説明

画像形成装置

【課題】簡単な構成で像保持体に付着した異物を除去しやすくすること。
【解決手段】表面に可視像が形成される像保持体(PR)と、前記像保持体(PR)の表面の前記可視像を媒体(S)に転写する転写器(Rt)と、転写後の前記像保持体(PR)の表面に付着した残留物を除去して清掃する清掃部材(2)と、前記清掃部材(2)に対して前記像保持体(PR)の回転方向の上流側に配置され、且つ、前記像保持体(PR)の表面に接触する接触部材(4)であって、前記残留物に含まれる異物および前記像保持体(PR)の表面に対して、前記接触部材(4)を構成する材料が、帯電列の上位または下位である前記接触部材(4)と、を備えたことを特徴とする画像形成装置(U)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式の複写機、プリンタ等の画像形成装置では、画像が転写された後の像保持体の表面に付着した転写残トナーや紙粉、放電生成物等の付着物を除去するクリーニング装置において、付着物を掻き取る掻き取り部材を使用する技術として、下記の特許文献1、2記載の技術が知られている。
特許文献1としての特開2005−164726には、回転する感光体(1)の潤滑剤としてポロテトラフルオロエチレン(PTFE)が塗布された表面に対して、クリーニング領域で、感光体(1)の回転方向に対して逆向き、いわゆる、カウンタ方向に回転する掻き取りローラ(14)に支持されたフィルム状のフィン(16)と、掻き取りローラ(14)の下流側に配置された板状のクリーニングブレード(12)と、が接触して、フィン(16)に紙粉や転写残トナーの一部等の感光体(1)の表面に付着した付着物を掻き取らせた後に、クリーニングブレード(12)に感光体(1)の表面をクリーニングさせる技術が記載されている。
【0003】
特許文献2としての特開2001−242755には、表面部分が電荷輸送層中に電荷発生材料が分散された正帯電分散型単層感光体により構成された感光ドラム(21)において、転写後の感光ドラム(21)の表面に対して、導電剤が分散されたシート状のロアフィルム(45)を感光ドラム(21)の回転方向上流側から下流側に向けて接触させると共に、ロアフィルム(45)の下流側に配置された導電性の導電ブラシ(46)を感光ドラム(21)の表面に接触させる構成が記載されている。
特許文献2では、ロアフィルム(45)に870[V]の電圧を印加して、感光ドラム(21)の表面の電位を均一化させた後に、ロアフィルム(45)に印加した電圧よりも高い1.30[kV]の電圧を導電ブラシ(46)に印加して、感光ドラム(21)の表面に付着する負極性に帯電しやすい紙紛を導電ブラシ(46)に捕捉させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−164726号公報(「0031」、「0032」、「0033」、「0036」、「0039」、「0103」、図1、図2、図4、図8)
【特許文献2】特開2001−242755号公報(「0036」〜「0039」、「0042」〜「0056」、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡単な構成で像保持体に付着した異物を除去しやすくすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の画像形成装置は、
表面に可視像が形成される像保持体と、
前記像保持体の表面の前記可視像を媒体に転写する転写器と、
転写後の前記像保持体の表面に付着した残留物を除去して清掃する清掃部材と、
前記清掃部材に対して前記像保持体の回転方向の上流側に配置され、且つ、前記像保持体の表面に接触する接触部材であって、前記残留物に含まれる異物および前記像保持体の表面に対して、前記接触部材を構成する材料が、帯電列の上位または下位である前記接触部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
ポリテトラフルオロエチレンにより構成された表面層を有する前記像保持体と、
前記異物およびポリテトラフルオロエチレンに対して、前記接触部材を構成する材料が、帯電列の上位である前記接触部材と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、異物および像保持体の表面に対して、帯電列の上位または下位である材料で構成された接触部材を使用しない構成に比べて、簡単な構成で像保持体に付着した異物を除去し易くできる。
請求項2に記載の発明によれば、ポリテトラフルオロエチレンを像保持体の表面層に使用しない場合に比べて、像保持体の表面層の耐磨耗性と離型性とを向上させることができ、像保持体を長寿命化しつつ異物を除去し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は実施例1の画像形成装置の斜視図である。
【図2】図2は実施例1の画像形成装置の縦断面図である。
【図3】図3は図2のトナー像形成装置部分の要部拡大図である。
【図4】図4は実験例1の実験結果を表した表であり、像保持体表面における帯電電位の測定結果表である。
【図5】図5は実験例2の実験結果を表したグラフであり、横軸に実験例および比較例を並べ、縦軸に測定された炭酸カルシウムの個数を取ったグラフである。
【図6】図6は本発明の実験例2の像保持体の表面と炭酸カルシウムとの間に生じる力の推定メカニズムの説明図であり、横軸に実験例および比較例を並べ、縦軸に像保持体と炭酸カルシウムとの間に生じる力を示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【実施例1】
【0011】
図1は実施例1の画像形成装置の斜視図である。
図1において、実施例1の画像形成装置の一例としてのプリンタUは、プリンタ本体U1の上面に第1媒体排出部の一例としての第1排紙トレイTRh、いわゆるフェイスダウントレイTRhが設けられている。前記フェイスダウントレイTRhの媒体排出方向先端側の上面前部には、利用者が入力操作する操作部UIが設けられており、前記操作部UIには設定キー等が設けられている。プリンタUの上部前面には、前側開閉部の一例としてのフロントパネルUaが配置されており、フロントパネルUa下端部が左右方向に延びる回転軸により、プリンタU本体に回転可能に支持されている。したがって、現像剤容器の一例としてのトナーカートリッジや、可視像形成ユニットの一例としてのプロセスユニット等を交換する場合、フロントパネルUaを開けて交換できる。
【0012】
図2は実施例1の画像形成装置の縦断面図である。
図2において、プリンタUに電気的に接続された画像情報送信装置の一例としてホストコンピュータHCから送信された画像情報や制御信号等の電気信号は、プリンタUの制御部の一例としてのコントローラCに入力される。前記コントローラCは、入力される画像情報を一時的に記憶し、前記画像情報を予め設定された時期に潜像形成用の情報に変換して、潜像形成装置駆動回路の一例としてのレーザ駆動回路DLに出力する。
レーザ駆動回路DLは、入力された情報に応じて駆動信号を潜像形成装置ROSに出力する。なお、前記操作部UI、レーザ駆動回路DLと、後述の現像ロールGa、転写ロールRtに電圧を印加する電源回路E等の動作はコントローラCにより制御される。
【0013】
図3は図2のトナー像形成装置部分の要部拡大図である。
図2、図3において、前記潜像形成装置ROSの左方には、黒色のトナー像を形成する可視像形成装置の一例としてのトナー像形成装置U2が配置されている。潜像形成装置ROSから出射された潜像形成光の一例としてのレーザビームLは、回転する感光体PRに入射される。なお、実施例1の感光体PRの表面層には、離型性を向上させるために、ポリテトラフルオロエチレン:PTFEが含有されている。
図2、図3において、実施例1のトナー像形成装置U2は、回転軸PRaを中心に矢印Ya方向に回転する像保持体の一例としての感光体PRと、帯電器の一例としての帯電ロールCRと、現像器Gと、像保持体清掃器の一例としての像保持体クリーナCLとを有している。また、前記トナー像形成装置U2はユニット化されており、プロセスユニットとして画像形成装置本体U1に着脱可能に構成されている。前記プロセスユニットU2の着脱は、画像形成装置本体U1の前面に開閉可能に支持されたフロントカバーUaを開放した状態で行われる。
【0014】
図2、図3において、前記感光体PRの表面は、帯電ロールCRにより一様に帯電された後、潜像書込位置Q1において潜像形成装置ROSのレーザビームLにより露光走査されて静電潜像が形成される。前記静電潜像が形成された感光体PR表面は回転移動して現像領域Q2、転写領域Q3を順次通過する。
現像器Gは、内部に現像剤の一例としてのトナーを収容する現像容器Vを有する。前記現像容器V内には、現像領域Q2で感光体PRと対向し且つ現像電圧が印加される現像剤保持体の一例としての現像ロールGaが回転可能に支持されている。また、現像容器V内には、トナーを現像ロールGaに撹拌しながら搬送するトナー撹拌部材Gb,Gcが回転可能に支持されている。したがって、現像ロールGaの回転に伴って表面に保持されたトナーが現像領域Q2に搬送され、現像領域Q2を通過する感光体PR上の静電潜像が可視像の一例としてのトナー像に現像される。
【0015】
前記現像容器Vの前端部には、プリンタUに固定支持された現像剤補給装置の一例としてのカートリッジトナー補給装置TH1の補給路の一端が接続されている。前記カートリッジトナー補給装置TH1の補給路の他端は、現像剤収容容器の一例としてのトナーカートリッジTCの排出口TC3に接続されている。
図2において、トナーカートリッジTCは、内部にトナーを収容する容器本体の一例としてのカートリッジ本体TC1を有し、前記カートリッジ本体TC1内には容器内搬送部材の一例としてのトナー搬送部材TC2が回転可能に支持されている。したがって、現像器Gでのトナーの消費に応じて、前記トナー搬送部材TC2が回転駆動してカートリッジ本体TC1内のトナーを、排出口TC3に搬送する。排出口TC3から排出されたトナーは、カートリッジトナー補給装置TH1の補給経路内の図示しない補給用搬送部材により現像器Gの現像容器Vに搬送される。
【0016】
前記トナーカートリッジTCは、プリンタUに対して前後方向に挿抜することにより着脱可能に構成されている。前記トナーカートリッジTCの着脱は、画像形成装置本体U1の前面に開閉可能に支持されたフロントカバーUaを開放した状態で行う。
前記感光体PR、帯電ロールCR、静電潜像形成装置ROS、現像器G等により、感光体PR上にトナー像を形成するトナー像形成装置U2が構成されている。
【0017】
図1、図2において、プリンタUの下部には、媒体収容部の一例としての給紙トレイTR1〜TR4が複数設けられている。複数の給紙トレイTR1〜TR4は、前記転写領域Q3に搬送するための媒体の一例として記録用シートSを収容している。
図2において、プリンタUの下部内部には、出入される給紙トレイTR1〜TR4の左右両端部を移動可能に支持する出入案内部材の一例としてのレールRL1,RL1が配置されている。したがって、左右一対のレールRL1,RL1により各給紙トレイTR1〜TR4は前後方向に移動可能に支持されており、前記各給紙トレイTR1〜TR4はプリンタUの前面から出入可能である。
【0018】
図2において、前記各給紙トレイTR1〜TR4の給紙側の上部には、給紙装置Kが配置されている。前記給紙装置Kは、媒体取出部材の一例としてのピックアップロールRpと、媒体搬送部材の一例としてのフィードロールおよび媒体分離部材の一例としてのリタードロールからなる捌き部材の一例としてのさばきロールRsとを有する。
給紙装置KのピックアップロールRpにより取出された記録用のシートSは、さばきロールRsにより1枚ずつ分離されて、本体搬送路SH1に給紙される。給紙されたシートSは、本体搬送路SH1に配置された複数の搬送部材の一例としてのシート搬送ロールRaにより搬送される。シート搬送ロールRaにより搬送されたシートSは、給紙時期調整部材の一例としてのレジロールRrにより、感光体PR表面のトナー像が転写領域Q3に移動する時期に合わせて、前記転写領域Q3に搬送される。
【0019】
また、プリンタUの左側部には、手差し給紙部の一例としての手差トレイTR0が装着されている。前記手差トレイTR0から給紙されたシートSは、手差用追加搬送路SH5から、手差用搬送路SH2を通過して、前記本体搬送路SH1のシート搬送ロールRaにより搬送され、レジロールRrにより前記転写領域Q3に搬送される。
【0020】
図2において、前記転写領域Q3には転写電圧が印加される転写器の一例としての転写ロールRtが配置されている。この転写ロールRtは転写領域Q3において前記感光体PRに予め設定された圧力で接触しており、転写領域Q3を通過するシートSに感光体PR上のトナー像を転写する。
感光体PR表面のトナー像が転写領域Q3においてシートSに転写された後、前記感光体PRは、像保持体クリーナCLにより表面に付着した残留現像剤の一例としての残留トナーが除去、回収され、清掃される。前記像保持体クリーナCLにより表面に付着した残留トナーが回収された感光体PRは、前記帯電ロールCRにより再び帯電される。
【0021】
前記転写領域Q3において未定着のトナー像が転写されたシートSは、トナー像が未定着の状態で定着装置Fの定着領域Q4に搬送され、定着領域Q4に配置された定着部材の一例としての一対の定着ロールFh,Fpによりトナー像が定着される。
前記トナー像形成装置U2と、転写ロールRt、定着装置Fにより、シートSに画像を記録する画像記録部材U2+Rt+Fが構成されている。
定着トナー像が形成されたシートSは、媒体案内部材の一例としてのシートガイドに案内されて排出部材の一例としての排紙ロールR1に搬送される。シートSは、前記排紙ロールR1により、媒体排出口の一例としてのシート排出口Haから前記フェイスダウントレイTRhに排出される。
【0022】
プリンタUの内部の定着装置F上方には、前記シート排出口Haに接続された本体側反転路SH3が設けられている。また、前記手差しトレイTR0の上部には、追加装置である媒体反転装置の一例としてのシート反転装置U3が装着されている。前記シート反転装置U3の内部には、前記本体側反転路SH3に接続される追加反転路の一例としてのオプションシート反転路SH4が形成されている。したがって、両面印刷時には、前記定着領域Q4でトナー像が定着されたシートSは、前記本体シート反転路SH3、オプションシート反転路SH4を通過して、前記レジロールRrに搬送され、前記転写領域Q3に再送される。
前記本体側反転路SH3、オプションシート反転路SH4により、反転路SH3+SH4が構成されている。
【0023】
また、前記シート反転装置U3には、シートSの画像記録面が上面になる状態で排出される追加媒体排出部の一例としてのオプション排紙トレイTRh1、いわゆる、フェイスアップトレイTRh1が設けられている。前記オプション排紙トレイTRh1と前記本体側反転路SH3との間には、追加排出路の一例としてのオプションシート排出路SH6が設けられており、ユーザによりオプション排紙トレイTRh1に排出することが指定された場合、シートSは、前記本体側反転路SH3から前記オプションシート排出路SH6を通過して、前記オプション排紙トレイTRh1に排出される。
【0024】
(実施例1の像保持体クリーナCLの説明)
図3において、像保持体クリーナCLは、清掃容器の一例として、感光体PRの上方に配置され且つ感光体PRの軸方向に沿って延びて内部に残留トナーが収容されるクリーナ容器1を有している。クリーナ容器1の右内側面の下端部には、清掃部材の一例として、感光体PRの表面に予め設定された圧力で接触して感光体PR表面に付着した残留トナーや紙粉等の残留物を回収するクリーニングブレード2が支持されている。実施例1のクリーニングブレード2は、感光体PRの回転方向に対して、先端部が上流側に向く方向、いわゆる、カウンタ方向から接触しており、感光体PRの表面とクリーニングブレード2との接触領域により清掃領域P1が構成されている。
【0025】
また、クリーナ容器1の左内側面の下端部には、漏出防止部材の一例として、清掃領域P1よりも感光体PRの回転方向上流側において、感光体PRの表面に接触してクリーナ容器1に回収されたトナー等の漏出を防止する漏出防止フィルム3が支持されている。実施例1の漏出防止フィルム3は、感光体PRの回転方向に対して、先端部が下流側に向く方向、いわゆる、順方向から接触しており、感光体PRの表面と漏出防止フィルム3との接触領域により漏出防止領域P2が構成されている。また、実施例1の漏出防止フィルム3には、感光体PRの表面層に含有されたポリテトラフルオロエチレンや、紙粉に含まれる炭酸カルシウムよりも帯電列が上位のウレタン樹脂が使用されている。
【0026】
クリーナ容器1の左外側面の下部には、接触部材の一例として、漏出防止フィルム3よりも感光体PRの回転方向上流側において、感光体PRの表面に接触する接触フィルム4が支持されている。実施例1の接触フィルム4は、感光体PRの回転方向に対して、カウンタ方向から接触しており、感光体PRの表面と接触フィルム4との接触領域により接触領域P3が構成されている。また、実施例1の接触フィルム4には、感光体PRの表面層に含有されたポリテトラフルオロエチレンや、残留物の一例としての紙粉に含まれる炭酸カルシウムよりも帯電列が上位のナイロンが使用されている。したがって、接触領域P3において、接触フィルム4と、感光体PRおよび炭酸カルシウムが擦れると、摩擦帯電が生じ、接触フィルム4が正極性に帯電し、感光体PRおよび炭酸カルシウムが負極性に帯電する。
クリーニングブレード2の上方には、回収搬送部材の一例として、回転可能な回収オーガ6が配置されている。クリーニングブレード2に回収された現像剤は、回収オーガ6の回転に伴い、前方に搬送され、像保持体クリーナCLの前端と現像容器Vの前端とを接続する回収路7を介して、現像容器V内に戻され、再使用される。
【0027】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のプリンタUでは、画像形成動作が実行されると、現像器G内で撹拌されて負極性に帯電したトナーが使用されて、感光体PRの表面の潜像がトナー像に現像される。そして、トナー像が現像された感光体PRの表面が転写領域Q3に移動する時期に合わせて、転写領域Q3にシートSが搬送されると共に、正極性の転写電圧が転写ロールRtに印加される。そして、転写電圧に伴って、感光体PRの表面から転写領域Q3を通過するシートSの表面に、転写領域Q3を通過する感光体PRの表面のトナー像が転写される。
【0028】
ここで、感光体PRの表面が転写領域Q3を通過する際に、シートSの表面に転写されなかったトナーが感光体PRの表面に残留したり、シートSに含まれていた炭酸カルシウム等の填料が感光体PRの表面に異物として付着してしまう場合がある。
転写領域Q3において感光体PRの表面に付着した異物は、感光体PRの回転に伴って、接触領域P3に移動して、接触フィルム4と接触し、擦れる。この時、感光体PRの表面も接触フィルム4と接触して擦れる。したがって、転写領域Q3では、感光体PRの表面等とナイロン製の接触フィルム4とが擦れて、摩擦帯電が生じる。そして、PTFEが含有される感光体PRの表面層や、感光体PRの表面に付着した炭酸カルシウム等の異物に比べて、帯電列が上位のナイロンは正極性に帯電し、感光体PRの表面や異物は、負極性に帯電する。
【0029】
接触領域P3において負極性に帯電した感光体PRの表面と異物とが清掃領域P1に移動すると、クリーニングブレード2の先端部が感光体PRの表面に接触して、感光体PRの表面に残留したトナーや、付着した異物が除去される。ここで、接触フィルム4を有しない特許文献1等の従来技術の構成では、転写領域Q3を通過した後の感光体PRの表面に付着した炭酸カルシウムや残留トナーが転写電圧等の負荷を受けて、正極性に帯電することがある。そして、帯電列において、負極性に帯電しやすいPTFEの表面層と、正極性に帯電した炭酸カルシウム等の付着物との間には、電気的な吸引力が作用する。よって、従来文献1等の従来の構成では、清掃部材で付着物を除去しようとしても、電気的な吸引力が付着物の除去の妨げとなり、清掃不良が発生する恐れがあった。
これに対して、実施例1では、接触フィルム4と摩擦帯電して負極性に帯電した感光体PRの表面と、負極性に帯電した異物との間には、電気的な反発力が生じる。よって、実施例1では、感光体PRの表面と異物との間に電気的な反発力が発生し、感光体PRの表面と異物との間で電気的な反発力が生じない従来の構成に比べて、感光体PRの表面から異物が除去されやすい。
【0030】
また、特許文献2のような従来の構成では、感光体ドラム(21)の表面に正極性の電圧を印加した導電性のロアフィルム(45)を接触させて、感光体ドラム(21)の表面を正極性に均一に帯電させてから、導電ブラシ(46)で感光体ドラム(21)の表面に付着した付着物を除去していた。
これに対して、実施例1の構成では、接触フィルム4に電圧を印加することなく感光体PRの表面の異物を除去することが可能である。したがって、実施例1の構成では、接触部材に電圧を印加させる従来の構成に比べて、構成が簡素化されて、生産費用を抑えることが可能であると共に、プリンタU使用時に、接触フィルム4に電圧を印加する費用も抑えることが可能である。
【0031】
なお、実施例1の構成では、漏出防止領域P2において、感光体PRの表面に漏出防止フィルム3が接触しており、クリーニングブレード2に感光体PRの表面から除去されたトナーや異物の像保持体クリーナCLからプリンタUの内部への漏出を防止する。ここで、実施例1の漏出防止フィルム3は、PTFEが含有される感光体PRの表面層や、感光体PRの表面に付着した炭酸カルシウム等の異物に比べて、帯電列が上位のウレタン樹脂で構成されている。漏出防止フィルム3は、感光体PRに対して、異物の通過を妨げない程度の弱い圧力で軽く接触しており、摩擦帯電は発生しにくいが、感光体PRの表面や異物と漏出防止フィルム3との間で摩擦帯電が発生しても、漏出防止フィルム3は正極性に帯電され、感光体PRの表面や、異物は負極性に帯電することとなる。よって、漏出防止フィルム3よりも感光体PRの回転方向上流側の接触フィルム4で負極性に帯電された異物の帯電極性を変えることなく、清掃領域P1に送ることが可能である。
【0032】
(実験例)
次に本発明の実施例1の構成における効果を確認するために実験を行った。実験は、(温度10度、湿度15%)の低温低湿環境下で行った。
実験は、富士ゼロックス株式会社製のDocuPrint505を使用して行った。
(実験例1)
実験例1では、表面を厚さ10μmの炭酸カルシウムで被覆した状態の感光体PRを回転させ、接触領域P3よりも感光体PRの回転方向上流側の位置、および、下流側の位置において、静電気テスタで感光体PRの表面の電位を測定した。
【0033】
(実験例1−1)
実験例1−1では、感光体PRの表面層を構成するPTFEよりも帯電列が上位のナイロンを接触フィルム4として使用した。
(実験例1−2)
実験例1−2では、PTFEよりも帯電列が上位のポリエステルを接触フィルム4として使用した。
(比較例1−1)
比較例1−1では、PTFEを接触フィルム4として使用した。
【0034】
図4は実験例1の実験結果を表した表であり、像保持体表面における帯電電位の測定結果表である。
図4に示す実験例1−1の測定結果において、接触フィルム4と接触する前の感光体PR表面の帯電電位は132[V]を示したのに対し、接触フィルム4と接触した後の感光体PR表面の帯電電位は−674[V]を示した。また、実験例1−2の測定結果において、接触フィルム4と接触する前の感光体PR表面の帯電電位は129[V]を示したのに対し、接触フィルム4と接触した後の感光体PR表面の帯電電位は−655[V]を示した。
【0035】
したがって、実験例1−1および実験例1−2の測定結果から、ナイロンおよびポリエステルが使用された接触フィルム4が炭酸カルシウム等に接触すると、炭酸カルシウム等や感光体PRの表面が負極性に帯電されることが確認された。これは、PTFEおよび炭酸カルシウムよりも帯電列が上位のナイロンやポリエステルと、炭酸カルシウム等との摩擦帯電で、感光体PRの表面に付着した炭酸カルシウムや、感光体PRの表面のPTFEが負極性に帯電されたものと考察される。
また、比較例1−1の測定結果において、接触フィルム4と接触する前の感光体PR表面の帯電電位は134[V]を示したのに対し、接触フィルム4と接触した後の感光体PR表面の帯電電位は+730[V]を示した。これは、炭酸カルシウムよりも帯電列が下位のPTFEと、炭酸カルシウム等との摩擦帯電で、感光体PRの表面に付着した炭酸カルシウム等が正極性に帯電されたものと考察される。
【0036】
(実験例2)
実験例2では、感光体PRを回転させながら、転写領域Q3を750枚のJDカラーコピー用紙(富士ゼロックス製)が通過した後、清掃領域P1よりも感光体PRの回転方向下流側の位置において、感光体PRの表面を走査型電子顕微鏡で観察して、感光体PRの表面に残留した炭酸カルシウムの個数を測定した。
(実験例2−1)
実験例2−1では、実験例1−1と同様に、ナイロンを接触フィルム4として使用した。
(実験例2−2)
実験例2−2では、実験例1−2と同様に、ポリエステルを接触フィルム4として使用した。
【0037】
(比較例2−1)
比較例2−1では、接触フィルム4を設けず、PTFEの表面層を有する感光体PRを使用した。
(比較例2−2)
比較例2−2では、接触フィルム4を設けず、PTFEの表面層を有しない感光体を使用した。
(比較例2−3)
比較例2−3では、ナイロンを使用した接触フィルム4を設けて、PTFEの表面層を有しない感光体を使用した。
(比較例2−4)
比較例2−4では、比較例1−1と同様に、PTFEを接触フィルム4として使用した。
【0038】
図5は実験例2の実験結果を表したグラフであり、横軸に実験例および比較例を並べ、縦軸に測定された炭酸カルシウムの個数を取ったグラフである。
図5に示す実験例2の実験結果おいて、比較例2−1に比べて、実験例2−1では、クリーニングブレード2で除去されずに感光体PRの表面に残留した炭酸カルシウムの個数が少ないことが示された。したがって、実験例2−1および比較例2−1の測定結果から、接触フィルム4を設けない構成に比べて、炭酸カルシウム等にナイロンを使用した接触フィルム4が接触する構成では、クリーニングブレード2で炭酸カルシウムが除去され易いことが確認された。
【0039】
また、PTFEの表面層を有しない比較例2−2では、比較例2−1と同様に、炭酸カルシウムの残量が多く、清掃能力が低いことが確認された。
さらに、比較例2−3では、実験例2−1に比べて、クリーニングブレード2で除去されずに感光体PRの表面に残留した炭酸カルシウムの個数が多かった。すなわち、実験例2−1および比較例2−3から、ナイロンを使用した接触フィルム4を設けても、PTFEでなければ、炭酸カルシウムが除去され難いことが確認された。
【0040】
図6は本発明の実験例2の像保持体の表面と炭酸カルシウムとの間に生じる力の推定メカニズムの説明図であり、横軸に実験例および比較例を並べ、縦軸に像保持体と炭酸カルシウムとの間に生じる力を示した説明図である。
実験例2−1、比較例2−1〜比較例2−3の実験結果から以下のメカニズムが推定される。
すなわち、図6において、比較例2−1では、感光体PRの表面と炭酸カルシウムとの間には、離型性の良いPTFEと炭酸カルシウムとの間で生じる摩擦や粘着力等の非静電的な力と、PTFEの表面層と炭酸カルシウムとの間の電位で生じる静電的な力が作用する。このとき、実験1から、PTFEが負極性、炭酸カルシウムが正極性に帯電しているものと推定され、静電的な力と非静電的な力とが加算されて炭酸カルシウムが感光体PRから除去され難いものと推定される。
【0041】
一方、実験例2−1では、実験例1−1の実験結果からナイロン製の接触フィルム4が接触すると、炭酸カルシウムが負極性に帯電し、静電的な力が炭酸カルシウムを感光体PRの表面から離す方向の力となる。よって、非静電的な力から静電的な力が減算され、炭酸カルシウムが除去され易くなったものと推定される。
比較例2−2、比較例2−3では、感光体の表面にPTFEの表面層が設けられておらず、比較例2−1に比べて、離型性が低下して非静電的な力が大きくなるが、感光体表面にPTFEが存在しないので、炭酸カルシウムに対する静電付着力の作用が小さい。よって、比較例2−2、比較例2−3では、比較例2−1に比べて、炭酸カルシウムの残量がわずかに少なくなるが、実験例2−1に比べて、多くなるものと推定される。
【0042】
また、比較例2−4では、比較例2−1から比較例2―3と同様に、実験例2−1に比べて、炭酸カルシウムの残量が多く、清掃能力が低かった。さらに、実験例2−2では、実験例2−1に比べて、炭酸カルシウムの残量が多かったが、比較例2−1から比較例2―4に比べて、感光体PRの表面に残留した炭酸カルシウムの個数が少なく炭酸カルシウムが除去され易いことが確認された。
すなわち、実験例2−1、実験例2−2、比較例1−1および比較例2−4から、炭酸カルシウムよりも帯電列が下位のPTFEを使用した接触フィルム4を設けた構成では、ナイロンやポリエステルを使用した接触フィルム4を設けた構成に比べて、炭酸カルシウムが除去され難いことが確認された。
【0043】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H06)を下記に例示する。
(H01)前記各実施例において、画像形成装置の一例としてのプリンタUを例示したが、これに限定されず、複写機、FAX、あるいはこれら複数の機能を備えた複合機等に適用可能である。また、単色、いわゆるモノクロの画像形成装置を例示したが、これに限定されず、多色、いわゆるカラーの画像形成装置にも適用可能である。
【0044】
(H02)前記各実施例において、ナイロンで構成された接触フィルム4を例示したが、これに限定されず、PTFEが含有される感光体PRの表面層や、感光体PRの表面に付着した炭酸カルシウム等の異物に比べて、帯電列が上位の材料、例えば、ウール、アセテート、アクリル、絹、レーヨン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレンプロピレンゴム、ポリウレタンゴム、ポリエステル等の物質で接触フィルム4を構成することも可能である。また、PTFEや炭酸カルシウム等に比べて、帯電列が下位の材料、例えば、シリコーンゴムで接触フィルムを構成することも可能である。この構成では、感光体PRの表面や異物に接触フィルムが接触すると、摩擦帯電で接触フィルムが負極性に帯電すると共に、感光体PRの表面と異物とが正極性に帯電して、感光体PRの表面と異物との間に、電気的な反発力を発生させて、感光体PRの表面から異物を除去させやすくすることが可能である。また、感光体の表面をPTFEとは異なる材料で構成することも可能である。このとき、感光体の表面と異物との両方に対して、帯電列が上位の材料で接触フィルムを構成することで、感光体の表面と異物の両方を負極性に帯電させたり、感光体の表面と異物の両方に対して、帯電列が下位の材料の一例としてのPTFEで接触フィルムを構成することで、感光体と異物の両方を正極性に帯電させることも可能である。すなわち、感光体PRの表面や異物に接触フィルムが接触することで、感光体の表面と異物とを同一極性に帯電させ、感光体の表面と異物との間に電気的な反発力を発生させる任意の材料を選択することが可能である。
【0045】
(H03)前記実施例において、像保持体クリーナCLが感光体PRの表面の清掃を行う構成を例示したが、これに限定されず、カラーの画像形成装置において、ベルト状やドラム状の中間転写体の清掃を行う清掃器にも適用可能である。
(H04)前記各実施例において、接触フィルム4の設置場所や、感光体PRの表面に対する接触方向、設置数量は、実施例に例示した構成に限定されず、例えば、接触領域P3で感光体PRの回転方向に対して、先端部が下流側に向く方向、いわゆる、順方向から感光体PRの表面に接触するように接触フィルム4をクリーナ容器1の内壁面に設置したり、接触フィルム4の設置数量を2つ以上とする等、設計や仕様に応じて任意に変更可能である。
(H05)前記各実施例において、漏出防止フィルム3と接触フィルム4とを設けた構成を例示したが、これに限定されず、漏出防止フィルム3と接触フィルム4とを共通化させることも可能である。
【0046】
(H06)前記各実施例において、像保持体清掃部材の一例として、清掃領域P1で感光体PRの表面に残留したトナーや付着した異物を除去するクリーニングブレード2を例示したが、これに限定されず、例えば、従来のクリーニングブラシや、クリーニングローラ等、任意の像保持体清掃部材を採用可能である。また、従来の導電性のクリーニングブラシや、クリーニングローラを採用し、クリーニングブラシの刷毛部や、クリーニングローラの表面に正極性の電圧を印加して、負極性に帯電したトナーや異物を清掃領域P1で捕捉する構成も可能である。
【符号の説明】
【0047】
2…清掃部材、
4…接触部材、
PR…像保持体、
Rt…転写器、
S…媒体、
U…画像形成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に可視像が形成される像保持体と、
前記像保持体の表面の前記可視像を媒体に転写する転写器と、
転写後の前記像保持体の表面に付着した残留物を除去して清掃する清掃部材と、
前記清掃部材に対して前記像保持体の回転方向の上流側に配置され、且つ、前記像保持体の表面に接触する接触部材であって、前記残留物に含まれる異物および前記像保持体の表面に対して、前記接触部材を構成する材料が、帯電列の上位または下位である前記接触部材と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
ポリテトラフルオロエチレンにより構成された表面層を有する前記像保持体と、
前記異物およびポリテトラフルオロエチレンに対して、前記接触部材を構成する材料が、帯電列の上位である前記接触部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−208276(P2012−208276A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73201(P2011−73201)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】