説明

画像形成装置

【課題】隣接する搬送ロール対間の用紙搬送路上に残留した記録用紙を簡易な構成で除去することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録用紙Pに画像を形成する画像形成手段1と、画像形成手段1に記録用紙Pを給紙する給紙手段17と、操作者により開閉可能に設けられた保守用の開閉扉100Cと、開閉扉100Cを開放した際に、操作者による保守が可能な保守可能搬送路RTmと、保守が不能な保守不能搬送路RTjとを有し、給紙手段17から画像形成手段1を介して排出口24に向けて記録用紙Pを搬送する用紙搬送路RTと、保守不能搬送路RTj上に残留する残留用紙Pjを検知する残留用紙検知手段Sjとを備え、開閉蓋100Cの開閉操作後、残留用紙検知手段Sjが残留用紙Pjを検知している場合に、新たな記録用紙P0を用紙搬送路RTに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを利用した複写機やプリンター等の画像形成装置では、用紙詰まり等の際のいわゆるジャム処理のために、装置筐体に対して開閉可能な保守用カバーを設け、かかる保守用カバーを開放してジャム処理を行う画像形成装置が知られている。(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
ここで、特許文献1には、定着ユニットを引き出す際に、用紙を排出する搬送ロール対を開放する機構を設けた画像形成装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、用紙詰まり発生時に、ジャム処理し易い位置まで当該用紙を搬送する画像形成装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、搬送ロールを空回転させることにより、用紙詰まりの解消を図った画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3408055号公報
【特許文献2】特許第3984976号公報
【特許文献3】特許第3673572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的とするところは、操作者による保守が不能な用紙搬送路上に残留した記録用紙を除去することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の画像形成装置は、記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段に記録用紙を給紙する給紙手段と、操作者により開閉可能に設けられた保守用の開閉扉と、前記開閉扉を開放した際に、操作者による保守が可能な保守可能搬送路と、保守が不能な保守不能搬送路とを有し、前記給紙手段から前記画像形成手段を介して排出口に向けて前記記録用紙を搬送する用紙搬送路と、前記保守不能搬送路上に残留する残留用紙を検知する残留用紙検知手段とを備え、前記開閉蓋の開閉操作後、前記残留用紙検知手段が残留用紙を検知している場合に、新たな記録用紙を用紙搬送路に供給することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の構成において、前記画像形成装置は、記録用紙に画像を定着させる定着手段と、記録用紙を装置外に搬送排出する排出手段とを備え、前記残留用紙検知手段は、前記定着手段と排出手段との間の用紙搬送路に残留する記録用紙を検知することを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の画像形成装置は、請求項2に記載の構成において、前記画像形成手段に向けて、予め定められた時機に記録用紙を搬送供給する時機調節手段と、当該時機調節手段と定着手段との間の用紙搬送路上に存在する記録用紙を検知する用紙検知手段とをさらに備え、前記用紙検知手段が記録用紙の存在を検知せずに、前記残留用紙検知手段が記録用紙の存在を検知した場合に、前記給紙手段により新たな記録用紙を供給することを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の画像形成装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の構成において、前記残留用紙検知手段が残留用紙を検知しなくなるまで、予め定められた回数内にて前記新たな記録用紙を繰り返し供給することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載の画像形成装置は、請求項2ないし4のいずれかに記載の構成において、前記定着手段は、加熱源によって画像を定着させ、前記新たな記録用紙を供給する際の加熱温度は、記録用紙に画像を定着させる際の加熱温度よりも低く設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載の画像形成装置は、請求項1ないし5のいずれかに記載の構成において、前記画像形成手段は、用紙搬送路上に対向配置された、画像を前記記録用紙上に静電的に転写する転写ロールを含み、前記新たな記録用紙を供給する際に、前記転写ロールにより当該新たな記録用紙を帯電させることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7に記載の画像形成装置は、請求項1ないし6のいずれかに記載の構成において、前記新たな記録用紙を供給する前に、前記定着手段及び排出手段を空回転させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、操作者による保守が不能な用紙搬送路上に残留する記録用紙を除去することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、定着手段と排出手段との間の用紙搬送路上に残留する記録用紙を検知することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、保守不能搬送路上にのみ記録用紙が存在すると判断される場合に新たな記録用紙を供給することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、残留用紙を除去するための新たな記録用紙を無制限に供給することを未然に防止することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、未定着の記録用紙が定着手段に残留した場合でも、未定着画像により装置内や操作者が汚損することを必要最小限の定着エネルギーにて防止することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比し、残留用紙を新たな記録用紙に静電的に付着させてより効果的に除去することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比し、新たな記録用紙を徒に供給することなく、残留用紙を除去する可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係る定着装置の構成を説明するための模式図であり、(a)は模式的斜視図、(b)は画像形成装置内における定着装置の配置を示す模式図である。
【図3】本実施の形態に係る残留用紙除去モードの内容を説明するためのフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係る残留用紙除去モードにおける各構成要素の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本実施の形態に係る残留用紙除去モードを用いた際の、残留用紙の除去率を検証した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
まず、本発明に係る画像形成装置の一実施の形態について、図1を参照して説明する。ここで、図1は本発明が適用可能なタンデム型カラー画像形成装置100の概略構成を示す模式図である。
【0025】
なお、この画像形成装置100においては、画像読取装置102より読み取られたカラー原稿のカラー画像情報のみならず、図示しないパーソナルコンピュータや画像データ入力装置等から送られてくるカラー画像情報に基づき、かかる画像情報に対して画像処理が行われるようになっている。
【0026】
図1において、1Y,1M,1C,1Kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナー画像を形成する画像形成手段としての画像形成ユニットであり、複数の張架ロールにより張架された無端状の中間転写ベルト9の進行方向に沿って1Y,1M,1C,1Kの順で直列に配設されている。また、中間転写ベルト9は、これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kで順次形成された各色のトナー像が、互いに重ね合わされた状態で転写される中間転写体であり、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kに対応する静電潜像保持体である感光ドラム2Y,2M,2C,2Kのそれぞれに対向して配設される一次転写ロール6Y,6M,6C,6Kとの間に挿通され、矢印方向に予め定められた速度で循環移動可能に形成されている。そして、中間転写ベルト9上に多重に転写された各色のトナー像は、給紙カセット17等から給紙された記録媒体としての記録用紙P上に一括して転写された後、定着装置15によって定着され、カラー画像が形成された記録用紙Pが外部に排出されるようになっている。
【0027】
ここで、画像読取装置102は、プラテンガラス上に載置された原稿を不図示の光源によって照明し、原稿からの反射光像を、走査光学系を介してCCDセンサー等からなる画像読取素子によって予め定められた解像度(例えば、16ドット/mm)で読み取るように構成されている。
【0028】
また、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、同様に構成されており、大別して、矢印方向に沿って予め定められた速度で回転駆動される像保持体としての感光ドラム2Y,2M,2C,2Kと、この感光ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面を一様に帯電する帯電ロール3Y,3M,3C,3Kと、当該感光ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面に各色に対応した画像を露光して静電潜像を形成する走査光学系よりなる露光装置4Y,4M,4C,4Kと、感光ドラム2Y,2M,2C,2K上に形成された静電潜像を各色のトナー像で現像する現像装置5Y,5M,5C,5Kと、感光ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面を清掃するドラムクリーニング装置7Y,7M,7C,7K等とから構成されている。
【0029】
また、本実施の形態において、中間転写ベルト9の上方には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応した現像装置5Y,5M,5C,5Kに予め定められた各色の現像剤(主としてトナー若しくはキャリアを含んだトナー)を供給するトナーカートリッジ10Y,10M,10C,10Kが画像形成装置本体100に対して着脱自在に配設されている。なお、符号CRは、CPU,ROM,RAM等を含んで画像形成装置100の各構成機器の動作を制御する装置コントローラである。
【0030】
本実施の形態に係る感光ドラム2Y,2M,2C,2Kは、矢印方向に回転する金属製ドラムの表面に有機系感光材料、アモルファスセレン系感光材料、アモルファスシリコン系感光材料等からなる感光層が形成されており、帯電ロール3Y,3M,3C,3Kは、この感光ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面と接触し、該感光層を予め定められた電位に帯電するように構成されている。
【0031】
このように構成した画像形成装置における画像形成工程について、イエロートナー画像を形成する画像形成ユニット1Yを代表例として説明する。
【0032】
まず、感光ドラム2Yは、帯電ロール3Yにより、その表面が一様に帯電される。次に、例えば、画像読取装置102によって読み取られた画像情報に基づき、露光装置4Yから出力されるレーザービームによりイエロー画像に対応する走査露光がなされ、感光ドラム2Yの表面にはイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。
【0033】
このイエロー画像に対応する静電潜像は現像装置5Yによってイエロートナー像となり、一次転写手段を構成する一次転写ロール6Yの圧接力及び静電吸引力によって中間転写ベルト9上に一次転写される。一次転写後の感光ドラム2Y上に残留したイエロートナーは、ドラムクリーニング装置7Yによって掻き取られる。その後、感光ドラム2Yの表面は除電装置8Yによって除電された後、次の画像形成サイクルのために帯電ロール3Yにより再び帯電される。
【0034】
多色のカラー画像形成を行う本画像形成装置100では、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの相対的な位置の違いを考慮したタイミングで、上記と同様の画像形成工程が画像形成ユニット1M,1C,1Kにおいても行われ、中間転写ベルト9上にフルカラートナー像が重ね合わされた状態で形成される。この中間転写ベルト9としては、例えば、可撓性を有するポリイミド等の合成樹脂フィルムを帯状に形成し、この帯状に形成された合成樹脂フィルムの両端を溶着等の手段によって接続することにより、無端ベルト状に形成したものを用いることができる。
【0035】
中間転写ベルト9上に一次転写されたフルカラートナー像は、予め定められたタイミングで二次転写位置へと搬送される記録用紙P上に、中間転写ベルト9を支持するバックアップロール13と、このバックアップロール13に予め定められたタイミングで圧接する二次転写ロール12との圧接力及び静電吸引力によって二次転写される。なお、記録用紙P上に二次転写できなかった中間転写ベルト9上の残トナーは、そのまま中間転写ベルト9上に付着した状態でベルトクリーニング装置14まで搬送され、このベルトクリーニング装置14により中間転写ベルト9上から除去されて次の画像形成に備える。
【0036】
一方、記録用紙Pは、画像形成装置100内の下部に配置された給紙手段としての給紙カセット17から、予め定められたサイズのものが給紙ロール17aによって給紙される。給紙された記録用紙Pは、複数の搬送ロール19及びレジストロール(時機調節ロール)20を有する用紙搬送路RTに沿って、予め定められたタイミングで中間転写ベルト9の二次転写位置まで搬送される。そして、記録用紙Pには、上述したように、二次転写手段としてのバックアップロール13と二次転写ロール12とによって、中間転写ベルト9上からフルカラートナー像が一括して転写される。なお、本実施の形態において、上記レジストロール20の近傍には、用紙搬送路RT上の記録用紙Pの有無を検知するレジストセンサー(用紙検知手段)Srが配設されている。
【0037】
また、中間転写ベルト9上からフルカラートナー像が二次転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト9から分離された後、二次転写手段の下流側に配設された定着装置15へと搬送され、この定着装置15によって熱及び圧力でトナー像が記録用紙P上に定着されるようになっている。定着後の記録用紙Pは、排出ロール23を介して排出トレイ24上に排出される。
【0038】
本実施の形態において、画像形成装置本体100の側面には、用紙詰まり等の際のいわゆるジャム処理のために、回転支点100C0を中心に回転自在に形成された保守用カバー(開閉扉)100Cが設けられている。具体的には、上記保守用カバー100Cの上部には、不図示の操作釦が設けられており、この操作釦を押圧する(押し下げる)ことにより、保守用カバー100Cの開閉操作が可能となっている。なお、上記保守用カバー100Cの開閉状態は、不図示のセンサーにより検知できるようになっている。
【0039】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100では、より一層の装置小型化やコストダウンといった要請に基づき、構成機器(例えば、画像形成ユニット1や定着ユニット15)の交換保守等は専門の保守員により行うことを前提として、付帯的な機構を要する構成機器ごとの開閉カバー等を極力省略し、内部機器の保護等のための強度部材を兼用する保守用カバー100Cについてもその開放領域(保守用カバー100Cを開放することによりユーザーが保守できる範囲)を極力規制(縮小)した簡易な構成となっている。
【0040】
例えば、本実施の形態に係る定着装置15は、図2に示すように、互いに対向して定着圧接部(定着ニップ部)Nを形成する一対の定着回転体としての加熱ロール150a及び加圧ロール150bや、この定着回転体150a,150bの下流側に配設された一対のユニット排出ロール(排出手段)155a,155b等が閉鎖構造のユニット筐体151の内部に固設されており、定着ユニット15内の用紙搬送路RTは、保守用カバー100Cを開放した際に操作者から見えない状態となっている。すなわち、ユニット筐体151内の構成機器の保守等は、操作者(ユーザー)にはできない構造となっている。なお、ユニット筐体151外部の軸方向両端部には、操作者(ユーザー)による定着ニップ部Nの圧接力の解除を可能とする圧接力解除レバー157が配設されている。
【0041】
上記加熱ロール150aは、その内部にハロゲンランプ等の加熱源を有すると共に、軸方向一端部に設けられた不図示の駆動部に接続されて回転自在に形成されている。一方、加圧ロール150bは、加熱ロール150aに対向して予め定められた加圧力で加熱ロール150aに圧接し、加熱ロール150aの回転に従動するように形成されている。また、本実施の形態における加熱ロール150aの近傍には、加熱ロール150aの表面温度を計測する不図示の温度センサーが配設されており、この温度センサーに基づいて加熱ロール150aの表面温度を予め定められた温度に温度制御するようになっている。
【0042】
また、一対のユニット排出ロール155a,155bは、ユニット筐体151の下流側開口部に設けられており、定着回転体150a,150bのニップ部Nにて加熱加圧され定着処理された記録用紙Pをその間に挟持して搬送し、ユニット筐体151の外部の排出トレイ24に排出するようになっている。なお、符号158は、ユニット筐体151の上部に固設された搬送ガイドである。
【0043】
同様に、ユニット筐体151内の上記定着回転体150a,150bとユニット排出ロール155a,155bとの間には、当該区間における用紙搬送路RT上に存在する記録用紙Pを検知する残留用紙検知センサー(残留用紙検知手段)Sjが配設されている。
【0044】
すなわち、本実施の形態に係る画像形成装置100では、記録用紙Pを搬送する用紙搬送路RTの内、定着ユニット15の上流側の用紙搬送路(図1中、定着ユニット15の下側の用紙搬送路)に関しては、保守用カバー100Cを開放した際に、用紙搬送路RTが操作者(ユーザー)から視認可能であり、操作者によるジャム処理が可能(操作者のアクセスが可能)な保守可能搬送路RTmとして形成されているのに対し、定着ユニット15内の用紙搬送路に関しては、閉鎖構造のユニット筐体151内に配設され、保守用カバー100Cを開放しても、かかる用紙搬送路が操作者(ユーザー)から視認できず、操作者によるジャム処理が不能(ユーザーのアクセスが不能)な保守不能搬送路RTjとして形成されている。そして、上記残留用紙検知センサーSjにより、保守不能搬送路RTj上の記録用紙Pを検知すると共に、前述したレジストセンサーSrにより、保守可能搬送路RTm上の記録用紙Pを検知するように、各用紙検知センサーSj,Srが設定配置されている。
【0045】
ところで、上述したように、小型化やコストダウンといった要請に基づき、操作者(ユーザー)による保守が不能な用紙搬送路RTjを有する装置構成においては、用紙ジャムが発生した際に、ユーザーが保守用カバー100Cを開放し、視認可能な範囲の用紙搬送路RTm上に残留する記録用紙Pを取り除くこととなる。この際、例えば、記録用紙Pが定着ロール対150a,150bに挟持された状態で残留する場合には、ユーザーが圧接力解除レバー157を操作せずに、視認可能な用紙搬送路RTm側から当該記録用紙Pを引っ張って取り除こうとするケースが度々生じ、このようなケースでは、当該記録用紙Pが破損して、その一部が保守不能な用紙搬送路(本例では、定着ユニット15内の用紙搬送路)RTjに残留し易いことが本発明者の研究により判明した。特に、隣接する搬送ロール対に挟持されずに搬送ロール対間に存在する破損した残留用紙Pj(図2(b)参照)に関しては、搬送ロールの空回転だけでは除去することが著しく困難であることが判明した。
【0046】
そこで、本実施の形態に係る画像形成装置100では、次のような残留用紙除去モードを設けることにより、保守不能搬送路RTj上に残留した残留用紙Pj(特に、隣接する搬送ロール対間に存在する残留用紙Pj)の除去を可能としている。なお、本実施の形態に係る残留用紙除去モードは、既設の用紙検知センサーSr,Sj及び既設の装置コントローラCRの制御機能を流用することにより、特別な部材を何ら付加することなく容易に実現することができる
【0047】
以下に、本実施の形態に係る残留用紙除去モードの内容について、図3、図4を参照してさらに説明する。ここで、図3は、本実施の形態に係る残留用紙除去モードの内容を説明するためのフローチャートであり、図4は、残留用紙除去モードにおける各構成要素の動作を示すタイミングチャートである。
【0048】
図3のフローチャートに示すように、まず、保守用カバー100Cの開閉操作後(ジャム処理後)に残留用紙除去モードのコマンド受付状態となる(ステップST10)。
【0049】
次に、直前(保守用カバー100C操作前)のジャムが保守不能搬送路RTjで発生したか否かを判定する。すなわち、本例では、定着ユニット15内で用紙ジャムが発生(残留用紙検知センサーSjが残留用紙Pjを検知)したか否かを判定する(ステップST20)。直前のジャムが定着装置15内で発生していない場合(直前のジャムで残留用紙検知センサーSjが残留用紙Pjを検知していない場合)には、通常動作(通常制御モード)の待機状態に移行して終了する(ステップST25)。
【0050】
ステップST20にてYESの場合には、次に、残留用紙検知センサーSj又はレジストセンサーSrのいずれかが記録用紙Pを検知しているか否かを判定する(ステップST30)。いずれのセンサーSj,Srも記録用紙Pを検知していない場合には、ジャム処理により記録用紙Pが除去されたと判断して、通常動作(通常制御モード)の待機状態に移行して終了する(ステップST35)。
【0051】
ステップST30にてYESの場合には、さらに、残留用紙検知センサーSjが残留用紙Pjを検知し、かつ、レジストセンサーSrが記録用紙Pを検知していないかを判定する(ステップST40)。
【0052】
ステップST40にてNOの場合(少なくともレジストセンサーSrが記録用紙Pを検知している場合)には、少なくともレジストロール20近傍の保守可能搬送路RTm上に記録用紙Pが存在すると判断し、例えば、操作パネル上にジャム発生を表示して、再度のジャム処理を操作者に促して終了する(ステップST45)。
【0053】
一方、ステップST40にてYESの場合には、保守可能搬送路RTm上には記録用紙Pが存在せず、保守不能搬送路RTj上に残留用紙Pjが存在すると判断し、残留用紙除去モードに移行して、新たな記録用紙P0を給紙カセット17から用紙搬送路RT上に供給する(ステップST50)。これにより、残留用紙Pjを新たな記録用紙P0にて押し出して画像形成装置外、又は、下流の搬送ロール対まで搬送することにより、当該残留用紙Pjの除去を可能とする。
【0054】
その後、再度、残留用紙検知センサーSj又はレジストセンサーSrのいずれかが記録用紙Pを検知しているか否かを判定(ステップST60)し、いずれのセンサーSj,Srも記録用紙Pを検知していない場合には、残留用紙除去モードにより残留用紙Pjが除去されたと判断して、通常動作(通常制御モード)の待機状態に移行して終了する(ステップST65)。
【0055】
一方、ステップST60にて、いずれかのセンサーSj,Srが記録用紙Pを検知している場合には、残留用紙Pjが依然として存在すると判断して、新たな記録用紙P0を再度供給(ステップST60)し、上記ステップST50〜60を予め定められた回数(例えば、5回)繰り返しても、残留用紙Pjが除去されないと判断される場合には、残留用紙除去モードを終了して、装置異常等を操作パネル上に表示して終了する(ステップST80)。これにより、残留用紙除去モードにより、新たな記録用紙P0が無制限に供給されることを防止する。
【0056】
次に、上記残留用紙除去モードに移行した際の各構成要素の具体的な動作としては、図4に模式的に示すように、メインモーターが駆動されると同時に、レジストロール20が駆動され、次いで、予め定められた時間(例えば、0.5sec)経過後に、給紙ロール17aが駆動される。その後、レジストセンサーSrがオンして用紙検知を行うが、給紙ロール17aがオンしてから予め定められた時間(例えば、1sec)経過してもレジストセンサーSrがオンしない場合には、レジストセンサーSrの異常と判断し、タイムアウト処理(メインモーター及びレジストロールをオフする)を行い、残留用紙除去モードを終了する。
【0057】
同様に、給紙ロール17aがオンしてから予め定められた時間(例えば、8sec)経過しても、レジストセンサーSrがオフしない場合もレジストセンサーSrの異常と判断してタイムアウト処理(メインモーター及びレジストロールをオフする)を行い、残留用紙除去モードを終了する。なお、残留用紙除去モードの際には、画像形成を行う必要がないので、加熱源や高圧電源は全てオフしてもよい。
【0058】
ただし、残留用紙Pjに付着したトナーによる汚損を未然に防止するという観点からは、残留用紙除去モードを行う際に、定着装置15の加熱ロール150aを加熱してもよい。このように構成した場合には、未定着の残留用紙Pjが定着ニップ部Nに存在している場合でも、当該残留用紙Pjを加熱加圧して定着処理することにより、未定着トナーによる装置内の汚損や操作者に対する汚損を未然に防止することができる。なお、定着装置15にて加熱する場合には、残留用紙Pjによるトナー付着を防ぐための必要最小限の定着エネルギーで十分なため、省エネルギーの観点から通常の定着温度(例えば、170℃程度)よりも低温(例えば、100℃)にて加熱することが好ましい。
【0059】
同様に、保守不能搬送路RTj中に残留する破損した残留用紙Pjを新たな記録用紙P0に静電的に付着させて、より効果的に除去するという観点からは、新たな記録用紙P0を供給する際に、用紙搬送路RT上の二次転写ロール12にて、当該記録用紙P0を帯電させてもよい。
【0060】
さらに、新たな記録用紙P0を供給する前(残留用紙除去モードに移行する前)に、定着回転体150a,150b及びユニット排出ロール155a,155bを含んだ搬送ロールを空回転させてもよい。ここで、空回転とは記録用紙を搬送することなく動作させることを指す。このように構成した場合には、新たな記録用紙P0を徒に供給することなく、いずれかの搬送ロール対に挟まれた残留用紙Pjを排出する可能性を高めることができる。なお、空回転させた後に残留用紙検知センサーSjを作動させて、残留用紙Pjを再度検知させるとよい。
【0061】
次に、上述した本実施の形態に係る残留用紙除去モードによる残留用紙Pjの除去性能を検証した結果を以下に示す。
【0062】
具体的な検証内容としては、定着ニップ部Nに記録用紙Pが挟まれた状態で停止するジャムを発生させ、ニップ圧を解除しない状態(ニップ圧解除レバー157を操作しない状態)で、上方向/水平方向/下方向のAD側(駆動部が取り付けられていない軸方向端部)/真っすぐ/D側(駆動部側の軸方向端部)の各方向に、保守可能搬送路RTm側から当該記録用紙Pを各5回ずつ引っ張って(引き抜いて)、残留用紙Pjの発生率及び残留用紙除去モードによる残留用紙Pjの除去率を検証した。なお、搬送速度(プロセススピード)は、57mm/s(10ppm)とした。
【0063】
上記条件の下、検証を行った結果、図5に示すように、ジャム状態(記録用紙Pが定着ニップ部Nに挟まれた状態)の記録用紙Pを計405回引っ張ることにより定着装置15内に残留する残留用紙Pjの発生率は24%であった(ジャム状態の記録用紙Pを405回引っ張った結果、残留用紙Pjが96回発生した)。なお、定着装置15内に残留する残留用紙Pjは、軸方向端部(AD側又はD側)に引っ張った場合のみ発生した。ここで、図5中の160gsmは厚紙、P紙は普通紙(例えば、64gsm程度)、SP紙は薄紙(例えば、56gsm程度)をそれぞれ示す。
【0064】
その後、本実施の形態に係る残留用紙除去モードを用いて、新たな記録用紙P0を供給したところ、定着装置15内に残留した残留用紙Pjの除去率は99%であった(96回発生した残留用紙Pjのうち95回が除去できた)。
【0065】
以上、本実施の形態に係る残留用紙除去モードによれば、閉鎖筐体内に収容された保守不能搬送路(特に、定着回転体対150a,150bとユニット排出ロール対155a,155b間といった搬送ロール対間の用紙搬送路)RTjに存在する残留用紙Pjを特別な部材を何ら付加することなく、簡易な構成で容易に排出できることが確認できた。
【0066】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨に逸脱しない範囲において多様な変更もしくは改良を加え得るものである。例えば、上述した実施の形態では、画像形成装置の一例としてのタンデム型のデジタルカラー複写機を例示したが、当然に、モノクロまたは白黒の複写機やプリンター、インクジェット方式の画像形成装置等に適用しても良い。また、上述した実施の形態では、センサーの検知結果に基づいて、自動的に残留用紙除去モードを実行させたが、当然に、操作者の指示を待って残留用紙除去モードを実行するように構成してもよい。さらに、上述した実施の形態では、定着ユニット15内に保守不能搬送路RTjが存在する形態を例示したが、本発明に係る残留用紙除去モードは、用紙搬送路RT上の任意の箇所に保守不能搬送路RTjが存在する形態に適用することができる。また、保守不能搬送路RTjは、保守可能搬送路RTmと比べて保守が困難であるが、ある程度の保守が可能であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1Y,1M,1C,1K:画像形成ユニット、2Y,2M,2C,2K:感光ドラム、3Y,3M,3C,3K:帯電ロール、4Y,4M,4C,4K:露光装置、5Y,5M,5C,5K:現像装置、6Y,6M,6C,6K:一次転写ロール、7Y,7M,7C,7K:ドラムクリーニング装置、9:中間転写ベルト、10Y,10M,10C,10K:トナーカートリッジ、12:二次転写ロール、13:バックアップロール、14:ベルトクリーニング装置、15:定着装置、17:給紙カセット、17a:給紙ロール、19:搬送ロール、20:レジストロール、23:排出ロール、24:排出トレイ、100:画像形成装置、100C:保守用カバー、100C0:回転支点、102:画像読取装置、150a:加熱ロール、150b:加圧ロール、151:ユニット筐体、155a,155b:ユニット排出ロール、157:圧接力解除レバー、CR:装置コントローラ、N:定着ニップ部、P:記録用紙、P0:新たな記録用紙、Pj:残留用紙、RT:用紙搬送路、RTj:保守不能搬送路、RTm:保守可能搬送路、Sj:残留用紙検知センサー、Sr:レジストセンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段に記録用紙を給紙する給紙手段と、
操作者により開閉可能に設けられた保守用の開閉扉と、
前記開閉扉を開放した際に、操作者による保守が可能な保守可能搬送路と、保守が不能な保守不能搬送路とを有し、前記給紙手段から前記画像形成手段を介して排出口に向けて前記記録用紙を搬送する用紙搬送路と、
前記保守不能搬送路上に残留する残留用紙を検知する残留用紙検知手段と
を備え、
前記開閉蓋の開閉操作後、前記残留用紙検知手段が残留用紙を検知している場合に、新たな記録用紙を用紙搬送路に供給することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置は、記録用紙に画像を定着させる定着手段と、記録用紙を装置外に搬送排出する排出手段とを備え、
前記残留用紙検知手段は、前記定着手段と排出手段との間の用紙搬送路に残留する記録用紙を検知することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成手段に向けて、予め定められた時機に記録用紙を搬送供給する時機調節手段と、当該時機調節手段と定着手段との間の用紙搬送路上に存在する記録用紙を検知する用紙検知手段とをさらに備え、
前記用紙検知手段が記録用紙の存在を検知せずに、前記残留用紙検知手段が記録用紙の存在を検知した場合に、前記給紙手段により新たな記録用紙を供給することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記残留用紙検知手段が残留用紙を検知しなくなるまで、予め定められた回数内にて前記新たな記録用紙を繰り返し供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着手段は、加熱源によって画像を定着させ、前記新たな記録用紙を供給する際の加熱温度は、記録用紙に画像を定着させる際の加熱温度よりも低く設定されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成手段は、用紙搬送路上に対向配置された、画像を前記記録用紙上に静電的に転写する転写ロールを含み、前記新たな記録用紙を供給する際に、前記転写ロールにより当該新たな記録用紙を帯電させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記新たな記録用紙を供給する前に、前記定着手段及び排出手段を空回転させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate