説明

画像形成装置

【課題】 動作状況に応じて異なる時刻の誤差を正しく補正できるようにする。
【解決手段】 RTC制御部は、S11でスタンバイ状態になり、S12で、起動後は所定時間Tが経過したか否かを判断し、経過したと判断したら、S13で、印刷情報保持部に保持された印刷枚数(所定時間Tに記憶された全印刷ジョブの印刷枚数)と、補正情報保持部に保持されている補正情報を読み出し、補正値特定部へ送り、S14で、補正値特定部は、所定時間内の印刷枚数を求め、その所定時間内の印刷枚数(総印刷枚数)と補正情報とに基づいて時刻補正値を求め(総印刷枚数に対応する時刻補正値を特定する)、その時刻補正値を時刻補正部へ送り、S15で、時刻補正部は、RTCの時刻カウンタの時刻を時刻補正値によって補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,ファクシミリ機能とスキャナ機能とプリント機能とコピー機能を有する複合機を含む画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,ファクシミリ通信とプリントとコピーの各機能を有する複合機を含む画像形成装置は、水晶発振子(水晶発振回路)が発振するクロック信号に基づいて時刻を計測する時計手段(「リアルタイムクロック(RTC)」という)を備えており、RTCの周辺の温度変化によって水晶発振子の周波数が変動し、それに起因して時刻に誤差が生じるという問題があった。
このような状況に対応するために、温度センサを使用して水晶発振子の周囲温度を測定し、その温度に基づいて時刻を補正する技術が提案されたが、温度センサを設けることによりコストアップが生じるという問題があった。
【0003】
そこで従来、画像形成装置における通常モード,静音モード,エンジンオフモード,コントローラオフモード,印刷モードなどの動作モードに応じたリアルタイムクロックの補正プロファイルを予め保持し、動作モードの遷移によりリアルタイムクロックの周辺温度が変位して時刻に誤差が生じた場合、この補正プロファイルを利用してリアルタイムクロックの時刻の補正を行う画像形成装置(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0004】
また、RTCに温度偏差が大きい水晶発振子を用いた場合、例えば、誤差補正機能付きRTCに組み合わせて使用できる音叉型の低周波水晶振動子は、装置の使用温度範囲(例えば、0〜40℃)内での温度偏差が大きいため、時刻を高精度に補正できないという問題があった。
そこで、温度センサでRTCの周囲温度を検知し、その検知した周囲温度に応じて温度偏差を補正したり、温度偏差の小さいAT水晶振動子を別途搭載し、そのAT水晶振動子によって検知した周囲温度に応じて温度偏差を補正したりする方法が知られている。
【0005】
また、予め計時手段による誤差を補正することに必要な情報を記憶しておき、計時手段の近傍の温度を測定し、計時誤差補正に用いるパラメータの調整値を入力し、そのパラメータの調整値と、前回補正をした時刻と上記測定した温度と上記計時手段から得られた時刻から計時誤差補正量を算出する際、計時誤差補正量の算出に用いるパラメータを調整することにより、上記計時誤差量を調整する画像形成装置(例えば、特許文献2参照)があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の画像形成装置では、例えば、印刷モードにおいても、連続印刷数が異なればRTCの周囲温度の上昇にも差が生じ、その温度差に応じて時刻の誤差も異なるので、動作モード毎に時刻を補正するだけでは、画像形成装置の動作状況に応じた時刻の誤差を精度良く補正できないという問題があった。
また、上述した方法やいずれの画像形成装置においても、温度センサやAT水晶振動子を新たに搭載する必要があるので、コストアップが生じるという問題があった。
さらに、上述した方法やいずれの画像形成装置においても、電源オフ(OFF)によって電源を落とした後の余熱の影響による温度変化と、省エネルギーモード(STR)へ移行した後の余熱の影響による温度変化を補正することができないという問題があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、動作状況に応じて異なる時刻の誤差を正しく補正できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記の目的を達成するため、時刻をカウントする時刻カウント手段と、自装置の動作内容に応じて上記時刻カウント手段の周囲温度の変化によって変動する時刻を補正する補正手段を備えた画像形成装置を提供する。
また、上記補正手段は、印刷量とその印刷量の印刷による上記時刻カウント手段の周囲温度の変化に対応して予め求めた上記時刻カウント手段の時刻の補正値とを関連付けた補正情報を記憶する補正情報記憶手段と、自装置の印刷量を検出する印刷量検出手段と、上記印刷量検出手段によって検出した印刷量と上記補正情報記憶手段に記憶された補正情報とに基づいて上記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する補正値特定手段と、上記補正値特定手段によって特定された補正値に基づいて上記時刻カウント手段の時刻を補正する時刻補正手段を有するようにするとよい。
【0008】
また、上記印刷量を、所定時間内の印刷枚数、1印刷ジョブ毎の印刷枚数、あるいは、予め決められた複数回の印刷ジョブを短いスタンバイ間隔で行う場合、各印刷ジョブの印刷枚数にそれぞれ温度変化の影響の度合いに応じた重み付けをした後に合算した印刷枚数のいずれかにするとよい。
さらに、上記時刻の補正値を、入力された装置の設置環境の情報に基づいて修正する手段を設けるとよい。
【0009】
また、一日の時刻毎の気温変化の情報を予め記憶する手段と、上記気温変化に対応して予め求めた上記時刻カウント手段の時刻のズレの情報を予め記憶する手段と、電源がオフにされたときの時刻を記録する手段と、電源がオンにされたとき、電源がオンにされた時刻と上記記録された電源がオフにされたときの時刻と上記一日の時刻毎の気温変化の情報とに基づいて、電源がオフにされていた間の温度変化を求め、その求めた温度変化と上記時刻カウント手段の時刻のズレの情報に基づいて、電源がオフにされていた間の時刻のズレを求め、その求めた時刻のズレに基づいて上記時刻カウント手段の時刻を補正する手段を設けるとよい。
さらに、自装置の定着部に搭載されている温度センサの情報と上記定着部のヒータの稼働状況情報とに基づいて自装置が設置されている場所の室温を求める手段と、上記室温に基づいて上記補正情報を修正する手段を設けるとよい。
【0010】
また、上記補正手段は、自装置で実行される動作内容を示す動作情報と、上記動作内容で動作させた後に測定した上記時刻カウント手段の周囲温度の低下の変化に対応して予め求めた上記時刻カウント手段の時刻の補正値とを関連付けた補正情報を記憶する補正情報記憶手段と、上記動作内容を実行した場合にその実行した動作内容を示す動作情報を記憶する動作情報記憶手段と、上記動作情報記憶手段に記憶された動作情報と上記補正情報記憶手段に記憶された補正情報とに基づいて上記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する補正値特定手段と、上記補正値特定手段によって特定された補正値に基づいて上記時刻カウント手段の時刻を補正する時刻補正手段を有するようにするとよい。
【0011】
さらに、電源オフをするときに上記時刻カウント手段によってカウントされた時刻を保存する手段と、電源オン時に上記時刻カウント手段によってカウントされた時刻と上記保存された時刻とに基づいて電源オフ時間を求める手段を設け、上記補正値特定手段が、上記求めた電源オフ時間も含めて上記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段を有するようにするとよい。
また、上記時刻カウント手段への給電が通常の電源から電池に変わったときに上記時刻カウント手段によってカウントされた時刻を検知して保存する手段と、電源オン時に上記時刻カウント手段によってカウントされた時刻と上記保存された時刻とに基づいて電源オフ時間を求める手段を設け、上記補正値特定手段が、上記求めた電源オフ時間も含めて上記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段を有するようにするとよい。
【0012】
さらに、上記時刻カウント手段の周囲温度の低下の変化について最終的に集束する温度を変化させる手段を設けるとよい。
また、省エネルギーモードへ移行するときに上記時刻カウント手段によってカウントされた時刻を保存する手段と、上記省エネルギーモードからスタンバイ状態に復帰したときに上記時刻カウント手段によってカウントされた時刻と上記保存された時刻とに基づいて省エネルギーモード時間を求める手段を設け、上記補正値特定手段が、上記求めた省エネルギーモード時間も含めて上記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段を有するようにするとよい。
さらに、上記動作情報記憶手段は、自装置で一定期間内に実行された複数の動作内容を示す動作情報を記憶する手段を有し、上記補正値特定手段は、上記自装置で一定期間内に実行された複数の動作内容を示す動作情報に基づく上記時刻カウント手段の周囲温度の変化も含めて上記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段を有するようにするとよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明による画像形成装置は、動作状況に応じて異なる時刻の誤差を正しく補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施例1〜6の画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す水晶発振子の周辺温度の変化に応じてクロック信号の発信する周波数偏差の変化を示す波形図である。
【図3】図1に示す補正情報保持部に記憶する補正情報の一例を示す図である。
【図4】図1に示す画像形成装置における起動中の印刷情報に係る処理を示すフローチャート図である。
【0015】
【図5】図1に示す画像形成装置における起動中の時刻補正に係る処理を示すフローチャート図である。
【図6】図1に示す画像形成装置の起動後のRTC周囲温度の変化の一例を示す波形図である。
【図7】図1に示す画像形成装置の起動後のRTC周囲温度の変化の他の例を示す波形図である。
【図8】図1に示す画像形成装置の起動後のRTC周囲温度の変化のさらに他の例を示す波形図である。
【0016】
【図9】印刷時間経過に対して印刷枚数に加味する重みの変化を示す波形図の一例である。
【図10】図1に示す画像形成装置の設置した部屋の室温が予め想定した常温よりも高い場合と低い場合のRTC周囲温度の変化の一例を示す波形図である。
【図11】標準温度とのズレd(℃)と時刻補正値の修正値m(d)との関係を示す波形図である。
【図12】この発明の実施例7の画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【0017】
【図13】図12に示す水晶発振子の周辺温度の変化に応じてクロック信号の発信する周波数偏差の変化を示す波形図である。
【図14】異なるジョブによる画像形成装置の内部温度の上昇値の一例を示す波形図である。
【図15】図12に示す画像形成装置における電源オフ時からオフ後の装置内部温度の変化例を示す波形図である。
【図16】図12に示す画像形成装置における補正情報保持部への動作情報の記憶動作処理を示すフローチャート図である。
【0018】
【図17】図12に示す画像形成装置が電源オンにされたときの時刻補正の処理を示すフローチャート図である。
【図18】図12に示す画像形成装置において複数のジョブを連続して実行した場合の装置内部の温度変化例を示す波形図である。
【図19】経過時間によって変化する重み係数値の一例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、この発明の実施例1〜6の画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
この画像形成装置は、ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,又はファクシミリ機能,スキャナ機能,コピー機能,プリント機能を備えた複合機であり、CPU,ROM及びRAMからなるマイクロコンピュータによって実現されるコントローラ1と、公知なので図示を省略するが、原稿の画像を読み取る画像読取部と、画像読取部によって読み取った画像を転写紙にコピー印刷又は通信部によって受け取った画像を記録紙に印刷する印刷部と、有線または無線によりローカルエリアネットワーク,インターネットを含む通信網に接続され、外部の機器との通信(例えば、ファクシミリ通信、データ通信)を可能とする通信部と、ユーザが各種の操作情報を入力すると共に、ユーザに各種の操作画面とこの装置上の各種の情報を表示する操作表示部も備えている。
【0020】
コントローラ1は、CPUがROMに格納されたプログラムを、RAMを作業領域として実行することにより実現される各種の機能部を有する。
コントローラ1は、この画像形成装置における時刻をカウントするリアルタイムクロック(RTC,(時刻をカウントする時刻カウント手段の機能を果たす))2と、自装置の動作内容に応じてRTC2の周囲温度の変化によって変動する時刻を補正するRTC制御部6(「補正手段」の機能を果たす)を備えている。
実施例1〜6では、印刷部における印刷情報(印刷ジョブ毎の印刷枚数)を検知してリアルタイムクロック(RTC)制御部6へ送る印刷情報検知部(「印刷情報検知手段」の機能を果たす)5を有し、上記RTC制御部6は、印刷情報検知部5によって検知した印刷情報に基づいてRTC2のカウントする時刻を補正する。
RTC2は、所定の周波数でクロック信号を発信する水晶発振子(水晶発振回路、「水晶振動子」ともいう)3と、その水晶発振子3が発信するクロック信号に基づいて時刻をカウント(計測)する時刻カウンタ4を備えている。
【0021】
RTC制御部6は、印刷情報検知部5から受け取った印刷情報に基づいて自装置の印刷量を検出する印刷量検出手段の機能を果たし、印刷情報検知部5から受け取った印刷情報を保持する印刷情報保持部(「印刷情報保存手段」の機能を果たす)7と、自装置の印刷量とその印刷量の印刷による温度変化に対応して予め求めたRTC2の時刻の補正値とを関連付けた補正情報を記憶する補正情報保持部(「補正情報記憶手段」の機能を果たす)8と、自装置の印刷量と上記補正情報とに基づいてRTC2の時刻の補正値を特定する補正値特定部(「補正値特定手段」の機能を果たす)9と、補正値特定部9によって特定された補正値に基づいてRTC2の時刻を補正する時刻補正部(「時刻補正手段」の機能を果たす)10を備えている。
【0022】
次に、上記補正情報について説明する。
図2は、図1に示す水晶発振子3の周辺温度の変化に応じてクロック信号の発信する周波数偏差の変化を示す波形図である。
図3は、補正情報の一例を示す図である。
水晶発振子3の温度特性は、一般的に図2に示すような性質を持っており、水晶発振子3は、周辺温度が25℃から高温又は低温側にずれるに従って、発信するクロック信号の周波数の誤差である周波数偏差(ppm)が大きくなることが知られている。
【0023】
また、画像形成装置においては、印刷部における印刷回数や印刷枚数が多いほど装置内の温度、すなわちRTC2の周囲温度の上昇値が高いと考えられるため、実験により、印刷量(後述する所定時間内の印刷枚数又は1ジョブ毎の印刷枚数)とその印刷量の印刷によるRTC2の周囲温度の変化に対応して予め求めたRTC2の時刻を正しい時刻に補正するための補正値(誤差を相殺する補正時間に相当する)とを関連付けた補正情報を求めておき、図3に示すように、補正情報として、所定印刷枚数毎の時刻補正値をまとめたテーブル形式の情報を作成し、画像形成装置の製造時等に補正情報保持部8に書き込んでおき、固定値として以後同じ値を使用するものとする。
上記実験では、所定時間内の印刷による温度変化を調べるには、所定時間内に複数印刷ジョブを実行する際、その各印刷ジョブ間を所定時間空けるようにすると、画像形成装置の実使用に合った時刻補正値を求めることができる。また、1印刷ジョブ毎に時刻補正をするための時刻補正値を求める実験では、印刷枚数を異ならせた印刷ジョブ毎に求めるようにすると良い。
【0024】
図2に示した例では、RTC2の周辺温度はスタンバイ(Stanby)状態では通常25℃以上であるため、スタンバイ状態を基準に考えた場合、印刷動作で温度が上昇すると、時刻が遅れる方向にずれるため、補正時には時刻を進める必要がある。
そこで、各印刷枚数に対する周波数偏差は、図2中の矢示a〜eのように示すことができ、その各周波数偏差によって生じる時刻の遅れを正しく元に戻すための時刻補正値を設定している。
【0025】
〔実施例1〕
次に、上記印刷量が所定時間内の印刷枚数であるときの処理について説明する。
図4は、図1に示す画像形成装置における起動中の印刷情報に係る処理を示すフローチャート図である。
コントローラ1は、起動後、ステップ(図中「S」で示す)1でスタンバイ(Stanby)状態になり、ステップ2で印刷部において1ジョブ印刷が終了すると、ステップ3で、RTC制御部6は、印刷情報検知部5から1ジョブ印刷における印刷枚数を受信し、ステップ4で、RTC制御部6は、印刷情報保持部7に1ジョブ印刷における印刷枚数を保存する。このようにして、印刷部で印刷が行われる度に送信される印刷枚数を印刷情報保持部7に順次保存していく。
【0026】
図5は、図1に示す画像形成装置における起動中の時刻補正に係る処理を示すフローチャート図である。
RTC制御部6は、ステップ11でスタンバイ状態になり、ステップ12で、起動後は所定時間Tが経過したか否かを判断し、経過したと判断したら、ステップ13で、印刷情報保持部7に保持された印刷枚数(所定時間Tに記憶された全印刷ジョブの印刷枚数)と、補正情報保持部8に保持されている補正情報を読み出し、補正値特定部9へ送り、ステップ14で、補正値特定部9は、所定時間内の印刷枚数を求め、その所定時間内の印刷枚数(総印刷枚数)と補正情報とに基づいて時刻補正値を求め(総印刷枚数に対応する時刻補正値を特定する)、その時刻補正値を時刻補正部10へ送り、ステップ15で、時刻補正部10は、RTC2の時刻カウンタ4の時刻を時刻補正値によって補正する。
【0027】
このようにして、起動後は所定時間Tが経過する度に、その所定期間T内での印刷枚数に対応する時刻補正値によってRTC2の時刻を補正する処理を繰り返す。
上述の処理において、所定時間Tが経過したときに印刷情報保持部7に保持された印刷枚数をクリアするようにすれば、印刷情報保持部7のメモリ容量を節約することができる。
【0028】
次に、上述の時刻補正の処理についてさらに説明する。
図6は、画像形成装置の起動後のRTC周囲温度の変化の一例を示す波形図である。
一般的に、画像処理装置のRTC周囲温度(℃)は、図6に示すように、起動後温度が上昇し、しばらくした後一定になる。その後、1ジョブ印刷でX枚印刷を行うと、RTC周囲温度はさらに上昇し、印刷終了後は徐々に下がってまた一定の温度になると考えられる。
【0029】
例えば、図6に示す最初の所定時間Tの期間では、X枚印刷とY枚印刷の印刷ジョブを行っており、所定時間Tが経過すると、補正値特定部9は、印刷情報保持部7から受け取ったX枚とY枚からX+Y枚を求め、補正情報保持部8から読み出した補正情報を参照し、X+Y枚に対応する時刻補正値を読み出し、時刻補正部10が上記時刻補正値によってRTC2の時刻カウンタ4の時刻を補正する。この場合、RTC2の周囲温度の上昇で時刻カウンタ4でカウントされた時刻は遅れているので、上記時刻補正値だけ時刻を進めるように補正することになる。
さらに、同様の動作を継続して行い、次の所定時間Tの期間ではZ枚の印刷を行っているので、Z枚印刷した場合の時刻補正値を求め、上述と同様にして時刻補正を行う。
このようにして、印刷量と温度上昇値の関係を利用して、温度センサによって検出した温度を用いなくても、所定時間毎にRTC2の時刻のズレを正しく補正することができる。また、動作モード毎に時刻補正をするよりも正しく且つ温度変化毎に時刻を正しくすることができる。
【0030】
〔実施例2〕
次に、上記印刷量が1印刷ジョブ毎の印刷枚数であるときの処理について説明する。
上述の処理では、所定時間毎に時刻補正の処理を実行するが、所定時間内においても、例えば20枚の印刷を間隔を空けて3回行った場合と、60枚を一度にまとめて印刷した場合とでは、それぞれ温度上昇の状態が異なるので、さらに正しく時刻を補正するために、各印刷ジョブが終了する毎に時刻補正を行うとよい。
この場合、RTC制御部6は、印刷情報検知部5から1印刷ジョブの終了時にその印刷ジョブで印刷された印刷枚数を受信すると一旦印刷情報保持部7に保持し、その1印刷ジョブの印刷枚数と、補正情報保持部8に保持されている補正情報を読み出し、補正値特定部9へ送り、補正値特定部9は、その印刷枚数と補正情報とに基づいて時刻補正値を求め(印刷枚数に対応する時刻補正値を特定する)、その時刻補正値を時刻補正部10へ送り、時刻補正部10は、RTCの時刻カウンタの時刻を時刻補正値によって補正する。
【0031】
図7は、画像形成装置の起動後のRTC周囲温度の変化の他の例を示す波形図である。
例えば、図7に示す最初の印刷ジョブにおいてX枚印刷が終了すると、補正値特定部9は、補正情報保持部8から読み出した補正情報を参照し、印刷情報保持部7から受け取ったX枚に対応する時刻補正値を読み出し、時刻補正部10が上記時刻補正値によってRTC2の時刻カウンタ4の時刻を補正する。この場合、RTC2の周囲温度の上昇で時刻カウンタ4でカウントされた時刻は遅れているので、上記時刻補正値だけ時刻を進めるように補正することになる。
また、同様の動作を継続して行い、次の印刷ジョブにおいてY枚の印刷が終了すると、そのY枚の印刷枚数に対応する時刻補正値によって、さらに、次の印刷ジョブにおいてZ枚の印刷が終了すると、そのZ枚の印刷枚数に対応する時刻補正値によって、それぞれ印刷終了毎にRTC2の時刻を補正する。
このようにして、印刷動作が終了したことをトリガとして時刻を補正することにより、各印刷動作終了後毎により正確に時刻を補正することができる。
【0032】
〔実施例3〕
次に、印刷ジョブ→スタンバイ状態→印刷ジョブという動作を短いスタンバイ間隔で繰り返した場合、一回目の印刷ジョブの要因による温度上昇が収まらないまま二回目の印刷ジョブを行うため、単純に一度印刷動作させた場合と比較して、温度上昇値が異なる。
そこで、上記印刷量が、予め決められた複数回の印刷ジョブを短いスタンバイ間隔で行う場合、各印刷ジョブの印刷枚数にそれぞれ温度変化の影響の度合いに応じた重み付けをした後に合算した印刷枚数であるときの処理について説明する。
【0033】
図8は、画像形成装置の起動後のRTC周囲温度の変化のさらに他の例を示す波形図である。
図9は、印刷時間経過に対して印刷枚数に加味する重みの変化を示す波形図の一例である。
印刷ジョブを短い間隔で行った場合、図8に示すように一つの印刷ジョブによる温度上昇がおさまる前に、次の印刷ジョブによる温度上昇が加算されて、各印刷ジョブの間に温度低下をもたらす十分なスタンバイ状態がある場合と比べてRTC2の周囲温度がより高くなると考えられる。
こうした場合、各印刷ジョブ毎の印刷枚数に対する時刻補正値で時刻補正を行うのでは、若干のずれが生じるので、単に印刷枚数から特定した時刻補正値では正しく補正することが難しい。
【0034】
そこで、連続する印刷ジョブが補正を行う地点に近ければ近いほど温度に与える影響が大きいと考えられ、逆に古い印刷ジョブでは影響が小さいと考えられるから、短時間で複数の連続する印刷ジョブにおけるより前に実行した印刷ジョブの印刷量に関しては現時点の印刷ジョブとの時間の差が大きいほど、影響が小さくなるように重みを設定して、時刻補正値を求めるとよい。
例えば、短いスタンバイ間隔によって3つの印刷ジョブでそれぞれX,Y,Z枚の印刷を行った場合、Z+aY+bX(0<a<1,0<b<1,a>b)という数式で過去の印刷ジョブ(X枚の印刷ジョブ)における印刷枚数に重みa,bを掛けた値を加えて求められる値を印刷枚数として、その印刷枚数に対応する時刻補正値を読み出して時刻補正を行う。
【0035】
上記重みaの値は、Y枚印刷のジョブからZ枚印刷のジョブまでの時間taに応じて定められた数値であり、同様に重みbの値は、X枚印刷ジョブからZ枚印刷ジョブまでの時間tbに応じて定められた数値である。
また、図9に示すように各重みは経過時間が大きいほど小さくなる値である。
このようにして、過去の動作も考慮した温度上昇値を計算することができ、正しく補正を行うことができる。
【0036】
〔実施例4〕
次に、画像形成装置が設置される場所の温度環境が予め意図したものと異なる場合、時刻補正を正しく行えない虞がある。
そこで、上記時刻補正値を、操作表示部からユーザによって入力された装置の設置環境の情報に基づいて修正するようにするとよい。
上記設定環境情報としては、空調の有無、室内の設定温度、室内の空調が動作している時間帯、設置している地域などがある。
図10は、画像形成装置の設置した部屋の室温が予め想定した常温よりも高い場合と低い場合のRTC周囲温度の変化の一例を示す波形図である。
図11は、標準温度とのズレd(℃)と時刻補正値の修正値m(d)との関係を示す波形図である。
【0037】
図10に示すように、一般的に画像形成装置の設置した部屋の室温が予め想定した常温よりも高い場合と低い場合ではRTC2の周囲温度の上がり方は異なっており、時刻補正を行うにはそのことを考慮に入れる必要がある。
そこで、RTC制御部6の補正値特定部9は、上記補正情報に基づいて時刻補正値を特定すると、その時刻補正値にユーザが設定した設定環境情報に基づいた補正を加える。
例えば、室内の設定温度が28℃であり、時刻補正値の標準として設定されている温度を25℃とすると、実際の動作環境では、想定していたよりも温度上昇値も高くなる。
そのため、周波数偏差のずれの値も大きくなり、標準の温度である場合と比較しても時刻が遅れるようになるので、当初の補正情報に基づいて特定した時刻補正値では正しく補正できない。
【0038】
これらのずれに対処するため、実験により予め空調の有無、室内の設定温度、室内の空調が動作している時間帯、設置している地域を含む設定環境情報の種類毎の修正値を求めておき、その修正値を各設定環境情報に対応させて、例えば、補正情報保持部8に記憶しておき、ユーザが予め設定した設定環境情報に対応する修正値で上記特定した時刻補正値を補正する。
例えば、この修正値は室温が標準の温度よりd℃高い場合、例えばs秒進めるとすると、設定後はs+修正値m(d)秒進める時刻補正値にする。
上記修正値m(d)の値は、標準温度とのズレdから求められる値であり、標準温度とのズレd(℃)が大きいほど大きくなるため、設定値の一例として、図10に示すような関係を持つ修正値m(d)を設定する。
このようにして、各地域の気候に関連した温度上昇にも対応でき、RTC2の時刻を正しく補正することができる。
【0039】
〔実施例5〕
次に、画像形成装置の電源オフ時、スタンバイ時、設置場所の空調の作動と停止を含む要因によってもRTC2の周囲温度が異なってくるが、こうしたズレにも対処するため、補正情報保持部8に、一日の時刻毎の気温変化の情報と、上記気温変化に対応して予め求めたRTC2の時刻のズレの情報を予め記憶し、RTC制御部6の制御によって補正情報保持部8に、画像形成装置の電源がオフにされたときの時刻を記録するようにし、補正値特定部9が、画像形成装置の電源がオンにされたとき、電源がオンにされた時刻と上記記録された電源がオフにされたときの時刻と上記一日の時刻毎の気温変化の情報とに基づいて、電源がオフにされていた間の温度変化を求め、その求めた温度変化とRTC2の時刻のズレの情報に基づいて、電源がオフにされていた間の時刻のズレを求め、時刻補正部10が、その求めた時刻のズレに基づいてRTC2の時刻を補正するようにするとよい。
このようにして、電源オフ時などの温度のズレにも対応でき、RTC2の時刻を正しく補正することができる。
【0040】
また、電源オフ時であっても、空調の動作状況によりRTC2の周辺温度は異なってくるので、こうした状況に対処するため、ユーザが空調に関する情報を入力した場合、電源オフ時であっても、RTC制御部6は、空調が作動していると設定された時間は空調の設定温度に基づいて、空調が作動していないと設定された時間は外部気温に基づいて、それぞれ時刻補正を行うようにするとよい。
このようにすれば、画像形成装置が設置されている場所の室温を詳細に考慮して、温度上昇値に応じた時刻補正を行える。
【0041】
〔実施例6〕
通常、画像形成装置にはトナーを定着させる定着部が搭載されており、その定着部にはヒータと温度センサが取り付けられている。
この定着部の温度センサとヒータ(図1では、この定着部,温度センサ,及びヒータの図示を省略)の稼動状況情報をRTC制御部6に伝達する手段を設け、RTC制御部6が、自装置の定着部に搭載されている温度センサの情報と上記定着部のヒータの稼働状況情報とに基づいて自装置が設置されている場所の室温を求める手段と、上記室温に基づいて上記補正情報を修正する手段の機能を果たすようにするとよい。
まず、画像形成装置の製造時に、ヒータの稼働率と定着部の温度変化と室温の関係を予め計測したデータを補正情報保持部8に書き込んでおき、そのデータと定着部から伝えられた情報とに基づいて画像形成装置の設置された部屋の室温を求める。
定着部は印刷を行ったときなどに動作するため、温度センサとヒータの稼動状況情報の伝達は毎回の印刷時に行うものとし、室温を求めたあとの補正は上述と同様にして行う。
【0042】
次に、この発明の実施例7の画像形成装置について説明する。
〔実施例7〕
図12は、この発明の実施例7の画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
この画像形成装置も、ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,又はファクシミリ機能,スキャナ機能,コピー機能,プリント機能を備えた複合機であり、CPU,ROM及びRAMからなるマイクロコンピュータによって実現されるコントローラ11と、公知なので図示を省略するが、原稿の画像を読み取る画像読取部と、画像読取部によって読み取った画像を転写紙にコピー印刷又は通信部によって受け取った画像を記録紙に印刷する印刷部と、有線または無線によりローカルエリアネットワーク,インターネットを含む通信網に接続され、外部の機器との通信(例えば、ファクシミリ通信、データ通信)を可能とする通信部と、ユーザが各種の操作情報を入力すると共に、ユーザに各種の操作画面とこの装置上の各種の情報を表示する操作表示部も備えている。
【0043】
コントローラ11は、CPUがROMに格納されたプログラムを、RAMを作業領域として実行することにより実現される各種の機能部を有する。
コントローラ11は、この画像形成装置における時刻をカウントするリアルタイムクロック(RTC,(時刻をカウントする時刻カウント手段の機能を果たす))2と、自装置の動作内容に応じてRTC2の周囲温度の変化によって変動する時刻を補正するRTC制御部(「補正手段」の機能を果たす)13を備えている。
実施例7では、自装置でコピー,画像読取を含む各種のジョブ(動作内容)を実行した場合に、その実行したジョブ(動作内容)を示す動作情報をRTC制御部13へ送るジョブ内容伝達部12を有し、上記RTC制御部13は、ジョブ内容伝達部12から受け取った動作情報に基づいてRTC2のカウントする時刻を補正する。
【0044】
RTC2は、所定の周波数でクロック信号を発信する水晶発振子(水晶発振回路、「水晶振動子」ともいう)3と、その水晶発振子3が発信するクロック信号に基づいて時刻をカウント(計測)する時刻カウンタ4を備えている。
RTC制御部13は、ジョブ内容伝達部12から受け取った自装置で実行された動作内容を示す動作情報を記憶して保持する動作情報保持部(「動作情報記憶手段」の機能を果たす)14と、自装置で実行される動作内容を示す動作情報と、上記動作内容で動作させた後に測定したRTC2の周囲温度の低下の変化に対応して予め求めたRTC2の時刻の補正値とを関連付けた補正情報を記憶する補正情報保持部(「補正情報記憶手段」の機能を果たす)15と、動作情報保持部14に記憶された動作情報と補正情報保持部15に記憶された補正情報とに基づいてRTC2の時刻の補正値を特定する補正値特定部(「補正値特定手段」の機能を果たす)16と、補正値特定部16によって特定された補正値に基づいてRTC2の時刻を補正する時刻補正部(「時刻補正手段」の機能を果たす)17を備えている。
【0045】
次に、上記補正情報について説明する。
図13は、図12に示す水晶発振子3の周辺温度の変化に応じてクロック信号の発信する周波数偏差の変化を示す波形図である。
図13に示すように、通常、水晶発振子3は、周囲温度が常温の25℃からずれるほど周波数偏差のズレも大きくなるため、水晶発振子3の周囲温度に応じた時刻の補正が必要になる。
【0046】
図14は、異なるジョブによる画像形成装置の内部温度の上昇値の一例を示す波形図である。
画像形成装置では、通常、実行するジョブ内容により装置内部の温度上昇値(温度上昇データ)が異なる。
例えば、図14には、ジョブAの波形はコピージョブの場合の温度上昇値の変化を示し、ジョブBの波形はスキャナジョブの場合の温度上昇値の変化を示しており、スキャナ等の負荷の少ない動作より、コピーなど比較的負荷の大きい動作を行ったほうが温度上昇値が高くなる。したがって、RTC2の周囲温度もそれに伴って変化する。
このように、RTC2の周囲温度の温度上昇値が大きい場合、水晶発振子3の周波数偏差も大きくなってくるため、より大きい値の時刻補正が必要になってくる。
【0047】
図15は、図12に示す画像形成装置における電源オフ時からオフ後の装置内部温度の変化例を示す波形図である。
この画像形成装置において、電源オフの直前にジョブを実行した場合、装置内部温度が高くなった状態で電源オフされることになる。
そのような場合、電源オフによって画像形成装置に設けられた図示を省略するファンなどの冷却装置は停止するため、装置内部の温度は比較的長い時間高い状態が続き、RTC2の時刻にズレをもたらす要因になると考えられる。
また、電源オフの直前に実行されたジョブの内容が異なる場合、電源オフ時の装置内部温度、すなわち、RTC2の周囲温度は異なる。
【0048】
図15に示すように、異なるジョブを示す動作モードA〜Cでそれぞれ動作した後に電源オフした場合、各動作モードA〜Cの実行後の電源オフ時における装置内部温度はそれぞれ異なり、電源オフ後は時間の経過に従ってそれぞれなだらかに温度が低下していって、図中T2で示すように、最終的に同様の温度に収束(集束)すると考えられる。
しかし、電源オフによって、RTC制御部13も停止しているため、電源オフの最中はRTC2の時刻を補正できない。そこで、電源オン時にRTC2の時刻を補正する必要がある。また、電源オフ直前に実行した動作モード毎に装置内部の温度が変るので、RTC2の時刻のズレもそれぞれ異なるものと考えられるから、電源オフの直前に実行されたジョブの内容毎に時刻の補正具合を異ならせる必要がある。
【0049】
そこで、まず、画像形成装置で実行される動作モード毎に、その動作モードで動作させた後に測定したRTC2の周囲温度の低下の変化に対応して予め求めたRTC2の時刻の補正値と、動作モードとを関連付けた補正情報を予め補正情報保持部15に記憶する。
図15に示したような温度低下によってもたらされるRTC2の時刻のズレに対する補正値は、各時間毎の温度とそれに対応した周波数偏差から、全体の時刻のズレを計算できる。
そして、電源オン時に、RTC制御部13は、補正情報保持部15に保持された補正情報に基づいてRTC2の時刻を補正する。
【0050】
上記電源オン時の時刻の補正のためには、RTC制御部13は、電源オン時、動作情報保持部14に保持された動作情報(これが電源オフの直前に実行されたジョブ内容(動作モード)を示す)を取得し、その動作情報に対応する補正情報を補正情報保持部15から読み出す。
図16は、図12に示す画像形成装置における補正情報保持部15への動作情報の記憶動作処理を示すフローチャート図である。
RTC制御部13は、ステップ21で、スタンバイ(Stanby)状態であり、ステップ22で、ジョブ動作が終了すると、ステップ23で、ジョブ内容伝達部から終了したジョブ内容の動作情報を受信すると、ステップ24で、動作情報保持部14に動作情報を保存し、この処理を終了し、ステップ21へ戻って元のスタンバイ状態に戻る。
【0051】
次に、この画像形成装置が電源オンにされたときのRTC制御部13の時刻補正の処理について説明する。
図17は、電源オンにされたときの時刻補正の処理を示すフローチャート図である。
RTC制御部13は、電源オンの後、ステップ31で、動作情報保持部14から補正値特定部16に電源オフの直前に行ったジョブ内容を示す動作情報を送信し、補正値特定部16は動作情報を取得し、ステップ32へ進む。
ステップ32で、補正値特定部16は補正情報保持部15を参照し、補正情報保持部15に保存されている補正情報から、上記動作情報のジョブ内容に該当する補正情報を取り出し、補正値特定部16は補正情報を取得し、ステップ33へ進む。
ステップ33で、補正値特定部16は、動作情報と補正情報とに基づいて時刻補正値を求め、時刻補正部17へ送り、ステップ34へ進む。
ステップ34で、時刻補正部17は、RTC2の時刻カウンタ4の時刻を時刻補正値によって補正し、ステップ35へ進む。
ステップ35で、コントローラ1は、スタンバイ状態に移行し、この処理を終了する。
【0052】
次に、上述の説明では、電源オン時に時刻補正を行う場合について説明したが、この画像形成装置において、RTC制御部13が停止する省エネルギーモード(STR)に移行した場合にも、RTC2の時刻を逐次補正することができない。
また、STRでは多くの機能が停止しているため、装置の内部温度も図15に示したような一定のパターンで下降すると考えられる。
そこで、上記動作情報として、STR時のRTC2の周囲温度の低下の変化に対応して予め求めたRTC2の時刻の補正値にした補正情報を保持するようにすれば、STRからスタンバイ状態に復帰したときに上述の電源オフ時のときと同様に時刻の補正を行うことができる。
【0053】
この場合、上記RTC制御部13と動作情報保持部14が、省エネルギーモードへ移行するときに時刻カウント手段によってカウントされた時刻を保存する手段の機能を果たすようにし、上記補正値特定部16が、省エネルギーモードからスタンバイ状態に復帰したときに時刻カウント手段によってカウントされた時刻と上記保存された時刻とに基づいて省エネルギーモード時間を求める手段と、上記求めた省エネルギーモード時間も含めて時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段の機能を果たすようにする。
このようにして、この実施例の画像形成装置では、電源オンのときだけでなく、省エネのためにCPUが停止するモード(STR)からスタンバイ状態に復帰した際にも、STRに移行してからSTR中に生じたRTC2の時刻のズレを補正することができる。
【0054】
次に、上述の説明では、画像形成装置の内部温度が、図15に示したように、曲線で一定値(室温など)まで下がり、その後電源をオンしたときにRTC2の時刻を補正した場合について説明したが、電源オフから短時間経過した後に再度電源オンにした場合、例えば、図15に示した経過時間T1に電源が再投入された場合、装置の内部温度があまり下がりきらないうちに再び温度が上昇する場合が考えられる。
このような場合、上述のように装置の内部温度が下がりきったものと仮定してRTC2の時刻を補正した場合とは、時刻の補正値にずれが生じてくると考えられる。
【0055】
そこで、上記画像形成装置において、上記動作情報として、電源オフから経過時間毎のRTC2の周囲温度の低下の変化に対応して予め求めたRTC2の時刻の補正値にした補正情報を保持するようにすれば、電源オフ時の時刻を保持し、図15に示したように、温度が下がりきらない経過時間T1で電源が再度投入されてスタンバイ状態に復帰した場合でも、電源オフから経過時間T1までの期間に対応する補正情報に基づいてRTC2の時刻のズレを補正することができる。
【0056】
例えば、コントローラ11が電源オフに際して、いきなり電源を切るのではなく、ソフトウェアプログラムの処理でシャットダウンの処理を行ってから切るようにしている場合、コントローラ11は、RTC制御部13によって電源オフ時の時刻を動作情報保持部14に書き込む動作が行われた後に電源オフする。
そして、次の電源オン時に、RTC制御部13によってRTC2にアクセスし、電源オン時の時刻を取得し、動作情報保持部14に保持された電源オフ時の時刻と電源オン時の時刻から電源オフしていた経過時間である電源オフ時間を計算で求める。その後、電源オフ時間に対応する補正値を補正情報保持部15から読み出し、上述と同様にしてRTC2の時刻のズレを補正する。
【0057】
この場合、上記RTC制御部13と動作情報保持部14が、電源オフをするときに時刻カウント手段によってカウントされた時刻を保存する手段の機能を果たすようにし、上記補正値特定部16が、電源オン時に時刻カウント手段によってカウントされた時刻と上記保存された時刻とに基づいて電源オフ時間を求める手段と、上記求めた電源オフ時間も含めて時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段の機能を果たすようにする。
これにより、例えば、図15に示した電源オフから短時間の経過時間T1で電源オンされた場合の時刻補正のように、電源オフから装置内温度が完全に下がりきっていないときに電源がオンされたような場合でもより正確に時刻のズレを補正することができる。
【0058】
次に、この画像形成装置が、上述のようなシャットダウン処理を行わない装置の場合、例えば、電源オフ時にRTC2の電源が通常の電源から電池に切り替わったときの時刻を保存し、その時刻を用いて上述と同様に時刻補正を行うこともできる。
この場合、上記RTC制御部13と動作情報保持部14が、時刻カウント手段への給電が通常の電源から電池に変わったときに時刻カウント手段によってカウントされた時刻を検知して保存する手段の機能を果たすようにし、上記補正値特定部16が、電源オン時に時刻カウント手段によってカウントされた時刻と上記保存された時刻とに基づいて電源オフ時間を求める手段と、上記求めた電源オフ時間も含めて時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段を果たすようにする。
このようにして、電源オフ時にシャットダウン処理を行わずに電源断を行って、装置内部の温度が完全に下がりきっていないときに電源オンされた場合でも、RTC2の時刻のズレをより正確に補正することができる。
【0059】
また、上記補正情報を求める際に、ユーザが室温を入力することにより、温度変化が最終的に集束する温度を変化させることができる。
この場合、画像形成装置の操作部から入力された室温に基づいて、RTC2の周囲温度の低下の変化について最終的に集束する温度を変化させる。
【0060】
次に、例えば、電源オフ又はSTR移行直前に、負荷の重い動作のジョブを行った後にそのジョブで生じた装置内の温度があまり下がらないうちに負荷の軽い動作のジョブを行った場合、電源オフ又はSTR移行直前に負荷の軽い動作のジョブを行った場合よりも装置内の温度は上昇する。
このような場合、電源オフ又はSTR移行直前に負荷の軽い動作のジョブを行った場合での時刻のズレよりもさらに多くのずれが生じるものと考えられる。
そこで、上記補正情報を求める際に、電源オフ又はSTR移行直前の動作だけでなく、電源オフ又はSTR移行前の一定期間の動作についても考慮にいれることで、より正確に時刻の補正を行うことができる。
【0061】
図18は、この画像形成装置において複数のジョブを連続して実行した場合の装置内部の温度変化例を示す波形図である。
例えば、負荷の重いジョブAを実行した後に負荷の軽いジョブBを実行した場合、ジョブAの実行によって装置内の温度が上昇し、その温度があまり下がらないうちにジョブBの実行による発熱が加わってしまうので、図18に実線で示す波形のように、ジョブAの実行によって上昇した装置内の温度が、ジョブAの終了によってなだらかに低下を始めるが、続けて実行されたジョブBによる発熱(図中破線で示す波形図)によって再び上昇し、その後なだらかに低下を始めるので、ジョブAのみの実行後の温度低下の傾向と異なってしまう。
そこで、上記補正情報を求める際、RTC2の周囲温度を、各ジョブ毎にジョブ実行後の経過時間毎の重み係数値を用いて温度上昇値を計算する。
【0062】
図19は、経過時間によって変化する重み係数値の一例を示す波形図である。
図19に示すように、例えば、上記ジョブAとBについて、ジョブAの終了時の温度上昇値に対して、ジョブA終了からの電源オフt1までの経過時間を示す電源オフ時間taにおける温度を求めるための重み係数値w1を乗算し、ジョブBの終了時の温度上昇値に対して、ジョブB終了からの電源オフt1までの経過時間を示す電源オフ時間tbにおける温度を求めるための重み係数値w2を乗算し、連続ジョブによる温度上昇値は「w1×A1+w2×A2」で計算して求めることができる。
このようにして求めた温度上昇値を、RTC2の周囲温度として求めた時刻補正値と動作情報とを対応させて上記補正情報として予め記憶する。
【0063】
そして、動作情報保持部14には、ジョブ内容伝達部12から伝達される各ジョブ内容を示す動作情報について、一定期間内に実行された複数のジョブを含む動作情報にして記憶し、補正値特定部16が、動作情報保持部14の動作情報に対応する補正情報を補正情報保持部15から読み出す。この場合の補正情報は、複数のジョブが連続して実行された場合の温度上昇が加味された時刻の補正値が含まれている。
その後、時刻補正部17が上記補正情報値によって上述と同様にしてRTC2の時刻を補正する。
この場合、上記ジョブ内容伝達部12と動作情報保持部14が、自装置で一定期間内に実行された複数の動作内容を示す動作情報を記憶する手段の機能を果たすようにし、上記補正値特定部16が、自装置で一定期間内に実行された複数の動作内容を示す動作情報に基づく時刻カウント手段の周囲温度の変化も含めて時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段の機能を果たすようにする。
このようにして、電源オフ又はSTR移行直前に、一定期間内に複数のジョブを連続して行っていた場合でも、時刻の補正をより正確に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明による画像形成装置は、ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,ファクシミリ機能とスキャナ機能とプリント機能とコピー機能を有する複合機においても適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,11:コントローラ 2:RTC 3:水晶発振子 4:時刻カウンタ 5:印刷情報検知部 6,13:RTC制御部 7:印刷情報保持部 8,15:補正情報保持部 9,16:補正値特定部 10,17:時刻補正部 12:ジョブ内容伝達部 14:動作情報保持部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2008−64678号公報
【特許文献2】特開2003−329786号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻をカウントする時刻カウント手段と、自装置の動作内容に応じて前記時刻カウント手段の周囲温度の変化によって変動する時刻を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記補正手段は、
印刷量と該印刷量の印刷による前記時刻カウント手段の周囲温度の変化に対応して予め求めた前記時刻カウント手段の時刻の補正値とを関連付けた補正情報を記憶する補正情報記憶手段と、
自装置の印刷量を検出する印刷量検出手段と、
前記印刷量検出手段によって検出した印刷量と前記補正情報記憶手段に記憶された補正情報とに基づいて前記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する補正値特定手段と、
前記補正値特定手段によって特定された補正値に基づいて前記時刻カウント手段の時刻を補正する時刻補正手段とを有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷量は、所定時間内の印刷枚数であることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷量は、1印刷ジョブ毎の印刷枚数であることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記印刷量は、予め決められた複数回の印刷ジョブを短いスタンバイ間隔で行う場合、各印刷ジョブの印刷枚数にそれぞれ温度変化の影響の度合いに応じた重み付けをした後に合算した印刷枚数であることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記時刻の補正値を、入力された装置の設置環境の情報に基づいて修正する手段を設けたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
一日の時刻毎の気温変化の情報を予め記憶する手段と、
前記気温変化に対応して予め求めた前記時刻カウント手段の時刻のズレの情報を予め記憶する手段と、
電源がオフにされたときの時刻を記録する手段と、
電源がオンにされたとき、電源がオンにされた時刻と前記記録された電源がオフにされたときの時刻と前記一日の時刻毎の気温変化の情報とに基づいて、電源がオフにされていた間の温度変化を求め、その求めた温度変化と前記時刻カウント手段の時刻のズレの情報に基づいて、電源がオフにされていた間の時刻のズレを求め、その求めた時刻のズレに基づいて前記時刻カウント手段の時刻を補正する手段とを設けたことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
自装置の定着部に搭載されている温度センサの情報と前記定着部のヒータの稼働状況情報とに基づいて自装置が設置されている場所の室温を求める手段と、前記室温に基づいて前記補正情報を修正する手段とを設けたことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記補正手段は、
自装置で実行される動作内容を示す動作情報と、前記動作内容で動作させた後に測定した前記時刻カウント手段の周囲温度の低下の変化に対応して予め求めた前記時刻カウント手段の時刻の補正値とを関連付けた補正情報を記憶する補正情報記憶手段と、
前記動作内容を実行した場合に該実行した動作内容を示す動作情報を記憶する動作情報記憶手段と、
前記動作情報記憶手段に記憶された動作情報と前記補正情報記憶手段に記憶された補正情報とに基づいて前記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する補正値特定手段と、
前記補正値特定手段によって特定された補正値に基づいて前記時刻カウント手段の時刻を補正する時刻補正手段とを有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項10】
電源オフをするときに前記時刻カウント手段によってカウントされた時刻を保存する手段と、電源オン時に前記時刻カウント手段によってカウントされた時刻と前記保存された時刻とに基づいて電源オフ時間を求める手段とを設け、
前記補正値特定手段が、前記求めた電源オフ時間も含めて前記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段を有することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記時刻カウント手段への給電が通常の電源から電池に変わったときに前記時刻カウント手段によってカウントされた時刻を検知して保存する手段と、電源オン時に前記時刻カウント手段によってカウントされた時刻と前記保存された時刻とに基づいて電源オフ時間を求める手段とを設け、
前記補正値特定手段が、前記求めた電源オフ時間も含めて前記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段を有することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記時刻カウント手段の周囲温度の低下の変化について最終的に集束する温度を変化させる手段を設けたことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
省エネルギーモードへ移行するときに前記時刻カウント手段によってカウントされた時刻を保存する手段と、前記省エネルギーモードからスタンバイ状態に復帰したときに前記時刻カウント手段によってカウントされた時刻と前記保存された時刻とに基づいて省エネルギーモード時間を求める手段とを設け、
前記補正値特定手段が、前記求めた省エネルギーモード時間も含めて前記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段を有することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記動作情報記憶手段は、自装置で一定期間内に実行された複数の動作内容を示す動作情報を記憶する手段を有し、
前記補正値特定手段は、前記自装置で一定期間内に実行された複数の動作内容を示す動作情報に基づく前記時刻カウント手段の周囲温度の変化も含めて前記時刻カウント手段の時刻の補正値を特定する手段を有することを特徴とする請求項9乃至13のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−230656(P2010−230656A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38100(P2010−38100)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】