説明

画像形成装置

【課題】トナー像が形成される像担持体と、その像担持体の表面に潤滑剤を供給する剤供給装置とを有する画像形成装置において、像担持体表面に供給された潤滑剤が放電の影響を受けて、劣化することを防止する。
【解決手段】潤滑剤ブロック11と、ブラシローラ12とを有する剤供給装置10を用い、そのブラシローラ12の回転により、潤滑剤ブロック11から潤滑剤を削り取り、その削り取った潤滑剤をブラシローラ12を介して像担持体1に供給するように構成すると共に、その潤滑剤として、少なくとも、チッ化ホウ素と脂肪酸金属塩とを配合して成る潤滑剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、帯電後の像担持体を露光して像担持体に静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像をトナー像として可視像化する現像装置と、前記像担持体表面に潤滑剤を供給する剤供給装置とを具備する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子複写機、プリンタ、ファクシミリ或いはこれらの複合機などとして構成される上記形式の画像形成装置は従来より周知である(特許文献1)。像担持体は、感光体より成る。かかる像担持体表面に潤滑剤を塗布することによって、その表面の摩擦係数を下げ、該像担持体表面と、これに当接する部材との間に作用する摩擦力を軽減することができる。これによって像担持体表面の摩耗を抑え、像担持体の寿命を伸ばすことができる。
【0003】
潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩が従来より広く用いられている。ところが、かかる潤滑剤は、像担持体近傍で行われる放電の影響を受けてその特性が変化し、比較的早期に潤滑性を失ってしまうことが明らかとなった。帯電装置と感光体より成る像担持体との間に放電を生じさせて、その感光体を所定の極性に帯電させているが、この放電によって感光体表面に塗布された潤滑剤が劣化するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−91232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した新規な認識に基づきなされたものであって、その目的とするところは、長期に亘って像担持体表面の潤滑性を高く維持できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、帯電後の像担持体を露光して像担持体に静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像をトナー像として可視像化する現像装置と、前記像担持体表面に潤滑剤を供給する剤供給装置とを具備する画像形成装置において、前記潤滑剤として、少なくとも、チッ化ホウ素と脂肪酸金属塩とを配合して成る潤滑剤を用いると共に、前記帯電装置は、直流成分に交流成分を重畳したバイアスを印加されることを特徴とする画像形成装置を提案する(請求項1)。
【0007】
また、上記請求項1に記載の画像形成装置において、前記帯電装置は、像担持体との間に微小なギャップをあけて配置された帯電ローラより成ると有利である(請求項2)。
【0008】
また、上記請求項1又は2に記載の画像形成装置において、供給された潤滑剤を像担持体表面に擦り付けて、該像担持体表面に潤滑剤皮膜を形成する皮膜形成手段を有していると有利である(請求項3)。
【0009】
さらに、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記剤供給装置は、像担持体が回転しているとき、常時、該像担持体表面に潤滑剤を供給するか、又は間欠的に供給するように構成されていると有利である(請求項4)。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放電を受けても潤滑性が低下し難く、しかも像担持体表面全体に亘って潤滑剤の皮膜を形成して高い潤滑性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】帯電ローラと像担持体を示す概略図である。
【図3】画像形成装置の他の例を示す概略図である。
【図4】画像形成装置のさらに他の例を示す概略図である。
【図5】画像形成装置のさらに他の例を示す概略図である。
【図6】画像形成装置のさらに他の例を示す概略図である。
【図7】画像形成装置のさらに他の例を示す概略図である。
【図8】画像形成装置のさらに他の例を示す概略図である。
【図9】画像形成装置のさらに他の例を示す概略図である。
【図10】画像形成装置のさらに他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0013】
図1は画像形成装置の一例を示す概略図である。ここに示した画像形成装置は、図示していない画像形成装置本体内に配置されたドラム状の感光体より成る像担持体1を有し、この像担持体1は画像形成動作時に時計方向に回転駆動される。このとき、像担持体1は帯電装置の一例である帯電ローラ2によって所定の極性に帯電され、その帯電面に露光装置3から出射した光変調されたレーザ光Lが照射され、像担持体に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置4を通るとき、粉体状のトナーによってトナー像として可視像化される。
【0014】
一方、図示していない給紙装置から、例えば記録紙より成る転写材Pが矢印A方向に給送され、その転写材Pが、像担持体1と、これに対向配置された転写装置の一例である転写ローラ5との間に送り込まれる。このとき、転写ローラ5の作用によって、像担持体1上のトナー像が転写材Pに転写される。トナー像転写後の像担持体1上に残留する転写残トナーは、クリーニング装置6によって除去される。ここに示したクリーニング装置6は、像担持体1に圧接したクリーニングブレード7より成るクリーニング部材を有し、このクリーニングブレード7によって像担持体上の転写残トナーが掻き取り除去される。次いでその像担持体表面には除電ランプ8から光を照射されて、像担持体1の表面電位が初期化される。
【0015】
像担持体1を離れた転写材Pは、図示していない定着装置を通り、このとき熱と圧力の作用によってトナー像が転写材上に定着される。定着装置を通過した転写材は、同じく図示していない排紙トレー上に排出される。
【0016】
本例の帯電ローラ2の長手方向各端部には、図2に示すようにテープより成るスペーサ9が貼着され、その各スペーサ9が像担持体1に圧接し、帯電ローラ2と像担持体1との間に微小なギャップGが形成されている。かかる帯電ローラ2に帯電電圧が印加されて帯電ローラ2と像担持体との間に放電が生ぜしめられ、これによって像担持体1が所定の極性に帯電される。後述するように、帯電ローラ2に、直流成分に交流成分を重畳したバイアスを印加することができる。同様に、転写ローラ5にも、像担持体上のトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加され、これによって転写ローラ5と像担持体1との間に放電が生ぜしめられ、像担持体1上のトナー像が転写材P上に転写される。
【0017】
図1に示した画像形成装置は、前述のようにしてトナー像が形成される像担持体1のほかに、その像担持体表面に潤滑剤を供給する剤供給装置10を有している。ここに示した剤供給装置10は、バー状に成形された潤滑剤ブロック11と、この潤滑剤ブロック11及び像担持体1の表面に摺擦しながら矢印B方向に回転駆動されるブラシローラ12とを有している。ブラシローラ12が回転することにより、潤滑剤ブロック11の潤滑剤が少量ずつ削り取られ、ブラシローラ12のブラシに付着した粉体状の潤滑剤が、回転する像担持体1の表面に供給される。潤滑剤ブロック11をローラ状に形成し、これを回転駆動することにより、その潤滑剤ブロック11とブラシローラ12とを摺擦させることもできる。
【0018】
上述のように供給された像担持体1上の粉体状の潤滑剤は、クリーニングブレード7によって像担持体表面に擦り付けられて、像担持体表面に潤滑剤皮膜が形成される。図1に示した画像形成装置においては、クリーニングブレード7が、供給された潤滑剤を像担持体表面に擦り付けて、その像担持体表面に潤滑剤皮膜を形成する皮膜形成手段を構成している。このように、像担持体表面に潤滑剤皮膜を形成することによって、像担持体表面の摩擦係数を下げ、クリーニングブレード7と像担持体表面とに作用する摩擦力を低減することができる。これにより、像担持体1の寿命を伸ばすことができる。
【0019】
像担持体表面に潤滑剤を供給しただけでは、その潤滑剤が粉体のままで像担持体上に存在することになり、この状態では潤滑剤が潤滑性を示すことはない。潤滑剤が潤滑性を示すには、粉体状の潤滑剤を像担持体表面に擦り付けて、潤滑剤の皮膜を形成する必要がある。図1に示した例では、上述のように、クリーニングブレード7が像担持体1上に供給された潤滑剤を像担持体表面に擦り付けるので、像担持体上に潤滑剤の皮膜を形成でき、潤滑剤の潤滑性を高めることができる。
【0020】
図1に示した剤供給装置10においては、バー状に固まった潤滑剤ブロック11が用いられているが、後述するように、粉体のままの潤滑剤を用いることもできる。潤滑剤をバー状に固めるには、粉体状の潤滑剤を型に入れ、型内で圧力をかけて潤滑剤を成形する。或いは粉体状の潤滑剤を加熱して溶融し、これを型の中に流し込み、次いでこれを冷却して潤滑剤ブロックを成形することもできる。いずれの場合も、潤滑剤としては、少なくとも、チッ化ホウ素と脂肪酸金属塩とを配合して成る潤滑剤が使用される。
【0021】
潤滑剤としてチッ化ホウ素を用いると、像担持体上に供給されて皮膜化された潤滑剤が、帯電ローラ2や転写ローラ5の作動時に発生する放電によって早期に劣化することはない。チッ化ホウ素は、放電により特性が変化し難く、放電を受けても、他の潤滑剤に比べて潤滑性が失われることがないのである。しかも、像担持体が放電により酸化、蒸発してしまうことを防止することもできる。
【0022】
ところが、チッ化ホウ素だけから成る潤滑剤を用いると、その像担持体表面に供給された潤滑剤が像担持体表面全体に行き渡らずに、像担持体表面全体に均一な潤滑剤皮膜が形成されなくなるおそれがある。そこで、前述のように、本例の剤供給装置10において使用される潤滑剤には、チッ化ホウ素のほかに、脂肪酸金属塩が配合されており、これによって像担持体表面の全体に亘って潤滑剤の皮膜を効率よく形成することができ、長期に亘って高い潤滑性を維持することができる。脂肪酸金属塩を含む潤滑剤を用いることによって、潤滑剤の皮膜を像担持体表面全面に形成できるのである.
【0023】
ところで、チッ化ホウ素の結晶構造としては、六方晶系グラファイト型構造に類似した低圧相のもの(h−BN)、立方晶系閃亜鉛鉱型構造(c−BN)、及び六方晶系ウルツ鉱型(w−BN)を挙げることができる。これらの構造のチッ化ホウ素のうち、六方晶系グラファイト型構造に類似した六方晶系低圧相のチッ化ホウ素の結晶は層状の構造を有している。かかる六方晶系低圧相のチッ化ホウ素は、層に対し垂直方向に僻開性を持つ物質であるため、摩擦係数は400℃近くまで約0.2以下を維持し、潤滑性に富み、特に放電の影響を受け難い潤滑剤であると言える。従って、チッ化ホウ素として、六方晶系低圧相のチッ化ホウ素を用いることが特に好適であり、かかるチッ化ホウ素を含む潤滑剤を像担持体表面に塗布し、これを皮膜化することによって、その皮膜が帯電ローラ2を通過するときに放電の影響を受けても、その潤滑剤が劣化することを効果的に抑え、潤滑性を維持することができる。
【0024】
脂肪酸金属塩としては、例えば、フッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどのラメラ結晶構造を持つ脂肪酸金属塩や、ラウロイルリジン、モノセチルリン酸エステルナトリウム亜鉛塩、ラウロイルタウリンカルシウムなどの物質を使用することができる。また、これらの脂肪酸金属塩とチッ化ホウ素のほかに、シリコーンオイルやフッ素系オイル、天然ワックスなどの液状の材料、ガス状にした材料を外添法として添加することもできる。
【0025】
上述した脂肪酸金属塩のうち、特にステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。これは、ステアリン酸亜鉛が、像担持体上での伸展性が非常によく、しかも吸湿性が低く、さらに湿度が変化しても潤滑性が損なわれ難い特性を有しているためである。
【0026】
潤滑剤中のチッ化ホウ素の含有量は適宜設定できるが、10乃至80体積%であることが好ましい。チッ化ホウ素の含有量がこの範囲よりも少ないと、チッ化ホウ素による潤滑性向上の効果をあまり期待できないだけでなく、放電による潤滑剤の劣化効果を高めることもできない。また、チッ化ホウ素の含有量が上記範囲よりも多いと、像担持体表面に形成される潤滑剤の皮膜を効率よく形成できなくなり、好ましくない。
【0027】
上述した潤滑剤の構成材料を前述のようにバー状に固めるには、必要に応じて、その構成材料中にバインダーを添加して成形する。
【0028】
また、図1に示した剤供給装置10においては、ブラシローラ12より成る剤塗布部材を用いているが、スポンジパッドや弾性ローラなどの剤塗布部材を介して、像担持体表面に潤滑剤を塗布することもできる。或いは、潤滑剤ブロック又は粉体状の潤滑剤を直に像担持体に接触させて、潤滑剤を像担持体表面に直接供給することもできる。
【0029】
次に、剤供給装置によって、潤滑剤を像担持体表面に供給する方法の他の具体例を明らかにする。
【0030】
図3に示した画像形成装置においては、剤供給装置10が、潤滑剤ブロックではなく、容器13を有し、その容器13の底部が多数のメッシュ状の開口を有する網状体14により構成されている。かかる容器13に、チッ化ホウ素と脂肪酸金属塩を含有する粉体状の潤滑剤15が収容され、容器13の網状体14に接してブラシローラ12が設けられており、このブラシローラ12も像担持体表面に当接している。かかるブラシローラ12が回転することにより、容器13内の潤滑剤15がメッシュ状の開口を通してブラシローラ12に移行し、その潤滑剤が像担持体表面に供給される。このようにして像担持体表面に供給された粉体状の潤滑剤は、クリーニング装置6のクリーニングブレード7によって像担持体表面に擦り付けられ、像担持体表面に潤滑剤皮膜が形成される。図3に示した画像形成装置の他の構成は、図1及び図2に示したところと変りはない。
【0031】
図4に示した剤供給装置10においては、図3に示した容器13の代りに、粉体状の潤滑剤が保持されたスポンジ部材16が設けられている。ブラシローラ12が回転することにより、スポンジ部材16に保持された潤滑剤が、ブラシローラ12を介して像担持体表面に供給される。スポンジ部材16をローラ状に形成し、これを回転させながら使用することもできる。図4に示した画像形成装置の他の構成は、図3に示した画像形成装置と変りはない。
【0032】
図5に示した剤供給装置10においては、図3に示した容器13の代りに、粉体状の潤滑剤を保持した多孔質状の繊維より成るブラシを備えたブラシ部材17が設けられ、その繊維に保持された潤滑剤が、回転するブラシローラ12を介して像担持体表面に供給される。ブラシ部材17をローラ状に形成し、これを回転させながら使用することもできる。図5に示した画像形成装置の他の構成は、図3に示した画像形成装置と変りはない。
【0033】
図6に示した剤供給装置10は、像担持体1の回転方向に関して、クリーニング装置6よりも下流側であって、帯電ローラ2よりも上流側に配置され、しかも図1に示したブラシローラ12の代りに弾性ローラ18が設けられている。この弾性ローラ18が矢印B方向に回転することにより、潤滑剤ブロック11から潤滑剤が削り取られ、その潤滑剤が像担持体表面に供給される。同時に、その弾性ローラ18によって、粉体状の潤滑剤が像担持体表面に擦り付けられ、像担持体表面に潤滑剤皮膜が形成される。このように、この例では、弾性ローラ18が剤塗布部材を構成していると共に、皮膜形成手段を構成している。
【0034】
弾性ローラ18としては、ゴムローラ、ウレタンローラ、エラストマーローラなどを使用でき、そのローラ表面は、表面粗さRzで30μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは2μm以下とする。ローラ硬度は、像担持体表面との圧接によりニップが得られれば問題ないが、JIS A硬度で40乃至80度、好ましくは40乃至65度、さらに好ましくは50乃至60度である。
【0035】
また、弾性ローラ18として、チューブ被覆のローラを用いることもできる。例えば、ウレタンローラにチューブを被覆したもの、ブラシローラにチューブを被覆したものなどを採用することができる。チューブとしては、ポリイミド、フッ素系のシームレスチューブ(厚さ50乃至1000μm)などを用いることができる。特にフッ素系のPVDFなどがチューブの材料として好ましい。チューブの表面は滑らかなほうがよく、表面粗さRzで1μm以下、特に0.5μm以下が好ましい。
【0036】
図1乃至図5に示した画像形成装置においては、像担持体上の転写残トナーをクリーニング装置6によってクリーニングする前に剤供給装置10によって潤滑剤を像担持体表面に塗布しているので、像担持体上の転写残トナーに邪魔されて、潤滑剤の塗布むらが発生するおそれがあるが、図6に示した画像形成装置においては、クリーニング装置6によって像担持体表面をクリーニングした後に、剤供給装置10によって、潤滑剤を像担持体表面に塗布するので、潤滑剤の塗布むらが発生することを阻止できる。しかも像担持体1の回転方向に関して、帯電ローラ2よりも上流側の部位において、像担持体表面に潤滑剤を塗布するので、放電による像担持体1の劣化を防止することができる。図6に示したクリーニング装置6には、クリーニングブレード7のほかにクリーニングブラシ19より成るクリーニング部材が設けられている。図6に示した画像形成装置の他の構成は、図1に示した画像形成装置と変りはない。
【0037】
図7に示した画像形成装置においては、像担持体1の回転方向に関して、帯電ローラよりも上流側で、剤供給装置10よりも下流側の像担持体表面部分に圧接する弾性ブレード20が設けられ、剤供給装置10により像担持体表面に供給された潤滑剤を、弾性ブレード20によって、より一層確実に皮膜化できるように構成されている。図7に示した画像形成装置においては、弾性ローラ18と弾性ブレード20とによって、皮膜形成手段が構成されている。図7に示した画像形成装置の他の構成は、図6に示した画像形成装置と変りはない。
【0038】
図8に示した剤供給装置10は、図6に示した剤供給装置10と同じく構成されているが、その剤供給装置10が、像担持体1の回転方向に関してクリーニング装置6よりも上流側に配置されている。ここに示した画像形成装置においても、像担持体表面に供給された潤滑剤が、弾性ローラ18とクリーニングブレード7によって像担持体表面に擦り付けられて皮膜化される。弾性ローラ18とクリーニングブレード7が、皮膜形成手段を構成しているのである。図8に示した画像形成装置の他の構成は、図1に示した画像形成装置と変りはない。
【0039】
図9に示した画像形成装置においては、像担持体の回転方向に関して、帯電ローラ2よりも下流側の像担持体表面部分に圧接する弾性ローラ21が設けられている。この弾性ローラ21は、像担持体に供給された潤滑剤を像担持体表面に擦り付ける皮膜形成手段としての用をなすと共に、劣化した潤滑剤を除去する用をなす。すなわち、剤供給装置10によって像担持体表面に供給された潤滑剤が帯電ローラ2を通過するとき、放電の作用によって一部の潤滑剤が劣化するが、その劣化した潤滑剤を弾性ローラ21によって除去するのである。これにより、像担持体1の潤滑性をより一層高くすることができる。弾性ローラ21に代えてブレードを用いることもできる。図9に示した画像形成装置の他の構成は、図1に示した画像形成装置と変りはない。
【0040】
図10に示した画像形成装置においては、剤供給装置10がクリーニング装置6よりも像担持体回転方向下流側に設けられていると共に、剤供給装置10よりも像担持体回転方向下流側に弾性ブレード20が設けられ、剤供給装置10により像担持体1に供給された潤滑剤を弾性ブレード20によって像担持体表面に擦り付けるように構成されている。図10に示した画像形成装置の他の構成は、図9に示した画像形成装置と変りはない。
【0041】
図1乃至図10に示した画像形成装置においては、クリーニングブレード7や弾性ブレード20によって、像担持体上の潤滑剤をその表面に擦り付けているが、かかる弾性ブレードをカウンター向きではなくトレーリング向きに像担持体に圧接させることもできる。また、像担持体に圧接する弾性ブレードの先端コーナ部を面取り加工して、像担持体表面に対する弾性ブレードの当りむらをなくすようにすることもできる。さらに、ゴムなどから成る弾性ブレードだけであると、その腰が弱く、これによって像担持体表面に対する弾性ブレードの当りむらが生じるおそれがある。そこで、その弾性ブレードに金属などの剛体を張り合わせ、その全体の腰を強くして、像担持体表面に対する弾性ブレードの当りむらを防止することもできる。
【0042】
また、剤供給装置10は、像担持体1が回転しているとき、常時、像担持体表面に潤滑剤を供給するように構成されていてもよいし、間欠的に潤滑剤を供給するように構成されていてもよい。潤滑剤を像担持体表面に間欠的に供給する場合には、剤供給装置10を、像担持体表面に対して接離可能に支持し、例えばカム、ソレノイド又はアクチュエータなどによって、剤供給装置10を像担持体表面に対して接離できるように構成すればよい。或いは、潤滑剤を像担持体1に供給しないとき、ブラシローラ12や弾性ローラ18などから成る剤塗布部材の回転を停止させるように構成することもできる。かかる剤供給装置10を用いて、例えば、50乃至200回の画像形成動作を行う毎に、潤滑剤を像担持体表面に供給するのである。
【0043】
また、環境温度が低いと、剤供給装置10から像担持体1に供給される潤滑剤の量が増え、潤滑剤が過多に供給される結果、その潤滑剤が帯電ローラ2に付着して放電が不安定となるおそれがある。そこで、低温時には、ブラシローラ12などの剤塗布部材の像担持体表面に対する圧接力を弱めるなどして、像担持体表面に供給される潤滑剤の量を減らすように構成することもできる。
【0044】
さらに、画像形成装置を長い時間停止させた後に、画像形成装置を作動させると、像担持体が放電によって酸化しやすくなるので、画像形成装置の停止時間を検知し、その時間が長いときは、像担持体1への潤滑剤の供給量を増やすように構成することもできる。
【0045】
また、像担持体の軸トルクを検知して、像担持体表面の潤滑剤の塗布量を検出し、その量に応じて、像担持体表面への潤滑剤の供給量を増減させるように構成することもできる。さらに、図1に示した画像形成装置のように、帯電ローラ2にスペーサ9を貼着し、そのスペーサ9を像担持体に当接させるように構成した場合には、そのスペーサ9と像担持体との間にも多くの潤滑剤を供給して、両者間に作用する摩擦力を低減できるように構成することも有利である。
【0046】
次に、像担持体の潤滑性能を調べるために行った実験例を紹介する。実験装置とその条件は次のとおりである。
【0047】
コピー機:IPSiO color8200改造機(直接転写方式のフルカラープリンタ)
帯電装置:像担持体に対して非接触で、硬質タイプの帯電ローラ
帯電ローラへの印加バイアス:AC成分Vpp3.0kV、周波数4kHz、DC成分−700V
環境条件:温度25℃、湿度65%
出力画像:5%チャート
潤滑剤:図1に示したバー状の潤滑剤ブロック
潤滑剤の材料:1.ステアリン酸亜鉛
2.チッ化ホウ素
3.ステアリン酸亜鉛とチッ化ホウ素を混合したもの
評価方法:像担持体と転写材の間の摩擦係数をオイラーベルト法にて測定
結果は表1のとおりである。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から次の点を理解できる。
ステアリン酸亜鉛だけから成る潤滑剤を用いた場合、1000枚プリントアウト後の摩擦係数が大幅に上昇した。チッ化ホウ素だけから成る潤滑剤を用いた場合には、初期と1000枚プリントアウト後の摩擦係数の変化が小さい。ステアリン酸亜鉛とチッ化ホウ素を混合して成る潤滑剤を用いた場合、初期と1000枚プリントアウト後の摩擦係数の変化が、チッ化ホウ素だけの潤滑剤を用いた場合よりも大きかったが、プリントアウト後の摩擦係数は、チッ化ホウ素だけの潤滑剤の場合よりも小さい。このことから、ステアリン酸亜鉛とチッ化ホウ素を混合して成る潤滑剤を用いることが最も好ましいことが判る。
【0050】
以上、感光体より成る像担持体に潤滑剤を供給する画像形成装置について説明したが、感光体上に形成されたトナー像が転写される中間転写体より成る像担持体にも、前述したところと同様にして潤滑剤を塗布することができる。
【0051】
また、少なくとも、トナー像が形成される像担持体と、その像担持体表面に潤滑剤を供給する剤供給装置を一体的に組み付けて、画像形成装置本体に対して着脱可能に装着されるプロセスカートリッジを構成することも従来より周知であるが、かかるプロセスカートリッジに前述の各構成をそれぞれ適用することができる。すなわち、プロセスカートリッジの像担持体に供給する潤滑剤として、少なくとも、チッ化ホウ素と脂肪酸金属塩とを配合して成る潤滑剤を用い、さらにそのプロセスカートリッジに、供給された潤滑剤を像担持体表面に擦り付けて、その像担持体表面に潤滑剤皮膜を形成する皮膜形成手段を設け、また剤供給装置を、像担持体が回転しているとき、常時、像担持体表面に潤滑剤を供給するか、又は間欠的に供給するように構成することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 像担持体
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
10 剤供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、帯電後の像担持体を露光して像担持体に静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像をトナー像として可視像化する現像装置と、前記像担持体表面に潤滑剤を供給する剤供給装置とを具備する画像形成装置において、前記潤滑剤として、少なくとも、チッ化ホウ素と脂肪酸金属塩とを配合して成る潤滑剤を用いると共に、前記帯電装置は、直流成分に交流成分を重畳したバイアスを印加されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記帯電装置は、像担持体との間に微小なギャップをあけて配置された帯電ローラより成る請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
供給された潤滑剤を像担持体表面に擦り付けて、該像担持体表面に潤滑剤皮膜を形成する皮膜形成手段を有する請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記剤供給装置は、像担持体が回転しているとき、常時、該像担持体表面に潤滑剤を供給するか、又は間欠的に供給するように構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−18427(P2012−18427A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234923(P2011−234923)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2005−179746(P2005−179746)の分割
【原出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】