説明

画像形成装置

【課題】感光体のみに直接潤滑剤を塗布する構成で、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードで崩れた、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻すことで、虫食い画像などの異常画像の発生を防止できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの後、この動作モードの動作時間に対応した時間、潤滑剤塗布ブラシ84の回転駆動を停止するとともに、感光体ドラム20と現像ローラ63との回転駆動を停止した状態で、中間転写ベルト10を回転駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、FAX、複合機、複合機等の画像形成装置における、中間転写体への潤滑剤塗布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、中間転写方式の画像形成装置において、潤滑剤塗布装置により像担持体である感光体等や中間転写体である中間転写ベルト等に、潤滑剤を塗布する構成が知られている。そして、潤滑剤の感光体上や中間転写ベルト上への塗布の構成も様々である。例えば、特許文献1の請求項3に記載されたように、像担持体である感光体等のみに直接潤滑剤を塗布する構成。特許文献2に記載されたように、中間転写体である中間転写ベルト等のみに直接潤滑剤を塗布する構成。特許文献3に記載された構成のように、像担持体である感光体等と中間転写体である中間転写ベルト等のいずれにも直接潤滑剤を塗布する構成等が知られている。
【0003】
感光体に潤滑剤を塗布する目的は、帯電装置によるACバイアスハザードからの感光体表層の保護である。また、感光体表面の摩擦係数を下げることでのクリーニングブレードの巻き込みを防止、クリーニング性の向上、感光体フィルミング発生の防止等である。そして、中間転写ベルトに潤滑剤を塗布する目的は、中間転写ベルト表面の摩擦係数を下げることでのクリーニングブレード等の巻き込み防止、クリーニング性の向上、中間転写ベルトの表面摩擦係数の調整等である。
【0004】
このように、感光体や中間転写ベルトの表面の摩擦係数は、潤滑剤を塗布されることで低くなるが、摩擦係数が低くなりすぎると様々な問題が生じる。例えば、中間転写ベルトへの潤滑剤塗布量が多くなりすぎて、中間転写ベルト表面の摩擦係数が低くなり、感光体の摩擦係数に近づいてしまうと、虫食い画像が発生してしまうことが広く知られている。そこで、従来から、画像形成動作時には、中間転写ベルト表面の摩擦係数の範囲が適切な範囲になるよう構成、又は制御している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
像担持体である感光体等のみに直接潤滑剤を塗布する構成では、中間転写体である中間転写ベルト等への潤滑剤の塗布は、1次転写部を介した感光体等からの潤滑剤の転移に頼っている。このため、中間転写ベルト等への潤滑剤の塗布量をうまく制御できない場合がある。感光体等から中間転写ベルト等への潤滑剤の転移は次のように行なわれる。潤滑剤塗布装置により感光体上に形成された潤滑剤膜は、まず帯電装置、現像装置、転写装置、感光体クリーニング装置を経由していくことになる。帯電装置により一様帯電が行なわれる領域ではACバイアスハザードを受けて劣化し、現像装置では現像ローラのスキャベンジ力により潤滑剤の一部が欠き取られる。そして、中間転写ベルトを介して1次転写装置に対向する領域で、潤滑剤の一部が、中間転写ベルトにより欠き取られて転移する(塗布される)。このようにして、通常の画像形成時には、感光体上に形成された潤滑剤膜の潤滑剤が消費され、再び潤滑剤塗布装置で、潤滑剤が補給されて潤滑剤の収支バランスを取っている。
【0006】
しかし、ジャムリカバリや機械休止モードからの復帰、プロセスコントロール時など通常の画像形成動作以外の場面で、現像ローラが回らず、感光体のみが回転するという動作モードが一般的に存在する。つまり、通常の画像形成動作以外の場面で、現像ローラの回転駆動が停止され、感光体が回転駆動される動作モードが存在する(以下、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードという)。これは主に現像ローラの駆動が不要であるときに、部品の寿命などを考慮して、無駄にまわさないことを目的としているためである。このような動作モードでは、現像装置の現像ローラ回転時のスキャベンジ力がなくなり、現像ローラによる潤滑剤の消費が通常時よりも少なくなることで、感光体上の潤滑剤塗布状態のバランスが崩れてしまう。そして、一般的には中間転写ベルトへの潤滑剤供給量が増えるため、次の例に示すように中間転写ベルトの摩擦係数が小さくなり、感光体の摩擦係数に近くなる。
例)
通常時:感光体上 0.13 転写ベルト上0.45
現像ローラOFF、感光体ONの動作モード後:感光体上 0.13 転写ベルト上0.22
このように、中間転写ベルトの表面の摩擦係数が、感光体の摩擦係数に近くなるような、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスになると、図6で示すような虫食い画像が発生してしまうことがある。
【0007】
そして、特許文献1の像担持体である感光体等のみに直接潤滑剤を塗布する構成の記載には、上述した現像ローラOFF、感光体ONの動作モードに関する記載はない。そして、上述したような動作モードが行なわれた場合に、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスが崩れることを防ぐ構成や、崩れた摩擦係数を早期に通常の状態に戻す構成もない。そのため、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードが行なわれる場合には、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスが崩れて、この動作モード後に虫食い画像が発生してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものである。その目的は、次の画像形成装置を提供することである。感光体のみに直接潤滑剤を塗布する構成で、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードで崩れた、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻すことで、虫食い画像などの異常画像の発生を防止できる画像形成装置である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、感光体と、帯電装置と、現像ローラを有した現像装置と、前記感光体表面をクリーニングするクリーニングブレードを有した感光体クリーニング装置と、前記感光体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、中間転写ベルトと、前記感光体から前記中間転写ベルトへトナー像を転写する1次転写装置と、前記中間転写ベルト表面をクリーニングするベルトクリーニング装置とを備え、前記中間転写ベルトへの潤滑剤の塗布は、前記感光体に塗布された潤滑剤が、1次転写装置でトナー像が転写される1次転写部を介して転移されて行なわれる画像形成装置において、前記現像ローラの回転駆動が停止され、前記感光体の回転駆動される動作モードを有し、前記動作モードの後、該動作モードの動作時間に対応した時間、前記感光体への潤滑剤の塗布を停止するとともに、前記感光体と現像ローラとの回転駆動を停止した状態で、前記中間転写ベルトを回転駆動させることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1の画像形成装置において、潤滑剤塗布装置は、固形潤滑剤と、潤滑剤塗布ブラシと、前記固形潤滑剤を前記潤滑剤塗布ブラシへ押圧する押圧手段と、均し部材とを有し、感光体への潤滑剤の塗布は、前記感光体と前記固形潤滑剤とに前記潤滑剤塗布ブラシが当接して回転駆動されて行なわれ、前記感光体表面上に塗布された潤滑剤が、前記均し部材で均されて前記感光体表面上に潤滑剤膜が形成されることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、潤滑剤塗布装置は、クリーニングブレードの感光体回転方向上流側であって、感光体クリーニング装置内に設けられ、前記クリーニングブレードと均し部材とが兼用されていることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3に記載の画像形成装置において、塗布する潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛を含むことを特徴とするものである。
本発明は、現像ローラの回転駆動を停止し、感光体を回転駆動する動作モードの後、この動作モードの動作時間に対応した時間、新たな潤滑剤を中間転写ベルトへ転移させない状態で、中間転写ベルトを回転駆動させることができる。このように中間転写ベルトを回転駆動させることで、中間転写ベルト上の過剰な潤滑剤をベルトクリーニング装置で回収できる。したがって、現像ローラの回転駆動を停止し、感光体を回転駆動する動作モードで崩れた、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻すことができる。つまり、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードで崩れた、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻すことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの後に、中間転写ベルト上の過剰な潤滑剤をベルトクリーニング装置で回収して、崩れた中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻せる。よって、感光体のみに直接潤滑剤を塗布する構成で、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードで崩れた、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻すことで、虫食い画像などの異常画像の発生を防止できる画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る、画像形成装置の全体概要図。
【図2】本実施形態に係る、画像形成ユニットの説明図。
【図3】中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスと、虫食いの発生程度との関係の説明図。
【図4】中間転写ベルトの表面の摩擦係数と、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの動作時間との関係の一例を示したグラフ。
【図5】中間転写ベルトの表面の摩擦係数と、中間転写ベルトのエージング時間との関係を示したグラフ。
【図6】中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスが崩れた場合に発生する虫食いの例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、電写真方式の画像形成装置であるカラー対応の複合機に適用した実施形態の例について、図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る、画像形成装置の全体概要図、図2は、本実施形態に係る、画像形成部の説明図である。図3は、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスと、虫食いの発生程度との関係の説明図。図4は、中間転写ベルトの表面の摩擦係数と、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの動作時間との関係の一例を示したグラフ。図5は、中間転写ベルトの表面の摩擦係数と、中間転写ベルトのエージング時間との関係を示したグラフである。そして、図6は、中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスが崩れた場合に発生する虫食いの例である。
【0013】
この複合機は、複合機本体100と、この複合機本体を載置する給紙テーブル200と、その複合機本体上に取り付けるスキャナ300と、このスキャナの上部に取り付けられる原稿自動搬送装置(ADF)400とから構成されている。そして、本実施形態の複合機は、中間転写ベルトを備えたいわゆるタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0014】
複合機本体100には、中間転写ベルト10が設けられている。この中間転写ベルト10は、3つの支持部材である支持ローラ14,15,16に張架された状態で、図1中時計回り方向に回転駆動される。支持ローラのうちの第1支持ローラ14と第2支持ローラ15との間のベルト張架部分には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKが並んで配置されている。これらの画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKの上方には、露光装置21が設けられている。この露光装置21は、スキャナ300で読み取った原稿の画像情報や、パソコン等から送信された印刷情報に基づいて、各画像形成ユニットの感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK上に静電潜像を形成するためのものである。
【0015】
また、支持ローラのうちの第3支持ローラ16に対向する位置には、2次転写装置22が設けられている。この2次転写装置22は、2つのローラ23a,23b間に表面移動部材としての転写部材である無端ベルト状の2次転写ベルト24が張架した構成を有する。そして、中間転写ベルト10上のトナー像を記録材としての転写紙上に2次転写する際には、2次転写ベルト24を第3支持ローラ16に巻き付いた中間転写ベルト10部分に押し当てて2次転写を行う。ここで、2次転写装置22は、2次転写ベルト24を用いた構成でなくても、例えば転写ローラを用いた構成としてもよい。また、中間転写ベルト10の支持ローラのうちの第2支持ローラ15に対向する位置には、クリーニングブレードを有したベルトクリーニング装置17が設けられている。このベルトクリーニング装置17は、転写紙に中間転写ベルト10上のトナー像を転写した後に中間転写ベルト10上に残留する残トナーを除去するためのものである。また、複合機本体100には、転写紙上に転写されたトナー像を転写紙に定着させる定着装置27も設けられている。
【0016】
次に、画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKの構成について説明する。ここで、各画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKは、用いるトナーの色が異なるのみで、その構成はいずれも同様であるので、以下の説明では、Y,C,M,BKの符号は適宜省略して説明する。また、各画像形成ユニット18は、少なくとも感光体ドラム20及び後述する潤滑剤塗布装置と、その他の構成部品や構成装置の全部又は一部とを備えた、複合機本体100に対して着脱可能なプロセスカートリッジとすることができる。
【0017】
図2に示すように、画像形成ユニット18には、感光体ドラム20の周囲に、帯電装置60、現像装置61、感光体クリーニング装置80等が設けられている。また、感光体ドラム20に対して中間転写ベルト10を介して対向する位置には、1次転写装置62が設けられている。
【0018】
帯電装置60は、帯電ローラを採用した接触帯電方式のものであり、感光体ドラム20に接触して電圧を印加することにより感光体ドラム20の表面を一様に帯電する。
【0019】
現像装置61は、一成分現像剤を使用してもよいが、本実施形態では、磁性キャリアと非磁性トナーからなる二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という。)を使用している。本実施形態で使用する各色トナーは、それぞれの色に着色された樹脂材料からなる。この現像装置61では、現像剤を2本のスクリュ64で攪拌しながら搬送循環し、現像ローラ63に供給する。現像ローラ63に供給された現像剤は、マグネットにより汲み上げて保持される。現像ローラ63に汲み上げられた現像剤は、現像ローラ63の回転に伴って搬送され、ドクタブレード65により適正な量に規制される。そして、規制された現像剤は現像装置内に戻される。このようにして感光体ドラム20と対向する現像領域まで搬送された現像剤は、マグネットにより穂立ち状態となり、磁気ブラシを形成する。現像領域では、現像ローラ63に印加されている現像バイアスにより、現像剤中のトナーを感光体ドラム20上の静電潜像部分に移動させる現像電界が形成される。これにより、現像剤中のトナーは、感光体ドラム20上の静電潜像部分に転移し、感光体ドラム20上の静電潜像は可視像化され、トナー像が形成される。現像領域を通過した現像剤は、マグネットの磁力が弱い部分まで搬送されることで現像ローラ63から離れ、現像装置61内に戻される。このような動作の繰り返しにより、現像装置61内のトナー濃度が薄くなると、それをトナー濃度センサ(不図示)が検出し、その検出結果に基づいて、トナー補給部(不図示)から現像装置内にトナーが補給される。
【0020】
1次転写装置62は、1次転写ローラを採用しており、中間転写ベルト10を挟んで感光体ドラム20に押し当てるようにして設置されている。
【0021】
感光体クリーニング装置80は、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード81の先端を感光体ドラム20の表面に押し当てられるように配置される。クリーニングブレード81により感光体ドラム20から除去されたトナーは、感光体クリーニング装置80の内部に収容される。そして、収容されたトナーは、感光体クリーニング装置80の内部に配置された、トナー搬送コイル82により廃トナー収容容器(不図示)に搬送される。また、本実施形態の感光体クリーニング装置80は、後述する潤滑剤を感光体ドラム20の表面に塗布する潤滑剤塗布装置83を内蔵している。また、クリーニングブレード81は、潤滑剤塗布装置83で塗布した潤滑剤を感光体ドラム20表面に均して塗りこむ均し部材としても兼用されるため、感光体ドラム表面に対してカウンター方式に当接している。
【0022】
潤滑剤塗布装置83は、クリーニングブレード81の感光体ドラム20回転方向上流側に設けられた潤滑剤塗布ブラシ84と、ステアリン酸亜鉛を含む固形潤滑剤85と、この固形潤滑剤85を保持する保持部材86とを備えている。また、この保持部材86を介して固形潤滑剤85を潤滑剤塗布ブラシ84に押圧する押圧手段であるスプリング87と、押圧される固形潤滑剤85をガイドするガイド部材(不図示)も備えている。そして、感光体ドラム20表面上への潤滑剤の塗布は、感光体ドラム20と固形潤滑剤85とに当接しながら回転駆動される潤滑剤塗布ブラシ84により、固形潤滑剤85から掻き取られた潤滑剤が、感光体ドラム20表面上に塗布される。この塗布された潤滑剤は、潤滑剤塗布ブラシ84の感光体ドラム20回転方向下流側に設けられ、均し部材としても兼用されるクリーニングブレード81により均され、感光体ドラム20表面上に所定厚の潤滑剤膜を形成する。また、潤滑剤塗布ブラシ84が回収したトナーを、潤滑剤塗布ブラシ84から除去するフリッキング部材88を設けている。この潤滑剤塗布ブラシ84から除去されたトナーは、上述した感光体クリーニング装置80のトナー搬送コイル82により、クリーニングブレード81で感光体ドラム20から除去されたトナーとともに、廃トナー収容容器に搬送される。
【0023】
以上の構成をもつ画像形成ユニット18では、感光体ドラム20の回転とともに、まず帯電装置60で感光体ドラム20の表面を一様に帯電する。次いでスキャナ300により読み取った画像情報や、パソコン等から送信された印刷情報に基づいて露光装置21からレーザやLED等による書込光Lを照射し、感光体ドラム20上に静電潜像を形成する。その後、現像装置61により静電潜像が可視像化されてトナー像が形成される。このトナー像は、1次転写装置62により中間転写ベルト10上に1次転写される。1次転写後に感光体ドラム20の表面に残留した転写残トナーは、感光体クリーニング装置80により除去され、その後、感光体ドラム20の表面は、次の画像形成に供される。
【0024】
次に、本実施形態における複合機のコピー動作について説明する。上述したような構成をもつ複合機を用いて原稿のコピーをとる場合、まず、原稿自動搬送装置400の原稿台30に原稿をセットする。又は、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じてそれで押さえる。その後、ユーザーがスタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときには、原稿がコンタクトガラス32上に搬送される。そして、スキャナ300が駆動して第1走行体33および第2走行体34が走行を開始する。これにより、第1走行体33からの光がコンタクトガラス32上の原稿で反射し、その反射光が第2走行体34のミラーで反射されて、結像レンズ35を通じて読取センサ36に案内される。このようにしいて原稿の画像情報を読み取る。
【0025】
また、ユーザーによりスタートスイッチが押されると、駆動モータ(不図示)が駆動し、支持ローラ14,15,16のうちの1つが回転駆動して中間転写ベルト10が回転駆動する。また、これと同時に、各画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKの感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK及び2次転写装置22の2次転写ベルト24も回転駆動する。なお、これら中間転写ベルト10、感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK及び2次転写ベルト24は、これらの間で一定の相対速度が維持されるように制御がなされている。その後、スキャナ300の読取センサ36で読み取った画像情報に基づき、露光装置21から、各画像形成ユニットの感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK上に書込光Lがそれぞれ照射される。これにより、各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKには、それぞれ静電潜像が形成され、現像装置61Y,61C,61M,61BKにより可視像化される。そして、各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK上には、それぞれ、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像が形成される。このようにして形成された各色トナー像は、各1次転写装置62Y,62C,62M,62BKにより、順次中間転写ベルト10上に重なり合うようにそれぞれ1次転写される。これにより、中間転写ベルト10上には、各色トナー像が重なり合った合成トナー像が形成される。なお、2次転写後の中間転写ベルト10上に残留した転写残トナーは、ベルトクリーニング装置17により除去される。
【0026】
また、ユーザーによりスタートスイッチが押されると、ユーザーが選択した転写紙に応じた給紙テーブル200の給紙ローラ42が回転し、給紙カセット44の1つから転写紙が送り出される。送り出された転写紙は、分離ローラ45で1枚に分離して給紙路46に入り込み、搬送ローラ47により複合機本体100内の給紙路48まで搬送される。このようにして搬送された転写紙は、レジストローラ49に突き当たったところで止められる。なお、給紙カセット44にセットされていない転写紙を使用する場合、手差しトレイ51にセットされた転写紙を給紙ローラ50により送り出し、分離ローラ52で1枚に分離した後、手差し給紙路53を通って搬送される。そして、同じくレジストローラ49に突き当たったところで止められる。
【0027】
レジストローラ49は、上述のようにして中間転写ベルト10上に形成された合成トナー像が2次転写装置22の2次転写ベルト24に対向する2次転写部に搬送されるタイミングに合わせて回転を開始する。ここで、レジストローラ49は、一般的には接地されて使用されることが多いが、転写紙の紙粉除去のためにバイアスを印加するようにしてもよい。その印加バイアスには、DC電圧が用いられるが、転写紙をより均一に帯電させるためにDCオフセット成分をもったAC電圧を用いてもよい。なお、このようにバイアスが印加されたレジストローラ49を通過した後の転写紙表面は、若干ながら負極性に帯電する。よって、この場合、中間転写ベルト10から転写紙への2次転写時にはレジストローラ49にバイアスが印加されなかった転写紙とは転写条件が変わるため、適宜転写条件を変更する必要が生じる。
【0028】
レジストローラ49により送り出された転写紙は、中間転写ベルト10と2次転写ベルト24との間に形成される2次転写ニップに送り込まれ、2次転写装置22により、中間転写ベルト10上の合成トナー像が転写紙上に2次転写される。そして、合成トナー像が転写された転写紙は定着装置27に送られ、その定着装置27により熱と圧力によって合成トナー像が転写紙に定着される。その後、転写紙は、排紙ローラ56まで搬送され、排紙トレイ57に排出されスタックされる。
【0029】
次に、本発明の特徴部分である中間転写体である中間転写ベルト10表面上への潤滑剤塗布について説明する。本実施形態の中間転写ベルト10への潤滑剤の塗布は、潤滑剤塗布装置83により感光体ドラム20に塗布された潤滑剤が、1次転写部を介して中間転写ベルト10に転移することにより行なっている。このように、中間転写ベルト10への潤滑剤の塗布を、1次転写部を介した感光体ドラム20からの転移に頼っている。このため、中間転写ベルト10への潤滑剤の塗布量をうまく制御できない場合がある。
【0030】
感光体ドラム20から中間転写ベルト10への潤滑剤の転移は次のように行なわれる。潤滑剤塗布装置83により感光体ドラム20表面上に形成された潤滑剤膜は、まず帯電装置60、現像装置61、転写装置62、感光体クリーニング装置80を経由していくことになる。帯電装置60により一様帯電が行なわれる領域ではACバイアスハザードを受けて劣化し、現像装置61では現像ローラ63のスキャベンジ力により潤滑剤の一部が欠き取られる。また、中間転写ベルト10を介して1次転写装置62に対向するでも領域でも同様に潤滑剤の一部が、中間転写ベルト10により欠き取られて転移する(塗布される)。このようにして、通常の画像形成時には、感光体ドラム20表面上に形成された潤滑剤膜の潤滑剤が消費され、再び潤滑剤塗布装置83で、潤滑剤が補給されて潤滑剤の収支バランスを取っている。
【0031】
そして、中間転写ベルト10表面上に塗布された潤滑剤の一部は、転写残トナーとともにベルトクリーニング装置17により回収されるたり、転写紙に転写されるトナーとともに転写紙に付着したりして消費される。そして、再び感光体ドラム20から、1次転写部を介して潤滑剤が補給されて、中間転写ベルト10表面上の潤滑剤の収支バランスが取られている。
【0032】
ここで、本実施例の複合機では、通常の画像形成動作時に、感光体ドラム20表面の摩擦係数と、中間転写ベルト10表面の摩擦係数とが適正な範囲になるように潤滑剤塗布条件や、1次転写条件等を設定している。画像形成動作時の目標値は、感光体ドラム20表面の摩擦係数を0.13、中間転写ベルト10表面の摩擦係数を0.45としている。これは、図3の中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスと、虫食いの発生程度との関係の説明図に示すように、中間転写ベルト表面の摩擦係数が感光体表面の摩擦係数に近づくと、虫食いが発生しやするなるためである。
【0033】
しかし、本実施形態の複合機は、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードを有している。この動作モードは、ジャムリカバリや機械休止モードからの復帰、プロセスコントロール時など通常の画像形成動作以外の場面で、現像ローラ63を回転させず、感光体ドラム20を回転駆動させる動作モードである。この動作モードを行うのは、主に現像ローラ63の回転駆動が不要であるときに、各部品の寿命などを考慮して、無駄にまわさないことを目的としている。この動作モードでは、現像装置61の現像ローラ63回転時のスキャベンジ力がなくなり、現像ローラ63による潤滑剤の消費が通常時よりも少なくなることで、感光体ドラム20上の潤滑剤塗布状態のバランスが崩れてしまう。そして、中間転写ベルトへの潤滑剤供給量が増えるため、中間転写ベルト10表面の摩擦係数が小さくなり、感光体ドラム20表面の摩擦係数に近くなる。
【0034】
ここで、本実施形態の複合機における、中間転写ベルト10表面の摩擦係数と、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの動作時間との関係の一例を、図4のグラフに示す。このグラフからも分かるように、この動作モードでの動作時間が長くなるにつれ、中間転写ベルト10表面の摩擦係数が低くなって行くのがわかる。中間転写ベルト10表面の摩擦係数が低くなった状態のままで画像形成動作を行なうと、図6の中間転写ベルトの表面と感光体の表面との摩擦係数バランスが崩れた場合に発生する虫食いの例に示すような、虫食いの発生が懸念される。このような虫食いの発生を防止するためには、早期に転写ベルトのμを通常時程度までに回復させる必要がある。
【0035】
そこで、本実施形態の複合機では、次のような動作制御を行うこととした。現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの後、この動作モードの動作時間に対応した時間、感光体ドラム20と、現像ローラ63と、潤滑剤塗布ブラシ84との回転駆動を停止した状態で、中間転写ベルト10を回転駆動させる。つまり、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの後、この動作モードの動作時間に対応した時間、新たな潤滑剤を中間転写ベルト10トへ転移させない状態で、中間転写ベルトを回転駆動させる動作(以下、中間転写ベルトのエージング動作という)を行なう。このように中間転写ベルトのエージング動作を行うことで、中間転写ベルト10表面上の過剰に塗布された潤滑剤をベルトクリーニング装置17で回収できる。したがって、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードで崩れた、中間転写ベルト10表面と感光体ドラム20の表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻すことができる。ここで、中間転写ベルトのエージング動作を行なうタイミングは、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの直後に行なうものとする。
【0036】
また、上述した中間転写ベルトのエージング動作を行なう時間は、例えば、次のようにして導出することができる。事前に、潤滑剤塗布条件や1次転写条件等の各条件毎に、図4のような中間転写ベルト10表面の摩擦係数と、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの動作時間との関係のグラフを求めて、関係式aとして数式化して記憶する。また、図5に示すような中間転写ベルト10表面の摩擦係数と、目標とする中間転写ベルト10表面の摩擦係数になるまでのエージング時間との関係を示したグラフを求めて、関係式bとして数式化して記憶する。そして、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードを行なった際に、この動作モードの動作時間に対応した中間転写ベルト10表面の摩擦係数を関係式aで計算する。次に、関係式aで算出した中間転写ベルト10表面の摩擦係数に対応したエージング時間を関係式bで計算して導出することができる。ここで、図5では、中間転写ベルト10表面の目標の摩擦係数を、0.45としている。
【0037】
また、上述した例では、エージング動作を行なう時間の導出するために、関係式a、関係式bを求める例について説明したが、このような導出方法に限定されるものではない。例えば、事前に、潤滑剤塗布条件や1次転写条件等の各条件毎に、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの動作時間に対応した、中間転写ベルトのエージング動作を行なう時間そのものを求めて記憶しておき導出する方法でも良い。
【0038】
また、本実施形態では、感光体クリーニング装置80内に潤滑剤塗布装置83を設けた構成について説明したが、このような構成に限定されるものではない。例えば、感光体クリーニング装置80の感光体ドラム20回転方向下流側に、潤滑剤の均し部材を有した、潤滑剤塗布装置83を設ける構成でも良い。
【0039】
以上、本実施形態に係る画像形成装置では、次のような作用効果を奏することができる。現像ローラOFF、感光体ONの動作モードの後、この動作モードの動作時間に対応した時間、新たな潤滑剤を中間転写ベルト10へ転移させない状態で、中間転写ベルト10を回転駆動させることができる。このように中間転写ベルト10を回転駆動させることで、中間転写ベルト10表面上の過剰な潤滑剤をベルトクリーニング装置17で回収できる。したがって、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードで崩れた、中間転写ベルト10表面と感光体ドラム20表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻すことができる。よって、感光体ドラム20のみに直接潤滑剤を塗布する構成で、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードで崩れた、中間転写ベルト10表面と感光体ドラム20表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻せる。このことで、虫食い画像などの異常画像の発生を防止できる画像形成装置を提供できる。
また、本実施形態に係る画像形成装置では、潤滑剤塗布装置83が、固形潤滑剤85から潤滑剤塗布ブラシ84で潤滑剤を掻き取り、感光体ドラム20に塗布する構成なので、単位時間当たりの感光体ドラム20への潤滑剤塗布量が安定する。したがって、単位時間当たりの1次転写部を介した中間転写ベルト10への潤滑剤塗布量も安定しており、中間転写ベルトのエージング動作に要する適切な時間を導出することが可能である。したがって、単位時間当たりの1次転写部を介した中間転写ベルト10への潤滑剤塗布量が安定しない構成に比べ、中間転写ベルト10表面と感光体ドラム20表面との摩擦係数バランスを、より早期に通常の状態に戻すことが可能である。
また、本実施形態に係る画像形成装置では、感光体クリーニンング装置のクリーニングブレード81と潤滑剤塗布装置83の潤滑剤の均し部材とを兼用しているので、画像形成装置の低コスト化に貢献できる。
また、本実施形態に係る画像形成装置では、固形潤滑剤85は、ステアリン酸亜鉛を含むので、少ない潤滑剤塗布量で感光体ドラム20表面上に良好な潤滑剤膜を形成できる。したがって、現像ローラOFF、感光体ONの動作モードで動作した後の、中間転写ベルト10表面上の過剰な潤滑剤量を減らして、中間転写ベルトのエージング動作に要する時間を短くできる。よって、中間転写ベルト10表面と感光体ドラム20表面との摩擦係数バランスを早期に通常の状態に戻すことが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 中間転写ベルト
17 ベルトクリーニング装置
18 画像形成ユニット
20 感光体ドラム
21 露光装置
60 帯電装置
61 現像装置
62 1次転写装置
63 現像ローラ
80 感光体クリーニング装置
81 クリーニングブレード
83 潤滑剤塗布装置
84 潤滑剤塗布ブラシ
85 固形潤滑剤
86 保持部材
87 スプリング
88 フリッキング部材
100 複合機本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開2002−023500号公報
【特許文献2】特開2008−242347号公報
【特許文献3】特開2003−162108号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、帯電装置と、現像ローラを有した現像装置と、前記感光体表面をクリーニングするクリーニングブレードを有した感光体クリーニング装置と、前記感光体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、中間転写ベルトと、前記感光体から前記中間転写ベルトへトナー像を転写する1次転写装置と、前記中間転写ベルト表面をクリーニングするベルトクリーニング装置とを備え、
前記中間転写ベルトへの潤滑剤の塗布は、前記感光体に塗布された潤滑剤が、1次転写装置でトナー像が転写される1次転写部を介して転移されて行なわれる画像形成装置において、
前記現像ローラの回転駆動が停止され、前記感光体の回転駆動される動作モードを有し、
前記動作モードの後、該動作モードの動作時間に対応した時間、前記感光体への潤滑剤の塗布を停止するとともに、前記感光体と現像ローラとの回転駆動を停止した状態で、前記中間転写ベルトを回転駆動させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
潤滑剤塗布装置は、固形潤滑剤と、潤滑剤塗布ブラシと、前記固形潤滑剤を前記潤滑剤塗布ブラシへ押圧する押圧手段と、均し部材とを有し、
感光体への潤滑剤の塗布は、前記感光体と前記固形潤滑剤とに前記潤滑剤塗布ブラシが当接して回転駆動されて行なわれ、
前記感光体表面上に塗布された潤滑剤が、前記均し部材で均されて前記感光体表面上に潤滑剤膜が形成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
潤滑剤塗布装置は、クリーニングブレードの感光体回転方向上流側であって、
感光体クリーニング装置内に設けられ、
前記クリーニングブレードと均し部材とが兼用されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の画像形成装置において、
塗布する潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛を含むことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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