画像形成装置
【課題】シートからの画像の剥離を抑制する画像形成装置を提供する。
【解決手段】シートを第1方向へ搬送する搬送要素と、前記シートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部と、を備え、該画像形成部は、第1画像を前記シートに転写する第1転写ユニットと、該第1転写ユニットの後に、第2画像を前記シートに転写する第2転写ユニットと、を含み、前記第1転写ユニットは、前記シート上の前記第1画像を摺擦する第1摺擦ユニットを含み、前記第2転写ユニットは、前記シート上の前記第2画像を摺擦する第2摺擦ユニットを含むことを特徴とする画像形成装置。
【解決手段】シートを第1方向へ搬送する搬送要素と、前記シートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部と、を備え、該画像形成部は、第1画像を前記シートに転写する第1転写ユニットと、該第1転写ユニットの後に、第2画像を前記シートに転写する第2転写ユニットと、を含み、前記第1転写ユニットは、前記シート上の前記第1画像を摺擦する第1摺擦ユニットを含み、前記第2転写ユニットは、前記シート上の前記第2画像を摺擦する第2摺擦ユニットを含むことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤を用いてシートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに画像を形成する装置として、液体現像剤を用いる画像形成装置が知られている。この種の画像形成装置は、典型的には、シート上に画像を定着させるための定着装置を備える。定着装置は、シート上に転写された液体現像剤中のトナー成分を溶融するために、比較的高い熱を生じさせる(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−262809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体現像剤中の成分(キャリア溶液)がシート内に浸透することによって、顔料が分散している高分子化合物がシート表面に析出する特性を有する液体現像剤の使用は、定着装置からの発熱を不要にする。しかしながら、本発明者は、上述の特性を有する液体現像剤を用いて形成された画像は、シートから剥離しやすいという特性を見出した。
【0005】
本発明は、シートからの画像の剥離を抑制する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、シートを第1方向へ搬送する搬送要素と、前記シートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部と、を備え、該画像形成部は、第1画像を前記シートに転写する第1転写ユニットと、該第1転写ユニットの後に、第2画像を前記シートに転写する第2転写ユニットと、を含み、前記第1転写ユニットは、前記シート上の前記第1画像を摺擦する第1摺擦ユニットを含み、前記第2転写ユニットは、前記シート上の前記第2画像を摺擦する第2摺擦ユニットを含むことを特徴とする(請求項1)。
【0007】
上記構成によれば、画像形成部は、搬送要素によって第1方向に搬送されるシートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する。画像形成部の第1転写ユニットは、第1画像をシートに転写する。画像形成部の第2転写ユニットは、第1転写ユニットの後に、第2画像をシートに転写する。第1転写ユニットの第1摺擦ユニットは、シート上の第1画像を摺擦する。第2転写ユニットの第2摺擦ユニットは、シート上の第2画像を摺擦する。第1摺擦ユニット及び第2摺擦ユニットは、シート上の第1画像及び第2画像に摩擦力をそれぞれ与える。この結果、画像を形成する液体現像剤は、シートの表層内に染み込み、第1画像及び第2画像の剥離が好適に抑制される。
【0008】
上記構成において、前記第1摺擦ユニット及び前記第2摺擦ユニットのうち少なくとも一方は、前記画像を摺擦する複数の摺擦要素を含むことが好ましい(請求項2)。
【0009】
上記構成によれば、第1摺擦ユニット及び第2摺擦ユニットのうち少なくとも一方は、画像を摺擦する複数の摺擦要素を含むので、画像を形成する液体現像剤は、シートの表層内に染み込みやすくなる。したがって、第1画像及び第2画像は剥離しにくくなる。
【0010】
上記構成において、前記第2摺擦ユニットの前記摺擦要素は、前記第1摺擦ユニットの前記摺擦要素よりも多いことが好ましい(請求項3)。
【0011】
上記構成によれば、第2転写ユニットは、第1転写ユニットの後に、第2画像をシートに転写する。したがって、第2摺擦ユニットによって摺擦される画像の液体現像剤の量は、第1摺擦ユニットによって摺擦される画像の液体現像剤よりも多い。第2摺擦ユニットの摺擦要素は、第1摺擦ユニットの摺擦要素よりも多いので、比較的多くの量の液体現像剤を用いて形成された画像を適切に摺擦することができる。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0012】
上記構成において、前記搬送要素は、前記シートを第1速度で搬送し、前記画像形成部は、前記摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、前記駆動機構は、前記接触面を、前記第1方向に、前記第1速度と異なる第2速度で移動させることが好ましい(請求項4)。
【0013】
上記構成によれば、搬送要素は、シートを第1速度で搬送する。画像形成部は、摺擦要素を動作させるため駆動機構を含む。摺擦要素は、シート上の画像に接触する接触面を含む。駆動機構は、接触面を、第1方向に、第1速度と異なる第2速度で移動させるので、シート上の画像は、適切に摺擦される。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0014】
上記構成において、前記画像形成部は、前記摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、該駆動機構は、前記接触面を前記第1方向とは異なる第2方向に移動させることが好ましい(請求項5)。
【0015】
上記構成によれば、画像形成部は、摺擦要素を動作させるため駆動機構を含む。摺擦要素は、シート上の画像に接触する接触面を含む。駆動機構は、接触面を第1方向とは異なる第2方向に移動させるので、シート上の画像は、適切に摺擦される。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0016】
上記構成において、前記接触面は、少なくとも部分的に不織布で覆われた面であることが好ましい(請求項6)。
【0017】
上記構成によれば、接触面は、少なくとも部分的に不織布で覆われた面であるので、シート上の画像は、適切に摺擦される。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0018】
上記構成において、前記接触面は、少なくとも部分的にブラシが植設された面であることが好ましい(請求項7)。
【0019】
上記構成によれば、接触面は、少なくとも部分的にブラシが植設された面であるので、シート上の画像は、適切に摺擦される。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0020】
上記構成において、前記第1摺擦ユニットは、前記第1画像を摺擦する第1摺擦要素を含み、前記第2摺擦ユニットは、前記第2画像を摺擦する第2摺擦要素を含み、前記画像形成部は、前記第1摺擦要素及び前記第2摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、前記第1摺擦要素は、前記第1画像に接触する第1接触面を含み、前記第2摺擦要素は、前記第2画像に接触する第2接触面を含み、前記駆動機構は、前記第2接触面を、前記第1接触面よりも高い速度で移動させることが好ましい(請求項8)。
【0021】
上記構成によれば、第1摺擦ユニットは、第1画像を摺擦する第1摺擦要素を含む。第2摺擦ユニットは、第2画像を摺擦する第2摺擦要素を含む。画像形成装置の駆動機構は、第1摺擦要素及び第2摺擦要素を動作させる。第1摺擦要素は、第1画像に接触する第1接触面を含む。第2摺擦要素は、第2画像に接触する第2接触面を含む。第2転写ユニットは、第1転写ユニットの後に、第2画像をシートに転写する。したがって、第2摺擦ユニットによって摺擦される画像の液体現像剤の量は、第1摺擦ユニットによって摺擦される画像の液体現像剤よりも多い。駆動機構は、第2接触面を、第1接触面よりも高い速度で移動させるので、比較的多くの量の液体現像剤を用いて形成された画像を適切に摺擦することができる。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0022】
上記構成において、前記液体現像剤は、前記画像を発色させるための着色粒子と、該着色粒子が分散されるキャリア液と、該キャリア液中に溶解又は膨潤された高分子化合物と、を含むことが好ましい(請求項9)。
【0023】
上記構成によれば、画像を発色させるための着色粒子が分散されたキャリア溶液中の高分子化合物は、画像表面に被膜を形成する。この結果、画像の耐擦過性が向上する。かくして、摺擦要素と画像との間の摩擦に起因する画像の損傷が適切に抑制される。
【0024】
上記構成において、前記キャリア液は、油分を含み、前記画像形成部は、前記液体現像剤が塗布され、前記第1画像又は前記第2画像が形成される形成面を含む画像形成要素を含み、前記第1転写ユニット及び前記第2転写ユニットのうち少なくとも一方は、該画像形成要素から前記搬送要素上の前記シートへ前記第1画像又は前記第2画像を受け渡す中継要素と、該中継要素上の前記第1画像又は前記第2画像から前記油分を除去する除去要素と、を含むことが好ましい(請求項10)。
【0025】
上記構成によれば、画像形成部の画像形成要素は、液体現像剤が塗布される形成面を含む。形成面には、第1画像又は第2画像が形成される。中継要素は、画像形成要素から搬送要素上のシートへ第1画像又は第2画像を受け渡す。画像形成部の除去要素は、中継要素上の第1画像又は第2画像から油分を除去するので、第1画像又は第2画像は、シートに定着されやすくなる。
【0026】
上記構成において、前記着色粒子は、第1色相の第1着色粒子と、該第1色相とは異なる第2色相の第2着色粒子と、を含み、前記第1画像は、前記第1着色粒子を用いて形成され、前記第2画像は、前記第2着色粒子を用いて形成され、前記第2転写ユニットは、前記第1画像に前記第2画像を重畳させ、前記シート上に前記画像を形成することが好ましい(請求項11)。
【0027】
上記構成によれば、着色粒子は、第1色相の第1着色粒子と、第1色相とは異なる第2色相の第2着色粒子と、を含む。第1画像は、第1着色粒子を用いて形成される。第2画像は、第2着色粒子を用いて形成される。第2転写ユニットは、第1画像に第2画像を重畳させ、シート上に画像を形成するので、複数の色相成分を有する画像が形成される。
【発明の効果】
【0028】
上述の如く、本発明に係る画像形成装置は、シートからの画像の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】液体現像剤を用いた転写工程の原理を示す概略図である。
【図2】図1に示される転写工程後の定着工程の原理の概略図である。
【図3】擦り時間と定着率との関係を概略的に示すグラフである。
【図4】様々な不織布材料に対するスクリーニング試験の結果を概略的に示すグラフである。
【図5】第1実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。
【図6】図5に示されるカラープリンターの画像形成ユニットの概略図である。
【図7】図6に示される画像形成ユニットの摺擦ローラーを駆動するための駆動機構の概略図である。
【図8】図7に示される摺擦ローラーの概略図である。
【図9】図7に示される摺擦ローラーの概略図である。
【図10】図5に示されるカラープリンターの摺擦ローラーの概略図である。
【図11】第2実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。
【図12】第3実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。
【図13】第4実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。
【図14】図13に示されるカラープリンターの画像形成ユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を用いて、第1実施形態に係る画像形成装置が説明される。尚、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とするものであり、画像形成装置の原理を何ら限定するものではない。
【0031】
<定着原理>
図1は、液体現像剤を用いた画像の転写工程を概略的に説明する図である。図1(a)乃至図1(c)の順に、転写工程が進行する。図1を用いて、シートへの画像の転写並びに転写後の画像が説明される。
【0032】
図1(a)は、像担持体100からシートSへ転写される画像を形成する液体現像剤の液層Lの概略的断面を示す。像担持体100は、例えば、液体現像剤を用いて画像を形成する画像形成装置(例えば、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置やこれらの機能を備える複合機)が備える転写ローラーであってもよい。像担持体100は、画像を形成する液体現像剤の液層LをシートSへの転写位置まで搬送する。
【0033】
転写位置において、シートSは、像担持体100上の液層Lに接触する。画像を形成する液体現像剤の液層Lは、キャリア液Cと、画像を発色させるための着色粒子Pと、キャリア液C中に溶解又は膨潤された高分子化合物Rとを含む。キャリア液C中に分散された着色粒子Pは、シートSに静電気的に誘引される。かくして、着色粒子Pは、シートS上に付着し、画像を形成する。尚、着色粒子PのシートSへの誘引は、例えば、シートSを横切る電界によって達成される。
【0034】
図1(b)は、シートSに浸透するキャリア液Cを概略的に示す。比較的低い動粘度を有するキャリア液Cは、シートSに浸透し、浸透層PLをシートSの表層に形成する。シートSへのキャリア液Cの浸透に伴って、液体現像剤の液層L中の高分子化合物Rの濃度は増大する。
【0035】
図1(c)に示される如く、キャリア液Cが更にシートSに浸透すると、液層L中の高分子化合物Rは析出する。上述の如く、着色粒子PのシートSへの静電気的付着は、高分子化合物Rの析出より先に発生する。したがって、シートSの表面に析出した高分子化合物Rは、シートS上で画像を形成する着色粒子Pの層上に積層された被膜層を形成する。
【0036】
図2は、転写工程後に行われる定着工程を概略的に説明する図である。図2(a)は、定着工程を概略的に示す。図2(b)は、定着工程後のシートSの概略的な断面図である。図1及び図2を用いて、定着工程の原理が説明される。
【0037】
転写工程後、キャリア液Cは、シートSに略浸透され、シートS上に高分子化合物Rと、着色粒子Pとを含む画像層Iが形成される。転写工程において、画像層Iには、像担持体100からシートSへ液層L(画像)を転写する際の圧力及び電界を除いて、物理的な力はほとんど加えられない。このため、定着工程前において、画像層IとシートSとの間の物理的な結合は、比較的弱く、後述されるテープを用いた剥離試験を行うと、画像層Iの顕著な剥離が生ずることとなる。
【0038】
図2(a)には、摺擦板200が示される。摺擦板200は、例えば、略直方体形状の基板210と、基板210の表面を被覆する不織布220とを備える。本実施形態において、不織布220として、ポリプロピレン不織布が用いられる。代替的に、0.10の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトAと称される)、0.13の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトBと称される)、ポリエステルフェルト、ポリエチレンテレフタレート製のフェルト(以下、PETフェルトと称される)、ポリアミドフェルトや羊毛フェルトが不織布220として用いられてもよい。
【0039】
シートS上に形成された画像層I上に載置された摺擦板200は、シートSの上面に沿って画像層I上を移動する。この結果、図2(b)に示される如く、画像層Iの成分(着色粒子P及び/又は高分子化合物R)の一部は、シートSの表層内に食い込む(アンカー効果)。かくして、画像層IとシートSとの物理的な結合が強化される。
【0040】
上述の如く、画像層Iの上面は、高分子化合物Rに覆われる。したがって、画像を発色させる着色粒子Pは、高分子化合物Rによって、摺擦板200の摺擦動作から適切に保護される。かくして、摺擦板200の摺擦に起因する画像の損傷は適切に抑制される。
【0041】
<試験例>
図3は、摺擦板200が画像層Iに摺擦移動しているときの期間(擦り時間)と画像層Iの定着率との関係を概略的に示すグラフである。図2及び図3を用いて、擦り時間と定着率との関係が説明される。
【0042】
図3のグラフの横軸に示される擦り時間は、画像層I中の所定の領域が、往復移動している摺擦板200に接触している間の時間長さを表す。
【0043】
図3のグラフの縦軸に示される定着率FRは、以下に示される数式を用いて算出されている。ここで、D0は、画像層I上に帖着されたテープを剥離する前の画像の濃度を表し、D1は、画像層I上に帖着されたテープを剥離した後の画像の濃度を表す。
【0044】
【数1】
【0045】
定着率FRの評価に用いられたテープは、3M社製のメンディングテープであった。メンディングテープは、専用の治具を用いて画像層I上に帖着された。したがって、図3のグラフに表されるデータ点間において、テストサンプル中の画像層Iとメンディングテープとの帖着強度は略一定に保たれている。また、テストサンプル中の画像層Iに打擲されたメンディングテープは、専用の治具を用いて、略一定の剥離角度及び略一定の剥離速度で、画像層Iから剥離された。
【0046】
テストサンプルの画像の濃度は、サカタインクスエンジニアリング株式会社製の分光光度計スペクトロアイを用いて測定された。
【0047】
図3に示される如く、1秒以上、画像層Iが摺擦されると、画像層Iは比較的高い定着率FRを達成することが分かる。また、1秒未満の擦り時間では、画像層Iの定着率FRは急激な増加を示すことが分かる。尚、摺擦板200の重量は、好ましくは、画像層Iの表面の傷の発生が抑制されるように適切に定められる。
【0048】
図4は、様々な種類の不織布220と、定着率FRとの関係を概略的に示すグラフである。図2乃至図4を用いて、不織布220の種類と定着率FRとの関係が説明される。
【0049】
図4の横軸は、不織布220の種類を示す。本試験において、PTFEフェルトA、PTFEフェルトB、ポリプロピレン不織布、ポリエステルフェルト、PETフェルト、ポリアミドフェルト及び羊毛フェルトが示されている。
【0050】
図4の左側の縦軸は、上述の定着率FRを示す。定着率FRは、図4の棒グラフによって表される。尚、本試験で用いられた上述の全ての種類の不織布220は、1秒を超える擦り時間において、比較的高い定着率FRを達成した。したがって、比較的有利な種類の不織布220のスクリーニングのために、図4に示される定着率FRは、0.625秒の擦り時間の下、算出されている。
【0051】
図4の右側の縦軸は、図4中の点によって表される各種類の不織布220の動摩擦係数を示す。低い動摩擦係数は、シートSの搬送への影響の低減及び画像層Iへの損傷の低減の点から有利である。
【0052】
図4に示される如く、PTFEフェルトAは、最も低い動摩擦係数を有するとともに最も高い定着率FRを達成している。したがって、テストされた種類の不織布220のうちPTFEフェルトAが最も有利であるということが分かる。尚、不織布220として、図4に示されていない不織布材料が用いられてもよい。好ましくは、0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料が不織布220として用いられる。0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料は、シートSの搬送への影響及び画像層Iへの損傷を好適に抑制することができる。
【0053】
<画像形成装置>
図1乃至図4に関連して説明された定着原理は、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置、これらの機能を有する複合機やシートS上に画像を形成することができる他の装置の定着工程に好適に適用される。
【0054】
図5は、本実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。図5を用いて、カラープリンターが説明される。
【0055】
カラープリンター300は、シートに画像を形成するための様々な装置を収容する筐体310と、筐体310に隣接して配設された給紙装置320と、を備える。カラープリンター300は、筐体310内に収容されたカセット321乃至323を更に備える。給紙装置320並びにカセット321乃至323それぞれには、シートが収容される。使用者は、カラープリンター300に電気的に接続されたパーソナルコンピューター(図示せず)やカラープリンター300の操作パネル(図示せず)を操作し、給紙装置320並びにカセット321乃至323のうち1つを給紙源として選択することができる。以下の説明において、給紙装置320が給紙源として選択されている。尚、給紙装置320並びにカセット321乃至323の構造として、シートを収容並びに送出することができる既知の装置が用いられてもよい。
【0056】
筐体310は、給紙装置320に隣接する右壁311と、右壁311とは反対側の左壁312と、右壁311と左壁312との間で筐体310の上面を形成する天壁313と、天壁313とは反対側の底壁314と、を含む。カラープリンター300は、右壁311の近くに配設されたレジストローラー対331と、左壁312の近くに配設された第1排出ローラー対332と、レジストローラー対331と第1排出ローラー対332との間に配設された搬送装置330と、を更に備える。給紙装置320は、レジストローラー対331に向けてシートを送り込む。その後、レジストローラー対331は、搬送装置330にシートを送り出す。
【0057】
搬送装置330は、レジストローラー対331の近くに配設された右ローラー333と、第1排出ローラー対332の近くに配設された左ローラー334と、右ローラー333と左ローラー334との間で伸びる搬送ベルト335(無端ベルト)と、を含む。右ローラー333及び左ローラー334は、搬送ベルト335の上面が左方へ移動するように回転する。レジストローラー対331から送り出されたシートは、搬送ベルト335の上面に乗り、その後、第1排出ローラー対332に向けて搬送される。搬送ベルト335によって搬送されるシート上に画像が形成される。第1排出ローラー対332に到達したシートは、左壁312から排出される。本実施形態において、搬送装置330は、搬送要素として例示される。また、左方へのシートの搬送方向は、第1方向として例示される。
【0058】
天壁313は、画像形成後のシートを蓄積できるように、傾斜面315を含む。カラープリンター300は、傾斜面315に向けてシートを排出するように配設された第2排出ローラー対336と、搬送装置330の出口部から第2排出ローラー対336に向かう経路に沿って配設された搬送ローラー対337と、を更に備える。使用者は、カラープリンター300に電気的に接続されたパーソナルコンピューター(図示せず)やカラープリンター300の操作パネル(図示せず)を操作し、第1排出ローラー対332又は第2排出ローラー対336を排出装置として指定することができる。したがって、搬送装置330上で画像形成処理を受けたシートは、第1排出ローラー対332又は第2排出ローラー対336によって筐体310から排出される。
【0059】
カラープリンター300は、液体現像剤を用いて、シートに画像を形成するための画像形成部340を更に備える。画像形成部340は、マゼンタ色の画像を形成するための画像形成ユニット341M、シアン色の画像を形成するための画像形成ユニット341C、イエロー色の画像を形成するための画像形成ユニット341Y及びブラック色の画像を形成するための画像形成ユニット341Bkを含む。搬送装置330上の画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkは、右ローラー333から左ローラー334に向かう方向に整列される。したがって、マゼンタ色の画像、シアン色の画像、イエロー色の画像及びブラック色の画像は、順次、シートに形成される。マゼンタ色の画像、シアン色の画像、イエロー色の画像及びブラック色の画像が、シート上で重ね合わせられる結果、フルカラーの画像がシート上に形成される。本実施形態において、マゼンタ色の画像、シアン色の画像及びイエロー色の画像のうち1つは、第1画像として例示される。また、第1画像として例示された画像の後にシートに形成される画像は、第2画像として例示される。例えば、マゼンタ色の画像が第1画像として例示されるならば、シアン色の画像、イエロー色の画像及びブラック色の画像のうち1つは、第2画像として例示される。
【0060】
図6は、画像形成ユニットの概略図である。図6を用いて、画像形成ユニットが説明される。
【0061】
図6に示される画像形成ユニット341は、図5に示される画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkのうち1つを代表する。したがって、図6に示される画像形成ユニット341の構造に関連する説明は、図5に示される画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkそれぞれに適用される。
【0062】
画像形成ユニット341は、感光体ドラム342と、感光体ドラム342の周面を一様に帯電させる第1帯電器343と、感光体ドラム342の周面にレーザ光を照射する露光装置344と、を備える。使用者が、例えば、パーソナルコンピューター(図示せず)から画像データを出力すると、露光装置344は、第1帯電器343によって帯電された感光体ドラム342の周面上で、画像データに従って、レーザ光を走査する。この結果、感光体ドラム342の周面には、静電潜像が形成される。
【0063】
画像形成ユニット341は、感光体ドラム342の周面に液体現像剤を塗布する現像装置350を備える。現像装置350は、液体現像剤を貯留する貯留部351と、貯留部351内の液体現像剤中に部分的に沈められた汲上ローラー352と、汲上ローラー352の上に配設された供給ローラー353と、を備える。液体現像中で回転する汲上ローラー352は、貯留部351中の液体現像剤を汲み上げる。液体現像剤は、汲上ローラー352の周面に乗って、供給ローラー353に向かって移動する。その後、液体現像剤は、汲上ローラー352に近接した供給ローラー353の周面に乗り移る。
【0064】
現像装置350は、供給ローラー353の周面に近接した端部を有するドクターブレード354と、感光体ドラム342及び供給ローラー353の間に配設された現像ローラー355と、を更に備える。ドクターブレード354は、供給ローラー353の周面上の液体現像剤の層の厚さを略一定にする。その後、液体現像剤は、現像ローラー355の周面に乗り移る。したがって、略一定量の液体現像剤が現像ローラー355へ供給される。
【0065】
現像装置350は、第2帯電器356を更に備える。第2帯電器356は、液体現像剤中のトナーが感光体ドラム342に適切に乗り移るように、液体現像剤中のトナーを帯電させる。その後、現像ローラー355の回転に伴って、液体現像剤は、感光体ドラム342に向かい、感光体ドラム342の周面に乗り移る。この結果、感光体ドラム342の周面には、画像が形成される。本実施形態において、感光体ドラム342の周面は、形成面として例示される。また、感光体ドラム342は、画像形成要素として例示される。
【0066】
現像装置350は、クリーニングローラー357及びクリーニングブレード358を更に備える。感光体ドラム342への液体現像剤の塗布の後、クリーニングローラー357及びクリーニングブレード358は、現像ローラー355の周面に残る液体現像剤を除去する。
【0067】
画像形成ユニット341は、搬送ベルト335上のシートに画像を転写する転写ユニット360を更に備える。本実施形態において、第1画像として例示された画像をシートに転写する転写ユニット360は、第1転写ユニットとして例示される。また、第2画像として例示された画像をシートに転写する転写ユニット360は、第2転写ユニットとして例示される。
【0068】
転写ユニット360は、搬送ベルト335と感光体ドラム342との間に配設された中間転写ローラー361と、中間転写ローラー361の下方に配設されたバックアップローラー362と、を備える。バックアップローラー362は、中間転写ローラー361とともに搬送ベルト335を挟む。
【0069】
感光体ドラム342の周面に形成された画像は、感光体ドラム342の回転に伴って、中間転写ローラー361に向かって移動する。その後、画像は、中間転写ローラー361の周面に乗り移る。搬送ベルト335上のシートが、中間転写ローラー361とバックアップローラー362との間を通過する間、中間転写ローラー361上の画像は、シートへ乗り移る。かくして、中間転写ローラー361は、画像を、感光体ドラム342から搬送ベルト335上のシートへ受け渡すことができる。中間転写ローラー361は、図1に関連して説明された像担持体100に対応する。本実施形態において、中間転写ローラー361は、中継要素として例示される。
【0070】
転写ユニット360は、シートに乗り移った画像を摺擦するための摺擦ユニット365を更に備える。本実施形態において、第1画像として例示された画像を摺擦する摺擦ユニット365は、第1摺擦ユニットとして例示される。また、第2画像として例示された画像を摺擦する摺擦ユニット365は、第2摺擦ユニットとして例示される。
【0071】
摺擦ユニット365は、シート上の画像を摺擦する摺擦ローラー366と、摺擦ローラー366の下方に配設された保持ローラー367と、を含む。保持ローラー367は、摺擦ローラー366が画像を摺擦している間、搬送ベルト335及び搬送ベルト335上のシートを安定的に保持する。摺擦ローラー366の周面は、例えば、図4に関連して説明された様々な不織布の群から選択された少なくとも1つの不織布で、少なくとも部分的に覆われてもよい。代替的に、摺擦ローラー366の周面には、少なくとも部分的に、シート上の画像を摺擦するためのブラシが植設されてもよい。摺擦ローラー366は、図1に関連して説明された摺擦板200に対応する。上述の定着原理に従って、摺擦ローラー366の周面がシート上の画像を擦るので、画像はシート上に適切に定着される。本実施形態において、摺擦ローラー366は、摺擦要素として例示される。尚、第1摺擦ユニットとして例示された摺擦ユニット365の摺擦ローラー366は、第1摺擦要素として例示される。また、第2摺擦ユニットとして例示された摺擦ユニット365の摺擦ローラー366は、第2摺擦要素として例示される。摺擦ユニット365の動作は、更に後述される。
【0072】
画像形成ユニット341は、中間転写ローラー361へ画像を転写した後の感光体ドラム342の周面に対して、除電処理を施与する除電器345と、除電処理後の感光体ドラム342の周面に残存する液体現像剤を除去するクリーニング装置346と、を更に備える。クリーニング装置346は、クリーニングローラー347と、クリーニングブレード348と、を含む。クリーニングローラー347及びクリーニングブレード348は、感光体ドラム342の周面に残る液体現像剤を適切に除去する。
【0073】
図7は、摺擦ローラー366を駆動するための駆動機構の概略図である。図6及び図7を用いて、摺擦ローラー366の駆動が更に説明される。
【0074】
画像形成ユニット341は、摺擦ローラー366を駆動するための駆動機構390を更に備える。駆動機構390は、摺擦ローラー366を回転させるための駆動力を発生させる駆動モーター391と、駆動モーター391の駆動力を伝達するための第1ギア392と、摺擦ローラー366のジャーナル369に取り付けられた第2ギア393と、を含む。駆動力は、駆動モーター391の回転シャフトに取り付けられた第1ギア392から第1ギア392と噛み合う第2ギア393へ伝達される。この結果、摺擦ローラー366は回転する。摺擦ローラー366の回転数は、駆動モーター391の回転数の設定に応じて、適切に調整される。
【0075】
図8は、シートS上の画像を摺擦する摺擦ローラー366を概略的に示す。図6乃至図8を用いて、摺擦ローラー366の動作が説明される。
【0076】
摺擦ローラー366が、搬送ベルト335上のシートSに押しつけられると、摺擦ローラー366の周面には、シートS上の画像に接触する略平坦な接触面359が形成される。搬送ベルト335がシートSを第1速度V1で搬送している間、接触面359が第2速度V2で左方に移動するように摺擦ローラー366は回転する。第2速度V2は、第1速度V1より低く設定されてもよい。代替的に、第2速度V2は、第1速度V1より大きく設定されてもよい。尚、第2速度V2の設定は、駆動モーター391の回転速度の調整によって達成される。第2速度V2が第1速度V1と相違するならば、摺擦ローラー366とシートSとの間の相対速度に応じて、シートS上の画像は適切に摺擦される。
【0077】
図9は、シートS上の画像を摺擦する摺擦ローラー366を概略的に示す。図6、図7及び図9を用いて、摺擦ローラー366の他の動作が説明される。
【0078】
接触面359がシートSの搬送方向とは異なる方向に移動するように、駆動モーター391は、摺擦ローラー366を回転させてもよい。図9に示される接触面359は、右方へ移動している。この結果、シートS上の画像は適切に摺擦される。接触面359の移動方向がシートSの移動方向と異なるならば、第2速度V2は、任意の値に設定されてもよい。本実施形態において、図9に示される接触面359の移動方向(右方)は、第2方向として例示される。
【0079】
図10は、シートS上の画像を摺擦する摺擦ローラー366を概略的に示す。図5乃至図7及び図10を用いて、摺擦ローラー366の他の動作が説明される。
【0080】
図10には、画像形成ユニット341Mの摺擦ローラー366M及び画像形成ユニット341Cの摺擦ローラー366Cが示されている。摺擦ローラー366M,366Cはともに、図7に関連した駆動機構390によって回転されてもよい。
【0081】
摺擦ローラー366M,366Cの周面には、接触面359M,359Cがそれぞれ形成される。接触面359M,359Cは、シートSの移動速度(第1速度V1)よりも高い速度で右方に移動してもよい。図10において、接触面359Mの速度は、ベクトル「VM」で示されている。また、接触面359Cの速度は、ベクトル「VC」で示されている。
【0082】
接触面359Cは、シートS上のシアン色の画像だけでなく、先行して形成されたマゼンタ色の画像も摺擦する。接触面359Cは、比較的多い量の液体現像剤を摺擦する。図10に示される如く、接触面359Cの速度VCは、接触面359Mの速度VMより高く設定される。この結果、接触面359Cは、増加された液体現像剤から形成された画像に対して十分な摺擦を行うことができる。
【0083】
図5には、上述の摺擦ローラー366M,366Cに加えて、画像形成ユニット341Yの摺擦ローラー366Y及び画像形成ユニット341Bkの摺擦ローラー366Bkが示されている。摺擦ローラー366M,366C,366Y,366Bkが、略同径であるならば、図7に関連して説明された駆動機構390は、摺擦ローラー366Yの回転数を摺擦ローラー366Cの回転数より大きくし、摺擦ローラー366Bkの回転数を摺擦ローラー366Yの回転数より大きくしてもよい。この結果、シートS上の液体現像剤の増加に併せて、摺擦量が増大される。かくして、画像はシートSに適切に定着される。
【0084】
図10に関連して説明された原理は、接触面359M,359Cの移動方向がシートSの移動方向と異なるときでも、同様に適用される。下流に配設された画像形成ユニットの摺擦ローラーのシートに対する相対速度が、上流の摺擦ローラの相対速度より大きく設定されるならば、図10に関連して説明された原理に基づき、画像の適切な定着が達成される。
【0085】
<液体現像剤>
液体現像剤は、上述の如く、電気絶縁性のキャリア液Cとキャリア液C中に分散された着色粒子Pとを含む。また、液体現像剤は高分子化合物Rを含有する。好ましくは、液体現像剤は、測定温度25℃において、30〜400mPa・sの粘度を有する。より好ましくは、液体現像剤の粘度(測定温度25℃)は、40〜300mPa・sであり、さらに好ましくは50〜250mPa・sである。
【0086】
<キャリア液>
液体キャリアの役割を果たす電気絶縁性のキャリア液Cは、液体現像剤の電気絶縁性を高める。電気絶縁性のキャリア液Cとしては、例えば、25℃における体積抵抗が1012Ω・cm以上(換言すれば導電率が1.0pS/cm以下)の電気絶縁性有機溶剤が好ましい。さらに前記物性に加えて、後述の高分子化合物Rを溶解させることができるもの(高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの)が好ましく用いられる。
【0087】
また、液体現像剤全体の粘度(測定温度25℃)が30〜400mPa・sとなるように、キャリア液Cの粘度・種類・配合量を適宜調整・選択される。液体現像剤の粘度は、キャリア液Cとして用いられる有機溶剤と後述される高分子化合物Rとの組み合わせによっても左右される。したがって、所望の液体現像剤の粘度及び選択される高分子化合物Rの種類に合わせて有機溶剤の種類及び配合量が適宜決定される。
【0088】
このような電気絶縁性の有機溶剤としては、例えば、常温で液体の脂肪族炭化水素や植物油が挙げられる。
【0089】
脂肪族炭化水素としては、例えば、液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素又はそれらの混合物が好ましい。例えば、脂肪族炭化水素として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタンが用いられる。環境対応(VOC対策)の観点から、不揮発性の有機溶剤及び揮発性が相対的に低い有機溶剤(例えば、沸点が200℃以上のもの)が好ましく、例えば、炭素数が16以上の脂肪族炭化水素を比較的多く含む流動パラフィンが好ましく用いられる。
【0090】
また、植物油として、例えば、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)、植物油由来の脂肪酸エステル、大豆油、サフラワー油、ヒマシ油、アマニ油、桐油が挙げられる。なかでもトール油脂肪酸が好ましく用いられる。
【0091】
キャリア液Cとして、例えば、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−55」、「モレスコホワイトP−40」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−200」;ハリマ化成株式会社製のトール油脂肪酸「ハートール FA−1」、「ハートール FA−1P」、「ハートール FA−3」;カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」、「ベジソルCM」、「ベジソルMB」、「ベジソルPR」、植物油「桐油」;エクソンモービル社製の「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーK」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「アイソパーV」;コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」;日清オイリオ社製の植物油「大豆油白絞油 S」、「アマニ油」、「サフラワー油」;伊藤製油社製の植物油「ヒマシ油 LAV」、「ヒマシ油 工」が用いられてもよい。
【0092】
本実施形態では、高分子化合物Rがキャリア液Cに溶解する限り、キャリア液Cとして、高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの(高分子化合物Rの良溶媒)のみを用いてもよく、又は、高分子化合物Rの溶解度が相対的に低いもの(高分子化合物Rの貧溶媒)を混合して用いてもよい。尚、キャリア液Cの種類に応じて、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)は、過度に高くならないように適切に調整される。例えば、トール油脂肪酸といった植物性の油は、流動パラフィンのような脂肪族炭化水素と比べると、一般に、導電率が高い。したがって、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させるために、キャリア液Cとして上述の油類を含むときは、導電率の調整は、比較的慎重に行われることが好ましい。
【0093】
上述の油類の含有量が多いキャリア液Cは、高分子化合物Rの溶解度の点で有利である一方で、導電率の点で不利となる。油類の含有量が少ないキャリア液Cは、導電率の点で有利である一方で、高分子化合物Rの溶解度の点で不利となる。
【0094】
キャリア液C中の上述の油類の含有量は、液体現像剤中に含まれる高分子化合物Rの種類や含有量に依存する。好適な油類の含有量として、例えば、2〜80質量%、より好ましくは、5〜60質量%が挙げられる。2質量%未満では、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させることが困難となる。また、80質量%を超えると、キャリア液C全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くなる。過度に高い液体現像剤の導電率は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。
【0095】
本実施形態では、液体現像剤の導電率は、例えば、200pS/cm以下であることが好ましい。したがって、トール油脂肪酸といった上述の油類に高分子化合物Rを溶解させることにより得られた溶液(以下、「樹脂溶液」と称される)に高電気抵抗の脂肪族炭化水素を混合することにより、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)を例えば200pS/cm以下に調整することが好ましい。
【0096】
<着色粒子>
本実施形態では、着色粒子Pとして、顔料そのものが用いられる。顔料そのものを含む液体現像剤は、図1乃至図10に関連して説明された非加熱方式の定着工程を可能にする。この結果、熱エネルギや光エネルギをほとんど消費することなく、着色粒子Pとしての顔料が記録媒体に定着される。尚、上述の画像形成ユニット341Mに用いられる着色粒子Pは、マゼンタ色の色相を有する。上述の画像形成ユニット341Cに用いられる着色粒子Pは、シアン色の色相を有する。上述の画像形成ユニット341Yに用いられる着色粒子Pは、イエロー色の色相を有する。上述の画像形成ユニット341Bkに用いられる着色粒子Pは、ブラック色の色相を有する。本実施形態において、第1画像として例示された画像の形成に用いられる着色粒子Pは、第1着色粒子として例示される。また、第2画像として例示された画像の形成に用いられる着色粒子Pは、第2着色粒子として例示される。
【0097】
本実施形態における顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料が特に限定することなく用いられる。
【0098】
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラックといったアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキが挙げられる。
【0099】
液体現像剤中の顔料の含有量は、1〜30質量%が好ましい。より好ましくは、3質量%以上であり、さらに好ましくは、5質量%以上である。また、より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0100】
液体現像剤中の顔料の平均粒子径すなわち体積基準の中位径(D50)は、0.1〜1.0μmが好ましい。0.1μm未満の平均粒子径を有する顔料は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。1.0μmを超える平均粒子径を有する顔料は、例えば、定着性の低下を引き起こす。ここで、体積基準の中位径(D50)とは、一般に、粒度分布が求められている1群の粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたときの累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。
【0101】
<分散安定剤>
本実施形態に係る液体現像剤は、液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有していてもよい。本実施形態で使用し得る分散安定剤としては、例えば、ビックケミー社製の「BYK−116」が好適である。その他、ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」や、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」、「Antaron(登録商標)V−220」も好ましく用いられ得る。
【0102】
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は、1〜10質量%程度、好ましくは、2〜6質量%程度である。
【0103】
<高分子化合物>
本実施形態に係る液体現像剤に含有される高分子化合物Rは、有機高分子化合物である。キャリア液Cに溶解性を有する有機高分子化合物として、液体現像剤の粘度を上げ、且つ、画像形成におけるにじみ発生を抑制できる材料が選択される。有機高分子化合物として、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラールが例示される。好ましくは、有機高分子化合物として、スチレン系エラストマーが用いられる。高分子化合物Rとしては、単一種の有機高分子化合物が用いられてもよいし、或いは、複数種の有機高分子化合物が用いられてもよい。
【0104】
なお、本実施形態に係る液体現像剤では、有機高分子化合物は、キャリア液Cに溶解される。キャリア液Cに溶解している有機高分子化合物は、ゲルの状態であってもよい。有機高分子化合物の種類や分子量によっては、キャリア液C中で相互に絡み合ったゲル状の有機高分子化合物が得られる。ゲル状の有機高分子化合物は、比較的低い流動性を有する。例えば、有機高分子化合物の濃度が高い場合、有機高分子化合物とキャリア液Cとの親和性が低い場合、或いは、気温が低い場合には、ゲル状の有機高分子化合物が得られやすい。一方、キャリア液C中での相互の絡み合いが少ない有機高分子化合物は、比較的流動性が高い溶液となる。
【0105】
液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量は、有機高分子化合物の種類応じて、適切に決定される。有機高分子化合物の含有量は、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。
【0106】
有機高分子化合物の含有量が1質量%未満であると、液体現像剤における十分な粘度が得られず、画像形成におけるにじみ発生が十分に抑制できない可能性がある。また、有機高分子化合物の含有量が10質量%を超えると、シートSの表面上に留まる有機高分子化合物による被膜の量が多くなり過ぎ、被膜の乾燥性が過度に低下し、被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり、画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。
【0107】
以下、本実施形態において好適に使用できる有機高分子化合物が更に説明される。
【0108】
(環状オレフィン共重合体)
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィン骨格を主鎖に有し、環境負荷物質を含まない、非晶性で熱可塑性のオレフィン系樹脂であり、透明性、軽量性、低吸水性等に優れる。本実施形態においては、環状オレフィン共重合体は、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する有機高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。
【0109】
本実施形態で使用可能な環状オレフィン共重合体として、例えば、(1)環状オレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、(2)環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物、(3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物が挙げられる。
【0110】
上述の環状オレフィンとして、以下の物質が例示される。
(a)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;
(b)シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンといった1環の環状オレフィン;
(c)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった2環の環状オレフィン;
(d)トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン。
(e)トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンとの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;
(f)5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環の環状オレフィン。
(g)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環の環状オレフィン;
(h)8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;
(i)テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセン);
(j)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;
(k)シクロペンタジエンの4量体といった多環の環状オレフィン。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
上述のα−オレフィンとしては、炭素数が2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンが好ましい。α−オレフィンとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが例示される。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
本実施形態においては、環状オレフィンの重合方法、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法、及び得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0113】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体の構造には、格別な制限はない。環状オレフィン共重合体の構造は、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0114】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体としては、例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体、又は、テトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体が好ましく用いられる。環状オレフィン共重合体として、特に、ノルボルネンとエチレンとの共重合体がより好ましい。共重合体中のノルボルネンの含有率は、60〜82質量%が好ましく、60〜79質量%がより好ましく、60〜76質量%がさらに好ましく、60〜65質量%が一層好ましい。ノルボルネン含有率が60質量%未満であると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が低くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜の造膜性が低下する可能性がある。ノルボルネン含有率が82質量%を超えると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が高くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する可能性がある。また、キャリア液Cへの環状オレフィン共重合体の溶解度が過度に低くなる可能性がある。
【0115】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体として、市販されているものが使用されてもよい。例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体として、トパス・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製の「TOPAS(登録商標)TM」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)TB」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)8007」(ノルボルネン含有率:約65質量%)、「TOPAS(登録商標)5013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6015」(ノルボルネン含有率:約79質量%)、「TOPAS(登録商標)6017」(ノルボルネン含有率:約82質量%)が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0116】
(スチレン系エラストマー)
本実施形態で使用できるスチレン系エラストマーとしては、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。スチレン系エラストマーとして、例えば、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体が挙げられる。ブロック共重合体として、例えば、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックをAとし、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物からなる重合体ブロックをBとしたときに、化学式1で表される構造を有するブロック共重合体が挙げられる。
【0117】
【化1】
【0118】
上述のブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンが挙げられる。
【0119】
重合体ブロックAは、上述の芳香族ビニル化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、スチレン及び/又はα−メチルスチレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0120】
上述のブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物として、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンが挙げられる。
【0121】
上述のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物として、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。
【0122】
重合体ブロックBは、上述のオレフィン系化合物及び上述の共役ジエン化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、ブタジエン及び/又はイソプレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0123】
上述のブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブテン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体が挙げられる。
【0124】
本実施形態で使用されるスチレン系エラストマーとして、重合体ブロックA及び重合体ブロックBが化学式2で表される構造を有するスチレン−ブタジエン系エラストマー(SBS)が好ましい。
【0125】
【化2】
【0126】
スチレン−ブタジエン系エラストマーは、スチレンモノマーと、共役ジエン化合物であるブタジエンとを共重合させることにより得られる。好ましいスチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレンが例示される。
【0127】
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布において、数平均分子量Mnは、好ましくは、1,000〜100,000の範囲内であり(化学式1参照)、より好ましくは、2,000〜50,000の範囲内である。また、重量平均分子量Mwは、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲内であり、より好ましくは、10,000〜500,000の範囲内である。その場合に、重量平均分子量Mwが2,000〜200,000の範囲内、好ましくは3,000〜150,000の範囲内に、少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。
【0128】
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の比の値は、好ましくは、3.0以下であり、より好ましくは、2.0以下である。
【0129】
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーにおけるスチレン含有量(重合体ブロックAの含有量)は、好ましくは、5〜75質量%の範囲内であり(化学式2参照)、より好ましくは、10〜65質量%の範囲内である。スチレン含有量が5質量%未満であると、スチレン系エラストマーの被膜のガラス転移温度が低くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜の造膜性が低下する傾向となる。スチレン含有量が75質量%を超えると、スチレン系エラストマーの被膜の軟化点が高くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する傾向となる。
【0130】
本実施形態において、スチレン系エラストマーとして、市販されているものを使用することができる。例えば、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311、シェル社製の「クレイトン」、旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)」T411、T413、T437や「タフプレン(登録商標)」A、315P 等、JSR社製の「JSR TR1086」、「JSR TR2000」、「JSR TR2250」、「JSR TR2827」;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物として、JSR社製の「ダイナロン」6200P、4600P、1320P 等;スチレン−エチレン共重合体として、ダウ・ケミカル社製の「インデックス」等;組成物として、アロン化成社製の「アロンAR」、三菱化学社製の「ラバロン」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311はスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である。
【0131】
(セルロースエーテル)
セルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子である。置換率は、45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が、例えば、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい。セルロースエーテルの被膜は、強靭性並びに熱安定性に優れている。
【0132】
本実施形態で使用可能なセルロースエーテルとして、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースといったアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースといったヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースといったヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースといったカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースといったカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース;が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、アルキルセルロースが好ましく、アルキルセルロースのうちでも、エチルセルロースが好ましい。
【0133】
本実施形態においては、セルロースエーテルとして、市販されているものを使用することができる。例えば、エチルセルロースとして、日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」、「エトセル(登録商標)STD7」、「エトセル(登録商標)STD10」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0134】
(ポリビニルブチラール)
本実施形態において使用できるポリビニルブチラール(ブチラール樹脂:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール)は、化学式3に示すように、水酸基を有し、親水性のビニルアルコール単位と、ブチラール基を有し、疎水性のビニルアセタール単位と、アセチル基を有し、ビニルアルコール単位とビニルアセタール単位との中間の性質の酢酸ビニル単位との共重合体である。本実施形態に係る液体現像剤においては、ブチラール化度(親水性部と疎水性部との割合を定めたもの)が60〜85mol%のポリビニルブチラールが被膜形成能(造膜性)に優れる点で好ましい。ポリビニルブチラールは、非極性溶剤に対して溶解性を示すビニルアセタール単位と、紙等の記録媒体に対して結着性を向上させるビニルアルコール単位とを有するため、キャリア液C及び記録媒体の両方に対して高い親和性を有する。
【0135】
【化3】
【0136】
本実施形態で使用し得るポリビニルブチラールとしては、特に限定されない。ポリビニルブチラールとして、例えば、ヘキスト社製の「Mowital(登録商標)」B20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H;積水化学工業社製の「エスレック(登録商標)」BL−1(ブチラール化度:63±3mol%)、BL-2(同:63±3mol%)、BL−S(同:70mol%以上)、BL−L、BH−3(同:65±3mol%)、BM−1(同:65±3mol%)、BM-2(同:68±3mol%)、BM−5(同:63±3mol%)、BM−S;電気化学工業社製の「デンカブチラール」#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−Cが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0137】
(製造方法)
本実施形態に係る液体現像剤は、キャリア液C、顔料、有機高分子化合物、及び、必要に応じて分散安定剤を、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ロッキングミルを用いて(ジルコニアビーズ等を用いるメディア分散型機でもよい)、必要に応じて数分〜10数時間かけて、十分に溶解又は混合・分散させることにより、製造することができる。
【0138】
上述の混合・分散により、顔料が微細に粉砕される。上述の如く、液体現像剤中の顔料の平均粒子径(D50)が、好ましくは、0.1〜1.0μmとなるように、混合・分散の時間や回転数を調整する。分散時間が過度に短いと、あるいは回転数が過度に少ないと、顔料の平均粒子径(D50)が1.0μmを超え、上述の如く、定着性が低下する可能性がある。分散時間が過度に長いと、あるいは回転数が過度に多いと、顔料の平均粒子径(D50)が0.1μm未満となり、上述の如く、不十分な現像性に起因する画像濃度の低下が引き起こされる。
【0139】
本実施形態において、キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させた後、顔料(必要に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させることにより、液体現像剤を製造してもよく、あるいは、樹脂溶液(キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させたものをいう)と、顔料分散体(キャリア液Cに顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させたものをいう)とをそれぞれ予め調製しておいて、これらを適宜の混合比(質量比)で混合することにより、液体現像剤を製造してもよい。
【0140】
なお、顔料の平均粒子径(D50)を算出するために、顔料の粒度分布が測定される。顔料の粒度分布は、例えば、以下に示される手法により測定される。
【0141】
製造された液体現像剤又は調製された顔料分散体を所定量サンプリングし、液体現像剤又は顔料分散体に用いられているキャリア液Cと同じキャリア液Cで10〜100倍(体積)に希釈し、マルバーン(MALVERN)社製のレーザー回折式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」を用いてフロー方式により、顔料の粒度分布が測定される。
【0142】
また、製造された液体現像剤の粘度は、測定温度25℃において、CBC社製の振動式粘度計「VISCOMATE VM−10A−L」を用いて測定される。
【0143】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。図5及び図11を用いて、カラープリンターが説明される。第1実施形態のカラープリンター300と同様の要素に対して、同様の符号が付されている。これらの同様な要素に対しては、第1実施形態での説明が援用される。
【0144】
本実施形態のカラープリンター300Aは、液体現像剤を用いて、シートに画像を形成する画像形成部340Aを備える。画像形成部340Aは、マゼンタ色の画像を形成するための画像形成ユニット371M、シアン色の画像を形成するための画像形成ユニット371C、イエロー色の画像を形成するための画像形成ユニット371Y及びブラック色の画像を形成するための画像形成ユニット371Bkを含む。画像形成ユニット371M,371C,371Y,371Bkは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkと同様に、右ローラー333から左ローラー334に向かう方向に整列される。
【0145】
画像形成ユニット371M,371C,371Y,371Bkは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkの様々な要素に加えて、追加的な摺擦ローラー366M、366C、366Y、366Bkを備える。したがって、画像形成ユニット371M,371C,371Y,371Bkそれぞれは、2つの摺擦ローラー366M、366C、366Y、366Bkを含む。画像形成ユニット371Mは、2つの摺擦ローラー366Mそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。画像形成ユニット371Cは、2つの摺擦ローラー366Cそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。画像形成ユニット371Yは、2つの摺擦ローラー366Yそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。画像形成ユニット371Bkは、2つの摺擦ローラー366Bkそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。
【0146】
摺擦ローラー366M、366C、366Y、366Bkの数の増大は、シート上の画像に対する摺擦の量の増大に帰結する。したがって、カラープリンター300Aは、画像をシート上に適切に定着させることができる。
【0147】
本実施形態において、画像形成ユニット371M,371C,371Y,371Bkは、複数の摺擦ローラー366M、366C、366Y、366Bkをそれぞれ備える。代替的に、画像形成ユニットのうちいくつかは、単一の摺擦ローラーを備えてもよい。画像形成ユニットのうち少なくとも1つが複数の摺擦ローラーを有するならば、本実施形態の原理は、シートへの画像の適切な定着のために好適に利用される。
【0148】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。図5、図11及び図12を用いて、カラープリンターが説明される。第1実施形態のカラープリンター300及び/又は第2実施形態のカラープリンター300Aと同様の要素に対して、同様の符号が付されている。これらの同様な要素に対しては、第1実施形態及び/又は第2実施形態での説明が援用される。
【0149】
本実施形態のカラープリンター300Bは、液体現像剤を用いて、シートに画像を形成する画像形成部340Bを備える。画像形成部340Bは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M及び第2実施形態に関連して説明された画像形成ユニット371Cに加えて、イエロー色の画像を形成するための画像形成ユニット401Y及びブラック色の画像を形成するための画像形成ユニット401Bkを含む。画像形成ユニット341M,371C,401Y,401Bkは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkと同様に、右ローラー333から左ローラー334に向かう方向に整列される。
【0150】
画像形成ユニット401Y,401Bkは、第2実施形態に関連して説明された画像形成ユニット371Y、371Bkの様々な要素に加えて、更に追加的な摺擦ローラー366Y、366Bkを備える。したがって、画像形成ユニット401Y,401Bkそれぞれは、3つの摺擦ローラー366Y、366Bkを含む。画像形成ユニット401Yは、3つの摺擦ローラー366Yそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。画像形成ユニット401Bkは、3つの摺擦ローラー366Bkそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。
【0151】
画像形成ユニット371Cの摺擦ローラー366Cの数は、上流の画像形成ユニット341Mの摺擦ローラー366Mの数より多い。また、画像形成ユニット401Yの摺擦ローラー366Yの数は、上流の画像形成ユニット371Cの摺擦ローラー366Cの数よりも多い。シート上の液体現像剤の量に応じて、摺擦量が増大されるので、カラープリンター300Bは、画像をシート上に適切に定着させることができる。
【0152】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。図5及び図13を用いて、カラープリンターが説明される。第1実施形態のカラープリンター300と同様の要素に対して、同様の符号が付されている。これらの同様な要素に対しては、第1実施形態での説明が援用される。
【0153】
本実施形態のカラープリンター300Dは、液体現像剤を用いて、シートに画像を形成する画像形成部340Dを備える。画像形成部340Dは、マゼンタ色の画像を形成するための画像形成ユニット381M、シアン色の画像を形成するための画像形成ユニット381C、イエロー色の画像を形成するための画像形成ユニット381Y及びブラック色の画像を形成するための画像形成ユニット381Bkを含む。画像形成ユニット381M,381C,381Y,381Bkは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkと同様に、右ローラー333から左ローラー334に向かう方向に整列される。
【0154】
図14は、画像形成ユニットの概略図である。図14を用いて、画像形成ユニット381M,381C,381Y,381Bkが説明される。
【0155】
図14に示される画像形成ユニット381は、図13に示される画像形成ユニット381M,381C,381Y,381Bkのうち1つを代表する。したがって、図14に示される画像形成ユニット381の構造に関連する説明は、図13に示される画像形成ユニット381M,381C,381Y,381Bkそれぞれに適用される。
【0156】
画像形成ユニット381は、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341と同様の感光体ドラム342、第1帯電器343、露光装置344、現像装置350、除電器345及びクリーニング装置346に加えて、転写ユニット360Dを更に備える。転写ユニット360Dは、第1実施形態に関連して説明された転写ユニット360と同様の中間転写ローラー361、バックアップローラー362及び摺擦ユニット365に加えて、中間転写ローラー361の周面の画像からキャリア液に含まれる油分を除去するための除去ローラー363と、除去ローラー363の周面に当接する端部を有するクリーニングブレード364と、クリーニングブレード364によって除去ローラー363の周面から掻き取られた油分を回収するための回収ボックス368と、を備える。本実施形態において、除去ローラー363は、除去要素として例示される。
【0157】
中間転写ローラー361が感光体ドラム342から搬送ベルト335上のシートへ画像を受け渡す間、除去ローラー363は、中間転写ローラー361の周面から、画像の形成に用いられた液体現像剤のキャリア液が含む油分を適切に除去する。この結果、摺擦ローラー366の擦過による画像の定着が促進される。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、プリンター、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機などの各種の画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0159】
300,300A,300B,300D・・・・・カラープリンター(画像形成装置)
330・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・搬送装置(搬送要素)
340,340A,340B,340D・・・・・画像形成部
342・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・感光体ドラム(画像形成要素)
359,359C,359M・・・・・・・・・・接触面
360,360D・・・・・・・・・・・・・・・転写ユニット
361・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中間転写ローラー(中継要素)
363・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・除去ローラー(除去要素)
365・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・摺擦ユニット
366,366Bk,366C,366M,366Y・・・摺擦ローラー(摺擦要素)
390・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・駆動機構
S・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤を用いてシートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに画像を形成する装置として、液体現像剤を用いる画像形成装置が知られている。この種の画像形成装置は、典型的には、シート上に画像を定着させるための定着装置を備える。定着装置は、シート上に転写された液体現像剤中のトナー成分を溶融するために、比較的高い熱を生じさせる(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−262809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体現像剤中の成分(キャリア溶液)がシート内に浸透することによって、顔料が分散している高分子化合物がシート表面に析出する特性を有する液体現像剤の使用は、定着装置からの発熱を不要にする。しかしながら、本発明者は、上述の特性を有する液体現像剤を用いて形成された画像は、シートから剥離しやすいという特性を見出した。
【0005】
本発明は、シートからの画像の剥離を抑制する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、シートを第1方向へ搬送する搬送要素と、前記シートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部と、を備え、該画像形成部は、第1画像を前記シートに転写する第1転写ユニットと、該第1転写ユニットの後に、第2画像を前記シートに転写する第2転写ユニットと、を含み、前記第1転写ユニットは、前記シート上の前記第1画像を摺擦する第1摺擦ユニットを含み、前記第2転写ユニットは、前記シート上の前記第2画像を摺擦する第2摺擦ユニットを含むことを特徴とする(請求項1)。
【0007】
上記構成によれば、画像形成部は、搬送要素によって第1方向に搬送されるシートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する。画像形成部の第1転写ユニットは、第1画像をシートに転写する。画像形成部の第2転写ユニットは、第1転写ユニットの後に、第2画像をシートに転写する。第1転写ユニットの第1摺擦ユニットは、シート上の第1画像を摺擦する。第2転写ユニットの第2摺擦ユニットは、シート上の第2画像を摺擦する。第1摺擦ユニット及び第2摺擦ユニットは、シート上の第1画像及び第2画像に摩擦力をそれぞれ与える。この結果、画像を形成する液体現像剤は、シートの表層内に染み込み、第1画像及び第2画像の剥離が好適に抑制される。
【0008】
上記構成において、前記第1摺擦ユニット及び前記第2摺擦ユニットのうち少なくとも一方は、前記画像を摺擦する複数の摺擦要素を含むことが好ましい(請求項2)。
【0009】
上記構成によれば、第1摺擦ユニット及び第2摺擦ユニットのうち少なくとも一方は、画像を摺擦する複数の摺擦要素を含むので、画像を形成する液体現像剤は、シートの表層内に染み込みやすくなる。したがって、第1画像及び第2画像は剥離しにくくなる。
【0010】
上記構成において、前記第2摺擦ユニットの前記摺擦要素は、前記第1摺擦ユニットの前記摺擦要素よりも多いことが好ましい(請求項3)。
【0011】
上記構成によれば、第2転写ユニットは、第1転写ユニットの後に、第2画像をシートに転写する。したがって、第2摺擦ユニットによって摺擦される画像の液体現像剤の量は、第1摺擦ユニットによって摺擦される画像の液体現像剤よりも多い。第2摺擦ユニットの摺擦要素は、第1摺擦ユニットの摺擦要素よりも多いので、比較的多くの量の液体現像剤を用いて形成された画像を適切に摺擦することができる。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0012】
上記構成において、前記搬送要素は、前記シートを第1速度で搬送し、前記画像形成部は、前記摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、前記駆動機構は、前記接触面を、前記第1方向に、前記第1速度と異なる第2速度で移動させることが好ましい(請求項4)。
【0013】
上記構成によれば、搬送要素は、シートを第1速度で搬送する。画像形成部は、摺擦要素を動作させるため駆動機構を含む。摺擦要素は、シート上の画像に接触する接触面を含む。駆動機構は、接触面を、第1方向に、第1速度と異なる第2速度で移動させるので、シート上の画像は、適切に摺擦される。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0014】
上記構成において、前記画像形成部は、前記摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、該駆動機構は、前記接触面を前記第1方向とは異なる第2方向に移動させることが好ましい(請求項5)。
【0015】
上記構成によれば、画像形成部は、摺擦要素を動作させるため駆動機構を含む。摺擦要素は、シート上の画像に接触する接触面を含む。駆動機構は、接触面を第1方向とは異なる第2方向に移動させるので、シート上の画像は、適切に摺擦される。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0016】
上記構成において、前記接触面は、少なくとも部分的に不織布で覆われた面であることが好ましい(請求項6)。
【0017】
上記構成によれば、接触面は、少なくとも部分的に不織布で覆われた面であるので、シート上の画像は、適切に摺擦される。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0018】
上記構成において、前記接触面は、少なくとも部分的にブラシが植設された面であることが好ましい(請求項7)。
【0019】
上記構成によれば、接触面は、少なくとも部分的にブラシが植設された面であるので、シート上の画像は、適切に摺擦される。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0020】
上記構成において、前記第1摺擦ユニットは、前記第1画像を摺擦する第1摺擦要素を含み、前記第2摺擦ユニットは、前記第2画像を摺擦する第2摺擦要素を含み、前記画像形成部は、前記第1摺擦要素及び前記第2摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、前記第1摺擦要素は、前記第1画像に接触する第1接触面を含み、前記第2摺擦要素は、前記第2画像に接触する第2接触面を含み、前記駆動機構は、前記第2接触面を、前記第1接触面よりも高い速度で移動させることが好ましい(請求項8)。
【0021】
上記構成によれば、第1摺擦ユニットは、第1画像を摺擦する第1摺擦要素を含む。第2摺擦ユニットは、第2画像を摺擦する第2摺擦要素を含む。画像形成装置の駆動機構は、第1摺擦要素及び第2摺擦要素を動作させる。第1摺擦要素は、第1画像に接触する第1接触面を含む。第2摺擦要素は、第2画像に接触する第2接触面を含む。第2転写ユニットは、第1転写ユニットの後に、第2画像をシートに転写する。したがって、第2摺擦ユニットによって摺擦される画像の液体現像剤の量は、第1摺擦ユニットによって摺擦される画像の液体現像剤よりも多い。駆動機構は、第2接触面を、第1接触面よりも高い速度で移動させるので、比較的多くの量の液体現像剤を用いて形成された画像を適切に摺擦することができる。したがって、画像は、シートに適切に定着される。
【0022】
上記構成において、前記液体現像剤は、前記画像を発色させるための着色粒子と、該着色粒子が分散されるキャリア液と、該キャリア液中に溶解又は膨潤された高分子化合物と、を含むことが好ましい(請求項9)。
【0023】
上記構成によれば、画像を発色させるための着色粒子が分散されたキャリア溶液中の高分子化合物は、画像表面に被膜を形成する。この結果、画像の耐擦過性が向上する。かくして、摺擦要素と画像との間の摩擦に起因する画像の損傷が適切に抑制される。
【0024】
上記構成において、前記キャリア液は、油分を含み、前記画像形成部は、前記液体現像剤が塗布され、前記第1画像又は前記第2画像が形成される形成面を含む画像形成要素を含み、前記第1転写ユニット及び前記第2転写ユニットのうち少なくとも一方は、該画像形成要素から前記搬送要素上の前記シートへ前記第1画像又は前記第2画像を受け渡す中継要素と、該中継要素上の前記第1画像又は前記第2画像から前記油分を除去する除去要素と、を含むことが好ましい(請求項10)。
【0025】
上記構成によれば、画像形成部の画像形成要素は、液体現像剤が塗布される形成面を含む。形成面には、第1画像又は第2画像が形成される。中継要素は、画像形成要素から搬送要素上のシートへ第1画像又は第2画像を受け渡す。画像形成部の除去要素は、中継要素上の第1画像又は第2画像から油分を除去するので、第1画像又は第2画像は、シートに定着されやすくなる。
【0026】
上記構成において、前記着色粒子は、第1色相の第1着色粒子と、該第1色相とは異なる第2色相の第2着色粒子と、を含み、前記第1画像は、前記第1着色粒子を用いて形成され、前記第2画像は、前記第2着色粒子を用いて形成され、前記第2転写ユニットは、前記第1画像に前記第2画像を重畳させ、前記シート上に前記画像を形成することが好ましい(請求項11)。
【0027】
上記構成によれば、着色粒子は、第1色相の第1着色粒子と、第1色相とは異なる第2色相の第2着色粒子と、を含む。第1画像は、第1着色粒子を用いて形成される。第2画像は、第2着色粒子を用いて形成される。第2転写ユニットは、第1画像に第2画像を重畳させ、シート上に画像を形成するので、複数の色相成分を有する画像が形成される。
【発明の効果】
【0028】
上述の如く、本発明に係る画像形成装置は、シートからの画像の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】液体現像剤を用いた転写工程の原理を示す概略図である。
【図2】図1に示される転写工程後の定着工程の原理の概略図である。
【図3】擦り時間と定着率との関係を概略的に示すグラフである。
【図4】様々な不織布材料に対するスクリーニング試験の結果を概略的に示すグラフである。
【図5】第1実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。
【図6】図5に示されるカラープリンターの画像形成ユニットの概略図である。
【図7】図6に示される画像形成ユニットの摺擦ローラーを駆動するための駆動機構の概略図である。
【図8】図7に示される摺擦ローラーの概略図である。
【図9】図7に示される摺擦ローラーの概略図である。
【図10】図5に示されるカラープリンターの摺擦ローラーの概略図である。
【図11】第2実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。
【図12】第3実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。
【図13】第4実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。
【図14】図13に示されるカラープリンターの画像形成ユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を用いて、第1実施形態に係る画像形成装置が説明される。尚、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とするものであり、画像形成装置の原理を何ら限定するものではない。
【0031】
<定着原理>
図1は、液体現像剤を用いた画像の転写工程を概略的に説明する図である。図1(a)乃至図1(c)の順に、転写工程が進行する。図1を用いて、シートへの画像の転写並びに転写後の画像が説明される。
【0032】
図1(a)は、像担持体100からシートSへ転写される画像を形成する液体現像剤の液層Lの概略的断面を示す。像担持体100は、例えば、液体現像剤を用いて画像を形成する画像形成装置(例えば、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置やこれらの機能を備える複合機)が備える転写ローラーであってもよい。像担持体100は、画像を形成する液体現像剤の液層LをシートSへの転写位置まで搬送する。
【0033】
転写位置において、シートSは、像担持体100上の液層Lに接触する。画像を形成する液体現像剤の液層Lは、キャリア液Cと、画像を発色させるための着色粒子Pと、キャリア液C中に溶解又は膨潤された高分子化合物Rとを含む。キャリア液C中に分散された着色粒子Pは、シートSに静電気的に誘引される。かくして、着色粒子Pは、シートS上に付着し、画像を形成する。尚、着色粒子PのシートSへの誘引は、例えば、シートSを横切る電界によって達成される。
【0034】
図1(b)は、シートSに浸透するキャリア液Cを概略的に示す。比較的低い動粘度を有するキャリア液Cは、シートSに浸透し、浸透層PLをシートSの表層に形成する。シートSへのキャリア液Cの浸透に伴って、液体現像剤の液層L中の高分子化合物Rの濃度は増大する。
【0035】
図1(c)に示される如く、キャリア液Cが更にシートSに浸透すると、液層L中の高分子化合物Rは析出する。上述の如く、着色粒子PのシートSへの静電気的付着は、高分子化合物Rの析出より先に発生する。したがって、シートSの表面に析出した高分子化合物Rは、シートS上で画像を形成する着色粒子Pの層上に積層された被膜層を形成する。
【0036】
図2は、転写工程後に行われる定着工程を概略的に説明する図である。図2(a)は、定着工程を概略的に示す。図2(b)は、定着工程後のシートSの概略的な断面図である。図1及び図2を用いて、定着工程の原理が説明される。
【0037】
転写工程後、キャリア液Cは、シートSに略浸透され、シートS上に高分子化合物Rと、着色粒子Pとを含む画像層Iが形成される。転写工程において、画像層Iには、像担持体100からシートSへ液層L(画像)を転写する際の圧力及び電界を除いて、物理的な力はほとんど加えられない。このため、定着工程前において、画像層IとシートSとの間の物理的な結合は、比較的弱く、後述されるテープを用いた剥離試験を行うと、画像層Iの顕著な剥離が生ずることとなる。
【0038】
図2(a)には、摺擦板200が示される。摺擦板200は、例えば、略直方体形状の基板210と、基板210の表面を被覆する不織布220とを備える。本実施形態において、不織布220として、ポリプロピレン不織布が用いられる。代替的に、0.10の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトAと称される)、0.13の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトBと称される)、ポリエステルフェルト、ポリエチレンテレフタレート製のフェルト(以下、PETフェルトと称される)、ポリアミドフェルトや羊毛フェルトが不織布220として用いられてもよい。
【0039】
シートS上に形成された画像層I上に載置された摺擦板200は、シートSの上面に沿って画像層I上を移動する。この結果、図2(b)に示される如く、画像層Iの成分(着色粒子P及び/又は高分子化合物R)の一部は、シートSの表層内に食い込む(アンカー効果)。かくして、画像層IとシートSとの物理的な結合が強化される。
【0040】
上述の如く、画像層Iの上面は、高分子化合物Rに覆われる。したがって、画像を発色させる着色粒子Pは、高分子化合物Rによって、摺擦板200の摺擦動作から適切に保護される。かくして、摺擦板200の摺擦に起因する画像の損傷は適切に抑制される。
【0041】
<試験例>
図3は、摺擦板200が画像層Iに摺擦移動しているときの期間(擦り時間)と画像層Iの定着率との関係を概略的に示すグラフである。図2及び図3を用いて、擦り時間と定着率との関係が説明される。
【0042】
図3のグラフの横軸に示される擦り時間は、画像層I中の所定の領域が、往復移動している摺擦板200に接触している間の時間長さを表す。
【0043】
図3のグラフの縦軸に示される定着率FRは、以下に示される数式を用いて算出されている。ここで、D0は、画像層I上に帖着されたテープを剥離する前の画像の濃度を表し、D1は、画像層I上に帖着されたテープを剥離した後の画像の濃度を表す。
【0044】
【数1】
【0045】
定着率FRの評価に用いられたテープは、3M社製のメンディングテープであった。メンディングテープは、専用の治具を用いて画像層I上に帖着された。したがって、図3のグラフに表されるデータ点間において、テストサンプル中の画像層Iとメンディングテープとの帖着強度は略一定に保たれている。また、テストサンプル中の画像層Iに打擲されたメンディングテープは、専用の治具を用いて、略一定の剥離角度及び略一定の剥離速度で、画像層Iから剥離された。
【0046】
テストサンプルの画像の濃度は、サカタインクスエンジニアリング株式会社製の分光光度計スペクトロアイを用いて測定された。
【0047】
図3に示される如く、1秒以上、画像層Iが摺擦されると、画像層Iは比較的高い定着率FRを達成することが分かる。また、1秒未満の擦り時間では、画像層Iの定着率FRは急激な増加を示すことが分かる。尚、摺擦板200の重量は、好ましくは、画像層Iの表面の傷の発生が抑制されるように適切に定められる。
【0048】
図4は、様々な種類の不織布220と、定着率FRとの関係を概略的に示すグラフである。図2乃至図4を用いて、不織布220の種類と定着率FRとの関係が説明される。
【0049】
図4の横軸は、不織布220の種類を示す。本試験において、PTFEフェルトA、PTFEフェルトB、ポリプロピレン不織布、ポリエステルフェルト、PETフェルト、ポリアミドフェルト及び羊毛フェルトが示されている。
【0050】
図4の左側の縦軸は、上述の定着率FRを示す。定着率FRは、図4の棒グラフによって表される。尚、本試験で用いられた上述の全ての種類の不織布220は、1秒を超える擦り時間において、比較的高い定着率FRを達成した。したがって、比較的有利な種類の不織布220のスクリーニングのために、図4に示される定着率FRは、0.625秒の擦り時間の下、算出されている。
【0051】
図4の右側の縦軸は、図4中の点によって表される各種類の不織布220の動摩擦係数を示す。低い動摩擦係数は、シートSの搬送への影響の低減及び画像層Iへの損傷の低減の点から有利である。
【0052】
図4に示される如く、PTFEフェルトAは、最も低い動摩擦係数を有するとともに最も高い定着率FRを達成している。したがって、テストされた種類の不織布220のうちPTFEフェルトAが最も有利であるということが分かる。尚、不織布220として、図4に示されていない不織布材料が用いられてもよい。好ましくは、0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料が不織布220として用いられる。0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料は、シートSの搬送への影響及び画像層Iへの損傷を好適に抑制することができる。
【0053】
<画像形成装置>
図1乃至図4に関連して説明された定着原理は、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置、これらの機能を有する複合機やシートS上に画像を形成することができる他の装置の定着工程に好適に適用される。
【0054】
図5は、本実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。図5を用いて、カラープリンターが説明される。
【0055】
カラープリンター300は、シートに画像を形成するための様々な装置を収容する筐体310と、筐体310に隣接して配設された給紙装置320と、を備える。カラープリンター300は、筐体310内に収容されたカセット321乃至323を更に備える。給紙装置320並びにカセット321乃至323それぞれには、シートが収容される。使用者は、カラープリンター300に電気的に接続されたパーソナルコンピューター(図示せず)やカラープリンター300の操作パネル(図示せず)を操作し、給紙装置320並びにカセット321乃至323のうち1つを給紙源として選択することができる。以下の説明において、給紙装置320が給紙源として選択されている。尚、給紙装置320並びにカセット321乃至323の構造として、シートを収容並びに送出することができる既知の装置が用いられてもよい。
【0056】
筐体310は、給紙装置320に隣接する右壁311と、右壁311とは反対側の左壁312と、右壁311と左壁312との間で筐体310の上面を形成する天壁313と、天壁313とは反対側の底壁314と、を含む。カラープリンター300は、右壁311の近くに配設されたレジストローラー対331と、左壁312の近くに配設された第1排出ローラー対332と、レジストローラー対331と第1排出ローラー対332との間に配設された搬送装置330と、を更に備える。給紙装置320は、レジストローラー対331に向けてシートを送り込む。その後、レジストローラー対331は、搬送装置330にシートを送り出す。
【0057】
搬送装置330は、レジストローラー対331の近くに配設された右ローラー333と、第1排出ローラー対332の近くに配設された左ローラー334と、右ローラー333と左ローラー334との間で伸びる搬送ベルト335(無端ベルト)と、を含む。右ローラー333及び左ローラー334は、搬送ベルト335の上面が左方へ移動するように回転する。レジストローラー対331から送り出されたシートは、搬送ベルト335の上面に乗り、その後、第1排出ローラー対332に向けて搬送される。搬送ベルト335によって搬送されるシート上に画像が形成される。第1排出ローラー対332に到達したシートは、左壁312から排出される。本実施形態において、搬送装置330は、搬送要素として例示される。また、左方へのシートの搬送方向は、第1方向として例示される。
【0058】
天壁313は、画像形成後のシートを蓄積できるように、傾斜面315を含む。カラープリンター300は、傾斜面315に向けてシートを排出するように配設された第2排出ローラー対336と、搬送装置330の出口部から第2排出ローラー対336に向かう経路に沿って配設された搬送ローラー対337と、を更に備える。使用者は、カラープリンター300に電気的に接続されたパーソナルコンピューター(図示せず)やカラープリンター300の操作パネル(図示せず)を操作し、第1排出ローラー対332又は第2排出ローラー対336を排出装置として指定することができる。したがって、搬送装置330上で画像形成処理を受けたシートは、第1排出ローラー対332又は第2排出ローラー対336によって筐体310から排出される。
【0059】
カラープリンター300は、液体現像剤を用いて、シートに画像を形成するための画像形成部340を更に備える。画像形成部340は、マゼンタ色の画像を形成するための画像形成ユニット341M、シアン色の画像を形成するための画像形成ユニット341C、イエロー色の画像を形成するための画像形成ユニット341Y及びブラック色の画像を形成するための画像形成ユニット341Bkを含む。搬送装置330上の画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkは、右ローラー333から左ローラー334に向かう方向に整列される。したがって、マゼンタ色の画像、シアン色の画像、イエロー色の画像及びブラック色の画像は、順次、シートに形成される。マゼンタ色の画像、シアン色の画像、イエロー色の画像及びブラック色の画像が、シート上で重ね合わせられる結果、フルカラーの画像がシート上に形成される。本実施形態において、マゼンタ色の画像、シアン色の画像及びイエロー色の画像のうち1つは、第1画像として例示される。また、第1画像として例示された画像の後にシートに形成される画像は、第2画像として例示される。例えば、マゼンタ色の画像が第1画像として例示されるならば、シアン色の画像、イエロー色の画像及びブラック色の画像のうち1つは、第2画像として例示される。
【0060】
図6は、画像形成ユニットの概略図である。図6を用いて、画像形成ユニットが説明される。
【0061】
図6に示される画像形成ユニット341は、図5に示される画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkのうち1つを代表する。したがって、図6に示される画像形成ユニット341の構造に関連する説明は、図5に示される画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkそれぞれに適用される。
【0062】
画像形成ユニット341は、感光体ドラム342と、感光体ドラム342の周面を一様に帯電させる第1帯電器343と、感光体ドラム342の周面にレーザ光を照射する露光装置344と、を備える。使用者が、例えば、パーソナルコンピューター(図示せず)から画像データを出力すると、露光装置344は、第1帯電器343によって帯電された感光体ドラム342の周面上で、画像データに従って、レーザ光を走査する。この結果、感光体ドラム342の周面には、静電潜像が形成される。
【0063】
画像形成ユニット341は、感光体ドラム342の周面に液体現像剤を塗布する現像装置350を備える。現像装置350は、液体現像剤を貯留する貯留部351と、貯留部351内の液体現像剤中に部分的に沈められた汲上ローラー352と、汲上ローラー352の上に配設された供給ローラー353と、を備える。液体現像中で回転する汲上ローラー352は、貯留部351中の液体現像剤を汲み上げる。液体現像剤は、汲上ローラー352の周面に乗って、供給ローラー353に向かって移動する。その後、液体現像剤は、汲上ローラー352に近接した供給ローラー353の周面に乗り移る。
【0064】
現像装置350は、供給ローラー353の周面に近接した端部を有するドクターブレード354と、感光体ドラム342及び供給ローラー353の間に配設された現像ローラー355と、を更に備える。ドクターブレード354は、供給ローラー353の周面上の液体現像剤の層の厚さを略一定にする。その後、液体現像剤は、現像ローラー355の周面に乗り移る。したがって、略一定量の液体現像剤が現像ローラー355へ供給される。
【0065】
現像装置350は、第2帯電器356を更に備える。第2帯電器356は、液体現像剤中のトナーが感光体ドラム342に適切に乗り移るように、液体現像剤中のトナーを帯電させる。その後、現像ローラー355の回転に伴って、液体現像剤は、感光体ドラム342に向かい、感光体ドラム342の周面に乗り移る。この結果、感光体ドラム342の周面には、画像が形成される。本実施形態において、感光体ドラム342の周面は、形成面として例示される。また、感光体ドラム342は、画像形成要素として例示される。
【0066】
現像装置350は、クリーニングローラー357及びクリーニングブレード358を更に備える。感光体ドラム342への液体現像剤の塗布の後、クリーニングローラー357及びクリーニングブレード358は、現像ローラー355の周面に残る液体現像剤を除去する。
【0067】
画像形成ユニット341は、搬送ベルト335上のシートに画像を転写する転写ユニット360を更に備える。本実施形態において、第1画像として例示された画像をシートに転写する転写ユニット360は、第1転写ユニットとして例示される。また、第2画像として例示された画像をシートに転写する転写ユニット360は、第2転写ユニットとして例示される。
【0068】
転写ユニット360は、搬送ベルト335と感光体ドラム342との間に配設された中間転写ローラー361と、中間転写ローラー361の下方に配設されたバックアップローラー362と、を備える。バックアップローラー362は、中間転写ローラー361とともに搬送ベルト335を挟む。
【0069】
感光体ドラム342の周面に形成された画像は、感光体ドラム342の回転に伴って、中間転写ローラー361に向かって移動する。その後、画像は、中間転写ローラー361の周面に乗り移る。搬送ベルト335上のシートが、中間転写ローラー361とバックアップローラー362との間を通過する間、中間転写ローラー361上の画像は、シートへ乗り移る。かくして、中間転写ローラー361は、画像を、感光体ドラム342から搬送ベルト335上のシートへ受け渡すことができる。中間転写ローラー361は、図1に関連して説明された像担持体100に対応する。本実施形態において、中間転写ローラー361は、中継要素として例示される。
【0070】
転写ユニット360は、シートに乗り移った画像を摺擦するための摺擦ユニット365を更に備える。本実施形態において、第1画像として例示された画像を摺擦する摺擦ユニット365は、第1摺擦ユニットとして例示される。また、第2画像として例示された画像を摺擦する摺擦ユニット365は、第2摺擦ユニットとして例示される。
【0071】
摺擦ユニット365は、シート上の画像を摺擦する摺擦ローラー366と、摺擦ローラー366の下方に配設された保持ローラー367と、を含む。保持ローラー367は、摺擦ローラー366が画像を摺擦している間、搬送ベルト335及び搬送ベルト335上のシートを安定的に保持する。摺擦ローラー366の周面は、例えば、図4に関連して説明された様々な不織布の群から選択された少なくとも1つの不織布で、少なくとも部分的に覆われてもよい。代替的に、摺擦ローラー366の周面には、少なくとも部分的に、シート上の画像を摺擦するためのブラシが植設されてもよい。摺擦ローラー366は、図1に関連して説明された摺擦板200に対応する。上述の定着原理に従って、摺擦ローラー366の周面がシート上の画像を擦るので、画像はシート上に適切に定着される。本実施形態において、摺擦ローラー366は、摺擦要素として例示される。尚、第1摺擦ユニットとして例示された摺擦ユニット365の摺擦ローラー366は、第1摺擦要素として例示される。また、第2摺擦ユニットとして例示された摺擦ユニット365の摺擦ローラー366は、第2摺擦要素として例示される。摺擦ユニット365の動作は、更に後述される。
【0072】
画像形成ユニット341は、中間転写ローラー361へ画像を転写した後の感光体ドラム342の周面に対して、除電処理を施与する除電器345と、除電処理後の感光体ドラム342の周面に残存する液体現像剤を除去するクリーニング装置346と、を更に備える。クリーニング装置346は、クリーニングローラー347と、クリーニングブレード348と、を含む。クリーニングローラー347及びクリーニングブレード348は、感光体ドラム342の周面に残る液体現像剤を適切に除去する。
【0073】
図7は、摺擦ローラー366を駆動するための駆動機構の概略図である。図6及び図7を用いて、摺擦ローラー366の駆動が更に説明される。
【0074】
画像形成ユニット341は、摺擦ローラー366を駆動するための駆動機構390を更に備える。駆動機構390は、摺擦ローラー366を回転させるための駆動力を発生させる駆動モーター391と、駆動モーター391の駆動力を伝達するための第1ギア392と、摺擦ローラー366のジャーナル369に取り付けられた第2ギア393と、を含む。駆動力は、駆動モーター391の回転シャフトに取り付けられた第1ギア392から第1ギア392と噛み合う第2ギア393へ伝達される。この結果、摺擦ローラー366は回転する。摺擦ローラー366の回転数は、駆動モーター391の回転数の設定に応じて、適切に調整される。
【0075】
図8は、シートS上の画像を摺擦する摺擦ローラー366を概略的に示す。図6乃至図8を用いて、摺擦ローラー366の動作が説明される。
【0076】
摺擦ローラー366が、搬送ベルト335上のシートSに押しつけられると、摺擦ローラー366の周面には、シートS上の画像に接触する略平坦な接触面359が形成される。搬送ベルト335がシートSを第1速度V1で搬送している間、接触面359が第2速度V2で左方に移動するように摺擦ローラー366は回転する。第2速度V2は、第1速度V1より低く設定されてもよい。代替的に、第2速度V2は、第1速度V1より大きく設定されてもよい。尚、第2速度V2の設定は、駆動モーター391の回転速度の調整によって達成される。第2速度V2が第1速度V1と相違するならば、摺擦ローラー366とシートSとの間の相対速度に応じて、シートS上の画像は適切に摺擦される。
【0077】
図9は、シートS上の画像を摺擦する摺擦ローラー366を概略的に示す。図6、図7及び図9を用いて、摺擦ローラー366の他の動作が説明される。
【0078】
接触面359がシートSの搬送方向とは異なる方向に移動するように、駆動モーター391は、摺擦ローラー366を回転させてもよい。図9に示される接触面359は、右方へ移動している。この結果、シートS上の画像は適切に摺擦される。接触面359の移動方向がシートSの移動方向と異なるならば、第2速度V2は、任意の値に設定されてもよい。本実施形態において、図9に示される接触面359の移動方向(右方)は、第2方向として例示される。
【0079】
図10は、シートS上の画像を摺擦する摺擦ローラー366を概略的に示す。図5乃至図7及び図10を用いて、摺擦ローラー366の他の動作が説明される。
【0080】
図10には、画像形成ユニット341Mの摺擦ローラー366M及び画像形成ユニット341Cの摺擦ローラー366Cが示されている。摺擦ローラー366M,366Cはともに、図7に関連した駆動機構390によって回転されてもよい。
【0081】
摺擦ローラー366M,366Cの周面には、接触面359M,359Cがそれぞれ形成される。接触面359M,359Cは、シートSの移動速度(第1速度V1)よりも高い速度で右方に移動してもよい。図10において、接触面359Mの速度は、ベクトル「VM」で示されている。また、接触面359Cの速度は、ベクトル「VC」で示されている。
【0082】
接触面359Cは、シートS上のシアン色の画像だけでなく、先行して形成されたマゼンタ色の画像も摺擦する。接触面359Cは、比較的多い量の液体現像剤を摺擦する。図10に示される如く、接触面359Cの速度VCは、接触面359Mの速度VMより高く設定される。この結果、接触面359Cは、増加された液体現像剤から形成された画像に対して十分な摺擦を行うことができる。
【0083】
図5には、上述の摺擦ローラー366M,366Cに加えて、画像形成ユニット341Yの摺擦ローラー366Y及び画像形成ユニット341Bkの摺擦ローラー366Bkが示されている。摺擦ローラー366M,366C,366Y,366Bkが、略同径であるならば、図7に関連して説明された駆動機構390は、摺擦ローラー366Yの回転数を摺擦ローラー366Cの回転数より大きくし、摺擦ローラー366Bkの回転数を摺擦ローラー366Yの回転数より大きくしてもよい。この結果、シートS上の液体現像剤の増加に併せて、摺擦量が増大される。かくして、画像はシートSに適切に定着される。
【0084】
図10に関連して説明された原理は、接触面359M,359Cの移動方向がシートSの移動方向と異なるときでも、同様に適用される。下流に配設された画像形成ユニットの摺擦ローラーのシートに対する相対速度が、上流の摺擦ローラの相対速度より大きく設定されるならば、図10に関連して説明された原理に基づき、画像の適切な定着が達成される。
【0085】
<液体現像剤>
液体現像剤は、上述の如く、電気絶縁性のキャリア液Cとキャリア液C中に分散された着色粒子Pとを含む。また、液体現像剤は高分子化合物Rを含有する。好ましくは、液体現像剤は、測定温度25℃において、30〜400mPa・sの粘度を有する。より好ましくは、液体現像剤の粘度(測定温度25℃)は、40〜300mPa・sであり、さらに好ましくは50〜250mPa・sである。
【0086】
<キャリア液>
液体キャリアの役割を果たす電気絶縁性のキャリア液Cは、液体現像剤の電気絶縁性を高める。電気絶縁性のキャリア液Cとしては、例えば、25℃における体積抵抗が1012Ω・cm以上(換言すれば導電率が1.0pS/cm以下)の電気絶縁性有機溶剤が好ましい。さらに前記物性に加えて、後述の高分子化合物Rを溶解させることができるもの(高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの)が好ましく用いられる。
【0087】
また、液体現像剤全体の粘度(測定温度25℃)が30〜400mPa・sとなるように、キャリア液Cの粘度・種類・配合量を適宜調整・選択される。液体現像剤の粘度は、キャリア液Cとして用いられる有機溶剤と後述される高分子化合物Rとの組み合わせによっても左右される。したがって、所望の液体現像剤の粘度及び選択される高分子化合物Rの種類に合わせて有機溶剤の種類及び配合量が適宜決定される。
【0088】
このような電気絶縁性の有機溶剤としては、例えば、常温で液体の脂肪族炭化水素や植物油が挙げられる。
【0089】
脂肪族炭化水素としては、例えば、液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素又はそれらの混合物が好ましい。例えば、脂肪族炭化水素として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタンが用いられる。環境対応(VOC対策)の観点から、不揮発性の有機溶剤及び揮発性が相対的に低い有機溶剤(例えば、沸点が200℃以上のもの)が好ましく、例えば、炭素数が16以上の脂肪族炭化水素を比較的多く含む流動パラフィンが好ましく用いられる。
【0090】
また、植物油として、例えば、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)、植物油由来の脂肪酸エステル、大豆油、サフラワー油、ヒマシ油、アマニ油、桐油が挙げられる。なかでもトール油脂肪酸が好ましく用いられる。
【0091】
キャリア液Cとして、例えば、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−55」、「モレスコホワイトP−40」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−200」;ハリマ化成株式会社製のトール油脂肪酸「ハートール FA−1」、「ハートール FA−1P」、「ハートール FA−3」;カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」、「ベジソルCM」、「ベジソルMB」、「ベジソルPR」、植物油「桐油」;エクソンモービル社製の「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーK」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「アイソパーV」;コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」;日清オイリオ社製の植物油「大豆油白絞油 S」、「アマニ油」、「サフラワー油」;伊藤製油社製の植物油「ヒマシ油 LAV」、「ヒマシ油 工」が用いられてもよい。
【0092】
本実施形態では、高分子化合物Rがキャリア液Cに溶解する限り、キャリア液Cとして、高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの(高分子化合物Rの良溶媒)のみを用いてもよく、又は、高分子化合物Rの溶解度が相対的に低いもの(高分子化合物Rの貧溶媒)を混合して用いてもよい。尚、キャリア液Cの種類に応じて、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)は、過度に高くならないように適切に調整される。例えば、トール油脂肪酸といった植物性の油は、流動パラフィンのような脂肪族炭化水素と比べると、一般に、導電率が高い。したがって、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させるために、キャリア液Cとして上述の油類を含むときは、導電率の調整は、比較的慎重に行われることが好ましい。
【0093】
上述の油類の含有量が多いキャリア液Cは、高分子化合物Rの溶解度の点で有利である一方で、導電率の点で不利となる。油類の含有量が少ないキャリア液Cは、導電率の点で有利である一方で、高分子化合物Rの溶解度の点で不利となる。
【0094】
キャリア液C中の上述の油類の含有量は、液体現像剤中に含まれる高分子化合物Rの種類や含有量に依存する。好適な油類の含有量として、例えば、2〜80質量%、より好ましくは、5〜60質量%が挙げられる。2質量%未満では、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させることが困難となる。また、80質量%を超えると、キャリア液C全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くなる。過度に高い液体現像剤の導電率は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。
【0095】
本実施形態では、液体現像剤の導電率は、例えば、200pS/cm以下であることが好ましい。したがって、トール油脂肪酸といった上述の油類に高分子化合物Rを溶解させることにより得られた溶液(以下、「樹脂溶液」と称される)に高電気抵抗の脂肪族炭化水素を混合することにより、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)を例えば200pS/cm以下に調整することが好ましい。
【0096】
<着色粒子>
本実施形態では、着色粒子Pとして、顔料そのものが用いられる。顔料そのものを含む液体現像剤は、図1乃至図10に関連して説明された非加熱方式の定着工程を可能にする。この結果、熱エネルギや光エネルギをほとんど消費することなく、着色粒子Pとしての顔料が記録媒体に定着される。尚、上述の画像形成ユニット341Mに用いられる着色粒子Pは、マゼンタ色の色相を有する。上述の画像形成ユニット341Cに用いられる着色粒子Pは、シアン色の色相を有する。上述の画像形成ユニット341Yに用いられる着色粒子Pは、イエロー色の色相を有する。上述の画像形成ユニット341Bkに用いられる着色粒子Pは、ブラック色の色相を有する。本実施形態において、第1画像として例示された画像の形成に用いられる着色粒子Pは、第1着色粒子として例示される。また、第2画像として例示された画像の形成に用いられる着色粒子Pは、第2着色粒子として例示される。
【0097】
本実施形態における顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料が特に限定することなく用いられる。
【0098】
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラックといったアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキが挙げられる。
【0099】
液体現像剤中の顔料の含有量は、1〜30質量%が好ましい。より好ましくは、3質量%以上であり、さらに好ましくは、5質量%以上である。また、より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0100】
液体現像剤中の顔料の平均粒子径すなわち体積基準の中位径(D50)は、0.1〜1.0μmが好ましい。0.1μm未満の平均粒子径を有する顔料は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。1.0μmを超える平均粒子径を有する顔料は、例えば、定着性の低下を引き起こす。ここで、体積基準の中位径(D50)とは、一般に、粒度分布が求められている1群の粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたときの累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。
【0101】
<分散安定剤>
本実施形態に係る液体現像剤は、液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有していてもよい。本実施形態で使用し得る分散安定剤としては、例えば、ビックケミー社製の「BYK−116」が好適である。その他、ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」や、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」、「Antaron(登録商標)V−220」も好ましく用いられ得る。
【0102】
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は、1〜10質量%程度、好ましくは、2〜6質量%程度である。
【0103】
<高分子化合物>
本実施形態に係る液体現像剤に含有される高分子化合物Rは、有機高分子化合物である。キャリア液Cに溶解性を有する有機高分子化合物として、液体現像剤の粘度を上げ、且つ、画像形成におけるにじみ発生を抑制できる材料が選択される。有機高分子化合物として、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラールが例示される。好ましくは、有機高分子化合物として、スチレン系エラストマーが用いられる。高分子化合物Rとしては、単一種の有機高分子化合物が用いられてもよいし、或いは、複数種の有機高分子化合物が用いられてもよい。
【0104】
なお、本実施形態に係る液体現像剤では、有機高分子化合物は、キャリア液Cに溶解される。キャリア液Cに溶解している有機高分子化合物は、ゲルの状態であってもよい。有機高分子化合物の種類や分子量によっては、キャリア液C中で相互に絡み合ったゲル状の有機高分子化合物が得られる。ゲル状の有機高分子化合物は、比較的低い流動性を有する。例えば、有機高分子化合物の濃度が高い場合、有機高分子化合物とキャリア液Cとの親和性が低い場合、或いは、気温が低い場合には、ゲル状の有機高分子化合物が得られやすい。一方、キャリア液C中での相互の絡み合いが少ない有機高分子化合物は、比較的流動性が高い溶液となる。
【0105】
液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量は、有機高分子化合物の種類応じて、適切に決定される。有機高分子化合物の含有量は、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。
【0106】
有機高分子化合物の含有量が1質量%未満であると、液体現像剤における十分な粘度が得られず、画像形成におけるにじみ発生が十分に抑制できない可能性がある。また、有機高分子化合物の含有量が10質量%を超えると、シートSの表面上に留まる有機高分子化合物による被膜の量が多くなり過ぎ、被膜の乾燥性が過度に低下し、被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり、画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。
【0107】
以下、本実施形態において好適に使用できる有機高分子化合物が更に説明される。
【0108】
(環状オレフィン共重合体)
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィン骨格を主鎖に有し、環境負荷物質を含まない、非晶性で熱可塑性のオレフィン系樹脂であり、透明性、軽量性、低吸水性等に優れる。本実施形態においては、環状オレフィン共重合体は、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する有機高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。
【0109】
本実施形態で使用可能な環状オレフィン共重合体として、例えば、(1)環状オレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、(2)環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物、(3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物が挙げられる。
【0110】
上述の環状オレフィンとして、以下の物質が例示される。
(a)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;
(b)シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンといった1環の環状オレフィン;
(c)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった2環の環状オレフィン;
(d)トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン。
(e)トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンとの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;
(f)5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環の環状オレフィン。
(g)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環の環状オレフィン;
(h)8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;
(i)テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセン);
(j)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;
(k)シクロペンタジエンの4量体といった多環の環状オレフィン。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
上述のα−オレフィンとしては、炭素数が2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンが好ましい。α−オレフィンとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが例示される。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
本実施形態においては、環状オレフィンの重合方法、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法、及び得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0113】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体の構造には、格別な制限はない。環状オレフィン共重合体の構造は、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0114】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体としては、例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体、又は、テトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体が好ましく用いられる。環状オレフィン共重合体として、特に、ノルボルネンとエチレンとの共重合体がより好ましい。共重合体中のノルボルネンの含有率は、60〜82質量%が好ましく、60〜79質量%がより好ましく、60〜76質量%がさらに好ましく、60〜65質量%が一層好ましい。ノルボルネン含有率が60質量%未満であると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が低くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜の造膜性が低下する可能性がある。ノルボルネン含有率が82質量%を超えると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が高くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する可能性がある。また、キャリア液Cへの環状オレフィン共重合体の溶解度が過度に低くなる可能性がある。
【0115】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体として、市販されているものが使用されてもよい。例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体として、トパス・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製の「TOPAS(登録商標)TM」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)TB」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)8007」(ノルボルネン含有率:約65質量%)、「TOPAS(登録商標)5013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6015」(ノルボルネン含有率:約79質量%)、「TOPAS(登録商標)6017」(ノルボルネン含有率:約82質量%)が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0116】
(スチレン系エラストマー)
本実施形態で使用できるスチレン系エラストマーとしては、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。スチレン系エラストマーとして、例えば、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体が挙げられる。ブロック共重合体として、例えば、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックをAとし、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物からなる重合体ブロックをBとしたときに、化学式1で表される構造を有するブロック共重合体が挙げられる。
【0117】
【化1】
【0118】
上述のブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンが挙げられる。
【0119】
重合体ブロックAは、上述の芳香族ビニル化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、スチレン及び/又はα−メチルスチレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0120】
上述のブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物として、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンが挙げられる。
【0121】
上述のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物として、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。
【0122】
重合体ブロックBは、上述のオレフィン系化合物及び上述の共役ジエン化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、ブタジエン及び/又はイソプレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0123】
上述のブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブテン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体が挙げられる。
【0124】
本実施形態で使用されるスチレン系エラストマーとして、重合体ブロックA及び重合体ブロックBが化学式2で表される構造を有するスチレン−ブタジエン系エラストマー(SBS)が好ましい。
【0125】
【化2】
【0126】
スチレン−ブタジエン系エラストマーは、スチレンモノマーと、共役ジエン化合物であるブタジエンとを共重合させることにより得られる。好ましいスチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレンが例示される。
【0127】
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布において、数平均分子量Mnは、好ましくは、1,000〜100,000の範囲内であり(化学式1参照)、より好ましくは、2,000〜50,000の範囲内である。また、重量平均分子量Mwは、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲内であり、より好ましくは、10,000〜500,000の範囲内である。その場合に、重量平均分子量Mwが2,000〜200,000の範囲内、好ましくは3,000〜150,000の範囲内に、少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。
【0128】
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の比の値は、好ましくは、3.0以下であり、より好ましくは、2.0以下である。
【0129】
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーにおけるスチレン含有量(重合体ブロックAの含有量)は、好ましくは、5〜75質量%の範囲内であり(化学式2参照)、より好ましくは、10〜65質量%の範囲内である。スチレン含有量が5質量%未満であると、スチレン系エラストマーの被膜のガラス転移温度が低くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜の造膜性が低下する傾向となる。スチレン含有量が75質量%を超えると、スチレン系エラストマーの被膜の軟化点が高くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する傾向となる。
【0130】
本実施形態において、スチレン系エラストマーとして、市販されているものを使用することができる。例えば、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311、シェル社製の「クレイトン」、旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)」T411、T413、T437や「タフプレン(登録商標)」A、315P 等、JSR社製の「JSR TR1086」、「JSR TR2000」、「JSR TR2250」、「JSR TR2827」;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物として、JSR社製の「ダイナロン」6200P、4600P、1320P 等;スチレン−エチレン共重合体として、ダウ・ケミカル社製の「インデックス」等;組成物として、アロン化成社製の「アロンAR」、三菱化学社製の「ラバロン」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311はスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である。
【0131】
(セルロースエーテル)
セルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子である。置換率は、45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が、例えば、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい。セルロースエーテルの被膜は、強靭性並びに熱安定性に優れている。
【0132】
本実施形態で使用可能なセルロースエーテルとして、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースといったアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースといったヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースといったヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースといったカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースといったカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース;が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、アルキルセルロースが好ましく、アルキルセルロースのうちでも、エチルセルロースが好ましい。
【0133】
本実施形態においては、セルロースエーテルとして、市販されているものを使用することができる。例えば、エチルセルロースとして、日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」、「エトセル(登録商標)STD7」、「エトセル(登録商標)STD10」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0134】
(ポリビニルブチラール)
本実施形態において使用できるポリビニルブチラール(ブチラール樹脂:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール)は、化学式3に示すように、水酸基を有し、親水性のビニルアルコール単位と、ブチラール基を有し、疎水性のビニルアセタール単位と、アセチル基を有し、ビニルアルコール単位とビニルアセタール単位との中間の性質の酢酸ビニル単位との共重合体である。本実施形態に係る液体現像剤においては、ブチラール化度(親水性部と疎水性部との割合を定めたもの)が60〜85mol%のポリビニルブチラールが被膜形成能(造膜性)に優れる点で好ましい。ポリビニルブチラールは、非極性溶剤に対して溶解性を示すビニルアセタール単位と、紙等の記録媒体に対して結着性を向上させるビニルアルコール単位とを有するため、キャリア液C及び記録媒体の両方に対して高い親和性を有する。
【0135】
【化3】
【0136】
本実施形態で使用し得るポリビニルブチラールとしては、特に限定されない。ポリビニルブチラールとして、例えば、ヘキスト社製の「Mowital(登録商標)」B20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H;積水化学工業社製の「エスレック(登録商標)」BL−1(ブチラール化度:63±3mol%)、BL-2(同:63±3mol%)、BL−S(同:70mol%以上)、BL−L、BH−3(同:65±3mol%)、BM−1(同:65±3mol%)、BM-2(同:68±3mol%)、BM−5(同:63±3mol%)、BM−S;電気化学工業社製の「デンカブチラール」#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−Cが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0137】
(製造方法)
本実施形態に係る液体現像剤は、キャリア液C、顔料、有機高分子化合物、及び、必要に応じて分散安定剤を、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ロッキングミルを用いて(ジルコニアビーズ等を用いるメディア分散型機でもよい)、必要に応じて数分〜10数時間かけて、十分に溶解又は混合・分散させることにより、製造することができる。
【0138】
上述の混合・分散により、顔料が微細に粉砕される。上述の如く、液体現像剤中の顔料の平均粒子径(D50)が、好ましくは、0.1〜1.0μmとなるように、混合・分散の時間や回転数を調整する。分散時間が過度に短いと、あるいは回転数が過度に少ないと、顔料の平均粒子径(D50)が1.0μmを超え、上述の如く、定着性が低下する可能性がある。分散時間が過度に長いと、あるいは回転数が過度に多いと、顔料の平均粒子径(D50)が0.1μm未満となり、上述の如く、不十分な現像性に起因する画像濃度の低下が引き起こされる。
【0139】
本実施形態において、キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させた後、顔料(必要に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させることにより、液体現像剤を製造してもよく、あるいは、樹脂溶液(キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させたものをいう)と、顔料分散体(キャリア液Cに顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させたものをいう)とをそれぞれ予め調製しておいて、これらを適宜の混合比(質量比)で混合することにより、液体現像剤を製造してもよい。
【0140】
なお、顔料の平均粒子径(D50)を算出するために、顔料の粒度分布が測定される。顔料の粒度分布は、例えば、以下に示される手法により測定される。
【0141】
製造された液体現像剤又は調製された顔料分散体を所定量サンプリングし、液体現像剤又は顔料分散体に用いられているキャリア液Cと同じキャリア液Cで10〜100倍(体積)に希釈し、マルバーン(MALVERN)社製のレーザー回折式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」を用いてフロー方式により、顔料の粒度分布が測定される。
【0142】
また、製造された液体現像剤の粘度は、測定温度25℃において、CBC社製の振動式粘度計「VISCOMATE VM−10A−L」を用いて測定される。
【0143】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。図5及び図11を用いて、カラープリンターが説明される。第1実施形態のカラープリンター300と同様の要素に対して、同様の符号が付されている。これらの同様な要素に対しては、第1実施形態での説明が援用される。
【0144】
本実施形態のカラープリンター300Aは、液体現像剤を用いて、シートに画像を形成する画像形成部340Aを備える。画像形成部340Aは、マゼンタ色の画像を形成するための画像形成ユニット371M、シアン色の画像を形成するための画像形成ユニット371C、イエロー色の画像を形成するための画像形成ユニット371Y及びブラック色の画像を形成するための画像形成ユニット371Bkを含む。画像形成ユニット371M,371C,371Y,371Bkは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkと同様に、右ローラー333から左ローラー334に向かう方向に整列される。
【0145】
画像形成ユニット371M,371C,371Y,371Bkは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkの様々な要素に加えて、追加的な摺擦ローラー366M、366C、366Y、366Bkを備える。したがって、画像形成ユニット371M,371C,371Y,371Bkそれぞれは、2つの摺擦ローラー366M、366C、366Y、366Bkを含む。画像形成ユニット371Mは、2つの摺擦ローラー366Mそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。画像形成ユニット371Cは、2つの摺擦ローラー366Cそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。画像形成ユニット371Yは、2つの摺擦ローラー366Yそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。画像形成ユニット371Bkは、2つの摺擦ローラー366Bkそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。
【0146】
摺擦ローラー366M、366C、366Y、366Bkの数の増大は、シート上の画像に対する摺擦の量の増大に帰結する。したがって、カラープリンター300Aは、画像をシート上に適切に定着させることができる。
【0147】
本実施形態において、画像形成ユニット371M,371C,371Y,371Bkは、複数の摺擦ローラー366M、366C、366Y、366Bkをそれぞれ備える。代替的に、画像形成ユニットのうちいくつかは、単一の摺擦ローラーを備えてもよい。画像形成ユニットのうち少なくとも1つが複数の摺擦ローラーを有するならば、本実施形態の原理は、シートへの画像の適切な定着のために好適に利用される。
【0148】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。図5、図11及び図12を用いて、カラープリンターが説明される。第1実施形態のカラープリンター300及び/又は第2実施形態のカラープリンター300Aと同様の要素に対して、同様の符号が付されている。これらの同様な要素に対しては、第1実施形態及び/又は第2実施形態での説明が援用される。
【0149】
本実施形態のカラープリンター300Bは、液体現像剤を用いて、シートに画像を形成する画像形成部340Bを備える。画像形成部340Bは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M及び第2実施形態に関連して説明された画像形成ユニット371Cに加えて、イエロー色の画像を形成するための画像形成ユニット401Y及びブラック色の画像を形成するための画像形成ユニット401Bkを含む。画像形成ユニット341M,371C,401Y,401Bkは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkと同様に、右ローラー333から左ローラー334に向かう方向に整列される。
【0150】
画像形成ユニット401Y,401Bkは、第2実施形態に関連して説明された画像形成ユニット371Y、371Bkの様々な要素に加えて、更に追加的な摺擦ローラー366Y、366Bkを備える。したがって、画像形成ユニット401Y,401Bkそれぞれは、3つの摺擦ローラー366Y、366Bkを含む。画像形成ユニット401Yは、3つの摺擦ローラー366Yそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。画像形成ユニット401Bkは、3つの摺擦ローラー366Bkそれぞれに対応する保持ローラー367を備える。
【0151】
画像形成ユニット371Cの摺擦ローラー366Cの数は、上流の画像形成ユニット341Mの摺擦ローラー366Mの数より多い。また、画像形成ユニット401Yの摺擦ローラー366Yの数は、上流の画像形成ユニット371Cの摺擦ローラー366Cの数よりも多い。シート上の液体現像剤の量に応じて、摺擦量が増大されるので、カラープリンター300Bは、画像をシート上に適切に定着させることができる。
【0152】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態の画像形成装置として例示されるカラープリンターの概略図である。図5及び図13を用いて、カラープリンターが説明される。第1実施形態のカラープリンター300と同様の要素に対して、同様の符号が付されている。これらの同様な要素に対しては、第1実施形態での説明が援用される。
【0153】
本実施形態のカラープリンター300Dは、液体現像剤を用いて、シートに画像を形成する画像形成部340Dを備える。画像形成部340Dは、マゼンタ色の画像を形成するための画像形成ユニット381M、シアン色の画像を形成するための画像形成ユニット381C、イエロー色の画像を形成するための画像形成ユニット381Y及びブラック色の画像を形成するための画像形成ユニット381Bkを含む。画像形成ユニット381M,381C,381Y,381Bkは、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341M、341C、341Y、341Bkと同様に、右ローラー333から左ローラー334に向かう方向に整列される。
【0154】
図14は、画像形成ユニットの概略図である。図14を用いて、画像形成ユニット381M,381C,381Y,381Bkが説明される。
【0155】
図14に示される画像形成ユニット381は、図13に示される画像形成ユニット381M,381C,381Y,381Bkのうち1つを代表する。したがって、図14に示される画像形成ユニット381の構造に関連する説明は、図13に示される画像形成ユニット381M,381C,381Y,381Bkそれぞれに適用される。
【0156】
画像形成ユニット381は、第1実施形態に関連して説明された画像形成ユニット341と同様の感光体ドラム342、第1帯電器343、露光装置344、現像装置350、除電器345及びクリーニング装置346に加えて、転写ユニット360Dを更に備える。転写ユニット360Dは、第1実施形態に関連して説明された転写ユニット360と同様の中間転写ローラー361、バックアップローラー362及び摺擦ユニット365に加えて、中間転写ローラー361の周面の画像からキャリア液に含まれる油分を除去するための除去ローラー363と、除去ローラー363の周面に当接する端部を有するクリーニングブレード364と、クリーニングブレード364によって除去ローラー363の周面から掻き取られた油分を回収するための回収ボックス368と、を備える。本実施形態において、除去ローラー363は、除去要素として例示される。
【0157】
中間転写ローラー361が感光体ドラム342から搬送ベルト335上のシートへ画像を受け渡す間、除去ローラー363は、中間転写ローラー361の周面から、画像の形成に用いられた液体現像剤のキャリア液が含む油分を適切に除去する。この結果、摺擦ローラー366の擦過による画像の定着が促進される。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、プリンター、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機などの各種の画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0159】
300,300A,300B,300D・・・・・カラープリンター(画像形成装置)
330・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・搬送装置(搬送要素)
340,340A,340B,340D・・・・・画像形成部
342・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・感光体ドラム(画像形成要素)
359,359C,359M・・・・・・・・・・接触面
360,360D・・・・・・・・・・・・・・・転写ユニット
361・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中間転写ローラー(中継要素)
363・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・除去ローラー(除去要素)
365・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・摺擦ユニット
366,366Bk,366C,366M,366Y・・・摺擦ローラー(摺擦要素)
390・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・駆動機構
S・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを第1方向へ搬送する搬送要素と、
前記シートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部と、を備え、
該画像形成部は、第1画像を前記シートに転写する第1転写ユニットと、該第1転写ユニットの後に、第2画像を前記シートに転写する第2転写ユニットと、を含み、
前記第1転写ユニットは、前記シート上の前記第1画像を摺擦する第1摺擦ユニットを含み、
前記第2転写ユニットは、前記シート上の前記第2画像を摺擦する第2摺擦ユニットを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1摺擦ユニット及び前記第2摺擦ユニットのうち少なくとも一方は、前記画像を摺擦する複数の摺擦要素を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2摺擦ユニットの前記摺擦要素は、前記第1摺擦ユニットの前記摺擦要素よりも多いことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送要素は、前記シートを第1速度で搬送し、
前記画像形成部は、前記摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、
前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、
前記駆動機構は、前記接触面を、前記第1方向に、前記第1速度と異なる第2速度で移動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成部は、前記摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、
前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、
該駆動機構は、前記接触面を前記第1方向とは異なる第2方向に移動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記接触面は、少なくとも部分的に不織布で覆われた面であることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記接触面は、少なくとも部分的にブラシが植設された面であることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1摺擦ユニットは、前記第1画像を摺擦する第1摺擦要素を含み、
前記第2摺擦ユニットは、前記第2画像を摺擦する第2摺擦要素を含み、
前記画像形成部は、前記第1摺擦要素及び前記第2摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、
前記第1摺擦要素は、前記第1画像に接触する第1接触面を含み、
前記第2摺擦要素は、前記第2画像に接触する第2接触面を含み、
前記駆動機構は、前記第2接触面を、前記第1接触面よりも高い速度で移動させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記液体現像剤は、前記画像を発色させるための着色粒子と、該着色粒子が分散されるキャリア液と、該キャリア液中に溶解又は膨潤された高分子化合物と、を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記キャリア液は、油分を含み、
前記画像形成部は、前記液体現像剤が塗布され、前記第1画像又は前記第2画像が形成される形成面を含む画像形成要素を含み、
前記第1転写ユニット及び前記第2転写ユニットのうち少なくとも一方は、
該画像形成要素から前記搬送要素上の前記シートへ前記第1画像又は前記第2画像を受け渡す中継要素と、
該中継要素上の前記第1画像又は前記第2画像から前記油分を除去する除去要素と、を含むことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記着色粒子は、第1色相の第1着色粒子と、該第1色相とは異なる第2色相の第2着色粒子と、を含み、
前記第1画像は、前記第1着色粒子を用いて形成され、
前記第2画像は、前記第2着色粒子を用いて形成され、
前記第2転写ユニットは、前記第1画像に前記第2画像を重畳させ、前記シート上に前記画像を形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の画像形成装置。
【請求項1】
シートを第1方向へ搬送する搬送要素と、
前記シートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部と、を備え、
該画像形成部は、第1画像を前記シートに転写する第1転写ユニットと、該第1転写ユニットの後に、第2画像を前記シートに転写する第2転写ユニットと、を含み、
前記第1転写ユニットは、前記シート上の前記第1画像を摺擦する第1摺擦ユニットを含み、
前記第2転写ユニットは、前記シート上の前記第2画像を摺擦する第2摺擦ユニットを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1摺擦ユニット及び前記第2摺擦ユニットのうち少なくとも一方は、前記画像を摺擦する複数の摺擦要素を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2摺擦ユニットの前記摺擦要素は、前記第1摺擦ユニットの前記摺擦要素よりも多いことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送要素は、前記シートを第1速度で搬送し、
前記画像形成部は、前記摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、
前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、
前記駆動機構は、前記接触面を、前記第1方向に、前記第1速度と異なる第2速度で移動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成部は、前記摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、
前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、
該駆動機構は、前記接触面を前記第1方向とは異なる第2方向に移動させることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記接触面は、少なくとも部分的に不織布で覆われた面であることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記接触面は、少なくとも部分的にブラシが植設された面であることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1摺擦ユニットは、前記第1画像を摺擦する第1摺擦要素を含み、
前記第2摺擦ユニットは、前記第2画像を摺擦する第2摺擦要素を含み、
前記画像形成部は、前記第1摺擦要素及び前記第2摺擦要素を動作させるため駆動機構を含み、
前記第1摺擦要素は、前記第1画像に接触する第1接触面を含み、
前記第2摺擦要素は、前記第2画像に接触する第2接触面を含み、
前記駆動機構は、前記第2接触面を、前記第1接触面よりも高い速度で移動させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記液体現像剤は、前記画像を発色させるための着色粒子と、該着色粒子が分散されるキャリア液と、該キャリア液中に溶解又は膨潤された高分子化合物と、を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記キャリア液は、油分を含み、
前記画像形成部は、前記液体現像剤が塗布され、前記第1画像又は前記第2画像が形成される形成面を含む画像形成要素を含み、
前記第1転写ユニット及び前記第2転写ユニットのうち少なくとも一方は、
該画像形成要素から前記搬送要素上の前記シートへ前記第1画像又は前記第2画像を受け渡す中継要素と、
該中継要素上の前記第1画像又は前記第2画像から前記油分を除去する除去要素と、を含むことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記着色粒子は、第1色相の第1着色粒子と、該第1色相とは異なる第2色相の第2着色粒子と、を含み、
前記第1画像は、前記第1着色粒子を用いて形成され、
前記第2画像は、前記第2着色粒子を用いて形成され、
前記第2転写ユニットは、前記第1画像に前記第2画像を重畳させ、前記シート上に前記画像を形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−242802(P2012−242802A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116135(P2011−116135)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
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