、像担持体17Cと転写ベルト23とが接する位置で、転写チャージャ105Cによって転写ベルト23に転写される。その後、像担持体17Cに残ったトナーは、クリーナ103Cによってクリーニングされる。このプロセスによって、転写ベルト23の表面にシアンの画像が形成される。
【0034】
シアン作像手段101Cによるシアン画像の形成に続いて、他の3色の作像手段101M、101Y、101Kによって順に、マゼンタ、イエロー、ブラックの画像が形成され、それぞれ順に転写ベルト23のシアンの画像の上に重ねられる。転写ベルト23上に重ねられた4色の画像は、搬送ローラ232と二次転写ローラ26により転写材Sに転写される。トナー像を担持した転写材Sは、この後、図示しない定着装置で定着されて排出される。
【0035】
なお、各色の作像手段101C、101M、101Y、101Kによる画像の形成及び転写ベルト23の回転駆動は、TODセンサ24による転写材Sの通過検知タイミングを基準として同期するようになっている。
【0036】
図1に示した走査露光装置10Y、10M、10C、10Kについて、シアン作像手段101Cの走査露光装置10Cを例に図2を用いて説明する。図2は、図1に示した走査露光装置10C及び像担持体17Cの概略構成を示す斜視図である。なお、走査露光装置10C、10M、10Y、10Kは、すべて同様の構成及び動作である。
【0037】
走査露光装置10Cは、光源ユニット11C、コリメータレンズ12C、ポリゴンミラー13C、fθレンズ14C、反射鏡15C、位置検出手段であるSOS(Start On Scan)センサ16C、ポリゴン駆動モータ18C等から構成される。
【0038】
光源ユニット11Cは、画像データに応じて変調された画像信号により、図示せぬ半導体レーザを発振させてレーザビームLを照射する。
【0039】
コリメータレンズ12Cは、光源ユニット11Cから照射されるレーザビームLを集光してポリゴンミラー13に出射する。
【0040】
ポリゴン駆動モータ18Cにより回転駆動されるポリゴンミラー13Cは、コリメータレンズ12Cから入射したレーザビームLを偏向してfθレンズ14Cに出射する。
【0041】
fθレンズ14Cは、ポリゴンミラー13Cから入射したレーザビームLの像面湾曲を除去して、像担持体17C上のレーザビームLによる等速走査を実現する。
【0042】
反射鏡15Cは、レーザビームLをSOSセンサ16Cに導き、SOSセンサ16Cは、ポリゴンミラー13Cによって偏向され像担持体17C上を走査するレーザビームLを検出して、1走査ラインの開始タイミング信号であるHSYNC信号を出力する。
【0043】
なお、本実施の形態においては、レーザビームLの走査方向(矢示H方向)を副走査方向と直交する主走査方向とする。
【0044】
本発明に係る画像形成装置におけるレジストレーションずれ補正に係わる機能的構成について、図3を用いて説明する。図3は、図1及び図2に示したプリンタ1の機能的構成を示すブロック図である。
【0045】
プリンタ1は、マイクロコンピュータ43、画像メモリ41、基準クロック発生回路44、TODセンサ24、レジストセンサ25、各色の作像手段101C、101M、101Y、101Kそれぞれに対応する走査露光装置10Y、10M、10C、10K、並びにドットクロック回路45C、45M、45Y、45K等を備えて構成されている。なお、図1及び図2に示したものと同じ構成要素には同符号を付して説明を省略する。
【0046】
走査露光装置10Y、10M、10C、10Kはそれぞれ、モータ制御回路54C、54M、54Y、54K、ポリゴン駆動モータ18C、18M、18Y、18K、回転速度検出信号発生器(以下FGと記す)52C、52M、52Y、52K、LDドライバ55C、55M、55Y、55KとSOSセンサ16C、16M、16Y、16Kを備えて構成されている。
【0047】
マイクロコンピュータ43は、図示しないCPU(中央処理装置)、ワークメモリ、不揮発メモリ等から構成され、不揮発性メモリに記憶されたプログラムに基づきプリンタ1の各種構成要素を制御する。
【0048】
またマイクロコンピュータ43は、制御手段431、クロック補正手段432、書き出し位置補正手段433としての機能を有する。
【0049】
制御手段431は、各色の作像手段101C、101M、101Y、101Kを制御して、各色からなるレジストパターンの組を転写ベルト23上に形成させる。
クロック補正手段432は、色ずれ情報取得手段であるレジストセンサ25によって取得した色ずれ情報に基づいて、基準クロック信号生成手段である基準クロック発生回路44で生成された基準クロック信号CLKの位相を補正して、各色の走査露光装置10Y、10M、10C、10Kそれぞれに入力される同期クロック信号SCLK_C、SCLK_M、SCLK_Y、SCLK_Kとする。
【0050】
書き出し位置補正手段433は、主走査方向の1走査ライン分を単位として、各色の作像手段の副走査方向の書き出し位置を補正する。
【0051】
画像メモリ41は、図示しない通信部から入力された画像データを記憶する。
【0052】
基準クロック発生回路44は、公知の発振器等で構成されており、マイクロコンピュータ43等を駆動するための基準クロック信号CLKを生成する。
【0053】
走査露光装置10Y、10M、10C、10Kの各構成要素並びにドットクロック回路45C、45M、45Y、45Kについては、各色とも同一の構成及び動作であるので、シアンの走査露光装置10C及びドットクロック回路45Cを例に説明する。
【0054】
比較クロック信号発生手段として機能するFG52Cは、図示しないホール素子等で構成されており、ポリゴンミラー13Cとともに回転するロータ(図示せず)に設けられた磁極で形成される磁界を検出する。つまり、ポリゴンミラー13C及びロータが回転することにより、ホール素子が検知する磁界強度が変化し、この磁界強度の変化に応じた比較クロック信号RCLK_Cを出力する。すなわちFG52Cは、ポリゴンミラー13Cの回転に同期した比較クロック信号RCLK_Cを発生する。比較クロック信号RCLK_Cは、ポリゴンミラー13Cの回転数に応じた周波数で’H’、’L’のレベルを繰り返すパルス信号である。
【0055】
駆動制御手段として機能するモータ制御回路54Cは、プリンタ1の動作に応じてマイクロコンピュータ43から回転信号が出力されると、ポリゴン駆動モータ18Cを回転駆動させる。またモータ制御回路54Cは、マイクロコンピュータ43から入力される、同期クロック信号SCLK_C及びFG52Cから入力される比較クロック信号RCLK_Cに基づいて、PLL(Phase Locked Loop)制御を行い、ポリゴンミラー13Cが等速回転するようにポリゴン駆動モータ18Cを駆動させる。またモータ制御回路54Cは、マイクロコンピュータ43から停止信号が出力されると、ポリゴン駆動モータ18Cの駆動を停止させる。
【0056】
ドットクロック回路45Cは、基準クロックCLKを、作像手段101Cが転写ベルト23上に画像を形成するタイミングに応じて所定時間遅延させたドットクロック信号DCLK_Cとして画像メモリ41に出力する。画像メモリ41に記憶された画像データは、ドットクロック信号DCLK_Cと同期して読み出され、LDドライバ55Cに出力される。
【0057】
LDドライバ55Cは、ドットクロック信号DCLK_Cと同期して画像メモリ41から出力される画像データ及びマイクロコンピュータ43からの命令により、光源ユニット11CからレーザビームLを発光させる。
【0058】
図3に示したモータ制御回路54C、54M、54Y、54Kで行われるPLL制御について、モータ制御回路54Cを例に図4を用いて説明する。図4(a)はモータ制御回路54Cの内部構成を示すブロック図であり、図4(b)は、モータ制御回路54Cで行われるPLL制御に係わる各種信号の状態を示すタイミングチャートである。なお、モータ制御回路54M、54Y、54Kもモータ制御回路54Cと同様の構成である。
【0059】
図4(a)において、モータ制御回路54Cは、モータ駆動部541CとPLL制御部89Cとからなる。
【0060】
モータ駆動部541Cは、図3に示したマイクロコンピュータ43からの命令に従って、ポリゴン駆動モータ18Cの起動と停止を制御する。
【0061】
PLL制御部89Cは、位相比較器80C、ローパスフィルタ83C、アンプ84C、PLLロック検知回路85Cから構成される。そして、PLL制御部89Cは、マイクロコンピュータ43から入力される同期クロック信号SCLK_C及びFG52Cから入力される比較クロック信号RCLK_Cに基づいて、ポリゴン駆動モータ18Cに対してモータ制御電圧を出力し、マイクロコンピュータ43に対してPLLロック信号PLL_Cを出力する。
【0062】
下記の表1は、位相比較器80Cの論理表である。
【0063】
【表1】

【0064】
位相比較器80Cは、所定の電圧を閾値として入力レベルの’H’又は’L’を判定し、同期クロック信号SCLK_Cと比較クロック信号RCLK_Cがともに’H’の時、位相比較出力Qを’L’とする。それ以外の場合、位相比較出力Qは’H’になる。
【0065】
例えば図4(b)において、時刻t1では、同期クロック信号SCLK_Cは’H’になったと判定し、比較クロック信号RCLK_Cも’H’であるので、Q出力は’L’になる。時刻t2では、比較クロック信号RCLK_Cは’L’になったと判定し、同期クロック信号SCLK_Cは’H’であるので、Q出力は’H’になる。時刻t1と時刻t2の期間、すなわちデューティDTが同期クロック信号SCLK_Cと比較クロック信号RCLK_Cの位相差に相当する。
【0066】
位相比較器80Cの位相比較出力Qは、ローパスフィルタ83Cで整流され、さらにアンプ84Cで位相比較出力QのデューティDTに比例した電圧に増幅され、モータ制御電圧として駆動モータ18Cに供給される。駆動モータ18Cは、PLL制御部89Cから供給されるモータ制御電圧に対応した駆動力を発生する。以上により、駆動モータ18Cは、同期クロック信号SCLK_Cに対応した位相で回転することになる。
【0067】
PLLロック検知回路85Cは、アンプ84Cで増幅されたモータ制御電圧が所定の電圧範囲であるかどうかを判定し、モータ制御電圧が所定の電圧範囲であればPLLロック信号PLL_Cは’H’になる。すなわち、駆動モータ18Cが位相同期回転している時にPLLロック信号PLL_Cがアクティブとなる。
【0068】
本発明に係る画像形成装置の動作について説明する。
【0069】
まず、プリンタ1において画像形成が行われる場合の各部の動作タイミングについて説明する。図5は、プリンタ1が画像形成するときの、プリンタ1各部の動作状態を示すタイミングチャートである。
【0070】
マイクロコンピュータ43はプリント指示(図示せず)を受けると、回転/停止信号出力を’L’にし(t11)、各色のモータ制御回路54C、54M、54Y、54Kにポリゴン駆動モータ18C、18M、18Y、18Kの回転を指令する。なお、回転/停止信号は’L’がモータ回転、’H’がモータ停止である。
【0071】
各色のモータ制御回路54C、54M、54Y、54Kは、ポリゴン駆動モータ18C、18M、18Y、18Kが定速回転になると、図4には図示せぬPLLロック信号PLL_C、PLL_M、PLL_Y、PLL_Kが’H’になり、マイクロコンピュータ43に状態を通知する。マイクロコンピュータ43は、各色のPLLロック信号PLL_C、PLL_M、PLL_Y、PLL_Kがすべて’H’になったのを検知すると、発光指示信号を’L’にし(t12)、各色のLDドライバ55C、55M、55Y、55Kにレーザ発光を指令する。レーザ光が発光されると、回転するポリゴンミラー13C、13M、13Y、13Kによって反射されたレーザ光がそれぞれ、SOSセンサ16C、16M、16Y、16Kに入射するタイミングで各色のHSYNC信号HSYNC_C、HSYNC_M、HSYNC_Y、HSYNC_K、が’L’になる(例えば、t13C、t13M、t13Y、t13K)。
【0072】
TOD信号は転写材Sの通過を検知すると’L’になる信号である。図5では、プリント指示が出されてからTOD信号が’L’になる時刻t14までの期間TCを位相制御期間と呼び、この期間内にC、M、Y、K各色のレーザ記録時の位相を合わせるようにしている。位相制御期間TCに行われる制御については図8に示しているが、その詳細は後述する。
【0073】
さて、マイクロコンピュータ43はTOD信号が’L’になる立ち下がりエッジをトリガに、HSYNC_Kのパルス数をカウントする図示せぬ内部カウンタ4乃至7を備えている。カウンタ4乃至7は、それぞれC、M、Y、Kの画像出力開始、終了タイミングをカウントする目的で設けられている。
【0074】
各カウンタ4乃至7はTOD信号が’L’になる立ち下がりエッジで各カウンタ4乃至7はリセットされ、HSYNC_Kのパルス数のカウントを開始し(t15)、各色毎に設定された所定のカウント数に達するとカウンタ4乃至7のステータスは’H’になる(t16C、t16Y、t16M、t16K)。
【0075】
本実施の形態では所定のカウント数CNT_C、CNT_M、CNT_Y、CNT_Kは、予め定められたものであり、CNT_C、CNT_M、CNT_Y、CNT_Kの順に大きな値に設定されている。CNT_C、CNT_M、CNT_Y、CNT_Kは例えば、各色の作像手段において、転写ベルト23上のある位置を基準として、像担持体がレーザビームLにより走査される位置(図1中106C、106M、106Y、106K)までの転写ベルト23及び像担持体表面の合計長に応じて定められる。
【0076】
次に描画のタイミングについて説明する。
【0077】
カウンタ1乃至3はそれぞれC、M、Yの描画期間を計時する目的でマイクロコンピュータ43内に設けられている。また、カウンタ8はKの描画期間を計時する目的で設けられている。
【0078】
カウンタ4乃至7はHSYNC_Kのパルスをカウントしているので、対応する各色のHSYNC_C、HSYNC_M、HSYNC_Yとは必ずしも同期していない。そのためC、M、Y各色に相当するカウンタ4乃至6が’H’になった後(t16C、t16Y、t16M)、HSYNC_C、HSYNC_M、HSYNC_Yが’H’になるタイミングで、カウンタ1乃至3によるHSYNC_C、HSYNC_M、HSYNC_Yのパルス数カウントが開始される(t17C、t17M、t17Y)。
【0079】
カウンタ8はKのカウンタなので、同期しているHSYNC_Kのパルスをそのままカウントする。
【0080】
カウンタ1乃至3がそれぞれ対応するHSYNC_C、HSYNC_M、HSYNC_Yのパルス数カウントを開始してから、所定のカウントCNTA_C、CNTA_M、CNTA_Yをカウントして終了するまでの間、カウンタ1乃至3のステータスは’H’になる。ステータス’H’の間、マイクロコンピュータ43は画像要求信号をアクティブにし、画像メモリ41に画像読み出しを指令する。各色のドットクロック回路45からそれぞれ出力されるドットクロック信号DCLK_C、DCLK_M、DCLK_Y、DCLK_Kと同期して画像メモリ41から読み出された各色の画像データが各色LDドライバ55にそれぞれ出力され、各色の画像が各色走査露光装置10により各色作像手段101の像担持体17にそれぞれ描画される。
【0081】
以上のように、プリンタ1においては、各色の作像手段101C,101M,101Y,101Kの画像形成タイミングが同期することでカラー画像が形成されるものであるが、プリンタ1の長期使用中において、プリンタ1を構成する各部の変形や駆動部品の損耗によりレジストレーションずれが発生する。そこで、レジストレーションずれのない画像を形成するためには、定期的にレジストレーションずれ補正を行う必要がある。
【0082】
本発明に係る画像形成装置におけるレジストレーションずれ補正の動作について、図6を用いて説明する。図6は、プリンタ1で実行されるレジストレーションずれ補正処理の流れを示すフローチャートである。なお、本実施の形態においてレジストレーションずれ補正は、補正モードとしてプリンタ1の電源投入時や一定動作時間毎に実行されるようになっており、図6のフローチャートにおいては、補正モードに切り替えられてからのものである。
【0083】
ステップS1では、制御手段431が各色の作像手段101を制御してレジストパターンの組を転写ベルト23上に形成する。レジストパターンの組は、例えば図7に示すように、予め決められた各色の特定パターンが転写体ベルト23上に形成される。
【0084】
ステップS2では、ステップS1で形成された特定パターンが、レジストセンサ25によって検出される。検出された各色の特定パターンは、色ずれ情報としてマイクロコンピュータ43へ出力される。
【0085】
ここで、図7(a)はM−Y間の距離aと、C−M間の距離bは同じであるが、K−C間の距離cはaおよびbよりも大きい。すなわち、Y、M、Cの各色作像手段の副走査方向の書き出し位置がK作像手段の書き出し位置よりもやや早くなっている。レジストレーションずれの無い場合は、図7(b)のように各色の特定パターンが等間隔a’=b’=c’になる。図7(c)はY−M間の距離a”と、M−C間の距離b”は同じであるが、C−K間の距離c”はa”およびb”よりも小さい。すなわち、Y、M、Cの副走査方向の書き出し位置がK作像手段の書き出し位置よりもやや遅延している。
【0086】
ステップS3では、ステップS2で出力された各色の特定パターンの検出タイミング信号に基づいて、K作像手段の書き出し位置を基準に各色の副走査方向の書き出し位置のずれ量をそれぞれ算出する。すなわち本実施の形態では、K作像手段が第1の作像手段となり、Y、M、Cの各色作像手段がそれぞれ、第2の作像手段となる。
【0087】
色ずれのない状態では、M−Y間の距離a、C−M間の距離b、K−C間の距離c及び設計値Xの関係はX=a=b=cである。なお、Xは各色の像担持体17の位置や転写ベルト23の搬送速度の設計値から求められる所定値である。
【0088】
K−C間の設計上の距離はXであり、色ずれ量ΔC=c−Xである。K−M間の距離は設計上2Xであり、色ずれ量ΔM=(b+c)−2Xである。同様に、K−Y間の距離は設計上3Xであり、色ずれ量ΔY=(a+b+c)−3Xである。
【0089】
たとえば図7(a)の場合、Δx=c−X、a=b=Xとすると、ΔC=Δx、ΔM=Δx、ΔY=Δxとなる。
【0090】
図6に戻って、ステップS3で算出された色ずれ量Δxが正の時、すなわち第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置が、第1の作像手段の副走査方向の書き出し位置よりも遅延している範囲を示す量である場合(ステップS4;Yes)、書き出し位置補正手段433は、ステップS3で算出された色ずれ量ΔY、ΔM、ΔCを各色の作像手段の走査ピッチで割って、商Nをおよび余りRに分離する。この場合、C、M、Y各色の作像手段の書き出し位置がKの書き出し位置よりも進んでいるので、書き出し位置補正手段433、商Nに基づいて遅延させる走査数SC_Y、SC_M、SC_Cと余りR_Y、R_M、R_Cに基づいて遅延させる走査位相φY、φM、φCを各色について算出する(ステップS5)。
【0091】
ずれ量が負の時、すなわち色ずれ量Δxが第1の作像手段の副走査方向の書き出し位置が第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置よりも遅延している範囲を示す量である場合(ステップS4;No)、ステップS5と同様に書き出し位置補正手段433は、ステップS3で算出された色ずれ量ΔY、ΔM、ΔCを各色の作像手段の走査ピッチで割って、商Nをおよび余りRに分離する。しかしながら、この場合は、C、M、Y各色の作像手段の書き出し位置がKの書き出し位置よりも遅れているので、ずれ量が正の時と同様に走査位相を算出すると、走査位相は、元の位相に比べて進み方向に補正することになり、C、M、Y各色のポリゴン駆動モータ18の回転を加速することになる。そのため、書き出し位置補正手段433により、書き出し位置を1ライン分(1走査分)加えて早めることにより、走査位相を、元の位相に比べて遅れる方向に補正する。すなわち、書き出し位置補正手段433は、商Nに基づいて書き出し位置を早める走査ライン数SC_Y、SC_M、SC_Cを算出し、それぞれに1を加え、余りR_Y、R_M、R_Cに基づいて位相pY、pM、pCを求める。1ライン分が位相差2πに相当するので、書き出し位置補正手段433は、実際に遅延させる走査位相φY、φM、φCを次式で算出する(ステップS6)。
【0092】
φY=2π−pY
φM=2π−pM
φC=2π−pC
すなわち、ステップS6においては、主走査方向の1ライン分を単位として、作像手段の副走査方向の書き出し位置を補正して、色ずれ量を、K作像手段101Kの副走査方向の書き出し位置が、多色の作像手段101C,101M,101Yそれぞれの副走査方向の書き出し位置よりも遅延している範囲に補正するものである。
【0093】
ステップS6で算出された、書き出し位置を早める走査ライン数SC_Y、SC_M、SC_Cに1を加えたライン数は、各色のドットクロック回路45に出力され、基準クロックCLKに対する各色のドットクロック信号DCLK_C、DCLK_M、DCLK_Yの遅延時間に反映される。
【0094】
ステップS7では、マイクロコンピュータ43はステップS5又はステップS6で決定された走査位相φY、φM、φCに相当する同期クロックSCLK_C,SCLK_M、SCLK_Yの補正量Da_Y、Da_M、Da_Cを算出する。
【0095】
ステップS8では、クロック補正手段432が、ステップS7で算出された補正量Da_Y、Da_M、Da_Cに基づいて、同期クロックSCLK_C、SCLK_M、SCLK_Yの位相を補正し、各色のモータ制御回路54へ補正された同期クロックを出力する。なお、ステップS8の位相補正制御については、後に図8で詳しく説明する。
【0096】
ステップS9では、マイクロコンピュータ43は同期クロックSCLK_C,SCLK_M、SCLK_Yの補正量Da_Y、Da_M、Da_Cを、マイクロコンピュータ43に内蔵された補正量記憶手段434に記憶して、処理を終了する。
【0097】
補正量記憶手段434に記憶された同期クロックSCLK_C,SCLK_M、SCLK_Yの補正量Da_Y、Da_M、Da_Cは、ステップS1のレジストパターンの形成が行われるときを除いて、画像形成時には毎回(例えば、図5に示した位相制御期間TCに)、クロック補正手段432により読み出され、同期クロックの補正が行われる。
【0098】
なお、上記のレジストレーションずれ補正処理は、2つ以上の作像手段のうち、基準となる第1の作像手段を定めて、基準となる第1の作像手段に対して、他の第2の作像手段の書き出し位置を補正するものであり、本実施の形態ではK作像手段101Kを基準としてC、M、Y各色の作像手段101C、101M、101Yの書き出し位置を補正するものとしているが、例えば、K作像手段101Kを基準としてC作像手段101Cの書き出し位置を補正したのち、補正されたC作像手段101Cの書き出し位置を基準としてM作像手段101Mの書き出し位置を補正することもできる。
【0099】
図5に示した位相制御期間TC及び図6のステップS8で実行される同期クロック位相補正処理について、Kを基準にCを補正する場合を例に、図8を用いて説明する。なお、Y、Mの各色においても同様の処理が行われる。
【0100】
図8は、図5に示した位相制御期間TC及び図6のステップS8で、クロック補正手段432により実行される同期クロック位相補正処理の第1の実施形態を説明するフローチャートである。予め算出されたポリゴンミラー13Cの位相の補正量Da_Cを、PLL制御手段であるPLL制御回路部89Cが位相制御可能な位相補正量に分割して段階的に制御することを本フローチャートで説明する。
【0101】
ステップS301では、本処理開始時にレジストレーションずれ補正処理が行われているか否かが判断される。レジストレーションずれ補正処理が行われている、すなわちレジストパターンの形成が行われた場合(ステップS301;YES)、図6のステップS7で算出された補正量Da_Cが書き出し位置補正手段433から入力され(ステップS302)。レジストパターンの形成が行われていない場合(ステップS301;NO)、過去に行われたレジストレーションずれ補正処理において生成され、補正量記憶手段434に記憶されたDa_Cが読み出される(ステップS303)。
【0102】
ステップS304では、位相の補正量Da_Cが所定の範囲以内かどうか判定する。
【0103】
位相の補正量Da_Cが所定の範囲内であれば(ステップS304;Yes)位相制御を終了する。
【0104】
位相の補正量Da_Cが所定の範囲を超える場合(ステップS304;No)、Da_C<1回あたり最大補正量Dmax_Cであるかどうか判定する(ステップS305)。1回あたり最大補正量Dmax_Cについては後で詳述する。
【0105】
Da_C≧Dmax_Cであれば(ステップS305;No)、マイクロコンピュータ43は1回あたり補正量をDmax_Cとし(ステップS306)、同期クロックSCLK_CをDmax_C遅延させる(ステップS307)。
【0106】
Da_C<Dmax_Cであれば(ステップS305;Yes)、マイクロコンピュータ43は1回あたり補正量をDa_Cのままとし(ステップS308)、同期クロックをDa_Cだけ遅延させる(ステップS309)。
【0107】
次に、図示しない計時手段により、PLL制御回路部89CがPLLロック信号PLL_Cを出力するまで、すなわちポリゴン駆動モータ18Cが定速回転するのに十分な所定時間を待ち(ステップS310)、位相の補正量Da_Cを、Da_Cから1回あたり補正量を差し引いた値に置換した後、ステップS304の処理に戻る。
【0108】
このように、1回あたり補正量が、制御可能な1回あたり最大補正量Dmaxよりも小さいので、Da_C<Dmax_Cの場合は、1回の補正ではステップS301における補正量Da_Cが所定の範囲内にはならない。したがって図8に示した処理は、補正量Da_Cが所定の範囲内になるまで繰り返される。
【0109】
すなわち、本実施の形態では同期クロックSCLK_Cの1回あたり補正量を、PLL制御手段によるPLLロックが外れずに、ポリゴンミラー13Cのモータ制御回路54Cが追随できる量とし、ポリゴン駆動モータ18Cの回転が安定してから再度、位相補正を行う段階制御方式としている。なお、SCLK_Cの1回あたり補正量は、基準クロック信号CLKの半周期よりも少ない量であることが好ましい。
【0110】
また、ポリゴン駆動モータ18Cを加速させて位相補正を行うと、モータの軸受け部のストレスが増大し、ポリゴン駆動モータ18Cの寿命が短くなる。このため、位相補正はポリゴン駆動モータ18Cを減速させる方向でのみ行っている。
【0111】
図9は、図5に示した位相制御期間TC及び図6のステップS8で実行される同期クロック位相補正処理の第2の実施形態を説明するフローチャートである。
【0112】
ステップS301からステップS309までの処理は、図8に示したフローチャートと同じなので、同一の符号を付け説明を省略する。
【0113】
本実施の形態では、第1の実施形態のステップS311のようにPLLがロックするまでの所定時間を待つのに代えて、PLLロック信号PLL_Cがアクティブになるまで待ってから(ステップS311;Yes)、ステップS304の処理に戻るようにしている点である。すなわち、第2の実施形態においては、PLLロック検知回路85Cが同期検出手段として機能するものである。
【0114】
本発明に係る画像形成装置におけるクロック信号の状態について説明する。図10及び図11は、図8及び図9に示した同期クロック位相補正処理における各種クロック信号の状態を示すタイミングチャートである。
【0115】
図10及び図11では、図5に示した位相制御期間TCに実行される、M走査露光装置10Mにおける1走査ラインの開始タイミング信号HSYNC_Mを、描画の基準タイミングであるK走査露光装置10Kにおける開始タイミング信号HSYNC_Kと所定の1回あたり補正量Daだけ遅れたタイミングで同期させる場合について説明する。なお、C、Y各色の、HSYNC_C、HSYNC_Yを同期させる場合も同様に制御する。
【0116】
図10(a)はタイミングt20は所定の1回あたり補正量Daだけ遅らせる前の状態であり、HSYNC_MがHSYNC_Kと同じタイミングt20、t21で同期している。
【0117】
同期クロックSCLK_Mは回路の浮遊容量等のため波形が歪むので、波形の立ち上がりから位相比較器80が’H’と判定する閾値レベルになるまでに遅延が発生する。また、位相比較器80も内部回路の遅延時間がある。そのため、図10(a)において、タイミングt20で同期クロックSCLK_Mが立ち上がったとしても、位相比較器80の位相比較出力Qが同期クロックSCLK_M’H’に相当する’L’レベルになるまでに遅延時間DLの遅れがある。そのため、位相比較出力Qが’L’になるのはt20からDLだけ遅れたタイミングt25になる。そこで、基準クロック信号の立ち上がりで発生する遅延時間及び駆動制御手段で発生する遅延時間を考慮して1回あたり補正量Daを定めることが好ましい。
【0118】
図8のステップS309で、同期クロックSCLK_Mの立ち上がりがDa遅延されると(t23)、位相比較出力Qの立ち下がりが遅れ(t24)、’L’の区間が短くなる(Tp2)。そのためローパスフィルタ83の出力電圧は下がり、ポリゴン駆動モータ18Mが減速するように制御される。この状態ではPLLはロックしていないのでPLLロック信号は非アクティブである。
【0119】
図8のステップS311で所定時間が経過すると、図10(b)に示すように、最終的にはHSYNC_MがHSYNC_Kに対し所定の1回あたり補正量Daだけ遅延したt22のタイミングで同期する。この状態ではローパスフィルタ83の出力電圧は一定電圧になり、PLLはロックしているのでPLLロック信号はアクティブである。
【0120】
前述のように、ポリゴン駆動モータ18Mの起動時に、それぞれ所定の位相差を持つ同期クロックで立ち上げているので、PLLロック後の各ポリゴン駆動モータ18のHSYNCと同期クロックSCLKの位相関係は、例えばポリゴンミラー13の面数を4面、FG52の極数を12極とした場合、位相差は最大でHSYNCの2/3周期にすることができる。単にポリゴン駆動モータ18を立ち上げた場合は、最大1周期の位相差になるのに比べて、短時間で1ドット以下の副走査方向色ズレ補正が可能である。
【0121】
図8のステップS307では、図11(a)の点線で示すようにマイクロコンピュータ43が同期クロックSCLK_Mを、本来のタイミングt33から1回あたり最大補正量Dmax遅延させたt34のタイミングにしている。
【0122】
この時、位相比較器80の出力である位相比較出力Qは同期クロックSCLK_Mと比較クロックRCLK_Mが同時に’H’になる一瞬’L’になるが(t33)、一周期Tのほとんどの区間は’H’になる。そのため、ローパスフィルタ83の出力電圧は下がり、ポリゴン駆動モータ18が最大限減速するように制御される。この状態では図10(a)と同様に、PLLはロックしていないのでPLLロック信号は非アクティブである。
【0123】
図8のステップS314で所定時間が経過すると、図11(b)に示すように、最終的にはHSYNC_MがHSYNC_Kに対し所定の1回あたり最大補正量Dmaxだけ遅延したt34のタイミングで同期する。この状態では図10(b)と同様に、PLLはロックしているのでPLLロック信号はアクティブである。
【0124】
同期クロックをDmax以上遅延させた場合、位相比較出力Qはずっと’H’のままであり、位相制御の範囲を超えているので、ポリゴン駆動モータ18が暴走するおそれもある。したがって、1回あたり最大補正量Dmaxの範囲で位相制御する必要がある。
【0125】
そのため、マイクロコンピュータ43が設定する1回あたり最大補正量Dmaxは、同期クロックの周期Tの半周期から、波形の歪みや回路の遅延による遅延時間DLを差し引いた時間、すなわちDmax=T/2−DLとしている。
【0126】
以上、本実施の形態によれば、作像手段の副走査方向の書き出し位置を補正して、色ずれ量を、第1の作像手段の副走査方向の書き出し位置が、第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置よりも遅延している範囲とすることにより、ポリゴンミラーの回転を必ず減速することで位相制御できるので、軸受け部のストレスが無く、故障が少なく製品寿命の長い、副走査方向の色ずれを低減した画像形成装置を提供できる。
【0127】
また、本実施の形態によれば、ミラー面数とポリゴンミラーが1回転あたりに発生するパルス数やモータ極数の関係にかかわらず、ポリゴンミラーを確実に位相制御し、副走査方向の色ずれを低減した画像形成装置を提供できる。
【0128】
また、本実施の形態によれば、ポリゴンミラーの回転の基準クロックがひずみによって遅延したり、PLL制御手段が制御を行う間の遅延があっても、確実に位相制御を行って副走査方向の色ずれを低減した画像形成装置を提供できる。
【0129】
また、本実施の形態によれば、画像形成装置のポリゴンミラーの駆動開始時に、各ポリゴンミラーの位相を短時間に同期させる事ができるので、立ち上がりが早く高画質な画像形成装置を提供できる。
【0130】
また、本実施の形態によれば、ポリゴンミラーの回転位相制御を安定して行うことができるので、確実に副走査方向の色ずれを低減した高画質な画像形成装置を提供できる。
【0131】
また、本実施の形態によれば、ポリゴンミラーの回転を加速する際に発生する軸受け部のストレスが無いので、故障が少なく製品寿命の長い画像形成装置を提供できる。
【0132】
なお、上述した本実施の形態における記述は、本発明に係る好適な画像処理装置1の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、ポリゴンミラーの面数は、4面である場合を例として説明を行ったが、これに限らず面数、及び磁極数は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明に係る画像形成装置を示す概略図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置に備えられる走査露光装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】図4(a)はモータ制御回路の内部構成を示すブロック図であり、図4(b)はモータ制御回路で行われる制御に係わる各種信号の状態を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明に係る画像形成装置が画像形成するときの、各部の動作状態を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明に係る画像形成装置で実行されるレジストレーションずれ補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明に係るレジストパターンの一例を示す図である。
【図8】同期クロック位相補正の第1の実施形態に係る処理の流れ示すフローチャートである。
【図9】同期クロック位相補正の第2の実施形態に係る処理の流れ示すフローチャートである。
【図10】本発明に係る画像形成装置で実行される同期クロック位相補正処理におけるクロック信号の状態を示すタイミングチャート(1/2)である。
【図11】本発明に係る画像形成装置で実行される同期クロック位相補正処理におけるクロック信号の状態を示すタイミングチャート(2/2)である。
【符号の説明】
【0134】
1 プリンタ
101C、101M、101Y、101K 作像手段
10C、10M、10Y、10K 走査露光装置
11C 光源ユニット
12C コリメータレンズ
13C ポリゴンミラー
14C fθレンズ
15C 反射鏡
16C SOSセンサ
17C、17M、17Y、17K 像担時体
18C、18M、18Y、18K ポリゴン駆動モータ
23 転写ベルト
24 TODセンサ
25 レジストセンサ
43 マイクロコンピュータ
52C、52M、52Y、52K 回転速度検出信号発生器(FG)
54C、54M、54Y、54K モータ制御回路
89C PLL制御回路部
100 駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される像担持体と、画像データに応じて出力制御されるレーザ素子と、レーザ素子から発せられたレーザ光を反射し像担持体上で主走査方向に走査露光するポリゴンミラーとをそれぞれ有する作像手段を少なくとも2つ備え、それぞれの作像手段で作成されたそれぞれ異なる色の画像を主走査方向と直交する副走査方向へ回転駆動される転写ベルトもしくは転写ベルトにより搬送される転写材に多重転写することにより画像を形成する画像形成装置であって、
前記それぞれの作像手段を制御して、各色からなるレジストパターンの組を転写ベルト上に形成させる制御手段と、
前記レジストパターンの組を検出して色ずれ量に関する情報を取得する色ずれ情報取得手段と、
基準クロック信号を生成する基準クロック信号生成手段と、
前記ポリゴンミラーを回転駆動するミラー駆動手段と、
前記ポリゴンミラーの回転に同期した比較クロック信号を発生する比較クロック信号発生手段と、
前記色ずれ情報取得手段によって取得した色ずれ情報に含まれる色ずれ量が、第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置が第1の作像手段の副走査方向の書き出し位置よりも遅延していることを示す量である場合、前記第1の作像手段又は前記第2の作像手段の1ライン分を単位として、前記第1の作像手段又は前記第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置を補正して、該色ずれ量を、前記第1の作像手段の副走査方向の書き出し位置が、前記第2の作像手段の副走査方向の書き出し位置よりも遅延している色ずれ量に置き換える書き出し位置補正手段と、
前記書き出し位置補正手段によって置き換えられた色ずれ量に基づいて、前記基準クロック信号生成手段で生成された基準クロック信号の位相を補正して同期クロック信号とするクロック補正手段と、
前記クロック補正手段で補正された同期クロック信号及び前記比較クロック信号発生手段で生成された比較クロック信号に基づいて、前記第2の作像手段のミラー駆動手段を制御する駆動制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記クロック補正手段は、前記第2の作像手段のミラー駆動手段の回転速度を減速させることで前記基準クロック信号の位相を補正して同期クロック信号とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クロック補正手段は、前記基準クロック信号生成手段で生成された基準クロック信号の位相を、前記基準クロック信号の半周期よりも少ない量ずつ、複数回に亘って補正して同期クロック信号とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−248145(P2006−248145A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70730(P2005−70730)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】