説明

画像形成装置

【課題】サテライトの影響による階調性の悪化を抑制しつつ、空白画素の数を不要に増加させることによる画質の劣化を抑制する。
【解決手段】複数種類の空白パターンを示す空白パッチをトナーで形成し(S201)、形成した空白パッチに基づき空白が表現できている空白パターンを検出する(S202)。そして、最も高いしきい値が、検出した空白パターンの形に配置されるようにディザマトリクスのしきい値を設定する(S210)。このように設定したディザマトリクスを用いて二値化処理を行うことにより、サテライトの影響下でも高濃度画像の空白を表現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディザマトリクスを用いて生成した二値画像データの表す画像をトナーで形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多階調の画像データをディザマトリクスを用いて二値化し、二値化した画像データ(二値画像データ)の表す画像をトナーで形成する画像形成装置が知られている。例えば特許文献1に記載の印刷装置では、二値画像データの生成に用いるディザマトリクスのしきい値を変更することにより、経年変化等によって生じる画像形成特性のずれを解消するための濃度補正を行っている。具体的には、点灯するドットの順序に1〜400の番号で表した20×20サイズのディザマトリクスを用いて番号順にドットを点灯した401階調の印刷パターンを表現し、そのうちの8つの印刷パターンの濃度を測定する。そして、測定した濃度に基づき、入力濃度レベル0〜255の各規定濃度値を示す印刷パターンを求め、こうして求められる入力濃度レベルと印刷パターンとの対応関係からディザマトリクスのしきい値を決定することにより濃度補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−111830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二値画像データの表す画像をトナーで形成する画像形成装置では、トナーで形成されるトナー画素で埋められた領域の中に空白画素(トナー無しの画素)を点在させることにより(面積階調法で)最高濃度に近い高濃度を表現するが、孤立した空白画素はトナーの飛び散り(いわゆるサテライト)の影響でつぶれてしまうことがある。この場合、空白画素により空白が表現できないため、その空白画素は階調表現に寄与しないこととなり、階調性が悪化してしまうという問題がある。
【0005】
前述した特許文献1に記載の技術では、サテライトの影響によりつぶれにくくなるように空白画素を配置することについては考慮されていないため、高濃度を表現するための空白画素の数を不要に増加させることになり、画質が劣化するという問題がある。
【0006】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、サテライトの影響による階調性の悪化を抑制しつつ、空白画素の数を不要に増加させることによる画質の劣化を抑制することのできる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の請求項1に記載の画像形成装置は、ディザマトリクスを用いて生成した二値画像データの表す画像をトナーで形成するものである。そして、この画像形成装置は、所定数の空白画素が連続的に並んで配置された空白パターンを示す画像であって空白画素の配置が異なる複数種類のものをトナーで形成する形成手段と、形成手段により形成された画像に基づき空白が表現できている空白パターンを検出する検出手段と、最も高いしきい値を含む連続するしきい値群が、検出手段により検出された空白パターンの形に配置されるようにディザマトリクスのしきい値を設定する設定手段とを備える。なお、ディザマトリクスのしきい値の設定は、あらかじめ用意した複数のディザマトリクスの中から、設定すべきしきい値が設定されているディザマトリクスを選択することにより行うようにしてもよい。
【0008】
このような画像形成装置によれば、サテライトの影響による階調性の悪化を抑制しつつ、空白画素の数を不要に増加させることによる画質の劣化を抑制することができる。
すなわち、高濃度画像に点在する孤立した空白画素はサテライトの影響でつぶれやすいため、サテライトの影響が大きい場合には、複数の空白画素が連続的に並んで配置された空白パターンにより空白を表現することが考えられる。このような空白パターンは、空白画素の数が多いほどサテライトの影響によりつぶれにくくなるが、その分、画質は悪くなる傾向にある。このため、空白パターンを構成する空白画素の数は、サテライトの影響下でも空白が表現できることを条件にできるだけ少なくすることが好ましい。
【0009】
一方、空白パターンを構成する空白画素の数が同じであっても、空白画素の配置が異なればサテライトの影響によるつぶれにくさも異なる場合があり、どのような配置がつぶれにくいかは装置の個体差や使用環境などによって異なり得ると考えられる。
【0010】
そこで、本発明の画像形成装置では、空白画素の数は同じであるが配置の異なる複数種類の空白パターンを示す画像をトナーで形成し、それらのうち空白が表現できているものに基づきディザマトリクスのしきい値を設定する。
【0011】
このような画像形成装置によれば、サテライトの影響下でも空白が表現できる空白パターンを、空白画素の数ごとにその配置が一義的に決められた空白パターンの中から特定する場合に比べ、空白画素の数が少ない空白パターンを特定することが可能となる。したがって、サテライトの影響による階調性の悪化(空白のつぶれ)を抑制しつつ、空白パターンを構成する空白画素を不要に増加させることによる画質の劣化を抑制することができる。
【0012】
ここで、空白画素の数ができるだけ少ない空白パターンを効率よく特定するためには、形成手段は、空白画素の数が同一の空白パターンを示す画像だけでなく、空白画素の数が異なる空白パターンを示す画像についても形成することが好ましい。
【0013】
すなわち、例えば請求項2に記載の画像形成装置では、形成手段は、空白画素の数が異なる空白パターンを示す画像についても形成し、設定手段は、検出手段により検出された空白パターンのうち空白画素の数が最も少ない空白パターンの形にしきい値群が配置されるようにディザマトリクスのしきい値を設定する。
【0014】
このような画像形成装置によれば、空白画素の数が同一の空白パターンのみを示す画像を形成する場合に比べ、サテライトの影響下でも空白が表現可能であって空白画素の数ができるだけ少ない空白パターンを効率よく特定することができる。
【0015】
一方、空白が表現できている空白パターンとして、空白画素の数が同一の空白パターンが複数検出されることも考えられる。この場合、検出された複数の空白パターンのうちの1つを何らかの選択基準に従い選択し、選択した空白パターンに基づきディザマトリクスのしきい値を設定するといったことが可能である。この選択基準としては、例えば、空白パターンについてあらかじめ優先順位を決めておくといったことも考えられるが、請求項3に記載のようにユーザに選択させることも可能である。
【0016】
すなわち、請求項3に記載の画像形成装置では、設定手段は、検出手段により複数の空白パターンが検出された場合には、それら複数の空白パターンのそれぞれに基づきディザマトリクスのしきい値を仮設定し、各ディザマトリクスを用いて形成した視認用画像をユーザに提示して、ユーザにより選択された空白パターンの形にしきい値群が配置されるようにディザマトリクスのしきい値を設定する。
【0017】
このような画像形成装置によれば、選択対象の空白パターンに基づくディザマトリクスを用いて形成された視認用画像をユーザが実際に視認した上で空白パターンの選択を行うことができるため、適切な空白パターンを選択することができる。なお、視認用画像としては、空白パターンの違いによる影響が視認しやすい画像を用いることが好ましい。
【0018】
ちなみに、請求項2の画像形成装置の場合、検出手段により複数の空白パターンが検出されたとしても、空白画素の数が最も少ない空白パターンが1つしか存在しなければ、それを選択すればよいため、わざわざユーザに選択させる必要がない。したがって、検出手段により検出された複数の空白パターンの中に、空白画素の数が最も少ないものが複数存在する場合にのみ、それら複数の空白パターンのそれぞれに基づきディザマトリクスのしきい値を仮設定するようにしてもよい。
【0019】
ところで、形成手段により形成可能な画像が多数存在する場合には、一度にすべての画像を形成することができないことも考えられる。
そこで、例えば請求項4に記載の画像形成装置では、形成手段は、空白パターンを示す画像を形成したにもかかわらず検出手段により空白パターンが検出されない場合には、形成済みの画像よりも空白画素の数が多い空白パターンを示す画像を新たに形成する。
【0020】
このような画像形成装置によれば、空白パターンを示す画像を形成する領域に制限があり、多数の画像を一度に形成できない場合にも、優先度の高い(空白画素の数が少ない)空白パターンを示す画像から順に形成することで、多数の空白パターンについて空白が表現できるか否かを確認することができる。したがって、適切な空白パターンを選択することができる。
【0021】
一方、空白パターンを構成する空白画素の数を多くしなければ空白が表現できない状態は、異常な状態であるとも捉えることができることから、空白を表現できるようにするために空白パターンを構成する空白画素の数を際限なく増加させることはかえって好ましくない。
【0022】
そこで、例えば請求項5に記載の画像形成装置は、形成手段により形成可能な空白パターンを示す画像をすべて形成したにもかかわらず検出手段により空白パターンが検出されない場合に異常報知を行う報知手段を備えている。
【0023】
このような画像形成装置によれば、異常状態であるにもかかわらず空白が表現できるようなディザマトリクスが設定されてしまうことを防ぐことができる。
ところで、ディザマトリクスにおいて空白パターンの形に配置されるしきい値群は、例えば請求項6に記載のように、最も高いしきい値のみからなることが好ましい。このようにすれば、最も高いしきい値以外のしきい値を含ませる場合に比べ、高濃度の階調性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の画像形成装置の概略構成を示す側断面図である。
【図2】実施形態の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】空白画素の数が1〜4の空白パターンを示す空白パッチの説明図である。
【図4】空白画素の数が5又は6の空白パターンを示す空白パッチの説明図である。
【図5】空白パターンに対応するディザマトリクスの説明図である。
【図6】メイン処理のフローチャートである。
【図7】ディザマトリクス設定処理のフローチャートである。
【図8】変形例の空白パターンを示す空白パッチの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.全体構成]
図1は、実施形態の画像形成装置1の概略構成を示す側断面図である。なお、以下の説明においては、図1における左側を前方とし、図1における手前側を右とする。
【0026】
この画像形成装置1は、直接転写タンデム方式のカラープリンタであって、図1に示すように、略箱型の筐体2を備えている。筐体2の前面には、前面カバー3が設けられている。また、筐体2の上面には、画像形成後の被記録媒体としての用紙4が積載される排紙トレイ5Aが形成され、その排紙トレイ5Aが一体に設けられて画像形成装置1を上方から覆うトップカバー5は、画像形成装置1の後方上端に配設された軸5Bを中心に開閉可能に設けられている。
【0027】
筐体2の下部には、画像を形成するための用紙4が収容される給紙トレイ7が装着されている。そして、給紙トレイ7の前端上方位置には、用紙4を搬送する給紙ローラ11が設けられ、その用紙搬送方向下流側には、給紙ローラ11にて搬送される用紙4を1枚ごとに分離する分離ローラ12と分離パッド13とが設けられている。
【0028】
給紙トレイ7の最上位の用紙4は、分離ローラ12によって1枚ごとに分離された後、紙粉取りローラ14と対向ローラ15とに挟まれて搬送され、一対のレジストローラ16,17によって所定のタイミングで後方のベルトユニット20上へ送り出される。
【0029】
ベルトユニット20は、前後に離間して配置されたベルト駆動ローラ21、テンションローラ22の間に水平に架設される搬送ベルト23(いわゆる転写搬送ベルト)を備えている。搬送ベルト23は、ポリカーボネート等の樹脂材からなる無端状のベルトであり、後側のベルト駆動ローラ21が回転駆動されることにより図1の時計方向に循環移動して、その上面に載せた用紙4を後方へ搬送する。
【0030】
搬送ベルト23の内側には、後述する画像形成ユニット30が有する各感光ドラム31と対向配置される4つの転写ローラ24が前後方向に一定間隔で並んで設けられ、各感光ドラム31と対応する転写ローラ24との間に搬送ベルト23を挟んだ状態となっている。後述のトナー像の転写時には、この転写ローラ24と感光ドラム31との間に転写バイアスが印加され、所定量の転写電流が通電される。
【0031】
画像形成ユニット30は、感光ドラム31の表面を露光する4つのLEDヘッド40と対をなして前からブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色に対応して4つ設けられ、それら画像形成ユニット30、LEDヘッド40は、用紙4の搬送方向に沿って直列に配設されている。LEDヘッド40は、主走査方向(左右方向)に沿って一列に配設された複数のLEDと、LEDからの照射光を感光ドラム31の表面に集光させるレンズ(光学系)とを備える。
【0032】
各画像形成ユニット30は、感光ドラム31、トナー収容室33、現像ローラ35等を備えている。感光ドラム31は、接地された金属製のドラム本体を備え、その表層を正帯電性の感光層で被覆することにより構成されている。この感光ドラム31の表面は、その回転時に一様に正帯電された後、LEDヘッド40の下端に一列に配設された複数のLEDにより露光されて、用紙4に形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。
【0033】
ここで、用紙4に形成すべき画像(印刷用の画像)を表す印刷データは、例えば外部のパーソナルコンピュータなどから送信されてくる。そして、本実施形態の画像形成装置1は、外部から送信されてきた印刷データ(本実施形態ではRGB表色系で表現された256階調の画像データ)を、トナーの色に対応したCMYK表色系の画像データに変換する色変換処理を行う。さらに、色変換処理後の画像データ(256階調のCMYKデータ)を二値化し、CMYK各色の二値画像データを生成する二値化処理を行う。この二値化処理においては、画像データの表す画像の画素ごとに、その画素値である入力レベル(0〜255)とあらかじめ用意されたディザマトリクスのしきい値(1〜255の範囲で設定される値)とを比較し、入力レベルがしきい値以上の場合にその箇所のドットをオンにし、入力レベルがしきい値未満の場合にその箇所のドットをオフにする。こうして生成した各色の二値画像データに基づき、各色に対応するLEDヘッド40により感光ドラム31の表面に二値画像データの表す画像を静電潜像として形成する。
【0034】
トナー収容室33には、CMYK各色の正帯電性非磁性1成分トナーが現像剤として収容されている。トナー収容室33に収容されたトナーは、現像ローラ35の回転等によって正に摩擦帯電されつつ、一定厚さの薄層として現像ローラ35上に担持され、感光ドラム31の表面上に形成されている静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム31の静電潜像は可視像化され、感光ドラム31の表面にはその露光部分にのみトナーが付着したトナー像(トナーで形成される可視像)が担持される。
【0035】
その後、各感光ドラム31の表面上に担持されたトナー像は、搬送ベルト23によって搬送される用紙4が感光ドラム31と転写ローラ24との間を通る際に、転写電流によって、用紙4に順次転写される。こうして各色のトナー像が重ね合わせて転写されることによりカラー画像が形成された用紙4は、定着器50に搬送される。
【0036】
定着器50は、筐体2内における搬送ベルト23の後方に配置されている。この定着器50は、ハロゲンランプ等の熱源を備えて回転駆動される加熱ローラ51と、加熱ローラ51の下方において、加熱ローラ51を押圧するように対向配置され従動回転される加圧ローラ52とを備えている。この定着器50では、各色のトナー像が転写された用紙4を、加熱ローラ51と加圧ローラ52とによって挟持搬送しながら加熱することにより、トナー像(カラー画像)を用紙4に定着させる。そして、トナー像が定着された用紙4は、定着器50の斜め後上方に配置された搬送ローラ53により更に搬送され、筐体2の上部に設けられた排紙ローラ54により、前述の排紙トレイ5A上に排出される。
【0037】
なお、ベルト駆動ローラ21の斜め下方における搬送ベルト23の表面との対向位置には、内部センサ60が設けられている。この内部センサ60は、後述する空白パッチが搬送ベルト23上に形成されたときに、その空白パッチの示す空白パターンにより空白が表現できているかを検出するものである。なお、ベルト駆動ローラ21とテンションローラ22との間に架設された搬送ベルト23の下面には、その搬送ベルト23の表面に形成された濃度パッチ等を消去する周知のベルトクリーナ99が当接している。
【0038】
[2.電気的構成]
次に、画像形成装置1の電気的構成について、図2のブロック図を用いて説明する。なお、本発明の特徴部分との関連性の薄い構成については図示及び説明を省略する。
【0039】
同図に示すように、画像形成装置1は、前述した内部センサ60の他、制御部70、操作パネル74、画像形成部75及び記憶部76を備えている。
制御部70は、画像形成装置1の各部を統括制御するものであり、CPU71、ROM72、RAM73等を備えている。
【0040】
操作パネル74は、ユーザからの外部操作による指令を入力するための各種操作ボタンと、各種情報をユーザが視認可能な画像として表示するための小型の液晶ディスプレイとを備えている。
【0041】
画像形成部75は、搬送ベルト23上にトナー像を転写するための電気的構成の総称であり、画像形成ユニット30の帯電器、LEDヘッド40、転写ローラ24、感光ドラム31や各種ローラを回転させるモータなどが含まれる。
【0042】
記憶部76は、記憶データを書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、本実施形態ではフラッシュメモリが用いられている。この記憶部76には、後述する空白パッチを表す空白パッチデータや、複数種類のディザマトリクスがあらかじめ記憶されている。
【0043】
[3.処理の概要]
次に、本実施形態の画像形成装置1で実行される処理の概要について説明する。
本実施形態の画像形成装置1では、トナーの飛び散り(サテライト)の影響で高濃度画像における空白画素がつぶれてしまうという問題を解決するため、サテライトの影響下でも空白を表現可能なパターンで空白画素が配置されるようにディザマトリクスのしきい値を設定する。
【0044】
具体的には、まず、記憶部76にあらかじめ記憶されている空白パッチデータに基づき、複数の空白画素が連続的に並んで配置された複数種類の空白パターンを示す測定用画像(以下「空白パッチ」という)を、搬送ベルト23上にトナーで形成する。空白パッチデータは、図3及び図4に示すように、空白画素の数や配置の異なる複数種類の空白パターンを示す空白パッチ(図3の空白パッチa〜m及び図4の空白パッチn〜z)を表すものであり、これらは空白パターンを構成する空白画素の数の違いにより次のように分類される。
【0045】
空白画素の数が1つの空白パターン…空白パッチa
空白画素の数が2つの空白パターン…空白パッチb,c
空白画素の数が3つの空白パターン…空白パッチd〜f
空白画素の数が4つの空白パターン…空白パッチg〜m
空白画素の数が5つの空白パターン…空白パッチn〜v
空白画素の数が6つの空白パターン…空白パッチw〜z
次に、搬送ベルト23に形成した空白パッチによって示される複数種類の空白パターンの中から、現在の使用環境(サテライトの影響下)において空白が表現できているものを内部センサ60で検出する。ここで、空白が表現できている空白パターンが複数検出された場合には、その中で空白面積が最も小さい(空白画素の数が最も少ない)空白パターンを優先する。空白パターンの空白面積が大きいほど、空白による模様が目立ちやすくなるなど画質が悪くなる傾向にあるからである。
【0046】
そして、高濃度画像における空白画素が、現在の使用環境において空白が表現できているものとして検出した空白パターンの形に配置されるように、二値化処理に用いるディザマトリクスのしきい値を設定する。本実施形態では、各空白パターンに対応する複数種類のディザマトリクスが記憶部76にあらかじめ記憶されており、検出した空白パターンに対応するものを選択する。
【0047】
例えば図5に示す32×32サイズのディザマトリクスは、空白パッチfの空白パターンに対応するものであり、4×8サイズの各サブマトリクスにおいて、最も高いしきい値255が空白パッチfの空白パターンの形に配置されている。したがって、このディザマトリクスを用いて二値化処理が行われた画像は、最も高い濃度(階調値255)では空白画素が存在しない状態となるのに対し、次の濃度(階調値254)ではしきい値255の部分が空白画素となり、必要最小限の空白面積で階調を表現することができる。
【0048】
つまり、本実施形態の画像形成装置1は、サテライトの影響による暗部つぶれ対策として現在の使用環境において最適な空白パターンを自動的に特定し、ディザマトリクスのしきい値を、その空白パターンが再現されるようなしきい値に設定する処理を行う。
【0049】
[4.具体的処理手順]
次に、画像形成装置1の制御部70が実行する具体的な処理について説明する。
図6は、画像形成装置1の電源がオンされたことを契機に制御部70が実行するメイン処理のフローチャートである。
【0050】
制御部70は、このメイン処理を開始すると、まずS101で、今回の起動が本画像形成装置1の初回起動であるか否かを判定する。具体的には、本画像形成装置1における1回目のメイン処理の実行時にのみ初回起動であると判定され、2回目以降のメイン処理の実行時には初回起動でないと判定されることになる。
【0051】
そして、S101で、初回起動であると判定した場合には、S102へ移行し、二値化処理に用いるディザマトリクスを、現在の使用環境において最適な空白パターンが再現されるようなしきい値に設定するためのディザマトリクス設定処理を実行する。その後、Ready状態(待機状態)となり、S103へ移行して操作パネルからの実行判定処理を行う。なお、ディザマトリクス設定処理の具体的な内容については後述する(図7)。
【0052】
一方、S101で、初回起動でないと判定した場合には、S102をスキップしてReady状態(待機状態)となり、S103へ移行して操作パネルからの実行判定処理を行う。
【0053】
Ready状態となっている間は、S104でユーザによるメニュー選択操作が操作パネル74で行われたか否かを判定しており、メニュー選択操作が行われたと判定した場合にS105へ移行する。すなわち、本実施形態の画像形成装置1では、操作パネル74において、当該画像形成装置1が実行可能な複数の処理をメニューとして表示させ、そのうちの1つを選択するメニュー選択操作が可能となっており、選択候補としての複数の処理にはディザマトリクス設定処理が含まれている。
【0054】
S105では、メニュー選択操作としてディザマトリクス設定処理を選択する操作が行われたか否かを判定する。
そして、S105で、ディザマトリクス設定処理を選択する操作が行われたと判定した場合には、S102へ移行し、ディザマトリクス設定処理(図7)を実行する。
【0055】
一方、S105で、ディザマトリクス設定処理以外の他の処理を選択する操作が行われたと判定した場合には、S106へ移行し、選択された処理を実行した後、S103へ戻る。
【0056】
つまり、このメイン処理により、画像形成装置1の初回起動時及びユーザによる開始操作時に、ディザマトリクス設定処理が実行される。
次に、前述したメイン処理(図6)のS102で実行するディザマトリクス設定処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0057】
制御部70は、このディザマトリクス設定処理を開始すると、まずS201で、空白パッチを搬送ベルト23上にトナーで形成する。具体的には、本ディザマトリクス設定処理の開始直後は、図3の空白パッチa〜mを形成する。一方、後述するS212で空白パッチn〜zに切り替えた後は、図4の空白パッチn〜zを形成する。
【0058】
続いて、S202では、S201で搬送ベルト23上に形成した空白パッチの空白を内部センサ60で測定し、空白が表現できている空白パターンを示す空白パッチを検出する。本実施形態の内部センサ60は、各空白パッチに対し読取光を横方向(ベルト駆動ローラ21の回転軸方向)に走査し、その反射光の強度により空白の有無を検出するものであり、少なくとも空白画素1個分の空白が検出された空白パッチを、空白が表現できている空白パターンを示すものとして検出する。
【0059】
続いて、S203では、S202での検出結果に基づき、S201で形成した空白パッチの中に空白が表現できている空白パターンを示すものが存在するか否かを判定する。
そして、S203で、空白が表現できている空白パターンを示す空白パッチが存在すると判定した場合には、S204へ移行し、空白が表現できている空白パターンを示す空白パッチが複数存在するか否かを判定する。
【0060】
このS204で、空白が表現できている空白パターンを示す空白パッチが複数存在すると判定した場合には、S205へ移行し、それら複数の空白パッチを、その中で空白面積が最も小さいもののみに限定し、S206で、限定後の空白パッチが複数存在するか否かを判定する。
【0061】
そして、S206で、限定後の空白パッチ(空白面積が最小の空白パッチ)が1つしか存在しないと判定した場合には、S207へ移行し、その空白パッチが示す空白パターンを、ディザマトリクスのしきい値設定用の空白パターンに特定した後、S210へ移行する。
【0062】
また、S204で、空白が表現できている空白パターンを示す空白パッチが1つしか存在しないと判定した場合にも、S207へ移行し、その空白パッチが示す空白パターンを、ディザマトリクスのしきい値設定用の空白パターンに特定した後、S210へ移行する。
【0063】
一方、S206で、限定後の空白パッチ(空白面積が最小の空白パッチ)が複数存在すると判定した場合には、S208へ移行し、それら各空白パッチが示す空白パターンに対応するディザマトリクスを用いて、各空白パターンに対応する専用のサンプル画像を印刷する。つまり、限定後の空白パッチの数だけサンプル画像を印刷することになる。なお、サンプル画像としては、空白パターンの形(空白画素の配置)の違いによる影響が表れやすい(視認しやすい)画像があらかじめ設定されている。
【0064】
続いて、S209では、印刷した複数のサンプル画像のうち所望のものをユーザに選択させ、選択されたサンプル画像に対応する空白パターンを、ディザマトリクスのしきい値設定用の空白パターンに特定した後、S210へ移行する。具体的には、例えば、印刷画像が最も良好であると感じたサンプル画像の識別番号を操作パネル74から入力させるようにすればよい。
【0065】
S210では、S207又はS209で特定した空白パターンに基づきしきい値が設定されたディザマトリクスを、二値化処理に使用するディザマトリクスとして設定する。つまり、使用するディザマトリクスを切り替える。具体的には、記憶部76にあらかじめ記憶されている複数種類のディザマトリクスの中から、特定した空白パターンに対応するものを選択し、以降に使用するディザマトリクスとして設定する。その後、本ディザマトリクス設定処理を終了する。
【0066】
一方、S203で、空白が表現できている空白パターンを示す空白パッチが存在しないと判定した場合には、S211へ移行し、まだ形成していない空白パッチが存在するか否かを判定する。具体的には、空白パッチn〜zをまだ形成していなければ、形成していない空白パッチが存在すると判定し、既に空白パッチn〜zを形成済であれば、形成していない空白パッチが存在しないと判定する。
【0067】
そして、S211で、形成していない空白パッチが存在すると判定した場合には、S212へ移行し、形成する空白パッチを空白パッチn〜zに切り替える。その後、S201へ戻り、空白パッチn〜zを搬送ベルト23上にトナーで形成する。つまり、空白画素の数が4以下の空白パターンでは空白を表現できなかったため、空白画素が5又は6の空白パターンで空白が表現できるか否かを判定することになる。
【0068】
一方、S211で、形成していない空白パッチが存在しないと判定した場合、換言すれば、空白画素が5又は6の空白パターンですら空白を表現できない場合には、画像形成装置1の問題(異常)であると考えられるため、S213へ移行し、操作パネル74にエラーメッセージを表示した後、本ディザマトリクス設定処理を終了する。
【0069】
[5.効果]
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置1では、複数種類の空白パターンを示す空白パッチをトナーで形成し(S201)、形成した空白パッチに基づき空白が表現できている空白パターンを検出する(S202)。そして、最も高いしきい値が、検出した空白パターンの形に配置されるようにディザマトリクスのしきい値を設定する(S210)。
【0070】
この画像形成装置1によれば、このように設定したディザマトリクスを用いて二値化処理が行われるため、サテライトの影響下でも高濃度画像の空白を表現することができる。したがって、サテライトの影響による階調性の悪化を抑制しつつ、空白画素の数を不要に増加させることによる画質の劣化を抑制することができる。
【0071】
また、複数種類の空白パターンには、空白画素の数が同一で配置が異なるものだけでなく、空白画素の数が異なるものも含まれており、空白が表現できている空白パターンのうち空白画素の数が最も少ないものを特定するようにしている(S204,S205)。このため、空白画素の数が同一の空白パターンのみを示す空白パッチを形成する場合に比べ、空白画素の数ができるだけ少ない空白パターンを効率よく特定することができる。
【0072】
さらに、この画像形成装置1では、空白が表現できている空白パターンのうち空白画素の数が最も少ないものが複数存在する場合には(S206:YES)、各空白パターンに対応するディザマトリクスを用いて形成されたサンプル画像をユーザに実際に視認させた上で空白パターンの選択を行わせるようにしているため(S208,S209)、適切な空白パターンを選択することができる。
【0073】
一方、この画像形成装置1では、空白パッチa〜m(図3)の示す空白パターンで空白が表現できない場合には(S203:NO)、これらの空白パターンよりも空白画素の数が多い空白パターンを示す空白パッチn〜z(図4)を新たに形成する(S212,S201)。このため、あらかじめ用意されているすべての空白パッチa〜zを一度に形成できなくても、優先度の高い(空白画素の数が少ない)空白パターンを示す空白パッチa〜mから順に形成することで、多数の空白パターンについて空白が表現できるか否かを確認することができる。したがって、適切な空白パターンを選択することができる。
【0074】
一方、この画像形成装置1では、あらかじめ用意されているすべての空白パッチa〜zを形成したにもかかわらず、空白が表現できている空白パターンが検出されない場合には異常報知を行うため(S211:NO,S213)、画像形成装置1が異常状態であるにもかかわらず空白が表現できるようなディザマトリクスが設定されてしまうことを防ぐことができる。
【0075】
[6.特許請求の範囲との対応]
なお、本実施形態では、S201,S212の処理を実行する制御部70が形成手段に相当し、S202の処理を実行する制御部70が検出手段に相当し、S205,S208〜S210の処理を実行する制御部70が設定手段に相当し、S213の処理を実行する制御部70が報知手段に相当する。
【0076】
[7.他の形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0077】
例えば、上記実施形態では、複数種類のディザマトリクスが記憶部76にあらかじめ記憶されており、その中から空白パターンに対応するものを選択するようにしているが、これに限定されるものではなく、ベースとなるディザマトリクスのしきい値を、空白パターンの形に応じて再設定するようにしてもよい。このようにすれば、複数種類のディザマトリクスをあらかじめ記憶しておく必要がないため、記憶容量に余裕がないような構成において効果的である。
【0078】
また、上記実施形態では、ディザマトリクスの最も高いしきい値を空白パターンの形に配置するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、最も高いしきい値を含む連続するしきい値群が空白パターンの形に配置されるようにしてもよい。例えば、しきい値253,254,255が空白パターンの形に配置されていれば、階調値252の高濃度画像まではサテライトの影響下でも空白が表現できるため、階調性の悪化を抑制する効果がある。ただし、この場合には、階調値253,254では空白が表現できないことが考えられるため、上記実施形態のように、空白パターンの形に配置されるしきい値群が、最も高いしきい値のみからなることが好ましい。
【0079】
さらに、上記実施形態では、複数種類の空白パターンとして図3及び図4に示すものを例示したが、これに限定されるものではなく、例えば図8に示すような空白パターンとすることも可能であり、空白画素の数ができるだけ少ない空白パターンを特定するという面では、できるだけ多くの種類の空白パターンを用意しておくことが好ましい。また、上記実施形態では、空白画素の数が異なる空白パターンが含まれた空白パッチを形成しているが、これに限定されるものではなく、空白画素の数が同一で配置が異なる空白パターンのみを示す空白パッチを形成することも可能である。
【0080】
また、上記実施形態では、搬送ベルト23に空白パッチを形成する構成の画像形成装置1を例示したが、これに限定されるものではなく、中間転写ベルトに形成する構成であってもよく、また、用紙4等の被記録媒体に形成する構成であってもよい。
【0081】
一方、上記実施形態では、空白が表現できている空白パターンのうち空白画素の数が最も少ないものが複数存在する場合にはユーザに選択させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、空白画素の数に関係なく、空白が表現できているすべての空白パターンを候補として、ユーザに選択させるようにすることも可能である。
【0082】
また、ユーザに選択させる代わりに、あらかじめ定められた優先順位が高いものを選択するようにすれば、ユーザの手を煩わせることなくディザマトリクスを設定することができる。具体的には、例えば、空白画素の配置が1点に固まっているもの(列状の配置よりも正方形状に近いもの)ほど優先順位を高くすることが考えられる。
【0083】
さらに、上記実施形態では、画像形成装置としてカラー画像を形成可能な画像形成装置1を例示したが、これに限定されるものではなく、モノクロ画像のみを形成可能なものであってもよい。
【0084】
加えて、上記実施形態の内部センサ60はあくまでも一例であり、空白パターンにより空白が表現できていることを検出可能なセンサであればよい。
【符号の説明】
【0085】
1…画像形成装置、4…用紙、23…搬送ベルト、24…転写ローラ、30…画像形成ユニット、31…感光ドラム、35…現像ローラ、40…LEDヘッド、50…定着器、60…内部センサ、70…制御部、74…操作パネル、75…画像形成部、76…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディザマトリクスを用いて生成した二値画像データの表す画像をトナーで形成する画像形成装置において、
所定数の空白画素が連続的に並んで配置された空白パターンを示す画像であって空白画素の配置が異なる複数種類のものをトナーで形成する形成手段と、
前記形成手段により形成された画像に基づき空白が表現できている空白パターンを検出する検出手段と、
最も高いしきい値を含む連続するしきい値群が、前記検出手段により検出された空白パターンの形に配置されるように前記ディザマトリクスのしきい値を設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記形成手段は、空白画素の数が異なる空白パターンを示す画像についても形成し、
前記設定手段は、前記検出手段により検出された空白パターンのうち空白画素の数が最も少ない空白パターンの形に前記しきい値群が配置されるように前記ディザマトリクスのしきい値を設定すること
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記検出手段により複数の空白パターンが検出された場合には、それら複数の空白パターンのそれぞれに基づき前記ディザマトリクスのしきい値を仮設定し、各ディザマトリクスを用いて形成した視認用画像をユーザに提示して、ユーザにより選択された空白パターンの形に前記しきい値群が配置されるように前記ディザマトリクスのしきい値を設定すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記形成手段は、空白パターンを示す画像を形成したにもかかわらず前記検出手段により空白パターンが検出されない場合には、形成済みの画像よりも空白画素の数が多い空白パターンを示す画像を新たに形成すること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記形成手段により形成可能な空白パターンを示す画像をすべて形成したにもかかわらず前記検出手段により空白パターンが検出されない場合に異常報知を行う報知手段を備えること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記しきい値群は、最も高いしきい値のみからなること
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−61458(P2011−61458A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208462(P2009−208462)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】